JP5800839B2 - ペースト組成物と太陽電池 - Google Patents
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Description
この太陽電池110は、p型シリコン基板(Siウエハ:p型結晶シリコンからなるp−Si層)111の受光面(図2では上面)側にpn接合により形成されたn−Si層116を備え、n−Si層116上には窒化シリコンや酸化チタンから成る反射防止膜114と、銀(Ag)から成る表面電極(受光面電極)112とを備えている。一方、p型シリコン基板(p−Si層)111の裏面(図2では下面)側には、受光面電極112と同様に銀(Ag)から成る裏面側外部接続用電極122と、いわゆる裏面電界(BSF;Back Surface Field)効果を奏するアルミニウム電極120とを備えている。
特許文献2には、導電性ペーストに、塩化物、臭化物あるいはフッ化物を添加することで、銀粉末およびガラス粉末が反射防止膜を突き破る作用を補助し、オーミックコンタクトを改善できることが開示されている。
特許文献3には、銀電極用の電極材料にTi,Bi,Co,Zn,Zr,FeおよびCr成分のうちのいずれか1種または複数種を含有させることで、安定的なオーミックコンタクトが得られ、電極強度が高くなることが開示されている。
また、特許文献5には、太陽電池の受光面電極を形成するために用いることができる、銀粉末とMn含有添加剤と軟化点が300から600℃の範囲内にあるガラスフリットとが有機溶媒中に分散されている厚膜導電性組成物が提案されており、このMn含有添加剤の添加により電気的性能とハンダ接着性との両方が改善されることが開示されている。
ここで、グリッド電極の幅を細くすると、受光面電極とn層とのオーミックコンタクトが悪化して接触抵抗が高くなり、電流密度の低下が起こるため、単純には変換効率を高くすることができない。そのため、グリッド電極の幅を細くした場合において、上記の特許文献1〜5に記載された技術は、太陽電池の曲線因子やエネルギー変換効率等の特性を十分に高めるものとはなり得ていなかった。
これは、太陽電池の製造における電極パターンの形成等において、還元雰囲気での焼成を行う際にも望ましい特性である。さらには、耐熱性等の特性をも備えていれば、かかる焼成に際し、より高い温度およびより長時間での焼成が実現でき、高性能な電極が得られるとともに、焼成条件の厳格な制御を緩和することも可能となる。
そこで、ペースト組成物の更なる改良を目的として鋭意研究を重ねた結果、上記のLn、(Sr,Ca,Ba)、TiおよびFeを必須の構成元素として含むペロブスカイト型酸化物を用いることで、太陽電池の電気特性を向上する効果を維持したまま、耐熱性および耐還元性を備えるペースト組成物を実現するに至ったものである。すなわち、かかるペースト組成物は、電極形成時の焼成条件を緩和することができ、また、得られる電極に良好な電気特性に加えて耐熱性および耐還元性を付与するものであり得る。
(Lnx,M1−x)(Tiy,Fe1−y)O3−δ …(2)
ここで、式(2)中、Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素を示し、MはSr,CaおよびBaから選択される少なくとも1種であり、xおよびyは、0.2≦x≦0.8,0.1≦y≦0.7を満たし、δは酸素欠損量を示す。
かかる組成を有するLnMTiFe系ペロブスカイト型酸化物は、骨格にLnおよびTiを有することから結晶構造的に比較的安定しており、耐熱性および耐還元性のバランスが取れたものとなり得る。特に、上記で示されたような適量のTiの存在により、耐還元性に優れたものとなり得る。これにより、より耐還元性に優れたペースト組成物が提供される。
本発明で用いられるLnMTiFe系のペロブスカイト型酸化物は、上記の割合でペースト組成物に配合されることで、形成される電極の電子伝導性(導電性)と、耐熱性および耐還元性とをバランスよく好適に向上させる効果を発揮し得る。よって、電気特性および耐久性(耐熱性および耐還元性)に優れた電極を形成し得るペースト組成物が提供される。
SiO2: 20mol%以上65mol%以下
B2O3: 1mol%以上18mol%以下
PbO : 20mol%以上65mol%以下
Li2O:0.6mol%以上18mol%以下
かかる構成によると、太陽電池の受光面において、銀電極とn−Si相との間に良好な導電パスが形成されるとともに、耐熱性および耐還元性に優れた電極が実現されている。かかる特性は、受光面電極を細線化した場合であっても維持され得る。これにより、電気特性(例えば、曲線因子や変換効率)に優れた太陽電池が提供されることになる。
かかる良好な耐熱性を備えた銀電極およびこれを形成するペースト組成物は、焼成時の焼成条件の管理をより緩和させることを許容する。すなわち、従来は厳密な焼成条件の管理が必要であったのに対し、例えば、より高い温度あるいは広い温度範囲において、より長時間の焼成を実施することができる。これにより、銀電極の十分な焼成と緻密化を図ることができ、電極の高性能化を実現することができる。また、銀電極の焼成の際に、焼成温度域を厳密に管理できる特殊な焼成装置が必要ではなくなり、汎用の焼成炉を用いることが可能となって、コストの低減が可能となる。
かかる良好な耐還元性を有する銀電極を備える太陽電池は、例えば、燃料電池と併設された発電システムにおいて、万が一、燃料としての水素ガスが外部にリークした状態に陥っても、かかる銀電極の劣化が抑制され得る。また、銀電極の焼成時に、例えば、還元雰囲気での焼成を採用することも可能となる。すなわち、耐久性および電気特性に優れた太陽電池を、特殊な装置や条件を必要とすることなく、より多様な条件で低コストに製造することが可能とされる。
なお、本明細書において、ペーストとは、上記の構成成分が有機媒体に混合または分散されて、適度な流動性と粘性を備えているものを意味し、インクまたはスラリー等を包含する意味で用いられる。
ここに開示されるペースト組成物は、太陽電池の受光面に配設される銀電極を形成するためのペースト組成物である。より典型的には、結晶シリコン(単結晶あるいは多結晶シリコン)系の太陽電池の受光面電極の形成に好適に用いることができる。このペースト組成物は、本質的に、銀粉末と、ペロブスカイト型酸化物粉末と、ガラス粉末とが、有機媒体に分散されることで構成されている。
ここで開示されるペースト組成物には、主たる固形分として銀(Ag)粉末が含まれている。この銀粉末は、銀(Ag)を主体とする粒子の集合体であってよく、好適には、Ag単体からなる粒子の集合体である。しかし、この銀粉末がAg以外の不純物やAg主体の合金(固溶体、共晶および金属間化合物を含み得る。)を微量含むものであっても、全体としてAg主体の粒子の集合体であれば、ここでいう「銀粉末」に包含され得る。なお、かかる銀粉末は、従来公知の製造方法によって製造されたものでよく、特別な製造手段を要求するものではない。
例えば、平均粒径の差が互いに異なる複数の銀粉末(典型的には2種類)同士を混合し、混合粉末の平均粒径が上記範囲内にあるような銀(混合)粉末を用いることもできる。上記のような平均粒径の銀粉末を用いることにより、受光面電極として好適な緻密な銀電極を形成することができる。
次に、ここで開示されるペースト組成物を特徴づけるペロブスカイト型酸化物粉末について説明する。
ペロブスカイト型酸化物粉末は、上記ペースト組成物の固形分として含まれる必須の構成要素である。かかるペロブスカイト型酸化物粉末は、次の一般式(1):ABO3−δで表されるもののうち、Aサイトに、ランタノイド(Ln)から選択される少なくとも1種の元素と、ストロンチウム(Sr),カルシウム(Ca)ならびにバリウム(Ba)から選択される少なくとも1種の元素とを含み、かつ、Bサイトに、少なくともチタン(Ti)と鉄(Fe)とを含むものを考慮することができる。
なお、上記の説明からも明らかなように、本発明のペロブスカイト型酸化物は、上記に挙げられた特定の金属元素の含有が必須とされているものの、本発明の目的を損なわない限りにおいて、その他の元素の含有が許容される。すなわち、Aサイトは、酸素12配位の各種の金属元素であってよく、Bサイトは酸素6配位の各種の金属元素であってよい。例えば一例として、Zn,In,V,Sn,Ge,Ce,Mg,Sc,Y等の他の元素が含まれていてもよい。これら任意の金属元素がAサイトまたはBサイトを占める割合は、サイト数を基準として、例えば、30%以下、より好ましくは10%以下の割合であることが例示される。
(Lnx,M1−x)(Tiy,Fe1−y)O3−δ …(2)
ここで、式(2)におけるLnは少なくとも1種のランタノイドであり、好ましくはLaである。また、Mは、Aサイトに好ましくドープされる、Sr,CaおよびBaから選択される少なくとも1種の元素であり、好ましくはSrである。すなわち、AサイトはLnとMにより実質的に占有され、BサイトはTiとFeとにより実質的に占有されている物が好ましい。
また、式(2)に示されるように、いわゆるIII−III型ペロブスカイト構造におけるLn3+の一部を同価でないM2+で置換することで、Aサイトに欠陥が発生すると同時にBサイトの価数が増加し、Ti3+,Ti4+とFe3+,Fe4+とが共存し得る。また、結晶構造には酸素欠損が誘起され得る。結晶構造中の酸素欠損量は上記の式(1)(2)中においてδで示され、電子、正孔、酸素イオンなどの欠損(欠陥)の濃度が結晶全体として電気的中性を保つように各種の条件に応じて変化する。これにより、かかるペロブスカイト型酸化物は、電気的に導電性と誘電性とが共存した状態であり得る。
なお、以上のペロブスカイト型酸化物粉末は、例えば、ペースト組成物の全体を100質量%としたとき、0.02質量%以上1質量部以下程度(典型的には、0.1質量%以上0.8質量%以下程度)であるのを、好適な例として把握することもできる。
このようなペロブスカイト型酸化物粉末は、例えば、ペロブスカイト型酸化物粉末が有機媒体に分散されたペーストの形態でペースト組成物に供給されても良い。
ここで開示されるペースト組成物中の固形分のうち、副成分として含まれるガラス粉末は、太陽電池の受光面電極としての銀電極をファイヤースルー法により反射防止膜の上から形成するために必須の成分であり、また、基板への接着強度を向上させる無機添加材(結着材)でもあり得る。
かかるガラス粉末としては、典型的にはガラスフリットを用いることができる。このガラスフリットを構成するガラス組成については特に制限はなく、各種のガラスフリットを用いることができる。例えば、鉛系、鉛リチウム系、亜鉛系、ホウケイ酸系、アルカリ系のガラス、および酸化バリウムや酸化ビスマス等を含有するガラス、またはこれらのうちの2種以上の組合せが挙げられる。より具体的には、以下の3つのガラスA〜C等が例示される。以下の記載は、代表組成(酸化物換算組成;ガラスフリット全体)であって、ガラスフリットの全体を100mol%とした場合について示している。
SiO2 : 38mol%以上53mol%以下
B2O3 : 1mol%以上 7mol%以下
PbO : 46mol%以上57mol%以下
[ガラスB]鉛リチウムガラス
SiO2 : 20mol%以上65mol%以下
B2O3 : 1mol%以上18mol%以下
PbO : 20mol%以上65mol%以下
Li2O :0.6mol%以上18mol%以下
[ガラスC]鉛フリーガラス
Bi2O3:10mol%以上29mol%以下
B2O3 :20mol%以上33mol%以下
SiO2 : 0mol%以上20mol%以下
ZnO :15mol%以上30mol%以下
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計:8mol%以上21mol%以下
本発明においては、これらのガラスA〜Cなかでも、特にガラスBを用いるのが好ましい例として示される。
また、かかるガラス粉末の上記ペースト組成物中の含有量としては、特に限定されないが、ペースト組成物全体の合計を100質量%としたとき、典型的には10質量%以下(例えば1〜5質量%程度)を目安に配合することができる。より具体的には、例えば、該ペースト組成物全体のおよそ0.5質量%以上5質量%以下、好ましくは0.5質量%以上3質量%以下、より好ましくは1質量%以上3質量%以下となる量が適当である。
なお、ガラス粉末は、例えば、銀粉末100質量部に対しての添加割合が0.5質量部以上15質量部以下程度(典型的には、0.5質量部以上10質量部以下程度、例えば、1質量部以上5質量部以下程度)であるのを、好適な例として把握することもできる。
ここで開示されるペースト組成物は、固形分として上記の銀粉末、ペロブスカイト型酸化物粉末、ガラス粉末を含むとともに、その残部として、これらの固形分を分散させるための有機媒体(典型的にはビヒクル)を含んでいる。かかる有機媒体としては、上記の固形分、とりわけ銀粉末を良好に分散させ得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、有機媒体を構成する溶剤として、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体(グリコールエーテル系溶剤)、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶剤を1種類または複数種組み合わせて使用することができる。
また、ビヒクルは、有機バインダとして種々の樹脂成分を含むことができる。かかる樹脂成分はペースト組成物に良好な粘性および塗膜形成能(例えば、印刷性や、基板に対する付着性等を含む。)を付与し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ロジン樹脂等を主体とするものが挙げられる。このうち、特にエチルセルロース等のセルロース系高分子が好ましい。
銀粉末 :40質量%以上95質量%以下
ペロブスカイト型酸化物粉末:銀粉末100質量部に対して0.02質量部以上
2.5質量部以下
ガラス粉末 :1質量%以上10質量%以下
有機媒体 :1質量%以上50質量%以下
(ビヒクル :0.5質量%以上15質量%以下)
なお、ビヒクルは、有機媒体に包含されるものであるが、ペースト組成物全体に占める割合を示すと上記の範囲に収まるよう配合されているのが好ましい。
以上の各成分の含有率に係る上記数値範囲は厳密に解釈すべきでなく、本発明の目的を達成し得る限りにおいて、かかる範囲からの若干の逸脱を許容するものである。ここに開示されるペースト組成部には、上記の成分の他、必要に応じて種々の添加成分を加えることができる。例えば、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤等の添加剤が挙げられる。
なお、ペロブスカイト型酸化物粉末を他の構成材料(含有成分)と混合するにあたり、予め該粉末を、例えば水系溶媒やアルコール類等の液状媒体に分散させた分散液またはスラリー状組成物の形態で提供してもよい。
以上のようにして得られるペースト組成物は、例えば、従来より基板上に受光面電極としての銀電極を形成するのに用いられてきた銀ペースト等と同様に取り扱うことができる。すなわち、ここに開示されるペースト組成物による銀電極の形成には、従来公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、図1に示した太陽電池10における銀電極(受光面電極12)を、ファイヤースルー法により形成する場合には、従来と同様に基板11の受光面にリン(P)の熱拡散等によりn層(n−Si層)16を形成し、さらにその上にCVD等により反射防止膜14を形成する。そしてその後に、ここに開示されるペースト組成物を反射防止膜14の上に所望する膜厚(例えば20μm程度)や所望の塗膜パターンとなるように供給(塗布)する。ペースト組成物の供給は、典型的には、スクリーン印刷法、ディスペンサー塗布法、ディップ塗布法等によって行うことができる。なお、かかる基板としては、シリコン(Si)製基板11が好適であり、典型的にはSiウエハである。かかる基板11の厚さとしては、所望する太陽電池のサイズや、該基板11上に形成される銀電極12,裏面電極20,反射防止膜14等の膜厚、該基板11の強度(例えば破壊強度)等を考慮して設定することができ、一般的には100μm以上300μm以下とされ、150μm以上250μm以下が好ましい。なお、上記のn層16の厚みとしては、従来より一般的なシリコン系太陽電池では300〜500nm程度であり得るが、本ペースト組成物は、n層16がこれより薄く、ドーパント濃度の低いシャローエミッタ構造を有する基板11に対しても適用することも考慮できる。かかるn層16の厚みとしては、例えば、500nm以下とすることができる。
次いで、ペースト塗布物を適当な温度(例えば室温以上であり、典型的には100℃程度)で乾燥させる。乾燥後、適当な焼成炉(例えば、マッフル炉)中で適切な加熱条件(例えば600℃以上900℃以下、好ましくは700℃以上800℃以下)で所定時間加熱することによって、乾燥塗膜の焼成を行う。これにより、上記ペースト塗布物が基板11上に焼き付けられ、図1に示すような銀電極12が形成される。
なお、ここで開示されるペースト組成物を使用して太陽電池の銀電極(典型的には、受光面電極)を形成すること以外の太陽電池製造のための材料やプロセスは、従来と全く同様でよい。そして、特別な処理をすることなく、当該ペースト組成物によって形成された銀電極を備えた太陽電池(典型的には結晶シリコン系太陽電池)を製造することができる。かかる結晶シリコン系太陽電池の構成の一典型例としては、上述の図1に示される構成が挙げられる。
銀電極形成以外のプロセスとしては、裏面電極20としてのアルミニウム電極20の形成が挙げられる。かかるアルミニウム電極20の形成の手順は以下のとおりである。例えば、先ず、上記の通り受光面に受光面電極12を印刷した後、裏面にも銀ペースト(ここで開示されるペースト組成物であってもよい。)を所望の領域に印刷し、乾燥させることで、裏面側外部接続用電極22とする。その後、この裏面側外部接続用電極22の形成領域の一部に重なるようにアルミニウム電極ペースト材料を印刷・乾燥し、全ての塗膜の焼成を行う。通常、アルミニウム電極20が焼成されるとともに、P+層(BSF層)24も形成され得る。すなわち、焼成によって裏面電極となるアルミニウム電極20がp型シリコン基板11上に形成されるとともに、アルミニウム原子が該基板11中に拡散することで、アルミニウムを不純物として含むp+層24が形成されることとなる。このようにして、ここに開示されるペースト組成物を用いて形成された銀電極を受光面に備える太陽電池(セル)10が作製される。
(実施形態1)
[ペースト組成物の用意]
太陽電池の受光面電極形成用のペースト組成物を作製した。ペースト原料としては、以下のものを用意した。
すなわち、(1)銀粉末として、平均粒径が1.6μmの銀粉末を用意した。
これらのペロブスカイト型酸化物粉末は以下の手順で作製した。まず、LaSrTiFe系酸化物粉末については、市販の酸化ランタン(La2O3)粉末(平均粒径約2μm)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末(平均粒径約2μm)、酸化チタン(TiO2)粉末(平均粒径約1μm)および酸化鉄(Fe2O3)粉末(平均粒径約2μm)を、目的とする組成の化学量論比で配合し、ボールミルを用いて混合した。次いで、この混合粉末を1200℃の温度で6時間焼成し、得られた焼成物を湿式ボールミルにより粒径が0.1〜0.3μmとなるよう粉砕した。La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δについては、原料粉末として上記の酸化チタンに代えて酸化コバルト(CoO2)粉末(平均粒径約1μm)を用い、後は同様にして調製した。
(4)有機媒体としては、バインダ(エチルセルロース)と有機溶剤(ターピネオール)とを混合して調製した有機ビヒクルと、ペーストの粘度調整のために用いる有機溶剤(有機ビヒクルに用いたのと同じターピネオール)を用意した。
上記で調製したサンプル1〜6のペースト組成物を銀電極形成用のペースト組成物として用い、以下の手順で評価用の太陽電池セル(図1参照)を作製した。
すなわち、先ず、市販の156mm四方の大きさの太陽電池用p型単結晶シリコン基板(板厚180μm)を用意し、その表面を、フッ酸と硝酸とを混合した混酸を用いて酸エッチング処理した。次いで、上記エッチング処理で微細な凹凸構造(図1には示していない。)が形成されたシリコン基板の受光面にリン含有溶液を塗布し、熱処理を行なうことによって当該シリコン基板の受光面に厚さが約0.5μmであるn−Si層(n+層)を形成した。このn−Si層上に、プラズマCVD(PECVD)法によって厚みが80nm程度の反射防止膜(窒化シリコン膜)を形成した。
その後、所定の裏面電極用アルミニウムペーストを、シリコン基板の裏面側の銀電極パターンの一部に重なるようにスクリーン印刷により印刷(塗布)し、膜厚が約55μmの塗布膜を形成した。
次いで、このシリコン基板を焼成することで、ファイヤースルー法により銀電極(受光面電極)を形成した。焼成は、近赤外線高速焼成炉を用い、大気雰囲気中で、およそ700℃以上800℃以下の焼成温度で行った。これにより、評価用の太陽電池セルを得た。
以下、サンプル1〜6のペースト組成物を用いて作製した太陽電池をそれぞれサンプル1〜6の太陽電池等のように対応させて呼ぶ。
サンプル1〜6の太陽電池に形成した受光面電極(グリッド電極)の電極としての性能を、ライン抵抗値(Ω)を測定することにより評価した。ライン抵抗値は、日置電機株式会社製のデジタルハイテスタを用い、ライン幅約100μmのグリッド電極に、テスタのプローブをライン長38000μmとして接触させることで測定した。測定は、異なる計10箇所の位置にて行い、それらの平均をライン抵抗値(Ω)として表2に示した。
ソーラーシミュレータ(Beger社製、PSS10)を用いて、サンプル1〜6の太陽電池のI−V特性を測定し、得られたI−V曲線から曲線因子(fill factor:FF)および変換効率(η)を求めた。曲線因子(FF)および変換効率(η)は、JIS C8913に規定される「結晶系太陽電池セル出力測定方法」に基づき算出し、その結果を表1に示した。
上記の方法で用意したサンプル1〜6の太陽電池を、近赤外線高速焼成炉を用いて、800℃の酸化雰囲気(大気)に5分間保持した後、炉冷し、受光面に形成したグリッド電極の変形およびクラック等の欠陥の発生の有無を目視により観察した。その結果、変形および/またはクラックの発生が認められたものを×、若干の変形が認められたものを△、変形が認められなかったものを○として、表1に示した。
上記の方法で用意したサンプル1〜6の太陽電池を、4%の水素ガスを導入して還元性雰囲気とした近赤外線高速焼成炉内に、800℃で5分間保持した後、炉冷し、受光面に形成したグリッド電極の変形およびクラック等の欠陥の発生の有無を目視により観察した。その結果、変形が全く認められなかったものを◎、若干の変形が感じられたものを○、変形および/またはクラックの発生が確認されたものを×、として、表1に示した。
表1に示されたように、ライン抵抗、曲線因子および変換効率については、サンプル1〜6の太陽電池のいずれについても、顕著な差異は見られなかった。しかしながら、サンプル6の太陽電池に形成したグリッド電極については800℃程度の高温で明らかな変形が見られ耐熱性および耐還元性が十分でないのに対し、サンプル1〜5の太陽電池のグリッド電極については変形が確認できず、耐熱性および耐還元性が向上されていることが確認できた。すなわち、太陽電池の受光面電極形成用のペースト組成物にペロブスカイト型酸化物粉末を添加する場合において、LaSrCoFe系の粉末ではなく、LaSrTiFe系の粉末を添加することで、ライン抵抗、曲線因子および変換効率等の特性を維持したまま、耐熱性および耐還元性が向上されることがわかった。
[ペースト組成物の用意]
(2)ペロブスカイト型酸化物粉末として、実施形態1におけるno.3:(x,y)=(0.6,0.3)の組成で示されるLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7O3-δを用い、かかるペロブスカイト型酸化物粉末の配合割合を下記表3に示す通りに0.02質量%〜2質量%の間で変化させ、その他は実施形態1と同様の条件で、ペースト組成物7〜11を調製した。
上記で用意したペースト組成物7〜11を用いて受光面の銀電極を形成したこと以外は実施形態1と同様にして、太陽電池7〜11を作製した。
作製した太陽電池7〜11について、実施形態1と同様にして、ライン抵抗、曲線因子(FF)、変換効率(η)、耐熱性および耐還元性の評価を行った。その結果を、表3に併せて示した。参考のために、ペースト組成物3を用いて作製した太陽電池3についての結果も併せて示した。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
11 基板
12 受光面電極(銀電極)
14 反射防止膜
16 n−Si層(n層)
20 裏面電極(アルミニウム電極)
22 裏面側外部接続用電極
24 p+層
Claims (7)
- 太陽電池の受光面に配設される銀電極を形成するためのペースト組成物であって、
銀粉末と、ペロブスカイト型酸化物粉末と、ガラス粉末とが有機媒体に分散されており、
前記ペロブスカイト型酸化物は、
一般式(1):ABO3−δで表され、Aサイトにはランタノイド(Ln)から選択される少なくとも1種の元素およびストロンチウム(Sr),カルシウム(Ca)ならびにバリウム(Ba)から選択される少なくとも1種の元素が、Bサイトには少なくともチタン(Ti)および鉄(Fe)が含まれており、δは酸素欠損量を示し、
前記銀粉末100質量部に対して、0.02質量部以上2.5質量部以下の割合で含まれている、太陽電池受光面電極用のペースト組成物。 - 前記ペロブスカイト型酸化物は、以下の一般式(2):
(Lnx,M1−x)(Tiy,Fe1−y)O3−δ …(2)
で表され、式(2)中、Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素を示し、MはSr,CaおよびBaから選択される少なくとも1種であり、xおよびyは、0.2≦x≦0.8,0.1≦y≦0.7を満たし、δは酸素欠損量を示す、請求項1に記載の太陽電池受光面電極用のペースト組成物。 - 前記ガラス粉末が、酸化物換算組成で、以下に示される成分を有するガラス:
SiO2: 20mol%以上65mol%以下、
B2O3 : 1mol%以上18mol%以下、
PbO : 20mol%以上65mol%以下、
Li2O:0.6mol%以上18mol%以下、
を含む、請求項1または2に記載の太陽電池受光面電極用のペースト組成物。 - 前記ガラス粉末は、軟化点が300℃以上600℃以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池受光面電極用のペースト組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペースト組成物を用いて形成された銀電極を受光面に備える太陽電池。
- 前記銀電極は、800℃の酸化雰囲気に3分間曝された場合に、0.5%以上の変形またはクラックが発生しない、請求項5に記載の太陽電池。
- 前記銀電極は、800℃の還元雰囲気に3分間曝された場合に、0.5%以上の変形またはクラックが発生しない、請求項5または6に記載の太陽電池。
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