JP5809541B2 - 防曇性樹脂組成物 - Google Patents
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自動車の窓ガラス等の防曇技術としては、ガラスの表面温度を高くする方法が最も一般的に用いられている。すなわち、フロントガラスであればガラス表面に温風を吹きかけ、リアガラスであればガラス内部に埋め込んだヒーターでガラスを加熱している。一方、気温と湿度の高い夏期には、車内を冷房して空気中の湿度を下げ、露点を下げる方法がとられている。
しかし、車両の室内は、乗降のためのドアの開閉や窓の開閉、外気の取り入れ等により車内の温度や湿度を常に制御しておくことは難しい。特に、外気温が低いときや、湿度が高いときに放置してあった車両を、充分暖機しないで走行開始すると、運転開始時に大量の曇りが発生しやすいという問題があった。
しかしながら、これら吸水性の膜の吸水能力は充分でなく、吸水性による防曇性の発現には、さらなる改良が必要であった。また、膜中に水分を蓄えることにより曇りの発生を抑えているため、耐水性の面では劣っており、長期の使用によって、膜が膨張したり、溶解したりしてしまうという問題があった。更に、形成した膜の耐水性の低下によって、膜の強度(硬度)が低いものとなり、その結果、爪などの引っかき傷、又は、窓を拭いた場合の拭き傷などが入り、防曇性が低下するという問題もあった。
加えて、それらの傷により、膜の透明性が低下するという問題もあった。
以下、本発明を詳述する。
上記平均重合度が3500を超えると、塗工する際のレベリング性が低下して、塗膜の表面の凹凸が大きくなる。本発明の水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度の好ましい下限は1700、好ましい上限は3300である。
なお、本明細書において、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料である変性ポリビニルアルコールの平均重合度から求めることができる。また、本明細書において、変性ポリビニルアルコールの平均重合度とは、混合物である変性ポリビニルアルコールにおけるそれぞれの変性ポリビニルアルコールの重合度から求めた平均値を意味する。
上記アセタール化度の好ましい下限は25モル%、好ましい上限は35モル%である。
上記芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%未満であると、耐水性が悪くなり、充分な防曇性を得ることができなくなる。
上記芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合の好ましい下限は90%、好ましい上限は100%である。
また、芳香族環にヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等の置換基を持った芳香族系アルデヒドを用いてもよい。なかでも、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒドが好ましい。
上記水としては特に限定されないが純水等を用いることができる。
本発明の防曇性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、自動車のリアガラス、サイドガラス、フロントガラス、サンルーフ、ルームミラー等の各種ガラス、ペットボトル、そのラベル等に使用される防曇剤等が挙げられる。また、本発明の防曇性樹脂組成物は、各種ガラスの防曇性被覆材にも使用することができる。
本発明の防曇性樹脂組成物を塗工することにより防曇性被覆層を形成する場合、形成される防曇性被覆層の厚みは特に限定されないが、防曇性能を効果的に発現させるため、3〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド120gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度10%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が63モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が22モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度2200、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド163g及びブチルアルデヒド2gからなるアルデヒド計165gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が58モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が30モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が99%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度3300、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gと2−メチルベンズアルデヒド198g及びブチルアルデヒド2gからなるアルデヒド計200gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が52モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が35モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が99%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度800、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド31g及びブチルアルデヒド4gからなるアルデヒド計35gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が82モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が6モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が88%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度2200、ケン化度87モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド30gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度7%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が83モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が5モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度3300、ケン化度86モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gと4−メチルベンズアルデヒド35gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度8%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が83モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が6モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度89モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gと2−メチルベンズアルデヒド29g及びブチルアルデヒド1gからなるアルデヒド計30gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が84モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が5モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が98%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度2000、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド39g及びブチルアルデヒド3gからなるアルデヒド計42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度10%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が79モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が92%であった。
実施例及び比較例で得られた水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(1−1)樹脂シート
水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、3時間乾燥することにより、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートを5×10cmにカットした試料を水1Lに5分間浸漬した後の状態を目視にて観察し、以下の基準で判定した。
水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが5μmとなるように透明なフロートガラス(JIS R 3202、厚み2.5mm、15cm×15cm)上に塗工した後、3時間乾燥することにより、ポリビニルアセタール樹脂層が形成された樹脂層形成ガラスを得た。
得られた樹脂層形成ガラスを、そのまま水1Lに5分間浸漬した後のポリビニルアセタール樹脂層の状態を目視にて観察し、以下の基準で判定した。
また、ポリビニルアセタール樹脂層の厚みを20μmとした樹脂層形成ガラス、及び、ポリビニルアセタール樹脂層の厚みを30μmとした樹脂層形成ガラスについても同様に評価した。
〇 膨潤していた。
△ 一部溶解していた(シート形状又は層形状維持困難)。
× 溶解していた。
「(1)吸湿性」で得られた樹脂シート及び3種の樹脂層形成ガラスについて、JIS K 5600−6−4の鉛筆硬度試験に基づいて表面強度を測定した。なお、「〇」は傷なし、「×」は傷ありを示す。
開口部を有する容器(500cc)に30℃の水450g投入した後、「(1)吸湿性」で得られた樹脂シートが内側となるように開口部に被せて密封し、常温(20℃)に設定した室内に放置した後、低温(0℃)に設定し5秒間放置した。そして、樹脂シートの曇り状態を目視により、以下の基準で評価した。
また、「(1)吸湿性」で得られた樹脂シートに代えて、「(1)吸湿性」で得られた3種の樹脂層形成ガラスを用いた場合についても同様の評価を行った。
〇 大粒の水滴が僅かに見られた。
△ 小さな水滴が多く見られた。
× 全面が白濁したものが見られた。
Claims (2)
- 水溶性ポリビニルアセタール樹脂及び水を含有する防曇性樹脂組成物であって、
平均重合度が1000〜3500、アセタール化度が22〜40モル%及び水酸基量が45〜64モル%であり、かつ、アセタール化された全構成単位のうち、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%以上である
ことを特徴とする防曇性樹脂組成物。 - 請求項1記載の防曇性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする防曇被塗物。
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