JP5799375B2 - 新規酵素、該酵素の製造方法、ならびにその利用 - Google Patents

新規酵素、該酵素の製造方法、ならびにその利用 Download PDF

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Description

本発明は、生澱粉を適度に部分加水分解するための新規酵素、および該酵素の効率的な製造方法ならびにその利用に関するものである。
酵素を用いて澱粉を加水分解する技術において、エネルギーの節約や蒸煮臭の回避のため、澱粉を液化、糊化、α化などの前処理をすることなく、直接作用させて分解しうる酵素(生澱粉分解酵素)の開発が近年盛んになっている。既に、アスペルギルス属、リゾープス属、カララ・パラドキサ(Chalara paradoxa)等のカビ、放線菌およびバチルス属、ストレプトコッカス等の細菌が生澱粉分解酵素を生産することが知られている(非特許文献1)。
しかしながら、上記の生澱粉分解酵素は、何れのものも澱粉を完全に糖化し、澱粉から糖を得んがために開発されたものである。そのため、澱粉を生のまま部分加水分解し、その粉体としての物性を改変させるのにはこれらの酵素は不向きである。
元来澱粉は糖化物としての使用に比して、粉体として食品に利用されることの方がおおい。その粉体としての物性を改変させるには澱粉粒に物理的にダメージを与える、酢酸や燐酸などで化学修飾をする、などがあるが、酵素反応による粉体の物性改善例は未だ無い。
Ueda,他、Starch,32(4),122−125(1980), Hayashida,他、Agric.Biol.Chem.,46(7),1947−1950(1982), 石神ら、澱粉科学、32(2),136−141(1985), Taniguchi,他、Agric.Biol.Chem.,46(8),2107−2115(1982), 溝上ら、農化、51(5),299−307(1977), Kaneko,他、Biosci.Biotechnol.Biochem.,69(6),1073−1081(2005), Goyal,他、Enzyme Microb.Technol.,37(7),723−734(2005), Gangadharan,他、Appl.Biochem.Biotechnol.,158(3),653−662(2009)
本発明の課題は、α化など前処理されていない生の澱粉粒に作用して部分加水分解を行い、かつ粉体としての形状は残しつつ、その物性のみを改変し得る生澱粉分解酵素、および該酵素の有効な製造方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、澱粉がα化されることのない55℃前後より低い、具体的には40℃近辺で生澱粉粒にきわめてよく作用して部分加水分解をおこない、同様に50℃程度の熱処理で完全に失活しうる生澱粉分解酵素を土壌検索菌Aeromonas属50−2株(寄託番号NITE P−1024)が生産することを見出した。
さらには該菌株より生澱粉分解酵素遺伝子をクローニングし塩基配列を決定した(非特許文献2)。これよりプラスミドを構築し、形質転換体(寄託番号NITE P−1025)を得ることで該酵素を効率よく製造する技術を完成した。
GenBank No.AB593742
本発明によれば、澱粉をα化など前処理することなく、生の澱粉粒のまま部分加水分解せしめ、かつ粉体としての形状は残しつつ、その物性のみを改変し得る生澱粉分解酵素、および該酵素の有効な製造方法が提供される。これにより澱粉を利用した食品の製造分野に大きく貢献できる。
本発明の酵素のアミノ酸配列 本酵素の生産菌Aeromonas属50−2株の16SrDNA塩基配列 本酵素の大腸菌発現用プラスミドpKK50−2の模式図 本酵素の温度の推移に伴う相対活性の変化 本酵素の温度の推移に伴う残存活性の変化
以下、本発明の生澱粉分解酵素および該酵素の製造方法の好ましい態様を以下に述べるが、この記載は本発明を何ら制限するものではない。
先ず本発明を実施するために秋田県潟上市の土壌から請求項1に記載の新規生澱粉分解酵素を生産し得る1菌株を見出した。本菌株は後述の実施例6に記載の通りその16SrDNAの塩基配列(図2)よりAeromonas属と同定され、また、請求項1に記載の新規酵素を生産するAeromonas属は他には明らかにされていないことなどから新菌種であるとみとめられた。本菌株は50−2株と命名され、独立法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターへ寄託されており、その寄託番号はNITE P−1024である。これを請求項5とする。
なお、本菌株のほか、請求項1に係わる本発明の酵素を生産する能力を有する限り、例えば本菌株をニトロソグアニジンやUV処理することによって生じた突然変異株であっても、あるいは遺伝子操作等によって得られた変異株であっても本発明に包含される。また、変異操作により、例えばプロモーター部位、SD配列、転写開始点、あるいはシグナルペプチドなどに異常を来し、外見上該酵素をほとんど生産しない場合であっても、その変異操作の対象となったものが本菌株に由来するものであれば、これも本発明に包含されるものである。
請求項2に係わる本発明の塩基配列は、生澱粉分解酵素生産能を有する遺伝子供与体微生物から、遺伝子増幅(polymerase chain reaction 非特許文献3、以下単にPCR)により得られるDNAフラグメントを解析することにより明らかとなる。
Molecular Cloning 2nd ed.,14.2−14.4
すなわち、GenBankなどの検索システムより、目的とする生澱粉分解酵素と、その塩基配列がきわめて類似すると思われるものをひとつ、もしくは複数選抜し、それらに共通する領域からPCR用プライマーを設定し、コロニーダイレクトPCR(非特許文献4)で得られるDNAフラグメントを解析する。
PCR Tips 秀潤社 102−108ページ
ついでインバースPCR(非特許文献5)を行い、構造遺伝子のうち、コロニーダイレクトPCRでは解析不充分であった部分の塩基配列を明らかにする。
Biosci.Biotechnol.Biochem.,65(5),1054−1063、(2001)
コロニーダイレクトPCR及びインバースPCR双方の解析結果を合わせ、構造遺伝子の全塩基配列が明らかとなる。
遺伝子の増幅はDNAフラグメントが正確に増幅されるものであればいずれの方法でも良い。本発明においては、いわいるPCRと呼ばれる手段が好ましく、なかでも上記非特許文献1、Molecular Cloning 2nd ed.,14.2−14.4ページ記載の方法が標準的ではあるが、これに限定されるものではない。また、コロニーダイレクトでなく、遺伝子供与体からテンプレートDNAを精製してPCRを行う従来法でも充分に目的は達しうる。
インバースPCRにおいても種々の方法、例えば非特許文献6などがあり、構造遺伝子のうち解析不充分であった塩基配列を補いうるものであればいずれの方法でも良く、さらにコロニーダイレクトPCRのみ、あるいは遺伝子供与体からテンプレートDNAを精製して行う従来法のPCRのみで構造遺伝子の塩基配列を充分に解析しうるものであれば、インバースPCRの行程は必須ではない。
J.Ferment.Bioeng.,86(5)434−439(1998)
さらに目的とするDNAフラグメントが解析に足りる量を確保できるのであれば、遺伝子増幅自体不要であり、たとえばショットガンクローニング法、DNAライブラリーからのプローブによるクローニング法などであっても本発明の請求項2は実現しうる。
DNAフラグメントの解析方法は、オートシーケンサーを用いたダイデオキシ法によるものが既に一般的で、簡便であるが、手分析によるダイデオキシ法でも本発明は遂行可能であり、マクサムギルバート法での解析であっても何ら問題はない。さらには、これら以外の方法であってもDNAの塩基配列を決定しうる方法であればいずれのものでも良い。
請求項3に係わる本発明のベクターDNAは、大腸菌を宿主として請求項2の遺伝子DNAを安定して高発現させるための組換えプラスミドであって、市販(ファルマシア社 非特許文献7)の自立複製型高発現ベクターpKK223−3を基本骨格とし、これの有する発現プロモーター(tacプロモーター)の下流に上記請求項2の遺伝子DNAを挿入してなるベクターDNAである。
GenBank No.M77749
すなわち該ベクターは、大腸菌用の複製起点としてpBR322に由来するColE1のoriを有し、選択マーカーとしてAmpを、大腸菌高発現用にtacプロモーターを有する。
上記プロモーターは大腸菌で発現するものであれば、trp、lacなど何れのものでも使用可能であり、それ以外にもバクテリアなど細菌類に由来する数多くのプロモーターが大腸菌で発現することが知られており、これらのものも使用が可能である。また、請求項5のAeromonas属50−2株が大腸菌などと同様のグラム陰性の細菌であることから、本菌株自体のプロモーターでも充分な大腸菌発現が期待される。
また、大腸菌での選択マーカーはAmp以外にもKmやCmなどであっても目的は達せられ、それ以外のもの、例えば栄養要求生によるものであっても、形質転換体を選抜しうるものであれば、本発明に於いて選択マーカーとして使用しても何ら問題はない。
さらに複製起点oriは上述の通りpBR322に由来するものであるが、pUC18、pACYC177などのプラスミド、あるいはラムダファージ、M13ファージなどのものでも代用可能である。またこれらファージ自体をベクター骨格として使用しても請求項3は実現しうるものである。
また、後述の通り大腸菌以外の生細胞を宿主として用いるのであれば、その宿主に応じたベクター骨格、発現プロモーター、選択マーカーなど使用すればよい。
請求項4に係わる本発明の形質転換体は、請求項2の遺伝子DNA上にコードされた生澱粉分解酵素活性を酵素蛋白として発現させるために、請求項3のベクターをE.coliの細胞内に移入してなる大腸菌組換え体である。
すなわち該形質転換体は大腸菌E.coliの実験室株DH5α(F,Φ80dlacZΔM15,Δ(lacZYA−argF)U169,deoR,recA1,endA1,hsdR17(r , m ),phoA,supE44,λ,thi−1,gyrA96,relA1)を宿主細胞として、請求項3のベクターを塩化カルシウム法(非特許文献8)により移入してのち、アンピシリン耐性を指標として選抜する。
Molecular Cloning a laboratory manual 1st edt.249pp
この場合、宿主はDH5α以外であっても、たとえばHB101、JM109などの実験室株、あるいは野生の大腸菌を使用した場合であっても請求項4に含まれるものである。また本発明の課題は「請求項1に係わる新規酵素を提供すること」であり、請求項3のベクターDNAが保持され、請求項1の酵素製造に係わるのであれば、大腸菌以外の宿主、例えば枯草菌、放線菌、酵母、糸状菌などの微生物類、イネ、トマト、トウモロコシなど植物細胞、カイコ、ラットなど動物細胞、などによる形質転換体であっても請求項4は達せられる。
また、請求項3の選択マーカーとしてAmp以外の薬剤耐性遺伝子を用いるのであればそれに応じた薬剤感受性の宿主を、また栄養要求性マーカーを用いて選択するのであればそれに応じた栄養要求株のものを宿主細胞として代用可能である。
ベクターの移入方法も、塩化カルシウム法が一般的ではあるが、プロトプラスト法(非特許文献9)、リチウム法(非特許文献10)、ミニセル細胞融合法(非特許文献11)、エレクトロポレーション法(非特許文献12)、その他の方法でも本発明は遂行可能であり、宿主細胞内にベクターを移入可能であればいずれの方法でも良い。
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75(1978),1929−1933 J.Bacteriol.,153(1),163−168(1983) Mol.Cell.Biol.,6(9),3295−3297(1986) Short Protocols in Molecular Biology I−22
移入して後の選抜方法も、アンピシリン以外の薬剤に関わる宿主ベクター系を使用したのであればそれぞれに応じた薬剤を、栄養要求性の宿主ベクター系であればそれぞれの要求する栄養素を使用し、選抜の指標にする。
請求項1に係わる本発明の生澱粉分解酵素は請求項4の形質転換体、あるいは請求項5のAeromonas属50−2株を培養し、その培養上清あるいはその菌体破砕物より得られる。これを請求項6とする。
この場合、形質転換体の培養は、それぞれの宿主細胞の培養に用いられる培地並びに培養条件に従って行えばよいが、大腸菌DH5αの場合は通常LB培地(トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム0.5%)を用いて37℃での振とう培養で行われる。また請求項5の培養においては培地中に澱粉質あるいはこれらの誘導体を含むことが好ましく、中性培地(可溶性澱粉1%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、燐酸2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.02%)を用いて、28℃での静置培養が最適である。
また、形質転換体の培養の際、tac、lacなどラクトースオペロンに係わるプロモーターでの発現では、培養途中で適宜IPTGの添加が望まれる。さらに、大腸菌、枯草菌、酵母などの単細胞の宿主による請求項6の実施ではジャーファーメンターなどによる大型培養も有効である。
さらに形質転換体の培養においては、形質転換体の選抜に用いた薬剤を培養の際の培地にも添加する、あるいは栄養要求性に対応する栄養素を減ずる、なども好ましくはあるが、これら薬剤や栄養素などを加減せずとも本発明に差し障りはない。例えば、大腸菌−Ampの宿主ベクター系の場合、培地1mlあたりにアンピシリン50μg程度を添加することがこれに相当する(後述〔実施例4〕の「(1)粗酵素液の調製」参照)。
本発明の新規酵素は、上記培養液あるいはその菌体破砕物を、例えば濾過や遠心分離などの固―液分離手段により固形物を除いた粗酵素液として得られるが、目的に応じて澱粉吸着法やゲル濾過法などの部分精製など行えば良く、それ以外にも硫安沈殿法、アルコールその他の有機溶媒沈殿法、イオン交換クロマトグラフ法、疎水クロマトグラフ法、逆相クロマトグラフ法などの一般的な手法に従って精製すればさらに望ましく、それぞれに応じてカラムを用いての精製やバッチ法での処理などが可能である。
以下に実施例を示すことで本発明を詳細に説明するが、使用した菌株、培地、培養方法、プラスミド、プライマー、その他試薬類、実施方法などは一例として挙げたものであり、本発明を実施できるものであればこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕該遺伝子の塩基配列の決定
該酵素をコードする遺伝子は下記の通りクローニングし、その塩基配列を決定した。
即ち、該生澱粉分解酵素を生産する土壌検索菌が、その16SrDNAの塩基配列の相同性からAeromonas属と推定された(後述の実施例6参照)ことから、同じくAeromonas属の生産するアミラーゼのうち、その塩基配列が既知のもの4種(Aeromonas hydrophila ATCC7966(GenBank NC008570)、A.hydrophila MCC−1(L19299)、A.hydrophila JMP636(L77866)、A.Salmonicida A449(NC009348))のコンセンサス配列より、PCRプライマー(WYTGGTGGACCGTCTAYCARCCBGTCAGCT 及び RTCAYTGCCNSYCARGAKGTTGCAGTACTC)を推定した。
本プライマーを用いて50−2株より定法通りコロニーダイレクトPCR(アニーリング温度52℃、25サイクル)を行ったところ、約1kbpのDNAフラグメントを得た。本フラグメントの塩基配列をオートシーケンサーで解析した(解析結果1)。
他方、50−2株の染色体DNAをSmaIあるいはSphIで完全に加水分解した後、これをT4リガーゼでセルフライゲーションさせ、環状化した。このうちSmaIでの反応液をテンプレート溶液とした場合、PCRプライマー(TGCACGTAGGGAGAGCCGGTATTGAGGT 及び TATGGCTGGAAGCAGGTGATGTCGGGCT)を用いてインバースPCR(アニーリング温度60℃、25サイクル)を、SphIでの反応液をテンプレート溶液とした場合、PCRプライマー(TCATAGGTGCTCATGTTCTCGAAGCGAT 及び GCCGCCACGGAGACGGTCAGGTTCGATA)を用いてインバースPCR(アニーリング温度53℃、25サイクル)を行ったところ、それぞれ約1.4kbp及び1.6kbpのDNAフラグメントを得た。本フラグメントの塩基配列をオートシーケンサーで解析した(解析結果2)。
解析結果1及び2より、開始コドンATGから終止コドンTAGまでの2352塩基がMetから始まる本酵素783アミノ酸残基をコードしていることを見出した。該遺伝子の塩基配列を日本DNAデータバンク(DDBJ)へ登録した(GenBank No.AB593742)。
〔実施例2〕発現プラスミドの構築
該酵素遺伝子を含んでなる、E.coliの高発現プラスミドは以下の通り構築した。
即ち、該酵素遺伝子の上流に制限酵素EcoRIサイトを持つプライマー(GAAAGAATTCATGCACAGCACACTGCTTCG)及びその下流に制限酵素HindIIIサイトを持つプライマー(AGGTAAGCTTCTAACCAGCGACATGGGGGT)を用いて50−2株より定法通りコロニーダイレクトPCR(アニーリング温度45℃、25サイクル)を行ったところ、本生澱粉分解酵素の構造遺伝子を含み、上流側に制限酵素EcoRIサイト、下流側に制限酵素HindIIIサイトを持つ約2.4kbpのDNAフラグメント(ORFフラグメント)を得た。
また、E.coliでの高発現のため市販の発現プラスミドpKK223−3(ファルマシア社製、GenBank M77749)を使用した。これはtacプロモーター、rrnBターミネーター、及びマルチクローニングサイトを含む約4.6kbpのプラスミドである。
この発現プラスミドpKK223−3のマルチクローニングサイトのEcoRI−HindIII上に、本酵素の構造遺伝子をコードするところの、先に述べたORFフラグメントを挿入し、本酵素高発現用E.coliのベクターpKK50−2約7.0kbpを得た。該ベクターの模式図を図3に示す。
〔実施例3〕形質転換体の獲得
生澱粉分解酵素生産性の形質転換体は以下の通り獲得した。即ち、高発現ベクターpKK50−2を塩化カルシウム法(前述)にしたがって、E.coli DH5αへ導入した。該形質転換体を独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターへ寄託した。(寄託番号NITE P−1025)
〔実施例4〕酵素の製造
該形質転換体から、以下の手法を用いて粗酵素液を調製し、本酵素の製造を行った。
[酵素活性の測定法]
酵素活性の測定は、特に断らない限り次の方法で実施した。
すなわち、10mM燐酸緩衝液(pH6.0)及び5mM塩化カルシウムを含む1%生澱粉(通常では粳種のトウモロコシ澱粉)懸濁液0.5mlに酵素液0.05mlを加え、pH6.0、40℃で一定時間(通常では15分間)反応させた後、生じた還元力をソモギー・ネルソン法にて定量した。1分間にマルトース1μmolに相当する還元力を生じる酵素力価を1U(単位)とした。
温度の推移に伴う酵素の相対活性は、上記の方法で測定の際、その反応温度のみを25℃から50℃の各温度に変更したものである。
また、pHの推移に伴う酵素の相対活性は、上記の方法で測定の際、使用する緩衝液を、pH4.0〜6.0の範囲では酢酸緩衝液に、pH5.0〜9.0の範囲では燐酸緩衝液に変更したものである。
一方、温度の推移に伴う酵素の残存活性は、10mM燐酸緩衝液(pH6.0)及び5mM塩化カルシウムを含む酵素液を、所定の温度で30分間加温処理後、残存する活性を上記の方法にて測定したものである。
さらに、pHの推移に伴う酵素の残存活性は、所定のpHを示す10mM緩衝液(pH4.0〜6.0は酢酸緩衝液、pH5.0〜9.0はリン酸緩衝液)及び5mM塩化カルシウムを含む酵素液を、35℃で60分間加温処理後、残存する活性を上記の方法にて測定したものである。
(1)粗酵素液の調製
該形質転換体を、抗生物質アンピシリンを培地1mlあたり50μg含むLB培地(前述)を用いて、37℃で16時間培養した後、IPTGを終濃度100μMとなるよう本培養液に加え、さらに4時間培養した。培養終了後、遠心分離(10,000xg、10分間)し、培養上清と菌体とに分けた。菌体は得られた培養上清と同量の蒸留水に懸濁後、超音波処理をし、溶菌せしめた。この培養上清及び溶菌液はそれぞれ1.45U/ml及び0.137U/mlの酵素活性を示した。この結果から、グラム陰性の桿菌であるAeromonas属由来の本菌体外酵素は、同じくグラム陰性の桿菌である宿主大腸菌に於いても効率よく菌体外分泌しており、菌体内の残存量は僅かであることがわかった。以降、この培養上清を粗酵素液として用いた。
(2)酵素の精製
上記のようにして得られた粗酵素液はブチルトヨパールカラム(1M硫安で吸着後、10mM燐酸緩衝液で溶出)での濃縮、次いで、トヨパールHW55(S)によるゲル濾過を行い精製した。
〔実施例5〕酵素の性質
実施例4で得られた精製酵素の性質について検討した。
(1)分子量
実施例4の精製酵素について、Laemmli法(非特許文献13)に準じてSDS−ポリアクリルアミド電気泳動(以下SDS−PAGE)を行った。分子量マーカーはファルマシア社製のものを使用した。
泳動終了後、クーマシーブリリアントブルー(CBB)G−250で染色したところ、SDS−PAGE的に均一な酵素蛋白が得られ、本酵素の分子量は約80kDaであることが明らかとなった。
Laemmli,Nature,227,680−685(1970)
(2)至適温度
実施例4の[酵素活性の測定法]に従い、温度の推移に伴う相対活性の変化を測定したところ、温度の上昇と共に緩やかに活性が上昇し、40℃付近で最も高い活性が観察された後は緩やかに下降した。この結果から、本酵素の至適温度は40℃付近であることが明らかとなった。(図4)
(3)至適pH
実施例4の[酵素活性の測定法]に従い、pHの推移に伴う相対活性の変化を測定したところ、pHの上昇と共に活性が上昇し、6.0付近で最も高い活性が観察され、その後は緩やかに下降した。このことから、本酵素の至適pHは6.0付近であることが明らかとなった。
(4)温度安定性
実施例4の[酵素活性の測定法]に従い、温度の推移に伴う残存活性の変化を測定したところ、40℃で前処理したものは未処理のものとほぼ同等(100%)であり、25℃、30℃、35℃のものにおいても100%に近い残存活性を示した。一方、前処理温度が40℃を超えるとその残存活性は低下し、45℃では30%程度しか示さず、50℃では残存活性は全くなかった。このことから、本酵素は40℃以下で安定であり、50℃以上では完全に失活することが明らかとなった。(図5)
(5)pH安定性
実施例4の[酵素活性の測定法]に従い、pHの推移に伴う残存活性の変化を測定したところ、pH4.0で前処理したものは低い残存活性であったが、pHの上昇と共に残存活性も上昇し、pH5.0〜6.0における相対残存活性は未処理のものとほぼ同等(100%)であった。その後は僅かながら下降したものの、pH9.0においても80%程度の残存活性を示した。この結果から、本酵素はpH5.0〜6.0で最も安定であり、酸性側に比べアルカリ性側でより安定であることが明らかとなった。
(6)各種澱粉粒への相対活性
実施例4の[酵素活性の測定法]において、反応基質を各種植物由来の生澱粉に変更した場合の、それぞれの活性を測定し、トウモロコシ澱粉(粳種)の酵素力価を100とした場合の各種澱粉の相対活性を算出した。結果を表1に示す。
表2から明らかなように、本発明の生澱粉分解酵素は小麦澱粉に最もよく作用し、次いで米澱粉、餅米澱粉などによく作用した。また、モチトウモロコシ澱粉に対しては、粳種のトウモロコシ澱粉の約1.5倍、よく作用した。一方、馬鈴薯澱粉や甘藷澱粉などの芋類の澱粉にも作用を示した。このことから、本酵素は種々の生澱粉に作用することが明らかとなった。
(7)各種金属化合物の添加効果
実施例4の[酵素活性の測定法]において、実施例4の(2)の精製酵素を5mMのEDTAで一夜透析したものを用いたこと、塩化カルシウムの代わりに表2に示す各金属化合物(いずれも金属イオンとして10mM)を用い、それぞれ30分間反応させたこと、並びに酢酸緩衝液の代わりに50mM MES緩衝液(pH6.0)を用いたことの他は、同様の条件で測定した。塩化カルシウム添加の際の酵素力価を100とした場合の、それぞれの相対活性を算出した。
表2から明らかなように、Fe2+では活性がわずかに上昇したが、それ以外の添加では活性は低下傾向にあり、Zn2+、Cu2+、Ni2+の金属イオンではほとんど酵素活性を示さなかった。また金属化合物を全く加えない場合、ごく僅かながら活性が示された。
(8)N末端アミノ酸配列
実施例4の精製酵素を実施例5の(1)と同様の条件でSDS−PAGEを行った後、ウエスタンブロットによりPVDF膜へ転写し、これをCBB染色した。染色により生じたバンド部分のPVDF膜を切り取り、プロテインシーケンサーPPSQ−10(島津製作所)にて解析した。解明したアミノ酸配列はEGVMVHLFQWKFND−であった。
この結果から、本酵素蛋白質のN末端は、図1に記載のアミノ酸配列25番目の残基からなり、1から24番目まではシグナルペプチドに相当することが明らかとなった。
〔実施例6〕酵素生産菌の同定
実施例1で用いた微生物50−2株について、その遺伝的情報により微生物の同定を行った。すなわち、秋田県潟上市の土壌からの検索菌である50−2株を、前述の中性培地で28℃にて2日間静置培養後、集菌し、得られた菌体より斉藤・三浦の方法(非特許文献14)により染色体DNAを抽出した。これを鋳型として、PCRにより16SrDNAの1537bp領域を増幅した(非特許文献15)。この増幅された塩基配列をシーケンシングし、図2に記載の50−2株の16SrDNAの塩基配列を得た。
H.Saito,他、Biochim.Biophys.Acta,20(72),619−629(1963) K. Mori,他、Int.J.Syst.Bacteriol.,47(1),54−57(1997)
得られた16SrDNAの塩基配列をBLAST検索した結果、上位100位のうち98位の1菌株がPseudomonas属であり、他の99株すべてはAeromonas属であった。そのうち上位60位までが該50−2株と99%以上の相同性であり、61位のA.salmonicida(AY910844)とは98%の相同性であった。この上位60位の内訳は、A.veronii(AY987746)1株、A.punctata(GU205200)1株、A.media(AY987773、GU174504、FJ940831、他)8株、種の同定まで至っていないもの(GU566305、FM957460、AY987770、他)13株、残り37株がA.hydrophila(GQ184148、DQ207728、CP000462、FJ515776、他)であり、さらに上位10位まではすべてA.hydrophilaであった。よって該50−2株はAeromonas属に分類され、A.hydrophilaに最も近縁と考えられる。
本菌株すなわちAeromonas属50−2株を中性培地(前述)1mlに1白金耳植菌し、28℃で1夜静置培養した。これを前培養液として中性培地100mlへ植菌し、28℃下に3日間静置し、本培養を行った。
この本培養液を遠心分離機にて除菌し、得られた上清を〔実施例4〕の「(2)酵素の精製」と同様に処理して精製酵素を回収した。本精製酵素を〔実施例5〕に準じてその性質を検討したところ、〔実施例5〕と同様の結果を得た。
本発明によれば、澱粉をα化など前処理することなく、生の澱粉粒のまま部分加水分解せしめ、かつ粉体としての形状は残しつつ、その物性のみを改変し得る生澱粉分解酵素、およびその有効な製造方法が提供される。これにより種々変性澱粉が得られ、澱粉を利用した食品の製造分野に大きく貢献できる。

Claims (7)

  1. 図1に示すアミノ酸配列を有する新規生澱粉分解酵素。
  2. 請求項1記載の酵素をコードする遺伝子DNA。
  3. 請求項2記載の遺伝子DNAをその一部に含んでなるベクターDNA。
  4. 請求項3記載のベクターDNAを含有する形質転換体。
  5. 請求項1に記載の酵素生産能を有するAeromonas属50−2株。
  6. 請求項4記載の形質転換体あるいは請求項5記載のAeromonas属50−2株またはそれらの変異株を培養すること、もしくはその培養物から請求項1記載の新規酵素を採取することを特徴とする該酵素の製造方法。
  7. 請求項1から6に記載の酵素、DNA、菌株、培養物あるいはその抽出物、もしくはこれらの混合物を用いることを特徴とする変性澱粉の製造方法。
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