以下、実施形態に係るバンドロック構造部12を有するハーネスクランプ10について説明する(図1、図2参照)。ハーネスクランプ10は、ワイヤーハーネス1を保持して固定相手部90に対して固定するための部材である。
<ワイヤーハーネス及び固定相手部>
説明の便宜上、ハーネスクランプ10の適用対象であるワイヤーハーネス1及び固定相手部90について説明しておく。
ワイヤーハーネス1は、車両又は電気機器等(ここでは車両の例で説明する)に配索されるワイヤーハーネスであり、少なくとも1本の電線を有する線材である。ここで対象とするワイヤーハーネス1には、1本の電線で構成されたもの、複数本の電線がテープ巻き等により結束されたもの、電線束にコルゲートチューブ等の外装部材が装着されたもの等が含まれるものとする。
このワイヤーハーネス1は、配索経路に沿って車両に配索される。この際、ワイヤーハーネス1は、延在方向において部分的に車両各部(固定相手部90)に対して固定される。固定相手部90は、例えば車両の車体を構成する金属パネルであり、厚さ方向に貫通する固定用孔部92が形成されている。
<ハーネスクランプの構成>
ハーネスクランプ10は、バンド20と、本体部30と、バンド係止部40と、固定部50と、小型突部60及び大型突起65とを備えている。概略的には、ハーネスクランプ10は、ワイヤーハーネス1の外周部に巻き付けられたバンド20が本体部30に設けられたバンド係止部40により巻付形態に維持され、本体部30に設けられた固定部50が固定相手部90の固定用孔部92に対して固定されることにより、ワイヤーハーネス1を車両に固定する。なお、上述したバンドロック構造部12は、バンド20と、本体部30と、バンド係止部40とを備える部分を指す。
ここでは、ハーネスクランプ10は、本体部30、バンド係止部40、固定部50、小型突部60及び大型突部65が一体に形成された本体部材と、これとは別体に形成されたバンド20とが組み合わされることにより構成される。本体部材及びバンド20は、それぞれ、合成樹脂材料を射出成型等して形成されるとよい。
バンド20は、ワイヤーハーネス1の外周部に巻き付けられる部材である(図5参照)。このバンド20は、長手方向に複数の被係止部22が並んで設けられた帯状に形成されている。より具体的には、バンド20は、一主面で開口する凹状の被係止部22が、長手方向において間隔をあけて複数並んだ形状に形成されている。この被係止部22は、略直方体状の内部空間を有する凹状に形成され、バンド20の長手方向における両端部に前記長手方向に略直交する被係止面を有している。
本体部30は、バンド20が巻き付けられるワイヤーハーネス1を載置状に支持可能な部分である。この本体部30は、略直方体ブロック状に形成され、ワイヤーハーネス1を一主面(以下、支持面38)上で配索方向Rに沿わせて支持可能である。また、本体部30は、固定相手部90の固定用孔部92に挿入される部分でもある。以下、本体部30を固定用孔部92に挿入する向きを挿入方向Sと称し、本体部材自体の向きを説明する際にもこの挿入方向Sを用いる。なお、上記支持面38は、本体部30の挿入方向Sに直交する後端面である。また、挿入方向Sは、配索方向Rに略直交する方向である。
本体部30は、固定用孔部92に対する挿入方向Sに直交する断面視において、固定用孔部92に挿入可能な外形に設定されている(図3参照)。好ましくは、本体部30は、挿入方向Sに直交する断面視一方向において、固定用孔部92の開口縁部のうち貫通方向に直交する一方向に対向する両側部分の間隔と同じかそれより僅かに小さい寸法に設定されているとよい。
より具体的には、本体部30は、支持面38で開口すると共に一方向に貫通する一対の貫通孔部32を有している(図4、図5参照)。一対の貫通孔部32は、バンド20を挿通可能なバンド挿通路34を有する孔部である。ここでは、一対の貫通孔部32の貫通方向は、挿入方向Sに沿った方向である。また、一対の貫通孔部32は、配索方向R及び貫通方向に沿って扁平な中間壁部35を介して並列状に形成されている。
バンド挿通路34は、貫通孔部32のうちの中間壁部35寄りの部分であり、中間壁部35に沿ってバンド20を挿通する。なお、貫通孔部32のうちのバンド挿通路34の側方(中間壁部35が対向する内壁側)には、後述するバンド係止部40が設けられている。
そして、バンド20の長手方向中間部分が本体部30の支持面38側でワイヤーハーネス1の外周部に巻き付けられる形態で輪状にされ、一対の貫通孔部32にバンド20の長手方向両端部側の部位がそれぞれ挿通される(図5参照)。すなわち、バンド20は、両端部が一対の貫通孔部32の挿入方向S前方側から露出する姿勢で本体部30にセットされる。
また、本体部30において、中間壁部35は、支持面38上に配索されるワイヤーハーネス1が貫通孔部32内に入り込むことを抑制するための構成である肉厚部37を有している。肉厚部37は、中間壁部35の支持面38側端部にワイヤーハーネス1を支持するための補助支持面39を有している。
より具体的には、肉厚部37は、中間壁部35の配索方向R一部において、少なくとも一方の貫通孔部32内に突起する形状に形成されている。すなわち、肉厚部37は、中間壁部35の他の部位と比較して肉厚に設定されている。(図5、図6参照)ここでは、肉厚部37は、両方の貫通孔部32内に突起する形状に形成されている。また、肉厚部37は、貫通孔部32の貫通方向において中間壁部35の両端に亘って延在するように形成されている。また、肉厚部37は、中間壁部35のうちの配索方向R中間部に設けられている。ここで、中間部とは、厳密に中間の位置に加え、設計時に設定された製造上の誤差の範囲の位置も含むものとする。
ここでは、肉厚部37は、図4に示すように、貫通孔部32の貫通方向に直交する断面視において略台形状に突出する形状に形成されている。もっとも、肉厚部37は、断面視略台形状に限られず、矩形状、円弧状または三角形状等に突出する形状に形成されていてもよい。
一方、バンド20は、複数の被係止部22が形成された面の反対側の面に長手方向に沿って形成され、肉厚部37に対して摺動可能に嵌合する凹部27を有している。すなわち、肉厚部37は、バンド20の凹部27と嵌合することにより、貫通孔部32に挿通されるバンド20を貫通孔部32の貫通方向に案内するガイドとしての役割を果たす。
また、肉厚部37の支持面38側端部に設けられた補助支持面39は、貫通孔部32の貫通方向に直交する平面である。もっとも、補助支持面39は、貫通方向に直交する平面に限られず、ワイヤーハーネス1の外周形状に沿った曲面又は一対の傾斜面がV字状に並んだ形状等であってもよい。
バンド係止部40は、バンド20に係止して、バンド20をワイヤーハーネス1の外周部に巻き付けた形態に維持する部分である(図5参照)。ここでは、一対のバンド係止部40は、一対の貫通孔部32に挿通されたバンド20が、本体部30の挿入方向S後方に移動することを規制可能に形成されている。
バンド係止部40は、各貫通孔部32の内側に突出する形態で設けられている。このバンド係止部40は、係止姿勢と非係止姿勢との間で、基端側の支点部44を基点として姿勢変更可能に形成されている。ここで、係止姿勢とは、バンド挿通路34に進出して、各貫通孔部32に挿通されるバンド20の複数の被係止部22に対して選択的に係止可能な姿勢である。また、非係止姿勢とは、バンド挿通路34から退避した姿勢である。
バンド係止部40は、係止爪42と、支点部44と、ロック解除用押圧面48とを有している。より具体的には、バンド係止部40は、貫通孔部32のうちの中間壁部35に対向する内壁の一部から貫通孔部32の貫通方向一方(挿入方向S前方)且つ中間壁部35側に向けて突出する形状に形成されている。すなわち、バンド係止部40は、貫通孔部32の内壁に連続する支点部44により支持され、この支点部44から挿入方向S前方に延出する部分を有している。
係止爪42は、バンド20の被係止部22に対して係止する部分である。この係止爪42は、バンド係止部40のうち、支点部44より挿入方向S前方に延出する部位において、中間壁部35側に突出する形状に形成されている。係止爪42は、挿入方向Sに略直交し、挿入方向S前方を向く係止面を有している。ここでは、係止爪42は、挿入方向S前方に向けて徐々に突出寸法が大きくなる断面視略直角三角形状に形成されている。すなわち、係止爪42は、挿入方向S後方に面する傾斜面を有している。また、係止爪42は、被係止部22の内部に配設可能な大きさに設定されている。また、ここでは、バンド係止部40は、挿入方向Sに間隔をあけて2つの係止爪42を有している。なお、挿入方向Sにおける2つの係止爪42の間隔は、複数の被係止部22同士の間隔と略同じに設定されている。
そして、係止爪42は、バンド係止部40が係止姿勢にある状態ではバンド挿通路34内に進出する。貫通孔部32にバンド20が挿通されている状態では、係止爪42は、複数の被係止部22に対して選択的に嵌まり込んで係止する。また、係止爪42は、バンド係止部40が非係止姿勢にある状態ではバンド挿通路34から退避した状態で、バンド20の被係止部22に対して係止しない。そして、バンド係止部40がバンド20に係止した状態から、バンド20が貫通孔部32を挿入方向S前方に向けて移動されると、被係止部22の開口縁部が係止爪42の傾斜面に当接して、係止爪42は係止姿勢から非係止姿勢に姿勢変更する。その後、係止爪42は他の被係止部22に嵌まり込んで係止する。
ここでは、バンド係止部40は、支点部44を基点として弾性変形可能に形成されることにより、係止姿勢と非係止姿勢との間で姿勢変更可能にされている。支点部44は、それより挿入方向S前方側の部位より比較的薄肉に形成されている。これにより、バンド係止部40は、主として支点部44が弾性変形することにより、支点部44を基点として姿勢変更する。なお、バンド係止部40のうちの支点部44以外の部位が支点部44と同時に弾性変形し得ることは言うまでもない。
ロック解除用押圧面48は、支点部44よりバンド挿通路34側で挿入方向S後方に面する面である。ここでは、ロック解除用押圧面48は、ロック解除用突起部46の先端側の面である。そして、ロック解除用押圧面48は、挿入方向Sに直交する形状に形成されている。もっとも、ロック解除用押圧面48は、挿入方向Sに直交又は支点部44側からバンド挿通路34側に向けて挿入方向S後方に傾斜する形状等に形成されていてもよい。
ロック解除用突起部46は、支点部44よりバンド挿通路34側で、挿入方向Sにおいて支点部44より後方側に突起する形状に形成されている。このロック解除用突起部46は、貫通孔部32のうちの中間壁部35に対向する内壁に対して隙間をあけて突起している。また、ロック解除用突起部46は、バンド係止部40が係止姿勢から非係止姿勢に姿勢変更した際にも、バンド挿通路34に進出しない形状に形成されている。より具体的には、ロック解除用突起部46は、先端側の中間壁部35側の部位が先端側に向けて中間壁部35から離間する向きに傾斜している。
そして、ロック解除用押圧面48を挿入方向S後方から押圧することにより、バンド係止部40は、支点部44を基点として、係止姿勢から非係止姿勢に姿勢変更する。また、押圧状態を解除することにより、バンド係止部40は、自身の弾性により、非係止姿勢から係止姿勢に姿勢変更しようとする。この際、バンド係止部40は、貫通孔部32内にバンド20が挿通されていないか係止爪42の位置にバンド20の被係止部22が位置する場合には係止姿勢に姿勢変更し、係止爪42の位置に被係止部22同士の間の部分が位置する場合には該部分に当接して非係止姿勢に維持される。
固定部50は、本体部30を固定相手部90に対して固定する部分である。固定部50は、係止部52と、押え部56とを有している(図1参照)。
係止部52は、固定用孔部92の周縁部に対して本体部30の挿入方向S前方側から係止する部分である。この係止部52は、本体部30(ここでは挿入方向S前端部)の外周面から外周側に張り出す形状に形成され、本体部30の挿入方向S前方側から後方側に向けて徐々に張出寸法が大きくなっている。そして、係止部52は、先端側部分が自由端とされて内周側に向けて弾性変形可能に形成されている。係止部52の先端側部分には、挿入方向S後方に向かう係止面が設けられている。ここでは、係止面は、本体部30の挿入方向Sにおいて段階的に複数設けられている。すなわち、固定相手部90であるパネルの厚さによって周縁部に係止する係止面が変わる。また、ここでは、係止部52は、本体部30の外周部のうちの対向する2箇所に設けられている。
そして、係止部52は、本体部30が固定用孔部92に挿入されるにつれて内周側に弾性変形すると共に、係止面が固定用孔部92を越えると弾性変形前の形態に復帰する。これにより、係止部52は、係止面が固定用孔部92の周縁部に対して挿入方向S前方側から係止した状態となる。
押え部56は、固定用孔部92の周縁部に対して本体部30の挿入方向S後方側から係止する部分である(図5参照)。この押え部56は、本体部30(ここでは挿入方向S後端部)の外周部から外周側に張り出す鍔状に形成されている。ここでは、押え部56は、略楕円形状(具体的には一対の弧状部を一対の直線部が結ぶ形状)に形成されている。
また、押え部56の外周側部分は、外周縁部に近づくにつれて本体部30の挿入方向S前方側に向かう形状に形成されている。この押え部56の外周側部分は、挿入方向S後方に向けて弾性変形可能(皿バネ状)である。押え部56の外周縁部は、係止部52の各係止面に対して、固定相手部90の厚さ寸法より小さい間隔をあけて設けられている。
また、押え部56の内周側部分は、挿入方向Sにおいて、係止部52の各係止面に対して、固定相手部90であるパネルの厚さ寸法と同じかそれより大きい(ここでは僅かに大きい)間隔をあけて設けられている。
そして、押え部56は、本体部30が固定用孔部92に挿入されるにつれて挿入方向S後方に向けて弾性変形する。これにより、係止部52が固定用孔部92の周縁部に対して挿入方向S前方側から係止した状態で、押え部56は固定用孔部92の周縁部に対して挿入方向S後方側から係止する。すなわち、押え部56の弾性変形前の形状に復帰しようとして固定用孔部92の周縁部を押圧する力により、係止部52が固定用孔部92の周縁部に押し付けられ、固定用孔部92が挿入方向Sにおいて係止部52と押え部56との間に挟まれた状態に維持される。
小型突部60及び大型突部65は、ハーネスクランプ10が固定対象であるワイヤーハーネス1に対して中心軸周りに回転又は延在方向に移動することを抑制するための部分である。
小型突部60は、主として、小径のワイヤーハーネス1に対するハーネスクランプ10の回転及び移動を抑制する部分である。この小型突部60は、本体部30の支持面38から挿入方向S後方に突出する形状に形成されている。小型突部60は、本体部30の支持面38のうち、ワイヤーハーネス1が配索される配索方向Rにおけるバンド20(一対の貫通孔部32)の両側の位置に設けられている。また、小型突部60は、配索方向Rにおいて、中心に対する両側の位置に設けられている。すなわち、ここでは小型突部60は4つ設けられている。
この小型突部60は、配索方向Rにおいて、固定対象となるワイヤーハーネス1のうち最も小径なものの径より小さい(ここでは僅かに小さい)間隔で設けられている。また、小型突部60は、小径のワイヤーハーネス1の外周面に対して食い込み可能な突出寸法に設定されている。ここでは、小型突部60は、先端部に半球形状を有する円柱状に形成されている。
大型突部65は、大径のワイヤーハーネス1に対するハーネスクランプ10の回転及び移動を抑制する部分である。この大型突部65は、本体部30の支持面38から挿入方向S後方に突出する形状に形成されている。大型突部65は、本体部30の支持面38のうち、配索方向Rに直交する方向において、中心に対して小型突部60よりも外側に位置すると共に、配索方向Rにおけるバンド20(一対の貫通孔部32)の両側の位置に設けられている。また、大型突部65は、配索方向Rに沿った方向におけるバンド20の両側の位置に設けられている。すなわち、ここでは大型突部65も4つ設けられている。
より具体的には、大型突部65は、配索方向Rにおいて、大型のワイヤーハーネス1のうち最も小径なものの径(基準寸法(例えば5mm))より小さい(ここでは僅かに小さい)間隔で設けられている。また、大型突部65は、小型突部60より大きく突出する形状に形成されている。より具体的には、大型突部65は、大径のワイヤーハーネス1の外周面に対して食い込み可能な寸法に設定されている。ここでは、大型突部65は、ワイヤーハーネス1の配索方向Rに沿って扁平に形成されると共に、配索方向R及びその直交方向から見て先端部が円弧状に形成されている。すなわち、小型突部60及び大型突部65各々の頭頂部は、ワイヤーハーネス1の損傷防止のために、湾曲した面で形成されている。
<ハーネスクランプの取り付け>
ハーネスクランプ10の取付方法について説明する。
まず、ワイヤーハーネス1を、配索方向Rに沿わせて支持面38上に配設する(図7参照)。より具体的には、ワイヤーハーネス1を、支持面38上において、中心軸が配索方向Rに直交する方向におけるほぼ中心に位置するように配設する。すなわち、ワイヤーハーネスは、補助支持面39を含む中間壁部35の支持面38側端部上に配置される。なお、ワイヤーハーネス1は、バンド20を一方の貫通孔部32に通してから、支持面38上に配置してもよい。
次に、バンド20の長手方向中間部分を支持面38上のワイヤーハーネス1の外周部に巻き付ける形態で、該バンド20の両端側部分を一対の貫通孔部32に挿通した状態にする。ここでは、バンド20を挿入方向S前方から一方の貫通孔部32に挿通して本体部30の後方から引き出し、バンド20の長手方向中間部分をワイヤーハーネス1の外周部に巻き付けて挿入方向S後方から他方の貫通孔部32に挿通する。
ここでは、長手方向に連続したバンド材料をロール状に収納した供給源から連続供給する。より具体的には、まず、連続したバンド20(バンド材料)を一方の貫通孔部32に対して挿入方向S前方から挿入する。この際、バンド係止部40が係止姿勢にあるため、バンド挿通路34上から退避させる。すなわち、ロック解除用押圧面48を挿入方向S前方に向けて押圧し、バンド係止部40を非係止姿勢に姿勢変更させる。この作業は、押圧用の治具を用いて行うとよい。
バンド係止部40が非係止姿勢に姿勢変更されたままの状態で、バンド20を一方の貫通孔部32の挿入方向S後方から引き出していく。そして、バンド20を、一方の貫通孔部32から引き出しつつ、ワイヤーハーネス1の外周部に巻き付けていく。ここでは、まだ、押圧用治具によりロック解除用押圧面48を押圧してバンド係止部40を非係止姿勢に維持しておく。もっとも、バンド20を、一方の貫通孔部32から必要な長さ又はそれより多く引き出しておいて、ロック解除用押圧面48に対する押圧力を解除してもよい。
さらに、ワイヤーハーネス1の外周部を1周させたバンド20を、他方の貫通孔部32に対して挿入方向S後方から挿入する。この際、バンド20の端部又は被係止部22の被係止面が係止爪42の傾斜面に当接して、バンド係止部40が係止姿勢から非係止姿勢に姿勢変更される。また、被係止部22が係止爪42の位置に移動したとき、バンド係止部40は、係止爪42が被係止部22内に嵌まり込んで(バンド挿通路34に進出して)係止姿勢に姿勢変更する。
少なくとも、係止爪42(ここでは両方)が被係止部22に嵌まり込んで係止するまで、バンド20を他方の貫通孔部32に挿入してから、バンド20を締め付ける。ここでは、バンド20を、他方の貫通孔部32の挿入方向S前方から露出する(延出していなくともよい)まで挿通させている。この状態で、バンド20の少なくともどちらか一方の端部を挿入方向S前方に引っ張って、バンド20の長手方向中間部分がワイヤーハーネス1を締め付けて保持する。ここで、バンド20の端部を引っ張る際に、バンド20は、本体部30の挿入方向S後端部で、(特に大径のワイヤーハーネス1の場合)丸め部36に当接しつつ一対の貫通孔部32内に引き込まれる(図5参照)。このため、バンド20は、本体部30の挿入方向S後端部でも、屈曲されずに丸め部36の曲面に部分的又は全体的に沿って湾曲した形態となる。
そして、ワイヤーハーネス1は、バンド20により締め付けられることにより、支持面38、中間壁部35の支持面38側端部及び補助支持面39に対して押し付けられる。この際、バンド20の締め付け力により、ワイヤーハーネス1が一対の貫通孔部32を結ぶ方向に移動することがあり得る(図8参照)。本ハーネスクランプ10においては中間壁部35に肉厚部37が形成されているため、ワイヤーハーネス1は、平面視において、中間壁部35のうちの肉厚部37の他の部位に対してはみ出ても補助支持面39上に載置された状態に維持される。すなわち、ワイヤーハーネス1は、補助支持面39上に位置する範囲で一対の貫通孔部32内に入り込むことを抑制されると共に、肉厚部37の側方の位置においても貫通孔部32内への入り込みを最小限に抑制することができる。しかも、ここでは肉厚部37が配索方向Rにおいて中間壁部35の中間部に形成されているため、ワイヤーハーネス1のうちの一対の貫通孔部32の範囲を通る部位の少なくとも中間部分を支持できる。これにより、中間壁部35の両側においてワイヤーハーネス1が貫通孔部32内に入り込むことをより効果的に抑制できる。
以上により、バンド20によるワイヤーハーネス1の締め付け状態を維持することができる。この後、一方の貫通孔部32から挿入方向S前方から延出するバンド20を切断する。
次に、ワイヤーハーネス1を保持したハーネスクランプ10を固定相手部90に対して固定する。より具体的には、本体部30を挿入方向Sに沿って固定用孔部92に挿入することにより、本体部30が固定相手部90に対して固定される。すなわち、係止部52及び押え部56が、固定用孔部92の周縁部に対してそれぞれ挿入方向S前後から係止する。これにより、ワイヤーハーネス1のうちハーネスクランプ10が取り付けられた部分は、所定の固定相手部90に対して固定される。
上記構成に係るハーネスクランプ10(バンドロック構造部12)によると、本体部30が、ワイヤーハーネス1を配索方向Rに沿って支持する支持面38と、配索方向Rに沿って扁平な中間壁部35を介して並列状に形成されて支持面38で開口すると共に一方向に貫通してバンド20を挿通可能なバンド挿通路34を有する一対の貫通孔部32と、中間壁部35の支持面38側端部に補助支持面39を有して配索方向Rの一部において中間壁部35のうちの少なくとも一方の面から貫通孔部32内に突起する肉厚部37を有する。このため、配索方向Rに沿った中間壁部35上で支持面38上に配設されるワイヤーハーネス1をバンド20により締め付けても、中間壁部35のうち配索方向R一部で肉厚部37の補助支持面39上に支持されることにより、ワイヤーハーネス1の貫通孔部32内への入り込みを抑制することができる。しかも、肉厚部37は中間壁部35の配索方向Rの一部だけに形成されているため、材料の軽減を図ることもできる。
また、肉厚部37が、中間壁部35の両面から各貫通孔部32内に突起する形状に形成されているため、中間壁部35のうち配索方向R一部で肉厚部37の補助支持面39上に支持されるワイヤーハーネス1の貫通孔部32内への入り込みをより確実に抑制することができる。
また、肉厚部37が貫通孔部32の貫通方向において中間壁部35の両端に亘って延在し、バンド20が、複数の被係止部22が形成された面の反対側の面に長手方向に沿って形成され、肉厚部37に対して摺動可能に嵌合する凹部27を有している。このため、肉厚部37と凹部27とが嵌合した状態でバンド20が貫通孔部32に挿通され、貫通孔部32にスムーズにバンド20を挿通することができる。また、貫通孔部32内に突起する肉厚部37が形成されても、バンド20の幅方向一部分で長手方向に亘って厚さを確保でき、本体部30のサイズを維持したままでバンド20の強度を維持できる。
また、肉厚部37が、中間壁部35のうちの配索方向R中間部に設けられているため、ワイヤーハーネス1の貫通孔部32内への入り込みをより確実に抑制することができる。
これまで、肉厚部37が中間壁部35のうちの配索方向R中間部に設けられる構成について説明してきたが、肉厚部37は中間部からずれた位置に設けられていてもよい。また、肉厚部37が貫通孔部32の貫通方向において中間壁部35の両端に亘って形成されている例で説明してきたが、補助支持面39を有していればよく、支持面38側端部から貫通孔部32の貫通方向の中途部まで延在する形状に形成されていてもよい。なお、肉厚部37は、貫通孔部32の貫通方向に沿って直線状に延在する形状に形成されていることが好ましい。この形状により、金型成型を容易にすることができる。
また、小型突部60及び大型突部65を有する例でハーネスクランプ10を説明してきたが、小型突部60及び大型突部65は省略されてもよいし、それぞれ4つ以外の数設けられていてもよい。
また、これまで、バンドロック構造部12を含むハーネスクランプ10の構成について説明してきたが、バンドロック構造部12単体で用いてもよい。すなわち、ワイヤーハーネス1を構成する複数の電線等を結束して保持する用途でバンドロック構造部12を単体で用いることができる。図9及び図10には、バンドロック構造部12を、ワイヤーハーネス1の結束部材として用いる例を示している。なお、図9及び図10では、小型突部60及び大型突部65が設けられた例を示しているが、省略されてもよい。すなわち、バンドロック構造部12に、固定部50を設けることによりハーネスクランプ10として用いることができる。
バンドロック構造部12単体で用いる場合でも、ワイヤーハーネス1が、中間壁部35の配索方向Rの一部において肉厚部37の補助支持面39に支持されることより、バンド20の締め付け時に貫通孔部32内に入り込むことを抑制できる。
また、バンドロック構造部12を有するハーネスクランプにおいて、係止部52及び押え部56を有する固定部50とは異なる固定構造が採用されてもよい。例えば、粘着面を有して固定相手部90に対して貼り付け可能な固定構造、固定相手部90に対してネジ止め可能な固定構造等を採用することができる。
以上のように、バンドロック構造部12は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。