JP5797055B2 - 等価回路解析装置及び等価回路解析方法 - Google Patents

等価回路解析装置及び等価回路解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定し、この周波数特性から、電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析装置及び方法に関するものである。
抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオード、トランジスタ、一次・二次電池、太陽電池、フィルタなどの電気的な部品を測定対象物(以下、DUTともいう)として、そこに周波数を掃引させつつ測定用信号電圧を印加して、その電圧及び流れた電流から、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、測定した周波数特性を表示パネルにグラフで表示するインピーダンス測定装置が知られている。このようなインピーダンス測定装置の中には、測定した複素インピーダンスの周波数特性から、測定対象物の電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析機能を有しているものがある。
例えば、特許文献1には、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、モンテカルロ法により評価関数が最小になる等価回路の素子定数を演算し、この演算した素子定数を局所探索法の開始値として評価関数が極小値になる素子定数を演算して、さらにこれら演算を所定回数繰り返し行って素子定数を求める等価回路解析方法が記載されている。
しかしながら、どのような推定方法を用いたとしても、素子定数の推定結果に誤差が生じてしまう場合がある。そのため、推定結果に誤差があるか否かを測定者が判断可能なように、推定した素子定数で等価回路の理論的な周波数特性を演算し、得られた理論的な周波数特性のグラフを、DUTの測定結果のグラフと共に表示パネルに表示させることが考えられる。測定者は、両グラフを比較して、両グラフ間にほとんど差が無ければ推定された素子定数はDUTを正しく(よく近似して)表しており、一部でも大きな差があれば素子定数はDUTを正しく表していないと判断する。測定者は、両グラフ間に一部でも差がある場合、推定された素子定数の値を手動で適宜変更(調整)して、装置に等価回路の理論的な周波数特性のグラフを再度表示させ、測定結果のグラフと一致させるようにすることで、誤差の少ない素子定数を得ることができる。
しかしながら、DUTの等価回路は、各々1つ又は複数の抵抗、コンデンサ、コイルといった素子が組み合わされて構成されている。そのため、測定者は、何れの素子定数の値をどのように変更すればよいか判断することが難しいという問題がある。
特開2010−249749号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性から推定した等価回路の素子定数に誤差があったときに、この誤差を無くすためにいずれの素子定数をどのように変化させればよいかということを測定者が判断する必要が無く、簡便な操作で正確な素子定数を得ることができる等価回路解析装置及び等価回路解析方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された等価回路解析装置は、複数の電気素子を組み合わせた等価回路からなる測定対象物の、複素インピーダンスの絶対値の周波数特性、及び/又は位相の周波数特性を表示する画像の表示機能及び接触による操作の検出機能を備えたタッチパネルを有する等価回路解析装置であって、測定対象物の周波数特性を測定して、該タッチパネルにグラフで表示させる測定部と、該測定部の測定した該周波数特性に基づいて、等価回路の各電気素子の素子定数を推定する推定部と、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該タッチパネルにグラフで表示させると共にその各素子定数を表示させる理論特性演算部と、該タッチパネルに表示されている該等価回路のグラフの部位に接触してから、その接触位置を該タッチパネル上で移動させる移動操作に対応させて、該等価回路の該素子定数を変更する素子定数変更処理部とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記等価回路のグラフの部位に対応付けて、該部位を移動させるための前記素子定数の変更情報を予め記憶する移動情報記憶部を備え、前記素子定数変更処理部が、該移動情報記憶部から前記移動操作に対応させた該変更情報を読み込んで、前記素子定数を変更することを特徴とする。
請求項3に記載された等価回路解析装置は、請求項1又は2に記載されたもので、前記素子定数変更処理部が、前記移動操作で最後に停止した接触位置まで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする。
請求項4に記載された等価回路解析装置は、請求項1から3のいずれかに記載されたもので、前記素子定数変更処理部が、前記移動操作で接触が非検出となるまで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする。
請求項5に記載された等価回路解析装置は、請求項1から4のいずれかに記載されたもので、前記素子定数変更処理部が、所定の変更率ずつ素子定数を変更することを特徴とする。
請求項6に記載された等価回路解析方法は、複数の電気素子を組み合わせた等価回路からなる測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、画像の表示機能及び接触による操作の検出機能を有するタッチパネルにグラフで表示させる測定ステップと、該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、等価回路の各電気素子の素子定数を推定する推定ステップと、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該タッチパネルにグラフで表示させると共にその各素子定数を表示させる理論特性演算ステップと、該タッチパネルに表示されている該等価回路のグラフの部位に接触してから、その接触位置を該タッチパネル上で移動させる移動操作を検出する移動操作検出ステップと、該移動操作検出ステップで検出された該移動操作に対応させて、該等価回路の該素子定数を変更する素子定数変更処理ステップとを含むことを特徴とする。
請求項7に記載された等価回路解析方法は、請求項6に記載されたもので、前記等価回路のグラフの部位に対応付けて、該部位を移動させるための前記素子定数の変更情報を予め移動情報記憶部に記憶させておき、前記素子定数変更ステップで、該移動情報記憶部から前記移動操作に対応させた該変更情報を読み込んで、前記素子定数を変更することを特徴とする。
請求項8に記載された等価回路解析方法は、請求項6又は7に記載されたもので、前記素子定数変更ステップで、前記移動操作で最後に停止した接触位置まで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする。
請求項9に記載された等価回路解析方法は、請求項6から8のいずれかに記載されたもので、前記素子定数変更処理ステップで、前記移動操作で接触が非検出となるまで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする。
請求項10に記載された等価回路解析方法は、請求項6から9のいずれかに記載されたもので、前記素子定数変更処理ステップで、所定の変更率ずつ素子定数を変更することを特徴とする。
本発明の等価回路解析装置及び等価回路解析方法によれば、タッチパネルに表示されている等価回路のグラフの部位に接触してから、その接触位置をタッチパネル上で移動させる移動操作に対応させて、等価回路の素子定数を変更するため、素子定数に誤差があったときに、この誤差を無くすためにいずれの素子定数をどのように変化させればよいかということを測定者が判断する必要が無く、グラフを移動させるという直接的かつ簡便な操作で誤差の無い、正確な素子定数を得ることができる。
等価回路のグラフの部位に対応付けた素子定数の変更情報を予め移動情報記憶部に記憶させておき、この移動情報記憶部から移動操作に対応させた変更情報を読み込んで、この変更情報に基づき素子定数を変更する場合、簡便な処理で素子定数を変更することができる。
移動操作で最後に停止した接触位置まで等価回路のグラフの部位が移動するように、素子定数を変更する場合、測定対象物のグラフと等価回路のグラフとを一層簡便な操作で一致させることができ、正確な素子定数を一層簡便に得ることができる。
移動操作で接触が非検出となるまで等価回路のグラフの部位が移動するように、素子定数を変更する場合、測定者は、等価回路のグラフの部位の移動(変化)を確認しつつ、ちょうどよい位置に部位が移動したときに接触を止めることで、そのときの素子定数を得ることができる。
所定の変更率ずつ素子定数を変更する場合、演算処理を簡便に行うことができる。
本発明を適用する等価回路解析装置のブロック図である。 本発明を適用する等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。 本発明を適用する等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。 図3に示す等価回路のグラフの部位を移動させる移動操作の例を示す概要図である。 図3に示す等価回路のグラフの部位を移動させる移動操作の例を示す概要図である。 測定対象物の等価回路の例である。 図6に示す各等価回路のインピーダンス周波数特性及び位相周波数特性の例である。 等価回路aにおける素子定数の推定方法を説明するための実効抵抗の周波数特性データ(グラフ)である。 等価回路dにおける素子定数の推定方法を説明するためのコンダクタンスの周波数特性データ(グラフ)である。 移動情報記憶部に記憶されている参照テーブルの例である。 本発明を適用する等価回路解析装置に用いるタッチパネルの他の表示例を示す概要図である。 本発明を適用する他の等価回路解析方法を説明するためのフローチャートである。 等価回路bの位相周波数特性のグラフの移動操作の例を示す概要図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明を適用する等価回路解析装置1は、図1に機能的ブロックで示すように、測定部2、推定部3、理論特性演算部5、素子定数変更処理部6、移動情報記憶部7、及びタッチパネル10を備え、測定対象物(DUT)90の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、その周波数特性から等価回路の各素子定数を推定部3が推定することが可能になっている。なお、同図に示す推定部3、理論特性演算部5、及び素子定数変更処理部6等は、一例として、本装置1の動作を統括的に制御する1つ又は複数のCPU(不図示)がメモリ(不図示)に予め記憶されたソフトウエアに従って動作して演算処理することで実現されている。また、等価回路解析装置1は、後述する図2のフローチャートに対応するプログラムがメモリに予め記憶されていて、そのフローチャートに従って動作可能に構成されている。なお、測定部2として従来のインピーダンス測定装置を用い、その他の推定部3、理論特性演算部5、素子定数変更処理部6、及びタッチパネル10としてコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)を用い、両者を組み合わせて本発明の等価回路解析装置1としてもよい。
タッチパネル10は、画像を表示可能な液晶パネルやCRTなどの表示装置と、タッチパッドなどの位置入力装置を組み合わせたもので、画像の表示機能を有すると共に、指や専用ペン等が画面に触れたときに、その触れた画面上の位置情報を出力する、接触操作の検出機能を有するものである。タッチパネル10は、等価回路解析装置1の表示部及び操作部として用いられる。
等価回路解析装置1の具体的な動作について図1〜図10を参照して説明する。ここで、図2に示すフローチャートは、本発明を適用する等価回路解析方法を示し、これに沿って等価回路解析装置1の動作を説明する。
図2に示す測定ステップS1では、測定部2が、不図示の交流信号源からプローブ21a,21bを介して、周波数を開始周波数から終了周波数まで掃引させて測定用信号電圧を測定対象物(DUT)90に印加し、2端子法又は4端子法などの公知の測定方法で電圧と電流とを測定し、その電圧及び電流から、DUT90の複素インピーダンスの周波数特性を測定する。また、測定部2は、図3に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、測定部2の測定した複素インピーダンスの周波数特性のグラフ31を表示させる。複素インピーダンスの周波数特性として、測定部2は、一例として、複素インピーダンスの絶対値の周波数特性(インピーダンス周波数特性)、及び/又は位相の周波数特性(位相周波数特性)をグラフで表示させる。グラフ表示領域11に、インピーダンス周波数特性のグラフを表示させるか、位相周波数特性のグラフを表示させるか、又は両特性のグラフを表示させるかの切り替えは、測定者がタッチパネル10を操作することで、自由に切り換えることができる。同図の例では、グラフ31は位相周波数特性θを表している。なお、タッチパネル10にグラフ表示させる複素インピーダンスの周波数特性の表現方法は、コンダクタンス(G)−サセプタンス(B)特性、実効抵抗(Rs)−リアクタンス(X)特性、動アドミタンス円、又は動インピーダンス円などのように、公知の種々の表現方法で表現させることができる。
次に、推定ステップS2では、推定部3が、測定ステップS1で測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する。等価回路を構成する電気素子は、抵抗(素子定数R)、コンデンサ(素子定数C)、コイル(素子定数L)である。等価回路は、抵抗、コンデンサ、コイルのうちの少なくとも2つを接続して構成する。等価回路に用いる電気素子の数は、特に限定がなく、同種の電気素子が複数用いられていてもよい。推定部3は、推定した各素子定数を理論特性演算部5に出力する。
等価回路の例を、図6の等価回路a〜dに示す。主として、等価回路aはコイルや抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路bは損失が大きなコイルを測定する場合に用いられ、等価回路cは高抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路dはコンデンサを測定する場合に用いられる。図7に、等価回路a〜dのインピーダンス周波数特性Z及び位相周波数特性θの例を図示する。
このように複数の等価回路を予め設定しておき、測定者がタッチパネル10を操作して、1つの等価回路を選択できるようにすることが好ましい。推定部3は、等価回路a〜dの各素子定数の推定が可能になっている。測定者は、タッチパネル10を操作して、測定ステップS1又は推定ステップS2の前に、用いる等価回路を予め選択しておく。
推定部3が各素子定数を推定する例として、等価回路aが選択されている場合について説明する。等価回路aのときには、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素インピーダンスの実効抵抗(レジスタンス)Rsを算出し、その実効抵抗Rsから各素子定数を推定する。なお、複素インピーダンスを、実効抵抗Rs及びリアクタンスXで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図8のグラフ25に示す実効抵抗Rsの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ25(測定データ)の中の極大値Pを求める。この極大値Pのときの周波数が、並列共振周波数ωpである。次に、推定部3は、グラフ25が、極大値Pの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωp/(ω2−ω1
次に、推定部3は、等価回路aのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=Q/(ωp×P)
次に、推定部3は、等価回路aのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=(2×Q2)/(ωp2×C×(2×Q2−1))
次に、推定部3は、等価回路aの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=L/(C×P)
以上で、等価回路aの各素子定数の推定が終了する。
また、等価回路dのように直列共振回路の場合には、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素アドミタンス(複素インピーダンスの別の表現方法)のコンダクタンスGを算出し、そのコンダクタンスGから各素子定数を推定する。なお、複素アドミタンスを、コンダクタンスG及びサセプタンスBで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図9のグラフ26に示すコンダクタンスGの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ26(測定データ)の中の極大値Mを求める。この極大値Mのときの周波数が、直列共振周波数ωmである。次に、推定部3は、グラフ26が、極大値Mの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωm/(ω2−ω1
次に、推定部3は、等価回路dのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=Q/(ωm×M)
次に、推定部3は、等価回路dのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=(2×Q2)/(ωm2×L×(2×Q2−1))
次に、推定部3は、等価回路dの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=(L×M)/C
以上で、等価回路dの各素子定数の推定が終了する。
他の等価回路の場合であっても、並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωm、2つの象限周波数ω1,ω2、共振の鋭さQに基づいて、R,C,Lの各素子定数を推定することができる。なお、公知の他の推定方法で等価回路の各素子定数を推定してもよい。
推定部3は、推定した各素子定数を理論特性演算部5に出力する。
次に、理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、推定ステップS2で推定部3が推定した各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する。ここで、等価回路の理論的な複素インピーダンスとは、抵抗の複素インピーダンスがR、コンデンサの複素インピーダンスが1/(jωC)、コイルの複素インピーダンスがjωLであるので、これらを等価回路の接続に対応させて合成したものである。複素インピーダンスの合成については、周知な事項であるので説明は省略する。合成した複素インピーダンスの周波数を開始周波数から終了周波数まで可変させることで、理論特性演算部5は、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性(例えばインピーダンス周波数特性、位相周波数特性)を算出する。なお、計算にはアドミタンスを用いてもよいし、複素インピーダンスと位相から算出できる他のパラメータを用いてもよい。理論特性演算部5は、タッチパネル10に表示させるグラフに適した形式で演算を行う。
理論特性演算部5は、図3に示すように、算出した等価回路の周波数特性(位相周波数特性)のグラフ32をタッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。両グラフ31,32の差異が目視でよく判るように、測定した周波数特性のグラフ31を実線で表示させると共に等価回路の周波数特性のグラフ32を破線で表示させるように線種を変え、または両グラフ31,32を色分けして表示させるようにして、各々を識別可能に表示させることが好ましい。さらに両グラフ31,32は、縦軸及び横軸を合わせるように、同じ軸上に重ね合わせるように表示させることが好ましい。また、理論特性演算部5は、タッチパネル10の素子定数表示領域12に素子定数R,C,Lを表示させる。理論特性演算部5は、素子定数変更処理部6に各素子定数及びグラフ32のデータを出力する。
同図に示すように、DUT90の位相周波数特性のグラフ31、及び等価回路の位相周波数特性のグラフ32がタッチパネル10に表示されている場合、測定者は、目視により、両グラフ31,32の差の大きな領域を判別する。この例では、低周波領域(図の左端側)で両グラフ31,32の差が大きくなっている。なお、このような誤差は、例えばQ値が非常に高いDUT90の場合、インピーダンス特性が非常に鋭い山型又は谷型になるため、測定時の周波数分解能が比較的粗いと共振周波数の判定に誤差が生じてしまい、それにより発生することがある。
このように、両グラフ31,32に差がある場合、測定者は、タッチパネル10に表示されている等価回路のグラフ32の差の大きな部位40に接触してから、その接触位置をタッチパネル10上で移動させる移動操作を行う。具体的には、図4に示すように、測定者が、差の大きくなっているグラフ32の部位40に指50を接触させ、タッチパネル10に接触させたまま指50を滑らせるように、タッチパネル10の下側(図の下側)の方向に移動させる。測定者は、図5に示すように、指50を、DUT90のグラフ31まで移動させて停止する。つまり、測定者は、移動操作として、グラフ32の部位40に指50を接触させ、その指50をグラフ31まで移動させる。
このような移動操作を素子定数変更処理部6が検出すると(移動操作検出ステップS4)、次の変更停止ステップS5では、素子定数変更処理部6が、移動操作で指50が移動後に最後に停止した接触位置に部位40が移動しているか否かを検出する。この場合、部位40をまだ移動させていないので、素子定数変更処理ステップS6に進む。
素子定数変更処理ステップS6では、素子定数変更処理部6が、移動操作に対応させて、部位40を移動させるように等価回路の素子定数を変更する。具体的には、一例として、等価回路のグラフ32の部位40に対応付けて、部位40を移動させるための素子定数の変更情報を予め移動情報記憶部7(図1参照)に記憶させておき、素子定数変更処理部6が、移動情報記憶部7から移動操作に対応させた変更情報を読み込んで、素子定数を変更する。
ここで、図1に示す移動情報記憶部7は、例えば不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROMやフラッシュROM)で構成されており、図6の等価回路a〜dにおける複素インピーダンスの周波数特性のグラフの特定の部位を移動させるために、等価回路中のいずれの素子定数の大小を変化させたらよいかを示す変更情報を予め記憶している。ここで、「周波数特性のグラフの部位」は、例えば、並列又は直列共振周波数よりも低周波側、共振周波数よりも高周波側、共振周波数の所定範囲内(共振周波数付近)、共振周波数の1/2の周波数以下などのように、共振周波数に対する相対的な領域で規定したり、複雑な等価回路であれば、低周波側から3つ目の直列共振周波数、などのように共振周波数の順番や種類で規定したり、位相が90度以下、位相が90度以上のように数値(相対値や絶対値)で規定したりする。なお、周波数特性のグラフのうちの特定の部位を規定できればどのように規定してもよい。「グラフの部位を移動」とは、例えば、グラフの部位の値を大きく(小さく)させる、グラフの傾きを大きく(小さく)させる、周波数を高く(低く)させるなどのように、グラフ全体の中で、特定の部位付近の特徴を変更させることをいう。移動情報記憶部7には、例えば、図10に示すように、等価回路の種類(a〜d)、グラフの種類(例えば、インピーダンス周波数特性Zか、位相周波数特性θか)、グラフの部位、及び指50の移動方向に対応させた素子定数の変更情報を参照テーブル形式で記憶させておく。素子定数の変更情報として、同図に示すように、例えば、変更対象素子定数及び変更内容と、変更率とを記憶させておく。なお、同図には図示しないが、例えば実効抵抗Rs、リアクタンスX、コンダクタンスG、サセプタンスBのグラフのように、表示可能な他のグラフの種類があれば、他のグラフの種類に対応させて変更情報を記録させてもよい。
図3〜5に示す例では、グラフ32が等価回路a及び位相周波数特性θに対するものであり、指50の接触したグラフ32の部位40が「並列共振周波数ωpよりも低周波側」であり、指50の移動方向がθを小さくする方向(下方向)であることから、図10の参照テーブルの1番目(1番上)の欄の条件に相当する。素子定数変更処理部6がこの条件を判別して、参照テーブルの1番目の欄から、「素子定数Rを大きな値に変更する」及び「変更率は1%」という内容の変更情報を読み込む。これにより、素子定数変更処理部6は、推定部3によって推定された素子定数Rを、変更率(1%)だけ大きく変更する。なお、変更率は、グラフ32の部位40を微調整できる程度の小さな値に設定されている。
素子定数変更処理部6は、変更した素子定数Rを含む各素子定数を理論特性演算部5に出力して、理論特性演算ステップS3に戻る。
続いて、理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、変更後の素子定数で等価回路の周波数特性を算出し、変更後の周波数特性のグラフ32をタッチパネル10に表示させると共に、変更後の素子定数を表示させる。変更前よりも変更後のグラフ32の方が、グラフ31に近づいた形になる。
続いて、変更停止ステップS5では、素子定数変更処理部6が、移動操作で指50の最後に停止した接触位置に部位40があるか否かを検出する。最後に停止した接触位置は、素子定数変更処理部6がメモリ(不図示)に記憶させておくことで、指50はタッチパネル10から離してしまってもよいし、接触させたままであってもよい。停止条件としては、例えば同じ位置に0.5秒のように所定時間、指50が停止していることを検出したときに、素子定数変更処理部6が、その接触位置を停止位置として記録する。なお、停止後に接触位置が再度動き始めたことを検出したときは、素子定数変更処理部6が、停止位置をクリアして、その後に停止した位置を停止位置とする。
指50の停止位置まで部位40が移動していない場合、ステップS3、S5,S6のループを繰り返し処理する。このループ処理を行うたびに、素子定数Rは、元の素子定数Rよりも1%ずつ大きく変更され、部位40がグラフ31に徐々に近づいていき、最終的に図5に示すようにほぼ一致する。演算速度が速ければ、移動操作を行って動かしている最中の指50に追随するように部位40が移動する。処理が遅ければ、移動操作で指50を停止させた位置に次第に部位40が近づいていく。いずれの処理速度であっても、指50を最後に停止させた接触位置、すなわちDUT90のグラフ32の位置まで部位40が移動して、図2の処理が終了する。
このように、差の大きなグラフ32の部位40を、グラフ31に近づけるように指50を動かすという直接的かつ簡便な操作を行うだけで、自動的に部位40がグラフ31にほぼ一致して、誤差のない正確な素子定数を得ることができる。図10に示す他の例であっても、グラフの部位に対して移動操作することで、素子定数を変更することができる。
なお、図10に示すように、等価回路aの位相周波数特性θでは、グラフの部位として「並列共振周波数ωpよりも低周波側」だけが参照テーブルに登録されていて、他の部位の登録がないが、これは素子定数の推定で誤差が生じて変更修正が必要なのは、登録された「並列共振周波数ωpよりも低周波側」の場合が殆どであるためである。このように、素子定数の推定により誤差が発生してグラフの部位を移動させる必要が生じる可能性のある部位だけを参照テーブルに登録してもよいし、グラフのいずれの部位に接触したとしても、その部位に対応する移動情報が参照テーブルに有るように、グラフの各部位に対する移動情報を漏れなく網羅的に参照テーブルに登録してもよい。また、図11に示すように、素子定数表示領域12に、素子定数Rの値を増減するため操作ボタン14a、素子定数Cの値を増減するため操作ボタン14b、素子定数Lの値を増減するため操作ボタン14cをタッチパネル10に表示させて、これら操作ボタン14a〜14cによる素子定数の変更操作と、指50で部位40を移動操作することによる素子定数の変更操作との両方が行えるようにしてもよい。
さらに、図12のフローチャートに示すように処理してもよい。同図のフローチャートは、図2のフローチャートの変更停止ステップS5を、他の変更停止ステップS9に換えたものである。ステップS1〜S4,S6は同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図12の変更停止ステップS9では、移動操作を行った指50がそのままタッチパネル10に接触しているか、離れたかを検出する。指50がタッチパネル10に接触しているままの状態であるときは、ステップS3、S9、S6のループを繰り返し処理する。指50がタッチパネル10から離れて接触が非検出となったときには、このループ処理を終了する。このように処理すると、例えば、図5で、指50をグラフ32からグラフ31よりも下側に移動させる移動操作をして、そのまま指50をタッチパネル10に接触させていると、ループ処理により素子定数が変更率ずつ変更されていき、グラフ32の部位40が次第に下側に移動していく。部位40がちょうどグラフ31に重なった(一致した)ときに指50をタッチパネル10から離すと、部位40の移動が停止して、正確な素子定数が得られる。
グラフ32の部位40がグラフ31を通りすぎて移動してしまったときには、指50をタッチパネル10から一旦離し、再度部位40に接触してから、タッチパネル10の上方向に指50を移動させる。この移動操作を検出すると、素子定数変更処理部6が、移動情報記憶部7から、図10の参照テーブルの2番目の欄の変更情報を読み込んで、素子定数Rを1%ずつ小さく変更する。これにより、部位40が上方向に移動していき、グラフ31と重なったときに、測定者は指50をタッチパネル10から離せばよい。
なお、図2と図12のフローチャートを組み合わせて、指50がタッチパネル10に接触しているときには、素子定数変更処理ステップS6、及び理論特性演算ステップS3を含むループ処理を行い、指50の最後の停止位置に部位40が移動したとき、及び指50がタッチパネル10から離れたときに、このループ処理を停止するようにしてもよい。
また、変更停止ステップS5,S9を満たすまで素子定数変更処理ステップS6、及び理論特性演算ステップS3を含むループ処理を行い、指50の停止位置まで、及び/又は指50を離すまで、繰り返し素子定数を変更させて部位40を連続的に移動させる例について説明したが、このような変更停止ステップS5を含むループ処理を行わずに、移動操作を1回行うたびに素子定数を1回だけ変更するようにしてもよい。例えば、指50を部位40に接触させてから下方向に移動させると、素子定数変更処理ステップS6を1回だけ行って素子定数Rを1回変更してそのグラフ32及び素子定数を表示させ、さらに指50を部位40に接触させてから移動させると、再度、素子定数変更処理ステップS6を1回だけ行って素子定数Rを1回変更してそのグラフ32及び素子定数を表示させる。この場合、部位40がグラフ31に一致するまで、何度も部位40に触ってから下方向に移動させる移動操作を行う必要がある。
また、変更率が固定値である例について説明したが、部位40と指50との距離に基づき、変更率を可変させてもよい。例えば、部位40と指50との距離が第一の閾値(例えば100画素などの所定の画素数)よりも離れている場合には、予め設定された変更率(例えば1%)を複数倍(例えば2倍の2%)とし、部位40と指50との距離が第二の閾値(例えば20画素などの所定画素数)よりも近い場合には変更率を複数分の1(例えば1/2の0.5%)とするように可変させる。このように変更率を可変させることで、迅速かつ正確に部位40を指50の接触位置に移動させることができる。
また、素子定数を変更率で変更させる例を説明したが、例えば素子定数Rを0.1Ωずつ変更させるというように、素子定数に加算又は減算させる所定の変更値を予め設定しておき、この所定の変更値で素子定数を変更させるようにしてもよい。
また、図13に、例えば等価回路bにおける位相周波数特性θのグラフ35の傾きを大きくして、測定対象物の位相周波数特性θのグラフ34に一致させる例を示す。多点(2点)検出型のタッチパネル10を用いているときには、共振周波数ωp付近で、共振周波数ωpを挟んだグラフ35の部位41a,41bに指50a,指50bを接触させて、指50aを上方向、指50bを下方向に互いが遠ざかる方向に動かすように、2点で移動操作をしてもよい。この場合、図10に示す参照テーブルの「素子条件の変更情報」の上から6欄目に相当し、素子定数変更処理ステップS6で、素子定数変更処理部6が、素子定数Rの値を1%大きく変更する。
同図で、タッチパネル10が1点検出型である場合、例えば部位41aだけ(または部位41bだけ)をグラフ34に近づけるように上方向(または下方向)に移動操作することで、部位41a,41bをグラフ35に近づけるように、傾きを変更させてもよい。また、グラフ35からグラフ34に指50a等を近づけるのではなく、グラフ35の共振周波数ωpの部位42を指50aで触って、そのまま上方向に移動させるとグラフ35の共振周波数ωp付近の傾きを大きく変更させ、下方向に移動させると傾きを小さく変更させるというように、指50の移動方向に対応づけて部位の移動方向(変更態様)を定めてもよい。
1は等価回路解析装置、2は測定部、3は推定部、5は理論特性演算部、6は素子定数変更処理部、7は移動情報記憶部、10はタッチパネル、11はグラフ表示領域、12は素子定数表示領域、14a・14b・14cは増減ボタン(設定操作用ボタン)、21a・21bはプローブ、25は実効抵抗Rsの周波数特性のグラフ(データ)、26はコンダクタンスGの周波数特性のグラフ(データ)、31は測定部2の測定した複素インピーダンス(位相周波数特性)のグラフ、32は等価回路aの理論的な複素インピーダンス(位相周波数特性)のグラフ、34は測定部2の測定した複素インピーダンス(位相周波数特性)のグラフ、35は等価回路bの理論的な複素インピーダンス(位相周波数特性)のグラフ、40・41a.41b・42は部位、50・50a・50bは測定者の指、90は測定対象物、a・b・c・dは等価回路、Cはコンデンサの素子定数、Lはコイルの素子定数、Rは抵抗の素子定数、Rsは実効抵抗、Gはコンダクタンス、P・Mは極大値、Zはインピーダンス周波数特性、θは位相周波数特性、ω1,ω2は象限周波数、ωpは並列共振周波数、ωmは直列共振周波数である。

Claims (10)

  1. 複数の電気素子を組み合わせた等価回路からなる測定対象物の、複素インピーダンスの絶対値の周波数特性、及び/又は位相の周波数特性を表示する画像の表示機能及び接触による操作の検出機能を備えたタッチパネルを有する等価回路解析装置であって、
    測定対象物の周波数特性を測定して、該タッチパネルにグラフで表示させる測定部と、
    該測定部の測定した該周波数特性に基づいて、等価回路の各電気素子の素子定数を推定する推定部と、
    該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該タッチパネルにグラフで表示させると共にその各素子定数を表示させる理論特性演算部と、
    該タッチパネルに表示されている該等価回路のグラフの部位に接触してから、その接触位置を該タッチパネル上で移動させる移動操作に対応させて、該等価回路の該素子定数を変更する素子定数変更処理部とを
    備えることを特徴とする等価回路解析装置。
  2. 前記等価回路のグラフの部位に対応付けて、該部位を移動させるための前記素子定数の変更情報を予め記憶する移動情報記憶部を備え、
    前記素子定数変更処理部が、該移動情報記憶部から前記移動操作に対応させた該変更情報を読み込んで、前記素子定数を変更することを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
  3. 前記素子定数変更処理部が、前記移動操作で最後に停止した接触位置まで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の等価回路解析装置。
  4. 前記素子定数変更処理部が、前記移動操作で接触が非検出となるまで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の等価回路解析装置。
  5. 前記素子定数変更処理部が、所定の変更率ずつ素子定数を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の等価回路解析装置。
  6. 複数の電気素子を組み合わせた等価回路からなる測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、画像の表示機能及び接触による操作の検出機能を有するタッチパネルにグラフで表示させる測定ステップと、
    該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、等価回路の各電気素子の素子定数を推定する推定ステップと、
    該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該タッチパネルにグラフで表示させると共にその各素子定数を表示させる理論特性演算ステップと、
    該タッチパネルに表示されている該等価回路のグラフの部位に接触してから、その接触位置を該タッチパネル上で移動させる移動操作を検出する移動操作検出ステップと、
    該移動操作検出ステップで検出された該移動操作に対応させて、該等価回路の該素子定数を変更する素子定数変更処理ステップとを含むことを特徴とする等価回路解析方法。
  7. 前記等価回路のグラフの部位に対応付けて、該部位を移動させるための前記素子定数の変更情報を予め移動情報記憶部に記憶させておき、
    前記素子定数変更ステップで、該移動情報記憶部から前記移動操作に対応させた該変更情報を読み込んで、前記素子定数を変更することを特徴とする請求項6に記載の等価回路解析方法。
  8. 前記素子定数変更ステップで、前記移動操作で最後に停止した接触位置まで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする請求項6又は7に記載の等価回路解析方法。
  9. 前記素子定数変更処理ステップで、前記移動操作で接触が非検出となるまで前記部位が移動するように、前記素子定数を変更することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の等価回路解析方法。
  10. 前記素子定数変更処理ステップで、所定の変更率ずつ素子定数を変更することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の等価回路解析方法。
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