JP5809394B2 - 印刷用塗工シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、未焼成の貝殻の湿式粉砕処理時に分散剤を逐次分割添加する貝殻粉砕物の製造方法に関するものであり、詳しくはシート状基材上の片面あるいは両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工してなる印刷用塗工シートにおいて、該塗工液に該製造方法によって得られた貝殻粉砕物を含む印刷用塗工シートに関するものであり、更に詳しくは貝殻粉砕物がホタテ貝殻粉砕物である印刷用塗工シートに関するものである。
貝殻は石灰石以外の炭酸カルシウムの原料として用いられている。石灰石が有限な化石鉱物であるのに対し、貝殻は食用残渣として多量に発生している。貝殻は従来、天然のカルシウム源として各種食品のカルシウム強化剤や品質改良剤として使用されている他、農業用土壌改良剤などとして利用されているが、その他の有効な利用方法がない。その結果、仮置き蓄積量が増加し、産業廃棄物として処理されるものも多い。当然、印刷用塗工シートにも用いられていない。有効利用が進んでいない理由として、貝殻は石灰石と比べて付着物や水産物特有の臭気があること、タンパク質など不純物を含むことなどが挙げられる。
貝殻の臭気や不純物を取り除き、カルシウム源として有効利用するために、熱エネルギーを掛けて焼成する方法などが用いられているが、そのために環境負荷が掛かり、かつ費用も上がってしまう(例えば特許文献1〜2参照)。
一方で、印刷用塗工シートはシート状基材に顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工することによって得られる。顔料成分を含むことで筆記特性が付与される他、白紙光沢、不透明度などが向上し見た目の美しさが増すと共に、インキの受理性、印刷光沢などの印刷適性が向上するため、印刷用塗工シートに顔料成分は欠かせない。
顔料成分として一般的には、カオリンや石灰石などの天然・化石鉱物が用いられ、これらを湿式粉砕処理して得たスラリーが塗工液に用いられる。近年は安価かつ国内自給率の優れる石灰石を原料とした重質炭酸カルシウムの需要が高まっている。
しかしながら石灰石などの天然・化石鉱物を得るには鉱山を採掘する必要がある。採掘により植物などの生態系が失われることから、天然・化石鉱物の利用は生物多様性保全の観点から望ましいことではない。
顔料成分として天然・化石鉱物の他に、軽質炭酸カルシウムや、プラスチック顔料なども用いられている。軽質炭酸カルシウムは、原料として化石鉱物である石灰石を用いることが多く、かつ化学合成によって作られるため、製造時に掛かる環境負荷が大きい。またプラスチック顔料としては、スチレン−アクリル系やスチレン−ブタジエン系など様々な種類があるが、いずれも石油系原料を用いるため、製造時に掛かる環境負荷が大きい他、将来的な原材料の入手容易性に問題を抱えている。
また印刷用塗工シートを作製するには、使用する顔料成分を湿式粉砕処理したスラリーを塗工液に含むことが一般的である。更に湿式粉砕処理時には、顔料成分の再凝集を防いだり、粉砕効率を良くするために分散剤を用いることが一般的である。しかしながらホタテ貝などの貝殻を従来の顔料成分と同じように湿式粉砕処理すると、貝殻に含有するタンパク質が溶出するためかスラリー粘度が上昇し取扱いを難しくする。
すなわち、環境負荷を下げ、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、取扱いが容易な貝殻粉砕物の製造方法、およびそれを用いて天然・化石鉱物の使用量を減らし、環境負荷を下げ、生物多様性を保全し、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、かつ品質の高い印刷用塗工シートは、これまで見出されてはいなかった。
特開2002−186876号公報 特開平11−222796号公報
本発明の目的は、環境負荷を下げ、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、取扱いが容易な貝殻粉砕物の製造方法を提供すること、およびそれを用いて天然・化石鉱物の使用量を減らし、環境負荷を下げ、生物多様性を保全し、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、かつ品質の高い印刷用塗工シートを提供することにある。
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、粉砕に先立って熱エネルギーをかけて焼成することなく未焼成の脱塩処理を施した貝殻を用い、それを湿式粉砕処理する時に分散剤を逐次分割添加する貝殻粉砕物の製造方法を発明するに至った。
更に好ましくは、シート状基材上の片面あるいは両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工してなる印刷用塗工シートにおいて、該塗工液に該製造方法によって得られた貝殻粉砕物を含む印刷用塗工シートを発明するに至った。
更に好ましくは、貝殻粉砕物がホタテ貝殻粉砕物である印刷用塗工シートを発明するに至った。
本発明によれば、環境負荷を下げ、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、取扱いが容易な貝殻粉砕物の製造方法が提供され、およびそれを用いて天然・化石鉱物の使用量を減らし、環境負荷を下げ、生物多様性を保全し、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、かつ品質の高い印刷用塗工シートが提供される。
以下、本発明の貝殻粉砕物の製造方法、およびそれを用いた印刷用塗工シートについて詳細に説明する。本発明の貝殻粉砕物の製造方法は、未焼成の貝殻の湿式粉砕処理時に分散剤を逐次分割添加する貝殻粉砕物の製造方法であり、およびそれを用いた印刷用塗工シートはシート状基材の片面あるいは両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工してなる印刷用塗工シートにおいて、該塗工液に該貝殻粉砕物を含む印刷用塗工シートに関するものであり、更に詳しくは貝殻粉砕物がホタテ貝殻粉砕物である印刷用塗工シートに関するものである。
本発明に用いられる貝殻としては、ホタテ貝、カキ、ホッキ貝、アサリ、ハマグリ、アワビ、サザエ、ムール貝、アコヤ貝、シジミなどであるが、印刷用塗工シートの天然・化石鉱物の使用量を減らし、環境負荷を下げ、生物多様性を保全し、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献する品質の高い貝殻粉砕物を得るためには、北海道や青森県などで食用残渣として多量にまとまって発生するために入手が容易であり、かつ貝殻自体の白色度が比較的高いホタテ貝殻であることが好ましい。
本発明の貝殻の処理方法は特に制限されるものではないが、粉砕に先立って熱エネルギーを掛けて焼成すると、そのために環境負荷が掛かるので、焼成することなく、例えば雨ざらしおよび水洗いなどで脱塩処理を施した後、乾式粉砕で平均粒子径100μm以下10μm以上に粉砕したものを、湿式粉砕処理で平均粒子径0.1μm以上10μm以下、好ましくは平均粒子径0.1μm以上2μm未満に粉砕したスラリーとして用いる。なお、本発明における平均粒子径の値は、水分散スラリーにしたものをMICROTRAC 3000II(商品名、日機装社製、レーザー式粒度分布測定計)を用いて測定したものである。
本発明に用いられる貝殻粉砕物の粒子径を制御する場合、その方法は制限されるものではないが、制御し易さの点で、まず、ローラーミルなどで乾式粉砕処理して平均粒子径を100μm以下10μm以上とした後、湿式粉砕処理するのが好ましい。湿式粉砕処理方法も制限されるものではないが、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミルなどの湿式媒体攪拌式粉砕機を用いるのが好ましい。これらはスラリー中の粒子を、例えばビーズのような粉砕媒体を用いて微粉砕する湿式粉砕機である。
本発明に用いられる貝殻を湿式粉砕処理する場合、その溶媒および分散剤は制限されるものではないが、経済的特性および環境負荷を考慮して、溶媒として水、分散剤としては鉱物の分散に一般的に用いられている分散剤を用いることが好ましい。本発明に用いる分散剤の具体例としては、ポリアクリル酸塩類、アクリル酸−マレイン酸共重合体塩、オレフィン−マレイン酸共重合体塩、ポリビニルアルコール類、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物類、クレゾールスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、リグニンスルホン酸塩類、ポリエチレングリコールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、脂肪酸アルカノールアミド類、アミンオキシド類、ヘキサメタ燐酸などの縮合燐酸塩類、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体類などが挙げられる。塩としては、ナトリウムなどのアルカリ金属、アンモニアなどの1価のカチオンが挙げられる。これらの中で、本発明においてはポリアクリル酸塩類が好ましい。本発明に用いる分散剤は、単一種での使用、あるいは他種の界面活性剤などとの併用でも良い。複数種の分散剤を用いる場合は、逐次分割添加毎に異なった種類または組み合わせで分散剤を用いても良い。
本発明に用いられる貝殻を湿式粉砕処理する場合に用いる分散剤は、逐次分割添加することが好ましい。作業効率を考慮すると、粉砕処理前に粉砕処理に必要とされる分散剤を一度にまとめて添加する方が良いが、ホタテ貝などの貝殻を粉砕する場合、粉砕が進むにつれて湿式粉砕処理物の粘度が上昇する。粘度の上昇は貝殻に含まれるタンパク質成分が溶出するためと考えられるが、湿式粉砕処理において粘度が上昇すると粉砕負荷が大きくなり、過粉砕が進行して更に粘度が上昇し、更には粉砕できなくなり、結果的に粉砕処理物を回収できなくなる恐れがある。よって、本発明に用いられる貝殻の湿式粉砕処理中に分散剤を逐次分割添加することで、湿式粉砕処理時の粘度上昇を抑制し、スラリーの取扱い容易性を高めることが可能となる。
湿式粉砕処理において、分散剤を逐次分割添加する具体例としては、乾式粉砕にて平均粒子径100μm以下10μm以上に粉砕した貝殻を、それに対して0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%の分散剤と共に湿式粉砕機にて固形分質量濃度が60〜90質量%、より好ましくは65〜75質量%で水中にて一次粉砕する。この湿式一次粉砕処理物の平均粒子径が2〜5μm、より好ましくは3μm近辺となった時点で更に分散剤を貝殻粉砕物に対して0.03〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%添加して、平均粒子径が1〜3μmになるまで粉砕を進める(二次粉砕)。更に、平均粒子径が細かいものや、より平均粒子径が同等でも大粒径の粉砕物の比率を低下させるなどの目的で湿式粉砕を進めるのであれば、湿式粉砕処理物の平均粒子径が1〜3μm、より好ましくは1.5μm近辺となった時点で分散剤を貝殻粉砕物に対して0.01〜1質量%、より好ましくは0.03〜0.3質量%添加して平均粒子径が1μm近辺まで粉砕を進める(三次粉砕)。同様の目的で、更に湿式粉砕を進めるのであれば、湿式粉砕処理物の平均粒子径が1μm近辺となった時点で分散剤を貝殻粉砕物に対して0.01〜0.3質量%、より好ましくは0.03〜0.3質量%添加して湿式粉砕する(四次粉砕)。
以上は、一例であって、分散剤の添加回数やそれぞれの添加量、更には湿式粉砕機の種類や、分散メディアを用いる場合はその材質や粒径なども適宜変更しても良い。しかし、湿式粉砕におけるトータルの分散剤量は添加回数に関わりなく0.2〜3質量%程度であることが好ましい。また、分散メディアの違いを包含する複数種の湿式粉砕機を用いる場合には、貝殻粉砕物が一定粒子径範囲になるまで1種類の湿式粉砕機にて複数回循環させてから別の湿式粉砕機にて細粒化させても良いし、複数の湿式粉砕機を繋げて細粒化させても良い。特に後者の方法では、貝殻粉砕物の一部、例えば粗粒分のみを上流の湿式粉砕機に戻して粉砕しても良い。
本発明に用いられる貝殻を粉砕処理する場合、平均粒子径を0.1μm未満とすることは、粉砕時間が掛かる上、粉砕に要するエネルギーが大きくなるため、経済的また環境的に好ましくない。平均粒子径が10μmより大きい場合、顔料成分の沈降が著しく速く、また塗工液の保水性にも劣るため、基材上に塗工液を塗工することによって形成される塗工層を均一に設けることが難しくなるなどの欠点が生じる。更に、平均粒子径が10μm以下であっても、2.0μmを超える場合は、白紙光沢、印刷光沢などが劣る場合があり、2.0μm未満であることが望ましい。
本発明に用いられる貝殻粉砕物の配合量は制限されるものではない。少量でも加えることで本発明の、天然・化石鉱物の使用量を減らし、環境負荷を下げ、生物多様性を保全し、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、かつ品質の高い印刷用塗工シートを得ることができるが、好ましくは塗工液の全顔料成分に対して20質量%以上とすると効果が確認し易く、更に好ましくは35質量%以上とすると効果が顕著である。当然、顔料成分が全て貝殻粉砕物であっても良い。これらの条件を満たすことで向上する印刷用塗工シートの品質は、印刷用塗工シートの光沢、不透明度、インキ受理性、印刷光沢などである。
本発明に用いられる貝殻粉砕物と併用される顔料成分は制限されるものではない。例えば各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、天然シリカなどの精製した天然採掘鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト、二酸化チタン、合成シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、プラスチック顔料などが挙げられる。これらを単独で貝殻粉砕物と併用しても構わないし、複数種と貝殻粉砕物を併用しても構わない。勿論これら顔料成分の複合合成顔料なども含まれる。
本発明における塗工液の塗工量は制限されるものではないが、好ましくは5g/m以上塗工することによってシート状基材を十分に被覆し、美観が向上し、高い印刷適性を有した印刷用塗工シートを作製することが可能となる。
本発明における塗工液を基材上に塗工することによって形成される塗工層は多層で構成されていても良い。本発明で規定する塗工液を基材上に塗工することによって形成される塗工層は最上層になくても良く、何処にあっても良い。多層の中の少なくとも1層が本発明で規定される塗工液を塗工することによって形成される塗工層であれば良い。各塗工層の塗工量についても何ら制限されるものではない。
本発明に用いられる印刷用塗工シートは、湿式電子写真用記録シート、乾式電子写真用記録シート、オフセット印刷用シート、凸版印刷用シート、凹版印刷用シート、孔版印刷用シート、インクジェット印刷用シート、熱転写用シートなどとして、各種印刷方式に用いることができる。
本発明において用いられる印刷用塗工シートの基材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたもの、またはその上に樹脂フィルム層を設けたものが使用される。
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミなどの各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。更には、これらの繊維シートの上に樹脂コート層を設ける場合もある。なお、各種填料として貝殻粉砕物を用いることもできる。
その他のシート状基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙、などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂やプラスチック、金属をフィルム状に成形したものも含まれる。
塗工する前のシート状基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
本発明に用いられる接着剤としては何ら制限されるものではなく、例えば、通常のデンプン、酸化デンプン、燐酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプンなどのデンプン類、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン−ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白、卵白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。これを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
本発明に用いられる塗工液は、一般的に塗工シートを作製する上で用いられるものは全て配合して構わない。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などが挙げられる。その他、必要に応じて、分散剤、pH調整剤、潤滑剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤などの各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。必要に応じて他の成分を配合して構わない。
本発明において、塗工液を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、キャストコーターなどの各方式を適宜使用する。
更に、一連の操業で塗工、乾燥された塗工シートは、要求される密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じてカレンダー処理などの各種仕上げ処理が施される。
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各実施例、比較例における印刷用塗工シートの物性評価および顔料スラリー取扱い容易性の評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
1)白紙光沢
JIS P8142に準じて、角度75°−75°反射率で白紙光沢を測定し、以下の基準に従い、3段階で評価した。ただし本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:白紙光沢が23%以上。
○:白紙光沢が20%以上23%未満。
△:白紙光沢が20%未満。
2)不透明度
日本電色工業社製の「SPECTRO COLOR METER MODEL PF−10」で測定し、以下の基準に従い、3段階で評価した。ただし、本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:不透明度の値が91%以上を示す。
○:不透明度の値が90%以上91%未満を示す。
△:不透明度の値が90%未満を示す。
3)インキ受理性
作製した印刷用塗工シートにRI印刷試験機を用いてアマニ油を付着させた後、直ちに藍色の市販オフセットインキ(インキ量0.3cc)を印刷し、マクベス濃度計(シアン)で着肉濃度を測定し、以下の基準に従い、3段階で評価した。ただし、本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:マクベス濃度計の値が0.8以上を示す。
○:マクベス濃度計の値が0.4以上0.8未満を示す。
△:マクベス濃度計の値が0.4未満を示す。
4)印刷光沢
作製した印刷用塗工シートにRI印刷試験機を用いて藍色、紅色、黄色の市販オフセットインキ(インキ量各0.2cc)の重色ベタ印刷を施した後、グロスメーターにて光沢を60°−60°反射率で測定し、以下の基準に従い3段階で評価した。ただし、本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:印刷光沢が17%以上。
○:印刷光沢が14%以上17%未満。
△:印刷光沢が14%未満。
5)環境負荷
作製した印刷用塗工シートの環境負荷を以下の基準に従い3段階で評価した。環境負荷の点からは、◎か○が望ましい。
◎:塗工液の顔料成分固形分100質量部中に含まれる天然・化石鉱物の固形分質量比率が30部未満。
○:塗工液の顔料成分固形分100質量部中に含まれる天然・化石鉱物の固形分質量比率が70部未満。
△:塗工液の顔料成分固形分100質量部中に含まれる天然・化石鉱物の固形分質量比率が70部以上。
6)顔料成分スラリー取扱い容易性
湿式粉砕処理して得られた顔料成分スラリーの取扱い容易性を以下の基準に従い3段階で評価した。ただし、本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:湿式粉砕処理して得られた顔料成分スラリーの粘度をB型粘度計で測定した値が、1000mPa・s未満。
○:湿式粉砕処理して得られた顔料成分スラリーの粘度をB型粘度計で測定した値が、3000mPa・s未満。
△:湿式粉砕処理して得られた顔料成分スラリーの粘度をB型粘度計で測定した値が、3000mPa・s以上。
シート状基材は以下のような配合で調製し、坪量89g/mの塗工用シート基材を抄造した。ここでの質量部は、全パルプ固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。これにサイズプレスで片面当たり0.30g/mの市販酸化デンプンを付着させ、塗工用シート基材とした。
<シート状基材配合>
LBKP(濾水度440mlcsf) 70質量部
NBKP(濾水度490mlcsf) 30質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(原紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化デンプン 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留り向上剤 0.030質量部
上記のようにして作製した塗工用シート基材に、各実施例、各比較例のようにして調製した塗工液を、ブレードコーターによって塗工速度700m/min、片面当たりの塗工量8.0g/m、両面同時塗工の条件で塗工し、乾燥した。得られた塗工シートを、スーパーカレンダー仕上げ装置を用いてカレンダー処理を施し、印刷用塗工シートを作製した。
(実施例1)
実施例1の塗工液は以下のようにして調製した。一年間屋外で雨ざらしにして脱塩処理し、更に水で洗浄、乾燥したホタテ貝殻を増野製作所社製MSローラーミルで平均粒子径約25μmまで粉砕した。その乾式粉砕物に市販ポリアクリル酸系分散剤(東亞合成社製、アロンT−40)を貝殻粉砕物固形分100質量部に対して固形分質量比率で0.6質量部添加し、固形分質量濃度が70質量%になるように、水で分散し、アイメックス社製湿式ビーズミルで湿式粉砕処理に供した。湿式粉砕処理物の平均粒子径が3μm近辺となった時点で市販ポリアクリル酸系分散剤(東亞合成社製、アロンT−40)を貝殻粉砕物固形分100質量部に対して固形分質量比率で0.2質量部添加した。更に湿式粉砕処理物の平均粒子径が1.5μm近辺となった時点で市販ポリアクリル酸系分散剤(東亞合成社製、アロンT−40)を貝殻粉砕物固形分100質量部に対して固形分質量比率で0.2質量部添加した。更に湿式粉砕処理物の平均粒子径が1μm近辺となった時点で市販ポリアクリル酸系分散剤(東亞合成社製、アロンT−40)を貝殻粉砕物固形分100質量部に対して固形分質量比率で0.2質量部添加し、平均粒子径0.8μmのホタテ貝殻スラリーを得た。このホタテ貝殻スラリー固形分100質量部に対して、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを固形分10質量部、日本合成化学社製ポリビニルアルコールNL−04Lの20%水溶液を固形分4.0質量部添加し、更に市販ステアリン酸カルシウムを固形分0.50質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、塗工液を得た。得られた塗工液を調整水で固形分濃度60質量%にした。この時得られた各評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、ホタテ貝殻スラリーと市販湿式重質炭酸カルシウムスラリー(イメリス ミネラルズ・ジャパン社製、カービタル90)を固形分比率50:50になるように混合し、固形分濃度の調整をし、固形分濃度70質量%の顔料成分スラリーを得た。この顔料成分スラリーを全顔料成分固形分100質量部とした以外は全て実施例1と同様に行った。この時得られた各評価結果を表1に示す。
(実施例3)
ホタテ貝殻をカキの貝殻に変更し、実施例1と同様にして粉砕してカキ貝殻スラリーを得、ホタテ貝殻スラリーをこのカキ貝殻スラリーのみ固形分100質量部に変更した以外は全て実施例1と同様に行った。この時得られた各評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、ホタテ貝殻スラリーを市販湿式重質炭酸カルシウムスラリーのみ固形分100質量部に変更した以外は全て実施例1と同様に行った。この時得られた各評価結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1においてホタテ貝殻の湿式粉砕処理中に市販ポリアクリル酸系分散剤(東亞合成社製、アロンT−40)の追加をせずに粉砕し、スラリー粘度が上昇して取扱いが困難になる前、すなわち平均粒子径1.8μmのホタテ貝殻スラリーを得た以外は、全て実施例1と同様に行った。このとき得られた各評価結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1においてホタテ貝殻の湿式粉砕処理中に市販ポリアクリル酸系分散剤(東亞合成社製、アロンT−40)の追加をせずに粉砕し、平均粒子径が1μmとなるまで粉砕した。本スラリーは粘度が非常に高く、粉砕処理物の回収が困難であった。従って塗工液の顔料スラリーとして供することができず、更に印刷用塗工シートを作製することができず、印刷用塗工シートの物性評価は行えなかった。顔料スラリー取扱い容易性の評価結果のみを表1に示す。
実施例1〜3、比較例1〜3の条件と、得られた評価結果を表1に示す。
Figure 0005809394
表1の結果から明らかなように、未焼成の貝殻の湿式粉砕処理時に分散剤を逐次分割添加することにより、環境負荷を下げ、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献し、取扱いが容易な貝殻粉砕物を得ることができる。更にシート状基材上の片面あるいは両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工してなる印刷用塗工シートにおいて、該塗工液に該貝殻粉砕物を含むことにより、また更に貝殻粉砕物がホタテ貝殻粉砕物とすることにより、天然・化石鉱物の使用量を減らし、環境負荷を下げ、生物多様性を保全し、資源の有効利用を可能とし、循環型社会構築に貢献する品質の高い印刷用塗工シートが提供される。

Claims (1)

  1. 貝殻を、粉砕に先立って熱エネルギーをかけて焼成することなく未焼成の脱塩処理を施し、その後乾式粉砕し、次に、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の範囲になるまで湿式粉砕し、逐次分割添加トータルの分散剤量が貝殻に対して0.2質量%以上3質量%以下であって前記湿式粉砕処理時に分散剤を逐次分割添加して製造される貝殻粉砕物を、シート状基材上の片面あるいは両面に顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工する印刷用塗工シートの製造方法において、前記顔料成分として用いる印刷用塗工シートの製造方法。
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