JP5805746B2 - 小型環状無線周波数イオントラップ質量分析器 - Google Patents

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Description

(発明の分野)
本発明は一般に、荷電粒子と、原子、分子、粒子、サブアトミック(sub−atomic)粒子およびイオンに由来する荷電粒子と、の質量電荷比に基づくイオンの蓄積、分離および分析に関する。より具体的には、本発明は、質量分析器に対して小型環状構成を使用した、質量分析法を実行する比較的に小さい携帯型装置である。
(関連出願の相互参照)
本明細書は、2005年12月13日に出願された米国特許仮出願第60/750277号(代理人事件整理番号05−62)に含まれる全ての内容の優先権を主張するものであり、この仮出願に含まれる全ての内容を参照によって含む。
本発明は、米国防総省国防脅威削減局(Defense Threat Reduction Agency)との契約第DTRA01−03−C−0047 PZ0001号およびダグウェイ実験場(Dugway Proving Ground)との契約第DABJ19−03−C−0005号の下、米国政府の支援によってなされたものである。
本発明は、荷電粒子と、原子、分子、粒子、亜原子粒子およびイオンから得られた他の荷電粒子との質量電荷比に従って、イオンの蓄積、分離及び分析をする方法を提供する。より詳細には、本発明は、質量分析器において質量分光測定法を行うための比較的小さく且つ携帯可能の装置に関する
質量分析法は、多種多様な試料中の化学元素および化合物を同定、定量する重要な方法であり続けている。質量分析法の高い感度および高い選択性は、脅威検出システム(例えば化学剤、生物剤、爆薬)、法医学調査、現場での環境モニタリング、不法薬物の検出/識別用途、その他において特に有用である。したがって、その場で実行することができる信頼性の高い質量分析器の必要性は、携帯型装置をよりいっそう有意義なものにする。携帯可能な質量分析計を開発する際に鍵となるいくつかの要素は、サイズ、重量および消費電力の低減、ならびに支援要求およびコストの低減である。
その単純さのため、小型化の候補として、イオントラップ(ion trap:IT)質量分析器が、本発明の発明者らによって選択された。例えば、IT分析器は、商業的に実現されたものであっても、本来的に小さい。IT分析器は、少数のイオン光学要素しか持たず、他のタイプの質量分析器に比べて、高度に正確な位置合せを要求しない。さらに、トラッピング装置であるため、単一の質量分析器で、質量分析法(MS)の複数の状態を実行することができる。イオントラップの動作圧力は他の形態の質量分析法よりも高く、そのためポンピング要件はそれほど厳しくない。さらに、高周波(RF)トラッピング電圧は、分析器の半径方向の寸法の二乗に反比例するため、分析器のサイズの小さな低減でも、動作電圧は大きく低下する。これにより、電力要求が低下する。低減された分析器サイズの追加の潜在的な利点は、真空要件をよりいっそう容易にすることができるより短いイオン経路長である。実際問題として、MSの小型化の最も制限的な態様のいくつかは、イオン光学構成要素にあるのではなく、真空組立体および他の支援組立体にあるため、より短いイオン経路長は特に重要である。
イオントラップ質量分析計を小型化できるかどうかは、空間電荷および機械加工公差の限界を含むいくつかの点にかかっている。現在の小型イオントラップは、従来のイオントラップ幾何形状(すなわち双曲面)を使用して存在している。本発明の装置と現状技術の装置の相対的なサイズの違いを理解するため、本明細書では、従来の、すなわち通常スケールの環状三次元質量分析器のrとしても知られている環状トラッピング容積の直径が、公称約1cmであるとみなされることを理解されたい。
これらの装置が小さくなるにつれ、トラッピング場欠陥において、機械加工公差がますます重大な役割を演ずることも重要である。したがって、幾何形状を単純化して、より容易に機械加工される設計にすることは、従来技術に優る利点となるであろう。
円筒の単純化されたまっすぐな線は、双曲面、特に小さな寸法の双曲面よりも、機械加工がかなり容易であるため、円筒形イオントラップ質量分析器が小型化された。分析器電極の幾何形状が理論上の幾何形状からかなり外れると、円筒形イオントラップの場合と同様に、トラッピング場電位をその理論上の値に戻すのに補正が必要となる。この作業には、モデリングおよびシミュレーションプログラムが広範囲に使用された。
不利には、分析器サイズの低減から得られる利得(例えば、低重量および小サイズによる可搬性の増大、RF発生器のより低い出力および緩和された真空要件)は、現状技術の質量分析器のイオン蓄積容量の低減によって明らかに相殺される。この低減された容量に付随して、イオンとイオンの反発に基づいて空間電荷状態が早期に始まり、その結果、質量分解能が低下し、質量ピークが移動する。イオン質量分析計におけるこの制約に対処しようとする努力は、異なるいくつかの方法につながった。例えば、いくつかの低容積の円筒形イオントラップを配列することは、失われたイオン容量を回復させる1つの方法である。より最近には、半径方向または軸方向に放出する直線イオントラップも開発された。イオン蓄積容量の増大は、二次元四重極ロッドアレイの全長にわたって使用可能な容積による。これらの装置は現在、市販品として容易に入手使用可能である。
三次元四重極イオントラッピング(捕捉)場に近づけるために円筒形イオントラップ幾何形状が使用される理由と同様の理由から、従来の四重極ロッド双曲面の代わりに長方形のロッド組立体を使用する直線イオントラップが報告されている。これらの直線装置は全て、四重極アレイの両方の端部上にイオンゲートを有する伝統的な二次元四重極を使用することによって、イオン蓄積容量の増大を提供する。直線四重極アレイも報告されている。
第1の実施形態では、本発明が、低減された寸法にもかかわらず、約1kVp−p未満のRFトラッピング電圧で動作する、環状(トロイダル)高周波(RF)イオントラップ質量分析器の約1/5スケールバージョンであり、従来の三次元四重極イオントラップとほぼ同じイオントラッピング容積(捕捉容積)を保持し、湾曲した幾何形状は、コンパクトな質量分析器の構築および従来の電子増倍管との容易なインタフェースを可能にする。
本発明のこれらの目的、特徴、利点および代替態様、ならびにその他の目的、特徴、利点および代替態様は、以下の詳細な説明を添付図面とともに検討することによって、当業者に明白となろう。
イオン蓄積領域を露出させるためにフィラメント端部キャップが取り外された小型環状RFイオントラップ分析器である。 主要構成要素を示す図1の小型環状RFイオントラップ分析器の概略断面図である。 図1の小型環状RFイオントラップ分析器の概略透視図である。 図1の小型環状RFイオントラップ分析器の写真である。 7種類の化合物を使用した質量較正である。 n−ブチルベンゼンに対して取得されたスペクトルである。m/z91のピークに対するFWHM質量分解能は0.4daである。 全てのキセノン同位体の分解を示すキセノンに対して取得されたスペクトルである。 低い試料圧力および短いイオン化時間でナフタレンに対して取得されたスペクトルである。 3つのスリットを有し、凹んだ架橋部を持たない端部キャップ(フィラメントまたは検出器)の透視図である。 図9の端部キャップの断面図である。 3つのスリットおよび3つの凹んだ架橋部を有する端部キャップ(フィラメントまたは検出器)の透視図である。 図11の端部キャップの断面図である。 検出器を保護する検出器ゲートを備えた検出器端部キャップの透視図である。 図13の端部キャップの断面図である。
次に、本発明のさまざまな要素に数表示が与えられた図面が参照され、それらの図面では、本発明が、当業者が本発明を製作し使用することができるように論じられる。以下の説明は、本発明の原理を例示するものでしかなく、以下の説明が、前記特許請求の範囲を狭めるものと解釈されてはならないことが理解されなければならない。
他の設計よりも増大されたイオン蓄積を提供し、小型化になじむ1つの分析器構成は、環状RFイオントラップである。環状RFイオントラップは、空間内で縁を軸に回転させた従来の三次元イオントラップ断面、または曲げられて端と端が接続された直線四重極と見ることができる。いずれにせよ、蓄積領域の湾曲によって導入される四重極トラッピング場に対する歪みは、装置の性能を低下させ、必要なトラッピング場を生み出すための電極形状の補正を必然的に要求する。この場補正の結果は、イオン放出特性を向上させるために意図的に追加されたわずかな非直線(主に八重極)場の寄与を有す1次の二次元四重極トラッピング場である。
その幾何形状のため、環状RFイオントラップは、円形の蓄積リング内にイオンを分布させることにより、比較的に大きな容積の中にイオンを蓄積する。以前に報告された環状RFイオントラップ幾何形状に基づく小型イオントラップ質量分析器が製作され、予備的データが得られた。
この小型分析器は、そのよりも大きな以前の分析器と同じ最適化された幾何形状(非対称形の電極)を使用する。装置の半径とRF動作電圧との間の逆関係から分かるとおり、その低減された半径方向の寸法(r)のため、環状RFイオントラップはかなり低いRF電圧(V)で動作する。
低減された半径方向の寸法にもかかわらず、小型環状RFイオントラップは、半径方向の寸法が1cmの通常サイズの市販イオントラップ質量分析計とほぼ同じイオン蓄積容積を有する。しかし、この装置は、市販のイオントラップの場合のように約15kVp−pのRF電圧で動作するのではなく、1kV程度で動作する。
この環状RFイオントラップ幾何形状は、小型質量分析器として、いくつかの固有の利点を提供する。イオントラップとして、それは、以前に論じられた利点の全て(すなわちサイズ、電極の単純さ、圧力公差、MSなど)を保持する。全てのイオンは、単一のトラッピング場内に封じ込められ、そのため、アレイとは違い、アレイのそれぞれのセルからの等しい照射またはサンプリングを保証するために、個々のアレイを整合させる際の懸念、あるいはイオン源または検出器をインタフェースする際の懸念がない。実際、その円形の形態は、イオン化器および電子増倍管検出器に容易にインタフェースすることができるコンパクトな幾何形状を提供する。
最後に、従来の直線四重極イオントラップとは対照的に、トラッピング容積全体を通してトラッピング場が均質であり(すなわちトラッピング容積が環状であるため末端効果がなく)、所与の質量電荷比(m/z)の全てのイオンが同時に放出される。
図1〜図4に示されているように、小型環状RF質量分析器10は3つのセクション、すなわちイオン化器組立体12、トラッピング領域14および検出器組立体16からなる。
イオン化器組立体16は質量分析器のイオン源である。したがって、このイオン源は、当業者によって理解されるように、外部的にイオンを生成する手段およびトラッピング容積内でイオンを発生させる手段の全てを含む。
トラッピング領域14は、図1の写真および図2の断面図から分かるように、4つの別個の電極(フィラメント端部キャップ18、検出器端部キャップ20、内リング電極22および外リング電極24)から形成される。4つの電極18、20、22、24の名称は、それらの三次元トラップ起源に歴史的に由来し、この組立体内でのそれらの位置を指示する(すなわち、フィラメント端部キャップ18はイオン化器に最も近く、検出器端部キャップ20は検出器に最も近いなど)。この三次元イオントラップの性質は、伝統的な「軸方向」および「半径方向」という寸法用語を依然として有効にするが、断面トラッピング幾何形状だけが考慮される場合には、見かけ上は、直線四重極モデルのほうがより適当である。
慣例上、ここではx次元が、(内リングおよび外リング22、24の方向の)非放出次元として定義され、y次元が、(フィラメント端部キャップ18および検出器端部キャップ20の方向の)放出次元として定義され、z次元は環状トラッピング場の接線方向である。電極18、20、22、24は、0.0127mm(0.0005インチ)に指定された機械公差で316ステンレス鋼から精密機械加工された。トロイド組立体10の寸法は、(通常サイズの)原バージョンのサイズの1/5に縮小され、原バージョンに対して決定されたのと同じトラッピング場に対する形状補正を維持した。この小型装置の半径(r)は0.2cmであるアルミナまたはVespel(商標)からスペーサが機械加工され、これらのスペーサは、ラッピング領域内およびにトラッピング領域外への気体の伝導を可能にするスリットを提供する。イオン化電子がトラッピング領域14に入り、放出されたイオンが検出器組立体16の検出器に向けて出ていくことを可能にするため、プランジ(plunge)放電加工(electro−discharge machining:EDM)技法を使用して、2つの端部キャップ18、20に、寸法0.28mmの入口および出口スリットが機械加工された。
この小型環状RFイオントラップ質量分析器は、よりいっそう小さなサイズ、おそらく従来の三次元構成のサイズの1/50という小さなサイズに縮小することができると考えられている。
小型電子銃30は、加熱されたフィラメントからの放出によって形成された源の電子を、3要素アインツェル(Einzel)レンズ32、次いで環状端部キャップスリットの小セクションを通して集束させるように設計された。この電子集束組立体の真ん中のレンズ(L2)は、イオン化をオンまたはオフにするゲートの働きもする。L2の電圧を、−50V(イオン化オフ)と+125V(イオン化オン)の間で変化させるように、カスタム回路が設計された。電流制御電源(Lambda社、Model LPT−7202−FM)が、公称20eVの電子エネルギーと公称1.5Aのフィラメント電流の両方を提供した。
分析器サイズが相対的に小さいため、原バージョンにおいて以前に使用されたマイクロチャネルプレート検出器の代わりに、より頑丈な従来の連続ダイノード電子増倍管検出器(continuous dynode electron multiplier detector:CDEM)34が使用された。10−2mbarまでの圧力に対してほぼ1kVで>10の利得を提供するカスタムCDEM(Detector Technologies社)が開発された。カスタム回路が、検出器端部キャップと電子増倍管の間のレンズ要素にゲーティング電圧を提供した。この回路は、検出器ゲート閉構成と検出器ゲート開構成の間で切り替わった。高電圧電源(Bertan/Speliman社、Model230)が検出器バイアスを提供した。
RFトラッピング場は、公称周波数1.9MHzの特注のクラスC自己共振タンク回路を使用して確立された。内リング22と外リング24の両方にRF信号が加えられた。イオン化の間および走査のイオン冷却部分の間、RFトラッピング電圧の振幅は一般に、約100〜200Vp−pであった。質量分析の間に、RF振幅は次いで、約200msにわたって、所望の質量範囲に応じて約700〜1200Vp−pまで走査された。次の走査の前に残りの全てのイオンがトラップを出ることができるように、それぞれの走査の終わりに、RF振幅は短時間(5ms)オフにされた。スペクトルを生み出すための共振放出周波数(900kHz、8Vp−p)をRF走査の間に提供するために、任意波形発生器(Agilent Model33250A)が使用された。この信号は、マシュー(Mathieu)の「a」パラメータの変動を可能にするDCオフセット回路をさらに含むカスタムバラン(Balun)増幅器を介して、両方の端部キャップ18、20に加えられた。
現在のところ全長の大部分を含むイオン化器組立体12および検出器組立体16を含め、図3に示された質量分析計分析器10の直径は全体で5cm、長さは全体で10cmでしかない。この質量分析計は、20m/hの機械式ポンプ(BOC Edwards社、Model E2M18)によって支援された230L/sのターボポンプ(BOC Edwards社、Model EXT255)によってポンピングされたカスタム真空室に封入された。全範囲冷陰極真空計/コントローラ(Pfeiffer社、Model FJKR251/261)を使用して圧力が監視された。圧力の読みは全て、補正されてない値として報告される。
試料は、精密ニードル弁(Nupro/Swagelok社)または可変リーク弁(Granville−Phillips社)を通して、何も加えずに真空室に直接に導入された。全ての試料は、メーカによって供給された試薬グレードであった。
データを取得するために、単純な4セグメント走査機能が使用された。イオン化期間(10〜100ms)後にイオン冷却期間(約10〜30ms)が続いた。走査機能の3番目のセグメントは、質量分析を実行するためRFを傾斜させ、その後に、RFがオフの期間(約5ms)が続き、次の走査に備えてトラッピング容積14から全てのイオンが排除された。これらの走査機能セグメントのタイミングは、PIC−16C770(Microchip Technology社)ディジタルマイクロコントローラによって制御された。このPICはICインタフェースを介してプログラム可能であった。このPICにタイミング値をセットするために、Windowsベースの制御プログラムであるAardvark IC Control Center(Total Phase社)が使用された。次いで、信号取得積算器の開始、RF傾斜(ramp)の開始、任意波形発生器の制御、イオン化器および検出器のゲーティング、ならびにRFのオン/オフ状態を制御するために、PICからのディジタルI/O出力が使用された。
RF傾斜を制御するための可変変調電圧をRF発生装置に提供するために、マルチポートコネクタパネル(National Instruments社、Model BNC2110)に結合された多機能データ取得(DAO)ボード(National Instruments社のModel6115(米テキサス州Austin))が使用された。検出器からの信号は、カスタム前置増幅器を使用して積算され、ディジタルオシロスコープ(Agilent、Model64522A)またはDAOボードに送られ、そこで、多機能DAOのアナログ−ディジタルチャネルの1つによってディジタル化された。
同期パルスが、信号積算器とRF傾斜の両方を同時に始動させた。この信号積算器は30kHzで動作し、33.3μsごとに、ディジタル化された信号強度を提供した。一般的なRF走査は、200msで約300ダルトンをカバーし、ダルトンあたり約0.67msを可能にするであろう。したがって30kHzでは、公称質量ごとに約20サンプルが取得された。出力中の信号積算数は時間と直線関係にあり、したがって、取得されたデータに対して質量スケールを較正するために、信号積算器のカウントが使用された。
オペレータ入力およびデータ出力は、Labview7.1(National Instruments社)の中にプログラムされたカスタム測定器制御スクリーン上で制御され、表示された。表示のためのデータ操作は、スペクトル平均算出(一般に4〜8走査)、ハニング(Hanning)フィルタリング、および散弾雑音の排除を含んだ。後の図に示されたデータは全て、ユーザインタフェース上に表示された取得された信号の直接のスクリーンダンプである。
環状RFイオントラップ10は二次元トラッピング装置であるため、分析器の湾曲によって導入される歪みを補償するために使用される場補正が適切である場合には、断面トラッピング場は直線四重極に非常によく似ているはずである。このことの含意は、伝統的な三次元イオントラップとは違い、x次元とy次元に対するq値(したがってβ値)は同じでなければならないということである。これはしたがって、x次元とy次元のイオンのセキュラ(secular)周波数が同じか、そうでなければ同様であることを要求する。(意図的にまたは意図せずに導入された)より高次の場の有意な寄与が存在することが予想されるため、x次元とy次元のイオン運動の結合が予想される。共振放出中にイオンのy次元運動に結合されたエネルギーは、続いてx次元運動に結合され、質量分析中にイオン雲の広がりを引き起こすことができる。小さな直流(dc)電圧を端部キャップ18、20またはリング電極22、24に加えると、取得されたデータの質量分解能が向上することが見いだされた。dc成分は、安定方程式中のマシューの「a」パラメータを変化させる。二次元四重極装置ではβ=βであるため、a値がゼロのときにだけ、a値の任意の変化は、βパラメータとβパラメータを分離する(対応してxセキュラ周波数とyセキュラ周波数を分離する)。これを達成するため、一般に、動作中にバランボックスを通して両方の端部キャップ18、20に負電圧(約−1ボルト)が印加された。
7つの異なる試料(ベンゼン、n−ブチルベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ナフタレン、キセノンおよびトルエン)に対する質量スペクトルデータが得られ、それらのデータが、図5に示された質量較正グラフを作成するために使用された。RF振幅は直線的に走査され、試料積算器はRF傾斜の初めに開始されたので、試料積算器の数とRF振幅の間には直接の直線関係がある。較正表は、質量とRF振幅の間の予想される直線関係を示す。
n−ブチルベンゼンに対して得られたスペクトル(試料圧力1×10−5mbar、補正なし)が図6に示されている。はめ込み図は、明確に分解されたm/z91/92における2重ピークを示す。m/z91のピークに対する質量分解能の測定値は、0.4daの半波高全幅値(FWHM)を与えた。このスペクトルは、200msの間にRF振幅を、190から1200Vp−pまで走査することによって得られた。RF周波数は1.9MHzであり、RF振幅走査中にイオンを放出するために(βeject値約0.95に対応する)900kHzの共振放出周波数が使用された。RF走査の間、端部キャップ18、20には−890mVのDCオフセットが印加された(すなわちa≠0)。
図7は、キセノンに対して得られたスペクトルを示す。予想された同位体パターンが観察され、それぞれの同位体は明確に分解された。開発の早期にもかかわらず、2×10mbarという低い圧力および20msという短いイオン化時間で、試料に対する高い信号対雑音スペクトルが得られた。これらの条件下のナフタレンのスペクトルが図8に示されている。このナフタレンスペクトルのm/z102の小さいピークは依然として明らかに観測可能である。
環状RFイオントラップ質量分析器のさらなる小型化は、機械加工公差によって大幅に限定される。前述のとおり、機械加工中の電極寸法は、現在の機械加工能力の限界または限界の近くにある0.0127mm(0.0005インチ)の公差に指定された。この装置の公差の重要性は、開発中に、伝統的な酸化アルミニウム研磨法を使用してプロトタイプの分析器が不適当にクリーニングされたときに強調された。クリーニング中に、外リング電極24の形状が約0.127mm(0.005インチ)変更されたことが、座標測定機によって測定され、その結果、システムが再組立てされ、試験されたときにイオン信号は完全に失われた。外リング電極24を交換するとシステム性能は正常に戻った。
RF駆動周波数、βeject値およびマシューのa値を含む動作パラメータを(端部キャップにDCオフセットを加えることによって)最適化する努力を続けると、質量分解能の追加の向上が可能である。さらに、RF増幅器のさらなる改良(より高い周波数、増大された周波数および振幅安定性)は、質量分解能も向上させ、この質量分解能の向上は、現在の低い走査速度を、単位質量分解能を犠牲にすることなく増大させる。プロトタイプシステムとして、配線および遮蔽は最適化されず、それによって、システムの電子雑音レベルは所望のレベルよりも高くなった。
最後に、環状トラッピング場の質をさらに向上させるために、Femlab(商標)、POISSON(商標)(米ロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory))などの電界分析プログラムを使用して、追加のトラッピング場シミュレーションを使用することができる。通常サイズのバージョンに対する幾何形状の最適化における以前の努力は、トラッピング場の1つの次元、すなわち放出(y)次元だけに集中した。非放出次元(x)が依然としてかなりの非線形性を有することは知られている。
前述の環状RFイオントラップ質量分析器の寸法は単に例示のためであることに留意されなければならない。特定の寸法または与えられた他の動作パラメータによって、本発明が限定されると考えてはならず、単なる一例と考えなければならない。当業者の理解に従って、多くの寸法および動作パラメータは変更することができ、質量分析器は依然として希望どおりに動作する。
小型環状RFイオントラップ分析器は、従来技術において以前に教示されていることを考えると、小型環状RFイオントラップ分析器が最適化された方法で動作することを可能にする、分析器設計の改良について論ずることが適当である。
本発明の第1の実施形態では、端部キャップ18、20ならびに内リング22および外リング24によって画定されたトラッピング領域14にイオンが入れられ、そこから出る手段が提供されなければならないことが留意される。イオンの入域および放出は、フィラメント端部キャップ18および検出器端部キャップ20のスリットおよび凹んだ架橋部(ブリッジ)によって達成される。
イオントラップ質量分析器の分析器寸法がますますより小さくなるにつれ、機械加工欠陥および他の場欠陥がかなり増大し、このことが、イオントラップのトラッピング性能および質量分析性能に有害な影響を及ぼす可能性がある。トラッピング場の不連続は、所望の本質的に四重極のトラッピング場に対する摂動として現れる。均質なトラッピング場は、トラッピング容積全体を通じて電極表面が同じであることを要求する。しかし、イオン化中のトラッピング容積内への電子またはイオンの入場および走査中の検出器への質量放出を提供するため、フィラメント端部キャップ18および検出器端部キャップ20にスリットが切られる。フィラメント端部キャップおよび検出器端部キャップ18、20の内側部分42と外側部分44の間の接続を維持するため、円筒形に完全に一周するスリットを切ることはできない。したがって、内側部分と外側部分44の間には架橋部が提供される。
図9は、端部キャップの透視図として提供される。フィラメント端部キャップ18と検出器端部キャップ20はともにイオンを通過させなければならない。したがって、示された端部キャップ(以後フィラメント端部キャップまたは検出器端部キャップ20)は、内側部分42および外側部分44を本質的に生み出す3つのスリット40を有する。この図では、3つの架橋部46が端部キャップの表面よりも凹んでおらず、内側部分42および外側部分44の表面と同じ高さであることに留意されたい。端部キャップを貫通するスリットの数は必要に応じて変更することができ、この実施形態に示された3という数は、この実施形態を限定する因子でないことを理解することが重要である。
図10は、図9に示された端部キャップの断面図として提供される。スリット40は、内側部分42と外側部分44を完全に分離する。架橋部46は、内側部分42および外側部分44の表面と同じ高さであるものとして示されている。(トラッピング場または端部キャップ電極の表面にあるときに)これらの架橋部46は、トラッピング場の不連続を生み出し、したがって架橋部の影響を最小化することが望ましい。
図11は、3つのスリット40をやはり有する端部キャップの透視図として提供される。しかし、この図では、3つの架橋部48が端部キャップの表面よりも凹んでいる。凹んだ架橋部48は、図12に示された端部キャップの断面図においてよりはっきりと見ることができる。本発明の第1の実施形態はしたがって、端部キャップ電極の全厚を部分的にしか貫通していない、完全な円すなわち360°の円であるスリットを含む。使用されるとき、機械式架橋部48はスリット40の中に凹む。トラッピング領域14におけるイオン蓄積の間、イオンは、トラッピング場のすぐ近くで均一なスリット40と出合い、このようにしてトラッピング場に対する架橋部48の影響は最小化される。
第2の実施形態では、本発明の他の態様が、小型環状RFイオントラップ分析器のサイズを最適化することである。伝統的な通常サイズの市販三次元イオントラップ質量分析器は、1cm程度のトラッピング室半径を有する。そのため、最大質量範囲650da、動作周波数(Ω)1.1MHzでリング電極に印加される最大RF電圧は、約15kVp−pである。対照的に、半径寸法が同じで、円環体の半径(R)と断面トラッピング場の半径(r)との間の比が約3:1である環状イオントラップ幾何形状は、従来の三次元分析器のほぼ400倍のイオン蓄積容積を有するであろう。このより高いイオン容量を、分析器のサイズと交換することができる。言い換えると、従来の設計のイオントラップとほぼ同じ蓄積容積を有する環状RFイオントラップは、その従来のイオントラップよりもずっと小さくすることができる。前述の理由から、結果として生じるより小さなイオントラップ動作パラメータは、下記の線形四重極マシュー安定方程式によって決定される。
Figure 0005805746
トラッピング場の半径(r)を縮小することによってイオントラップの容積が低減されると、同じトラッピング状態を維持するために必要なRF電圧(V)は、rの変化の二乗分、低減される。サイズの低減量に対する考慮事項には、1)検出器の入口コーン(cone)とのイオン光学結合、ならびに2)質量範囲およびRF最大動作電圧が含まれる。rの低減は、より小さな質量分析器につながるだけでなく、より低いRF動作電圧にもつながる。rの値は、小型化された環状RFイオントラップ分析器のおおよそのイオン蓄積容量が、半径1cmの従来の市販三次元イオントラップのイオン蓄積容量と同様になるように選択することができる。
質量分析器のサイズの最適化は、性能の向上としても理解されるべきである。より小さな質量分析器は、トラッピング容積内へおよびトラッピング容積から検出器にイオンをより容易に移動させる。
本発明の第3の実施形態では、本発明の他の態様が、イオン化中にトラッピング容積の内側と外側の両方のイオンから検出器を保護することが望ましいことである。これらのイオンの給源はいくつかある。例えば、イオン化事象中に、大きなイオン電流が、(散乱によって)間接的に、イオントラップ分析器を通して、またはそれらの安定性パラメータが安定性境界の外側にあり、そのためトラップから検出器内へすぐに放出されるイオンの形成によって、検出器組立体16の検出器に到達する。この余分な非質量分析電流は、検出器の寿命を短くする有害な影響を有する。イオン化中の検出器信号を妨げ、それによって検出器の寿命を延ばすことが望ましい。
この問題に対処する1つの方法は、イオン化中、検出器をオフにし、次の質量分析走査で再びオンにする方法である。しかし、検出器電圧のオン/オフの切替えは、一般的な検出器の動作電圧(>1kV)では低速であり、これによりシステムのデューティサイクルを低下させる。
透過格子は、検出器へのイオンの通過を適度に遮断することができるが、透過格子は、分析走査の質量分析部分の間に信号を減衰させる有害な効果も有する。したがって、この実施形態では、バイアスされたときにイオンビームが検出器組立体16に入ることを防ぐ環状検出器ゲートを含むことが有利である。
図13は、環状検出器ゲート50の透視図として提供される。図14は断面図として提供される。放出イオンをスリットからそらすために、イオン化の間、ゲート50の内側部分52および外側部分54には二極性電圧(+/−)が印加される。ゲート50の両方の部分52、54上の電圧が同じ極性(一般にグラウンドまたはわずかに負)に切り替えられると、ゲートは、検出器にビームを集中させるのを助けるレンズの働きをすることができる。しかし、ゲートはイオンを集中させることはできず、検出器へのイオンの通過を可能にするだけである。
さらに、検出器ゲートスリット56は、検出器ゲートの架橋部がその経路を効果的に遮断したときに、フィラメントから検出器領域への見通し線がないように配置される。ゲートの使用は、走査の間中、検出器電圧をオンのままにしておくことを可能にするため、この「架橋部」整列はさらに、イオン化中の検出器信号の量を低減させるのを助ける。
検出器の寿命を長くすることに加えて、検出器ゲートは、他の利点を提供する。例えば、検出器ゲートの使用は、検出器をオンのままにしておくことを可能にする。検出器をオンに保つことによって、そうしなければ検出器への高電圧電源をオンおよびオフにするために必要となる有限の時間が、質量分析器のデューティサイクルから除かれる。その結果は、分析走査のデューティサイクルの増大である。
検出器ゲートの他の利点は、当業者によって理解されるように、システムの潜在的な雑音の低減である。
上記の配置は、本発明の原理の応用を単に例示したものであることが理解されなければならない。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の変更および代替配置を考案することができる。添付の特許請求の範囲は、このような変更および配置をカバーすることを意図したものである。

Claims (12)

  1. 荷電粒子と、原子、分子、粒子、亜原子粒子およびイオンから得られた他の荷電粒子との質量電荷比に従って、イオンを分離する方法において、
    前記イオンの分離は、小型環状高周波(RF)のイオントラップ質量分析器(10)を使用して行われる、前記イオンを分離する方法において、
    1)トラッピング容積を提供する工程であって、前記トラッピング容積は、フィラメント端部キャップ(18)と、検出器端部キャップ(20)と、前記検出器端部キャップ(20)を通して前記トラッピング容積から放出されたイオンを検出する検出器(16)と、内リング(22)と、外リング(24)とを含み、それによって、イオンを蓄積する四重極トラッピング場を発生させる、トラッピング容積を提供する工程と、
    2)前記フィラメント端部キャップ(18)および前記検出器端部キャップ(20)に、複数のスリット(40)および複数の架橋部(46、48)を配置する工程であって、前記複数の架橋部(46、48)が、前記フィラメント端部キャップ(18)および前記検出器端部キャップ(20)の表面よりも窪められて、前記四重極トラッピング場の不連続を最小化する、複数のスリット(40)および複数の架橋部(46、48)を配置する工程と、
    3)前記検出器端部キャップ(20)と前記検出器(16)との間に、検出器ゲート(50)を配置する工程であって、前記検出器ゲート(50)が、前記トラッピング容積から前記検出器(16)へのイオンの流れを制御し、それによって、前記検出器(16)の、寿命を延ばし、潜在的な雑音を低減し、デューティサイクルを向上する、検出器ゲート(50)を配置する工程と、を含む方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、イオン源(12)を提供する工程であって、複数のイオンを生成し、当該複数のイオンを、前記フィラメント端部キャップ(18)を通して、前記トラッピング容積内に導入する、イオン源(12)を提供する工程をさらに含む、方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、内側部分および外側部分からなる環状検出器ゲート(50)を提供する工程をさらに含む、方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、
    1)前記検出器(16)からイオンをそらすために、前記検出器ゲート(50)の前記内側部分と前記外側部分とを異なる電位でバイアスする工程と、
    2)前記検出器(16)まで前記イオンを通過させるために、前記検出器ゲート(50)の前記内側部分と前記外側部分とを同様の電位でバイアスする工程と、をさらに含む、方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、従来の環状RFイオントラップ質量分析器(10)のスケールに比して1/2から1/50のスケールで、前記小型環状RFイオントラップ質量分析器(10)を製造する工程をさらに含む、方法。
  6. 請求項5に記載の方法において、前記小型環状RFイオントラップ質量分析器(10)を、従来の環状RFイオントラップ質量分析器(10)のスケールに比して1/5のスケールで製造する工程をさらに含み、前記環状トラッピング容積が、前記従来スケールの三次元RFイオントラップ質量分析器(10)のトラッピング容積にほぼ等しい、方法。
  7. 請求項1に記載の方法において、前記小型環状RFイオントラップ質量分析器(10)全体の低減されたサイズによって、前記小型環状RFイオントラップ質量分析器(10)の電力要求を低減させる工程をさらに含む、方法。
  8. 請求項1に記載の方法において、前記小型環状RFイオントラップ質量分析器(10)全体の低減されたサイズによって、当該小型環状RFイオントラップ質量分析器(10)中のイオンの経路長を低減させることを含む、方法。
  9. 荷電粒子と、原子、分子、粒子、亜原子粒子およびイオンから得られた他の荷電粒子との質量電荷比に従って、イオンを分離するシステムにおいて、
    前記イオンの分離は、小型環状高周波(RF)のイオントラップ質量分析器(10)を使用して行われる、前記イオンを分離するシステムにおいて、
    トラッピング容積であって、フィラメント端部キャップ(18)、検出器端部キャップ(20)、内リング(22)および外リング(24)を含み、それによって、イオンを蓄積する四重極トラッピング場を発生させる、トラッピング容積と、
    前記検出器端部キャップ(20)を通して、前記トラッピング容積から放出されたイオンを検出する検出器(16)と、
    前記フィラメント端部キャップ(18)を通して、前記トラッピング容積内にイオンを導入するイオン源(12)と、
    前記検出器端部キャップ(20)と前記検出器(16)との間の検出器ゲート(50)と、を含み、
    前記検出器ゲート(50)がさらに、内側部分(52)および外側部分(54)からなる環状検出器ゲート(50)からなる、システム。
  10. 請求項に記載のシステムにおいて、前記検出器ゲート(50)の前記内側部分と前記外側部分とを、異なるようにまたは同じようにバイアスするバイアス手段をさらに含み、それによって、前記検出器ゲート(50)からイオンをそらし、または前記検出ゲートまで前記イオンを通過させる、システム。
  11. 荷電粒子と、原子、分子、粒子、亜原子粒子およびイオンから得られた他の荷電粒子との質量電荷比に従って、イオンを分離するシステムにおいて、
    前記イオンの分離は、小型環状高周波(RF)のイオントラップ質量分析器(10)を使用して行われる、前記イオンを分離するシステムにおいて、
    前記質量分析器(10)が、トラッピング容積であって、フィラメント端部キャップ(18)、検出器端部キャップ(20)、内リング(22)、および外リング(24)を含み、それによって、イオンを蓄積する四重極トラッピング場を発生させる、トラッピング容積と、前記検出器端部キャップ(20)を通して、前記トラッピング容積から放出されたイオンを検出する検出器(16)と、前記トラッピング容積内にイオンを導入するイオン源(12)とを含む、システムにおいて、
    前記検出器端部キャップ(20)と前記検出器(16)の間の検出器ゲート(50)を含み、
    前記検出器ゲート(50)がさらに、内側部分(52)および外側部分(54)からなる環状検出器ゲート(50)からなる、システム。
  12. 請求項11に記載のシステムにおいて、前記検出器ゲート(50)の前記内側部分と前記外側部分とを、異なるようにまたは同じようにバイアスするバイアス手段をさらに含み、それによって、前記検出器ゲート(50)からイオンをそらし、または前記検出ゲートまで前記イオンを通過させる、システム。
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