JP5803694B2 - 誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品 - Google Patents

誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品 Download PDF

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本発明は、誘電体磁器組成物およびセラミック電子部品に関し、特に誘電体層を薄層化した場合であっても、比誘電率を高く維持しつつ、良好な信頼性を示す誘電体磁器組成物、および該誘電体磁器組成物が適用されたセラミック電子部品に関する。
セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、小型、高性能、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型かつ高性能化に伴い、セラミック電子部品に対する更なる小型化、高性能化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
このような要求に対し、積層セラミックコンデンサの誘電体層の薄層化および多層化が進められている。しかしながら、誘電体層の薄層化を進めるために、誘電体粒子の粒子径を小さくすると、比誘電率が低下してしまい、所望の特性が得られないという問題があった。
たとえば、特許文献1には、金属元素として、Ba、Ti、希土類元素、MgおよびMnを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる結晶粒子内において、結晶粒子の表面からの希土類元素の濃度の、Mnの濃度に対する比率と、を特定の関係としたチタン酸バリウムが記載されている。特許文献1によれば、このペロブスカイト型複合酸化物は高温負荷試験における信頼性に優れると記載されている。
しかしながら、特許文献1の実施形態に記載された積層セラミックコンデンサの誘電体層の厚みは1〜3μmであり、この誘電体層をさらに薄層化した場合、高温負荷試験における信頼性が悪化することが分かった。
また、特許文献2には、主相粒子がチタン酸バリウムを主成分とするとともに、希土類元素を含有し、主相粒子単独または、微量の希土類が主相粒子に固溶されてなる第一の結晶粒子と、シェル部に希土類が固溶したコアシェル結晶粒子との個数比率の関係が記載されている。特許文献2によれば、この構造を持つチタン酸バリウムを主成分とする酸化物は1μm未満に薄層化した場合であっても、EIA規格のX5R(85℃)特性を満足する高温負荷特性(信頼性)を得ることができると記載されている。
しかしながら、特許文献2の実施形態に記載された積層セラミックコンデンサでは、EIA規格のX6Sで必要な105℃での規格を満足する信頼性が得られないことが分かった。
特開2011−132124 特開2011−184279
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、特に誘電体層を薄層化した場合であっても、比誘電率を高く維持しつつ、良好な信頼性を示す誘電体磁器組成物、および該誘電体磁器組成物が適用されたセラミック電子部品を提供することを目的とする。
チタン酸バリウムからなる主成分を含有し、前記チタン酸バリウムに対して、R1(R1は、Y、およびHoのうち少なくとも1種以上)を副成分として含有する誘電体磁器組成物であって、前記誘電体磁器組成物がコアシェル構造を有し、前記R1のBaサイト置換量/前記R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有することを特徴とする。
好ましくはR1に加えてR2(R2は、Eu、GdおよびTbのうち少なくとも1種以上)と、を含有していることを特徴とする。
また、本発明に関わるセラミック電子部品は、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と電極と、を有する。好ましくは前記誘電体層の厚みが1.0μm以下である。セラミック電子部品としては、特に限定されない。
一般的に、R1は上記のBaサイト、Tiサイト両方に置換する事が知られており、R1がTiサイトに置換すると比誘電率と信頼性の両立がはかれない。
本発明では、上記のように、R1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有することで、薄層化した場合であっても、比誘電率を高く維持しつつ、高い信頼性を実現できる。
また、上記のセラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2は、シェル部の高分解能STEM−HAADF像(15,000,000倍)。明るい白点がBaサイト、暗い白点がTiサイトを示す。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
<積層セラミックコンデンサ1>
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、図1に示すように、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
<誘電体層2>
誘電体層2は、本実施形態に係る誘電体磁器組成物から構成されている。該誘電体磁器組成物は、主成分として、チタン酸バリウムを含有し、R1(R1は、Y、およびHoのうち少なくとも1種以上)を副成分として含有する。
また、R2(R2は、Eu、GdおよびTbのうち少なくとも1種以上)を副成分として含有しても良い。
積層セラミックコンデンサに好適なABO3ペロブスカイト系誘電体セラミックにおいて、その誘電体セラミックを構成する主相粒子が、通称「コアシェル構造」を有するものが知られている。この「コアシェル」とは、希土類等の添加成分の濃度が高い「シェル」、および希土類等の添加成分の濃度が低い「コア」の二種類の領域からなる。
本実施形態では、誘電体層を構成する誘電体磁器組成物は、R1を副成分として含有する誘電体磁器組成物であって、前記誘電体磁器組成物がコアシェル構造を有し、R1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有する。
一般的に、R1は上記のBaサイト、Tiサイト両方に置換し、R1よりもイオン半径の大きいR2はBaサイトに置換しやすいことが知られている。
誘電体粒子にR2が含有されている場合、比誘電率を良好に保ちつつ、信頼性を向上させることができるが、静電容量の温度特性は悪化する傾向にある。また、R2単独で用いる場合には静電容量の温度特性だけでなく焼結密度と粒径制御が難しくなる。そこで誘電体粒子にR1を含有させ、適正な粒径に保つ事で信頼性を維持しつつ、静電容量の温度特性を改善する事ができる。このような効果はR1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有する場合に顕著になる。
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、さらに、所望の特性に応じて、その他の副成分を含有してもよい。
誘電体層2の厚みは、特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態では、一層あたり2.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.0μm以下である。また、誘電体層2の積層数は、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定すればよい。
<内部電極層3>
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2を構成する材料が耐還元性を有する場合には、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。内部電極層3の厚みは、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定すればよい。
<外部電極4>
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、5〜50μm程度であることが好ましい。
シェル部のBaサイト、Tiサイトの希土類元素濃度の測定は、特に制限されないが、例えば元素分析機器(EDS)及び球面収差補正機能装置(Csコレクタ)を付設した透過走査型電子顕微鏡(STEM)を用いて任意に選択した10個のチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子を用いて行い、各々のサイトで200点ずつ測定し、R1のBaサイト置換量とR1のTiサイト置換量を定量すればよい。
<積層セラミックコンデンサ1の製造方法>
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層を形成するための誘電体原料としてチタン酸バリウムの原料粉末と、各酸化物と各炭酸塩を所定量準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
チタン酸バリウムの原料粉末としては、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。バインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、Niなどの各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。また、内部電極層用ペーストには、共材が含まれていてもよい。共材としては特に制限されないが、主成分と同様の組成を有していることが好ましい。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5質量%程度、溶剤は10〜50質量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10質量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層し、所定形状に切断してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ時の雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
脱バインダ後、グリーンチップの焼成を行う。焼成では、昇温速度を好ましくは200〜8000℃/時間とする。焼成時の保持温度は、好ましくは1300℃以下、より好ましくは1100〜1250℃であり、その保持時間は、好ましくは0.2〜4時間である。保持時間をこのような範囲とすることで、電極の途切れ防止や、静電容量の温度特性の悪化防止、誘電体磁器組成物の還元防止を図ることができる。
焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、N2 とH2 との混合ガスを加湿して用いることができる。
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗寿命を著しく長くすることができるので、高温負荷寿命を向上することができる。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記の範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、上記の範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に700〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記の範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、絶縁抵抗(IR)が低く、また、高温負荷寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が上記の範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下する。なお、アニールは昇温工程および降温工程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜30時間、降温速度を好ましくは50〜500℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したN2 ガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、N2 ガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
上述した実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係るセラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有する電子部品であれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
<実験例1>
まず、主成分であるチタン酸バリウムのBaの一部を副成分Yで置換したBa0.997Y0.003TiO3 粉末を、その他の副成分の原料として、MgCO3 、MnCO3、V2O5、Tb2O3.5、およびSiO2 を、それぞれ準備した。
MgCO3、MnCO3およびCaCO3は、焼成後には、MgO、MnOおよびCaOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
次いで、所定の量で秤量したチタン酸バリウムと副成分原料の混合物:100質量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10質量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5質量部と、溶媒としてのアルコール:100質量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Ni粉末:44.6質量部と、テルピネオール:52質量部と、エチルセルロース:3質量部と、ベンゾトリアゾール:0.4質量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に1.0μmのグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、焼結体としての素子本体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:600℃/時間、保持温度:1100〜1250℃とし、保持時間を2時間とした。降温速度は、昇温速度と同様にした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN2 +H2 混合ガスとし、酸素分圧が10−12MPaとなるようにした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000〜1100℃、温度保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 ガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
次いで、得られた素子本体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られた積層セラミックコンデンサ試料のサイズは、2.0mm×1.25mm×0.4mmであり、誘電体層の厚みは0.9μm、内部電極層の厚みは約1.0μmであった。また、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とした。
得られた積層セラミックコンデンサ試料について、比誘電率、誘電損失、静電容量の温度特性、MTTF、および結晶粒のシェル内のR1のBaサイト置換量とR1のTiサイト置換量の測定を、それぞれ下記に示す方法により行った。
<比誘電率ε>
比誘電率εは、積層セラミックコンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、1500以上を良好とした。結果を表1に示す。
<誘電損失(tanδ)>
誘電損失(tanδ)は、積層セラミックコンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定した。誘電損失は低いほうが好ましく、本実施例では5.0%以下を良好とした。結果を表1に示す。
<静電容量の温度特性(TC105)>
積層セラミックコンデンサ試料に対し、−55〜105℃における静電容量を測定し、静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格のX5R特性またはB特性を満足するか否かについて評価した。すなわち、105℃における変化率ΔCが、±22%以内であるか否かを評価した。結果を表1に示す。
<高温負荷寿命(MTTF)>
積層セラミックコンデンサ試料に対し、180℃にて、20V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間hを測定することにより、高温負荷寿命を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、本実施例では、上記の評価を20個の積層セラミックコンデンサ試料について行い、その平均値を高温負荷寿命とした。評価基準は3時間以上を良好とした。結果を表1に示す。
<R1の置換サイトと置換量>
シェル部のBaサイト、Tiサイトの希土類元素濃度は、元素分析機器(EDS)及び球面収差補正機能装置(Csコレクタ)を付設した透過走査型電子顕微鏡(STEM)を用いて調べた。試料は積層セラミックコンデンサを誘電体層に対して垂直な面で切り出し、FIB加工により作製した薄片をTEM試料とした。
またTEM試料は観察直前に低加速Arイオン研磨装置を用いて表面のアモルファス層を除去した。
そのような試料について、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の〈100〉方向とSTEMの電子線の入射方向とが平行になるようにTEM試料の方位を調整し、高分解能STEM−HAADF像によってシェル部を観察した。その結果を図2に示す。
EDS装置によって元素分析を行い、シェル部のBaサイト及びTiサイトの希土類元素濃度を調べた。なお、元素分析は任意に選択した10個のチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子を用いて行い、各々のサイトで200点ずつ測定し、得られた200点のスペクトルを各々のサイトで合算し、定量化を行った。結果を表1に示す。
<実験例2>
まず、主成分の原料として、BaTiO3 粉末を、副成分の原料として、Y2O3を準備した。
次に、上記で準備したBaTiO3粉末と副成分の原料とをボールミルで20時間湿式粉砕し、乾燥して、YのBaサイト置換量がYのTiサイト置換量よりも多くするために、1100℃、2時間にて熱処理を行った。
こうして得られた粉末にY2O3以外の副成分の原料として、MgCO3 、MnCO3、V2O5、Tb2O3.5、およびSiO2 を、それぞれ準備した。
ペースト化からチップ化は実験例1と同様の条件で作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
この実験例2においては、副成分としてR1:Ho2O3、R2:Gd2O3およびEu2O3を用いた場合においても実験例1と同様の条件で作製し、同様な評価を行った。各副成分の組み合わせ及び評価結果を表1に示す。
<実験例3>
まず、主成分の原料として、BaTiO3 粉末を、副成分の原料として、MgCO3 、MnCO3、V2O5、Tb2O3.5およびSiO2 を、それぞれ準備した。
加えて、YのBaサイト置換量がYのTiサイト置換量よりも多するために、Y2O3よりもBaサイトにYが置換しやすいY2TiO5を準備した。
各副成分の添加量は、表1に示す量となるようにした。
主成分の原料をBaTiO3 に変えた以外は実験例1と同様の条件で作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
また、実験例3では、副成分のY2TiO5をY2Ti2O7とした場合においても主成分の原料をBaTiO3 に変えた以外は実験例1と同様の条件で作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
<実験例4>
まず、主成分の原料として、BaTiO3 粉末を、副成分の原料として、MgCO3 、MnCO3、V2O5、Tb2O3.5、Y2O3およびSiO2を、それぞれ準備した。
試料の作製は主成分の原料をBaTiO3 に変えた以外は、実験例1と同様の条件で作製した。
この際実験例4では、誘電体層厚みが0.9μmの試料と3.0μmの試料を作製した。
評価については実験例1と同様な評価を行った。結果を表1に示す。
<実験例5>
誘電体層の数を4とし、誘電体層厚みが0.9μmとなるように特許文献2と同様の方法で試料を作製した。
外部電極にはIn−Gaを用いた。
評価については実験例1と同様な評価を行った。結果を表1に示す。
試料No.1〜8
表1より、R1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有する場合には、比誘電率を高く維持しつつ、良好な信頼性を実現できることが確認できた。また、良好な温度特性をも実現できた。
試料No.3
表1より、R1をYに代えてHoとした場合においても、R1のBaサイト置換量がTiサイト置換量より多いシェルを有する場合には、比誘電率を高く維持しつつ、良好な信頼性を実現できることが確認できた。
試料No.4、5
表1より、R1をYとし、R2をGdまたは、Euとした場合においてもR1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有する場合には、比誘電率を高く維持しつつ、良好な信頼性を実現できることが確認できた。
試料No.6
表1より、R1をYとし、R2が含有されていない場合であってもR1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有する場合には、比誘電率を高く維持しつつ、良好な信頼性を実現できることが確認できた。
試料No.1、2、7,8
表1より、例えばR1をYとした場合に、実験例1〜3のいずれの方法においてもR1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを形成することが確認できた。
試料No.9、10
表1より、誘電体層が3.0μmの場合には良好な信頼性が得られているが、誘電体層が0.9μmの場合には良好な信頼性は得られなかった。以上のことから、R1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足しないシェルを有する場合には、誘電体層が1.0μm以下の試料において良好な信頼性を実現することができなかった。
試料No.11
表1より、R1のBaサイト置換量/R1のTiサイト置換量>1を満足しないシェルを有する場合には、良好な信頼性を実現することができなかった。また、良好な静電容量の温度特性も得られなかった。
1… 積層セラミックコンデンサ
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
10… コンデンサ素子本体
5… 明るい白点:Baサイト
6… 暗い白点 :Tiサイト

Claims (4)

  1. チタン酸バリウムからなる主成分を含有し、 前記チタン酸バリウムに対して、R1(R1は、Y、およびHoのうち少なくとも1種以上)を副成分として含有する誘電体磁器組成物であって、前記誘電体磁器組成物がコアシェル構造を有し、前記R1のBaサイト置換量/前記R1のTiサイト置換量>1を満足するシェルを有することを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 前記R1とR2(R2は、Eu、GdおよびTbのうち少なくとも1種以上)と、を含有している請求項1の誘電体磁器組成物
  3. 前記誘電体層の厚みが1.0μm以下となることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極とを有するセラミック電子部品。
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