JP5804433B2 - スピーカ装置およびスピーカ装置の組立セット - Google Patents

スピーカ装置およびスピーカ装置の組立セット Download PDF

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振動板を有したスピーカユニットと、バッフル板とを備えたスピーカ装置、およびその組立セットに関する。
スピーカユニットにおけるコーン紙等の振動板から前後に放射される逆位相の音波が互いに打ち消し合うことを防止するため、スピーカユニットの後側に放射される音波が前側に回り込まないように遮断するバッフル板を備えた平面バッフル型のスピーカ装置が知られている。この平面バッフル型のスピーカ装置は、バッフル板のみでスピーカユニットの後側に放射される音波が前側に回り込まないように遮断する方式であり、スピーカユニットの後側が解放され、振動板が背圧のかからない状態で振動する。このため、振動板に背圧がかかって振動板の動作が抑制されてしまう密閉型やバスレフ型と比べて、平面バッフル型のスピーカ装置は、開放感のある音の再生を楽しむことができる。しかし、スピーカユニットの後側から前側に回り込んでしまう低音域の音波を完全に遮断することが難しいため、平面バッフル型のスピーカ装置は、密閉型やバスレフ型と比べて低音域の再生能力が劣りやすい。
ここで、厚く堅固な板で構成していた従来のバッフル板を改良し、低音域の再生能力を向上させようと試みたスピーカ装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1記載のスピーカ装置は、エンクロージャを用いたものであるが、バッフル板の厚みを0.1mm〜9.0mmにしてバッフル板をスピーカユニットの振動板の振動によって振動させ、バッフル板全体から低音域の音波を放射させるものである。特許文献1記載のスピーカ装置におけるバッフル板を、平面バッフル型のスピーカ装置のようにスピーカユニットの後側が解放されたスピーカ装置に適用し、開放感のある音の再生ができるという利点を維持しつつ低音域の再生能力を向上させることが考えられる。
特開平10−84594号
特許文献1のスピーカ装置におけるバッフル板は、その面積(板面)を拡大すれば、低音域の音波が放射される部分の面積を拡大することができる。しかしながら、スピーカ装置を設置する場所によってはスピーカ装置の大きさが制限され、バッフル板の面積を拡大することが難しい場合がある。また、バッフル板の面積を拡大すればするほど、この拡大した部分はスピーカユニットの振動板から離れるため振動板の振動に追従して振動しにくくなってしまう。バッフル板の振動が振動板の振動に追従しないと、振動板から放射される音波とバッフル板から放射される音波との打消し合いや音の濁りが生じてしまう場合がある。
本発明は上記事情に鑑み、バッフル板の面積を拡大することなく低音特性を向上させる工夫がなされたスピーカ装置およびスピーカ装置の組立セットを提供することを目的とする。
上記目的を解決する本発明のスピーカ装置は、前後方向に振動する振動板を有したスピーカユニットと、
バッフル板を有し、該バッフル板に前記スピーカユニットが取り付けられ、取り付けられたスピーカユニットにおける前記振動板を前方から覆うことで該振動板の前方に伝播空間を画定する空間画定部材とを備え、
前記スピーカユニットは、前記振動板が振動することによって前記伝播空間に音波を放射するものであり、
前記空間画定部材は、
前記振動板に、前記伝播空間を介して対向した対向部と、
前記振動板の振動方向と交差する交差方向のいずれか一方に前記伝播空間を開放する開口部とを有するものであり、
前記バッフル板は、後方が開放され前記振動板の振動によって振動することで低音域の音波を放射するものであり、
前記対向部は、前方が開放され前記伝播空間に放射された音波によって振動することで低音域の音波を放射するものであることを特徴とする。
ここで、前記バッフル板および前記空間画定部材は、段ボール板、中空ポリカーボネイト板、中実のポリカーボネイト板、あるいはベニヤ板で構成されたものであってもよい。
本発明のスピーカ装置によれば、前記バッフル板が前記振動板の振動によって振動することで該バッフル板から低音域の音波(空気の振動)が放射される。また、前記振動板が振動することで前記伝播空間に放射された音波によって前記対向部も振動し、該対向部からも低音域の音波が放射される。さらに、前記伝播空間内において、前記対向部や前記バッフル板に反射した音波によっても該対向部や該バッフル板が振動して低音域の音波が放射される。これらにより、前記バッフル板の面積を拡大することなく低音特性を向上させることができる。また、前記空間画定部材は、前記振動板の振動方向と交差する交差方向のいずれか一方に前記伝播空間を開放する開口部を有するものであるため、前記振動板から放射された音波は、前記対向部や前記バッフル板に反射しながら該開口部から放出される。これにより、前記振動板に圧力がかかりにくくなり、該振動板の振動が妨げられることを防止できる。なお、前記バッフル板や前記対向部が振動することによって中高音域の音波も放射されるが、該バッフル板は前記振動板の低音域の振動で特に振動し、該対向部は該振動板から放射される低音域の音波で特に振動するため、該バッフル板や該対向部からは低音域の音波が多く放射される。
本発明のスピーカ装置において、前記空間画定部材は、前記開口部とは反対側から該開口部に向かうに従い前記伝播空間が徐々に拡がる形状のものであり、
前記対向部は、前記開口部に向かうに従い前記バッフル板から離れていくものであるであることが好ましい。
こうすることで、前記振動板から放射される、特に中高音の音波が、前記伝播空間内において前記対向部や前記バッフル板に反射しながら前記開口部から放出されやすくなる。このため、定在波が生じにくくなり、音の濁りを軽減することができる。
また、本発明のスピーカ装置において、前記バッフル板は、前記スピーカユニットが、前記開口部とは反対側寄りに取り付けられたものであってもよい。
こうすることで、前記振動板から放射される音波が、前記伝播空間内において前記対向部や前記バッフル板に反射する回数を確保しやすくなり、該対向部や該バッフル板をより振動させやすくなる。
さらに、本発明のスピーカ装置において、前記空間画定部材は、前記バッフル板と前記対向部とを接続する接続部を有するものであり、
前記接続部は、自身の変形を促進する変形促進手段を備えたものであってもよい。
前記変形促進手段によって、前記接続部が変形しやすくなり、前記対向部の振動が制限されてしまうことを抑えることができる。
また、本発明のスピーカ装置において、前記バッフル板および前記対向部のうちの少なくとも一方は、前記開口部の一部を遮蔽可能に折り曲げられた折曲片を有するものであり、
前記折曲片は、前記バッフル板または前記対向部に張力を付与するものであってもよい。
前記折曲片は、前記開口部の一部を遮蔽可能に折り曲げられたものであるため、該開口部から放出される、特に中高音域の音波を該折曲片で反射させて、該開口部から放出される音波の向きを調整することができる。また、例えば、前記折曲片を大きく折り曲げることによって、前記バッフル板や前記対向部に張力を付与し、該バッフル板や該対向部の過剰な振動を抑制することもできる。
上記目的を解決する本発明のスピーカ装置の組立セットは、
前後方向に振動する振動板を有したスピーカユニットと、
バッフル板を有し、該バッフル板に前記スピーカユニットが取り付けられ、取り付けられたスピーカユニットにおける前記振動板を前方から覆うことで該振動板の前方に伝播空間を画定する空間画定部材とを備え、
前記スピーカユニットは、前記振動板が振動することによって前記伝播空間に音波を放射するものであり、
前記空間画定部材は、
前記振動板に、前記伝播空間を介して対向した対向部と、
前記振動板の振動方向と交差する交差方向のいずれか一方に前記伝播空間を開放する開口部とを有するものであり、
前記バッフル板は、後方が開放され前記振動板の振動によって振動することで低音域の音波を放射するものであり、
前記対向部は、前方が開放され前記伝播空間に放射された音波によって振動することで低音域の音波を放射するものであることを特徴とする。
本発明のスピーカ装置の組立セットによれば、上記構成を採用することにより、前記バッフル板の面積を拡大することなく低音特性を向上させる工夫がなされたスピーカ装置を得ることができる。
なお、バッフル板には、スピーカユニットを取り付ける開口を形成してもよいし、スピーカユニットの振動板と対向する位置に、複数の小孔を形成してもよい。また、この開口または複数の小孔は、予めバッフル板に形成されていてもよいし、組立セットを組み立てる者が、後から形成してもよい。
本発明によれば、バッフル板の面積を拡大することなく低音特性を向上させる工夫がなされたスピーカ装置およびスピーカ装置の組立セットを提供することができる。
(a)は、本発明の一実施形態であるスピーカ装置の正面図であり、(b)は、(a)に示すスピーカ装置のA−A断面図である。 (a)は、図1(a)に示すスピーカ装置の背面図であり、(b)は、図1(a)に示すスピーカ装置を上方から見た図である。 図1および図2に示すスピーカ装置の組立セットを用いた組立方法の一例を示す図である。 (a)は、図1および図2に示すスピーカ装置の第1変形例の正面図であり、(b)は、(a)に示すスピーカ装置のA−A断面図である。 (a)は、図1および図2に示すスピーカ装置の第2変形例の正面図であり、(b)は、(a)に示すスピーカ装置のA−A断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態であるスピーカ装置の正面図であり、同図(b)は、同図(a)に示すスピーカ装置のA−A断面図である。また、図2(a)は、図1(a)に示すスピーカ装置の背面図であり、図2(b)は、図1(a)に示すスピーカ装置を上方から見た図である。
図1および図2に示すように、スピーカ装置1は、スピーカユニット2と、振動体3と、台座4を備えている。振動体3は、バッフル板31と空間画定部材32を有するものであり、バッフル板31にスピーカユニット2が取り付けられている。以下、振動体3と、この振動体3のバッフル板31に取り付けられたスピーカユニット2とを併せて装置本体10と称することがある。装置本体10は、台座4に支持されるものである。
スピーカユニット2は、コーン紙からなる振動板21と、振動板21を支持するフレーム22と、振動板21を振動させる磁気回路部23と、磁気回路部23に音声信号を送る不図示のリード線を有するものである。なお、本実施形態では、スピーカユニット2として、口径が16cmのフルレンジユニットを用いている。図2(b)に示すように、バッフル板31には、開口31aが設けられ、この開口31aから振動板21を露出させた状態でスピーカユニット2がバッフル板31に取り付けられている。なお、開口31aに代えて複数の小孔を設ける態様を採用してもよい。図1(b)では、装置本体10は、スピーカユニット2が右側のやや斜め上方に向く姿勢で台座4に支持され、スピーカ装置1の右側が前側(聴取者側)になる。図1(b)では、振動板21は、フレーム22に隠れているが、振動板21の振動方向を直線の両矢印で示している。直線の両矢印で示すように、振動板21は、図1(b)における、右側のやや斜め上方と、左側のやや斜め下方とを結ぶ方向に振動するものである。以下、振動板21が振動する方向を含めて、図1(b)の左右方向をスピーカ装置1の前後方向と称し、図1(b)の紙面と直交する方向をスピーカ装置1の左右方向と称して説明する。なお、図1(a)および図2(a)では、紙面と直交する方向がスピーカ装置1の前後方向になり、図の左右方向がスピーカ装置1の左右方向になる。また、図2(b)では、図の上下方向がスピーカ装置1の前後方向になり、図の左右方向がスピーカ装置1の左右方向になる。
振動体3は、本実施形態では、段ボール板を折り曲げることによって構成したものである。振動体3は、ポリカーボネイトの中空板や中実の板を折り曲げることによって構成してもよく、段ボール板、ポリカーボネイトの中空板や中実の板、あるいはベニヤ板等を接合することによって構成してもよい。また、振動体3は、ポリカーボネイト等の樹脂を一体成型することによって構成してもよい。さらに、振動体3は、バッフル板31と空間画定部材32が、一体あるいは一体的に構成されたものであってもよいし、空間画定部材32に対して、バッフル板31が着脱自在に取り付けられたものであってもよい。空間画定部材32に対して、バッフル板31が着脱自在に取り付けられる態様を採用することにより、スピーカユニット2と併せてバッフル板31を空間画定部材32から取り外し、例えば、口径が異なるスピーカユニット2が取り付けられたバッフル板31と交換することができる。
図2(a)に示すように、バッフル板31は、略長方形状のものであり、このバッフル板31における下側部分にスピーカユニット2が取り付けられている。バッフル板31の大きさは特に限定されるものではないが、スピーカユニット2の口径に対して、左右方向の大きさは、1.5倍〜3.0倍程度が好ましく、高さ方向の大きさは、2.5倍〜4.0倍程度が好ましい。バッフル板31の大きさが、上記範囲より小さくなると低音特性を向上させる効果が不十分になる場合がある。一方、バッフル板31の大きさが、上記範囲より大きくなると、振動板21の振動に追従して振動しない部分が生じ、振動板21から出る音波とバッフル板31から出る音波との打消し合いや音の濁りが生じてしまう場合がある。
図1および図2に示すように、空間画定部材32は、振動体3の前側部分を構成する対向部321と、この対向部321とバッフル板31とを接続する左右一対の接続部322,322と、対向部321の上端部に設けられた前側折曲片323を有するものである。なお、図2(b)では、後述する伝播空間Sを示すため、前側折曲片323は省略している。空間画定部材32は、その対向部321と左右一対の接続部322,322によって、バッフル板31に取り付けられたスピーカユニット2の振動板21を前方から覆い、図1(b)および図2(b)に示すように、振動板21の前方の空間を画定している。以下、空間画定部材32によって画定された空間を伝播空間Sと称する。また、空間画定部材32は、その対向部321と左右一対の接続部322,322の上端部分に開口部32aを有し、この開口部32aによって伝播空間Sが開放されている。
図1(a)に示すように、対向部321は、略長方形状のものであり、同図(b)および図2(b)に示すように、対向部321は、伝播空間Sを介して振動板21と対向している。なお、図1(b)では、振動板21がフレーム22によって隠れている。また、対向部321は、その下端部分がバッフル板31の下端部分に接続し、開口部32aに向かうに従いバッフル板31から離れていくものである。図1(b)に示すように、接続部322は、略三角形状のものであり、下端から上方に向かうに従い前後方向の長さが徐々に大きくなっている。これらにより、伝播空間Sは、その下端領域から開口部32aに向かうに従い徐々に拡がっている。すなわち、空間画定部材32は、開口部32aとは反対側から開口部32aに向かうに従い伝播空間Sが徐々に拡がる形状のものである。また、接続部322は、上下方向に延在した折目322aを有し、この折目322aで屈曲することで、左右方向の外側にやや膨らんだ形状になっている。接続部322は、折目322aで屈曲することによって変形しやいため、対向部321の振動が制限されてしまうことを抑えることができる。すなわち、折目322aは、本発明における変形促進手段の一例に相当する。なお、接続部322は、折目を複数形成することで蛇腹状にしてもよい。また、一方の接続部322における上端部分と他方の接続部322における上端部分とのそれぞれの前後方向の長さを異ならせてもよい。
前側折曲片323は、図1(b)に円弧状の両矢印で示すように、対向部321に対して前後方向に折り曲げることができるものであり、対向部321に対する角度調整が可能である。また、前側折曲片323を後側に折り曲げることによって開口部32aの一部を遮蔽することができ、前側折曲片323を大きく折り曲げることによって対向部321に張力を付与することもできる。バッフル板31は、前後方向に折り曲げることができる後側折曲片311を有している。なお、図2(b)では、伝播空間Sを示すため後側折曲片311も省略している。後側折曲片311は、図1(b)に円弧状の両矢印で示すように、バッフル板31に対して折り曲げることができるものであり、バッフル板31に対する角度調整が可能である。また、後側折曲片311を前側に折り曲げることによって開口部32aの一部を遮蔽することができ、後側折曲片311を大きく折り曲げることによってバッフル板31に張力を付与することもできる。さらに、前側折曲片323と後側折曲片311の折り曲げ角度を調整することによって、開口部32aにおける上方に開放した開口面積の調整が可能である。
台座4は、前後方向に延在した左右一対の載置部材41,41と、これら左右一対の載置部材41,41を連結する2つの連結部材42,42と、それぞれの載置部材41の前側部分において上方に突出した突起部43と、例えば針金からなる2つの支持部材44,44を有している。図1(a)および同図(b)に示すように、装置本体10は、その下端部分の前側を突起部43に当接させた状態で載置部材41,41に載置されている。また、支持部材44の一端側部分が、スピーカユニット2の、フレーム22と磁気回路部23との連結部分に巻回され、支持部材44の他端側部分が載置部材41に巻回されることによって、スピーカユニット2が後側から支持部材44,44に支持されている。これにより、本実施形態では、対向部321が略垂直な姿勢に維持され、バッフル板31と振動板21が、開口部32aに向かうに従い後側に傾斜した姿勢に維持されている。なお、台座4は、装置本体10を所定の姿勢に維持することができる構造であれば、特に限定されるものではなく、例えば支持部材44に代えて、スピーカユニット2を支える台状の部材を用いてもよい。
図1および図2に示す本実施形態のスピーカ装置1は、例えば聴取者自身が、スピーカ装置1の構成部品を組み立てて完成させる、スピーカ装置1の組立セットとすることもできる。
図3は、図1および図2に示すスピーカ装置の組立セットを用いた組立方法の一例を示す図である。図1および図2も参照しながら、図3を用いて本発明のスピーカ装置の組立セットの組立方法を説明する。
図3(a)に示すように、初めに、振動体3のバッフル板31に、スピーカユニット2をボルトとナットを用いて取り付け、装置本体10を組み立てる。図2(b)に示す、バッフル板31の開口31aは、バッフル板31に予め設けておいてもよいし、組み立てる者が形成してもよい。また、振動体3は、折り曲げることによって振動体3の形状になる段ボール板等と接合部材を用意し、組み立てる者が、その段ボール板等を折り曲げ接合部材で接合することによって、振動体3を作成する態様としてもよい。
次に、図3(b)に示すように、装置本体10を、その下端部分の前側が台座4の突起部43に当接するように載置部材41に載置する。
最後に、図3(c)に示すように、対向部321が略垂直になる状態で、支持部材44の一端側部分を、スピーカユニット2の、フレーム22と磁気回路部23との連結部分に巻回し、支持部材44の他端側部分を載置部材41に巻回する。これによって、スピーカユニット2が後側から支持部材44,44に支持され、スピーカ装置1の組立が完了する。なお、図3に示す、スピーカ装置1の組立セットの組立方法は一例であり、この組立方法に限定されるものではない。
図1および図2を用いて、スピーカ装置1の再生状態を説明する。図示しないアンプから送られた音声信号に基づいて磁気回路部23が振動板21を振動させると、振動板21の振動がフレーム22を介してバッフル板31に伝わる。これにより、振動板21の振動に追従してバッフル板31が振動する。バッフル板31が振動することで、バッフル板31が振動板21の延長状態を作り出して、バッフル板31の全体から音波が放射される。振動板21が振動することによって振動板21から放射された音波は、伝播空間Sの空気中を伝播して対向部321を振動させ、これによって対向部321からも音波が放射される。さらに、振動板21から放射された音波は、伝播空間S内において対向部321とバッフル板31に反射するため、これによっても対向部321とバッフル板31それぞれが振動し音波が放射される。ここで、スピーカユニット2は、バッフル板31における、開口部32aとは反対側寄りとなる下側部分に取り付けられているため、振動板21から放射された音波が伝播空間S内において対向部321やバッフル板31に反射する回数を確保しやすくなる。また、接続部322は、折目322aを有するため、この折目322aによって接続部322が変形しやすくなり、対向部321の振動が制限されてしまうことを抑えることができる。対向部321とバッフル板31は、振動板21の低音域の振動や振動板21から放射された低音域の音波で特に振動するため、対向部321とバッフル板31それぞれから低音域の音波が多く放射される。この結果、スピーカ装置1の低音特性を向上させることができる。なお、低音域の音波は指向性が鈍いため、振動板21から放射された低音域の音波が伝播空間Sの空気中を伝播して接続部322を振動させ、接続部322からも低音域の音波が放射される場合がある。
図1(b)では、振動板21から放射される、指向性が鋭い中高音域の音波を点線の矢印で模式的に示している。前述したように、本実施形態では、対向部321は、下端側から開口部32aに向かうに従いバッフル板31から離れていくものであり、空間画定部材32は、下端側から開口部32aに向かうに従い伝播空間Sが徐々に拡がる形状のものである。このため、振動板21から放射される中高音域の音波は、対向部321とバッフル板31とに反射しながら、開口部32aから放出される。これにより、定在波が生じにくくなり、音の濁りも軽減することができる。また、対向部321に反射した中高音域の音波がそのまま振動板21に戻ることがなくなり、振動板21に圧力がかかってしまうことを防ぐことができる。
開口部32aから放出された中高音域の音波は、前側折曲片323や後側折曲片311に反射する。前側折曲片323や後側折曲片311の折り曲げ角度を変更することによって、中高音域の音波の向きを調整することができる。また、前側折曲片323を大きく折り曲げることによって対向部321に張力を付与することができ、後側折曲片311を大きく折り曲げることによってバッフル板31に張力を付与することができる。これにより、対向部321やバッフル板31の過剰な振動を抑えることができる。
次に、図1および図2に示すスピーカ装置1の変形例について説明する。これより後の説明では、図1および図2に示すスピーカ装置1との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図4(a)は、図1および図2に示すスピーカ装置の第1変形例の正面図であり、図4(b)は、同図(a)に示すスピーカ装置のA−A断面図である。
図4(a)および同図(b)に示すように、第1変形例のスピーカ装置1では、空間画定部材32は、対向部321と接続部322を有するものであり、図1および図2に示す前側折曲片323を有していない。対向部321は、左右方向と上下方向それぞれに、前側が凸になるように湾曲した形状のものである。バッフル板31は、左右方向と上下方向それぞれに、後側が凸になるように湾曲した形状のものであるが、スピーカユニット2が取り付けられる部分は平面状になっている。また、バッフル板31は、図1および図2に示す後側折曲片311を有していない。なお、対向部321に、図1および図2に示す前側折曲片323を設けてもよく、バッフル板31に、図1および図2に示す後側折曲片311を設けてもよい。対向部321とバッフル板31は、上下方向に延在した左右一対の接続部322によって接続されている。これにより、横断面が略紡錘形状の伝播空間Sが空間画定部材32によって画定されている。
なお、第1変形例のスピーカ装置1において、対向部321とバッフル板31のうちいずれか一方を平板状にした態様を採用することもできる。また、図1および図2に示す三角形状の接続部322によって、対向部321とバッフル板31とを接続してもよい。さらに、円筒状の部材の下端部分をつぼめることによって振動体3を形成し、横断面が略楕円状の伝播空間Sが画定される態様としてもよい。
図5(a)は、図1および図2に示すスピーカ装置の第2変形例の正面図であり、図5(b)は、同図(a)に示すスピーカ装置のA−A断面図である。
図5(a)に示すように、第2変形例のスピーカ装置1における対向部321は、下端側から開口部32aに向かうに従い左右方向の大きさが徐々に大きくなる略台形状のものである。また、バッフル板31も同様に、下端側から開口部32aに向かうに従い左右方向の大きさが徐々に大きくなる略台形状のものである。これにより、伝播空間Sは、下端側から開口部32aに向かうに従い、前後方向と左右方向に拡がっている。
なお、第2変形例のスピーカ装置1において、対向部321とバッフル板31それぞれの下端部分を延長し、下端に頂点を有する三角形状にした態様を採用してもよい。
以上説明したように、本実施形態のスピーカ装置1およびその組立セットによれば、バッフル板31の面積を拡大することなく低音特性を向上させることができる。
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、第1変形例および第2変形例については、完成品としてのスピーカ装置1として説明したが、スピーカ装置1の構成部品を有するスピーカ装置1の組立セットとしてもよい。また、上記実施形態および変形例では、開口部32aが上方に開放した姿勢で、装置本体10を台座4に支持させているが、開口部32aが、斜め上方、横方向あるいは斜め下方等に開放した姿勢で、装置本体10を台座4に支持させてもよい。さらに、上記実施形態および変形例では、スピーカユニット2としてフルレンジのスピーカユニットを用いているが、スピーカユニット2として低音域用のスピーカユニットを用い、中高音域用のスピーカユニットを前側折曲片323等に取り付けてもよい。
なお、以上説明した実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を実施形態や他の変形例に適用してもよい。
1 スピーカ装置
2 スピーカユニット
21 振動板
31 バッフル板
311 後側折曲片
32 空間画定部材
32a 開口部
321 対向部
322 接続部
322a 折目
323 前側折曲片
4 台座

Claims (6)

  1. 前後方向に振動する振動板を有したスピーカユニットと、
    バッフル板を有し、該バッフル板に前記スピーカユニットが取り付けられ、取り付けられたスピーカユニットにおける前記振動板を前方から覆うことで該振動板の前方に伝播空間を画定する空間画定部材とを備え、
    前記スピーカユニットは、前記振動板が振動することによって前記伝播空間に音波を放射するものであり、
    前記空間画定部材は、
    前記振動板に、前記伝播空間を介して対向した対向部と、
    前記振動板の振動方向と交差する交差方向のいずれか一方に前記伝播空間を開放する開口部とを有するものであり、
    前記バッフル板は、後方が開放され前記振動板の振動によって振動することで低音域の音波を放射するものであり、
    前記対向部は、前方が開放され前記伝播空間に放射された音波によって振動することで低音域の音波を放射するものであることを特徴とするスピーカ装置。
  2. 前記空間画定部材は、前記開口部とは反対側から該開口部に向かうに従い前記伝播空間が徐々に拡がる形状のものであり、
    前記対向部は、前記開口部に向かうに従い前記バッフル板から離れていくものであることを特徴とする請求項1記載のスピーカ装置。
  3. 前記バッフル板は、前記スピーカユニットが、前記開口部とは反対側寄りに取り付けられたものであることを特徴とする請求項1または2記載のスピーカ装置。
  4. 前記空間画定部材は、前記バッフル板と前記対向部とを接続する接続部を有するものであり、
    前記接続部は、自身の変形を促進する変形促進手段を備えたものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載のスピーカ装置。
  5. 前記バッフル板および前記対向部のうちの少なくとも一方は、前記開口部の一部を遮蔽可能に折り曲げられた折曲片を有するものであり、
    前記折曲片は、前記バッフル板または前記対向部に張力を付与するものであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載のスピーカ装置。
  6. 前後方向に振動する振動板を有したスピーカユニットと、
    バッフル板を有し、該バッフル板に前記スピーカユニットが取り付けられ、取り付けられたスピーカユニットにおける前記振動板を前方から覆うことで該振動板の前方に伝播空間を画定する空間画定部材とを備え、
    前記スピーカユニットは、前記振動板が振動することによって前記伝播空間に音波を放射するものであり、
    前記空間画定部材は、
    前記振動板に、前記伝播空間を介して対向した対向部と、
    前記振動板の振動方向と交差する交差方向のいずれか一方に前記伝播空間を開放する開口部とを有するものであり、
    前記バッフル板は、後方が開放され前記振動板の振動によって振動することで低音域の音波を放射するものであり、
    前記対向部は、前方が開放され前記伝播空間に放射された音波によって振動することで低音域の音波を放射するものであることを特徴とするスピーカ装置の組立セット。
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