JP5811818B2 - 鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼板の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、成形加工、特に絞り成形、の後に焼入れ等の熱処理が施される用途に好適な、r値の面内異方性が小さい鋼板の製造方法に関する。
自動車のエンジンやミッションの部品に使用される鋼板の中には、絞り成形が行われ、その後、焼き入れ焼戻し等の熱処理が施されるものが相当数ある。絞り成形は円筒状に成形されるものもあり、その場合には、歩留まりの観点から、絞り成形によって生じるイヤリング(耳と呼ばれる成形品縁部における山形突起の発生)への対策が重要となる。
このような円筒状深絞り成形用途に供される鋼板には、SCM415、SAE1010、SAE1015などの鋼種が用いられることが多い。このような鋼板は、通常、熱延鋼板に冷間圧延、焼鈍、調質圧延および精整を順次施したものが製品として客先へ出荷され、客先において、打ち抜き、絞り成形、焼入れ焼戻しおよび精整が順次行われる。
しかし、このようなプロセスにて製造された従来の鋼板は、r値の面内異方性が大きく、客先における絞り成形により大きなイヤリングが発生し、成形品の歩留まりが低くなるという問題を有していた。
そこで、上記鋼板と同様に焼入れ焼戻しといった熱処理に供される鋼板である中炭素鋼板について、r値の面内異方性を小さくすることが従来から検討されている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、JIS G 4051(機械構造用炭素鋼)、JIS G 4401(炭素工具鋼鋼材)、JIS G 4802(ばね用冷間圧延鋼帯)で規定される成分系を有する高炭素鋼板について、また、特許文献3には、C:0.2%〜1.5%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3以下の成分系を有する高炭素鋼板について、それぞれr値の面内異方性を小さくすることが検討されている。
特開2001−73076号公報 特開2001−73077号公報 特開2003−89846号公報
上記特許文献によれば、各種鋼板についてr値の面内異方性を小さくすることができるとされている。しかし、上記特許文献に記載された発明が対象とする材質は著しく広範であるにも拘わらず、実際に検討されているのはS35CおよびS65C−CSPの2鋼種に過ぎない。
本発明者らの検討によれば、少なくともCまたはMnの一方の含有量が低い材質については、上記特許文献に開示された方法を適用してもr値の面内異方性を小さくすることが困難であることが判明した。
本発明は、上記特許文献において具体的に検討された材質よりもCまたはMnの含有量が低い材質について、r値の面内異方性を小さくすることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべき鋭意検討を行った。
本発明者らは、まず、上記鋼板におけるr値の面内異方性に及ぼす各種因子について詳細に調査した。
その結果、r値の面内異方性には熱間圧延により形成される集合組織が大きく影響すること、上記集合組織の発達を抑制することは工業的生産プロセスを前提とした熱間圧延条件下では困難であること、を見出した。
そこで、本発明者らは、熱間圧延により形成された集合組織を、冷間圧延を施す前に極力除去することを新たに着想し、その具体的手段として、Ac1点以上の二相域焼鈍を施すことが有効であることを新たに見出した。
そして、このような焼鈍を施した熱延鋼板に圧下率を規定した冷間圧延を施し、次いで特定条件下で焼鈍を施すことより、冷間圧延および焼鈍後におけるr値の面内異方性を確実に小さくすることができることを見出した。
本発明は、これらの新たな知見に基づくものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.04%以上0.19%以下、Mn:0.60%以上1.5%未満、Si:0.05%以上0.50%未満とsol.Al:0.005%以上0.080%以下とからなる群から選択される1種または2種、P:0.050%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する熱延鋼板にAc点以上(Ac点+50℃)以下の温度域に1時間以上50時間以下保持する熱延板焼鈍を施し、次いで、圧下率10%以上50%以下で冷間圧延を施し、さらに、620℃以上Ac点以下の温度域に5時間以上50時間以下保持する焼鈍を施すことを特徴とする、下記式(1)で規定されるΔr1が−0.20以上0.20以下であり、下記式(2)で規定されるΔr2が0.42以下である機械特性を有する鋼板の製造方法。
Δr1=(r0−2r45+r90)/2 ・・・ (1)
Δr2=rmax−rmin ・・・ (2)
ここで、式中の各記号は以下の値を表す:
0:板面の圧延方向に対して平行に採取した試験片で測定したr値、
45:板面の圧延方向に対して45°方向に採取した試験片で測定したr値、
90:板面の圧延方向に対して90°方向に採取した試験片で測定したr値、
max:r0、r45およびr90のうち最大の値、
min:r0、r45およびr90のうち最小の値。
本発明によれば、前記化学組成は、前記Feの一部に代えて、下記に示す少なくとも1群の元素(%はいずれも質量%)をさらに含有していてもよい:
(a)Cr:1.50%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.0060%以下からなる群から選択される1種または2種以上;
(b)Ni:0.30%以下およびNb:0.030%以下からなる群から選択される1種または2種;
(c)Ti:0.030%以下;ならびに
(d)Cu:0.30%以下。
板は、r値の面内異方性が小さいため、絞り成形用途に使用された時にイヤリングが低減し、製品歩留まりが向上する。したがって、鋼板は、絞り成形が行われ、その後、焼き入れ焼戻し等の熱処理が施される用途、例えば、自動車のエンジンやミッションの部品等の用途に好適である。
実施例で採用したカップ絞り成形の状況を示す写真。 実施例の結果(イアリングピッチの周方向分布)を示す図。
以下、本発明をより具体的に説明する。以下の説明において、鋼の化学組成に関する%はいずれも質量%である。本発明において、鋼板とは無論、鋼帯を含む意味である。
1.化学組成
[C:0.04%以上0.25%以下、かつMn:0.60%以上1.5%未満、または
C:0.25%超1.00%以下、かつMn:0.30%以上0.60%未満]
Cは、焼入れ後の硬さを決定する元素であるとともに、焼入れ性を高める作用を有する元素である。C含有量が0.04%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、C含有量は0.04%以上とする。好ましくは、0.12%以上である。一方、C含有量が1.00%超では、鋼板の硬質化による成形性の低下が著しくなる。したがって、C含有量は1.00%以下とする。
Mnも、焼入れ性を高める作用を有する元素である。Mn含有量が0.30%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.30%以上とする。一方、Mn含有量が1.5%以上では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Mn含有量は1.5%未満とする。
ここで、C含有量が低い場合には、目的とする強度を確保するために、より確実に焼きが入るよう、Mn含有量を高めて高い焼入れ性を確保することが必要となる。一方、C含有量が高い場合には、焼入れ後の硬さが絶対的に高いこととC自体が焼入れ性を高める作用を有することから、Mnにより焼入れ性を高める必要性は低くなる。したがって、Mn含有量の下限はC含有量が低い場合に比して緩和される。また、Mnは高価な元素であるため、Mn含有量の上限はC含有量が低い場合に比して低減すべきである。
斯かる観点から、本発明ではC含有量に応じてMn含有量を決定する。具体的には、C含有量が0.25%以下である場合には、Mn含有量を0.60%以上とする。一方、C含有量が0.25%超の場合には、Mn含有量を0.60%未満とする。
従って、C含有量およびMn含有量は、C:0.04%以上0.25%以下、かつMn:0.60%以上1.5%未満(低C、高Mnの場合)であるか、或いはC:0.25%超1.00%以下、かつMn:0.30%以上0.60%未満(高C、低Mnの場合)とする。
[Si:0.05%以上0.50%未満およびsol.Al:0.005%以上0.080%以下からなる群から選択される1種または2種]
SiおよびAlは、鋼の溶製時に脱酸材として添加され、鋼板を健全化する作用を有する。上記作用による効果を得るには、Siの場合には0.05%以上、sol.Alの場合には0.005%以上含有させる必要がある。したがって、Si:0.05%以上およびsol.Al:0.005%以上なる群から選択される1種または2種を含有させる。
しかし、Si含有量が0.50%以上では、鋼板の硬質化による成形性の低下が著しくなる。したがって、Si含有量は0.50%未満とする。また、sol.Al含有量が0.080%超では、表面欠陥を生じ易くなるとともに鋼板の硬質化による成形性の低下が著しくなる。したがって、sol.Al含有量は0.080%以下とする。
[P:0.050%以下]
Pは、不純物として含有され、鋼板の靭性を劣化させる。P含有量が0.050%超では靭性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.050%以下とする。好ましくは0.030%以下である。
[S:0.020%以下]
Sは、不純物として含有され、鋼板の靭性を劣化させる。S含有量が0.020%超では靭性の劣化が著しくなる。したがって、S含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.010%である。
[N:0.010%以下]
Nは、不純物として含有され、スラブ割れの発生を招く場合がある。N含有量が0.010%超ではスラブ割れ発生の可能性が著しく高くなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。
以下に述べる元素は、所望により鋼板に含有させることができる任意元素である。
[Cr:1.50%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.0060%以下からなる群から選択される1種または2種以上]
これらの元素は、焼入れ性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、Cr含有量が1.50%を超えたり、Mo含有量が0.50%を超えたりすると、鋼板の硬質化による成形性の低下が著しくなる。また、B含有量が0.0060%を超えると、スラブ表面割れ発生の可能性が著しく高くなる。したがって、Cr含有量は1.50%以下、Mo含有量は0.50%以下、B含有量は0.0060%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Cr:0.02%以上、Mo:0.01%以上およびB:0.0001%以上の何れかを満足させることが好ましい。Cr含有量は0.05%以上とすることがさらに好ましい。
[Ni:0.30%以下およびNb:0.030%以下からなる群から選択される1種または2種]
これらの元素は、靭性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種を含有させてもよい。しかし、Ni含有量を0.30%以上としても上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。また、Nb含有量が0.030%超では、Nb炭化物形成による成形性の低下や焼入れ性の低下が著しくなる。したがって、Ni含有量は0.30%以下、Nb含有量は0.030%以下とする。Ni含有量は好ましくは0.15%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Ni:0.01%以上およびNb:0.001%以上の何れかを満足させることが好ましい。
[Ti:0.030%以下]
Tiは、NをTiNとして固定することにより、Nによる悪影響を排除する作用を有する。したがって、Tiを含有させてもよい。しかし、Ti含有量が0.030%超では、鋼板の硬質化による成形性の低下が著しくなる。また、鋼中に多量の炭窒化物を形成して、靭性や焼入れ性の低下が著しくなる。したがって、Ti含有量は0.030%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るにはTi含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
[Cu:0.30%以下]
Cuは、酸洗時の過酸洗を抑制して鋼板の表面性状を安定化する作用を有する。したがって、Cuを含有させてもよい。しかし、Cu含有量が0.30%超では、鋼板の硬質化による成形性の低下が著しくなる。したがって、Cu含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.15%以下である。上記作用による効果をより確実に得るにはCu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
2.機械特性
板は、下記式(1)で規定されるΔr1が−0.20以上0.20以下であり、下記式(2)で規定されるΔr2が0.42以下である機械特性を有するものとする。
Δr1=(r0−2r45+r90)/2 ・・・ (1)
Δr2=rmax−rmin ・・・ (2)
ここで、式中の各記号は以下の値を表す:
0:板面の圧延方向に対して平行に採取した試験片で測定したr値、
45:板面の圧延方向に対して45°方向に採取した試験片で測定したr値、
90:板面の圧延方向に対して90°方向に採取した試験片で測定したr値、
max:r0、r45およびr90のうち最大の値、
min:r0、r45およびr90のうち最小の値。
上記式(1)で規定されるΔr1が−0.20未満であるか又は0.20であったり、或いは上記式(2)で規定されるΔr2が0.42であったりすると、絞り成形によって生じるイヤリングが大きくなり、歩留まりの低下が著しくなる。
したがって、上記式(1)で規定されるΔr1は−0.20以上0.20以下とし、上記式(2)で規定されるΔr2は0.42以下とする。
r値(ランクフォード値ともいう)は、当業者には周知のように、鋼板の引張試験における長手方向の伸びが20%になった時の板幅方向と板厚方向の対数ひずみの比として求められる数値であり、深絞り性の指標となる。
CまたはMnの一方が低いことを特徴とする本発明に従った化学組成を有する鋼板において上記式(1)および(2)を満足するr値の面内異方性が小さい鋼板は、従来は知られていなかった。本発明によれば、次に述べる製造方法を採用することにより、r値の面内異方性が小さいこの種の鋼板の提供が可能になった。
3.製造方法
上記鋼板を製造する好適な製造方法を以下に説明する。
上記化学組成を有する熱延鋼板をまず準備する。熱延鋼板は、連続鋳造と直送圧延により製造されたものでも、或いは分塊圧延されたものであってもよい。熱間圧延の条件(例、加熱温度、仕上温度、熱間圧延完了後の冷却条件、巻取温度など)は、特に制限されない。
好ましい条件の例を説明すると、加熱温度:1200℃以上1260℃以下、仕上温度:850℃以上880℃以下、熱間圧延完了後巻取までの平均冷却速度:10℃/秒以上30℃/秒以下、巻取温度:620℃以上660℃以下である。
熱延鋼板に対し、Ac1点以上(Ac1点+50℃)以下の温度域に保持する熱延板焼鈍を施してから、圧下率10%以上50%以下で冷間圧延を施し、得られた冷延鋼板に、620℃以上Ac1点以下の温度域に5時間以上50時間以下保持する焼鈍を施すことが好ましい。
本発明は、熱間圧延により形成された集合組織を冷間圧延前に極力除去することによって、上述したr値の面内異方性の低減を達成する。そのために、冷間圧延前に、まず熱延鋼板(以下、熱延板ともいう)をAc1点以上の二相域温度で焼鈍する。この熱延板焼鈍温度がAc1点未満では、熱間圧延により形成された集合組織の除去が不十分となり、冷間圧延および焼鈍後においてr値の面内異方性を低減することが困難となる。したがって、熱延板焼鈍温度は、Ac1点以上とする。一方、熱延板焼鈍温度が(Ac1点+50℃)超になると、焼き付き等により表面性状が害される場合があり、また、生産性の低下を招く。したがって、熱延板焼鈍温度は、(Ac1点+50℃)以下とする。
この焼鈍の温度保持時間は、目的の集合組織の除去が達成されるように選択するが、一般には1時間〜50時間程度とすることが好ましい。従って、この焼鈍は箱焼鈍により行うのが好都合である。鋼板がコイルに巻かれた鋼帯である場合には、コイルを箱焼鈍する。焼鈍中の鋼板表面の酸化を防止するために、焼鈍は還元性ガス雰囲気(例、水素雰囲気)中で行うことが好ましい。
焼鈍した熱延鋼板に冷間圧延を施す。冷間圧延における圧下率(冷間圧延率)が10%未満では、冷間圧延による良好な表面性状や寸法精度を得ることが困難となる。したがって、冷間圧延の圧下率は10%以上とする。一方、冷間圧延の圧下率が50%超では、冷間圧延後の焼鈍においてr値の面内異方性を高める集合組織が発達してしまい、冷間圧延および焼鈍後においてr値の面内異方性を小さくすることが困難となる。したがって、冷間圧延の圧下率は50%以下とする。好ましい冷間圧延率は、20%以上40%以下である。冷間圧延は1段で実施できるが、多段圧延としてもよい。
冷間圧延の後には、冷間圧延で導入された歪みを除去するために、焼鈍を施す。この冷間圧延後の焼鈍(本発明では仕上焼鈍ともいう)の保持温度(焼鈍温度)が620℃より低くなると、鋼板の軟質化が十分に図られた良好な成形性を得ることが困難となる。したがって、仕上焼鈍の焼鈍温度は620℃以上とする。好ましくは640℃以上である。一方、焼鈍温度がAc1点を超えると、硬質相が生成して良好な成形性が得られなくなる可能性がある。したがって、仕上焼鈍の焼鈍温度はAc1点以下とする。好ましくは(Ac1点−10℃)以下である。
焼鈍時間が5時間未満では、鋼板の軟質化が十分に図られた良好な成形性を得ることが困難となる。したがって、焼鈍時間は5時間以上とする。一方、焼鈍時間が50時間超では、生産性の低下が著しくなり、好ましくない。したがって、焼鈍時間は50時間以下とする。適当な焼鈍時間は焼鈍温度によっても変動し、焼鈍温度が高めの場合には焼鈍時間を短くすることができる。この焼鈍も、前述した熱延板焼鈍と同様に、一般には箱焼鈍により実施され、焼鈍雰囲気も同様に還元性ガス雰囲気とすることが好ましい。
この焼鈍により得られた鋼板は、その後、従来と同様に、調質圧延および精整(矯正、切断、表面品質検査など)を施して出荷される。
なお、上述した工程の間に酸洗を実施してもよい。酸洗は、例えば、熱間圧延後または熱延板焼鈍後などに行うことができる。
(実施例1)
表1に示す同一の化学組成を有するスラブを、1250℃に加熱し、仕上温度:870℃、巻取温度:620℃の条件で熱間圧延を施して4.0mm厚の熱延鋼板とした。
得られた熱延鋼板のコイルを巻き出して、塩酸酸洗液を用いて酸洗を施し、水洗と乾燥後に巻き取り、表2に示す各種の製造条件において熱延板焼鈍、冷間圧延および仕上焼鈍を施した。焼鈍時間は、熱延板焼鈍と仕上焼鈍のいずれについても、焼鈍温度が710℃以下の場合は20時間、焼鈍温度が750℃である場合には5時間とした。いずれの焼鈍も、コイルを水素雰囲気中で箱焼鈍することにより実施した。一部の比較例では、熱延板焼鈍を実施しなかった。最終的に得られた鋼板の板厚は3.0mmであった。
このようにして得られた鋼板から、圧延方向に対して0°(圧延方向に平行)、45°および90°(圧延方向に垂直)になるようにJIS5号試験片を採取し、引張試験を行って、それぞれの角度でのr値を求めた。表2には、各角度でのr値、平均r値(3つのr値の算術平均)、最大r値(max)、最小r値(min)、ならびに上記式(1)および(2)により算出したΔr1およびΔr2の値を示す。表2に示したYP(降伏応力)、TS(引張強度)およびEl(伸び)は、圧延方向に採取した試験片での測定結果である。
本発明に従った条件で製造した発明例の鋼板は、Δr1およびΔr2の値が所定の範囲にあり、r値の面内異方性が小さい。
次に、得られた鋼板のうち、条件No.1、No.11およびNo.15の鋼板を用いて、図1に示すカップ絞り成形を行い、絞り成形後にハイトゲージを用いてイヤリング高さを周方向に22.5°ピッチで測定し、各測定位置における平均値からの差分を求めた。得られた結果を図2に示す。図2から明らかなように、発明例(図中では本発明例)であるNo.11の鋼板は比較例であるNo.1およびNo.15の鋼板に比べて、イヤリング(耳の発生)が抑制されている。
(実施例2)
表3に示す各種の化学組成を有するスラブを、表4に示す製造条件により熱間圧延、酸洗、熱延板焼鈍、冷間圧延および仕上焼鈍を施して鋼板を得た。熱延板焼鈍および仕上焼鈍は、いずれも実施例1と同様の箱焼鈍により実施した。
このようにして得られた鋼板から、実施例1に記載したように、3種類の方向でJIS5号試験片を採取し、引張試験を行って、各方向でのr値を求めると共に、平均r値、最大r値、最小r値、ならびに上記式(1)および(2)により算出したΔr1およびΔr2の値を、圧延方向に採取した試験片で測定したYP,TSおよびElの結果とともに、表5にまとめて示す。
表5から、発明例の鋼板はいずれもΔr1およびΔr2の値が所定の範囲にあり、r値の面内異方性が小さいことがわかる。実施例1での試験により実証したように、このようにr値の面内異方性が小さい鋼板は、深絞り性に優れ、深絞り加工した場合のイヤリングが抑制される。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.04%以上0.19%以下、Mn:0.60%以上1.5%未満、Si:0.05%以上0.50%未満とsol.Al:0.005%以上0.080%以下とからなる群から選択される1種または2種、P:0.050%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する熱延鋼板にAc点以上(Ac点+50℃)以下の温度域に1時間以上50時間以下保持する熱延板焼鈍を施し、次いで、圧下率10%以上50%以下で冷間圧延を施し、さらに、620℃以上Ac点以下の温度域に5時間以上50時間以下保持する焼鈍を施すことを特徴とする、
    下記式(1)で規定されるΔr1が−0.20以上0.20以下であり、下記式(2)で規定されるΔr2が0.42以下である機械特性を有する鋼板の製造方法。
    Δr1=(r−2r45+r90)/2 ・・・ (1)
    Δr2=rmax−rmin ・・・ (2)
    ここで、式中の各記号は以下の値を表す:
    :板面の圧延方向に対して平行に採取した試験片で測定したr値、
    45:板面の圧延方向に対して45°方向に採取した試験片で測定したr値、
    90:板面の圧延方向に対して90°方向に採取した試験片で測定したr値、
    max:r、r45およびr90のうち最大の値、
    min:r、r45およびr90のうち最小の値。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.50%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.0060%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1に記載の鋼板の製造方法。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ni:0.30%以下およびNb:0.030%以下からなる群から選択される1種または2種を含有する請求項1または請求項に記載の鋼板の製造方法。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Ti:0.030質量%以下を含有する請求項1〜請求項のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
  5. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Cu:0.30質量%以下を含有する請求項1〜請求項のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
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