<第1実施例>
図1を参照して、携帯電話機10は、携帯端末の一種であり、プロセッサ18を含む。また、プロセッサ18には、アンテナ12、マイク14、スピーカ16、キー入力装置20、表示ドライバ22、イヤホンジャック26、フラッシュメモリ28、RAM30および電源回路32などが接続される。
また、表示ドライバ22にはディスプレイ24が接続される。そして、電源回路32には二次電池34などが接続される。なお、イヤホンジャック26は電源回路32とも接続される。
プロセッサ18は、コンピュータまたはベースバンドチップとも呼ばれ、携帯電話機10の全体制御を司るために複数の回路を含む。RAM30は、プロセッサ18の作業領域(描画領域を含む)ないしバッファ領域として用いられる。フラッシュメモリ28には、携帯電話機10の文字、画像、音声、音および映像のようなコンテンツのデータが記録される。
マイク14を通して入力される音声ないし音についてのアナログ音声信号は、プロセッサ18に入力される。また、プロセッサ18の内部では、デジタル音声信号がアナログ音声信号に変換され、アナログ音声信号に対応する音声ないし音がスピーカ16から出力される。
キー入力装置20は操作部と呼ばれ、通話キー、機能キーおよび終話キーなどを含む。また、使用者が操作したキーの情報(キーデータ)はプロセッサ18に入力される。また、後述するPTT(Push To Talk)機能が実行されている場合、機能キーがPTTスイッチとして利用される。
表示ドライバ22は、プロセッサ18の指示の下、ディスプレイ24の表示を制御する。また、表示ドライバ22は表示する画像データを一時的に記憶するビデオメモリを含む。
また、ディスプレイ24には、LEDを光源とするバックライトが設けられている。さらに、バックライトは、ディスプレイ24に含まれる表示パネルに対してエッジライト方式に基づいて設けられる。なお、バックライトの光源としては、LEDが採用されるが、他の実施例では冷陰極管などが採用されてもよい。
電源回路32は電源管理用のICであり、電源回路32は二次電池34の電圧に基づく電源をシステム全体に供給する。ここで、電源回路32が電源をシステム全体に供給している状態を、電源オン状態と言うことにする。一方、電源回路32が電源をシステム全体に供給していない状態を、電源オフ状態と言うことにする。電源回路32は、電源オフ状態で、キー入力装置20によって電源オン操作がされると起動され、電源オン状態で、キー入力装置20によって電源オフ操作がされると停止される。さらに、電源オフ状態であっても、電源回路32は、図示しない外部電源コネクタに外部電源が接続され、二次電池34に電力が供給(充電)されると起動し、二次電池34の満充電状態が検出されると停止する。また、「充電」とは、外部電源コネクタが外部電源と接続され外部電源から電力の供給を受け、二次電池34が電気エネルギーを蓄えることを言う。
なお、電源回路32は、2.6Vを出力する+B1のポートと1.8Vを出力する+B2のポートを含んでいる。そして、上記2つのポートは、それぞれイヤホンジャック26と接続されている。
5極用イヤホンジャック26はメス端子であり、オス端子であるイヤホンのプラグ(イヤホンプラグ)が挿入される。そのため、イヤホンプラグが5極用イヤホンジャック26に挿入されると、挿入または抜去されたことを示す挿入信号が変化する。そして、プロセッサ18が挿入信号の変化に基づいてイヤホンプラグが挿入されていると判断すると、アナログ音声信号に対応する音声ないし音がイヤホンのスピーカ(以下、イヤピースと言う。)から出力されるように、スイッチ(SW2,SW3)が切り替えられる。なお、マイクを有しているイヤホンのイヤホンプラグが挿入されていると、音声がイヤホンのマイク(以下、イヤホンマイクと言う。)によって取得されるように、スイッチ(SW4)が切り替えられる。
そして、イヤホンジャック26は、5極用イヤホンジャックとも呼ばれ、左右のイヤピースとイヤホンマイクとスイッチとを含む5極のPTTイヤホンを、挿入可能な形状をしている。ただし、イヤホンジャック26には、左右のイヤピースとイヤホンマイクとスイッチとを含む4極のハンズフリーイヤホンを、挿入することも可能である。つまり、本実施例のイヤホンジャック26は、メーカなどの要求仕様に対応するPTTイヤホンのイヤホンプラグ、または携帯電話機用として市場に多く出回っているハンズフリーイヤホンのイヤホンプラグに共用される。
以下、PTTイヤホンが有するスイッチを「PTTスイッチ」と言い、ハンズフリーイヤホンが有するスイッチを「イヤホンスイッチ」と言う。また、PTTイヤホンを「5極イヤホン」、ハンズフリーイヤホンを「4極イヤホン」と言うこともある。
なお、5極イヤホンプラグおよび4極イヤホンプラグの形状については後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
携帯電話機10は上述したPTT機能に対応している。PTT機能とは、他の端末と半二重通信を確立して、相手と交互に音声通信を行う機能のことである。また、本実施例の携帯電話機10でPTT機能が実行されると、複数の携帯電話機を含むグループが設定され、そのグループ内の各携帯電話機は、他の携帯電話機それぞれと半二重通信を確立する。そして、誰も音声を発信していない状態で、或る携帯電話機の使用者がPTTスイッチをオンにすると、使用者は全ての他の携帯電話機に対して音声を発信することができる。また、PTTスイッチがオフにされると、他の携帯電話機から発信された音声が受信できるようになる。つまり、PTT機能が実行された状態では、使用者はPTTスイッチのオン/オフを切り替えることで、音声の発信状態と音声の受信状態とを切り替えることができる。
たとえば、PTT機能が実行された状態でPTTイヤホンが利用されている場合、使用者は左右のイヤピースで受信した音声を聞き、PTTスイッチを操作することで発信状態および受信状態を切り替えることができる。
また、PTT機能が実行された状態でハンズフリーイヤホンが利用されても、使用者はハンズフリーイヤホンを利用して受信した音声を聞いたり、音声を入力したりすることができる。そして、使用者は、キー入力装置20に含まれるPTTスイッチを操作することで、発信状態および受信状態を切り替えることができる。
さらに、PTT機能が実行された状態で各イヤホンを利用しなくても、使用者は携帯電話機10のスピーカ16を利用して受信した音声を聞いたり、マイク14を利用して音声を入力したりすることができる。なお、この場合も、使用者は、キー入力装置20に含まれるPTTスイッチを操作することで、発信状態および受信状態を切り替えることができる。
図2(A)は5極イヤホンプラグを横側から見た外観を示す図解図であり、図2(B)は5極イヤホンプラグを先端側から見た外観を示す図解図である。図2(A)を参照して、5極イヤホンプラグには、先端側からマイク端子50a、左音声端子52a、GND端子54aおよび右音声端子56aが設けられている。また、図2(A)、(B)から分かるように、5極イヤホンプラグには、右音声端子56aを囲うようにスイッチ端子58aがさらに設けられている。そして、マイク端子50a、左音声端子52a、GND端子54aおよび右音声端子56aは、絶縁体(図では斜線で示す)によって絶縁されている。
マイク端子50aはPTTイヤホンのイヤホンマイクと繋がっており、左音声端子52aは左イヤピースと繋がっており、右音声端子56aは右イヤピースと繋がっており、スイッチ端子58aはPTTスイッチと繋がっている。さらに、GND端子54aは、イヤホンジャック26に挿入されると携帯電話機10のGNDと繋がれる。
図3(A)は4極イヤホンプラグを横から見た外観を示す図解図であり、図3(B)は4極イヤホンプラグを先端側から見た外観を示す図解図である。図3(A)を参照して、4極イヤホンプラグには、先端側からマイク端子50b、左音声端子52b、右音声端子56bおよびGND端子54bが設けられている。また、図3(A)、(B)から分かるように、5極イヤホンプラグと異なり、4極イヤホンプラグにはスイッチ端子58aが設けられていない。そして、4極イヤホンプラグの各端子は、5極イヤホンプラグと同様、絶縁体によって絶縁される。
マイク端子50bはハンズフリーイヤホンのイヤホンマイクおよびイヤホンスイッチと繋がっており、左音声端子52bは左イヤピースと繋がっており、右音声端子56bは右イヤピースと繋がっている。さらに、GND端子54bは、イヤホンジャック54に挿入されると携帯電話機10のGNDと繋がれる。
なお、以下の説明では、5極イヤホンプラグと4極イヤホンプラグとで、各端子を識別する必要が無い場合には、アルファベットの添え字を省略する。
図4は、プロセッサ18およびイヤホンジャック26の周辺の電気的な構成を示す図解図である。図4を参照して、プロセッサ18は、制御回路70、無線通信回路72、VOCORDER74、エコーキャンセラ76およびDTMF(Dual Tone Multi Frequency)ジェネレータ96などを含む。また、制御回路70は、無線通信回路72、エコーキャンセラ76およびDTMFジェネレータ96などと接続される。無線通信回路72は、プロセッサ18の内部で、アンテナ12と接続されると共に、送信経路および受信経路がVOCODER74を介して、エコーキャンセラ76と接続される。
受信経路では、エコーキャンセラ76はスイッチSW1および第1デジタルゲイン78を介して、D/A変換器80と接続される。また、D/A変換器80は、左音声信号の経路ではセレクタ81、第1アナログアンプ82およびスイッチSW2を介して加算器86と接続されると共に、右音声信号の経路ではセレクタ81、第2アナログアンプ84およびスイッチSW3を介して加算器86と接続される。そして、加算器86は第3アナログアンプ88を介して、スピーカ16と接続される。
一方、送信経路では、マイク14とエコーキャンセラ76との間において、マイク14側からスイッチSW4、第4アナログアンプ90、A/D変換機92および第2デジタルゲイン94が接続される。
無線通信回路72はCDMA方式で無線通信を行うための回路である。たとえば、使用者がキー入力装置20を用いて電話発信(発呼)を指示すると、無線通信回路72は、制御回路70の指示の下、電話発信処理を実行し、アンテナ12を介して電話発信信号を出力する。電話発信信号は、基地局および通信網(図示せず)を経て相手の電話機に送信される。そして、相手の電話機において着信処理が行われると、通信可能状態が確立され、制御回路70は通話処理を実行する。
通常の通話処理について具体的に説明すると、相手の電話機から送られてきた変調音声信号はアンテナ12によって受信される。受信された変調音声信号には、無線通信回路72によって復調処理が施され、VOCODER74によって復号処理が施される。また、これらの処理によって得られた受話音声信号は、第1デジタルゲイン78で増幅され、第1D/A変換器80によってアナログ音声信号に変換される。また、制御回路70はセレクタ81を制御することで、変換されたアナログ音声信号を左右の音声信号の経路に出力する。つまり、変換されたデジタル音声信号は、第1アナログアンプ82および第2アナログアンプ84によって、それぞれ増幅された後に、加算器86によって2つのデジタル音声信号が加算される。そして、加算されたデジタル音声信号は、第3アナログアンプ88で増幅されてから、スピーカ16に与えられる。そのため、アナログ音声信号に対応する受話音声信号ないし音がスピーカ16から出力される。
一方、マイク14を通して取り込まれた送話音声信号は、スイッチSW4を介して、第4アナログアンプ90で増幅され、A/D変換器92によってデジタル音声信号に変換された後に、第2デジタルゲイン94によってさらに増幅される。また、増幅されたデジタル音声信号は、エコーキャンセラ76によって「エコー」と呼ばれるノイズ成分が除去される。なお、「エコー」とは、たとえばマイク14が受話音声信号を取得してしまうことで、送話音声信号に生じるノイズである。
そして、エコーが除去されたデジタル音声信号は、VOCODER74によって符号化処理が施され、無線通信回路72によって変調処理が施され、アンテナ12を介して出力される。したがって、変調音声信号は、基地局および通信網を介して相手の電話機に送信される。
また、相手の電話機からの電話発信信号がアンテナ12によって受信されると、無線通信回路72は、電話着信(着呼)を制御回路70に通知する。これに応じて、プロセッサ18(制御回路70)は、表示ドライバ22を制御して、着信通知に記述された発信元情報(電話番号など)をディスプレイ24に表示する。また、これとほぼ同時に、制御回路70は、スピーカ16から着信音(着信メロディ、着信音声と言うこともある。)を出力させる。
そして、使用者が通話キーを用いて応答操作を行うと、無線通信回路72は、制御回路70の指示の下、電話着信処理を実行する。さらに、通信可能状態が確立され、制御回路70は上述した通常の通話処理を実行する。
また、通話可能状態に移行した後に終話キーによって通話終了操作が行われると、制御回路70は、無線通信回路72を制御して、通話相手に通話終了信号を送信する。そして、通話終了信号の送信後、制御回路70は通話処理を終了する。また、先に通話相手から通話終了信号を受信した場合も、制御回路70は通話処理を終了する。さらに、通話相手によらず、移動通信網から通話終了信号を受信した場合も、制御回路70は通話処理を終了する。
なお、相手が話中であることを示す信号を受信した場合は、制御回路70はスイッチSW1を切り替えて、出力部であるDTMFジェネレータ96にトーン信号の出力命令を発行することで、スピーカ16からトーン信号を出力する。
次に、イヤホンジャック26には、5極イヤホンプラグの右音声端子56aまたは4極イヤホンプラグのGND端子54bと接触する第1ジャック端子(第1端子)、5極イヤホンプラグのGND端子54aまたは4極イヤホンプラグの右音声端子56bと接触する第2ジャック端子(第3端子)、左音声端子52と接触する第3ジャック端子(第2端子)、マイク端子50と接触する第4ジャック端子、5極イヤホンプラグのスイッチ端子58aと接触する第5ジャック端子および第4ジャック端子とイヤホンジャック26の内部で接触する第6ジャック端子が含まれる。
第1ジャック端子には右音声信号が入力され、プロセッサ18のスイッチSW3と接続される。また、第1ジャック端子とスイッチSW3との間には、第1増幅回路110が接続される。また、第1増幅回路110には第2増幅回路112が接続され、第2増幅回路112の出力が識別信号として制御回路70に入力される。なお、第1増幅回路110および第2増幅回路112はまとめて増幅部と呼ばれることがある。また、この増幅部については後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
第2ジャック端子は接地される。また、第3ジャック端子には左音声信号が入力され、プロセッサ18のスイッチSW2と接続される。
第4ジャック端子はスイッチSW4と接続される。また、第4ジャック端子のスイッチSW4との間には、抵抗R1を介して、電源回路32の+B2が接続される。さらに、第4ジャック端子には、PTTイヤホンまたはハンズフリーイヤホンのマイクを通して入力される音声ないし音についてのマイク信号が入力される。
第5ジャック端子は、プロセッサ18の制御回路70と接続される。また、第5ジャック端子と制御回路70との間には、抵抗R2を介して、電源回路32の+B1が接続される。そして、第5ジャック端子に印加される電圧値は、PTTスイッチのオン/オフによって変化するため、その電圧値は、PTTスイッチ信号として利用される。
第6ジャック端子は、プロセッサ18の制御回路70と接続されている。また、第6ジャック端子と制御回路70との間では、抵抗R3を介してGNDと接続される。さらに、第6ジャック端子は、イヤホンプラグが挿入されていない状態では上述したように、接点71で第4ジャック端子と接触しており、イヤホンプラグが挿入された状態になると、第4ジャック端子から離れる。そして、第4ジャック端子には+B2が接続されているため、接点が第4ジャック端子と接触していれば、第6ジャック端子に電圧が印加される。一方、接点が第4ジャック端子と接触していなければ、第6ジャック端子には電圧が印加されない。そのため、第6ジャック端子の電圧値は、イヤホンプラグの挿入/抜去を示す挿入信号として利用される。
たとえば、イヤホンプラグが挿入されていなければ第6ジャック端子には電圧が印加されるため挿入信号は「H(High)」となり、制御回路70はイヤホンプラグが挿入されていないと判断する。一方、イヤホンプラグが挿入されていれば第6ジャック端子には電圧が印加されないため、挿入信号は「L(Low)」となり、制御回路70はイヤホンプラグが挿入されていると判断する。
ここで、イヤホンジャック26にイヤホンプラグが挿入され、検出信号が「L」となると、スイッチSW2,SW3,SW4がそれぞれ切り替えられる。そのため、第1アナログアンプ82には加算器86に代えて、イヤホンジャック26の第3ジャック端子が接続される。また、第2アナログアンプ84には加算器86に代えて、イヤホンジャック26の第1ジャック端子が接続される。さらに、第4アナログアンプ90には、マイク14に代えて、イヤホンジャックの第4ジャック端子が接続される。
その結果、スピーカ16に出力される左音声信号が、第3ジャック端子と接続されるイヤピースから出力されるようになる。また、スピーカ16に出力される右音声信号が、第1ジャック端子と接続されるイヤピースから出力されるようになる。そして、マイク14によって取得されていた周囲音が、第4ジャック端子と接続されるイヤホンマイクによって取得されるようになる。
図5は5極用イヤホンジャック26に5極イヤホンプラグが挿入されたときの電気的な接続の一例を示す図解図である。図5を参照して、右音声信号を出力する第1ジャック端子には、右イヤピース(Rch)と繋がる右音声端子56aが接続される。接地される第2ジャック端子には、5極イヤホンプラグのGND端子54aが接続される。左音声信号を出力する第3ジャック端子には、左イヤピース(Lch)と繋がる左音声端子52aが接続される。マイク信号が入力される第4ジャック端子には、イヤホンマイク(Mic)と繋がるマイク端子50aが接続される。PTTスイッチ信号が入力される第5ジャック端子には、PTTスイッチと繋がるスイッチ端子58aが接続される。
図6は5極用イヤホンジャック26に4極イヤホンプラグが挿入されたときの電気的な接続の一例を示す図解図である。図6を参照して、右音声信号を出力する第1ジャック端子には、4極イヤホンプラグのGND端子54bが接続される。接地される第2ジャック端子には、右イヤピース(Rch)と繋がる右音声端子56bが接続される。左音声信号を出力する第3ジャック端子には、左イヤピース(Lch)と繋がる左音声端子52bが接続される。マイク信号が入力される第4ジャック端子には、イヤホンマイク(Mic)と繋がるマイク端子50bが接続される。ただし、4極イヤホンには、PTT端子58が無いため、第5ジャック端子には何も接続されない。
なお、図5および図6では、検出信号を出力する第6ジャック端子については、図示を省略する。
ここで、図2(A)および図3(A)に示すように、4極イヤホンプラグのGND端子54bおよび右音声端子56bが設けられる位置は、5極イヤホンプラグのものとは逆の位置に設けられている。そのため、図5および図6から分かるように、5極用のイヤホンジャック26に5極イヤホンプラグが挿入された場合と4極イヤホンプラグが挿入された場合とでは、第1ジャック端子および第2ジャック端子に接続されるイヤホンプラグの端子が入れ替わる。
たとえば、PTT機能によって通話している場合、受話音声信号はモノラル音声として第1ジャック端子および第3ジャック端子から出力されるため、左右のイヤピースからは同じ音声が出力される。ところが、4極イヤホンプラグが5極用イヤホンジャック26に挿入されているときに、PTT機能によって通話すると、ほぼ同位相、同レベルのモノラル信号が、4極イヤホンの左イヤピースの両端に印加される。この場合、左イヤピースの両端の電圧差がほぼ生じなくなってしまうため、左イヤピースの音声出力が極小となる。一方、右イヤピースには、第1ジャック端子から出力される右音声信号がシングルエンドの形態で印加されるので、適切な音量で出力される。したがって、4極イヤホンが利用されている場合、左右の音量に大きな差が生じてしまう。
また、4極イヤホンのGNDには、接地されている第2ジャック端子に接続されず、右音声信号(モノラル信号)が入力される。そのため、右音声信号が漏れ信号としてイヤホンマイクに回り込んでしまい、第4ジャック端子に漏れ信号が入力されてしまう。その結果、第4ジャック端子に入力された漏れ信号(右音声信号)が、エコーとして、通話相手に送信されてしまう。
これらの問題に対して、第1ジャック端子と第2ジャック端子とを短絡させどちらも接地させる対策と、エコーキャンセラ76の設定を4極イヤホンプラグが挿入された状態に固定する対策とが考えられる。そして、これらの対策を施した場合、4極イヤホンプラグまたは5極イヤホンプラグのどちらが挿入されたとしても、左イヤピース側から音声が出力され、漏れ信号がイヤホンマイクに回り込まないようになる。また、エコーキャンセラ76によってダブルトーク性能がやや低下するが、利用されているイヤホンの種類に関係なく、一定の通話品質を確保することができるようになる。
ところが、これらの対策を施した場合、要求仕様に対応する5極イヤホンプラグが挿入されても、右イヤピースから音声は出力されなくなってしまう。また、5極イヤホンが利用されているときは、エコーキャンセラ76によって、ダブルトーク性能を低下させる必要が無いにも関わらず、5極イヤホンが利用されているときもダブルトーク性能を低下させなければならない。
そこで、第1実施例では、イヤホンジャック26に挿入されたイヤホンプラグの種類を識別して、4極イヤホンプラグがイヤホンジャック26に挿入された場合は、4極イヤホンモードとして動作させることで、上述の問題を解消する。
まず、挿入されたイヤホンプラグの種類を識別する方法について説明する。挿入信号の状態が変化し、イヤホンプラグの挿入が検出されると、制御回路70は、スイッチSW1をDTMFジェネレータ96側に切り替え、スイッチSW2を第3ジャック端子側に切り替える。また、制御回路70は、スイッチSW1,SW2を切り替えた後に、DTMFジェネレータ96を制御して、400Hz/90mVp−pのトーン信号(テスト信号)を一定時間(たとえば、100ms)出力する。出力されたトーン信号は第3ジャック端子に入力され、4極イヤホンプラグが挿入されている場合は、トーン信号の回り込みによって、第1ジャック端子で漏れ信号が検出される。一方、5極イヤホンプラグが挿入されている場合は、トーン信号の回り込みが発生しないため、第1ジャック端子で漏れ信号は検出されない。そして、本実施例では、第1ジャック端子における漏れ信号の有無を利用して、イヤホンプラグの種類を識別する。
図7はイヤホンジャック26に4極イヤホンプラグが挿入されている状態の電気的な接続を示す図解図である。なお、図7において不要な回路などは省略している。図7を参照して、スイッチSW1が切り替えられた後に、DTMFジェネレータ96から出力されたトーン信号は、第3ジャック端子から左イヤピース(Lch)に入力される。このとき、トーン信号の回り込みが発生し、トーン信号の信号レベルに対して約半分(45mVp−p)の漏れ信号が第1ジャック端子に流れる。
図8を参照して、上述した漏れ信号の波形は波形W1で示される。そして、漏れ信号は、第1増幅回路110において波形W2となるように増幅され、さらに第2増幅回路112によって波形W3となるように増幅される。つまり、正弦波である漏れ信号は、第1増幅回路110および第2増幅回路112によって、400Hzで「H」と「L」を繰り返すパルス信号に増幅される。また、増幅されたパルス信号は、識別信号として制御回路70の割り込み信号検出ポートに入力される。そして、制御回路70は、「H」と「L」を繰り返す識別信号の変化を、たとえば所定回数(たとえば、3回)検出すると、4極イヤホンプラグが挿入されたと識別する。なお、パルス信号を利用することによって得られる効果は、後述するため、ここでの説明は省略する。また、所定回数は、3回未満であってもよし、4回以上であってもよい。
一方、図9はイヤホンジャック26に5極イヤホンプラグが挿入されている状態の電気的な接続を示す図解図である。なお、図9でも、図7と同様、不要な回路などは省略している。図9を参照して、トーン信号は、第3ジャック端子から左イヤピース(Lch)に入力される。このとき、5極イヤホンプラグのGND端子54aは、接地されている第2ジャック端子と接続されるため、第1ジャック端子に漏れ信号は流れない。つまり、制御回路70は、トーン信号の出力中に、第1ジャック端子においてトーン信号の回り込みを検出できない場合、5極イヤホンプラグが挿入されたと識別する。
次に、4極イヤホンプラグと識別されたときに設定される、4極イヤホンモードについて説明する。4極イヤホンモードが設定された場合、出力音声信号の設定と、エコーキャンセラ76に対する設定と、音声ゲインの設定とが変更される。
4極イヤホンモードが設定され、出力音声信号の設定が変更されると、左音声信号の出力は維持されるが、第2アナログアンプ84の増幅率が下げられるため、右音声信号の出力は停止する。この場合、図7から分かるように、左右のイヤピースがGNDに対して直列に並ぶため、左右のイヤピースから同等の音量の音声が出力される。また、ステレオ音声を出力する場合には、制御回路70はセレクタ81で左右の音声信号を合成し、その合成音声が第3ジャック端子から出力される。つまり、4極イヤホンプラグが挿入された場合でも、左右のイヤピースから音声を出力することができる。なお、4極イヤホンモードでは、5極イヤホンプラグが挿入されている状態に対して、音量が高く設定される。
また、制御回路70がエコーキャンセラ76の設定を変更すると、エコーに対する検出感度のパラメータが高くなる。パラメータが高くなると、エコーキャンセラ76のエコー検出レベルが低くなり、僅かなエコーでも送話側の音声がミュートされるようになる。したがって、4極イヤホンが利用されている場合は、エコーキャンセラ76によってダブルトーク性能がやや低下するが、一定の通話品質を確保することができる。
一方、5極イヤホンの挿入が検出された場合には、イヤホンジャック26の各ジャック端子と5極イヤホンプラグの各端子とがそれぞれ正しく接続されるため、音声を通常通り出力することができる。また、エコーキャンセラ76のパラメータは高く設定されず、挿話音声信号がミュートもしくはアッテネートされる頻度少なくなるため、高い通話品質を確保することができる。
このように、本実施例では、4極および5極イヤホンの内部回路の違いを利用して、それらのイヤホンプラグの挿入を識別できるので、端子の数が異なるイヤホンを適切に利用することができるようになる。また、識別に必要なイヤホンジャック26側の端子の数を少なくして、イヤホンジャック26を小型化することができる。
また、携帯電話機用として市場に多く出回っている4極イヤホンが利用された場合は、4極イヤホンモードを設定することで、左右イヤピースの音量差の発生や、エコーによる通話品質の低下を防ぐことができる。
続いて、イヤホンプラグが挿入されたときに生じる4極イヤホンプラグと5極イヤホンプラグとの誤識別について説明する。たとえば、5極イヤホンプラグがイヤホンジャック26に対してゆっくり挿入されると、イヤホンジャック26の内部は図10に示す状態になることがある。
図10を参照して、5極イヤホンプラグが挿入されている状態のイヤホンジャック26の断面図では、第1ジャック端子はGND端子54aと接触し、第2ジャック端子は左音声端子52aと接触し、第3ジャック端子および第4ジャック端子はマイク端子50aと接触する。つまり、第3ジャック端子と第4ジャック端子とが、マイク端子50aによって短絡する。また、この状態では、第5ジャック端子には、スイッチ端子58aは接触していないが、第6ジャック端子は、第4ジャック端子の接点71から離れた状態となるため、検出信号が「L(挿入)」となり、トーン信号が第3ジャック端子に入力される。
つまり、図10の状態では、第3ジャック端子と第4ジャック端子とが短絡した状態で、第3ジャック端子にトーン信号が入力される。そして、この状態の回路図は図11に示すようになる。
図11を参照して、後述する対策がされていない場合、第3ジャック端子から出力されるトーン信号は、イヤホンマイクを経由して、第1ジャック端子に漏れ信号が流れる。つまり、5極イヤホンプラグが挿入されているにもかかわらず、識別信号が制御回路70に入力されてしまい、4極イヤホンプラグが挿入されていると誤識別されてしまう。
そこで、本実施例では、トーン信号は、イヤホンプラグの挿入を検出してから所定時間(たとえば、500ms)が経過した後に、出力されるようにする。また、トーン信号が出力されている間は、+B2によって第4ジャック端子に印加されている、電圧バイアス(マイクバイアス)をオフにして、イヤホンマイクを非動作状態にする。その結果、イヤホンマイクのインピーダンスが高くなるため、イヤホンマイクを経由して回り込む、漏れ信号の発生が抑制される。したがって、イヤホンジャック26に対してイヤホンプラグがゆっくり挿入されたとしても、誤識別されなくなる。
また、イヤホンプラグがゆっくり挿入された場合、チャタリングによって誤識別されることもあるため、本実施例では、上述したパルス信号の変化を利用してヒステリシスをとることで、ゆっくりとイヤホンプラグが挿入されたときの誤識別を防止している。
図12は、RAM30のメモリマップを示す図である。RAM30のメモリマップには、プログラム記憶領域302およびデータ記憶領域304が含まれる。また、プログラムおよびデータの一部は、フラッシュメモリ28から一度に全部または必要に応じて部分的かつ順次的に読み出され、RAM30に記憶されてからプロセッサ18(または制御回路70)によって処理される。
プログラム記憶領域302には、携帯電話機10を動作させるためのプログラムが記憶されている。たとえば、携帯電話機10を動作させるためのプログラムには、識別プログラム310などが含まれる。識別プログラム310は、イヤホンジャック26に挿入されたイヤホンプラグが、5極イヤホンプラグか4極イヤホンプラグかを識別するためのプログラムである。
なお、図示は省略するが、携帯電話機10を動作させるためのプログラムには、音声着信状態を通知するためのプログラムや、PTT機能を実行するためのプログラムなども含まれる。
続いて、データ記憶領域304には、挿入フラグ332、4極イヤホンモードフラグ334およびトーンカウンタ334などが設けられる。挿入フラグ330は、イヤホンプラグが挿入されているかを判断するためのフラグであり、挿入信号に基づいてオン/オフが切り替えらえる。たとえば、挿入フラグ330は、1ビットのレジスタで構成される。挿入フラグ330がオン(成立)されると、レジスタにはデータ値「1」が設定される。一方、挿入フラグ330がオフ(不成立)されると、レジスタにはデータ値「0」が設定される。
4極イヤホンモードフラグ332は、4極イヤホンモードが設定されているか否かを示すフラグである。また、4極イヤホンモードフラグ332は、挿入フラグ330と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
トーンカウンタ334は、一定時間(たとえば、100ms)を計測するためのカウンタであり、リセット(初期化)されるとカウント(計測)を開始する。そのため、トーンカウンタ334はトーンタイマと呼ばれることもある。
なお、図示は省略するが、データ記憶領域304には、他の携帯電話機の電話番号やメールアドレスを含むアドレスデータや、受信した音声信号の復号結果など記憶されると共に、携帯電話機10の動作に必要なカウンタや、フラグも設けられる。
プロセッサ18は、Android(登録商標)およびREXなどのLinux(登録商標)ベースのOSや、その他のOSの制御下で、図13に示す識別処理などを含む複数のタスクを並列的に処理する。
図13は識別処理のフロー図である。たとえば、挿入信号の状態が変化すると、制御回路70(プロセッサ18)は、ステップS1で挿入信号が「L」か否かを判断する。つまり、イヤホンジャック26にイヤホンプラグが挿入されたかが判断される。ステップS1で“NO”であれば、たとえばイヤホンプラグが抜去され、挿入信号が「H」であれば、ステップS3で挿入フラグ330をオフにする。続いて、ステップS5では4極イヤホンモードの設定を解除する。つまり、4極イヤホンモードフラグ332をオフにする。そして、4極イヤホンモードフラグ332がオフにされると、左音声信号が第3ジャック端子から出力され右音声信号が第1ジャック端子から出力されるように設定される。また、エコーキャンセラ76のパラメータの設定および音声ゲインの設定が5極イヤホン用に変更される。そして、ステップS5の処理が終了すれば、識別処理を終了する。
一方、ステップS1で“YES”であれば、つまりイヤホンプラグがイヤホンジャック26に挿入されると、ステップS7で挿入フラグ330をオンにする。続いて、ステップS9ではマイクバイアスをオフにする。つまり、第4ジャック端子に印加されている、+B2の電圧バイアス(マイクバイアス)がオフにされる。続いて、ステップS11では、待機処理を実行する。つまり、イヤホンプラグの誤識別を防ぐために、待機処理が実行される。また、待機処理が実行されると、所定時間(500ms)の待機タイマがリセットされ、待機タイマが満了するまでステップS11の処理が実行され続ける。なお、ステップS11の処理を実行する制御回路70(プロセッサ18)は実行部として機能する。
続いて、ステップS13では、トーン信号を出力する。たとえば、DTMFジェネレータ96に対して、400Hz/90mVp−pのトーン信号を出力させる命令を発行する。続いて、ステップS15ではトーンタイマを初期化する。つまり、トーン信号を出力し続ける時間を計測するために、トーンカウンタ334が初期化される。続いて、ステップS17で変数Nを初期化する。つまり、変数Nは、パルス信号である識別信号の変化をカウントするために利用されるため、ステップS17で初期化される。
続いて、ステップS19では、トーンタイマが満了したか否かを判断する。つまり、トーン信号が出力されてから一定時間が経過したかが判断される。ステップS19で“NO”であれば、つまりトーンタイマが満了していなければ、ステップS21で識別信号が変化したか否かを判断する。つまり、パルス信号の変化が制御回路70に入力されたかが判断される。ステップS21で“NO”であれば、識別信号が変化していなければ、ステップS19に戻る。一方、ステップS21で“YES”であれば、つまり識別信号が変化すれば、ステップS23で変数Nをインクリメントする。たとえば、変数Nが「0」であれば、インクリメントされると、変数Nは「1」となる。続いて、ステップS25では、変数Nが定数C(たとえば、3)以上であるか否かが判断される。つまり、識別信号の変化が所定回数以上であるかが判断される。ステップS25で“YES”であれば、たとえば識別信号の変化が3回検出されると、ステップS27で4極イヤホンモードを設定する。つまり、4極イヤホンモードフラグ332がオンにされる。そして、4極イヤホンモードフラグがオンにされると、左右の音声が合成され、その合成音が第3ジャック端子から出力されるように設定される。さらに、エコーキャンセラ76のパラメータの設定および音声ゲインの設定が4極イヤホン用に変更される。そして、ステップS27の処理が終了すると、DTMFジェネレータ96に対して、トーン信号の出力を停止する命令が発行される。なお、ステップS19−S25の処理を実行する制御回路70は識別部として機能する。また、ステップS27の処理を実行する制御回路70は設定部として機能する。
また、ステップS25で“NO”であれば、たとえば変数Nが「2」であり、定数Cより小さければ、ステップS19に戻る。また、ステップS19で“YES”であれば、つまり識別信号が所定回数変化する前に、トーンタイマが満了すれば、ステップS29で、ステップS5と同様、4極イヤホンモードの設定を解除する。さらに、ステップS29の処理が終了すると、DTMFジェネレータ96に対して、トーン信号の出力を停止する命令が発行される。
そして、ステップS27またはステップS29の処理が終了すれば、ステップS31でマイクバイアスをオンにする。つまり、第4ジャック端子に印加されている、+B2の電圧バイアスをオンにする。また、ステップS31の処理が終了すれば、識別処理を終了する。
なお、第1実施例では、漏れ信号を2段のB級増幅回路110,112によって増幅したが、他の実施例では、別の増幅回路が利用されてもよい。また、増幅回路の数も2つだけに限らず、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、2つの増幅回路は、マイク信号が入力される第4ジャック端子に接続されてもよい。
また、その他の実施例では、トーン信号は、第1ジャック端子に出力されてもよい。この場合、2つの増幅回路は、第3ジャック端子に接続されてもよいし、第4ジャック端子に設けられてもよい。
<第2実施例>
第2実施例では、挿入されたイヤホンが識別されると、識別結果に基づいて右音声が入力されるジャック端子および接地されるジャック端子が切り替えられる。これにより、利用されているイヤホンの種類に関係なく、ステレオ音声がイヤホンから出力される。
図14は、第2実施例のプロセッサ18およびイヤホンジャック26の周辺の電気的な構成を示す図解図である。なお、第2実施例のプロセッサ18およびイヤホンジャック26は、略第1実施例と同じであるため、以下の説明では、第1実施例と異なる点について説明する。
プロセッサ18は、ステレオ音声再生回路98をさらに含み、スイッチSW1に代えてスイッチSW5が設けられる。また、制御回路70は、複数のSPDTを同時に切り替えるための切り替え信号をアナログスイッチ73に出力する。
まず、ステレオ音声再生回路98は、音楽データなどから左右の音声信号(ステレオ音声信号)を生成するための回路である。たとえば、音楽プレイヤ機能が実行された場合、プロセッサ18はフラッシュメモリ28から音楽データを読み出す。プロセッサ18では、読み出された音楽データがステレオ音声再生回路98に入力され、ステレオ音声信号が生成される。
スイッチSW5には、エコーキャンセラ76、DTMFジェネレータ96およびステレオ音声再生回路98が接続される。また、スイッチSW5の状態は、携帯電話機10の状態に応じて切り替えられる。そして、スイッチSW5が切り替えられると、エコーキャンセラ76、DTMFジェネレータ96およびステレオ音声再生回路98の内、いずれか1つの出力が第1デジタルゲイン78に入力される。
たとえば、プロセッサ18が通話処理を実行している場合、制御回路70はスイッチSW5を制御し、エコーキャンセラ76の出力(受話音声)を第1デジタルゲイン78に入力する。このとき、相手が通話中などであれば、制御回路70はスイッチSW5を制御して、DTMFジェネレータ96の出力(トーン信号)を第1デジタルゲイン78に入力する。そして、プロセッサ18が音楽プレイヤ機能を実行している場合、制御回路70はスイッチSW5を制御して、ステレオ音声再生回路98の出力(ステレオ音声信号)を第1デジタルゲイン78に入力する。
また、プロセッサ18が音楽プレイヤ機能を実行している場合、制御回路70はセレクタ81を制御して、左右の音声信号がそれぞれの経路に入力されるようにする。つまり、セレクタ81では、左音声を左音声の経路、つまり第1アナログアンプ82に入力し、右音声を右音声の経路、つまり第2アナログアンプ84に入力する。このとき、イヤホンが挿入されていなければ、左右の音声信号は、加算器86で合成された後に、第3アナログアンプ88でさらに増幅されてから、スピーカ16に与えられる。一方、イヤホンが挿入されている場合は、左右のイヤピースから左音声および右音声が出力される。
なお、プロセッサ18によって、ラジオ機能、TV機能(ワンセグ機能)および動画再生機能などが実行された場合でも、ステレオ音声再生回路98はステレオ音声を生成することがある。
次に、イヤホンジャック26には上述したアナログスイッチ73が接続される。第2実施例の第1ジャック端子は、切り替え部として機能するアナログスイッチ73のポートP2およびポートP3と接続される。そして、第1ジャック端子には、アナログスイッチ73の切り替え状態に応じて、右音声信号が入力されたり、GNDが繋がれたりする。
第2ジャック端子はアナログスイッチ73のポートP1およびポートP4と接続される。そして、第2ジャック端子には、アナログスイッチ73の切り替え状態に応じて、GNDと繋がれたり、右音声信号が入力されたりする。
上述したアナログスイッチ73は、SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチを2つ含む。また、アナログスイッチ73は、上述したようにポートP1−P4に第1ジャック端子または第2ジャック端子が接続される。ポートP5はスイッチSW3と接続され、イヤホンが挿入された状態では、右音声信号が入力される。ポートP6,P7はプロセッサ18と接続され、共にプロセッサ18から切り替え信号が入力される。ポートP8,P9はGNDと接続される。そして、ポートP10には電源回路32の+B1が接続される。
また、ポートP1,P2,P5によって1つのSPDTスイッチが構成され、ポートP3,P4,P8によってもう一つのSPDTスイッチが構成される。そして、上記ポートP6,P7に入力される切り替え信号によって、2つのSPDTスイッチが同時に切り換えられる。
たとえば、右音声信号はポートP5に入力されると、SPDTスイッチの切り替え状態に応じて、ポートP1またはポートP2から出力される。また、ポートP3またはポートP4は、SPDTスイッチの切り替え状態に応じて、接地されているポートP8と接続される。
図14に示すように、初期状態では5極イヤホンプラグの端子配列と対応するように、アナログスイッチ73が切り替えられているため、右音声信号が入力されるSPDTスイッチでは、5極イヤホンプラグの右音声端子と繋がるポートP2(第1ジャック端子)がポートP5と接続される。また、GNDと接続されるSPDTスイッチでは、5極イヤホンプラグのGND端子と繋がるポートP4(第2ジャック端子)がポートP8と接続される。この場合、ポートP3およびP1は、他の端子と接触しない状態となる。また、初期状態の切り替え信号は「L」の状態に設定される。
ここで、挿入されたイヤホンプラグが4極イヤホンプラグと識別された場合、制御回路70は、切り替え信号を「H」の状態に設定することで、アナログスイッチ73に含まれる2つのSPDTスイッチを同時に切り替える。つまり、右音声信号が入力されるSPDTスイッチでは、4極イヤホンプラグの右音声端子と繋がるポートP1(第2ジャック端子)がポートP5と接続される。また、GNDと接続されるSPDTスイッチでは、4極イヤホンプラグのGND端子と繋がるポートP3(第1ジャック端子)がポートP8と接続される。
そのため、4極イヤホンプラグが挿入されたと判定された場合、第1ジャック端子が接地され、第2ジャック端子に右音声信号が出力されるように、アナログスイッチ73が切り替えられる。
このように、第2実施例では、識別結果に基づいて右音声が出力される端子が切り替えらえる。そのため、4極イヤホンプラグが挿入された場合でも、イヤホンからステレオ音声を出力することが出来る。
また、第2実施例では、4極イヤホンモードを設定する必要が無い。特に、第1実施例と異なり、エコーキャンセラ76のエコーに対する検出感度のパラメータを高くする必要が無くなるため、4極イヤホンが利用されているときでも、5極イヤホンが利用されているときと同様の通話品質を確保することが出来る。
図15は第2実施例の識別処理のフロー図である。ただし、第1実施例の識別処理と同じ処理については、同じ符号を付してある。たとえば、挿入信号の状態が変化すると、制御回路70(プロセッサ18)は、ステップS1で挿入信号が「L」か否かを判断する。ステップS1で“NO”であれば、つまりイヤホンプラグが抜去され挿入信号が「H」であれば、ステップS3でプロセッサ18は、挿入フラグ330をオフにする。
続いて、プロセッサ18は、ステップS4で切り替え信号を初期化して、識別処理を終了する。つまり、アナログスイッチ73に入力される切り替え信号が「L」にされる。
一方、ステップS1で“YES”であれば、つまりイヤホンプラグが挿入され挿入信号が「L」となれば、プロセッサ18は、ステップS7で挿入フラグ330をオンにして、ステップS9でマイクバイアスをオフにする。続いて、プロセッサ18は、ステップS11で待機処理を実行し、ステップS13でトーン信号を出力し、ステップS15でトーンタイマを初期化し、ステップS17で変数Nを初期化する。
続いて、ステップS19でトーンタイマが満了したか否かを判断する。ステップS19で“NO”であれば、つまりトーン信号が出力されてから一定時間が経過していなければ、ステップS21でプロセッサ18は、識別信号が変化したか否かを判断する。ステップS21で“NO”であれば、つまり識別信号が変化していなければ、ステップS19に戻る。一方、ステップS21で“YES”であれば、つまり識別信号が変化すれば、ステップS23でプロセッサ18は、識別信号の変化をカウントする変数Nをインクリメントする。続いて、ステップS25でプロセッサ18は、変数Nが定数C以上となったか否かを判断する。つまり、識別信号の変化が所定回数以上であるかが判断される。
ステップS25で“YES”であれば、つまり識別信号の変化が所定回数以上であれば、ステップS26でプロセッサ18は、切り替え信号を「H」に設定する。つまり、4極イヤホンのイヤホンプラグが挿入されたため、アナログスイッチ73に含まれる2つのSPDTスイッチが同時に切り替えられる。これにより、4極イヤホンプラグの右音声端子と繋がるポートP1がポートP5と接続され、4極イヤホンプラグのGND端子と繋がるポートP3がポートP8と接続される。その結果、4極イヤホンプラグの右音声端子56bに右音声信号が入力され、GND端子54bが接地される。
一方、ステップS25で“NO”であれば、つまり変数Nが定数C未満であれば、プロセッサ18はステップS19に戻る。ステップS19で“YES”であれば、つまりトーン信号が出力されてから一定時間が経過すれば、ステップS28でプロセッサ18は、識別信号が「L」であるか否かを判断する。つまり、トーン信号が出力されてから一定時間が経過した後も識別信号が変化していないかが判断される。ステップS28で“NO”であれば、つまり識別信号が変化して「H」であれば、プロセッサ18はステップS25に戻る。
また、ステップS28で“YES”であれば、つまり識別信号が変化しておらず「L」であれば、ステップS30でプロセッサ18は、切り替え信号を「L」に設定する。つまり、つまり、5極イヤホンのイヤホンプラグが挿入されたため、アナログスイッチ73に含まれる2つのSPDTスイッチが初期状態にされる。これにより、その結果、5極イヤホンプラグの右音声端子56aに右音声信号が入力され、GND端子54aが接地される。
そして、ステップS26またはステップS30の処理が終わると、プロセッサ18は、ステップS31でマイクバイアスをオンにして、識別処理を終了する。
<第3実施例>
図16を参照して、第3実施例の携帯電話機10は、コンピュータまたはCPUと呼ばれるプロセッサ18を含む。また、プロセッサ18には、無線通信回路72、A/D変換器92、第1D/A変換器80a、キー入力装置20、表示ドライバ22、フラッシュメモリ28、RAM30および電源回路32などが接続される。
無線通信回路72にはアンテナ12が接続される。A/D変換器92にはマイク14が接続され、第1D/A変換器80aにはスピーカ16が接続され、第2D/A変換器80bにはイヤホンジャック26が接続される。表示ドライバ22にはディスプレイ24が接続される。そして、電源回路32には二次電池34などが接続される。なお、イヤホンジャック26はプロセッサ18および電源回路32とも接続される。
ここで、第3実施例の携帯電話機10の電気的な構成は第1実施例および第2実施例とは異なるが、実質的に同じ構成部分については、第1実施例および第2実施例と同じ符号を付して説明する。
プロセッサ18は携帯電話機10の全体制御を司る。A/D変換器92は、マイク14を通して入力される音声ないし音についてのアナログ音声信号を、デジタル音声信号に変換する。第1D/A変換器80aは、デジタル音声信号をアナログ音声信号に変換(復号)して、図示しないアンプを介してスピーカ16に与える。したがって、アナログ音声信号に対応する音声ないし音がスピーカ16から出力される。なお、プロセッサ18は、アンプの増幅率を制御することで、スピーカ16から出力される音声の音量を調整することができる。
同様に、第2D/A変換器80bも、デジタル音声信号をアナログ音声信号に変換(復号)して、図示しないアンプを介してイヤホンジャック26に与える。なお、プロセッサ18は、第2D/A変換器80bと接続されるアンプの増幅率を制御することで、イヤホンから出力される音声の音量を調整することができる。
無線通信回路72は、CDMA方式で無線通信を行うための回路である。たとえば、使用者がキー入力装置20を用いて電話発信(発呼)を指示すると、無線通信回路72は、プロセッサ18の指示の下、電話発信処理を実行し、アンテナ12を介して電話発信信号を出力する。電話発信信号は、基地局および通信網(図示せず)を経て相手の電話機に送信される。そして、相手の電話機において着信処理が行われると、通信可能状態が確立され、プロセッサ18は通話処理を実行する。
通常の通話処理について具体的に説明すると、相手の電話機から送られてきた変調音声信号はアンテナ12によって受信される。受信された変調音声信号には、無線通信回路72によって復調処理および復号処理が施される。そして、これらの処理によって得られた受話音声信号は、第1D/A変換器80aによってアナログ音声信号に変換された後、スピーカ16から出力される。一方、マイク14を通して取り込まれた送話音声信号は、A/D変換器92によってデジタル音声信号に変換された後、プロセッサ18に与えられる。デジタル音声信号に変換された送話信号には、プロセッサ18の指示の下、無線通信回路72によって符号化処理および変調処理が施され、アンテナ12を介して出力される。したがって、変調音声信号は、基地局および通信網を介して相手の電話機に送信される。
また、相手の電話機からの電話発信信号がアンテナ12によって受信されると、無線通信回路72は、電話着信(着呼)をプロセッサ18に通知する。これに応じて、プロセッサ18は、表示ドライバ22を制御して、着信通知に記述された発信元情報(電話番号など)をディスプレイ24に表示する。また、これとほぼ同時に、プロセッサ18は、図示しないスピーカから着信音(着信メロディ、着信音声と言うこともある。)を出力させる。
そして、使用者が通話キーを用いて応答操作を行うと、無線通信回路72は、プロセッサ18の指示の下、電話着信処理を実行する。さらに、通信可能状態が確立され、プロセッサ18は上述した通常の通話処理を実行する。
また、通話可能状態に移行した後に終話キーによって通話終了操作が行われると、プロセッサ18は、無線通信回路72を制御して、通話相手に通話終了信号を送信する。そして、通話終了信号の送信後、プロセッサ18は通話処理を終了する。また、先に通話相手から通話終了信号を受信した場合も、プロセッサ18は通話処理を終了する。さらに、通話相手によらず、移動通信網から通話終了信号を受信した場合も、プロセッサ18は通話処理を終了する。
ここで、第3実施例では、イヤホンジャック26に挿入されたイヤホンプラグの種類を識別して、イヤホンジャック26の右音声信号を出力するジャック端子と、GNDと繋がるジャック端子とを適切に切り替える。
図17はイヤホンジャック26の電気的な構成の他の一例を示す図解図である。図17を参照して、イヤホンジャック26には、5極イヤホンプラグの右音声端子56aまたは4極イヤホンプラグのGND端子54bと接触する第1ジャック端子(第1端子、第3端子)、マイク端子50と接触する第4ジャック端子、左音声端子52と接触する第3ジャック端子(第2端子、第1端子)、5極イヤホンプラグのGND端子54aまたは4極イヤホンプラグの右音声端子56bと接触する第2ジャック端子(第3端子、第2端子)、接点71によって第4ジャック端子と接触する第6ジャック端子および5極イヤホンプラグのスイッチ端子58aと接触する第5ジャック端子が含まれる。
第1ジャック端子は、切り替え部として機能するアナログスイッチ73のポートP2およびポートP3と接続される。また、第1ジャック端子の接点とアナログスイッチ73との間には、判定信号をプロセッサ18に出力するA/D変換器75が接続される。詳細は後述するが、プロセッサ18は、検出部として機能するA/D変換器75の出力を判定信号として利用することで、4極イヤホンプラグまたは5極イヤホンプラグを判定する。そして、第1ジャック端子には、アナログスイッチ73の切り替え状態に応じて、右音声信号が入力されたり、GNDが繋がれたりする。
第4ジャック端子は0.1μFのコンデンサC1および図示しないA/D変換器を介してプロセッサ18と接続される。また、第4ジャック端子の接点71とコンデンサC1との間には、2kΩの抵抗R1を介して、電源回路32の+B2が接続される。さらに、第4ジャック端子には、PTTイヤホンまたはハンズフリーイヤホンのマイクを通して入力される音声ないし音についてのアナログ音声信号が入力される。そのため、入力されたアナログ音声信号は、上記A/D変換器によってデジタル音声信号に変換された後に、マイク信号としてプロセッサ18に出力される。なお、プロセッサ18は、マイク信号の電圧値を検出することができ、検出された電圧値はRAM30のイヤホンスイッチバッファ338に格納される。
第3ジャック端子は33Ωの抵抗R4および22μFのコンデンサC2を介してプロセッサ18と接続される。また、第3ジャック端子の接点と抵抗R4との間には、判定スイッチSW6および100Ωの抵抗R6を介して、電源回路32の+B1が接続される。なお、プロセッサ18が出力する左チャンネルのデジタル音声は、第2D/A変換機80bによってアナログ音声信号に変換された後に、第3ジャック端子に入力される。
第2ジャック端子はアナログスイッチ73のポートP1およびポートP4と接続される。そして、第2ジャック端子には、アナログスイッチ73の切り替え状態に応じて、GNDと繋がれたり、右音声信号が入力されたりする。
第6ジャック端子は、プロセッサ18と接続されている。また、接点71とプロセッサ18との間には、330kΩの抵抗R3を介してGNDと接続される。さらに、イヤホンプラグが挿入されていない状態では上述したように第6ジャック端子の接点71が第4ジャック端子と接触しており、イヤホンプラグが挿入された状態になると、接点71が第4ジャック端子から離れる。そして、第4ジャック端子には+B2が接続されているため、接点71が第4ジャック端子と接触していれば、第6ジャック端子に電圧が印加される。一方、接点71が第4ジャック端子と接触していなければ、第6ジャック端子には電圧が印加されない。そのため、第6ジャック端子の電圧値は、イヤホンプラグの挿入を挿入信号として利用される。
たとえば、イヤホンプラグが挿入されていなければ第6ジャック端子には電圧が印加されるため挿入信号は「H」となり、プロセッサ18はイヤホンプラグが挿入されていないと判断する。一方、イヤホンプラグが挿入されていれば第6ジャック端子には電圧が印加されないため、挿入信号は「L」となり、プロセッサ18はイヤホンプラグが挿入されていると判断する。
第5ジャック端子は、1kΩの抵抗R5を介してプロセッサ18と接続される。また、抵抗R5とプロセッサ18との間には、10kΩの抵抗R2を介して、電源回路32の+B1が接続される。そして、第5ジャック端子に印加される電圧値は、PTTスイッチのオン/オフによって変化するため、その電圧値は、PTTスイッチ信号として利用される。
上述したアナログスイッチ73は、SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチを2つ含む。また、アナログスイッチ73は、上述したようにポートP1−P4に第1ジャック端子または第2ジャック端子が接続される。ポートP5は33Ωの抵抗R7および22μFのコンデンサC3を介してプロセッサ18と接続され、右音声信号が入力される。ポートP6,P7はプロセッサ18と接続され、共にプロセッサ18から切り替え信号が入力される。ポートP8,P9はGNDと接続される。そして、ポートP10には電源回路32の+B1が接続される。
また、ポートP1,P2,P5によって1つのSPDTスイッチが構成され、ポートP3,P4,P8によってもう一つのSPDTスイッチが構成される。そして、上記ポートP6,P7に入力される切り替え信号によって、2つのSPDTスイッチが同時に切り換えられる。
たとえば、右音声信号はポートP5に入力されると、SPDTスイッチの切り替え状態に応じて、ポートP1またはポートP2から出力される。また、ポートP3またはポートP4は、SPDTスイッチの切り替え状態に応じて、接地されているポートP8と接続される。
また、図17に示すように、初期状態では5極イヤホンプラグの端子配列と対応するように、アナログスイッチ73が切り替えられているため、右音声信号が入力されるSPDTスイッチでは、5極イヤホンプラグの右音声端子と繋がるポートP2(第1ジャック端子)がポートP5と接続される。また、GNDと接続されるSPDTスイッチでは、5極イヤホンプラグのGND端子と繋がるポートP4(第2ジャック端子)がポートP8と接続される。
なお、この場合、ポートP3およびP1は、他の端子と接触しない状態となる。また、初期状態の切り替え信号は「L」の状態に設定される。
ここで、4極イヤホンプラグがイヤホンジャック26に挿入されると、挿入信号は「H」の状態となり判定スイッチSW6がオンにされる。このとき、第1ジャック端子、第3ジャック端子、第2ジャック端子および4極イヤホンの周辺を表す等価回路は、図18(A)のように示される。図18(A)を参照して、4極イヤホンは、直列に接続された32Ωの抵抗ER1および抵抗ER2を含む。また、抵抗ER1の一方端が第3ジャック端子に接続され、抵抗ER2の一方端が第2ジャック端子に接続され、抵抗ER1と抵抗ER2との間に第1ジャック端子が接続される。この状態では、電源回路32の+B1の電圧が、抵抗R1および第3ジャック端子を介して4極イヤホンに印加され、抵抗ER1および抵抗ER2の分圧によって、第1ジャック端子に電圧(たとえば、0.507V)が印加される。そのため、A/D変換器75から出力される検出信号は「H」の状態となる。
そして、プロセッサ18は検出信号が「H」の状態であれば、切り替え信号を「H」の状態に設定することで、アナログスイッチ73に含まれる2つのSPDTスイッチを同時に切り替える。つまり、右音声信号が入力されるSPDTスイッチでは、4極イヤホンプラグの右音声端子と繋がるポートP1(第2ジャック端子)がポートP5と接続される。また、GNDと接続されるSPDTスイッチでは、4極イヤホンプラグのGND端子と繋がるポートP3(第1ジャック端子)がポートP8と接続される。
そのため、4極イヤホンプラグが挿入されたと判定された場合、第1ジャック端子が接地され、第2ジャック端子に右音声信号が出力されるように、アナログスイッチ73が切り替えられる。
次に、5極イヤホンプラグがイヤホンジャックに挿入されると、第1ジャック端子、第3ジャック端子、第2ジャック端子および5極イヤホンの周辺を表す等価回路は、図18(B)のように示される。図18(B)を参照して、5極イヤホンは、32Ωの抵抗ER3および抵抗ER4を含む。抵抗ER4の一方端が第3ジャック端子に接続され、他方端が第2ジャック端子に接続される。また、抵抗ER4の他方端と第2ジャック端子との間には、抵抗ER3を介して第1ジャック端子が接続される。さらに、この状態では、電源回路32の+B1の電圧が、抵抗R1および第3ジャック端子を介して5極イヤホンに印加される。そして、5極イヤホンに電圧が印加されることで流れた電流は、抵抗ER4を介してGNDに落ちるが、第1ジャック端子側には抵抗ER3があるため、第1ジャック端子では電圧が検出されない。つまり、A/D変換器75から出力される検出信号は「L」の状態となる。
ただし、本実施例では、検出信号が「L」の状態となっても、切り替え信号の初期状態が「L」の状態に設定されているため、アナログスイッチ73は、図17に示す初期状態から変化しない。
このように、初期状態および5極イヤホンプラグが挿入されたと判定された状態では、第1ジャック端子に右音声信号が出力されかつ第2ジャック端子が接地されるように、アナログスイッチ73が切り替えられた状態となる。
以上の説明から分かるように、イヤホンの内部回路の違いを利用して、4極または5極イヤホンプラグの挿入を判定できる。したがって、判定に必要なジャック端子の数を少なくして、イヤホンジャック26を小型化することができる。
図19は、RAM30のメモリマップを示す図である。プログラム記憶領域302には、携帯電話機10を動作させるためのプログラムが記憶されている。たとえば、携帯電話機10を動作させるためのプログラムには、判定プログラム312などが含まれる。判定プログラム312は、イヤホンジャック26に挿入されたイヤホンプラグが、5極イヤホンプラグか4極イヤホンプラグかを判定するためのプログラムである。なお、図示は省略するが、携帯電話機10を動作させるためのプログラムには、音声着信状態を通知するためのプログラムや、PTTを実行するためのプログラムなども含まれる。
続いて、データ記憶領域304には、PTTスイッチバッファ336およびイヤホンスイッチバッファ338が設けられるとともに、4極フラグ340および5極フラグ342も設けられる。
PTTスイッチバッファ336には、PTTスイッチ信号の状態が一時的に記憶される。イヤホンスイッチバッファ338には、イヤホンスイッチのオン/オフを示すマイク信号の電圧値が一時的に記憶される。
4極フラグ340および5極フラグ342は、4極プラグおよび5極プラグがイヤホンジャック26に挿入されているかを示すフラグである。そして、4極フラグ340および5極フラグ342は初期状態では共にオフにされる。たとえば、4極フラグ340は、1ビットのレジスタで構成される。4極フラグ340がオン(成立)されると、レジスタにはデータ値「1」が設定される。一方、4極フラグ340がオフ(不成立)されると、レジスタにはデータ値「0」が設定される。また、5極フラグ342は、4極フラグ340と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
なお、図示は省略するが、データ記憶領域304には、他の携帯電話機の電話番号やメールアドレスを含むアドレスデータや、受信した音声信号の復号結果など記憶されると共に、携帯電話機10の動作に必要なカウンタや、フラグも設けられる。
プロセッサ18は、Android(登録商標)およびREXなどのLinux(登録商標)ベースのOSや、その他のOSの制御下で、図20に示す判定プログラムなどを含む複数のタスクを並列的に処理する。
図20は判定処理のフロー図である。たとえば、携帯電話機10の電源がオンにされると、プロセッサ18は、ステップS51でイヤホンが接続されたか否かを判断する。つまり、第6ジャック端子から得られる挿入信号が「L」の状態であるかを判断する。ステップS51で“NO”であれば、つまりイヤホンプラグが挿入されておらず挿入信号が「H」の状態であれば、ステップS81に進む。
また、ステップS51で“YES”であれば、つまり4極または5極のイヤホンプラグが挿入され、挿入信号が「L」の状態であれば、ステップS53で5極フラグ342がオンであるか否かが判断される。つまり、5極イヤホンプラグが挿入されていると既に判定されているかが判断される。ステップS53で“YES”あれば、つまり挿入されているイヤホンプラグが5極であると判定されていれば、ステップS65に進む。また、ステップS53で“NO”であれば、つまり挿入されているイヤホンプラグが5極と判定されていなければ、ステップS55で4極フラグ340がオンであるか否かが判断される。つまり、4極イヤホンプラグが挿入されていると既に判定されているかが判断される。ステップS55で“YES”であれば、つまり挿入されているイヤホンプラグが4極であると判定されていれば、ステップS77に進む。
一方、ステップS55で“NO”であれば、つまり挿入されたイヤホンプラグの極数が判定されていない状態であれば、プロセッサ18はステップS57で判定スイッチSW6をオンにする。つまり、判定信号によって5極イヤホンプラグまたは4極イヤホンプラグが挿入されているかを判定するために、電源回路32の+B1の電圧が、第3ジャック端子に印加される。なお、ステップS57の処理を実行するプロセッサ18は電圧印加部として機能する。
続いて、ステップS59では5極イヤホンか否かを判断する。つまり、第1ジャック端子の電圧に基づく判定信号が、「L」の状態であるか否かを判定する。ステップS59で“NO”であれば、つまり判定信号が「H」の状態であれば、ステップS71に進む。
また、図18(B)に示すように、第1ジャック端子に電圧が印加されていれば、ステップS61で判定スイッチSW6をオフにする。つまり、判定に必要な判定信号の状態が得られたため、判定スイッチSW6はオフにされる。続いて、ステップS63で5極フラグ342はオンにされる。つまり、5極イヤホンプラグが挿入されていると判定されたため、5極フラグ342がオンにされる。なお、ステップS63の処理を実行するプロセッサ18は第1判定部として機能する。
ただし、アナログスイッチ73は、初期状態では5極イヤホンプラグに対応するように設定されているため、挿入されたイヤホンプラグが5極イヤホンプラグと判定されても、アナログスイッチ73の状態は変化しない。
続いて、ステップS65ではPTTスイッチがオンであるか否かを判断する。つまり、第5ジャック端子から得られるPTTスイッチ信号が「L」の状態であるかが判断される。ステップS65で“NO”であれば、たとえば使用者がPTTスイッチをオンにしていなければ、ステップS67で受信状態処理を実行する。受信状態処理が実行されると、たとえば他の携帯電話機から音声信号を受信したかが判断される。そして、受信状態処理が終了すれば、判定処理も終了する。一方、ステップS65で“YES”であれば、たとえば使用者がPTTスイッチをオンにすれば、ステップS69で送信状態処理を実行する。つまり、PTTイヤホンのマイクに入力された音声信号が他の携帯電話機に送信される。そして、送信状態処理が終了すれば、判定処理も終了する。
なお、他の実施例では、PTTが実行されていない状態では、ステップS67またはステップS69の処理が実行されないようにしてもよい。
また、イヤホンジャック26に4極イヤホンプラグが挿入されると、図18(A)の状態となるため、ステップS71では切り替え信号を「H」の状態に設定する。これにより、アナログスイッチ73に含まれる2つのSPDTスイッチが同時に切り替えられる。そのため、右音声信号が入力されるSPDTスイッチでは、4極イヤホンプラグの右音声端子と繋がるポートP1(第2ジャック端子)がポートP5と接続される。また、GNDと接続されるSPDTスイッチでは、4極イヤホンプラグのGND端子と繋がるポートP3(第1ジャック端子)がポートP8と接続される。
続いて、ステップS73では、ステップS61と同様、判定スイッチSW6をオフにする。続いて、ステップS75で、4極フラグ340はオンにされる。つまり、4極イヤホンプラグが挿入されていると判定されたため、4極イヤホンフラグ340がオンにされる。なお、ステップS75の処理を実行するプロセッサ18は第2判定部として機能する。
続いて、ステップS77では、イヤホンスイッチがオフか否かを判断する。つまり、イヤホンスイッチバッファ338に格納される、マイク信号の電圧値が閾値を超えているか否かを判断する。ステップS77で“NO”であれば、つまりイヤホンスイッチがオンにされておらず、バッファに格納されるマイク信号の電圧値が閾値以下であれば、判定処理を終了する。一方、ステップS77で“YES”であれば、つまりイヤホンスイッチがオンにされ、バッファに格納されるマイク信号の電圧値が閾値を超えていれば、ステップS79で電話処理を実行して、判定処理が終了される。たとえば、待機状態で電話処理が実行されると、発信履歴に基づいて音声発信処理が実行さえる。また、着信状態で電話処理が実行されると、通信可能状態が確立された後に、通話処理が実行される。さらに、通話状態で電話処理が実行されると、通話相手に通話終了信号を送信して、通話処理を終了する。
また、判定処理は、約100ms毎に繰り返して実行される。そのため、4極または5極イヤホンプラグがイヤホンジャック26から引き抜かれると、ステップS51で“NO”と判断され、ステップS81で各フラグが初期化される。つまり、4極フラグ340および5極フラグ342がオフに設定される。そして、ステップS83では、切り替え信号を「L」の状態に設定し、判定処理が終了される。つまり、ステップS83が実行されると、アナログスイッチ73に含まれる2つのSPDTスイッチが図17に示す状態に戻る。
なお、イヤホンプラグが挿入されていなければ、判定処理が実行される度に、ステップS51では“NO”と判断される。
なお、第3実施例では、アナログスイッチ73の初期状態は5極イヤホンプラグの端子配列に対応するように設定されているが、他の実施例では4極イヤホンプラグの端子配列に対応するように設定されてもよい。
また、携帯電話機10の通信方式はCDMA方式であるが、LTE方式、W−CDMA方式、GSM(登録商標)方式、TDMA方式、FDMA方式およびPHS方式などが採用されてもよい。さらに、ディスプレイ24にはLCDモニタが利用されるが、有機ELパネルなどが採用されてもよい。
また、本実施例で用いられたプログラムは、データ配信用のサーバのHDDに記憶され、ネットワークを介して携帯電話機10に配信されてもよい。また、CD,DVD,BD(Blu-ray Disc)などの光学ディスク、USBメモリおよびメモリカードなどの記憶媒体に複数のプログラムを記憶させた状態で、その記憶媒体が販売または配布されてもよい。そして、上記したサーバや記憶媒体などを通じてダウンロードされた、プログラムが本実施例と同等の構成の携帯電話機にインストールされた場合、本実施例と同等の効果が得られる。
さらに、本実施例は、携帯電話機10のみに限らず、いわゆるスマートフォンや、タブレット型のPC、携帯型の音楽プレイヤおよびPDAなどに適用されてもよい。
そして、本明細書中で挙げた具体的な数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。