JP5808604B2 - 塗工装置 - Google Patents

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本発明は、走行する長尺状の基材の下面に塗工バーを用いて塗工液を塗工するバー型塗工装置に関するものである。
従来より、走行する長尺状の基材の下面に、円柱型の塗工バーを当接し、この塗工バーを回転させることにより、基材の下面に塗工液を塗工する「バー型の塗工装置」が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このバー型塗工装置は、従来よりあるグラビア型塗工装置よりも薄く塗工液を塗工できるという利点がある。
特開2004−074147号公報 特開2009−160552号公報
しかし、上記のようなバー型塗工装置において、長尺状の基材の幅方向が大きくなると、その幅方向において均一な塗工厚さで塗工できないという問題点があった。この理由は、基材の幅方向が大きくなると、塗工バーに対し、幅方向に均一な流出量で塗工液を流出できないからである。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、基材の幅方向において均一な塗工厚さで塗工液を塗工できる塗工装置を提供することを目的とする。
本発明は、前後方向に走行される長尺状の基材の下面に塗工液を塗工する塗工装置において、前記基材の下面に回転しながら前記塗工液を塗工するものであって、前記基材の幅方向に、かつ、水平方向に配された円柱型の塗工バーと、前記塗工バーを支持するバー支持部と、前記バー支持部の前部と後部にそれぞれ配された前後一対のヘッド部と、前後一対の前記ヘッド部の幅方向にそれぞれ形成された凹部と、前記各ヘッド部の前記凹部と前記バー支持部に囲まれることによってそれぞれ形成された前後一対の液溜め部と、前記各ヘッド部と前記バー支持部の間に幅方向に沿ってそれぞれ形成され、かつ、前記液溜め部から前記ヘッド部の上部まで延びたスリット状の前後一対の流出路と、を有し、前後一対の前記流出路が前記液溜め部から上に延びた下流出路と、前記下流出路からさらに上に延びた上流出路とからそれぞれ形成され、前記各下流出路の前後方向の間隙が、前記各上流出路の間隙より狭く、前記各上流出路の間隙が、上方ほど広くなるように階段状に形成されている、ことを特徴とする塗工装置である。
本発明によれば、下流出路の前後方向の間隙が、上流出路の間隙よりも狭いため、塗工液の流出量が幅方向で均一となり、塗工厚さも幅方向において均一になる。
本発明の第1の実施形態の塗工装置の要部拡大縦断面図である。 塗工装置の正面図である。 塗工バー付近の拡大説明図である。 塗工バーの拡大側面図である。 第2の実施形態の塗工装置の塗工バー付近の拡大説明図である。 第3の実施形態の塗工装置の正面図である。
以下、本発明の一実施形態のバー型塗工装置10について図面に基づいて説明する。
本発明の第1の実施形態の塗工装置10について、図1〜図4に基づいて説明する。 塗工の対象となる基材1としては、例えば、紙、布帛、樹脂フィルム、金属箔などである。また、基材1の幅寸法としては、2m〜6mである。
(1)塗工装置10の構成
塗工装置10は、基材1の下面に塗工を行う塗工バー12、この塗工バー12を支持するバー支持部14、このバー支持部14の前後に配置された前後一対の前ヘッド部16、後ヘッド部18とを有する。
塗工バー12は、図2に示すように、塗工装置10の基台20から立設された左右一対の支持脚22,24に回動自在で、基材1の幅方向で、かつ、水平方向に支持され、塗工バー12の一端部には、この塗工バー12を所定の回転速度V2で回転させるモータ26が取り付けられている。この塗工バー12は、円柱型であって、詳しくは図4に示すように、金属棒27の表面に断面円形のステンレス製のワイヤー28を螺旋状に巻回して形成されている。塗工バー12の直径は、例えば約10mmである。
塗工の対象となる長尺状の基材1は、塗工バー12の最上端部と当接するように前後方向に走行され、その走行速度をV1とする。そして、この塗工バー12の前方及び後方には、基材1を塗工バー12に押圧するためのガイドロール54,56が設けられている。なお、塗工バー12は、基材1の走行方向と同じ方向に回転させる。すなわち、図1、図3に示すように、塗工バー12を反時計回りの方向に回転させる。
バー支持部14は、板状であって、基台20から左右方向(基材1の幅方向)に立設されている。このバー支持部14の上部は、図1に示すように、上方ほど狭くなるように前後対称の傾斜面60,62を有し、台形状に形成されている。また、バー支持部14の上端部にある受け部58は、塗工バー12の外周面と対応するように凹曲面に形成されている。板状のバー支持部14の前後方向の厚みは、例えば約15mmである。
前ヘッド部16は、バー支持部14の前面にボルト等によって固定されるものであり、前ヘッド部16の前面上部は、前方ほど下方に傾斜している。また、前ヘッド部16の後面には、幅方向に設けられた前凹部30が形成されている。この前凹部30は、図2に示すように、左側から右側にいくほどその容積が次第に小さくなるように前凹部30の底部が傾斜して形成されている。前ヘッド部16をバー支持部14の前面に取り付けた場合に、前凹部30とバー支持部14の前面とによって前液溜部32が形成される。この前液溜部32は、前凹部30と同様に、左側から右側にいくほど容積が小さくなっている。前液溜部32の左側面には塗工液を供給するための前供給口50が開口し、この前供給口50には、圧送ポンプを用いて、塗工液が一定の圧力で供給される。
また、前ヘッド部16をバー支持部14に取り付けた場合に、前液溜部32の上端から前ヘッド部16の上部まで、スリット状の前流出路34が形成される。この前流出路34は、前液溜部32の上端部から上に延びた前下流出路36と、この前下流出路36からさらに上に延びた前上流出路38とから形成されている。前ヘッド部16の後面と板状のバー支持部14とは平行に配されているため、前下流出路36、前上流出路38の間隙は一定の状態で垂直に延びている。
後ヘッド部18は、バー支持部14の後面にボルト等によって固定されるものであり、後ヘッド部18の後面上部は、後方ほど下方に傾斜している。また、後ヘッド部18の前面には、幅方向に設けられた後凹部40が形成されている。この後凹部40も、左側から右側にいくほどその容積が次第に小さくなるように後凹部40の底部が傾斜して形成されている。後ヘッド部18をバー支持部14の後面に取り付けた場合に、バー支持部14の後面と後凹部40とによって後液溜部42が形成される。この後液溜部42も、左側から右側にいくほどその容積が小さくなっている。後液溜部42の左側面にも、後供給口52が開口し、圧送ポンプによって一定の圧力で供給される。
また、後ヘッド部18をバー支持部14に取り付けた場合に、後液溜部42の上端から後ヘッド部18の上部まで、スリット状の後流出路44が形成される。この後流出路44も、後下流出路46と後上流出路48とから形成されている。
(2)前流出路34と後流出路44の構造
次に、基材1の幅方向に設けられた前流出路34と後流出路44の構成について図3に基づいてさらに詳しく説明する。
図3に示すように、前流出路34は、前下流出路36と前上流出路38とから構成され、前下流出路36の間隙をAとし、前上流出路38の間隙をBとした場合に、この間隙Bは間隙Aよりも広く、かつ、階段状に広がっている。
上記の「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、基材1の幅方向の寸法が大きくなった場合には、例えば左側における塗工液の塗工厚さと右側における塗工厚さが均一でない場合がある。この理由は塗工バー12における左側の塗工液の流出量と、右側の塗工液の流出量が異なるからである。それを解決するため、本実施形態では、次の手段を実施している。
その手段は、前液溜部32から前下流出路36に塗工液が流れ込む場合に、この前下流出路36が抵抗となり、図2に示すように、前液溜部32における左側の流出量FL、右側の流出量FR、及び、中央部の流出量FOとが同じになるように設定する。すなわち、前下流出路36の間隙Aが狭いため、塗工液が流れ難くなって抵抗が印加され、前液溜部32の左側、右側、中央部においても、その流出量FL,FR、FOが同じになるように設定する。この前下流出路36の間隙Aの寸法は、幅方向の抵抗が等しくなるようにするため、塗工液の粘度、塗工厚さ、基材1の走行速度V1から決定され、例えば、塗工液の粘度が低いほど間隙Aを狭くする。この決定方法は予め理論的な式を求めてもよく、また、実験によって求めてもよいが、その間隙Aの寸法は、0.1mm〜1.0mm、好ましくは0.3mm〜0.8mmの範囲で設定する。また、前下流出路36の縦方向の長さMも塗工液の粘度、塗工厚さ、基材1の走行速度V1から決定する。抵抗を長く印加したい場合には、長さMを長くする。
ところで、本実施形態では、前液溜部32の容積を左から右に行くほど小さくしている。その理由について説明する。もし、前液溜部32の容積が左右方向において、同じ大きさであると、塗工液が前液溜部32を左側から右側へ流れていく際に、流量の減少により前液溜部32内の流速は右に行くほど次第に小さくなる。そのため、左側にある前供給口50付近の流速に比べると、右側の端での流速は非常に小さくなり、塗工液の滞留による沈殿の恐れがある。そこで、本実施形態では、この塗工液の沈降を防止するために、前液溜部32の容積を左から右に行くほど小さくして、前液溜部32の右側の流速を高め、その沈殿を防止している。
次に、前上流出路38の間隙Bの決定方法について説明する。この前上流出路38の間隙Bは、前下流出路36の間隙Aよりも広く設定する。その理由は、前下流出路36が塗工液の流出に対して抵抗となっているため、この前上流出路38に至ったときにその抵抗が開放され、上方に流れやすくするためである。図3に示すように、前上流出路38の縦方向の長さをLとした場合に、この中で前上流出路38の下縦部分L2は、上記したように塗工液の抵抗が開放される部分である。また、前上流出路38の上縦部分L1は、台形状に傾斜したバー支持部14と塗工バー12と前ヘッド部16とによって囲まれており、単に塗工液が流出するための空間でなく、塗工液が対流するための対流空間の役割も果たしている。本実施形態では、バー支持部14が上部において台形状に傾斜して、塗工バー12の露出部分が大きくなっているため、この対流空間で塗工液が塗工バー12の表面に近づくように流れ、その後にワイヤー28の間に流れ込みやすくなっている。
なお、後流出路44も、前流出路34と前後対称に形成され、同様の作用を有して、基材1の幅方向において塗工液が均一に流出する。
(3)塗工装置10の動作状態
次に、塗工装置10の動作状態について説明する。
まず、塗工装置10は、塗工バー12を回転速度V2で回転させる。V2<V1であり、回転速度V2として例えば700〜800rpmである。
次に、図2に示すように、前液溜部32と後液溜部42の左側面からそれぞれ塗工液を圧送する。この圧送する圧力は、前液溜部32と後液溜部42とが同じ圧力になるようにする。すると、前液溜部32に溜まった塗工液は、前下流出路36を経て前上流出路38に至る。この場合に、上記したように前下流出路36の間隙が狭いため、前液溜部32の左側と右側の流出量が等しくなり、前上流出路38に至る。後液溜部42に溜まった塗工液も同様に後下流出路46を経て後上流出路48に至る。
次に、回転している塗工バー12の上端部に基材1の下面が接触するように、走行速度V1で走行させる。走行速度V1としては、例えば20〜80m/分、特に50m/分である。なお、塗工バー14の回転速度V2と走行速度V1とを比較する場合には、回転速度V2から求まる塗工バー14の外周部の接線速度を用いる。
次に、塗工バー12の下部の前後にそれぞれ溜まった塗工液が、塗工バー12のワイヤー28の間に流れ込み、塗工バー12から基材1の下面に塗工される。この場合の塗工厚さとしては、0.5μm〜1μmである。
次に、この前ヘッド部16と後ヘッド部18から溢れ出た塗工液は、前ヘッド部16と後ヘッド部18の傾斜面を流れ落ちる。
(4)効果
本実施形態によれば、前下流出路36及び後下流出路46の間隙を狭くすることにより、前液溜部32と後液溜部42からの塗工液の流出量に関して、左側と右側が同じとなり、基材1の幅寸法が大きくなってもその下面に塗工液を均一に塗工できる。
また、前液溜部32の容積を左から右側にいくほど小さくして、前液溜部32の右側の流速を高め、右側の塗工液の沈殿を防止している。
さらに、バー支持部14の上部が台形状に形成されているため、前上流出路38及び後上流出路48から流れ出た塗工液が、塗工バー12の下面に流れ易い。
次に、第2の実施形態の塗工装置10について、図5に基づいて説明する。
上記実施形態では、前上流出路38及び後上流出路48は共に、縦方向において同じ間隙であったが、本実施形態では、図5に示すように、階段状に形成され、下の段の前上流出路38の間隙よりも上の段の前上流出路38の間隙を広くしている。後上流出路48についても同様である。
このように、前後上流出路38,48を階段状に広くすることにより、幅方向においてより均一に流出量を調整できる。
次に、第3の実施形態の塗工装置10について、図6に基づいて説明する。
上記実施形態では、前液溜部32及び後液溜部42が、左から右にいくほど容積が小さくなったが、本実施形態では、図6に示すように、前液溜部32と後液溜部42について、中央部に前供給口50と後供給口52を設け、左右にいくほど容積が小さくなるように形成している。
本実施形態であっても、前液溜部32の左側と右側の流速をそれぞれ高め、両側における塗工液の沈殿を防止している。
変更例
次に、上記各実施形態の塗工装置10の変更例について説明する。
(1)第1の変更例
第1の変更例の塗工装置10の特徴は、塗工バー12にある。
上記実施形態では、ワイヤー28を金属棒27に巻回したが、これに代えて金属棒27の表面に螺旋状の溝を形成してもよく、また、平坦な表面を有する金属棒27のままで使用してもよい。
(2)第2の変更例
第2の変更例の塗工装置10の特徴は、塗工バー12の回転方向にある。
上記実施形態では、塗工バー12を、基材1の走行方向と同じ方向に回転させていた。すなわち、図1では塗工バー12を反時計回りの方向に回転させていた。しかし、本変更例では、これに代えて、基材1の走行方向とは反対方向に塗工バー12を回転させる。すなわち、図1の場合には、塗工バー12を時計回りの方向に回転させる。
(3)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10・・・塗工装置、12・・・塗工バー、14・・・バー支持部、16・・・前ヘッド部、18・・・後ヘッド部、27・・・金属棒、28・・・ワイヤー、32・・・前液溜部、34・・・前流出路、36・・・前下流出路、38・・・前上流出路、42・・・後液溜部、44・・・後流出路、46・・・後下流出路、48・・・後上流出路

Claims (9)

  1. 前後方向に走行される長尺状の基材の下面に塗工液を塗工する塗工装置において、
    前記基材の下面に回転しながら前記塗工液を塗工するものであって、前記基材の幅方向に、かつ、水平方向に配された円柱型の塗工バーと、
    前記塗工バーを支持するバー支持部と、
    前記バー支持部の前部と後部にそれぞれ配された前後一対のヘッド部と、
    前後一対の前記ヘッド部の幅方向にそれぞれ形成された凹部と、
    前記各ヘッド部の前記凹部と前記バー支持部に囲まれることによってそれぞれ形成された前後一対の液溜め部と、
    前記各ヘッド部と前記バー支持部の間に幅方向に沿ってそれぞれ形成され、かつ、前記液溜め部から前記ヘッド部の上部まで延びたスリット状の前後一対の流出路と、
    を有し、
    前後一対の前記流出路が前記液溜め部から上に延びた下流出路と、前記下流出路からさらに上に延びた上流出路とからそれぞれ形成され、
    前記各下流出路の前後方向の間隙が、前記各上流出路の間隙より狭く、
    前記各上流出路の間隙が、上方ほど広くなるように階段状に形成されている、
    ことを特徴とする塗工装置。
  2. 前記液溜め部の幅方向において、前記液溜め部の一方から他方に向かって前記液溜め部の容積が次第に小さくなり、
    前記液溜め部の前記一方の側面から前記塗工液の供給を行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
  3. 前記液溜め部の幅方向において、前記液溜め部の中央から両側に向かって前記液溜め部の容積が次第に小さくなり、
    前記液溜め部の中央から前記塗工液の供給を行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
  4. 前記各下流出路の前記間隙が、0.1mm〜1.0mmである、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗工装置。
  5. 前記各上流出路の前記間隙が、1.0mm〜3.0mmである、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗工装置。
  6. 前記基材の走行方向と前記塗工バーの回転方向とが同じ方向であり、かつ、前記基材の走行速度が前記塗工バーの回転速度より早い、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の塗工装置。
  7. 前記塗工バーの表面にワイヤーが螺旋状に巻回されているか、前記塗工バーの表面に溝が螺旋状に刻まれているか、又は、前記塗工バーの表面が平坦である、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の塗工装置。
  8. 前記各下流出路よりも上方に位置する前記バー支持部の前後方向において、前記バー支持部が上方ほど狭くなる、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の塗工装置。
  9. 前記バー支持部の上端部に前記塗工バーの受け部が形成され、
    前記受け部が、前記塗工バーに対応した曲面に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の塗工装置。
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