JPH0717968B2 - 成形性の良好な高炭素薄鋼板の製造方法 - Google Patents

成形性の良好な高炭素薄鋼板の製造方法

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JPH0717968B2
JPH0717968B2 JP25226988A JP25226988A JPH0717968B2 JP H0717968 B2 JPH0717968 B2 JP H0717968B2 JP 25226988 A JP25226988 A JP 25226988A JP 25226988 A JP25226988 A JP 25226988A JP H0717968 B2 JPH0717968 B2 JP H0717968B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、一般に工具鋼あるいは刃物用鋼として製造さ
れ、JISG3311に規定されている0.80wt%C以上の高炭素
薄鋼板の製造方法に関する。更に詳細には、その品質向
上と、製造プロセスの合理化、そして低コスト化を図っ
た上記高炭素薄鋼板の製造方法に関する。
(従来の技術) 従来より、工具鋼、刃物用鋼を対象とした0.80wt%C以
上の高炭素薄鋼板についてはその成品および製造方法に
以下のような問題点があった。
(1)セメンタイト量が多いため、成品の硬度が高く工
具、刃物への成形加工が困難である。
(2)熱間圧延板の硬度が高いために冷間圧延性が悪
く、冷間圧延途中での中間焼鈍が必要となり、また冷間
圧延の回数が増加しプロセスが煩雑である。
(3)軟質化焼鈍に際して、セメンタイトの球状化を行
うために非常に長い時間が必要である。
このような従来技術の問題点に対する解決策として熱延
板における効率的でかつ有効な軟質化が従来より望まれ
ている。そのために行われるセメンタイトの球状化処理
には下記に示す方法が従来より提唱されていた。
(a)Ac1以上、Acm以下の温度に1hr以上の適当な時間
加熱した後、Ar1変態を完了するまでに徐々に冷却(約1
0℃/hr)するか、またはAr1点直下の適当な温度に冷却
して、この温度に一定時間保持して変態を完了させた後
空冷する。
(b)焼鈍前に軽い冷間圧延を施した後、Ac1点直下の
温度に長時間(約6hr以上)加熱し、冷却する。
(c)Ac1、Ar1点温度の上下を繰り返して加熱してから
冷却する。
この中で(a)のプロセスを適用しても1hr以上の適当
な時間の均熱が必要でありかつ適当に小さな加熱冷却速
度が必要であることが確認されており、したがってこの
加熱、冷却速度を満足させるために箱焼鈍が適用されて
きた。
しかし、箱焼鈍における問題点としてはコイルの中心部
と外周部の加熱速度および均熱時間が異なるため、焼鈍
後の硬度にコイル内で差異が生じ、後工程の冷却圧延に
おける板厚の寸法はずればらつき等の問題、さらに最終
成品における硬度特性のばらつきが挙げられ、この他に
も冷却速度が小さく抑えられていることから冷却のため
の必要時間が非常に長くなることも挙げられる。
また(b)のプロセスでは焼鈍前の軽度の冷間圧延が必
要である上、6hr以上の均熱が必要となり焼鈍時間が非
常に長くなることと、硬度レベルも十分に低減されず、
このため冷間圧延性が不良であることが挙げられる。
さらに(c)のプロセスでは所定の温度を上下させる必
要があり、熱処理設備が非常に複雑なものとなる。その
うえ、処理に長時間を要する割りには効果が十分でなか
った。
以上のように高炭素薄鋼板の製造における問題は、その
硬度が高いことによる成品の成形性の不良、冷間圧延、
焼鈍回数の増大、焼鈍の長時間化であり、そのため製造
プロセスを煩雑なものとしているのが現状であり、その
合理化が重要な問題となっていた。
(発明が解決しようとする課題) かくして、本発明の目的は、前述の(a)のプロセスに
対しコイル間の硬度のばらつき抑制や冷却速度の増大に
よる焼鈍時間の短縮を図るとともに、更にA1点以上の温
度において速やかにセメンタイトを球状化することので
きる高炭素薄鋼板の製造方法を提供することである。
本発明のさらに具体的目的は、(1)成品の軟質化、
(2)冷間圧延性の向上によるプロセスの簡略化、そし
て(3)焼鈍時間の短縮化をそれぞれ実現できる高炭素
薄鋼板の製造方法を提供することである。
(課題を解決するための手段) 上記の目的を達成するために、本発明者らは、840℃以
上の温度で熱間圧延を仕上げ、10℃/sec以上の冷却速度
で冷却し、さらに650℃以下の温度で巻取った後冷却し
て熱延板を製造した。このようにして得た熱延板につい
て脱スケール後、A1以上の温度における箱焼鈍を実施
し、この焼鈍時間によるセメンタイト形状・硬度への影
響を検討した。その一連の実験の結果、均熱時間が異な
っても安定して均一な球状セメンタイトを得る方法があ
ることを確認した。
そこで、本発明者らはこれについてさらに研究を進めた
結果、C含有量0.80%以上の高炭素鋼板においてはA1
10℃〜A1+2/3×(Acm−A1)の範囲の温度に保持した場
合、そのセメンタイト形状は均熱時間による影響を受け
ず、またこの温度域より20〜100℃/hrの冷却速度で冷却
を行った場合、これらのセメンタイトは熱延板における
ラメラー形状から均一な球状化組織に変化していること
が認められた。またその硬度は熱延板、更にA1以下の温
度域にて箱焼鈍した焼鈍材よりも低いことが確認され、
その後の冷間圧延における圧下率も著しく向上すること
が確認された。更にこの作用は、セメンタイトが非常に
微細な層状組織を有する必要があるため、熱延板の巻取
り温度は650℃以下である必要があることも確認され
た。
また熱間圧延において仕上げ・巻取りの条件が本発明が
規定する範囲より異なるとこの焼鈍におけるセメンタイ
トの球状化時間が長くなりかつ冷却速度も10℃/hrより
小さく抑えねばならなくなることがわかった。
これら一連のセメンタイトの球状化挙動についての知見
を整理すると次の通りである。
(a)一般に、Si、Mnを含有した高炭素鋼板の共析点は
Fe−C系状態図にある共析点(0.80%C)よりも低C側
に移行しており、0.80%C以上においてオーステナイト
とセメンタイトの共存温度領域が得られる。この領域に
おいて焼鈍温度をA1+10℃〜A1+2/3×(Acm−A1)の温
度域とすると熱延板中にあったセメンタイトはある程度
の比率でオーステナイト中に残留する。
(b)熱延板の熱間圧延工程において、840℃以上、好
ましくは850℃以上の温度において仕上げ、10℃/sec以
上の冷却速度で冷却し、これを650℃以下の温度で巻き
取ると、変態がすべて完了した後の巻取りであるため非
常に微細なパーライト組織が得られる。これらの微細な
パーライト中のセメンタイトは、熱延板焼鈍において保
持温度がA1+10℃以上A1+2/3(Acm−A1)以下の温度範
囲において一定であれば均熱時間が30min以上では、そ
の時間長さに影響を受けることなくオーステナイト中に
て球状化組織を示す。
(c)上記範囲の温度より冷却した場合、その冷却速度
が20〜100℃/hrの通常の箱焼鈍と同水準の速度であって
も、セメンタイトは母相がフェライトへ変態した後も球
状化組織を維持し、冷却完了後の最終組織はフェライト
中にセメンタイトが均一な球状化組織として分散したも
のとなる。これら球状組織はオーステナイト中に残留し
たセメンタイトに対しオーステナイト中に固溶したCが
吸着成長したものである。
本発明は上記知見事項に基づき完成したものであり、そ
の要旨とするところは、 C:0.80〜1.30%、 Si:0.35%以下、Mn:1.0%以下、 P:0.030%以下、S:0.030%以下、 Al:0.01〜0.08%、N:0.008%以下、 さらに必要に応じて0.30%以下のCrを含有し、 残部が実質的にFeおよび不可避的不純物 から成る組成の高炭素鋼を、熱間圧延に際し840℃以上
の温度で仕上げた後、10℃/sec以上の冷却速度で冷却
し、650℃以下の温度で巻取り、冷却して熱間圧延鋼板
を得、次いで脱スケール後、A1+10℃以上A1+2/3(Acm
−A1)以下の温度で30分間以上均熱してから、一般には
20〜100℃/hrの冷却速度で冷却することを特徴とした、
成形性の良好な高炭素薄鋼板の製造方法である。
本発明の別の態様によれば、冷却後にさらに冷間圧延と
670℃−Ac1までの温度域における箱焼鈍を1回以上行う
ことによってさらに成形性の改善をはかることができ
る。
かくして、本発明によれば、ラメラー状のセメンタイト
を有した熱圧板あるいはA1点以下の比較的低い温度でな
された予備焼鈍後の鋼板に比べ、ヴィッカース硬度が20
ポイント以上、引張強度が5kgf/mm2以上低減し、更に伸
びについて5%以上増大した高炭素薄鋼板が得られる。
このように、本発明により優れた抜打ち加工性、曲げ加
工性を有する高炭素薄鋼板が得られ、特にこの焼鈍後に
おける冷間圧延での圧下率は30%以上増大させることが
可能となりプロセスの大幅な合理化が実現される。
(作用) ここで、本発明にかかる方法が対象とする高炭素薄鋼板
の組成を上記のごとく数値限定した理由を説明する。
C: 過共析組成の高炭素鋼板をA1+10℃〜A1+2/3×(Acm
A1)の温度域に保持した場合、そのラメラー状のセメン
タイトは均熱時間の経過とともにCがオーステナイト中
へ固溶することで球状組織に変化する。しかし、これら
の温度域では完全に固溶してしまうことはなく、微細球
状セメンタイトとしてオーステナイト中に残留する。こ
の微細球状セメンタイトがオーステナイト中に残留する
にはC=0.80wt%以上の添加が必要である。
しかし、1.30%超含有しても本発明の特徴である優れた
打抜き性や曲げ加工性が得られず、また最終製品の脆性
も著しく増大することから上限は1.30wt%と設定した。
Si: 積極的添加は必要ないが、0.35wt%を超えて含有させる
と、C添加量が0.80wt%以上と高いことから、鋼板が硬
質となって脆化し、打抜き性および曲げ性に対して悪影
響を及ぼすため上限を0.35wt%とした。
Mn: 一般に工具鋼あるいは刃物用鋼の耐摩耗性を向上させる
ためには、ある程度のMnの添加が必要である。しかしな
がら、過剰の添加は靱性劣化につながり刃欠け、割れな
どの弊害を生じることから上限を1.0wt%以下、好まし
くは0.50wt%とする。
P: 本発明が対象とする高炭素薄鋼板は成品として成形加工
した後、オーステナイト域にて加熱保持後水冷あるいは
油冷を行い、さらに焼戻し処理を実施することによって
高い硬度と靱性を付与することを特徴としているが、こ
の際のPの存在はその靱性を劣化させる傾向があり成品
に対し悪影響を及ぼす。このため、Pの含有量低減が靱
性改善上好ましいことは言うまでもなく、したがって本
発明にあってはPを0.030%以内に抑える。
S: Sの含有量は低い方が望ましい。これは、これら高炭素
薄鋼板においてはSが存在した場合、Mnと結合してMnS
を形成し、このMnSの存在が製品の靱性劣化につながる
からである。このため、上記のようにMn添加量について
も上限を設けた上で、Sの含有量についても0.030wt%
以内に抑える。
Al: Alはフェライトを安定化することにより、焼鈍後の冷間
圧延における冷間圧延性を向上させる。このためにはA
l:0.01%以上の添加が必要であるが、0.08%超添加した
場合、逆にフェライトの硬化の原因となるため、上限を
0.08%とする。
N 鋼中にNを添加すると、加熱中にAlと結合してAlNを形
成しこれがフェライト粒の成長を抑制し、さらには製品
の熱処理(焼入れ、焼戻し)におけるオーステナイトの
粗粒化の抑制に大きな効果がある。このため、Nの鋼中
への添加は必要であるが、0.008%超のNを添加した場
合、過剰なNが成品の段階での靱性に悪影響を及ぼす危
険性があるので上限を0.008%とするのである。
Cr: 本発明にあってCrは所望添加元素である。
Crは主として焼入性向上を目的として従来より使用され
ているが、本発明におけるCr添加の効果はこの他に、Cr
がセメンタイト中に固溶し、Ac1以上の温度において保
持した場合でも、セメンタイトが分解しCがオーステナ
イト中に固溶することを抑制する効果があるためで、こ
の目的のためには0.30wt%を上限として添加する必要が
ある。ただし、これを超えた量のCrの添加は硬度上昇を
招き、かつコストアップにもつながるために、これを超
えた量の添加は好ましくない。
その他、本発明が対象とする高炭素薄鋼板は、上記成分
を含有するとともに残部が実質的にFeとその他不可避的
な不純物より成るものである。
次に、本発明の製造方法における各工程の限定理由につ
いて詳述する。
熱間圧延の仕上温度条件の設定: 本発明にあっては、熱延板焼鈍ににおけるセメンタイト
の球状化に要する時間短縮という目的のために、そのパ
ーライト組織を微細化する必要がある。これには仕上げ
後の冷却速度を10℃/sec以上でかつ安定してコントロー
ルしなければならない。そしてこのためには、熱間圧延
にあっても、仕上げ温度を850℃以上とし、この温度か
ら空冷あるいは水冷といった方法で後述する巻取り温度
まで冷却する必要がある。
仕上げ後の冷却速度の設定: このときの冷却速度については、10℃/sec未満の場合パ
ーライトのラメラー間隔が粗大化しセメンタイト自体も
粗大化するため、熱延板を焼鈍して行うセメンタイトの
球状化には非常に長時間を要する。このため冷却速度は
10℃/sec以上とする。但し、この冷却速度の増大につい
てはセメンタイトの微細化とともに硬度の上昇も伴うの
で熱延板の割れ等の弊害も生ずる。このため冷却速度の
上限は100℃/secとすることが望ましい。
巻取り温度の設定: 巻取り温度の設定についても、これらセメンタイトの微
細化のためには、その温度が高い場合、巻取り後に変態
を生じることで非常に粗いセメンタイトを形成する。粗
いセメンタイトが生じてしまうと、焼鈍時間が非常に長
くなることから、この巻取り温度を低く限定する必要が
ある。調査の結果、この温度が650℃以下の場合、パー
ライトは安定した微細化組織となり焼鈍に要する時間も
短時間であることがわかった。しかし、これを超えた温
度ではパーライトは粗大化しその球状化に要する時間も
巻取り温度の上昇により長時間化することが認められ
た。このため巻取り温度の上限を650℃と設定する。ま
た、巻取り温度が低すぎる場合、本発明が対象とする鋼
板のC含有率が非常に高いことから熱延板における靱性
が低下する。この靱性低下防止のために、巻取り温度の
下限は500℃とするのが望ましい。
焼鈍温度の設定: 焼鈍における保持温度をA1+10℃〜A1+2/3(Acm−A1
と設定したのは、これら薄鋼板中のセメンタイトをラメ
ラー組織から球状化組織に変化させるのに、オーステナ
イト域においてラメラー組織を分解する必要があるから
である。
この分解に関する限り保持温度はA1+10℃以上の温度で
あれば特に制限はない。しかし、これら分解したラメラ
ー組織から球状化組織を得るには、分解したラメラー組
織が完全にオーステナイト中に固溶してしまうことを防
止しなければならない。このためには、A1以上の温度で
あり、かつこれらセメンタイトがある適当な比率で残留
する温度域を確保する必要がある。このときの上限温度
が実験的にA1より2/3(Acm−A1)だけ高い温度であるこ
とが分かった。このためにA1+10℃〜A1+2/3×(Acm
A1)という温度域を設定したものであり、かつこの温度
にて30min以上保持することが必要である。
このとき、保持時間が1hrであっても8hrであっても冷却
後のミクロ組織並びに硬度における変化はほとんど見出
されなかった。
焼鈍における加熱および冷却速度: 焼鈍に際しての加熱速度については、セメンタイトの形
状・硬度に対する影響は小さいため特に制限はないが、
箱焼鈍であるので工程の能率を考慮して20℃/hr以上と
するのが望ましい。ただし、100℃/hr超となるとAc1
が上昇し焼鈍条件が異なることから上限は100℃/hrとす
るのが望ましい。
一方、焼鈍後の冷却速度であるが、オーステナイト域か
ら冷却する際には冷却速度はD含有量に応じて慎重に選
択する必要がある。
すなわち、本発明の対象とする薄鋼板おけるC含有量は
0.80〜1.30wt%であるが、ここにおける冷却速度は処理
能率を考慮して20℃/hr以上であれば任意に決定しても
問題はない、しかし、100℃/hr超となるセメンタイト組
織がラメラー化するので上限を100℃/hrと限定する。
冷間圧延とその後の焼鈍: 本発明により焼鈍された薄鋼板は、そのままでも使用に
供されてもよく、あるいは慣用法によって冷間圧延を行
ってもよいが、好ましくはその後に例えば50%以上の圧
下率で冷間圧延した後、670℃−A1の温度域で焼鈍して
から最終製品としてもよい。ここにおいて、冷間圧延後
の焼鈍温度が熱間圧延後の焼鈍温度と異なるのは、一度
冷間圧延された薄鋼板の球状化処理には必ずしもA1以上
の温度は必要ではなく、最終製品の硬度特性の均一化を
考慮すれば670℃−Ac1の温度域での焼鈍が適当であるた
めである。
次に、本発明の作用効果を以下の実施例により比較例と
対比しながらさらに説明する。
実施例1 第1表に示した化学成分を有する炭素鋼〔A1点=720〜7
28℃、Acm=735〜885℃(ただし、鋼EはAcmなし)〕
に、下記に示す従来の製造方法と本発明にかかる方法の
両方で高炭素薄鋼板を製造しそれぞれの機械的性質を評
価した。その結果を第2表に示す。
ここに、本例における従来法は、熱間圧延薄鋼板(板厚
=2.0mm)を酸洗し、加熱および冷却速度=40℃/minで
の箱焼鈍(680℃×12hr均熱)を行い、成品とする方法
であった。
一方、本発明法は、熱間圧延薄鋼板(板厚=2.0mm)を
酸洗してから、加熱および冷却速度=40℃/minでの箱焼
鈍(740℃×4hr均熱)を行い、成品とする方法であっ
た。
なお、いずれの方法にあっても熱間圧延での仕上温度は
850℃、熱間圧延後の冷却はスプレー冷却(20℃/sec)
で行い、巻取り温度は620℃であった。
第2表に示すように本発明にかかる方法により引張強度
と硬度が低減され、そして伸びと冷圧限界値が向上する
ことが認められる。但し、鋼Eの場合は本発明の場合よ
りもMn量が高いために冷圧限界、つまり冷間圧延率の向
上幅は小さい。
次に、本発明法と従来法により、箱焼鈍したコイルにつ
いて内側、外側での硬度差について調査した結果を第3
表に示す。
このように、本発明法では従来法と比べてもコイル内外
での硬度差は小さい。しかし鋼DではC含有量が本発明
の場合より小さいため硬度差が大きくなっている。
次に、本発明法における焼鈍温度および冷却速度と硬度
との相関についてそれぞれ第1図および第2図にグラフ
で示す。
本例の場合、A1+10℃=730〜738℃であり、A1+2/3(A
cm−A1)=731〜832℃であるから、第1図において731
〜780℃の範囲内において十分に硬度が低下しているこ
とがわかる。
このように本発明で限定する範囲内の製造条件において
焼鈍を実施した場合、非常に軟質な鋼板が得られること
が認められる。
次に、鋼A〜鋼Eにおけるミクロ組織について従来法と
本発明法の相違を説明する。
第3図は、本例における従来法と本発明法によって得ら
れた鋼板の顕微鏡金属組織写真を示すが、これからも分
かるように、本発明法では保持時間が短いにもかかわら
ず均一で良好な球状化組織が得られ、硬度の低減がなさ
れている。但し、鋼DはC含有量が0.80%未満で本発明
の範囲を下回るためにラメラー状のセメンタイトとなり
硬度低減が小さい。
実施例2 本例では実施例1を繰り返すとともに、更に、冷間圧延
を行い、冷間圧延後の機械的特性の相違について従来法
と本発明法とを比較した。結果は第4表にまとめて示
す。
本例における従来法と本発明法とは下記の要領で行っ
た。
従来法: 本発明法: なお、いずれの方法にあっても熱間圧延の仕上温度は85
0℃、熱間圧延後の冷却はスプレー冷却(20℃/sec)で
行い、そして巻取り温度は620℃であった。
以上のように冷間圧延−焼鈍後の特性についても本発明
によれば硬度は低く抑えられた。
実施例3 実施例1の鋼A−Cについて焼鈍後の硬度低減のための
最適熱延条件について検討した。
すなわち、1100℃にて、1hr加熱後、熱間圧延を行い、
その時の仕上温度、冷却速度、巻取温度を調整し、熱延
板焼鈍後の硬度に対する、これら3つの熱間圧延条件の
要因の影響を調査した。結果は第4図ないし第6図にま
とめてグラフで示す。
図中、○は焼鈍条件が740℃×30minの場合を、半白○は
740℃×2hrの場合を、そして●は740℃×6hrの焼鈍処理
を行った場合をそれぞれ示す。
×は熱延板の場合を示す。
第4図は、仕上温度と硬度との相関を示すグラフであ
る。第5図は、冷却速度との相関を、そして第6図は巻
取り温度との相関をそれぞれ示すグラフである。
ここにおいて、焼鈍に際して均熱時間の影響を受けるこ
となく焼鈍後の鋼板の硬度が低減されるには (1)仕上げ温度が840℃以上、好ましくは850℃以上 (2)巻取り前の冷却速度が10℃/sec以上 (3)巻取り温度が650℃以下 以上、3条件を満足する必要があることが確認された。
実施例4 本例にあっては、第5表に示す鋼組成の供試材につい
て、第6表に示す熱間圧延条件および焼鈍条件で高炭素
薄鋼板を製造した。熱延材焼鈍後の冷間圧延および箱焼
鈍条件は、冷間圧延60%、箱焼鈍(680℃×12hr)であ
った。
なお、第5表の各鋼のA1+10℃=729〜738℃、A1+2/3
(Acm−A1)=731〜840℃(ただし、鋼Sを除く)であ
った。
このようにして得られた熱延鋼板および冷延鋼板の各機
械的特性を従来法により得られたものと比較して第6表
に示す。
第6表の結果から、本発明により成形性にすぐれた高炭
素薄鋼板が得られることが分かる。
(発明の効果) 以上、本発明を詳述したが、従来法と比較して本発明に
より下記の点において高炭素薄鋼板の製造方法が合理化
され、コスト低減がなされるのであって、そのような今
日的要求を満足できる本発明の意義は大きい。
(1)硬度を低く抑え、工具、刃物等への成形加工性が
改善される。
(2)焼鈍後、熱間圧延板の硬度が低減され冷間圧延性
が向上し、圧延途中での中間焼鈍が不要となり、また冷
間圧延の回数が低減されプロセスが簡略化する。
(3)軟質化焼鈍に際して行う(セメンタイト球状化の
ための処理時間が非常に短縮される。)
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は、本発明の実施例の結果を示すグ
ラフ; 第3図は、従来法のそれと比較して示す本発明により製
造される鋼板の顕微鏡金属組織写真; 第4図ないし第6図は、同じく本発明の実施例の結果を
示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量割合にて C:0.80〜1.30%、Si:0.35%以下、 Mn:1.0%以下、 P:0.030%以下、S:0.030%以下、 Al:0.01〜0.08%、N:0.008%以下、 残部が実質的にFeおよび不可避的不純物 から成る組成の高炭素鋼を、熱間圧延に際し840℃以上
    の温度で仕上げた後、10℃/sec以上の冷却速度で冷却
    し、650℃以下の温度で巻取り、冷却し、次いで脱スケ
    ール後、A1+10℃以上A1+2/3(Acm−A1)以下の温度で
    30分間以上均熱してから20〜100℃/hrの冷却速度で冷却
    することを特徴とする成形性の良好な高炭素薄鋼板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】重量割合にて C:0.80〜1.30%、Si:0.35%以下、 Mn:1.0%以下、 P:0.030%以下、S:0.030%以下、 Al:0.01〜0.08%、N:0.008%以下、 残部が実質的にFeおよび不可避的不純物 から成る組成の高炭素鋼を、熱間圧延に際し840℃以上
    の温度で仕上げた後、10℃/sec以上の冷却速度で冷却
    し、650℃以下の温度で巻取り、冷却し、次いで脱スケ
    ール後、A1+10℃以上A1+2/3(Acm−A1)以下の温度で
    30分間以上均熱してから20〜100℃/hrの冷却速度で冷却
    し、更にその後、冷間圧延と670℃〜Ac1までの温度域に
    おける箱焼鈍を1回以上行うことを特徴とする成形性の
    良好な高炭素薄鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】前記高炭素鋼がさらに0.30%以下のCrを含
    有する請求項1または2記載の方法。
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