以下、本発明を具体化した参考例1〜3及び実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。なお、図1に示すように、テールゲート9側を後側として前後方向、左右方向及び上下方向を規定する。すなわち、テールゲート9の反対側である車両前方を前側と規定する。また、車両前方を向いた状態における左側(図1における紙面奥側)を左側と規定し、車両前方を向いた状態における右側(図1における紙面手前側)を右側と規定する。そして、図2以降の各図に示す前後方向、左右方向及び上下方向は、全て図1の各方向に対応している。
(参考例1)
図1に示すように、参考例1の車両用ドアロック装置(以下、単に「ドアロック装置」と呼ぶ。)1は、自動車のテールゲート9に搭載されている。テールゲート9は、本発明の「車両用ドア」の一例である。なお、ドアロック装置1は、自動車や産業車両等のサイドドア等にも搭載可能である。以下、ドアロック装置1の構成について詳しく説明する。
図1及び図2に示すように、ドアロック装置1は、テールゲート9の下方の車内側に配設されている。ドアロック装置1は、ロック装置本体70と、第1ケース71と、第2ケース72と、コネクタ71Eと、伝達部材100とを備える。また、図2に示すように、ドアロック装置1は、電動モータ81と、切替手段50と、マイクロスイッチ87、88、89と、電気配線91、92、93、94、95、96、97と、慣性部材200とを備える。
図1及び図2に示すように、ロック装置本体70は、鋼板が折り曲げ加工されてなる取付部材73を有する。取付部材73には、下方に凹む凹部73Aと、凹部73Aの左右両端縁から互いに離れるよう略水平に延在する一対の取付部73B(図1参照)とが形成されている。取付部73Bは、テールゲート9の下側端面に締結固定されるためのものである。凹部73Aには、後述するフォーク11及びポール12が収容されている。また、凹部73Aには、下端縁中央から後方、かつ上方に向けて深く溝状に切り欠かれた進入口78(図2参照)が形成されている。進入口78には、テールゲート9の開閉に伴ってドアロック装置1が移動する際、車体99に固定されたストライカ79が相対的に進入するようになっている。
図1に示すように、第1ケース71及び第2ケース72は、熱可塑性樹脂の射出成形品である。第1ケース71は、開口71Bを有する略箱形状とされている。第1ケース71は、取付部材73の上面後端側において、開口71Bを車内側(前方)に向けた状態で併設されている。第2ケース72は、略蓋形状とされている。第2ケース72は、取付部材73の上面後端側において、車内側(前方)から開口71Bを塞ぐように第1ケース71に固定されている。
第1ケース71と第2ケース72とは、図示しないシール部材を介して互いに嵌合されている。これにより、図2に示すように、第1ケース71及び第2ケース72の内部には、防水構成とされた収容室71Aが形成されている。第1ケース71及び第2ケース72は、本発明の「ハウジング」の一例である。収容室71A内には、電動モータ81と、切替手段50と、マイクロスイッチ87、88、89と、電気配線91〜97と、慣性部材200とが収容されている。
図1及び図2に示すように、第1ケース71及び第2ケース72の左側面には、1個のコネクタ71Eが一体に設けられている。コネクタ71Eは、四角い筒状をなして、左方に突出している。コネクタ71Eには、1系統のワイヤハーネス4の一端側が接続されている。ワイヤハーネス4の他端側は、車両内に設けられたコントローラ3に接続されている。ワイヤハーネス4は、複数本の信号ケーブルが束ねられ、その両端に他の電子機器と接続可能なコネクタが設けられた周知の電気配線部材である。コントローラ3は、車両に搭載された電子機器を制御するものである。コントローラ3は、後述するように、ドアロック装置1に対して給電や制御信号の送受信を行うようになっている。
図2に示すように、凹部73A内には、フォーク11及びポール12が進入口78を左右から挟むように設けられている。
フォーク11は、進入口78の左側に凸設された揺動軸14Aに揺動可能に支持されている。そして、フォーク11は、図示しない捩りコイルバネにより、揺動軸14A回りで反時計方向に揺動するように付勢されている。なお、本参考例における「時計方向」及び「反時計方向」は、図2の断面図に対面した状態を基準としている。
フォーク11の進入口78側に位置する部位は、上側凸部11Aと下側凸部11Bとに分岐している。そして、上側凸部11Aと下側凸部11Bとの間に形成された凹部11Cには、進入口78内に進入したストライカ79が収まるようになっている。図2に示す状態は、フォーク11が進入口78の底部でストライカ79を保持することにより、テールゲート9を車体99に対して閉鎖状態で係止するラッチ状態である。上側凸部11Aのポール12に対面する先端側には、後述するストッパ部12Aと当接可能なラッチ面19Aが形成されている。フォーク11の外周縁は、上側凸部11Aの先端から時計方向に円弧状に延びる湾曲部11Dとされている。湾曲部11Dの途中には、ハーフラッチ面19Bが段状に形成されている。
ポール12は、進入口78の右側に凸設された揺動軸14Bに揺動可能に支持されている。そして、ポール12は、図示しない捩りコイルバネにより、揺動軸14B回りで時計方向に揺動するように付勢されている。
ポール12の進入口78側に位置する部位は、フォーク11の上側凸部11Aに向けて突出するように形成され、その先端側がストッパ部12Aとされている。ストッパ部12Aは、フォーク11が進入口78の底部でストライカ79を係止した状態において、上側凸部11Aのラッチ面19Aに当接することにより、フォーク11を反時計方向に揺動させないように固定して、テールゲート9をラッチ状態とする。なお、説明は簡略するが、ストッパ部12Aは、フォーク11が進入口78の底部の手前でストライカ79を係止した状態において、ハーフラッチ面19Bに当接することにより、テールゲート9をハーフラッチ状態とする。
ポール12の揺動軸14Bより上方に位置する部位は、ストッパ部12Aと分岐しつつ、第1ケース71及び第2ケース72の下面に向けて突出するように形成され、その先端側が被当接部12Bとされている。被当接部12Bは、詳細は後述するが、切替レバー51の一端である当接部51Bが当接することにより、反時計方向に押されて変位する。
図3に示すように、被当接部12Bが反時計方向に変位すれば、ポール12は、捩りコイルバネの付勢力に抗しつつ、揺動軸14B回りで反時計方向に揺動する。この際、ストッパ部12Aがフォーク11のラッチ面19Aから離反するので、ポール12がフォーク11を開放する。このため、フォーク11が捩りコイルバネの付勢力により揺動軸14A回りで反時計方向に揺動して、ストライカ79を進入口78から離脱する方向に変位させる。その結果、フォーク11は、進入口78内においてストライカ79を保持しない状態に切り替わる。図3に示す状態がテールゲート9を車体99に対して閉鎖状態で係止するアンラッチ状態である。この際、テールゲート9は、完全に閉じた状態から少し開いた状態に変位する。
逆に、ストライカ79が進入口78内に進入する場合には、フォーク11及びポール12が上述の動作とは逆に動作する。そして、図2に示すように、ストライカ79が進入口78の底部まで進入すれば、フォーク11は、元の状態まで揺動し、ストッパ部12Aがラッチ面19Aに当接する。これにより、テールゲート9は、ラッチ状態に戻る。
図2に示すように、電動モータ81は、収容室71A内の略中央に配設されている。電動モータ81の回転軸には、ウォームギヤ82Aが一体回転可能に固定されている。電動モータ81には、電気配線91、92の一端側が電気的に接続されている。また、電気配線91、92の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子91A、92Aとされている。電動モータ81は、ワイヤハーネス4及び電気配線91、92を介して、外部のコントローラ3から給電される。電気配線91、92は、本発明の「第2電気配線」の一例である。
切替手段50は、収容室71A内の右側に収容されている。切替手段50は、切替レバー51と、ギヤ機構82とを有する。
切替レバー51は、上方に扇型歯車82Dが形成され、中央に軸穴51Aが形成され、下方に当接部51Bが形成された細長い板形状とされている。
軸穴51Aは、第1ケース71の内側から前方(図2における紙面手前側)に向けて凸設された揺動軸72Cに挿通されている。これにより、切替レバー51は、揺動軸72C回りで揺動可能となっている。図2は、非動作時の切替レバー51を示している。また、図3は、最大に揺動した状態の切替レバー51を示している。
図2に示すように、当接部51Bは、第1ケース71及び第2ケース72の下面側に形成された当接部用開口72Dよりも下方に突出し、被当接部12Bの左側に延在している。
扇型歯車82Dの上方、すなわち、収容室71Aの上方右側には、小径ギヤ82C及びウォームホイール82Bが配設されている。前方に位置する小径ギヤ82Cと後方(図2における紙面奥側)に位置するウォームホイール82Bとは同軸の一体成形品である。小径ギヤ82C及びウォームホイール82Bは、第1ケース71の内側から前方に向けて凸設された回転軸75によって、回転可能に支持されている。小径ギヤ82Cは、扇型歯車82Dと噛み合っている。一方、ウォームホイール82Bは、ウォームギヤ82Aと噛み合っている。
ウォームホイール82Bの後面側には、リターンスプリング83が配設されている。リターンスプリング83の一端は、第1ケース71からウォームホイール82Bの後面側に向けて凸設された第1ケース側係止部83Aに係止されている。他方、リターンスプリング83の他端は、ウォームホイール82Bの後面側から第1ケース71に向けて凸設されたウォームホイール側係止部83Bに係止されている。このため、ウォームホイール82Bは、リターンスプリング83により時計方向に回転するように付勢されている。
ウォームギヤ82Aと、ウォームホイール82Bと、小径ギヤ82Cと、扇型歯車82Dと、リターンスプリング83とを有してギヤ機構82が構成されている。そして、電動モータ81と、ギヤ機構82とは、後述する通り、切替レバー51を図2に示す非動作の状態と、図3に示す最大に揺動した状態との間で往復動作させる。
図1及び図4に示すように、テールゲート9においてドアロック装置1の上方には、テールゲート9を開操作するためのハンドル8が設けられている。ハンドル8の後端部は、テールゲート9の外部に露出している。ハンドル8の前方は、テールゲート9の内側に延在し、テールゲート9の内側に設けられた図示しない支持部材に回動可能に支持されている。ハンドル8の前端部には、金属棒材が曲げ加工されてなる連結部材6の上端側が連結されている。連結部材6は、第2ケース72に向かって下方に延びている。
図1、図2及び図4に示すように、伝達部材100は、第2ケース72の前面側から収容室71A内に挿通された状態で第2ケース72に回転可能に支持された円柱軸体である。伝達部材100における第2ケース72の前面側に突出する前端には、細長板形状の入力部101が形成されている。入力部101は、伝達部材100から右斜め上方に離れるように突出している。入力部101の先端部には、連結部材6の下端側が連結されている(図2では、入力部101は紙面手前側に位置する)。その一方、伝達部材100における収容室71A内に突出する後端には、細長板形状の出力部102が形成されている。出力部102は、伝達部材100から左斜め下方に離れるように突出している。
図2に示すように、マイクロスイッチ87、88、89は、非防水型の安価な規格品である。マイクロスイッチ87は、収容室71A内の左側上方に配設されて、出力部102と隣り合っている。マイクロスイッチ88は、収容室71A内におけるマイクロスイッチ87の下方に配設されている。マイクロスイッチ89は、収容室71Aの下方、かつフォーク11の湾曲部11Dの上方に配設されている。
マイクロスイッチ87は、スイッチ本体87Bと、スイッチ本体87Bに変位可能に設けられたレバー形状の可動部87Aとを有する。スイッチ本体87Bには、電気配線95、96の一端側が電気的に接続されている。電気配線95の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子95Aとされている。電気配線96の他端側は、後述するマイクロスイッチ88を介して、電気配線97の一端側と電気的に接続されている。電気配線97の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子97Aとされている。
ハンドル8が初期の閉鎖位置(図1及び図4に示す位置)にある場合、出力部102は可動部87Aに対して右方に離反している。この場合、可動部87Aの不変位によって、スイッチ本体87Bが電気配線95、96を電気的に遮断している。そして、ユーザがハンドル8を図1等に示す初期の閉鎖位置から図5に示す開放位置まで押し上げると、連結部材6が下降して、入力部101と伝達部材100と出力部102とが反時計周りに一体に回動する。そうすると、出力部102が可動部87Aを押して、可動部87Aが変位し、スイッチ本体87Bが電気配線95、96を電気的に接続する。その結果、マイクロスイッチ87は、ハンドル8が開放位置に変位したという情報、すなわち、ドア開放情報を検知する。ドア開放情報は、電気配線95、96、97及びワイヤハーネス4を介して、コントローラ3に伝達される。マイクロスイッチ87は、本発明の「主スイッチ」の一例である。電気配線95、96、97は、本発明の「第1電気配線」である。
マイクロスイッチ89は、スイッチ本体89Bと、スイッチ本体89Bに変位可能に設けられたレバー形状の可動部89Aとを有する。スイッチ本体89Bには、電気配線93、94の一端側が電気的に接続されている。電気配線93、94の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子93A、94Aとされている。
フォーク11が図2に示す状態となっている場合、湾曲部11Dが可動部89Aを押して変位させている。この場合、可動部89Aの変位によって、スイッチ本体89Bが電気配線93、94を電気的に接続している。そして、図3に示すように、フォーク11が揺動軸14A回りで反時計方向に揺動すれば、可動部89Aが湾曲部11Dから離れて不変位の状態に戻る。そうすると、可動部89Aの不変位によって、スイッチ本体89Bが電気配線93、94を電気的に遮断する。その結果、マイクロスイッチ89は、フォーク11が揺動したことを検知する。その情報は、電気配線93、94及びワイヤハーネス4を介して、コントローラ3に伝達される。
図2及び図6に示すように、マイクロスイッチ88は、スイッチ本体88Bと、スイッチ本体88Bに変位可能に設けられたレバー形状の可動部88Aとを有する。図6に示すように、スイッチ本体88Bには、電気配線96の他端側と、電気配線97の一端側とが電気的に接続されている。
図6(a)及び(b)に示すように、可動部88Aの前端はスイッチ本体88Bの前端側角部に揺動可能に支持されている。これにより、可動部88Aの後端は、スイッチ本体88Bの後端側角部に対して接近又は離反するように変位可能となっている。図6(a)は、不変位の状態の可動部88Aを示している。この状態では、スイッチ本体88Bは、電気配線96、97を電気的に接続している。その一方、図6(b)は、変位した可動部88Aを示している。可動部88Aの変位により、スイッチ本体88Bは、電気配線96、97を電気的に遮断する。マイクロスイッチ88は、本発明の「副スイッチ」の一例である。
図2及び図6に示すように、収容室71Aには、前後方向に延びる略柱状の支持部221が設けられている。支持部221は、枢軸S1を軸芯とする揺動軸220を支持している。枢軸S1は、テールゲート9の開放方向、すなわち前後方向に直交する方向である上下方向に延びている。
慣性部材200は、収容室71A内におけるマイクロスイッチ88の右方に配設されている。慣性部材200は、揺動軸220に枢軸S1周りに揺動可能に支持されている。本参考例では、慣性部材200は、亜鉛合金のダイキャスト製の肉厚板状部材である。慣性部材200は、樹脂製である場合と比較して、サイズが小さいながら質量が重くなっている。慣性部材200の先端部200Aは、揺動軸220から離れる方向に延びて、マイクロスイッチ88の可動部88Aに接近している。
図2に示すように、支持部221と慣性部材200との間には、捩りコイルバネ210が揺動軸220を挿通させた状態で配設されている。図示は省略するが、捩りコイルバネ210の一端は慣性部材200に係止され、捩りコイルバネ210の他端は支持部221に係止されている。これにより、図6(a)に示すように、捩りコイルバネ210は、慣性部材200を枢軸S1周りにD1方向に付勢している。
図2に示すように、収容室71Aには、支持部221の近傍で前後方向に延びる略柱状のストッパ支持部231が設けられている。ストッパ支持部231は、上方に向けて棒状に突出するストッパ230を支持している。平常時、慣性部材200は、図6(a)に示すように、捩りコイルバネ210に付勢されて、先端部200Aがストッパ230に当て止まった状態となっている。この慣性部材200の位置が本発明の初期の平常位置である。慣性部材200が平常位置にある場合、先端部200Aは可動部88Aの前端の近傍に位置しつつ、可動部88Aから離反している。
捩りコイルバネ210の付勢力と慣性部材200の質量とは、図6(b)に示すように、予め設定された値を超える慣性力F1が慣性部材200に作用することにより、慣性部材200が枢軸S1周りに初期の平常位置からD1方向とは逆方向に、すなわち、車体99の後方に揺動するように設定されている。ここで、予め設定された値とは、車両に対する衝突等によりテールゲート2や車体99が車外から受ける衝撃F0に対応して適宜決定される。本参考例では、衝撃F0が後方から前方に向かう方向に作用することを想定している。
図6(b)に示す慣性部材200の位置が本発明の非常位置である。慣性部材200が非常位置に揺動することにより、先端部200Aが可動部88Aと当接して、可動部88Aの後端がスイッチ本体88Bの後端側角部に対して接近するように可動部88Aを変位させる。その可動部88Aの変位により、スイッチ本体88Bは、電気配線96、97を電気的に遮断する。
このような構成である参考例1のドアロック装置1では、ハンドル8が図1及び図4に示す閉鎖位置にある場合において、ユーザがテールゲート9を開くためにハンドル8を開操作すると、下記のようにして、切替手段50が自動によりロック装置本体70を操作して、テールゲート9をアンラッチ状態とする。
まず、ユーザがテールゲート9を開こうとして、ハンドル8を図5に示す開放位置まで押し上げると、上述したように、その動作が、連結部材6、入力部101及び伝達部材100を介して出力部102に伝達され、出力部102が可動部87Aを押す。その結果、可動部87Aの変位によって、マイクロスイッチ87がドア開放情報を検知し、そのドア開放情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達される。
そうすると、コントローラ3は、ドア開放情報に基づいてドアロック装置1の制御を開始する。具体的には、ワイヤハーネス4及び電気配線91、92を介して、電動モータ81に電力を供給してウォームギヤ82Aを回転させる。これにより、ウォームギヤ82Aと噛合するウォームホイール82Bが反時計方向に回転し、小径ギヤ82Cもウォームホイール82Bと一体に反時計方向に回転する。そして、図3に示すように、小径ギヤ82Cと噛み合う扇型歯車82Dを介して、切替レバー51が揺動軸72C回りで時計方向に揺動し、当接部51B及び被当接部12Bを介して、ポール12に作用する。
その結果、上述の通り、ポール12がフォーク11を開放し、フォーク11が揺動軸14A回りで反時計方向に揺動する。これにより、フォーク11は、進入口78内においてストライカ79を保持しない状態に切り替わり、テールゲート9がアンラッチ状態となる。
この際、フォーク11の反時計方向の揺動により、可動部89Aが不変位の状態に戻って、マイクロスイッチ89のスイッチ本体89Bが電気配線93、94を電気的に遮断する。その情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達されることにより、コントローラ3は、テールゲート9がアンラッチ状態になっていると判断できる。
そして、ユーザがハンドル8を図1及び図4に示す閉鎖位置まで戻すと、その動作が、連結部材6、入力部101及び伝達部材100を介して出力部102に伝達され、出力部102が可動部87Aから離反する。その結果、可動部87Aが不変位の状態に戻って、マイクロスイッチ87がドア開放情報を検知しなくなる。
コントローラ3は、一定の時間、電動モータ81に電力を供給した後、電動モータ81への電力の供給を停止する。これにより、切替レバー51は、リターンスプリング83により時計方向に付勢されたウォームホイール82B及び小径ギヤ82Cに駆動されて、図3に示す最大に揺動した状態から、図2に示す姿勢に戻る。このため、ポール12も逆方向に揺動し、ストッパ部12Aがフォーク11の外周面に付勢されて、いつでもフォーク11を固定可能な状態になる。その後、ユーザがテールゲート9を閉めようとすれば、ストライカ79が進入口78に進入して、フォーク11を逆方向に揺動させるので、フォーク11及びポール12が上述とは逆に動作する。そして、ストライカ79が進入口78の底部まで進入すれば、図2に示すラッチ状態へと戻る。
この際、フォーク11の時計方向の揺動により、可動部89Aが変位して、マイクロスイッチ89のスイッチ本体89Bが電気配線93、94を電気的に接続する。その情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達されることにより、コントローラ3は、テールゲート9がラッチ状態になっていると判断できる。
このドアロック装置1が搭載される車両に対する衝突等が起こった場合、テールゲート9を構成するパネルが変形し、ハンドル8が意に反して開放位置に変位してしまうことや、テールゲート9や車体99が衝撃等を受けることによりハンドル8に慣性力が作用し、ハンドル8が意に反して開放位置に変位してしまうことがある。
この場合、このドアロック装置1では、図6(b)に示すように、車両に対する衝突等により、衝撃F0が後方から前方に向かう方向に作用すると、慣性部材200にも慣性力が作用する。そして、慣性部材200は、予め設定された値を超える慣性力F1が作用することにより、枢軸S1周りにD1方向とは逆方向に揺動する。これにより、慣性部材200は、図6(a)に示す初期の平常位置から、図6(b)に示す非常位置に揺動するので、可動部88Aが変位して、スイッチ本体88Bが電気配線96、97を電気的に遮断する。これにより、マイクロスイッチ87が検知したドア開放情報がコントローラ3に伝達されなくなるので、電動モータ81は、ドア開放情報に関わらず作動不能となる。このため、切替手段50は、ロック装置本体70を操作することができず、テールゲート9がアンラッチ状態に切り替わることがない。その結果、このドアロック装置1は、衝撃等時における意に反するテールゲート9の開放が生じず、乗員の安全を確保できる。
さらに、このドアロック装置1は、加速度センサや計測装置等の代わりに、簡易な慣性部材200及びマイクロスイッチ88を採用しているので、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
したがって、参考例1のドアロック装置1は、製造コストの低廉化を実現しつつ、衝撃等時における意に反するテールゲート9の開放を防止できる。
また、このドアロック装置1は、枢軸S1周りに揺動可能な慣性部材200を捩りコイルバネ210によって付勢する構成により、慣性部材200が平常位置から非常位置に揺動する際の慣性力F1の設定を行い易くなっている。
さらに、このドアロック装置1では、ハンドル8が開放位置(図5に示す位置)に変位したことを検知するマイクロスイッチ87は、ハンドル8の近傍ではなく、防水構成とされた収容室71A内に電動モータ81とともに設けられている。このため、このドアロック装置1は、マイクロスイッチ87を防水構成とする必要が無い。また、電動モータ81及びマイクロスイッチ87〜89は、第1ケース71及び第2ケース72に設けられた1個のコネクタ71Eにより、1系統のワイヤハーネス4を介してコントローラ3と接続可能とされているので、ワイヤハーネスやコネクタの数を削減できる。このような構成によっても、このドアロック装置1は、製造コストの低廉化を実現できる。
また、このドアロック装置1は、車両への搭載作業時、連結部材6と入力部101との係合により、ハンドル8と容易に連結できるとともに、コネクタ71Eとワイヤハーネス4との嵌合により、コントローラ3と容易に接続できる。その結果、このドアロック装置1は、車両への搭載作業の簡素化を実現できる。
さらに、手動式のドアロック装置、すなわち、ハンドルにリンクを介して連結され、スイッチを介さずにユーザのハンドル操作力を利用して動作するドアロック装置を採用する車両に対して、最小限の仕様変更により、電動モータ駆動式であるドアロック装置1を容易に後付けできる。最小限の仕様変更の具体例としては、既存のハンドルを、参考例1のハンドル8としてそのまま利用し、ハンドルに連結されていた既存のリンクを連結部材6に交換して、ハンドル8とドアロック装置1とを連結部材6により連結する構成が挙げられる。この場合、連結部材6を金属丸棒の曲げ加工により製造すれば、ハンドル8とドアロック装置1との距離に応じて、最適な長さの連結部材6を安価に製造できる。その結果、ドアロック装置1が搭載される車両自体の製造コストの低廉化も実現できる。
(参考例2)
図7に示すように、参考例2のドアロック装置2では、参考例1のドアロック装置1における電気配線91を電気配線291、292に変更し、電気配線96、97を電気配線296に変更し、マイクロスイッチ88が電気配線291、292の一端側と電気的に接続するように変更している。参考例2のドアロック装置2のその他の構成は、参考例1のドアロック装置1と同様である。このため、参考例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
ドアロック装置2において、電気配線296の一端側は、マイクロスイッチ87のスイッチ本体87Bに電気的に接続されている。電気配線296の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子296Aとされている。これにより、マイクロスイッチ87が検知したドア開放情報は、電気配線95、296及びワイヤハーネス4を介して、コントローラ3に伝達される。電気配線95、296も、本発明の「第1電気配線」の一例である。
電気配線291、292の一端側は、マイクロスイッチ88のスイッチ本体88Bに電気的に接続されている。電気配線291の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子291Aとされている。電気配線292の他端側は、電動モータ81に電気的に接続されている。電動モータ81は、ワイヤハーネス4及び電気配線291、292、92を介して、コントローラ3から給電される。電気配線291、292、92も、本発明の「第2電気配線」の一例である。
上記構成である参考例2のドアロック装置2では、車両に対する衝突等により、慣性部材200が図6(b)に示す非常位置に揺動すると、可動部88Aが変位して、マイクロスイッチ88が電気配線291、292を電気的に遮断する。これにより、マイクロスイッチ87が検知したドア開放情報に基づいて、コントローラ3が電動モータ81に給電しようとしても、給電経路が断たれるので、電動モータ81は、ドア開放情報に関わらず作動不能となる。このため、切替手段50は、ロック装置本体70を操作することができず、テールゲート9がアンラッチ状態に切り替わることがない。
したがって、参考例2のドアロック装置2も、参考例1のドアロック装置1と同様の作用効果を奏することができる。
(参考例3)
図8に示すように、参考例3のドアロック装置では、参考例1のドアロック装置1におけるマイクロスイッチ88をマイクロスイッチ388に変更している。参考例3のドアロック装置のその他の構成は、参考例1のドアロック装置1と同様である。このため、参考例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
図8(a)及び(b)に示すように、マイクロスイッチ388は、スイッチ本体388Bと、スイッチ本体388Bに変位可能に設けられたレバー形状の可動部388Aとを有する。スイッチ本体388Bには、電気配線96の他端側と、電気配線97の一端側とが電気的に接続されている。
可動部388Aの後端はスイッチ本体388Bの後端側角部に揺動可能に支持されている。これにより、可動部388Aの前端は、スイッチ本体388Bの前端側角部に対して接近又は離反するように変位可能となっている。
図8(a)に示すように、平常時、初期の平常位置にある慣性部材200の先端部200Aが可動部388Aと当接して、可動部388Aの前端がスイッチ本体388Bの前端側角部に対して接近した状態に保持されている。この場合、可動部388Aは不変位の状態となっており、スイッチ本体388Bは、電気配線96、97を電気的に接続している。
その一方、図8(b)に示すように、車両に対する衝突等により、衝撃F0が後方から前方に向かう方向に作用すると、慣性部材200が非常位置に揺動することにより、先端部200Aが可動部388Aから離反した状態となる。そうすると、可動部388Aとスイッチ本体388Bとの間に設けられた図示しない付勢バネに付勢されて、可動部388Aの前端がスイッチ本体388Bの前端側角部に対して離反するように変位する。その可動部388Aの変位により、スイッチ本体388Bは、電気配線96、97を電気的に遮断する。
このようなマイクロスイッチ388を備える参考例3のドアロック装置も、参考例1、2のドアロック装置1、2と同様の作用効果を奏することができる。
(実施例1)
図9に示すように、実施例1のドアロック装置は、連結部材5及び伝達部材300等を介して、キーシリンダ7に連結されている。また、図10及び図11に示すように、このドアロック装置は、ロック部材270を備えている。実施例1のドアロック装置のその他の構成は、参考例1のドアロック装置1と同様である。このため、参考例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
図9に示すように、キーシリンダ7は、ハンドル8の左方に位置するようにテールゲート9に設けられている。キーシリンダ7は本発明の「施錠解錠操作部」の一例である。キーシリンダ7の後端部は、テールゲート9の外部に露出している。キーシリンダ7の前方は、テールゲート9の内側に延在し、テールゲート9の内側に設けられた図示しない支持部材に前後方向を向く軸芯周りに回動可能に支持されている。キーシリンダ7の前端部には、金属棒材が曲げ加工されてなる連結部材5の上端側が連結されている。連結部材5は、連結部材6の左方に位置して、第2ケース72に向かって下方に延びている。
図9及び図10に示すように、伝達部材300は、第2ケース72の前面側から収容室71A内に挿通された状態で第2ケース72に回転可能に支持された円柱軸体である。伝達部材300における第2ケース72の前面側に突出する前端には、細長板形状の入力部301が形成されている。入力部301は、伝達部材300から左方に離れるように突出している。入力部301の先端部には、連結部材5の下端側が連結されている(図10では、入力部301は紙面手前側に位置する)。その一方、図10に示すように、伝達部材300における収容室71A内に突出する後端には、細長板形状の出力部302が形成されている。
キーシリンダ7が解錠位置(図10に示す位置P1)にある場合、出力部302の先端部302Aは、伝達部材300から上方に離れるように突出している。そして、ユーザがキーシリンダ7にキーを挿入して施錠位置(図10に示す位置P2)まで回動させると、連結部材5が上昇して、入力部301と伝達部材300と出力部302とが図10の紙面に向かって反時計周りに一体に揺動する。そうすると、出力部302の先端部302Aは、図11(a)に示す位置から右方に揺動して、図11(b)に示す位置まで変位する。
図10及び図11(a)に示すように、収容室71A内には、前方に向けて略柱状に延びる支持部271が設けられている。支持部271は、枢軸S1と平行に延びる揺動軸272を支持している。
図10に示すように、ロック部材270は、リンクレバー275とロック部277とを有する。リンクレバー275は、一端275Aが慣性部材200の上方に位置し、他端275Bが出力部302の先端部302Aに接近するように延びるレバー形状とされている。リンクレバー275は、その中間部が揺動軸272に揺動可能に支持されている。リンクレバー275と支持部271との間には図示しない付勢部材が配設されている。この付勢部材により、リンクレバー275は、図11(a)に示す位置に保持されている。
図10に示すように、リンクレバー275の一端275Aは、略棒形状のロック部277の上端と連結されている。ロック部277の下端は、慣性部材200の上縁よりも下方に延びている。図10及び図11に示すように、ロック部277は、慣性部材200の先端部200Aに対して前方に位置している。
キーシリンダ7が解錠位置(図10に示す位置P1)にある場合、図11(a)に示すように、出力部302の先端部302Aは、リンクレバー275の他端275Bに対して左方に離間している。この状態では、ロック部277は、慣性部材200の先端部200Aに対して前方に離間しており、先端部200Aに干渉することがない。すなわち、このドアロック装置は、ハンドル8の開操作が有効となる解錠状態になっている。
その一方、キーシリンダ7が施錠位置(図10に示す位置P2)に回動した場合、図11(b)に示すように、出力部302の先端部302Aは、右方に変位し、リンクレバー275の他端275Bに摺接して、他端275Bを前方に押す。これにより、リンクレバー275が揺動軸272周りに揺動し、リンクレバー275の一端275A及びロック部277が後方に変位する。そうすると、慣性部材200の先端部200Aは、ロック部277に押されて、枢軸S1周りにD1方向とは逆方向に揺動し、非常位置に保持される。その結果、可動部88Aが変位したままとなり、スイッチ本体88Bが電気配線96、97を電気的に遮断した状態が維持される。すなわち、このドアロック装置は、ハンドル8の開操作が無効となる施錠状態になる。
そして、ユーザがキーシリンダ7を解錠位置(図10に示す位置P1)に戻すと、出力部302の先端部302Aがリンクレバー275の他端275Bから離反し、図示しない付勢部材によって、リンクレバー275が元の姿勢に復帰する。その結果、慣性部材200が非常位置に保持されなくなって、平常位置に復帰するので、このドアロック装置は、解錠状態に戻る。
こうして、実施例1のドアロック装置も、参考例1〜3のドアロック装置1、2と同様の作用効果を奏することができる。
また、この車両用ドアロック装置は、慣性部材200及びロック部材270により、テールゲート9の施錠解錠を行う機構を簡易化できるので、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
(実施例2)
図12に示すように、実施例2のドアロック装置は、実施例1の出力部302及びロック部材270の代わりに、出力部502及びロック部材570を採用している。実施例2のドアロック装置のその他の構成は、実施例1のドアロック装置と同様である。このため、実施例1のドアロック装置1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
実施例2のドアロック装置では、伝達部材300における収容室71A内に突出する後端に、出力部502が形成されている。出力部502は右方に向かって細長く延びており、その右端にロック部材570が一体に形成されている。
ロック部材570は、出力部502の右端から屈曲して下方に延びる略棒状体である。ロック部材570の下端は、慣性部材200の上端縁と略同じ高さまで延びている。図12では、ロック部材570は、慣性部材200に対して前方に位置している。
キーシリンダ7が解錠位置(図12に示す位置P1)にある場合、出力部502及びロック部材570は、図12に示す姿勢をとっている。この状態では、図13(a)に示すように、ロック部材570の下端は、慣性部材200に対して前方に離間しており、慣性部材200に干渉することがない。すなわち、このドアロック装置は、ハンドル8の開操作が有効となる解錠状態になっている。
その一方、キーシリンダ7が施錠位置(図12に示す位置P2)に回動した場合、出力部502及びロック部材570は、図12に向かって反時計方向に揺動する。そうすると、ロック部材570は、図12に二点鎖線で示す位置まで変位する。その結果、図13(b)に示すように、ロック部材570の下端に続いて上方に延びる傾斜面570A及び垂直面570Bが慣性部材200に対して順次摺接して、慣性部材200を後方に押す。これにより、慣性部材200は、非常位置に揺動したまま保持される。その結果、マイクロスイッチ88の可動部88Aが変位したままとなり、スイッチ本体88Bが電気配線96、97を電気的に遮断する状態が維持される。すなわち、このドアロック装置は、ハンドル8の開操作が無効となる施錠状態になる。
このような構成である実施例2のドアロック装置も、実施例1のドアロック装置と同様の作用効果を奏することができる。また、実施例1のロック部材270と比較して、部品点数を削減できる。
なお、実施例2の変形例として、図14(a)に示すように、ロック部材570の厚みを下端から上端まで同じ厚みに変更する一方、慣性部材200に対して、慣性部材200の上端に続いて下方に延びる傾斜面205A及び垂直面205Bを形成してもよい。
この構成によれば、キーシリンダ7が解錠位置(図12に示す位置P1)にある場合、図14(a)に示すように、ロック部材570の下端は、慣性部材200に対して前方に離間しており、慣性部材200に干渉することがない。その一方、キーシリンダ7が施錠位置(図12に示す位置P2)に回動した場合、図14(b)に示すように、ロック部材470の下端が慣性部材200の傾斜面205A及び垂直面205Bに対して順次摺接して、慣性部材200を後方に押す。これにより、慣性部材200は、非常位置に揺動したまま保持される。
以上において、本発明を参考例1〜3及び実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記参考例1〜3及び実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。