以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、複数の図面において対応する要素には同一の符号を付した。
図1は一実施形態に係る、給与誤支給検出システム3に関連する機能構成を示す図である。図1には、人事システム1、給与システム2、及び一実施形態に係る給与誤支給検出システム3が示されている。
人事システム1は人事情報データベース4を含んでいる。人事システム1は、例えば入出力部等の図示しないその他の要素を含んでいてもよい。人事情報データベース4は、従業員の人事情報を格納しているデータベースである。人事情報とは、従業員に対して適用される人事に関する情報である。人事情報は、例えば、ID、職員番号、氏名、住所、住所更新日、配偶者の有無、扶養家族の人数、扶養家族更新日、持ち株口数、持ち株口数更新日、勤務部署、転勤日、役職、性別、年齢、給与の級号、休職期間、育児短時間勤務取得情報、退職日、処分、及びその他人事に関わる様々な情報を含む。人事情報には、給与の支給金額の変更と直接関係する項目もあれば、直接は関係しない項目もある。人事情報データベース4には、これらの人事情報が従業員と対応付けられて格納されている。
給与システム2は、給与情報データベース5を含んでいる。また、給与システム2は、例えば入出力部等のその他の要素を含んでいてもよい。給与情報データベース5には、例えば、それぞれの従業員に対して毎月支払われる給与の明細情報(以降、給与明細情報31)が格納されている。給与明細情報31には、例えば図5に示されるように、或る従業員に対して或る月に支払われる給与の総額、及び給与項目25毎の金額が含まれている。給与項目25とは、給与に含まれ得るお金が支給される各種項目のことであり、給料及び各種手当等を含む。各種手当等は、例えば、調整額、教職調整額、扶養手当、児童手当、調整手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、管理職手当、特地手当、月額特勤手当、日額特勤手当、教員特別手当、時間外手当、振替手当、休日手当、夜間手当、管理職特勤手当、宿日直手当、期末手当、勤勉手当などを含む。また、一実施形態においては、給与情報データベース5には、例えば、図4に示されるような、それぞれの従業員に対してどの手当が支給されているかを示す支給給与項目情報30も格納されている。
給与誤支給検出システム3は、人事情報変更部6、人事事象データベース7、人事事象取得部8、増減表9、増減情報取得部10、支給給与項目判定部12、給与明細取得部11、給与演算部13、比較判定部14、通知部15を含んでいる。給与誤支給検出システム3は、例えば入出力部等の図示しない要素を含んでいてもよい。
人事情報変更部6は、例えばユーザーからの入力を受け付け、受け付けた情報を用いて人事情報データベース4に格納されている人事情報を変更することで、人事情報データベース4を更新する。一実施形態においては、人事情報変更部6は、人事情報に対して行なった変更の原因となった人事事象を表す人事事象情報18の入力をユーザーに要求する。人事情報変更部6は、入力された人事事象情報18に基づいて人事事象データベース7に例えば、図2に示されるような人事事象レコード23を書き込む。また、別の実施形態では、人事情報変更部6は、人事情報データベース4の更新されたデータに基づいて人事事象データベース7に人事事象レコード23を書き込むように構成されていてもよい。
人事事象データベース7、及びそれに格納されている各人事事象レコード23の例を図2に示す。なお、人事事象情報18は、人事事象を表す情報である。また、人事事象とは、人事情報を変更する必要が生じる原因となった事象である。人事事象には、例えば、出産により従業員の扶養家族が増えたり、従業員の役職又は級号俸を変更したり、従業員が休職、処分、短時間勤務、及び退職したりすることが含まれる。
図1の増減表9の一実施例を図3に示す。増減表9は、人事事象情報18と、その人事事象情報18に示されている人事事象に起因して支給金額を変更する必要が生じる給与の項目である給与項目25と、及びその給与項目25の支給金額の増減の方向とを対応付ける表である。いくつかの実施形態では、例えば、増減表9は支給金額の増減の許容金額範囲等の他の情報を含んでいてもよい。人事事象情報18には、例えば、扶養家族人数変更、休職、処分、短時間勤務、退職、昇格、給与表変更等の人事事象の種類を表す人事事象項目21と、その人事事象項目21に示される人事事象の状態を表す情報であるステータス情報22とが含まれている。
人事事象取得部8は、人事事象データベース7から人事事象情報18を取得する。増減情報取得部10は、取得された人事事象情報18に示される人事事象に起因して支給金額を変更する必要が生じる給与項目25と、その給与項目25の支給金額の増減の方向を表す人事事象増減情報とを、増減表9を参照することで取得する。
支給給与項目判定部12は、増減情報取得部10が取得した人事事象により支給金額の変更が必要な給与項目25が、給与誤支給の検出の対象となっている従業員に、給与誤支給の検出の対象となっている月において、支給の対象となっているか否かを判定する。
給与明細取得部11は、給与情報データベース5から従業員の或る月における給与明細情報31と、その或る月の前月の給与明細情報31とを取得する。給与演算部13は、増減情報取得部10により取得される支給金額を変更する必要が生じる給与項目25のうちで、支給給与項目判定部12により検出対象者が検出対象月に支払を受けていると判定された給与項目25について給与明細情報の比較を行う。給与演算部13は、比較により前月と比べて或る月の給与項目25の支給額が増額したか減額したかを表す差額の増減の方向を表す給与明細増減情報を取得する。
比較判定部14は、増減情報取得部10により取得された支給金額を変更すべき給与項目25について、人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致するか否かを判定する。
通知部15は、比較判定部14が増減の方向が一致しないと判定した場合に通知情報を出力する。通知部15から出力される通知情報は、例えば、給与誤支給検出システム3が有する入出力部107の表示画面等に警告を表示させる、或いは、警告音を発生させる等、通知を行うために用いられる。
なお、図1においては、給与誤支給検出システム3の一部の要素が人事システム1に、その他の要素が給与システム2に含まれているが、給与誤支給検出システム3の構成はこれに限定されるものではない。例えば、給与誤支給検出システム3の全ての要素が人事システム1又は給与システム2のいずれかに含まれていてもよく、或いは、給与誤支給検出システム3は人事システム1及び給与システム2とは独立に設けられていてもよい。
図2は、一実施形態に係る、人事事象レコード23を格納する人事事象データベース7を例示する図である。人事事象データベース7への人事事象レコード23の登録は、人事情報変更部6によって行われる。人事事象データベース7は、人事事象レコード23を含む。各人事事象レコード23は、職員番号16、氏名17、人事事象情報18、適用日19、備考20を含んでいる。
職員番号16は、従業員に特定するために割り当てられた番号である。従って、例えば、人事情報変更部6、人事事象取得部8及び給与明細取得部11は、人事情報データベース4、給与情報データベース5及び人事事象データベース7に登録されている各レコードがどの従業員に関する情報であるのかを特定するために、職員番号16を用いることができる。
氏名17は従業員の氏名である。人事事象情報18は、人事情報データベース4の人事情報を変更する必要が生じる原因となった事象である人事事象を表す情報である。人事事象情報18には人事事象項目21と、その人事事象項目21のステータス情報22とが含まれている。人事事象情報18についての更なる詳細は後述する。
本実施形態においては、適用日19は、人事事象情報18に示されている人事事象により必要となった人事情報の変更が、実際に適用される日付である。例えば、図2の人事事象データベース7には、職員番号「0011」の「田中 和子」が「休職」することを表す人事情報が1つの人事事象レコード23に登録されている。従って、「田中 和子」が、実際に休職を適用して会社を休み始める日付は適用日19に「2011年2月1日」と登録されているため、2011年2月1日からである。
しかしながら、人事情報の変更が適用される日と、その変更が給与項目25の支給金額に反映される日付とが異なる状況も存在する。そのため、別の実施形態においては、適用日19は、人事事象情報18に示されている人事事象により必要となった人事情報の変更によって、給与項目25の支給金額に変更が必要になった場合に、給与項目25の支給金額に変更が適用される日付である。この場合の例を以下に述べる。
例えば、図2の人事事象データベース7には、職員番号「0060」の「田上 真」が、課長から部長に「昇格」することが登録されている。ここで、人事情報の変更が適用される日(ここでは、課長から部長への役職の変更が適用される日)は、備考20に示すように2011年2月1日であるとする。この場合、昇格と同時に例えば、管理職手当等の給与項目25の支給金額が上がるため、適用日19には、昇格が適用される日付と同じ2011年2月1日が登録される。一方、例えば、従業員が、2年前に子供が産まれていたが所属する企業に報告することを忘れており、今月になって子供が産まれていたことを報告した場合を想定する。この場合、人事情報の変更が適用されるべき日付は2年前であるため、人事情報において扶養家族が増えた日付は2年前になる。しかしながら、これまで支払っていなかった扶養手当を2年前に遡って支払うことは出来ないため、この2年前から蓄積している扶養手当の支給は、例えば今月の給与で清算するという場合が存在する。このような場合には、清算が行われる今月の給与の計算に含まれる日付(例えば今月の1日)が適用日19として登録される。なお、以降の説明において、或る日付が或る月の給与計算に含まれていることを、或る日付が或る月に属すると表現する。
以上で述べたように、人事情報の変更が適用される日と、その変更により給与項目25の支給金額に変更が適用される日付とが異なる場合には、給与項目25の支給金額に変更が適用される日付が適用日19として登録されてもよい。また、更に別の実施形態においては、適用日19は日の情報を含まず、給与項目25の支給金額に変更が適用される月の情報だけであってもよい。
図2に示される備考20はメモ等をユーザーが自由に記入することができる欄である。図2においては、備考20には、どのような人事事象が起こったかの説明が記載されている。人事事象データベース7には氏名17若しくは職員番号16並びに備考20は必ずしも含まれていなくてもよい。
続いて、それぞれの人事事象レコード23について簡単に説明する。例えば、2行目の人事事象レコード23を見ると、職員番号「0024」番の「権田 猛」が、「2011年1月13日」から勤務時間を短くする短時間勤務になることが示されている。3行目の人事事象レコード23を見ると、職員番号「0013」番の「木下 太郎」は12月から1月まで処分を受けており、「2011年2月1日」から処分を明けることが示されている。この様に、人事事象データベース7には、人事事象に関する情報が格納されている。なお、図2には、いくつかの人事事象レコード23を例として示したが、人事事象データベース7には、より多くの人事事象レコード23が含まれていても、又はより少ない人事事象レコード23しか含まれていなくてもよい。
図3は、一実施形態に係る、人事事象情報18と給与項目25の支給金額の増減とを対応付ける増減表9を例示する図である。増減表9では、人事事象項目21、給与項目25、追加26及び削除27、許容範囲28、並びに備考29が対応付けられている。
増減表9の人事事象項目21は、図2に示される人事事象情報18の人事事象項目21と対応している。増減表9に示される給与項目25は、増減表9において対応付けられている人事事象項目21に示される人事事象により必要となる人事情報の変更に起因して、支給金額を変更する必要が生じる給与項目25である。従って、人事事象が起こった場合に、その人事事象を表す人事事象情報18の人事事象項目21を用いて増減表9を参照することで、その人事事象により支給金額を変更する必要が生じる給与項目25を特定することができる。
増減表9における、人事事象情報18と、給与項目25の対応付けは、それぞれの企業における給与支給の規約によって定められる。例えば、扶養家族一人当たりに扶養手当を支払う規約を定めている企業であれば、扶養家族人数の増減に伴い扶養手当の金額が増減することになる。この場合、増減表9の人事事象項目21:「扶養家族人数変更」には、給与項目25:「扶養手当」が対応づけられる。また、単身赴任をしている従業員の扶養家族が増えた場合には扶養家族一人当たりに単身赴任手当の増額する規約を定めている企業であれば、扶養家族人数の増減に伴い単身赴任手当の金額が増減することになる。この場合、増減表9の人事事象項目21:「扶養家族人数変更」には、給与項目25:「単身赴任手当」が対応づけられる。
増減表9の追加26及び削除27は、図2の人事事象情報18のステータス情報22と対応している。追加26及び削除27は、図2の人事事象情報18の含まれるステータス情報22が追加であるか又は削除であるかによって、給与項目25が増額するか又は減額するかを表している。従って、増減表9を用いることで、人事事象データベース7の人事事象レコード23の人事事象情報18に示される人事事象によって、支給金額が変化する給与項目25と、その給与項目25の支給金額の増減の方向とを取得することができる。
なお、図2に示されるステータス情報22の追加及び削除、並びに図3の追加26及び削除27は、何かを追加及び削除することを必ずしも表してはいない。これらの「追加」及び「削除」は、単に「追加」及び「削除」に対応する2つの状態が人事事象にあることを示している。例えば、図2及び図3に人事事象項目21として示される、「扶養家族人数変更」が「追加」とは、出産、結婚、及び配偶者が退職した等の理由により扶養家族が増えた状態を表しており、逆に「削除」は扶養家族が減った状態を表している。図2及び図3に示される各人事事象項目21の「追加」及び「削除」が人事事象のどのような状態を表しているかについては、図3の備考29に示した。また、図2及び図3のこれらの「追加」及び「削除」は、図2の人事事象レコード23の人事事象情報18に示される人事事象と、図3の増減表9の給与項目25の支給額の増減とを結びつけるために用いられる情報でもある。
許容範囲28は、増減表9において対応付けられている給与項目25の支給金額の増減の許容金額範囲を表す情報である。許容範囲28として設定される情報は、対応する給与項目25の支給金額の増減がその範囲を超えた場合には、その給与項目25の支給金額に何らかの誤り(誤支給)が有ると判定できるような範囲に設定される。許容範囲28に設定される範囲は、それぞれの企業で定めている給与項目25に対する支給金額に応じて定められる。例えば、扶養家族一人当たりに扶養手当を¥4,000円支払う規約を定めている企業を想定する。この場合、一人の従業員の扶養家族が同時に6人以上増える、或いは減ることは通常あまり起こらないと考えられるため、扶養家族の最大の増減人数を5人と考え、5(人)×4,000(円)で20,000円を許容範囲28の範囲として設定する。また、例えば、単身赴任している従業員には扶養家族一人当たりに1,000円を支給すると定めている企業であれば、一人の従業員に対する単身赴任手当の金額の増減は5,000円を超えることは通常あまり起こらないと考えられる。そのため、「扶養家族人数変更」の人事事象項目21に対する単身赴任手当の増減額の許容範囲として5,000円を設定する。
この様にして設定された許容範囲28を用いることで、例えば、比較判定部14は、増減表9に示される給与項目25が増減した金額が、対応する許容範囲28を超えていた場合には、給与明細情報31に何らかの誤りがあると判定することができる。
図3の備考29は、メモ等をユーザーが自由に記入することができる欄である。図3においては、備考29は各人事事象項目21に対する「追加」及び「削除」が、人事事象のどのような状態を表しているのかを説明している。
ここで、増減表9に載せることに特に適している人事事象項目21について説明する。人事事象項目21とは、上述したように、人事事象情報18に含まれる人事事象の種類を表す情報である。人事事象とは、先に述べたように人事情報を変更する必要が生じる原因となった事象のことであるため、人事事象には、図3の人事事象項目21に示される人事事象以外にも転勤等の他の種類の事象も含まれている。例えば、この転勤を例にとると、転勤は例えば、単身赴任した人に支払われる単身赴任手当、又はへき地で働く人に支払われるへき地手当等の給与項目25を増減させる可能性がある。しかしながら、転勤の赴任先に単身赴任で赴任するか否かは、その従業員の家族構成や、家族の同意等のその他の要因が関係することが多いため、一般に転勤という人事事象を、単身赴任手当の増減という結果に直接結びつけることは難しい。また、同様に、転勤の赴任先がへき地であるか否かも企業の勤務地の構成によって様々であるため、一般に転勤という人事事象を、へき地手当の増減という結果に直接結びつけることは難しい。しかしながら、例えば、企業の転勤先がへき地のみしか無く、転勤する場合は必ずへき地手当が支払われて、へき地手当が増額するという場合には、転勤という人事事象を、へき地手当の増減という結果に直接結びつけることができる。この場合、転勤という人事事象項目21は、へき地手当という給与項目25を対応づけて増減表9に載せることに特に適している。
以上で述べたように、人事事象項目21に示される人事事象を、少なくとも1つの給与項目25の増額又は減額という結果に直接結びつけることできる場合には、その人事事象項目21は、結び付けられた給与項目25と対応づけて増減表9に載せることに適している。
なお、人事事象項目21に示される人事事象を、少なくとも1つの給与項目25の増額又は減額という結果に直接結びつけることできない場合にも、その人事事象項目21を増減表9に載せることができる。例えば、他の情報を参照することで最終的に人事事象項目21を少なくとも1つの給与項目25の増額又は減額という結果に結びつけることできる場合、それらの人事事象項目21と給与項目25が増減表9に格納されてもよい。この他の情報を参照することで、最終的に人事事象項目21を少なくとも1つの給与項目25の増額又は減額と結びつける例として、支給給与項目情報30を参照する例を後述する。
図4は、一実施形態に係る、給与情報データベース5に格納されている支給給与項目情報30を例示する図である。本実施形態では、給与情報データベース5には従業員毎に支給されている給与項目25を表す支給給与項目情報30が格納されている。各支給給与項目情報30には、職員番号16、氏名17、及び各種給与項目25が含まれており、各給与項目25にはその給与項目25が支給されているか否かについての情報も含まれている。図4においては、「有」が給与項目25の支給を受けていることを表し、「無」は支給を受けていないことを表す。例えば、支給給与項目情報30の情報は、給与の計算を行なう部門(経理部あるいは総務部など)に属する従業員によって更新される。
図4に例示されている支給給与項目情報30は、図2の人事事象データベース7に登録されている「岡田 太郎」に対して、2011年2月に支給されている給与項目25を表す支給給与項目情報30である。例示される、「岡田 太郎」の2011年の2月の支給給与項目情報30を見ると、「岡田 太郎」には、2011年の2月の時点で扶養手当と、単身赴任手当とが支給されていることが分かる。
図5は、一実施形態に係る、給与情報データベース5に格納されている給与明細情報31を例示する図である。図5に例示されている給与明細情報31は、図2の人事事象データベース7に登録されている職員番号「0501」、氏名「岡田 太郎」の2011年1月及び2月の給与明細情報31である。本実施形態では、給与情報データベース5には従業員毎に毎月支給される給与の明細を表す給与明細情報31が格納されている。また、各給与明細情報31には、職員番号16、氏名17、給与の総支給金額、並びに各種給与項目25が含まれている。給与項目25には、その給与項目25が支給されている場合には、その給与項目25の支給金額も含まれている。例示される、「岡田 太郎」の2011年の1月と2月の給与明細情報31を比較すると、扶養手当が1月には支給されていなかった(即ち、0円)のに対し2月には4,000円となっており、4,000円増額していることが分かる。また、単身赴任手当も1月には3,000円だったのに対し2月には4,000円になっており、1,000円だけ増額していることが分かる。この様に、或る月の給与明細情報31と、その或る月の前月の給与明細情報31の各給与項目25について支給金額を比較することで、給与項目25の支給金額が増額したか、又は減額したかを表す差額の増減の情報を得ることができる。
図6は、第1の実施形態に係る、給与誤支給検出システム3によって実行される給与誤支給検出処理の動作フローを例示する図である。図6を参照して、第1の実施形態に係る給与誤支給の検出について以下に説明する。なお、給与誤支給検出処理により給与の誤支給の有無を検出する対象の月を検出対象月と称する。また、給与誤支給検出処理により給与の誤支給の有無を検出する対象の従業員を検出対象者と、及び検出する対象の人事事象レコード23を検出対象の人事事象レコード23と称する。
図6に示される動作フローは、例えば、ユーザーが入出力部等から給与誤支給検出処理を実行すると開始する。動作を開始すると、ステップS1において、人事事象取得部8は、人事事象データベース7を参照する。人事事象取得部8は、給与誤支給の検出対象の人事事象レコード23として、人事事象レコード23の中から適用日19が属する月が検出対象月と一致する人事事象レコード23を1つ取得する。例えば、検出対象月が2011年2月であるとすると、人事事象取得部8は、図2に示される人事事象データベース7から適用日19が2月の人事事象レコード23を取得する。図2においては、職員番号「0013」の「木下 太郎」の人事事象レコード23から職員番号「0024」の「秋山 一」までの間にある人事事象レコード23が2月の人事事象レコード23として登録されている。人事事象取得部8は、これらの人事事象レコード23のうちの1つ、例えば、「岡田 太郎」の人事事象レコード23を検出対象の人事事象レコード23として取得し、給与の誤支給の検出対象とする。
ステップS2において、増減情報取得部10は、取得した検出対象の人事事象レコード23の人事事象情報18に含まれている人事事象項目21と、ステータス情報22とを用いて増減表9を参照する。それによって、増減情報取得部10は、増減表9から人事事象情報18に示される人事事象によって、支給金額が変更される給与項目25と、その支給金額の増減の方向を表す人事事象増減情報とを取得する。例えば、図2の職員番号「0501」の「岡田 太郎」の人事事象レコード23を用いて、増減表9を参照する例を説明する。増減情報取得部10は、職員番号「0501」の「岡田 太郎」の人事事象レコード23から、人事事象情報18の人事事象項目21として「扶養家族人数変更」を、ステータス情報22として「追加」を取得する。増減情報取得部10は、取得した人事事象項目21「扶養家族人数変更」と、ステータス情報22「追加」を用いて増減表9を参照する。増減表9には、人事事象項目21「扶養家族人数変更」に関連する給与項目25として「扶養家族手当」と「単身赴任手当」とが示されている。また、「追加」の欄には、「扶養家族手当」及び「単身赴任手当」いずれも「↑増額」と示されている。従って、職員番号「0501」の「岡田 太郎」は、2月に人事事象情報18:「扶養家族人数変更」の「追加」により、給与項目25:「扶養家族手当」及び「単身赴任手当」がいずれも「↑増額」することが分かる。増減情報取得部10は、人事事象項目21の「扶養家族人数変更」と、ステータス情報22の「追加」とを用いて、増減表9を参照することで、「扶養家族手当」の「↑増額」と「単身赴任手当」の「↑増額」の情報を取得することができる。
ステップS3において、支給給与項目判定部12は、検出対象の人事事象レコード23に示される職員番号16の従業員についての支給給与項目情報30を、給与情報データベース5から取得する。支給給与項目判定部12は、取得した支給給与項目情報30を参照し、検出対象月に検出対象の人事事象レコード23に示される従業員が、ステップS2で増減情報取得部10が取得した給与項目25の支給の対象となっているか否かを判定する。例えば、図2の職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」の人事事象レコード23の場合、増減情報取得部10は、増減表9から「扶養家族手当」の「↑増額」と「単身赴任手当」の「↑増額」の情報を取得している。支給給与項目判定部12は、職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」の支給給与項目情報30を給与情報データベース5から取得し、検出対象月に、この給与項目25:「扶養家族手当」及び「単身赴任手当」について、従業員:「岡田 太郎」が支払いの対象なっているか否かを判定する。図4は、職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」の支給給与項目情報30を例示している。図4に示されるように、職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」は「扶養家族手当」及び「単身赴任手当」が「有」となっており、従って、従業員「岡田 太郎」がこれらの給与項目25の支給の対象となっている。
ステップS4において、給与明細取得部11は、人事事象取得部8が取得した検出対象の人事事象レコード23に示される従業員の職員番号16を用いて、その従業員の検出対象月と、検出対象月の前月の給与明細情報31を給与情報データベース5から取得する。ステップS5において、給与演算部13は、支給給与項目判定部12が支給の対象となっていると判定した給与項目25について、取得した検出対象月と検出対象月の前月の給与明細情報31とを比較を行う。給与演算部13は、この比較により検出対象月の前月から検出対象月にかけて、支給給与項目判定部12が支給の対象となっていると判定した給与項目25について支給金額が増額したか又は減額したかの情報を取得する。例えば、図2の職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」の人事事象レコード23の場合、増減情報取得部10は、増減表9から「扶養家族手当」の「↑増額」と「単身赴任手当」の「↑増額」の情報を取得している。そして、支給給与項目判定部12は、図4の支給給与項目情報30から従業員「岡田 太郎」がこれらの給与項目25「扶養家族手当」及び「単身赴任手当」の支給の対象となっていると判定している。従って、給与演算部13は、この給与項目25「扶養家族手当」及び「単身赴任手当」について、検出対象月の給与明細情報31とその前月の給与明細情報31の比較を行う。図5は職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」の検出対象月(ここでは、2月)と、その前月(ここでは、1月)の給与明細情報31を例示している。この2つの給与明細情報31を比較すると、給与項目25「扶養手当」が1月から2月にかけて4,000円増額している。また、「単身赴任手当」は1月から2月にかけて1,000円増額している。従って、給与演算部13は、比較の結果として給与項目25「扶養手当」と「単身赴任手当」の支給金額の差額の増減の方向として、いずれも増加の方向を表す給与明細増減情報を取得する。
ステップS6において、比較判定部14は、支給給与項目判定部12が支給の対象となっていると判定した給与項目25に関して、人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致するか否かを判定する。比較判定部14が、一致していると判定した場合はYesへ進み、本動作フローは終了する。一方、比較判定部14が、一致していない判定した場合は、Noへ進みフローはステップS7へと進む。例えば、図2の職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」の人事事象レコード23を検出対象とすると、増減情報取得部10は、増減表9から給与項目25「扶養家族手当」と「単身赴任手当」とがいずれも増額すると取得する。また、支給給与項目判定部12は、図4の支給給与項目情報30から、検出対象の職員番号「0501」及び氏名「岡田 太郎」が検出対象月に、「扶養家族手当」と「単身赴任手当」の支給の対象となっていると判定する。そして、給与演算部13は、検出対象月と、その前月の給与明細情報31の比較から、給与項目25「扶養手当」と「単身赴任手当」の支給金額の差額の増減の方向として、いずれも増加の方向を表す給与明細増減情報を取得する。従って、検出対象の「岡田 太郎」の人事事象レコード23に関して、人事事象増減情報に示される「扶養手当」と「単身赴任手当」の支給金額の増減の方向と、給与明細増減情報に示される「扶養手当」と「単身赴任手当」の増減の方向とは一致している。この場合、比較判定部14は人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致しているためYesと判定し、本動作フローは終了する。しかしながら、例えば、ユーザーが給与情報データベース5の給与明細情報31に「扶養手当」と「単身赴任手当」の金額の変更を入力する際にプラス(増額)とマイナス(減額)を誤って金額を入力してしまったとする。このような場合には、比較判定部14により人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致していないためNoと判定され、フローはステップS7へと進む。
ステップS7において、通知部15は通知情報を出力する。通知部15から出力される通知情報は、例えば、給与誤支給検出システム3に備えられた入出力部107の表示画面等に警告を表示させる、又は警告音を発生させる等の通知を行うために用いられる。通知部15が通知情報を出力すると、本フローは終了する。通知部15から出力される通知は、例えば、人事事象増減情報と給与明細増減情報に示されている増減の方向が一致しなかった給与項目25と、検出対象の従業員とを識別できる情報(例えば、職員番号16、氏名17等)を含んでいてもよい。
以上のステップS1〜ステップS7の処理を、図2に示される人事事象データベース7において、適用日19が検出対象月に属する全てのレコードに対して実行することで、本実施形態に係る検出対象月の給与誤支給検出処理が完了する。
なお、上記のステップS3については、必ずしも実行される必要は無く、例えば、増減表9により対応づけられる給与項目25が、例えば給料等の全ての従業員に対して支給される給与項目25のみであればステップS3の処理は実行されなくてもよい。
また、図6に示す例では、人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致した場合には、通知部15は通知情報を出力しない例を述べた。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致した場合には、通知部15は給与誤支給が検出されなかったこと示す通知情報を出力してもよい。
以上のように、人事事象レコード23から増減表9を用いて得た給与項目25の増減の方向を表す人事事象増減情報と、給与演算部13が得た給与項目25の増減の方向を表す給与明細増減情報とが一致していない場合は、通知部15が通知情報を出力する。従って、何らかの人事事象が起こった場合に、その人事事象により必要となる給与項目25の支給額の変更が行われているか否かを給与誤支給検出システム3によって検出することができる。また、人事事象により必要となる給与項目25の支給額の変更が行われていない場合には、通知部15から通知が出力されるため、それによってユーザーは給与明細情報31の金額にエラーがあること知ることができる。
また、上記の実施形態では、人事事象レコード23から増減表9を用いて取得された給与項目25の増減の方向を表す人事事象増減情報と、給与演算部13が取得した給与項目25の増減の方向を表す給与明細増減情報とを比較している。例えば、人事事象レコード23に示される人事事象よって変更が必要となる給与項目25を特定し、その給与項目25について検出対象月とその前月の給与明細情報31で支給金額が変化していない場合には給与誤支給と判定する場合を想定する。この場合、例えば、給与明細情報31を更新の際にユーザーの入力ミス等で支給金額を増やすべきところを、誤って減らしてしまった場合にも金額は変化しているため誤支給であると判定されない。また、同様に支給金額を減らすべきところを、誤って増やしてしまった場合にも金額は変化しているため誤支給であると判定されないことになってしまう。
しかしながら、上記の実施形態では、増減表9を用いて取得した支給金額の増減の方向を表す人事事象増減情報と、給与明細情報31における金額の増減の方向を表す給与明細増減情報が一致しているか否かも確認している(即ち、増減の方向も確認している)。そのため、上述した例えば、給与明細情報31を更新の際にユーザーの入力ミス等で支給金額を増やすべきところを、誤って減らしてしまった場合には方向が一致ないため、人事事象増減情報と給与明細増減情報が一致せず給与の誤支給を検出することができる。同様に、支給金額を減らすべきところを、誤って増やしてしまった場合にも方向が一致ないため、人事事象増減情報と給与明細増減情報が一致せず給与の誤支給を検出することができる。
続いて、図7を参照して第2の実施形態を説明する。図7は、図6と同じく、一実施形態に係る、給与誤支給検出システムによって実行される給与誤支給検出処理の動作フローを例示する図である。第2の実施形態では、ステップST1〜ステップST4までは第1の実施形態と同様の処理を実行する。
第2の実施形態では、ステップST5において、給与演算部13は、第1の実施形態と同様に、検出対象の人事事象レコード23により変更すべき給与項目25の支給金額が増額したか、減額したか方向を表す給与明細増減情報を取得する。また更に、第2の実施形態では、検出対象の人事事象レコード23により変更すべき給与項目25が、検出対象月の前月と比べて検出対象月に増減した金額も取得する。例えば、図2の職員番号「0501」氏名「岡田 太郎」の人事事象レコード23に対しては、給与演算部13は、給与項目25「扶養手当」が1月から2月にかけて増額しているという情報と、その増額した金額4,000円を取得する。また、給与演算部13は、「単身赴任手当」が1月から2月にかけて増額しているという情報と、その増額した金額1,000円を取得する。
続いて、ステップST6では、第1の実施形態と同様に、比較判定部14は人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向とが一致するか否かを判定する。人事事象増減情報と給与明細増減情報に示される増減の方向が一致しなかった場合にはNoと判定し、ST7へと進む。ステップST7において、通知部15は通知情報を出力する。通知部15から出力される通知情報は、例えば、給与誤支給検出システム3に備えられた入出力部107の表示画面等に警告を表示させる、又は警告音を発生させる等の通知を行うために用いられる。通知部15が通知情報を出力すると、本フローは終了する。通知部15から出力される通知情報は、例えば、方向が一致しなかった給与項目25と、検出対象の従業員とを識別できる情報(例えば、職員番号16、氏名17等)を含んでいてもよい。
ステップST6において、増減の方向が一致した場合にはYesと判定し、ステップST8へと進む。ステップST8において、増減の方向が一致した給与項目25についてその増減した金額が許容範囲28に示される範囲内にあるか否かが判定される。本実施形態においては、ステップST5において、給与演算部13が、検出対象月とその検出対象月の前月の給与明細情報31から金額の増減の方向を表す給与明細増減情報とともに、その増減した金額についても取得している。従って、給与演算部13が取得した給与項目25の増減した金額を用いて、その金額が増減表9に示される許容範囲28に示される範囲内にあるか否かが判定することができる。
第1の実施形態と同じように、図2の職員番号「0501」の氏名「岡田 太郎」の人事事象レコード23を例とする。この場合に、ステップST5において給与演算部13は、給与項目25「扶養手当」と「単身赴任手当」について、1月から2月にかけて支給金額が増加しているという情報に加えて、増加した金額についても取得している。即ち、先に述べたように、給与演算部13は、「扶養家族手当」に関しては、1月から2月にかけて増加した金額4,000円を取得している。また、「単身赴任手当」に関しては、1月から2月にかけて増加した金額1,000円を取得している。また、ステップST6において、比較判定部14は給与項目25「扶養家族手当」と「単身赴任手当」について、人事事象増減情報に示される増減の方向と、給与明細増減情報に示される増減の方向が一致していると判定する。
この場合に、比較判定部14は、増減の方向が一致した「扶養家族手当」について、給与明細情報31の1月から2月にかけて増加した金額4,000円が増減表9の許容範囲28の範囲内にあるか否かを判定する。人事事象項目21:「扶養家族手当」は増減表9において、許容範囲として「−2万〜+2万」の範囲が設定されている。従って、比較判定部14は増加した金額4,000円は許容範囲内にあると判定する。同様に、増減の方向が一致した「単身赴任手当」について、給与明細情報31の1月から2月にかけて増加した金額1,000円が増減表9の許容範囲28の範囲内にあるか否かを判定する。人事事象項目21:「単身赴任手当」は増減表9において、許容範囲として「−0.5万〜+0.5万」の範囲が設定されている。従って、比較判定部14は増加した金額1,000円は許容範囲内にあると判定する。
以上の判定によって、増減の方向が一致していた「扶養家族手当」と「単身赴任手当」のいずれにおいても増減金額が許容範囲内にある。この場合には、ステップST8でYesと判定され、本フローは終了する。
一方、増減の方向が一致していたとしても、「扶養家族手当」又は「単身赴任手当」の増減金額が許容範囲28の範囲から外れている場合には、何らかの入力ミス等があると考えられる。この場合には、ステップST8でNoと判定され、フローはステップST7へと進み、通知部15が通知情報を出力した後に本フローは終了する。
以上で述べたように、第2の実施形態においては、増減の方向が一致していたとしても、給与明細情報31の検出対象月の前月から、検出対象月にかけて増減した金額が増減表9の許容範囲28に示される範囲を超えている場合には通知が行われる。従って、例えば、ユーザーが給与明細情報31を変更する際に入力を誤り、例えば大きな数値を入力してしまった場合に、増減の方向が一致していたとしても、許容範囲28に示される範囲を増減した金額が超えている場合には通知が行われる。或いは、例えば、プログラムが正常な値を出力せずにエラー終了して0の値を出力してしまったという場合にも、増減した金額が増減表9の許容範囲28に示される範囲を超えている場合には通知が行われる。以上のことから、給与誤支給を更に精度良く検出することができる。
なお、図7に示した例では、検証対象月の前月と比べて検証対象月に増減した金額が許容範囲28に示される範囲内にある場合には場合、通知部15は通知情報を出力しない例を述べた。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、検証対象月の前月と比べて検証対象月において増減した金額が許容範囲28に示される範囲内にある場合には、通知部15は給与誤支給が検出されなかったこと示す通知情報を出力してもよい。
続いて第3の実施形態について説明する。例えば、1人の従業員に対して、同月に2つ以上の人事事象が起こる場合がある。出産等により「扶養家族人数変更」が増える(追加)のと同時に、育児休暇に入り「休職」する(追加)場合などがこれに該当する。この様な場合、図3の増減表9を参照すると、「扶養家族人数変更」を「追加」の人事事象では、「扶養手当」と「単身赴任手当」が増額することが示されている。しかしながら、「休職」の「追加」では「扶養手当」と「単身赴任手当」とが減額することが示されている。
この様な場合に、最終的に「扶養手当」と「単身赴任手当」とが増額すべきか、減額すべきかを判定するために、第3の実施形態として、増減表9の人事事象項目21に対して優先順位が設定されていてもよい。例えば、「休職」者には給与を支払わないことを規定している企業であれば、「扶養家族人数変更」による支給金額の増加よりも、「休職」による支給金額の減少のほうが大きくなる。このような場合には、人事事象項目21の「扶養家族人数変更」よりも「休職」を優先するように設定する。給与誤支給検出システム3は、「扶養家族人数変更」よりも「休職」が優先であるため、「休職」の人事事象レコード23のみを用いて図6及び図7に示した給与誤支給検出処理を実行する。
優先順位は、例えば、増減表9に示される人事事象項目21毎に、その人事事象項目21に対する上位の人事事象項目21と、下位の人事事象項目21とを指定する優先順位情報を増減表9に加えることで設定してもよい。ここで、上位の人事事象項目21は下位の人事事象項目21よりも優先するものとする。人事事象取得部8は、人事事象レコード23を取得する際に、取得した人事事象レコード23の職員番号16に示される従業員(検出対象者)に対して、検出対象月に属する適用日19を有する複数の人事事象レコード23があるか否かを判定する。検出対象者に対する、検出対象月に属する適用日19を有する複数の人事事象レコード23が無い場合には、以降の処理は、例えば、第1の実施形態のステップS2〜ステップS7の処理を行う。しかしながら、検出対象者に対する、検出対象月に属する適用日19を有する複数の人事事象レコード23がある場合には、増減表9の優先順位情報を用いて最も優先される人事事象レコード23を決定する。例えば、1人の従業員に対して、検出対象月に属する適用日19を有する複数の人事事象レコード23が人事事象データベース7に登録されていた場合には、人事事象取得部8は複数の人事事象レコード23それぞれに対して増減表9の優先順位情報を参照する。人事事象取得部8は増減表9の優先順位情報に従って、どの人事事象レコード23が最も優先される人事事象レコード23かを決定する。この決定した優先される1つの人事事象レコード23に対して、例えば、第1の実施形態のステップS2〜ステップS7の処理を行う。
以上のように、1人の従業員に対して同月に2つ以上の人事事象が起きた場合にも、優先順位を設定することで、最終的に給与項目25が増額されるべきか、減額されるべきかを判定することができる。
図8は、一実施形態に係る、給与誤支給検出システム3を実現するためのコンピュータシステム100のハードウェア構成を示す図である。コンピュータシステム100は、図8に示すように、CPU101、メモリ102、記憶部103、読取部104、通信インタフェース106、及び入出力部107を備える。なお、CPU101、メモリ102、記憶部103、読取部104、通信インタフェース106、入出力部107は、例えば、バス108を介して互いに接続されている。
上述の図6及び図7に示される動作フローの手順を記述したプログラムは、例えば、メモリ102、記憶部103に記憶されていてもよい。CPU101は、例えば、メモリ102を利用して上述の図6及び図7に示される動作フローの手順を記述したプログラムを読み出して実行することにより、人事情報変更部6、人事事象取得部8、増減情報取得部10、支給給与項目判定部12、給与明細取得部11、給与演算部13、比較判定部14、通知部15の一部または全部の機能を提供する。
メモリ102は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んで構成される。記憶部103は、例えばハードディスクであり、実施形態に係わる給与誤支給検出プログラムを格納する。なお、記憶部103は、フラッシュメモリ等の半導体メモリであってもよい。また、記憶部103は、外部記録装置であってもよい。
読取部104は、CPU101の指示に従って着脱可能記録媒体105にアクセスする。着脱可能記録媒体105は、たとえば、半導体デバイス(USBメモリ等)、磁気的作用により情報が入出力される媒体(磁気ディスク等)、光学的作用により情報が入出力される媒体(CD−ROM、DVD等)などにより実現される。通信インタフェース106は、CPU101の指示に従ってネットワークを介してデータを送受信する。入出力部107は、例えば、ユーザーからの指示を受け付けるデバイス、表示装置及びスピーカ等との間のインタフェースとして機能する。
実施形態の給与誤支給検出プログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータシステム100に提供される。
(1)記憶部103に予めインストールされている。
(2)着脱可能記録媒体105により提供される。
(3)プログラムサーバ109から提供される。
なお、実施形態の給与誤支給検出方法は、複数のコンピュータを利用して上述の動作フローの処理を提供してもよい。この場合、あるコンピュータが、上述の動作フローの処理の一部を、ネットワークを介して他のコンピュータに依頼し、その処理結果を受け取るようにしてもよい。
さらに、実施形態の給与誤支給検出システムの一部は、ハードウェアで実現してもよい。或いは、給与誤支給検出システムは、ソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせで実現してもよい。
また、実施形態の給与誤支給検出システムはクラウド上に実装されてもよい。図9は、一実施形態に係る、給与誤支給検出プログラムが実装されるサーバーコンピュータ110と、サービスを受けるコンピュータ111とを例示する図である。例えば、サーバーコンピュータ110は、ネットワークを介してコンピュータ111から給与誤支給の検出の依頼情報を受信し、給与誤支給検出プログラムを実行した結果をコンピュータ111へと返信する。
いくつかの実施形態を説明してきた。上述した給与誤支給検出システム3を用いることで、例えば、人事事象よって変更が必要となる給与項目25を増減表9から特定し、特定した給与項目25が検対象証月の給与明細情報31で金額変更されているかを確認することで給与の誤支給を検出できる。増減表9を用いることによって、変更が必要となる給与項目25が特定できるため、入力ミス等により誤りが生じやすい変更が行われた給与項目25を抽出して、給与誤支給検出処理を実行することができる。従って、給与誤支給検出処理に必要な処理量が低減されるため、コンピュータに対する処理の負荷が少なく速い処理が可能である。
また、人事事象よって変更が必要となる給与項目25の金額の増減の方向が増減表9により特定されるため、変更が必要な給与項目25の金額が給与明細情報31において変更されていたとしても増減の方向が一致していない場合に給与の誤支給を検出できる。
更に、増減表9に支給金額の変更金額の許容範囲が定められているため、支給金額の増減の方向が一致していたとしても、変更された金額が許容範囲を超えていた場合には給与の誤支給を検出できる。
また、上述の実施形態は、複数の給与項目25に対する給与誤支給の検出に適用できることはもちろん、例えば、給与項目25が1つしかない(例えば給料のみ)場合にも給与誤支給を検出するために適用することができる。
また、上述した給与誤支給検出処理は、複雑な処理を必要とせず、増減表9を参照して得た増減の方向と、検出対象月とその前月の給与明細を比較して得た増減の方向とを比較するだけの簡単な処理で、給与誤支給の検出漏れを減らすことができる。従って、従業員の人数及び給与項目数が非常に多い場合にも、コンピュータに対する処理の負荷が少なく速い処理が可能であり、給与誤支給検出処理を有効に実施することができる。従って、例えば、公共機関等の給与項目の数が多い現場において、給与誤支給検出処理を有効に用いることができる。
いくつかの実施形態によれば、給与誤支給の検出対象月の人事事象に基づいて得た給与項目の支給金額の増減の方向と、検出対象月とその前月の給与明細の給与項目の差額の増減の方向とが一致しない場合に警告し、給与誤支給の検出漏れを減らすことができる。
以上で、いくつかの実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明に係る実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態及び代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、本発明に係る種々の実施形態を成すことができることが理解されよう。或いは、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して又は置換して、或いは実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して本発明に係る種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。