JP5802115B2 - 粗製テレフタル酸の精製方法 - Google Patents
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Description
また、処理排出水の循環使用により、廃水処理工程の処理負荷が軽減されることになる。
図1に示すように、高純度テレフタル酸製造プロセス100においては、(i)粗製テレフタル酸製造工程と、(ii)粗製テレフタル酸精製工程と、の2つの工程を主に含んで精製テレフタル酸(高純度テレフタル酸)が製造される。そして、図1中、太実線は、原料であるパラキシレンから最終生成物である精製テレフタル酸(PTA)へ至るフローである。以下、各工程を詳細に説明する。
本工程では、パラキシレンを液相酸化して、粗製テレフタル酸の結晶粉末を製造する。具体的には、パラキシレン(原料)、酢酸(溶媒)、触媒等を酸化反応槽1に供給して、酸素含有ガスによりパラキシレンを液相酸化させ、晶析槽(図示せず)にて冷却し、十分にテレフタル酸の結晶を析出させる。ただし、パラキシレンを酸化してテレフタル酸を製造する反応は逐次反応であるため、中間生成物である4−カルボキシベンズアルデヒド等が残存され、粗製テレフタル酸の結晶には、その中間生成物である4−カルボキシベンズアルデヒド等が微量であるが含まれることになる。
本工程では、粗製テレフタル酸(CTA)が精製され、精製された高純度テレフタル酸(PTA)が製造される。詳細に説明する。
次に、前記した図1の粗製テレフタル酸精製工程(ii)の各処理において排出される処理排出水(使用済み水媒体)の再利用システムのフローについて説明する。
例えば、晶析槽6から排出される蒸気の凝縮水、また該凝縮水を分離したガス、固液分離器7及び分離された水性母液(一次母液)(図示せず)、洗浄排水の貯槽11、乾燥器8等の循環・封止ガスから排出される各排出ガスを洗浄するスクラバ13からの処理排出水等の処理済み水媒体が排出される。そして、固液分離器7から排出される水性母液(一次母液)を除いて、晶析槽6からの前記凝縮(排出)水は勿論、前記各機器・貯槽の循環・封止ガス(窒素等の不活性ガス、但し、前記凝縮水を分離したガスは精製余剰の水素ガスを含有)に蒸発・同伴する微量の不純物(パラトルイル酸等)を含有した排出ガスを洗浄するスクラバ処理の排出水は、通常ほぼ透明のものである(温度・圧力降下によって結晶の析出しない水媒体)。前記のように、粗製テレフタル酸精製工程(ii)において必要とされる水媒体は高純度なものであるため、調達コストが高い。また、使用済み水媒体(処理排出水)は有機化合物を含むため、環境負荷のいっそうの低減という観点からも、できるだけ外部へ排出せず、再利用することが好ましい。
なお、使用済み水媒体に含まれる不純物(パラトルイル酸)の量が排出場所に拠って異なるため、懸濁槽/固液分離器の10/12と14/15の二系統のフローに分岐して浄化処理することが、再利用にあたってより好ましい。
晶析槽6から排出された蒸気は凝縮器9によって冷却され、凝縮水媒体と水素を含んだガスに分離される。そして、この凝縮水媒体には高いレベルのパラトルイル酸(約500ppm〜600ppm)が含まれている。冷却後、凝縮水媒体は、凝縮水懸濁槽10に供給される。なお、凝縮器9で分離された前記排出ガスはスクラバ13に供給され、洗浄されて排出される。また、凝縮器9において生じた熱(具体的には、蒸気から奪われた熱)は、前記した加熱器4における結晶スラリーの加熱に用いられている。
固液分離槽7や乾燥器8の封止、循環ガスからの排出ガス、凝縮器9の分離ガスそして固液分離7からの分離母液(図示せず)、洗浄排水槽11の封止ガスからの排出ガスを洗浄するため、これらはスクラバ13に供給される。そして、当該ガス中に揮発性のパラトルイル酸等が含まれるため、スクラバ13において水媒体を用いてそれらは洗浄除去され、その後に洗浄ガスが外部に排出されている。そのため、スクラバ13から排出された使用済み水媒体には、低レベルのパラトルイル酸が含まれる。その含有量は、前記した晶析槽6からの蒸気中の含有量よりも少ない。具体的には、スクラバ13から排出された使用済み水媒体中のパラトルイル酸含有量は、通常は約100ppm或いはそれ以下である。
一方、得られた分離水は固液分離器7における精製テレフタル酸の洗浄水の一部に用いたり、或いは粗製テレフタル酸の溶解する水の一部に使用するためCTAスラリー調製槽3に供給される。即ち、パラトルイル酸の含有量が少ないスクラバ13からの使用済み水媒体には、懸濁層14においてテレフタル酸結晶が添加されて懸濁液とされたのち、固液分離器15からの分離水は固液分離器7において精製テレフタル酸結晶の洗浄水として用いられる。そして、この洗浄排水は、洗浄排水槽11に回収され、粗製テレフタル酸を溶解する水媒体の一部として使用される。また、固液分離器7における分離母液(一次母液)との分別回収が不十分なため、パラトルイル酸の含有レベルの高くなった洗浄排水は、凝縮水懸濁槽10に供給し、前記凝縮器9から凝縮水と混合して浄化処理され、再利用されることができる。
図1に示すように、高純度テレフタル酸製造プロセス100においては、スクラバ13からの使用済み水媒体は懸濁槽14に供給され、テレフタル酸結晶が添加される。ただし、前記したように、スクラバ13から排出される使用済み水媒体に含まれるパラトルイル酸量は低レベルなものである。
本実施形態に係る精製方法が適用される高純度テレフタル酸製造プロセス100は、図1に示すプロセス構成に何ら限定されるものではない。例えば、固液分離器7は1段分離に限定されず、複数段設けられていてもよい。
本実施例では、図1に示す高純度テレフタル酸製造プロセス100による実製造装置における、晶析槽6からの蒸気を凝縮した凝縮水をサンプル採取して用いた。そして、その凝縮水を遠心分離用コニカルチューブ4本に各々50mlを採取した。これらの4本のコニカルチューブに精製テレフタル酸粉末(結晶粉末)を、添加しないもの(0重量%)、0.05g(0.1重量%)、0.1g(0.2重量%)、0.25g(0.5重量%)を添加したもののそれぞれをよく振り混ぜ、結晶粉末を十分分散させた後、遠心分離器にセットした。
実施例1〜3と同様に凝縮水をコニカルチューブ4本に採取した。そして、それらのコニカルチューブの1本に、精製テレフタル酸粉末(結晶粉末)を0.5g(1重量%)添加し、よく振り混ぜ、結晶粉末を十分分散させた後、遠心分離器にセットした(実施例4)。
別のコニカルチューブの1本に精製テレフタル酸の乾燥前の湿潤(約11%)精製テレフタル酸ケーキを0.28g(0.5重量%)添加し、よく振り混ぜ、結晶を十分分散させた後、遠心分離器にセットした(実施例5)。
また、さらに別のコニカルチューブの1本に粗製テレフタル酸粉末を0.2g(0.4重量%)添加し、よく振り混ぜ、結晶粉末を充分分散させた後、遠心分離器にセットした(実施例6)。
そして、残りのコニカルチューブの1本に何も加えず遠心分離器にセットした(バランス用)。
図1に示す高純度テレフタル酸製造プロセス100による実製造装置におけるスクラバ13から排出された使用済み水媒体を2本のコニカルチューブに50mlずつ採取した。そして、このコニカルチューブに対して精製テレフタル酸粉末を0.8g(0.8重量%)を添加して、よく振り混ぜ、結晶粉末を十分分散させた後、遠心分離器にセットした(実施例7)。また、何も添加しないものも比較例2として準備した。
高純度テレフタル酸製造プロセス100による実製造装置における晶析槽6は、前記のように複数の晶析槽からなる。即ち、水素化反応器5において水素化精製されたテレフタル酸水溶液を、複数の晶析槽に供して段階的に放圧冷却し、最終晶析槽(4Kg/cm2G、150℃)で精製テレフタル酸スラリーの生成を行っている。そして、この精製テレフタル酸スラリーは、前記のように固液分離器7に供され、精製テレフタル結晶と母液とに分離される。そして、当該結晶は、水媒体(新たな水媒体或いは再利用水媒体)によって洗浄され、精製テレフタル酸結晶が回収されている。
本実施例では、図1の製造装置における晶析槽6と固液分離槽7との間の配管の途中に分岐して設けられた短管に、濾過試験器200を取り付けて検討を行った。濾過試験器200内部を前記配管(晶析槽6と固液分離槽7との間の配管)と同等の圧力、温度(5Kg/cm2G、150℃)に調整した後、上部から結晶スラリーを200〜300ml供給した。供給後、圧力計206a、206bの差圧0.5Kg/cm2に調整(弁204b及び弁207bで調整)し、結晶スラリーを濾布201aにより濾過する。分離母液は一旦受器202に貯め、外部へ排出(弁204b閉→弁204c開により濾過器内201圧力を保持)される。結晶は図2に示すように濾布201a上に層状(結晶層201b)に堆積した。
以上の結果を表4に示す。なお、表4中、「洗浄水比」とは、乾燥後の結晶重量あたりの洗浄水量を表す値である。また、参考例として、洗浄水として脱イオン水を用いた場合も併せて示している。
2 固液分離槽
3 CTAスラリー調製槽
4 加熱器
5 水素化反応器
6 晶析槽
7 固液分離器
8 乾燥器
9 凝縮器
10 凝縮水懸濁槽
11 洗浄排水槽
12 固液分離器
13 スクラバ
14 懸濁槽
15 固液分離器
100 製造設備
200 濾過試験器
201 濾過器
202 受器
203 洗浄水注入器
TA テレフタル酸結晶
Claims (6)
- パラキシレンを原料として酢酸溶媒中、液相酸化して粗製テレフタル酸を製造した後、前記粗製テレフタル酸を高温、高圧の水媒体に溶解後に、水素化精製して得られた水溶液を放圧冷却させて結晶を析出させ、精製テレフタル酸結晶スラリーを得た後、該精製テレフタル酸結晶スラリーを固液分離する粗製テレフタル酸の精製方法において、
前記放圧冷却時に発生した蒸気を冷却して生成した凝縮水と、
該凝縮水を分離したガス及び固液分離器、乾燥器、水性母液の貯槽の循環・封止ガスからの排出ガスを、水媒体により洗浄して生成したスクラバ処理排水と、
前記固液分離において得られた固体を洗浄して分別回収した洗浄排水と、
からなる処理排出水のうち、
少なくとも1つの前記処理排出水にテレフタル酸結晶を添加して懸濁液とした後、固液分離を行って分離結晶と分離水とを回収し、
該分離結晶を、前記粗製テレフタル酸製造時の原料の一部として用いるとともに、
該分離水を、前記粗製テレフタル酸を溶解する水媒体の少なくとも一部として用いる
ことを特徴とする、粗製テレフタル酸の精製方法。 - 請求項1に記載の粗製テレフタル酸の精製方法において、
前記凝縮水及び前記洗浄排水の少なくとも一方にテレフタル酸結晶を添加して分離水を得、
該分離水と前記スクラバ処理排水をそのままとを、前記粗製テレフタル酸を溶解する水媒体の少なくとも一部として用いる
ことを特徴とする、粗製テレフタル酸の精製方法。 - 請求項1に記載の粗製テレフタル酸の精製方法において、
前記凝縮水及び前記洗浄排水の少なくとも一方にテレフタル酸結晶を添加して分離水を得るとともに、前記スクラバ処理排水にもテレフタル酸結晶を添加して分離水を得、
前記凝縮水及び/又は前記洗浄排水を用いて得られた該分離水を、前記粗製テレフタル酸を溶解する水媒体の少なくとも一部として用いるとともに、
前記スクラバ処理排水を用いて得られた該分離水を、前記精製テレフタル酸結晶を洗浄する洗浄水の少なくとも一部として用いる
ことを特徴とする、粗製テレフタル酸の精製方法。 - 請求項3に記載の粗製テレフタル酸の精製方法において、
前記精製テレフタル酸結晶を洗浄した洗浄排水を、前記粗製テレフタル酸を溶解する水媒体の少なくとも一部として用いる
ことを特徴とする、粗製テレフタル酸の精製方法。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の粗製テレフタル酸の精製方法において、
前記テレフタル酸結晶が、前記処理排出水に対してそれぞれ、0.2重量%以上2重量%以下の比率となるように添加される
ことを特徴とする、粗製テレフタル酸の精製方法。 - 請求項1〜5の何れか1項に記載の粗製テレフタル酸の精製方法において、
前記テレフタル酸結晶は、乾燥した前記粗製テレフタル酸、乾燥した前記精製テレフタル酸、及び、湿潤した前記精製テレフタル酸のケーキからなる群より選ばれる少なくとも一種の結晶である
ことを特徴とする、粗製テレフタル酸の精製方法。
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