JP5807870B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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本発明は、粘ちょう物質が皮膚外用剤に与えるベタツキを大幅に緩和し、特に粘ちょう物質が電解質の場合であってもその効果を発揮し、安定的に配合できる皮膚外用剤に関する。
化粧品をはじめとする皮膚外用剤は有効性は勿論求められるが、使用感が悪いと実際の使用が躊躇われ、必要な期間皮膚に塗布されることなく、いくら有効性があっても使用されなければ意味がなく、特に化粧品の場合は長期に渡って使用するものであり、良好な使用感が求められる。
また、電解質は配合すると安定性が悪くなり、分離やクリーミングを起こし、商品価値が低下する。このためいろいろな組合せで安定性を増す努力がなされている。(特許文献1〜3)また、安定化のために増粘剤を配合しても、広義的には電解質の存在によって増粘がない或いは弱い場合があった。
さらには、美白製剤は我が国では化粧品の1つのカテゴリーとしてこの十数年大きく膨らみ、種々の美白剤も開発されてきた。その中で、アルコルビン酸もいろいろな形で利用されていて美白剤の中で重要な役割をもっているがこれも電解質の1つであり安定的に配合することが難しかった。
そのなかでもアルコルビン酸糖誘導体は有効性等が強いので利用価値が高いが、ベタツキが強くより官能面での改良が求められていた。
製剤の中で安定的に配合することは以下の特許文献にその一部を示したが、数多くの試みがなされている。(特許文献4〜11)
粘ちょう物質、特に電解質の粘ちょう物質のベタツキを大幅に緩和した製剤を得ることができていなかった。
特開平09−019632号公報 特開2005−298474号公報 特開2010−006739号公報 特開平10−147512号公報 特開平11−199426号公報 特開2001−199865号公報 特開2000−256173号公報 特開2002−265344号公報 特開2005−120056号公報 特開2006−008709号公報 特開2006−016327号公報
本発明の目的は粘ちょう物質、特にベタツキの強い電解質を安定的に配合し、且つ必要な使用感も得ることにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸と、アルカリゲネス属菌より得られる多糖類を配合すると安定的で、且つベタツキのない使用感を有した粘ちょう物質配合の製剤が得られることがわかった。
以下に詳細に記載する。
本発明では粘ちょう物質とは、皮膚外用剤に配合したときにベタツキ感を生じる物質を指し、グリセリン、ジグリセリン、1,3ブチレングリコール、ペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、マルチトール、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、アルブチン等がある。このほかに粘ちょう物質は電解質に多い。本発明の目的はベタツキ感の緩和であるので、電解質の中でも粘ちょうな電解質が対象になる。
このような物質の1つに、皮膚外用剤で多用されるアスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸誘導体およびその塩等がある。
本発明にかかるアスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸誘導体およびその塩には、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレエート、アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレエート、エチルアスコルビン酸、メチルアスコルビン酸、ブチルアスコルビン酸、アスコルビル硫酸、アスコルビル硫酸ナトリウム、アスコルビル硫酸カリウム、アスコルビル硫酸カルシウム、アスコルビルリン酸、アスコルビルリン酸ナトリウム、アスコルビルリン酸カリウム、アスコルビルリン酸マグネシウム、アスコルビルリン酸カルシウム、アスコルビン酸グリコシド等が例示される。この中から1種以上を選択して用いる。
とくに、アスコルビン酸グリコシド等のアスコルビン酸糖誘導体が特に有効である。
勿論、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸も本発明の電解質として安定性や使用感の改良の効果が得られることは当然である。
これらの粘ちょう物質を1以上配合された皮膚外用剤のベタツキを改良する。粘ちょう物質の配合量は粘ちょう物質の種類、配合目的によって大きく変化するが、0.01〜50%(以下、特に記載のないときは、%は重量%を示す)である。
N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸は、水、油に不溶な物質で、潤沢性に優れ、シルキーな感触の物質で、無機粉体の表面に吸着して、はっ水性を付与し、流動性を向上させるなど表面改質作用もある。以上のような性状から、主として粉体状或いは粉体を固めたメイクアップ化粧料の使用感の改良に用いられていますが、皮膚外用剤では水、油に不溶な物質なので分散性が悪くほとんど利用されていませんでした。
しかしながら、アルカリゲネス属菌より得られる多糖類と組み合わせることによって、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸の分散性が非常によくなり、その結果、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸の持つ潤沢性や感触が皮膚外用剤でも利用できるようになった。
分散性がよくなるだけではなく、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸とアルカリゲネス属菌より得られる多糖類は電解質の影響を受けないため、電解質を配合する皮膚外用剤には特に有効であることがわかった。
さらにアルキル変性水溶性セルロース誘導体を配合することによって使用感の幅が広がり、製剤の粘度があっても、使用感にベタツキのない製剤が得られ、安定性の向上も図れた。
なお、アルカリゲネス属菌より得られる多糖類は特開平05−85925号で水溶性多価アルコールのべたつき感を改良することがすでに知られているが、水溶性多価アルコール以外の物質でのべたつき感の改良にはまったく言及しておらず、また発明者らの確認試験では種々の製剤で、単独でアルカリゲネス属菌より得られる多糖類を利用した場合と、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸との併用した場合ではべたつき感の改良の程度が大きく異なっていた。
まず、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸ですが、構成するアミノ酸としては、リジン、オルニチン、α,γ−ジアミノ酪酸、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸が例示される。
また、長鎖アシル基としては、炭素数10〜22の、飽和又は不飽和の直鎖あるいは分岐鎖脂肪族アシル基が挙げられ、これらは単一鎖長のものであっても混合鎖長のものであってもよい。上記長鎖アシル基としては、具体的には、2−エチルヘキサノイル、カプリロイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、イソステアロイル、オレオイル、ベヘノイル、ココイル、牛脂脂肪酸アシル、硬化牛脂脂肪酸アシル等が挙げられる。
上記長鎖アシル基の塩基性アミノ酸への結合部位は、α位のアミノ基あるいはω位のアミノ基であるが、アルギニン及びヒスチジンにおいては、α位のアミノ基に限定される。
従って、本発明に用いられるN−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸としては、例えば、Nε−2−エチルヘキサノイルリジン、Nε−ラウロイルリジン、Nε−ココイルリジン、Nε−パルミトイルリジン、Nε−イソステアロイルリジン、Nε−硬化牛脂脂肪酸アシルリジン、Nα−カプリロイルリジン、Nα−ラウロイルリジン、Nα−ミリストイルリジン、Nα−オレオイルリジン、Nα−ベヘノイルリジン、Nδ−ココイルオルニチン、Nδ−ステアロイルオルニチン、Nδ−牛脂脂肪酸アシルオルニチン、Nα−2−エチルヘキサノイルオルニチン、Nα−ラウロイルオルニチン、Nα−イソステアロイルオルニチン、Nγ−パルミトイル−α,γ−ジアミノ酪酸、Nα−牛脂脂肪酸アシル−α,γ−ジアミノ酪酸、Nα−カプロイルアルギニン、Nα−ラウロイルアルギニン、Nα−パルミトイルアルギニン、Nα−硬化牛脂脂肪酸アシルアルギニン、Nα−ココイルヒスチジン、Nα−イソステアロイルヒスチジン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。肌へのなじみ感がより好ましいという観点で、Nε−2−エチルヘキサノイルリジン、Nε−ラウロイルリジン、Nε−ココイルリジンが好ましく、Nε−ラウロイルリジンが特に好ましい。
配合量は粘ちょう物質の種類や配合量、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸の種類、製剤の目的、他の配合原料によって大きく異なるが、0.02〜10.0%好ましくは0.1〜5.0%である。
アルカリゲネス属菌より得られる多糖類は、グラム陰性の好気性菌に属する微生物アルカリゲネス属の微生物より産生される。その代表例示菌株はアルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)B−16株で、FERM BP−2015号として寄託されている。
培養するときの炭素源としてはフラクトース、グルコース、シュークロース等の単糖類・少糖類の他に、ヘミセルロース、澱粉、コーンスターチ等の天然高分子及びオリーブ油等の油類が好ましく用いられる。炭素源の他に、有機窒素源及び無機塩類が培地構成成分として使用され、培養は液体培養が好ましく、初発pH4〜10、温度15〜40℃、通常は通気撹拌培養で行われる。。
微生物からの抽出は一般的な方法を用いればよく、また市販品として、伯東株式会社の商品名アルカシーラン、アルカフェイス等があり、利用できる。
配合量は粘ちょう物質の種類や配合量、製剤の目的、他の配合原料によって大きく異なるが、0.0002〜5.0%、好ましくは0.005〜2.0%である。
さらに、アルキル変性水溶性セルロース誘導体を配合すると安定性が増し、べたつき感も増加することがない。
アルキル変性水溶性セルロース誘導体、セルロース系増粘剤、例えばメチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等にアルキル基を導入したものであり、
アルキル基の炭素数は12〜30であり、具体的には、例えば上記セルロースのヒドロキシ基の一部に炭素数8〜30の脂肪酸グリシジルエーテルを付加することにより合成することができる。市販品としては、例えば、NATOROSOL Plus(Aqualon社)、サンジェロース(大同化成工業社)等が挙げられる。
上記の原料以外も必要に応じて配合する。
特に粘ちょう物質にアスコルビン酸類を用いた場合、アルブチンや抗炎症剤も配合するとより美白効果が高まることがわかっており(特願2010−048939)これらを配合することや水溶性高分子、キレート剤等の安定性を向上させる物質も配合可能である。
また、乳化物である場合は界面活性剤を配合することがあり、種々の界面活性剤を配合できるが、モノ脂肪酸グリセリルと、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールと、レシチンを配合すると電解質の影響を受けることがほとんどなく良好なエマルジョンが得られることがわかっている。(特願2010−021088)
このほか、必要に応じて、各種原料を配合し、製剤を作成する。
なお、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸は分散しにくいので、充分な撹拌を加えて製剤を作成する。
以下に実施例を記すがこれに限定されるものではない。数値は重量部を表す。
作成方法はそれぞれ計量し、必要に応じて加熱し、ホモミキサーで分散させた。
Figure 0005807870
Figure 0005807870
Figure 0005807870
なお、
注1)は伯東株式会社製、商品名アルカシーラン
注2)は大同化成工業株式会社製、商品名サンジェロース60L
を用いた。
有効性の評価
実施例1および2、比較例1〜3を女性15名、男性5名に使用してもらいベタツキを以下の基準で評価してもらった。

5:ベタツキ感がまったくない。
4:ベタツキ感が若干ある。
3:ベタツキ感が多少ある。
2:ベタツキ感がある。
1:ベタツキ感がかなりある。
0:ベタツキ感が大いにある。

その評価の平均の結果は
実施例1=4.1
実施例2=4.4
比較例1=1.2
比較例2=1.1
比較例3=1.5
なお、比較例2は粉末が製剤表面に浮遊しており、Nε−ラウロイルリジンがまったく分散していないことがわかった。
実施例3〜10に関しても、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸か、アルカリゲネス属菌より得られる多糖類か、あるいはそのいずれも配合しなかった場合に比較して、ベタツキ感は大幅に改良されたことおよび製剤の必要な粘性、安定性を確認した。
このように、本発明は、粘ちょう物質が皮膚外用剤に与えるベタツキを大幅に緩和し、特に粘ちょう物質が電解質の場合であってもその効果を発揮し安定的に配合できる皮膚外用剤が得られた。

Claims (4)

  1. アスコルビン酸グルコシドおよびアルブチンから選択される少なくとも1種の電解質粘ちょう物質と、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸と、アルカリゲネス属菌より得られる多糖類とを配合した皮膚外用剤。
  2. 前記N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸がNε−ラウロイルリジンであることを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
  3. 前記アルカリゲネス属菌より得られる多糖類がグラム陰性の好気性菌に属する微生物であって、アルカリゲネス属の微生物であるアルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)B−16株より生産される多糖類であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の皮膚外用剤。
  4. さらに、炭素数12〜30のアルキル変性水溶性セルロースを配合した請求項1、請求項2または請求項3項記載の皮膚外用剤。
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