JP5807843B2 - ランチオニン誘導体 - Google Patents
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Description
一方、カルシウムセンシング受容体(Calcium Sensing Receptor:CaSR)は、カルシウム受容体とも呼ばれるが、当該受容体シグナルは種々の生体内機能を調節し、CaSRアゴニスト活性を有する物質はコク味付与剤として用いることができる(特許文献1、非特許文献1)。
また、古くからコク味付与活性を有する化合物としてグルタチオンが知られている。しかし、グルタチオンは含硫アミノ酸であるシステインを分子内に含むため、安定性や臭いなどの面で課題がある。
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の低級アルキル基を示し、
Aは、メチレン基又はオキシ基(−O−)を示し、
Xは、炭素数1から5のアルキレン基を示し、ただし、該アルキレン基中の1つのメチレン基が、チオ基(−S−)、ジスルフィド基(−S−S−)、オキシ基(−O−)、イミノ基(−NH−)または炭素数1〜3のアルキルイミノ基(−NRa−,ここでRaは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で置換されていても良く、また更に、該アルキレン基は、1から6個の、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていても良い。)
また、本発明は前記式(I)に記載の化合物またはその可食性塩を10ppb〜99.9質量%含有する食品組成物をも提供する(以下、「本発明の食品組成物」ともいう。)。
また、本発明は前記式(I)に記載の化合物またはその可食性塩を有効成分として含有するコク味付与剤をも提供する(以下、「本発明のコク味付与剤」ともいう。)。
また、本発明は、(a)前記式(I)に記載の化合物またはその可食性塩に、(b)γ−Glu−X−Gly(Xはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)、γ−Glu−Val−Y(Yはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Ala、γ−Glu−Gly、γ−Glu−Cys、γ−Glu−Met、γ−Glu−Thr、γ−Glu−Val、γ−Glu−Orn、Asp−Gly、Cys−Gly、Cys−Met、Glu−Cys、Gly−Cys、Leu−Asp、D−Cys、γ−Glu−Met(O)、γ−Glu−γ−Glu−Val、γ−Glu−Val−NH2、γ−Glu−Val−ol、γ−Glu−Ser、γ−Glu−Tau、γ−Glu−Cys(S−Me)(O)、γ−Glu−Leu、γ−Glu−Ile、γ−Glu−t−Leuおよびγ−Glu−Cys(S−Me)からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はペプチド、を併用してなる複合コク味付与剤を提供する。
また、本発明は前記式(I)に記載の化合物またはその可食性塩の製造中間体として有用な、下記式(IA)の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩を提供する。
(式中、R1’及びR2’は、それぞれ独立して、水素原子、及び炭素数1〜3のアルキル基を示し、
R3’は、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、ベンジル基、又は9−フルオレニルメチル基を示し、
R4’は、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、又は9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基を示し、
R5’は、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、アミノ基(−NH2)又は炭素数1〜3のアルキルアミノ基を示し、
Aは、メチレン基又はオキシ基を示し、
Xは、炭素数1から5のアルキレン基を示し、ただし、該アルキレン基中1つのメチレン基が、チオ基、ジスルフィド基、オキシ基、イミノ基、または炭素数1〜3のアルキルイミノ基で置換されていても良く、また、該アルキレン基は、1から6個の、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていても良い。)
本発明において、炭素数1〜3のアルキル基とは、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、具体的に例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基などがあげられ、好ましくはメチル基、エチル基などがあげられる。
また、炭素数1〜3のアルキルイミノ基とは、前述の炭素数1〜3のアルキル基により置換されたイミノ基をいう。
R1、R2としては水素原子好ましい。
Aは、メチレン基が好ましい。
Xは、1つのメチレン基がチオ基で置換されたトリメチレン基が好ましく、特に、−CH2−S−CH2−が好ましい。
又、Xが1つのメチレン基がチオ基で置換されたテトラメチレン基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された、1つのメチレン基がチオ基で置換されたトリメチレン基が好ましく、特に、−CH2−S−CH2−CH2−、−CH(CH3)−S−CH2−や−CH2−S−(CH3)CH−が好ましい。
又、Xはトリメチレン基であることも好ましい。
一般式(I)中の環状構造の下記に示した炭素a,bについて、いずれの立体配置の化合物も使用できるが、下記式(I-1)や(I-2)に示した配置が好ましく、特に(I-1)に示した配置が好ましい。又、炭素cについてS配置のものが好ましい。
式(I)において、R1及びR2が水素原子であり、Aがメチレン基であり、Xがチオ基で置換されたトリメチレン基である化合物。
式(I-1a)で表される化合物。
下記式(IIa)で表される化合物。
下記式(IIb)及び(IIc)で表される化合物。
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
また、化学的に許容しうる塩としては、たとえば上述の可食性塩が挙げられる。
以下に、本発明の化合物の代表的な製造方法を述べる。
なお、以下の製造法において、官能基の種類によっては、当該官能基を原料ないし中間体の段階で適当な保護基、すなわち容易に当該官能基に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。しかるのち、必要に応じて保護基を除去し、所望の化合物を得ることができる。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等を挙げることができ、それらの保護基としては例えば、アミノ基の保護基としてt-ブトキシカルボニル(Boc)やベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)など、カルボキシル基の保護基としてt−ブチル(t−Bu)やベンジル(BnまたはBzl)など、Protective Groups in Organic Synthesis 第3版(T.W.Green、P.G.M.Wuts著、JOHN WILLY & SONS,INC.発行)に記載の保護基等を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。保護基の導入および脱保護は当該参考書記載の方法を適時適応できる。例えば下記製造法に記したProt1, Prot2の様に記した官能基が保護基として用いられている事を示すが、これに限定されるものではない。
本発明の化合物(I)は、例えば下記に示す合成スキームIに従い製造することが出来る。
このようにして得られる一般式(I)で示される化合物は、公知の分離手段、例えば減圧濃縮、溶媒抽出、晶析、クロマトグラフィーなどにより単離精製することができる。
合成スキームII
このようにして得られる一般式(X)で示される化合物は、公知の分離手段、例えば減圧濃縮、溶媒抽出、晶析、クロマトグラフィーなどにより単離精製することができる。
合成スキームIII
合成スキームIV
また、本発明のランチオニン誘導体は、グルタミン酸ナトリウム(MSG)などのアミノ酸類、イノシン一リン酸(IMP)などの核酸類、塩化ナトリウムなどの無機塩類、クエン酸などの有機酸類、種々の酵母エキスなどから選択される少なくとも1種の他の調味原料と組み合わせて用いることにより、他の調味原料を単独で用いる場合に比べて、よりコク味の増した、好ましい調味料を提供することができる。本発明のランチオニン誘導体を上記の他の調味原料と組み合わせて用いる場合の濃度は、当業者であれば官能評価等の検討を経て適宜設定することができるが、一例を挙げると、最終濃度に対して、本発明のランチオニン誘導体を0.1ppm〜500ppm程度含有させればよい。
また、味覚は喫食後の時間経過とともに変化するが、喫食直後から順に、先味(initial taste)、中味(middle taste)及び後味(after taste)と呼ぶ。これらは相対的な概念であるが、概して、先味、中味及び後味は、それぞれ喫食後0から2秒まで、2秒から5秒まで、及び5秒以降に感じる呈味である。また、先味と中味を合わせて「先中味」といい、中味と後味を合わせて「中後味」という。また、0から5秒までを「先中味」といい、2秒以降約30秒前後までを「中後味」とする。3区分に分けた評価について、喫食者の評価への集中が困難なため、ふつう2区分に分けた評価を常用する。
コク味及び呈味パターンに対するCaSR活性を有する物質の効果は、ヒトによる味覚試験などの方法によって確認することができる。このようなヒトによる味覚官能試験としては例えば本願明細書の実施例で示される試験が挙げられるが、これらに限定されない。
1)CaSR活性を測定するためのCaSR活性測定系に被検物質を添加して、CaSR活性を測定する。
2)被検物質を添加したときのCaSR活性と、被検物質を添加しなかったときのCaSR活性を比較する。
3)被検物質を添加したときにCaSRアゴニスト活性を示す被検物質を選択する。
上記CaSRは、その由来は特に制限されず、上記ヒトのCaSRのみならず、マウス、ラット、イヌなどを含むあらゆる動物由来のCaSRが挙げられる。
以下に生きた細胞を用いた一例を示すが、これに限定されるものではない。
CaSRは、アフリカツメガエル卵母細胞やハムスター卵巣細胞やヒト胎児腎臓細胞等の培養細胞に発現させる。これは外来遺伝子を保持するプラスミドにCaSR遺伝子をクリーニングしたものを、プラスミドの状態もしくはそれを鋳型にしたcRNAを導入することで可能となる。反応の検出には電気生理学的手法や細胞内カルシウム上昇の蛍光指示試薬を用いることができる。
CaSRの発現は、初めにカルシウムもしくは特異的活性化剤による応答で確認する。5mM程度の濃度のカルシウムに対して、細胞内電流が観察された卵母細胞もしくは蛍光指示試薬の蛍光が観察された培養細胞を使用する。カルシウムの濃度を変えて濃度依存性を測定する。次に、被検物質を1μM〜1mM程度に調製し、卵母細胞もしくは培養細胞に添加し、上記被検物質存在下でのCaSR活性を測定することで、上記被検物質のCaSRアゴニスト活性を測定する。
又、より具体的には、CaSRアゴニスト活性試験としては例えば本願明細書の試験例で示される試験が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)Gly:グリシン
(2)Ala:アラニン
(3)Val:バリン
(4)Leu:ロイシン
(5)Ile:イソロイシン
(6)Met:メチオニン
(7)Phe:フェニルアラニン
(8)Tyr:チロシン
(9)Trp:トリプトファン
(10)His:ヒスチジン
(11)Lys:リジン
(12)Arg:アルギニン
(13)Ser:セリン
(14)Thr:スレオニン
(15)Asp:アスパラギン酸
(16)Glu:グルタミン酸
(17)Asn:アルパラギン
(18)Gln:グルタミン
(19)Cys:システイン
(20)Pro:プロリン
(21)Orn:オルニチン
(22)Sar:サルコシン
(23)Cit:シトルリン
(24)N−Val(又は、Nva):ノルバリン(2−アミノ吉草酸)
(25)N−Leu(又は、Nle):ノルロイシン
(26)Abu:α−アミノ酪酸
(27)Tau:タウリン
(28)Hyp:ヒドロキシプロリン
(29)t−Leu:tert−ロイシン
(30)Cle:シクロロイシン
(31)Aib:α−アミノイソブチル酸(α−aminoisobutyric acid、2−メチルアラニン)
(32)Pen:L−ペニシラミン(penicillamine)
(33)allo−Thr:アロスレオニン
(34)allo−Ile:アロイソロイシン
さらに、上述したような酵素的な方法や化学的合成方法以外にも本発明において用いられるペプチドが、野菜や果物等の植物、酵母等の微生物、その他の天然物中に存在する場合がある。天然に存在する場合には、これらから抽出して用いることも可能である。
本発明のコク味付与剤あるいは複合コク味付与剤は、そのままで、又は飲食品的に許容しうる担体や他の調味原料と混合して、調味料とすることができる。他の調味原料としては、例えば、香料、糖類、甘味料、食物繊維類、ビタミン類、グルタミン酸ナトリウム(MSG)などのアミノ酸類、イノシン一リン酸(IMP)などの核酸類、塩化ナトリウムなどの無機塩類、クエン酸などの有機酸類が挙げられ、更には種々の酵母エキスも挙げられる。
本発明のランチオニン誘導体、コク味付与剤、食品組成物、あるいは複合コク味付与剤は、食品、飲料、調味料等の各種飲食品に配合して用いることができる。
本発明のランチオニン誘導体、コク味付与剤、食品組成物、あるいは複合コク味付与剤を食品、飲料、調味料等の各種飲食品に配合して用いる場合の最終的なランチオニン誘導体の量及び併用されるアミノ酸又はペプチドの量は所望の効果が得られる量であれば特に制限されないが、ランチオニン誘導体の量及び/又はアミノ酸若しくはペプチドの量として、食品、飲料あるいは調味料等の全質量を基準として、それぞれについて10ppb〜99.9%、好ましくは0.05ppm〜99.9%、より好ましくは0.1ppm〜99.9%、程度である。
上記担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ゼラチン、アルブミン、アミノ酸、水、生理食塩水等が挙げられる。
上記の調味原料は、当業界で用いられるいずれの調味原料であってもよく特に制限されないが、より具体的には既に上述のものが挙げられる。
上記の担体、他の調味原料等はいずれもその含有量は特に制限されない。
上記調味原料のうち、酵母エキスは、由来となる菌体・その培養条件・抽出処理方法のいずれも特に限定されず任意の酵母エキスを用いることができ、更に加熱処理、酵素処理、濃縮、粉末化処理等が施されたものでも良い。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
(Fmoc-L-Cys-Ot-Bu)2 (N,N’-difluorenylmethoxycarbonyl-L-cystine di-t-butylester,4.81 mmol)をテトラヒドロフラン(58.5 mL)と水(1.5 mL)に溶解した。氷冷下トリブチルホスフィン(5.28 mmol)を加えて室温に戻し、4時間攪拌した。反応液を冷却し、10%クエン酸水溶液 (60 mL)を加えた。白濁液を室温に戻し、酢酸エチル(60 mL)で抽出した。有機層を食塩水 60 mLで洗浄後、濃縮し油状残渣を得た。残渣をシリカゲルカラム(n-ヘキサン-酢酸エチル)にて精製し、化合物1を油状物として得た。
収率 97%。
ESI MS m/z 422.4 (M+Na)+
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.50 (9H, s), 2.99 (2H, m), 4.23 (1H, t, J=6.8 Hz), 4.41 (2H, m), 4.54 (1H, m), 5.68 (1H, d, J=7.2 Hz), 7.32 (2H, m), 7.41 (2H, t, J=7.2 Hz), 7.61 (2H, d, J=7.6 Hz), 7.77 (2H, d, J=7.2 Hz).
化合物1(6.04 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(60 mL)に溶解し、Boc-iodo-D-Ala-OMe (N-t-butoxycarbonyl-3-iodo-D-alanine methylester)(6.20 mmol)を加えた後、炭酸セシウム (6.02 mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応液を冷却し10%クエン酸水溶液(50 mL)および水(30 mL)を加えた後、酢酸エチル(60 mL)で抽出後、再び水層を酢酸エチル(60 mL)で抽出した。有機層を合わせ、10%クエン酸水溶液(50 mL)、食塩水(50 mL)で順次洗浄し、有機層を濃縮した。得られた油状残渣をシリカゲルカラム(n-ヘキサン-酢酸エチル)を用いて精製し、化合物2を油状物として得た。
収率 66%。
ESI MS m/z 601.2 (M+H)+
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.45 (9H, s), 1.49 (9H, s), 3.01 (4H, m), 3.73 (3H, s), 4.24 (1H, t, J=7.2 Hz), 4.39 (2H, d, J=7.2 Hz), 4.48-4.55 (2H, m), 5.37 (1H, brd, J=6.8 Hz), 5.80 (1H, brd, J=6.8 Hz), 7.32 (2H, m), 7.40 (2H, t, J=7.2 Hz), 7.63 (2H, m), 7.77 (2H, d, J=7.6 Hz).
(工程1)化合物2(4.01 mmol)をジクロロメタン 70 mLに溶解し、トリフルオロ酢酸(70 mL)を加えて室温で1時間攪拌後、反応液を濃縮し、3を含む残渣が得られた。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
収率 39%(2工程)。
ESI MS m/z 448.5 (M+Na)+
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.71 (1H, dd, J=9.2, 14.4 Hz), 2.78-2.90 (2H, m), 3.02 (1H, d, J=14.4 Hz), 3.86 (3H, s), 4.20 (1H, t, J=6.8 Hz), 4.40 (2H, d, J=6.8 Hz), 4.56 (1H, dd, J=5.6, 9.2 Hz), 4.68 (1H, m), 6.30 (1H, d, J=5.6 Hz), 7.32 (2H, t, J=7.6 Hz), 7.40 (2H, t, J=7.6 Hz), 7.60 (2H, d, J=7.6 Hz), 7.77 (2H, d, J=7.6 Hz).
(工程1)化合物4(1.54 mmol)に10%モルホリン−ジメチルホルムアミド溶液(14 mL)を加えて室温にて30分攪拌した。反応液を濃縮すると化合物5を含む残渣が得られた。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
(1.70 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(9 mL)に溶解し、HOBt・H2O (1-hydroxybenzotriazole hydrate)(1.85 mmol)とWSC・HCl(1-(3-dimethylaminopropyl)-3-Ethoxycarbodiimide hydrochloride)(1.90 mmol)を加えて室温で15分攪拌した。そこへジメチルホルムアミド(20 mL)に懸濁した化合物5 (1.54 mmol相当)を加え、室温で一晩反応させた。反応液を濃縮後、残渣に酢酸エチル(50 mL)と水(50 mL)を加えて分液し、水層を更に酢酸エチル(50 mL)で抽出した。有機層を合わせて重曹水(50 mL)と食塩水(50 mL)で洗浄後、濃縮した。得られたペースト状残渣をシリカゲルカラム(n-ヘキサン-酢酸エチル)にて精製し、6を油状物として得た。
収率 81% (2工程)。
ESI MS m/z 490.0 (M+H)+
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.44 (9H, s), 1.46 (9H, s), 1.90 (1H, m), 2.17 (1H, m), 2.32 (2H, m), 2.60 (1H, dd, J=10.5, 14.1 Hz), 2.92-2.98 (2H, m), 3.18 (1H, dd, J=6.0, 14.7 Hz), 3.84 (3H, s), 4.46 (1H, m), 4.80 (1H, m), 5.19 (1H, d, J=8.1 Hz), 6.32 (1H, d, J=8.1 Hz), 7.09 (1H, brs).
(工程1)化合物6 (1.25 mmol)をテトラヒドロフラン(30 mL)に溶解し、氷冷攪拌下、0.2M水酸化リチウム水溶液(2.50 mmol)を加えた。30分後、10%クエン酸水溶液を用いて約pH6に中和した。室温に戻して反応液を濃縮後、酢酸エチル抽出(20 mL x 3)を行った。水層を更に酢酸エチル抽出(20 mL x 3)して有機層を合わせ、食塩水(10 mL)で洗浄した後、有機層を濃縮し化合物7を得た。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
化合物8a
ESI MS m/z 318.3 (M-H)-
1H NMR (600 MHz, D2O) δ 2.13 (2H, m), 2.50 (2H, t, J=7.8 Hz), 2.64 (1H, d, J=15.0 Hz), 2.83 (1H, dd, J=10.8, 15.0 Hz), 3.02 (1H, dd, J=2.4, 15.0 Hz), 3.15 (1H, dd, J=5.4, 15.0 Hz), 3.83 (1H, t, J=6.0 Hz), 4.55 (1H, dd, J=2.4, 5.4 Hz), 4.91 (1H, dd, J=2.4, 10.8 Hz).
化合物8b
収率 26%(2工程)
ESI MS m/z 318.0 (M-H)-
1H NMR (600 MHz, D2O) δ 2.12 (2H, m), 2.48 (2H, t, J=7.2 Hz), 2.72 (1H, d, J=14.4 Hz), 2.76 (1H, dd, J=10.2, 14.4 Hz), 2.89 (1H, dd, J=9.6, 14.4 Hz), 3.05 (1H, d, J=14.4 Hz), 3.78 (1H, t, J=6.0 Hz), 4.42 (1H, d, J=9.6 Hz), 4.91 (1H, d, J=10.2 Hz).
D-cystine (5.20 mmol)を60%過塩素酸水溶液(2.1 mL)に溶解し、t-ブチルアセテート(12.6 mL)を滴下し室温にて2日間攪拌後、反応液を氷冷し、4N水酸化ナトリウム水溶液を用いて約pH11に調整した。室温に戻して酢酸エチル(50 mL)で6回抽出し、有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することにより化合物9を油状物として得た。
収率 72%。
ESI MS m/z 353.2 (M+H)+
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.48 (18H, s), 2.88 (2H, dd, J=8.0, 13.2 Hz), 3.14 (2H, dd, J=4.4, 13.2 Hz), 3.69 (2H, dd, J=4.4, 8.0 Hz).
化合物9(3.70 mmol)をテトラヒドロフラン(40 mL)に溶解し、Fmoc-OSc (N-(9-fluorenylmethoxycarbonyloxy)-succinimide)(7.40 mmol)を加えた。反応液を氷冷し、攪拌下N-メチルモルホリン(7.46 mmol)を滴下し、そのまま一晩撹拌した。反応液に酢酸エチル(50 mL)と10%クエン酸水溶液(25 mL)を加えて分配した。有機層をさらに10%クエン酸水溶液(25 mL)と食塩水(25 mL)で2回洗浄後濃縮して得られたスラリー状の残渣を、シリカゲルカラム(n-ヘキサン-酢酸エチル)にて精製し、化合物10を白色固体として得た。
収率 54%。
ESI MS m/z 819.1 (M+Na)+
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.48 (18H, s), 3.21 (4H, m), 4.20 (2H, m), 4.35 (4H, m), 4.56 (2H, m), 5.72 (2H, d, J=7.2 Hz), 7.28 (4H, m), 7.38 (4H, m), 7.28 (4H, d, J=7.6 Hz), 7.28 (4H, d, J=7.6 Hz).
実施例7記載の化合物10を原料に、実施例1〜5の方法を用いて化合物8cおよび8dを合成した。
化合物8c
ESI MS m/z 317.9 (M-H)-
1H NMR (600 MHz, D2O) δ 2.10 (2H, m), 2.44 (2H, m), 2.59 (1H, brd, J=14.4 Hz), 2.79 (1H, dd, J=10.4, 14.4 Hz), 2.98 (1H, dd, J=2.8, 14.8 Hz), 3.11 (1H, dd, J=6.0, 14.8 Hz), 3.80 (1H, t, J=6.0 Hz), 4.50 (1H, dd, J=2.8, 6.0 Hz), 4.81 (1H, dd, J=2.0, 10.4 Hz).
化合物8d
ESI MS m/z 317.8 (M-H)-
1H NMR (600 MHz, D2O) δ 2.09 (2H, m), 2.43 (2H, m), 2.67 (1H, dd, J=1.6, 14.4 Hz), 2.72 (1H, dd, J=9.6, 14.4 Hz), 2.84 (1H, dd, J=9.6, 14.4 Hz), 3.02 (1H, d, J=14.4 Hz), 3.77 (1H, t, J=6.0 Hz), 4.42 (1H, dd, J=1.6, 9.6 Hz), 4.87 (1H, dd, J=2.4, 9.6 Hz).
H-D-Asp-OMe (D-aspartic acid α-methylester) (6.81 mmol)にテトラヒドロフラン(14 mL)と水(14 mL)を加えて溶解した。氷冷下、Boc2O (dit-butyl dicarbonate)(8.38 mmol)をテトラヒドロフラン(5 mL)に溶かした溶液、トリエチルアミン (13.63 mmol)、DMAP(N,N-dimethyl-4-aminopyridine)(1.36 mmol)を加えた。室温に戻して6時間攪拌後、反応液を濃縮し、テトラヒドロフランを除去した。残った反応液に1〜2N 塩酸を加えて約pH 2に調整した後、酢酸エチル(50 mL)で抽出した。有機層を食塩水(25 mL)で洗浄後、濃縮してあめ状の目的化合物11を得た。
収率 76%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.48 (9H, s),2.91 (1H, dd, J=4.4, 8.0 Hz), 3.10 (1H, dd, J=3.6, 8.0 Hz), 3.79 (3H, s), 4.61 (1H, m), 5.52 (1H, brd, J=8.8 Hz).
(工程1)化合物11 (5.19 mmol)を酢酸エチル(21 mL)に溶解し、HOSu (N-hydroxysuccinimide) (5.73 mmol)を加えた。氷冷下、DCC(dicyclohexylcabodiimide) (5.71 mmol)を加えた後、反応液を室温に戻し4時間攪拌した。析出した不溶物をろ別後、ろ過液を濃縮して12を含むゲル状残渣を得た。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
収率67%(2工程)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.47 (9H, s), 1.63 (1H, m), 2.17 (1H, m), 3.73 (2H, m), 3.80 (3H, s), 4.50 (1H, m), 5.39 (1H, m).
化合物13 (3.47 mmol)を脱水ジクロロメタン(10 mL)に溶解後、トリフェニルホスフィン (4.18 mmol)、イミダゾール(4.17 mmol)およびヨウ素(4.16 mmol)の脱水塩化メチレン溶液(10 mL)に滴下した。室温にて2時間撹拌後、反応液を濃縮して得られた残渣に酢酸エチル(35 mL)を加えた。スラリー状態で1時間攪拌後、不溶物をろ別し、ろ過液を濃縮すると褐色のオイルが得られた。これをシリカゲルカラム (n-ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、オイル状の化合物14を得た。
収率56%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.47 (9H, s), 2.20 (1H, m), 2.45 (1H, m), 3.20 (2H, t, J=7.6 Hz), 3.79 (3H, s), 4.38 (1H, m), 5.13 (1H, brs).
Fmoc-Cys-Ot-Bu (N-fluorenylmethoxycarbonyl-L-cysteine t-butylester)(1.90 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(10 mL)に溶解し、そこへ化合物14(1.94 mmol)の脱水ジメチルホルムアミド溶液(10 mL)を加えた。次に炭酸セシウム (1.92 mmol)を加え、室温で5時間攪拌した後、反応液に酢酸エチル(20 mL)と10%クエン酸水溶液(10 mL)を加えて分配した。水層を酢酸エチル(20 mL)で再抽出して有機層を合わせ、更に10%クエン酸水溶液(10 mL)と飽和食塩水(10 mL)で洗浄した。有機層を濃縮して得られたオイル状残渣を、シリカゲルカラム (n-ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、オイル状の化合物15を得た。
収率62%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.45 (9H, s), 1.51 (9H, s), 1.92 (1H, m), 2.12 (1H, m), 2.63 (2H, m), 2.99 (2H, m), 3.74 (3H, s), 4.26 (1H, t, J=7.2 Hz), 4.41 (2H, m), 4.50 (1H, m), 5.17 (1H, br), 7.34 (2H, m), 7.43 (2H, t, J=7.2 Hz), 7.65 (2H, d, J=7.2 Hz), 7.79 (2H, d, J=7.6 Hz).
(工程1)化合物15(0.55 mmol)を脱水ジクロロメタン(8 mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(4 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。反応液を濃縮し、脱水ジメチルホルムアミド (4 mL)で共沸することにより、化合物16を含むジメチルホルムアミド溶液を得た。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
収率15%(2工程)。
ESI MS m/z 257.5 (M+H)+.
(工程1)化合物17 (0.08 mmol)に5%モルホリン/ジメチルホルムアミド溶液(0.70 mL)を加えて室温で1時間攪拌した後、反応液を濃縮し、化合物18を含む溶液を得た。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
収率90%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.46 (9H, s), 1.48 (9H, s), 1.88 (1H, m), 2.40-2.15 (5H, m), 2.50 (1H, m), 2.78 (1H, dd, J=10.0, 14.4 Hz), 3.09 (1H, dd, J=4.8, 15.6 Hz), 3.37 (1H, dd, J=4.8, 14.4 Hz), 3.68 (1H, t, J=4.8 Hz), 3.79 (3H, s), 4.18 (1H, m), 4.51 (1H, m), 5.01 (1H, m), 5.20 (1H, brd, J=6.8 Hz).
(工程1)化合物19 (0.092 mmol)をテトラヒドロフラン(1.84 mL)に溶解し、氷冷下、0.2 M 水酸化リチウム水溶液 (0.18 mmol)を加え、室温に戻して1時間攪拌した。TLCで原料の消失を確認後、0.2 N 塩酸を添加して反応液のpHを弱酸性にし、濃縮してテトラヒドロフランを除去した。残溶液を酢酸エチル(10 mL x 3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(3 mL)で洗浄した。有機層を濃縮するとあめ状の化合物20がジアステレオマー混合物として得られた。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
収率56%(2工程)。
ESI MS m/z 334.0 (M+H)+;1H NMR (400 MHz, D2O) δ 2.07 (2H, m), 2.42 (2H, m), 2.86-3.17 (2H, m), 3.75 (1H, t, J=6.0 Hz), 4.27〜4.41 (1H, m), 4.75〜5.24 (1H, m).
(Boc-L-Cys-OH)2 (N,N’-dit-butoxycarbonyl-L-cystine)(2.51 mmol)をテトラヒドロフラン(29.2 mL)と水(0.8 mL)に溶解し、氷冷下、トリブチルホスフィン (2.76 mmol)を加えた。室温に戻して1時間半攪拌し、反応液を濃縮した。残渣に酢酸エチル(20 mL)と10%クエン酸水溶液(10 mL)を加えて分配し、有機層を飽和食塩水(10 mL)で洗浄した。有機層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (n-ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、オイル状の化合物22を得た。
収率99%。
ESI MS m/z 220.1 (M-H)-; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.47 (1H, brs), 4.65 (1H, brs), 3.09-2.97 (2H, m), 1.48 (9H, s).
化合物18 (4.97mmol)と無水酢酸 (49.90 mmol)を合わせて氷冷し、そこへ炭酸水素カリウム (5.93 mmol)を水(2.4 mL)に溶かした溶液を滴下した。室温に戻して2時間攪拌後、水(5 mL)と酢酸エチル(20 mL)を加えて抽出した。水層を酢酸エチル(20 mL)で再抽出して有機層を合わせ、飽和食塩水(5 mL)で洗浄した。有機層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (n-ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、あめ状の化合物23を得た。
収率76%。
ESI MS m/z 261.9 (M-H)-; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.33 (1H, d, J=6.4 Hz), 4.53 (1H, m), 3.47 (1H, dd, J=4.0, 14.0 Hz), 3.34 (1H, dd, J=6.8, 14.0 Hz), 2.40 (3H, s), 1.48 (9H, s).
化合物23 (3.76 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(30 mL)に溶解し、HOBt・H2O(1-hydroxybenzotriazole hydrate) (4.14 mmol)とCMC (1-cyclohexyl-3-(2-morphorinoethyl)carbodiimide metho-p-toluenesulfonate) (4.13 mmol)を加えて室温で15分攪拌した。次にL-Thr-OMe・HCl(L-threonine methylester・HCl)(3.77 mmol)とトリエチルアミン (3.80 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を濃縮し、得られた残渣に水(20 mL)と酢酸エチル(40 mL)を加えて抽出した。有機層を重曹水(20 mL)および飽和食塩水(20 mL)で洗浄後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラム (ジクロロメタン-メタノール)で精製し、化合物24を白色固体として得た。
収率74%。
ESI MS m/z 401.3 (M+Na)+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.14 (1H, d, J=7.6 Hz), 5.37 (1H, d, J=7.2 Hz), 4.60 (1H, dd, J=2.8, 8.8 Hz), 4.37 (2H, m), 3.80 (3H, s), 3.39 (1H, dd, J=4.4, 14.0 Hz), 3.24 (1H, dd, J=8.0, 14.0 Hz), 2.40 (3H, s), 1.47 (9H, s), 1.24 (3H, d, J=6.4 Hz).
化合物24 (4.20 mmol)を脱水ジクロロメタン(5 mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(8.38 mmol)および塩化メタンスルホニル(8.00 mmol)を加えた。室温で1時間半攪拌後、反応液を濃縮してオイル状の残渣を得た。一方、脱水テトラヒドロフラン(50 mL)に氷冷下、水素化リチウムアルミニウム (33.6 mmol)を加えた。次に脱水メタノール (101.48 mmol)をゆっくりと滴下した。反応液に脱水テトラヒドロフラン(50 mL)を追加してさらに撹拌した。10分後、先ほど得られた残渣の脱水テトラヒドロフラン溶液(15 mL)を滴下して2時間反応した。この反応液を、酢酸エチル(150 mL)と0.5 N 塩酸(120 mL)の混合液に少しずつ加えた。分液により得られた有機層を、更に0.5 N 塩酸(120 mL)と飽和食塩水(120 mL)で洗浄後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム (n-ヘキサン-酢酸エチル)で精製し、異性体である2つ化合物25aおよび25bを得た。
25a:収率13%。 ESI MS m/z 341.1 (M+Na)+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.50 (1H, d, J=5.6 Hz), 6.01 (1H, d, J=5.2 Hz), 4.87 (1H, dd, J=1.2, 6.0 Hz), 4.61 (1H, m), 3.87 (3H, s), 3.30 (1H, m), 2.95 (1H, dd, J=10.0, 14.8 Hz), 2.76 (1H, dd, J=1.2, 14.8 Hz), 1.47 (9H, s), 1.24 (3H, d, J=6.8 Hz).
25b:収率20%。ESI MS m/z 341.4 (M+Na)+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.05 (1H, d, J=8.8 Hz), 5.99 (1H, brs), 4.63 (1H, m), 4.15 (1H, m), 3.87 (3H, s), 3.48 (1H, m), 2.73 (2H, m), 1.49 (3H, d, J=7.2 Hz), 1.47 (9H, s).
(工程1)化合物25a (0.45 mmol)に4N 塩酸/ジオキサン溶液(2.26 mL)を加え室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮することにより化合物26を含む残渣が得られた。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
Boc-Glu-Ot-Bu (N-t-butoxycarbonyl-L-glutamic acid α-t-butylester)(0.52 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド(4 mL)に溶解し、HOBt・H2O (1-hydroxybenzotriazole hydrate) (0.65 mmol)とWSC・HCl (1-(3-dimethylaminopropyl)-3-ethoxycarbodiimide hydrochloride) (0.66 mmol)を加えて室温で10分攪拌した。そこに、化合物26(0.45 mmol相当)の脱水ジメチルホルムアミド溶液(2.5 mL)を加えた後、トリエチルアミン (0.77 mmol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に酢酸エチル(40 mL)と水(20 mL)を加えて分配し、有機層を飽和重曹水(20 mL)および飽和食塩水(20 mL)で洗浄した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラム(ジクロロメタン-メタノール)で精製し、化合物27を得た。
収率98%(2工程)。
ESI MS m/z 526.1 (M+Na)+; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.02 (1H, m), 6.53 (1H, d, J=6.0 Hz), 5.18 (1H, d, J=7.6 Hz), 4.88 (1H, dd, J=1.2, 5.6 Hz), 4.81 (1H, m), 4.19 (1H, m), 3.87 (3H, s), 3.32 (1H, m), 2.90 (1H, dd, J=10.0, 14.8 Hz), 2.78 (1H, dd, J=2.0, 14.8 Hz),2.33 (2H, m), 2.21 (1H, m), 1.90 (1H, m), 1.49 (9H, s), 1.46 (9H, s), 1.25 (3H, d, J=6.8 Hz).
(工程1)化合物27(0.38 mmol)をテトラヒドロフラン(7.6 mL)に溶解し、氷冷下、0.2M 水酸化リチウム水溶液(0.76 mmol)を加えて2時間攪拌した。0.5N 塩酸を加えて反応液を弱酸性にしてから室温に戻し、濃縮してテトラヒドロフランを除去した。残った溶液を酢酸エチル(20 mL x 3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(20 mL)で洗浄後、濃縮して化合物28を得た。収率 100%と仮定してそのまま次の反応に用いた。
収率65%(2工程)。
ESI MS m/z 333.6 (M+H)+; 1H NMR (400 MHz, D2O) δ 4.86 (1H, dd, J=2.8, 9.6 Hz), 4.81 (1H, d, J=1.6 Hz), 3.82 (1H, t, J=6.4 Hz), 3.40 (1H, m), 2.95 (1H, dd, J=9.6, 15.2 Hz), 2.60 (1H, dd, J=2.8, 15.2 Hz), 2.46 (2H, t, J=7.2 Hz), 2.08 (2H, m), 1.14 (3H, d, J=7.2 Hz).
2,6−ジアミノピメリン酸(5.0g、26.3mmol)をメタノール42mLに溶解し、氷浴下で塩化チオニル(4.2mL、57.9mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温まで自然昇温し、終夜撹拌した。反応終了後、溶媒を留去することで、化合物31を定量的に得た。
(2)化合物32
化合物31(0.582g、2.0mmol)を水10mLとメタノール10mLの混合溶媒に溶解し、酸化銀(0.730g、3.2mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応終了後、セライト濾過で酸化銀を除去し、溶媒を留去することで、化合物32の粗生成物を得た。
(3)化合物33
Boc−Glu−OtBu(0.303g、1.0mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(0.169g、1.1mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.211g、1.1mmol)、化合物32(0.205g、1.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mLに溶解し、トリエチルアミン(0.198mL、1.4mmol)を加え、室温にて終夜撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、酢酸エチルを加え、希釈した。5%クエン酸水溶液で2回洗浄し、飽和食塩水で1回洗浄した後、10%飽和重曹水で2回洗浄し、最後に飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、溶媒を留去し、化合物33の粗生成物を得た。
化合物33(0.277g、0.59mmol)をテトラヒドロフラン5mLに溶解し、1M水酸化リチウム水溶液を4mL加え、室温にて2時間撹拌した。反応終了後、1M塩酸を加え、pHを約2に調整し、酢酸エチルを加え、抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を留去することで化合物34を得た。
(5)化合物35
化合物34(0.181g、0.38mmol)に4M塩酸−ジオキサン溶液4mLを加え、室温にて終夜反応させた。反応終了後、溶媒を留去し、化合物35を含む残渣の一部を、逆相分取HPLC(カラム:野村化学社製Develosil RPAQUEOUS-AR-5、移動相:0.1%ヘプタフルオロ酪酸を含む水/アセトニトリル系リニアグラジエント)で精製することにより、化合物35をジアステレオマー混合物として得た。
1H NMR (D2O) δ= 1.41-1.78 (m, 3H), 1.80-1.91 (m, 2H), 1.99-2.03 (m, 1H), 2.08-2.22 (m, 2H), 2.42-2.51 (m, 2H), 3.97-4.02 (m, 1H), 4.31-4.34 (m, 1H), 4.45-4.49 (m, 1H)
MS(ESI) m/z: 302.0 (M+1)
CaSR発現プラスミドの調製を以下のように行った。
NCBIに登録されたDNA配列(CaSR(カルシウム受容体):NM_000388、配列番号1、2)を元に、PCRに使う合成オリゴDNA(フォワードプライマー(配列番号3:ACTAATACGACTCACTATAGGGACCATGGCATTTTATAGCTGCTGCTGG)、及びリバースプライマー(配列番号4:TTATGAATTCACTACGTTTTCTGTAACAG)を合成した。
ヒト腎臓由来のcDNA(Clontech社製)を材料として、前記プライマー、及びPfu Ultra DNA Polymerase(Stratagene社製)を用い、以下の条件でPCRを実施した。94℃で3分の後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分を35回繰り返した後、72℃で7分反応させた。アガロース電気泳動を行い、DNA染色試薬で染色した後、紫外線照射によってPCRによって増幅がなされたか否かを検出した。又、同時に電気泳動したサイズ既知のDNAマーカーと比較することで、PCR産物の鎖長を確認した。
プラスミドベクターpBR322を制限酵素EcoRV(Takara社製)によって切断し、その切断部位にPCRによって増幅された遺伝子断片をLigation kit(Promega社製)を用いて連結した。この反応溶液でエシェリヒア・コリDH5α株を形質転換し、PCR増幅産物がクローニングされたプラスミドを保持する形質転換体を選抜し、更にPCR増幅産物をDNA塩基配列解析によって確認した。
この組換えプラスミドを用いてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1を作製した。
293E細胞(EBNA1発現HEK293細胞、ATCC No.CRL-10852)を、200μg/mlのG418(ジェネティシン)存在下、10%のウシ胎児血清を含むDMEM/Ham's-F12(3.15/ml Glucose含有Dulbecco's modified Eagle medium、ナカライテスク)にて培養した。3×106cells/10mlでF25フラスコに撒き、CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)に24時間静置した後、トランスフェクション試薬Fugene6(Roche)にてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1をトランスフェクションした。CO2インキュベータに6〜7時間置いた後、細胞を10%ウシ胎児血清含有DMEM/Ham's-F12にて回収し、70,000cells/wellでpoly-D-lysine coat 96well plate(BD-Biocoat)に播種した。
CO2インキュベータにて24時間静置した後、この細胞を播種した96 well plateから培地を除去し、Assay Buffer (146mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mg/ml Glucose、20mM HEPES(pH 7.2)、0.75〜1.25 mM CaCl2)に溶解したCa2+蛍光指示薬Calcium 4 Assay Kit(Molecular Devices)を200μl/well添加し、37℃で1時間、次いで室温で10分静置し指示薬を取り込ませた。
この96well plateに、0.1%BSA含有Assay Bufferに溶解した被験化合物を50μl/well添加し、FLEX Station(Molecular Devices)で3分間蛍光強度変化を測定した。
化合物添加前後の蛍光強度の最大値と最小値の差(RFU(Max-Min))をFLEX Stationの自動計算にて求めた。化合物最大濃度添加時のRFU(Max-Min)を100%、被験化合物を含まない0.1%BSA含有Assay Bufferを使用時のRFU(Max-Min)を0%と定義した活性率を計算し、表計算ソフトXfitもしくはグラフパッドプリズムにてカーブフィッティングし、活性率50%時の化合物濃度であるEC50値を求めた。
293E細胞(EBNA1発現HEK293細胞、ATCC No.CRL-10852)を、200μg/mlのG418(ジェネティシン)存在下、10%のウシ胎児血清を含むDMEM/Ham's-F12(3.15/ml Glucose含有Dulbecco's modified Eagle medium、ナカライテスク)にて培養した。3×106 cells /10ml でF25フラスコに撒き、CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)に24時間静置した後、トランスフェクション試薬Fugene6(Roche)にてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1をトランスフェクションした。CO2インキュベータに6〜7時間置いた後、細胞を10%ウシ胎児血清含有DMEM/Ham's-F12にて回収し、2×106cells/wellでpoly-D-lysine coat 384well plate(BD-Biocoat)に播種した。
CO2インキュベータにて24時間静置した後、この細胞を播種した384 well plateから培地を除去し、Assay Buffer (146mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mg/ml Glucose、20mM HEPES(pH 7.2)、0.75〜1.25 mM CaCl2、2.5mM Probenecid(SIGMA)に溶解したCa2+蛍光指示薬Calcium 5 Assay Kit(Molecular Devices)を40μl/well添加し、37℃で45分間、次いで室温で15分静置し指示薬を取り込ませた。
この384well plateに、0.1%BSA含有Assay Bufferに溶解した被験化合物を10μl/well添加し、FLIPR(Molecular Devices)で3分間蛍光強度変化を測定した。
化合物添加前後の蛍光強度の最大値と最小値の差(RFU(Max-Min))をFLIPRの自動計算にて求めた。化合物最大濃度添加時のRFU(Max-Min)を100%、被験化合物を含まない0.1%BSA含有Assay Bufferを使用時のRFU(Max-Min)を0%と定義した活性率を計算し、表計算ソフトXfitもしくはグラフパッドプリズムにてカーブフィッティングし、活性率50%時の化合物濃度であるEC50値を求めた。
上記(1)もしくは(2)により測定した結果を表1に示した。
化合物8bについて、定量的な官能評価試験によりコク味付与活性の強度を調べた。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。グルタミン酸ナトリウム(0.05g/dl)、イノシン酸一リン酸(0.05g/dl)、塩化ナトリウム(0.5g/dl)を含有する蒸留水に、被験化合物を0.0001〜0.0005g/dlにて混合した場合の、コク味付与活性の強度を測定した。無添加コントロールに対しpH±0.2の幅に合わせて使用した。官能評点について、コントロールに対し、同等:0点、強い:3点、非常に強い:5点とするとともに、尺度をより明確にするため、γ-Glu-Val-Glyの先中味を2.5点、後味を3.0点とした評点を基準にし、評価は、n=5で実施した。なお、0.001g/dl γ-Glu-Val-Glyのコク味強度は、0.01g/dl γ-Glu-Cys-Gly(グルタチオン)のコク味強度(先中味3.0点、後味3.0点)に相当する。採点については、直線尺度法を用い、−5〜0〜5点の位置を示した直線に対し、該当する採点を位置として記入する方法を用いた。また、食品の調味開発を累積で半年以上経験し、うま味塩味溶液に添加したγ-Glu-Cys-Glyとγ-Glu-Val-Glyの力価の差が10倍前後と判定できる者(定期的に確認)をパネラーとした。尚、「先中味」とは、口含み後、0〜5秒の呈味、後味はそれ以降の呈味である。上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、代表的な濃度の結果を表2に示した。
又、γ-Glu-Val-Glyについて同様に評価した結果も表2に示した。
化合物8bについて、定量的な官能評価試験によりコク味付与活性の強度を調べた。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。市販のかつお節エキス(50%かつお節だし相当)を20.0g/dlになるように熱水希釈し、食塩(0.5g/dl)を加えたかつお節エキス溶液に、被験化合物を0.0001〜0.0005g/dlにて混合した場合の、コク味付与活性の強度を測定した。無添加コントロールに対しpH±0.2の幅に合わせて使用した。官能評点について、コントロールに対し、同等:0点、強い:3点、非常に強い:5点とするとともに、尺度をより明確にするため、γ-Glu-Val-Glyの先中味を2.5点、後味を3.0点とした評点を基準にし、評価は、n=5で実施した。なお、0.001g/dl γ-Glu-Val-Glyのコク味強度は、0.01g/dl γ-Glu-Cys-Gly(グルタチオン)のコク味強度(先中味3.0点、後味3.0点)に相当する。採点については、直線尺度法を用い、−5〜0〜5点の位置を示した直線に対し、該当する採点を位置として記入する方法を用いた。また、食品の調味開発を累積で半年以上経験し、うま味塩味溶液に添加したγ-Glu-Cys-Glyとγ-Glu-Val-Glyの力価の差が10倍前後と判定できる者(定期的に確認)をパネラーとした。尚、「先中味」とは、口含み後、0〜5秒の呈味、後味はそれ以降の呈味である。上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、代表的な濃度の結果を表3に示した。
又、γ-Glu-Val-Glyについて同様に評価した結果も表3に示した。
化合物8bについて、定量的な官能評価試験によりコク味付与活性の強度を調べた。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。市販牛乳(脂肪分3.6%)に、被験化合物を0.0001〜0.0005g/dlにて混合した場合の、コク味付与活性の強度を測定した。無添加コントロールに対しpH±0.2の幅に合わせて使用した。官能評点について、コントロールに対し、同等:0点、強い:3点、非常に強い:5点とするとともに、尺度をより明確にするため、γ-Glu-Val-Glyの先中味を2.5点、後味を3.0点とした評点を基準にし、評価は、n=5で実施した。なお、0.001g/dl γ-Glu-Val-Glyのコク味強度は、0.01g/dl γ-Glu-Cys-Gly(グルタチオン)のコク味強度(先中味3.0点、後味3.0点)に相当する。採点については、直線尺度法を用い、−5〜0〜5点の位置を示した直線に対し、該当する採点を位置として記入する方法を用いた。また、食品の調味開発を累積で半年以上経験し、うま味塩味溶液に添加したγ-Glu-Cys-Glyとγ-Glu-Val-Glyの力価の差が10倍前後と判定できる者(定期的に確認)をパネラーとした。尚、「先中味」とは、口含み後、0〜5秒の呈味、後味はそれ以降の呈味である。上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、代表的な濃度の結果を表4に示した。
又、γ-Glu-Val-Glyについて同様に評価した結果も表4に示した。
Claims (11)
- 式(I)において、R1及びR2が水素原子である、請求項1記載の化合物、又はその可食性塩。
- 式(I)において、Aがメチレン基である、請求項1又は2に記載の化合物、又はその可食性塩。
- 式(I)において、Xが1つのメチレン基がチオ基で置換されたトリメチレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又はその可食性塩。
- 式(I)において、Xが、1つのメチレン基がチオ基で置換されたテトラメチレン基、又は、炭素数1〜3のアルキル基で置換された、1つのメチレン基がチオ基で置換されたトリメチレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又はその可食性塩。
- 式(I)において、Xがトリメチレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又はその可食性塩。
- 請求項1〜8記載のいずれか1項記載の化合物またはその可食性の塩を0.000001〜99.9質量%有する食品組成物。
- 請求項1〜8記載のいずれか1項記載の化合物またはその可食性の塩を有効成分として含有するコク味付与剤。
- 下記式(IA)の構造を有する化合物、又はその化学的に許容しうる塩。
(式中、R1’及びR2’は、それぞれ独立して、水素原子、及び炭素数1〜3のアルキル基を示し、
R3’は、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、ベンジル基、又は9−フルオレニルメチル基を示し、
R4’は、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、又は9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基を示し、
R5’は、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、アミノ基(−NH2)又は炭素数1〜3のアルキルアミノ基を示し、
Aは、メチレン基又はオキシ基を示し、
Xは、炭素数1から5のアルキレン基を示し、ただし、該アルキレン基中1つのメチレン基が、チオ基、ジスルフィド基、オキシ基、イミノ基、または炭素数1〜3のアルキルイミノ基で置換されていても良く、また、該アルキレン基は、1から6個の、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていても良い。)
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