JP5809540B2 - 防曇性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
自動車の窓ガラス等の防曇技術としては、ガラスの表面温度を高くする方法が最も一般的に用いられている。すなわち、フロントガラスであればガラス表面に温風を吹きかけ、リアガラスであればガラス内部に埋め込んだヒーターでガラスを加熱している。一方、気温と湿度の高い夏期には、車内を冷房して空気中の湿度を下げ、露点を下げる方法がとられている。
しかし、車両の室内は、乗降のためのドアの開閉や窓の開閉、外気の取り入れ等により車内の温度や湿度を常に制御しておくことは難しい。特に、外気温が低いときや、湿度が高いときに放置してあった車両を、充分暖機しないで走行開始すると、運転開始時に大量の曇りが発生しやすいという問題があった。
しかしながら、これら吸水性の膜の吸水能力は充分でなく、吸水性による防曇性の発現には、さらなる改良が必要であった。また、膜中に水分を蓄えることにより曇りの発生を抑えているため、耐水性の面では劣っており、長期の使用によって、膜が膨張したり、溶解したりしてしまうという問題があった。更に、形成した膜の耐水性の低下によって、膜の強度(硬度)が低いものとなり、その結果、防曇効果が低下させてしまうという問題もあった。
しかしながら、実際には、無機粒子の分散性が悪いと、優れた塗膜表面硬度が得られないといった課題があった。
以下、本発明を詳述する。
以下、平均重合度が100〜800の水溶性ポリビニルアセタール樹脂を「水溶性ポリビニルアセタール樹脂A」、平均重合度が1500〜3500の水溶性ポリビニルアセタール樹脂を「水溶性ポリビニルアセタール樹脂B」ともいう。また、「水溶性ポリビニルアセタール樹脂A」と「水溶性ポリビニルアセタール樹脂B」とを特に区別する必要がない場合は、単に「水溶性ポリビニルアセタール樹脂」という。
上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aの平均重合度の好ましい下限は100、好ましい上限は650である。
なお、本明細書において、水溶性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料であるポリビニルアルコールの平均重合度から求めることができる。
上記平均重合度が3500を超えると、アセタール化が困難となる。
上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂Bの平均重合度の好ましい下限は1500、好ましい上限は3300である。
なお、上記混合後の重合度は、上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aの平均重合度、及び、水溶性ポリビニルアセタール樹脂Bの平均重合度と、その混合比率とから算出することができる。
なお、本発明では、上記水溶性ポリビニルアセタール樹脂A及び水溶性ポリビニルアセタール樹脂Bの両方が上記水酸基量、アセタール化度及び芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合を満たす必要がある。
上記アセタール化度の好ましい下限は5モル%、好ましい上限は15モル%である。
上記芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%未満であると、耐水性が悪くなり、充分な防曇性を得ることができなくなる
上記芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合の好ましい下限は90%、好ましい上限は100%である。
また、芳香族環にヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等の置換基を持った芳香族系アルデヒドを用いてもよい。なかでも、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒドが好ましい。
上記水としては特に限定されないが純水等を用いることができる。
本発明の防曇性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、自動車のリアガラス、サイドガラス、フロントガラス、サンルーフ、ルームミラー等の各種ガラス、ペットボトル、そのラベル等に使用される防曇剤等が挙げられる。また、本発明の防曇性樹脂組成物は、各種ガラスの防曇性被覆材にも使用することができる。
本発明の防曇性樹脂組成物を塗工することにより防曇性被覆層を形成する場合、形成される防曇性被覆層の厚みは特に限定されないが、防曇性能を効果的に発現させるため、3〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
[水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aの製造]
ポリビニルアルコール(平均重合度200、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド41g及びブチルアルデヒド1gからなるアルデヒド計42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度10%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が78モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が98%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド39gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が79モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が7モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
水溶性ポリビニルアセタール樹脂A1水溶液と水溶性ポリビニルアセタール樹脂B1水溶液との重量比が20:80になるように両者を添加した後、一般的な撹拌装置を用いて混合することにより、水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液を得た。
[水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aの製造]
ポリビニルアルコール(平均重合度650、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド40g及びブチルアルデヒド2gからなるアルデヒド計42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が78モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が95%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度2200、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gと2−メチルベンズアルデヒド40g及びブチルアルデヒド2gからなるアルデヒド計42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が78モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が95%であった。
水溶性ポリビニルアセタール樹脂A2水溶液と水溶性ポリビニルアセタール樹脂B2水溶液との重量比が15:85になるように両者を添加した後、一般的な撹拌装置を用いて混合することにより、水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液を得た。
[水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aの製造]
ポリビニルアルコール(平均重合度400、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度8%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が77モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度3300、ケン化度87モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド45gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度7%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が76モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が9モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
水溶性ポリビニルアセタール樹脂A3水溶液と水溶性ポリビニルアセタール樹脂B3水溶液とをとの重量比が10:90になるように両者を添加した後、一般的な撹拌装置を用いて混合することにより、水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液を得た。
ポリビニルアルコール(平均重合度800、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gと4−メチルベンズアルデヒド31g及びブチルアルデヒド4gからなるアルデヒド計35gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度7%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が80モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が6モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が88%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度2200、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド40g及びブチルアルデヒド2gからなるアルデヒド計42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度7%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が78モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が95%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度3300、ケン化度87モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gとベンズアルデヒド44g及びブチルアルデヒド1gからなるアルデヒド計45gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度9%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が77モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が9モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が98%であった。
ポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度88モル%)350gを含有する水溶液3000gに35重量%の塩酸170gと2−メチルベンズアルデヒド42gを添加し、液温を10℃に保持しながら5時間アセタール化反応を行い、スポンジ状の反応沈殿物スラリーを得た。このスラリーを水洗中和して塩酸触媒及び未反応アルデヒドを除去した後、乾燥して樹脂沈殿物を得た。この樹脂を水/イソプロピルアルコール(アルコール系溶剤)が、60/40の混合溶剤に溶解して濃度10%の水溶性アセタール樹脂溶液を得た。
得られた溶液中の水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量が77モル%、アセタール化度(全アセタール化度)が8モル%、及び、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が100%であった。
実施例及び比較例で得られた水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(1−1)無機粉末含有樹脂シート
得られた水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液10重量部、無機粉末(コロイダルシリカ、平均粒子径500μm)100重量部、及び水90重量部を混合した後、ビーズミル(アイメックス社製、レディーミル)を用いて180分間撹拌することにより、無機粉末分散液を作製した。
得られた無機粉末分散液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、3時間乾燥することにより、無機粉末含有樹脂シートを得た。
得られた無機粉末含有樹脂シートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートを5×10cmにカットした試料を水1Lに5分間浸漬した後の状態を目視にて観察し、以下の基準で判定した。
得られた水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液10重量部、無機粉末(コロイダルシリカ、平均粒子径500μm)100重量部、及び水90重量部を混合した後、ビーズミル(アイメックス社製、レディーミル)を用いて180分間撹拌することにより、無機粉末分散液を作製した。
得られた無機粉末分散液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが5μmとなるように透明なフロートガラス(JIS R 3202、厚み2.5mm、15cm×15cm)上に塗工した後、3時間乾燥することにより、無機粉末含有樹脂層が形成された無機粉末含有樹脂層形成ガラスを得た。
得られた無機粉末含有樹脂層形成ガラスを水1Lに5分間浸漬した後の状態を目視にて観察し、以下の基準で判定した。
また、無機粉末含有樹脂層の厚みを20μmとした無機粉末含有樹脂層形成ガラス、及び、無機粉末含有樹脂層の厚みを30μmとした無機粉末含有樹脂層形成ガラスについても同様に評価した。
〇 膨潤していた。
△ 一部溶解していた(シート形状維持困難)。
× 溶解していた。
得られた水溶性ポリビニルアセタール樹脂水溶液10重量部、無機粉末(コロイダルシリカ、平均粒子径500μm)100重量部、及び水90重量部を混合した後、ビーズミル(アイメックス社製、レディーミル)を用いて180分間撹拌することにより、無機粉末分散液を作製した。
得られた無機粉末分散液について、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、平均分散径を測定した。なお、測定された平均分散径が500μmに近いほど、分散性に優れていることを示す。
「(1)吸湿性」で得られた無機粉末含有樹脂シート及び3種の無機粉末含有樹脂層形成ガラスについて、JIS K 5600−6−4の鉛筆硬度試験に基づいて表面強度を測定した。なお、「〇」は傷なし、「×」は傷ありを示す。
開口部を有する容器(500cc)に30℃の水450g投入した後、「(1)吸湿性」で得られた無機粉末含有樹脂シートが内側となるように開口部に被せて密封し、常温(20℃)に設定した室内に放置した後、低温(0℃)に設定し5秒間放置した。そして、無機粉末含有樹脂シートの曇り状態を目視により、以下の基準で評価した。
また、「(1)吸湿性」で得られた無機粉末含有樹脂シートに代えて、「(1)吸湿性」で得られた3種の無機粉末含有樹脂層形成ガラスを用いた場合についても同様の評価を行った。
〇 大粒の水滴が僅かに見られた。
△ 小さな水滴が多く見られた。
× 全面が白濁したものが見られた。
Claims (2)
- 水溶性ポリビニルアセタール樹脂及び水を含有する防曇性樹脂組成物であって、
前記水溶性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が100〜800の水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aと、平均重合度が1500〜3500の水溶性ポリビニルアセタール樹脂Bとの混合水溶性ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記混合水溶性ポリビニルアセタール樹脂における水溶性ポリビニルアセタール樹脂Aと水溶性ポリビニルアセタール樹脂Bとの比率は、0.2:9.8〜6:4であり、
前記水溶性ポリビニルアセタール樹脂A及び水溶性ポリビニルアセタール樹脂Bは、水酸基量が65〜80モル%及びアセタール化度が5〜20モル%であり、かつ、アセタール化された全構成単位のうち、芳香族アルデヒドによってアセタール化された構成単位の割合が90%以上である
ことを特徴とする防曇性樹脂組成物。 - 請求項1記載の防曇性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする防曇被塗物。
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