JP5803750B2 - 内燃機関の冷却装置 - Google Patents

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Description

この発明は、内燃機関の冷却装置に係り、特に、シリンダブロックへの冷却水の供給を停止可能な水停止機構を備えた内燃機関の冷却装置に関する。
従来、例えば特許文献1には、エンジンの冷却装置が開示されている。この従来の冷却装置は、ウォーターポンプの下流側においてシリンダヘッド内を通過するヘッド側冷却水通路とシリンダブロックを通過するブロック側冷却水通路とに分岐する冷却水通路を備えている。また、上記冷却装置は、シリンダブロックを出た後のブロック側冷却水通路に、冷却水温度が所定の開弁温度に達した際に開くように設定されたサーモスタットを備えている。
上記構成を備えておくことにより、上記サーモスタットが閉弁している低冷却水温度下において、シリンダヘッドへの冷却水の供給を行いつつ、シリンダブロックへの冷却水の供給を停止することができる。これにより、比較的高温となるシリンダヘッドを十分に冷却するとともに、シリンダヘッドに比して冷却する必要の少ないシリンダブロックの暖機性を高めることができる。
特開昭62−99615号公報 特開2007−270661号公報 特開2003−301744号公報 特開2011−256742号公報
上記特許文献1に記載の技術のように暖機中においてシリンダブロック内への冷却水の供給を停止することとすれば、ピストンリング温度とシリンダボア温度との差が小さくなる。この差が小さい状況下では、ピストンリングとシリンダボアとの熱膨張量の差も小さくなる。従って、暖機中にシリンダブロック内への冷却水の供給を停止することで、ピストンリングの合口すき間を小さく設定できるようになる。
しかしながら、シリンダブロック内への冷却水の供給を制御する流量制御弁(例えば、上記サーモスタット)に故障が生じて冷却水供給を停止できなくなった場合には、ピストンリング温度とシリンダボア温度との差が、水供給停止時よりも大きくなる。そうすると、ピストンリングの熱膨張量に対する相対的なシリンダボアの熱膨張量が小さくなる。このことは、暖機中にシリンダブロックへの冷却水供給が停止されることを前提として設定された値に対して、ピストンリングの合口すき間を小さくさせるように作用する。その結果、ピストンリングの合口に突き当たり(ピストンリングの先端同士の接触)が発生してしまう可能性がある。このような突き当たりの発生は、ピストンリングの破損、更には内燃機関の故障に繋がるものである。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、シリンダブロック内への冷却水の供給を制御する流量制御弁に故障が生じたかどうかを判定できるようにした内燃機関の冷却装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、内燃機関の冷却装置であって、
内燃機関に冷却水を循環させる通路であって、シリンダヘッドを冷却する第1冷却水通路と、シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドのうちの少なくとも前記シリンダブロックを冷却する第2冷却水通路とを含む循環通路と、
前記第2冷却水通路への冷却水の供給を制御する流量制御弁と、
前記シリンダブロック内において前記第2冷却水通路を流れる冷却水の温度(以下、「シリンダブロック水温」と称する)を検知するブロック水温センサと、
前記第2冷却水通路が前記シリンダブロックのみを冷却するものである場合には前記シリンダブロックから出た後の部位において、または、前記第2冷却水通路が前記シリンダブロックとともに前記シリンダヘッドを冷却するものである場合には前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドを順に通過して当該シリンダヘッドから出た後の部位において、前記循環通路を流れる冷却水の温度(以下、「エンジン出口水温」と称する)を検知する出口水温センサと、
前記第2冷却水通路への冷却水の供給が停止されるように前記流量制御弁が動作することが予定された状況下において、前記シリンダブロック水温と前記エンジン出口水温との差が所定の判定値以下である場合に、前記流量制御弁に故障が生じていると判定する弁故障判定手段と、
前記シリンダブロック内に備えられたピストンリングの温度上昇を抑制するリング温度抑制制御を実行する温度抑制制御実行手段と、
前記弁故障判定手段によって前記流量制御弁に故障が生じていると判定されている状況下において、冷却水温度が低い場合には、当該冷却水温度が高い場合と比べて、前記ピストンリングの温度上昇がより抑制されるように前記リング温度抑制制御を調整する温度抑制制御調整手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記流量制御弁は、冷却水温度が所定の開弁温度に達した際に開くように設定されたサーモスタットであって、
前記弁故障判定手段は、冷却水温度が前記開弁温度よりも低い状況下において、前記シリンダブロック水温と前記エンジン出口水温との差が前記判定値以下である場合に、前記サーモスタットが正常に閉じた状態とならない故障が生じていると判定することを特徴とする。
また、第の発明は、第1または第2の発明において、
前記リング温度抑制制御は、内燃機関のトルクおよび回転数のうちの少なくとも一方を所定の上限値以下に制限するものを含み、
前記温度抑制制御調整手段は、冷却水温度が高い場合には、冷却水温度が低い場合に比して、内燃機関のトルクおよび回転数のうちの少なくとも一方の前記上限値を大きくすることを特徴とする。
第1の発明によれば、第2冷却水通路への冷却水の供給が停止されるようにするために流量制御弁が本来閉じているべき状況下とこれに反して開いてしまっている状況下との間でシリンダブロック水温とエンジン出口水温との差に変化が生じることを利用して、流量制御弁に故障が生じているか否かを簡便に判定することが可能となる。また、本発明によれば、暖機中の冷却水温度の高低に関係なく、かつ、リング温度抑制制御の実施を必要最小限に留めつつ、ピストンリング温度とシリンダボア温度との差が過剰に大きくならないように抑えることができる。その結果、ピストンリングの合口の突き当たりを防止することができる。
第2の発明によれば、サーモスタットが本来閉じているべき状況下とこれに反して開いてしまっている状況下との間でシリンダブロック水温とエンジン出口水温との差に変化が生じることを利用して、サーモスタットに故障が生じているか否かを簡便に判定することが可能となる。
の発明によれば、使用運転領域の制限による内燃機関の運転への支障を最小限に抑えつつ、ピストンリングの合口の突き当たりを防止できるようになる。
本発明の実施の形態1における冷却装置を備える内燃機関の構成を説明するための概略図である。 図1に示すサーモスタットの開閉に伴う冷却水流れの変化を表した図である。 オイル消費量とピストンリングの合口すき間との関係を表した図である。 本発明の実施の形態1におけるピストンリングの合口すき間の決定手法を説明するための図である。 本発明の実施の形態1におけるサーモスタットの故障判定手法を説明するための図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態2における特徴的な制御を説明するための図である。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態3において用いられるトルクおよびエンジン回転数の上限値の設定を説明するための図である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における冷却装置を備える内燃機関10の構成を説明するための概略図である。
図1に示すように、内燃機関10は、シリンダブロック12を備えている。シリンダブロック12の内部には、各気筒に対して、シリンダボア(図示省略)に沿って往復移動するピストン(図示省略)が配置されている。ピストンには、所定の本数のピストンリング(図示省略)が組み付けられている。シリンダブロック12の上部には、シリンダヘッド14が組み付けられている。
内燃機関10は、内燃機関10の各部(シリンダブロック12およびシリンダヘッド14)に冷却水を循環させるための循環通路16を備えている。循環通路16の途中には、循環通路16内において冷却水を循環させるためのウォーターポンプ(WP)18が設置されている。
循環通路16は、2系統の循環経路を有している。具体的には、循環通路16は、ウォーターポンプ18の下流において二股に分岐している。分岐後の一方の通路は、シリンダヘッド14に導入されたうえで、シリンダヘッド14の内部(ウォータージャケット)を流通するように構成されている。分岐後の他方の通路は、シリンダブロック12に導入されたうえで、シリンダブロック12の内部(ウォータージャケット)を通過した後にシリンダヘッド14の内部(ウォータージャケット)を流通するように構成されている。
上記2つの通路は、図1に示す一例ではシリンダヘッド14内において合流するように構成されている。合流した後の循環通路16は、シリンダヘッド14から出たうえでウォーターポンプ18の吸込口に向けて延びるように構成されている。以下、本明細書中においては、シリンダヘッド14内のウォータージャケットを含んだ、シリンダヘッド14を冷却するための上記一方の通路のことを「第1冷却水通路16a」と称する。また、シリンダブロック12およびシリンダヘッド14内のウォータージャケットを含んだ、シリンダブロック12およびシリンダヘッド14を冷却するための上記他方の通路のことを「第2冷却水通路16b」と称する。
尚、ここでは図示を省略するが、循環通路16には、シリンダヘッド14の出口からウォーターポンプ18までの部位において、循環通路16から一旦分岐した後に再び循環通路16に合流するバイパス通路が形成されており、このバイパス通路の途中には、内燃機関10の各部を通過して高温となった冷却水を冷却するためのラジエータ(図示省略)が配置されている。このラジエータへの冷却水の供給は、図示省略するサーモスタットによって制御される。
第2冷却水通路16bの途中には、第2冷却水通路16bへの冷却水の供給を制御する流量制御弁として、サーモスタット20が設置されている。サーモスタット20は、内燃機関10の暖機中(冷間始動時)に第2冷却水通路16bへの冷却水の供給(すなわち、シリンダブロック12への冷却水の供給)が停止されるように、冷却水温度が所定の開弁温度未満である場合には閉じ、冷却水温度が上記所定の開弁温度に達した際に開くように設定されている。
図2は、図1に示すサーモスタット20の開閉に伴う冷却水流れの変化を表した図である。
図2(A)は、冷却水温度が上記所定の開弁温度よりも低い低水温時の冷却水流れを示している。低水温時には、サーモスタット20が閉じられている。このため、この場合には、図2(A)に示すように、第1冷却水通路16aを通って冷却水がシリンダヘッド14を冷却する水流れは生じるが、第2冷却水通路16bを利用して冷却水がシリンダブロック12を冷却する水流れは生じない。
一方、図2(B)は、冷却水温度が上記所定の開弁温度以上となる場合の冷却水流れを示している。この場合には、サーモスタット20が開かれる。このため、この場合には、図2(B)に示すように、第1冷却水通路16aを介する水流れとともに、第2冷却水通路16bを介する水流れも生じるようになる。本実施形態では、以上説明したサーモスタット20を備える循環通路16によって、第2冷却水通路16bへの冷却水の供給を停止可能とする「水停止機構」が構成されている。
また、図1に示すように、シリンダブロック12には、シリンダブロック12の内部に位置する第2冷却水通路16b(ウォータージャケット)を流れる冷却水の温度(以下、「シリンダブロック水温」と称する)を検知するブロック水温センサ22が取り付けられている。また、循環通路16におけるエンジン出口部(第1冷却水通路16aと第2冷却水通路16bが合流した後にシリンダヘッド14から出た後の部位)には、この部位を流れる冷却水の温度(以下、「エンジン出口水温」と称する)を検知する出口水温センサ24が取り付けられている。
更に、図1に示すシステムは、ECU(Electronic Control Unit)26を備えている。ECU26の入力部には、上述したブロック水温センサ22および出口水温センサ24に加え、吸入空気量やエンジン回転数などの内燃機関10の運転状態を検知するための各種センサ(図示省略)が接続されている。また、ECU26の出力部には、スロットルバルブ、燃料噴射弁および点火装置などの内燃機関10の運転状態を制御するための各種アクチュエータ(図示省略)が接続されている。ECU26は、上述した各種センサの出力と所定のプログラムに従って各種アクチュエータを作動させることにより、内燃機関10の運転状態を制御するものである。
また、内燃機関10は、ピストンおよびピストンリングの冷却のために、内燃機関10を潤滑するオイルをピストンの裏面に向けて噴射可能なオイルジェット機構(図示省略)を備えている。オイルジェット機構は、オイルの噴射期間を制御するためのオイルジェット制御弁28を備えている。この制御弁28は、ECU26に接続されており、ECU26からの駆動指令に基づいて開弁期間が制御される。この制御弁28の開弁期間を調整することにより、内燃機関10の1サイクル中に噴射されるオイル量を調整することができる。
図3は、オイル消費量とピストンリングの合口すき間との関係を表した図である。
図3に示すように、オイル消費量は、ピストンリングの合口すき間が小さいほど少なくなる。また、合口すき間が小さいほど、燃焼室からクランク室に漏れ出るブローバイガス量を低く抑えることができる。
図4は、本発明の実施の形態1におけるピストンリングの合口すき間の決定手法を説明するための図である。より具体的には、図4は、内燃機関10の始動開始後のピストンリング温度およびシリンダボア温度の時間変化を表している。
ピストンリングの合口すき間は、通常、内燃機関10の運転中におけるピストンリングとシリンダボアとの熱膨張量の差による変化を考慮して、当該すき間が減少する状況下(ピストンリングとシリンダボアとの熱膨張量の差の大きい状況下)であっても合口の突き当たり(ピストンリングの先端同士の接触)が生じないように設定される。
図4に示すように、始動開始後の各温度は、時間経過とともに暖機が進行していくことで上昇していく。上述した本実施形態の内燃機関10の構成によれば、低水温時に、サーモスタット20を閉弁させることによってシリンダブロック12への冷却水の供給を停止することができる。このようにしてシリンダブロック12内の冷却水の循環が停止されると、図4中に実線で示すように、シリンダボア温度が、図4中に破線で示す非停止時と比べて高くなる。その結果、ピストンリング温度とシリンダボア壁面温度との差が小さくなる。
シリンダブロック12への冷却水の供給停止によって上記の温度差が小さい状況下では、ピストンリングとシリンダボアとの熱膨張量の差も小さくなる。本実施形態では、図4に示すように、暖機中にシリンダブロック12への冷却水を停止した状態の上記温度差(好ましくは、暖機中の温度差の最大値)に基づいて、ピストンリングの合口すき間を設定するようにしている。これにより、合口すき間を小さく設定できるようになる。その結果、オイル消費の低減を図ることができるようになる。
上記のように暖機中にシリンダブロック12への冷却水の供給が停止されることを想定(前提)としてピストンリングの合口すき間を設定している場合には、以下のような懸念事項がある。すなわち、シリンダブロック12内への冷却水の供給を制御するサーモスタットに故障が生じて冷却水供給を停止できなくなった場合には、暖機中にピストンリング温度とシリンダボア温度との差が想定した値よりも大きくなる。そうすると、ピストンリングの熱膨張量に対する相対的なシリンダボアの熱膨張量が小さくなる。このことは、暖機中にシリンダブロック12への冷却水供給が停止されることを前提として設定された値に対して、ピストンリングの合口すき間を小さくさせるように作用する。その結果、ピストンリングの合口に突き当たりが発生してしまう可能性がある。このような突き当たりの発生は、ピストンリングの破損、更には内燃機関10の故障に繋がるものである。
従って、サーモスタット20が正常に閉じた状態とならない故障(開固着故障)の発生の有無を簡便に判定できるようになっていることが望ましい。そこで、本実施形態では、以下の図5に示す手法によって、サーモスタット20の故障の発生の有無を判定するようにした。
図5は、本発明の実施の形態1におけるサーモスタット20の故障判定手法を説明するための図である。より具体的には、図5は、シリンダブロック水温とエンジン出口水温との水温差と、始動時のエンジン出口水温との関係を表した図である。
図5中に破線で示すように、シリンダブロック12への冷却水の供給停止時には、水の循環がないことで相対的に早く温度上昇することになるシリンダブロック水温に対して、エンジン出口水温の上昇に伴って水温差が小さくなる。一方、シリンダブロック12への冷却水の供給が行われた場合(サーモスタット20の開固着による水停止機構の故障時)には、同一の循環通路16内において水が循環している部位間での水温の差であるので、図5中に実線で示すように、この場合の水温差は水停止時と比べて小さくなる。
そこで、本実施形態では、第2冷却水通路16bへの冷却水の供給が停止されるようにサーモスタット20が動作すること(閉じること)が予定された状況下(冷却水温度が所定の開弁温度未満となる状況下)において、シリンダブロック水温とエンジン出口温度との差(の絶対値)が所定の判定値以下であるか否かを判定するようにした。そして、この判定が成立する場合に、サーモスタット20に(開固着)故障が生じていると判定するようにした。
図6は、本発明の実施の形態1におけるサーモスタット20の故障判定を実現するために、ECU26が実行するルーチンを示すフローチャートである。尚、本ルーチンは、所定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとする。
図6に示すルーチンでは、先ず、冷却水温度がサーモスタット20の所定の開弁温度未満であるか否かが判定される(ステップ100)。ここでは、一例として、本判定に用いる冷却水温度として、出口水温センサ24により検出されるエンジン出口温度を使用する。
上記ステップ100の判定が成立した場合、つまり、第2冷却水通路16bへの冷却水の供給が停止されるようにサーモスタット20が動作すること(閉じること)が予定された状況下であると判断できる場合には、シリンダブロック水温とエンジン出口水温との差が所定の判定値以下であるか否かが判定される(ステップ102)。本ステップ102における判定値は、サーモスタット20の開固着故障を判定し得る温度閾値として予め実験等により設定されたものである。
上記ステップ102の判定が成立した場合には、サーモスタット20に開固着故障が生じていると判定される(ステップ104)。尚、本ルーチンの実行によって故障が検出された場合に、ECU26が警告灯などの報知手段によってドライバに故障の発生を報知するように構成されていてもよい。
以上説明した図6に示すルーチンによれば、サーモスタット20が本来閉じているべき状況下とこれに反して開いてしまっている状況下との間でシリンダブロック水温とエンジン出口水温との差に変化が生じることを利用して、サーモスタット20に開固着故障が生じているか否かを簡便に判定することが可能となる。
尚、上述した実施の形態1においては、サーモスタット20が前記第1の発明における「流量制御弁」に相当している。また、ECU26が上記図6に示すルーチンの処理を実行することにより前記第1の発明における「弁故障判定手段」が実現されている。
実施の形態2.
次に、図7および図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU26に図6に示すルーチンとともに後述の図8に示すルーチンを実行させることにより実現することができるものである。
図7は、本発明の実施の形態2における特徴的な制御を説明するための図である。より具体的には、図7は、ブロック水停止機構の故障時の(ピストンリングの)TOPリング温度とシリンダボア温度との差と、エンジン水温Twとの関係を表した図である。尚、以下の本明細書中でいうエンジン水温Twは、循環通路16内において冷却水が現実に流通している部位の温度であれば、特にどの部位のものであるかを問わない。本実施形態が対象とするケースは、水停止機構の故障時(すなわち、シリンダブロック12への冷却水循環が行われている時)であるので、ここでは、上記エンジン水温Twとして、ブロック水温センサ22によって検出されるシリンダブロック水温が用いられているものとする。ただし、これに代え、出口水温センサ24によって検出されるエンジン出口温度などを用いるようにしてもよい。
本実施形態では、上述した実施の形態1の判定処理によって水停止機構の故障(サーモスタット20の開固着故障)が発生したと判定された場合には、ピストンリングの合口の突き当たりを防止するために、図7に示すように、ピストンリングの温度上昇抑制のためのリング温度抑制制御を実行するようにしている。
ここで、暖機中にシリンダブロック12への冷却水の供給が正常に停止されている場合において、ピストンリングの合口の突き当たりが生じないことが確保されている時のTOPリング温度とシリンダボア温度との差の最大値をTmaxとする。水停止故障の故障時に上記温度差がTmaxを超えると、図7中に破線で示すように、合口の突き当たりが生じてしまう。
そこで、本実施形態では、上記温度差がTmaxを超えないように、暖機中のエンジン水温Twの高低に応じた程度で、リング温度抑制制御が行われる。このようなリング温度抑制制御の具体例として、ここでは、オイルジェット機構によるピストン裏面へのオイル噴射量の増加、並びに、内燃機関10のトルクおよび回転数の制限が用いられる。
具体的には、図7に示すように、エンジン水温Twが所定値Tw1よりも低い極低温下では、オイルジェット機構によるオイル噴射量の増加、並びに、内燃機関10のトルクおよび回転数の制限が実行される(領域I)。また、エンジン水温Twが上記所定値Tw1以上であって所定値Tw2以下となる状況下では、オイルジェット機構によるオイル噴射量の増加のみが実行される(領域II)。一方、エンジン水温Twが上記所定値Tw2よりも高い状況下では、リング温度抑制制御は実行されない(領域III)。
エンジン水温Tw(冷却水温度)がより低い状況下の方が、TOPリングとシリンダボア温度との差が大きくなる。上記の制御によれば、このような温度差に応じて、リング温度抑制制御によるピストンリングの温度抑制の程度が調整される。より具体的には、エンジン水温Twが低い場合には、当該エンジン水温Twが高い場合と比べて、ピストンリングの温度上昇がより抑制されるようにリング温度抑制制御の実施が調整される。これにより、図7中に実線で示すように、暖機中のエンジン水温Twの高低に関係なく、かつ、リング温度抑制制御の実施を必要最小限に留めつつ、上記温度差をTmaxを超えないように抑えることができる。その結果、ピストンリングの合口の突き当たりを防止することができる。
図8は、本発明の実施の形態2においてピストンリングの合口の突き当たりを防止するために、ECU26が実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8に示すルーチンでは、先ず、水停止機構の故障(サーモスタット20の開固着故障)の有無が判定される(ステップ200)。本ステップ200の判定自体は、上記図6に示すルーチンの処理によって行われる。
上記ステップ200において水停止機構に故障が生じていると判定された場合には、エンジン水温Twが上記所定値Tw1よりも低いか否かが判定される(ステップ202)。その結果、エンジン水温Twが所定値Tw1よりも低いと判定された場合には、オイルジェット機構によるオイル噴射量を増やす制御が実行される(ステップ204)。具体的には、オイルジェット制御弁28の開弁期間を拡大することによって、1サイクル中に噴射されるオイル量が増やされる。更に、この場合には、内燃機関10のトルクおよびエンジン回転数の使用領域を制限する処理が実行される(ステップ206)。
一方、上記ステップ202においてエンジン水温Twが所定値Tw1以上であると判定された場合には、次いで、エンジン水温Twが上記所定値Tw2よりも高いか否かが判定される(ステップ208)。その結果、本ステップ208の判定が不成立である場合、すなわち、エンジン水温Twが所定値Tw1以上であって所定値Tw2以下であると判定された場合には、上記ステップ204と同様の処理によって、オイルジェット機構によるオイル噴射量を増やす制御が実行される(ステップ210)。
以上説明した図8に示すルーチンによれば、水停止機構に故障が生じた場合において、既述したようにピストンリング(特にTOPリング)温度とシリンダボア温度との温度差がTmaxを超えないように抑えることができる。これにより、ピストンリングの合口の突き当たりを防止することができる。
ところで、上述した実施の形態2においては、エンジン水温Twが所定値Tw1よりも低い極低温下では、オイルジェット機構によるオイル噴射量の増加、並びに、内燃機関10のトルクおよび回転数の制限が実行される(領域I)。しかしながら、本発明におけるリング温度抑制制御の実施態様は、上記のものに限定されるものではない。すなわち、例えば、上記領域Iにおいて、領域IIよりはオイル噴射量を増加した態様でオイルジェット機構によるオイル噴射量の増加のみを行うようにしてもよい。或いは、例えば、領域Iの方が領域IIよりも大きく使用領域を制限するという態様で、領域Iおよび領域IIの双方において、トルクおよび回転数の制限のみを実施するようにしてもよい。
尚、上述した実施の形態2においては、ECU26が、上記ステップ204および206の処理、または上記ステップ210の処理を実行することにより前記第の発明における「温度抑制制御実行手段」が、上記ステップ上記ステップ202および208の判定結果に応じて、上記ステップ204および206の処理と上記ステップ210の処理の何れを選択するかを決定することにより前記第の発明における「温度抑制制御調整手段」が、それぞれ実現されている。
実施の形態3.
次に、図9を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施形態のシステムは、基本的に、上述した実施の形態2のシステムと同様である。そのうえで、本実施形態のシステムは、図8に示すルーチンにおけるステップ206の処理においてトルクおよびエンジン回転数を制限する際に、以下の図9に示す配慮を加えている点において、実施の形態2のものと相違している。
図9は、本発明の実施の形態3において用いられるトルクおよびエンジン回転数の上限値の設定を説明するための図である。
図9中に破線で示すラインは、トルクおよびエンジン回転数の上限を規定するものであある。一例として示すように、低水温Tの時よりも高水温Tの時の方が、トルクおよび回転数の上限値が大きくなるように(すなわち、制限が緩和されるように)設定されている。このように、本実施形態では、トルクおよびエンジン回転数の制限を実施する場合において、エンジン水温Tw(シリンダボア壁温)が高いほど、トルクおよびエンジン回転数を制限する際の上限値が大きくなるように設定されている。
水停止機構に故障が生じている場合、つまり、シリンダブロック12内の冷却水の循環が行われている場合には、循環通路16内を流通しているエンジン水温Twが高いほど、シリンダブロック12の温度が高く、シリンダボア温度が高くなる。シリンダボア温度が高いほど、シリンダボアの熱膨張量が大きくなるため、ピストンリングの合口の突き当たりが生じる可能性が低くなる。従って、エンジン水温Twが高い場合には、トルクおよびエンジン回転数の上限値を上げることができる。すなわち、本実施形態のようにエンジン水温Twに応じてトルクおよびエンジン回転数の上限値を可変とすることにより、使用運転領域の制限による内燃機関10の運転への支障を最小限に抑えつつ、ピストンリングの合口の突き当たりを防止できるようになる。
ところで、上述した実施の形態1乃至3においては、冷却水がシリンダブロック12を通過した後にシリンダヘッド14を通過する通路として、第2冷却水通路16bを備えるようにしている。しかしながら、本発明における第2冷却水通路は、上記構成のものに限らず、シリンダブロックのみを冷却するものであってもよい。
また、上述した実施の形態1乃至3においては、第2冷却水通路16bの途中にサーモスタット20を備える構成を例に挙げて説明を行った。しかしながら、本発明における流量制御弁は、サーモスタット20に限定されるものではなく、冷間時において閉じるように制御される電動式もしくは油圧式などの制御弁であってもよい。すなわち、このような構成を備えている場合における本発明の「第2冷却水通路への冷却水の供給が停止されるように流量制御弁が動作することが予定された状況下」には、流量制御弁が閉じるように制御される上記冷間時が該当することになる。
10 内燃機関
12 シリンダブロック
14 シリンダヘッド
16 循環通路
16a 循環通路の第1冷却水通路
16b 循環通路の第2冷却水通路
18 ウォーターポンプ
20 サーモスタット
22 ブロック水温センサ
24 出口水温センサ
26 ECU(Electronic Control Unit)
28 オイルジェット制御弁

Claims (3)

  1. 内燃機関に冷却水を循環させる通路であって、シリンダヘッドを冷却する第1冷却水通路と、シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドのうちの少なくとも前記シリンダブロックを冷却する第2冷却水通路とを含む循環通路と、
    前記第2冷却水通路への冷却水の供給を制御する流量制御弁と、
    前記シリンダブロック内において前記第2冷却水通路を流れる冷却水の温度(以下、「シリンダブロック水温」と称する)を検知するブロック水温センサと、
    前記第2冷却水通路が前記シリンダブロックのみを冷却するものである場合には前記シリンダブロックから出た後の部位において、または、前記第2冷却水通路が前記シリンダブロックとともに前記シリンダヘッドを冷却するものである場合には前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドを順に通過して当該シリンダヘッドから出た後の部位において、前記循環通路を流れる冷却水の温度(以下、「エンジン出口水温」と称する)を検知する出口水温センサと、
    前記第2冷却水通路への冷却水の供給が停止されるように前記流量制御弁が動作することが予定された状況下において、前記シリンダブロック水温と前記エンジン出口水温との差が所定の判定値以下である場合に、前記流量制御弁に故障が生じていると判定する弁故障判定手段と、
    前記シリンダブロック内に備えられたピストンリングの温度上昇を抑制するリング温度抑制制御を実行する温度抑制制御実行手段と、
    前記弁故障判定手段によって前記流量制御弁に故障が生じていると判定されている状況下において、冷却水温度が低い場合には、当該冷却水温度が高い場合と比べて、前記ピストンリングの温度上昇がより抑制されるように前記リング温度抑制制御を調整する温度抑制制御調整手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
  2. 前記流量制御弁は、冷却水温度が所定の開弁温度に達した際に開くように設定されたサーモスタットであって、
    前記弁故障判定手段は、冷却水温度が前記開弁温度よりも低い状況下において、前記シリンダブロック水温と前記エンジン出口水温との差が前記判定値以下である場合に、前記サーモスタットが正常に閉じた状態とならない故障が生じていると判定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の冷却装置。
  3. 前記リング温度抑制制御は、内燃機関のトルクおよび回転数のうちの少なくとも一方を所定の上限値以下に制限するものを含み、
    前記温度抑制制御調整手段は、冷却水温度が高い場合には、冷却水温度が低い場合に比して、内燃機関のトルクおよび回転数のうちの少なくとも一方の前記上限値を大きくすることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の冷却装置。
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