本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
<第1実施形態>
本実施形態では、後述する測定装置を用いて、インピーダンス測定を行い、その測定結果に基づいて、コンデンサの静電容量の変化を検出し、配管の歪を算出する態様について説明する。
はじめに、本実施形態でコンデンサの静電容量の測定値を算出する際に用いる、並列等価回路モデルについて説明する。
上記のとおり、コンデンサは、コンデンサの誘電体や電極などの損失による寄生抵抗、リード線による寄生抵抗、寄生インダクタンス等の寄生成分を有しており、コンデンサの等価回路モデルは、一般的に、等価並列抵抗Rp、等価直列抵抗ESR、及び等価直列インダクタンスESLを有する図1Bに示す等価回路モデルで表される。
したがって、正確なコンデンサの静電容量Cは、インピーダンス測定の測定結果からこれらの寄生成分を区別した値である。しかしながら、コンデンサの静電容量Cと、等価並列抵抗Rp、等価直列抵抗ESR、及び等価直列インダクタンスESLを正確に区別することは困難である。
一方、1nF以下の静電容量の小さなコンデンサは、等価並列抵抗Rpの影響が、等価直列抵抗ESR(リード抵抗等)、及び等価直列インダクタンスESLの影響よりもかなり大きいため、等価直列抵抗ESR、及び等価直列インダクタンスESLを無視することができる。
そこで、本実施形態では、図1Aに示す等価並列抵抗Rpとコンデンサの静電容量Cのみからなる並列等価回路モデルを用いている。
===測定装置のハードウェア構成について===
図2に、測定装置1の内部構成の一例を示す。
測定装置1は、制御部100、記憶部200、表示部300、インピーダンス測定部400、入力部500を有している。
制御部100は、CPUであり、バス600を介して、記憶部200、表示部300、インピーダンス測定部400、入力部500と接続されている。そして、制御部100は、記憶部200に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、記憶部200、表示部300、インピーダンス測定部400、入力部500とデータ通信を行うとともに、それらの動作を制御する。
尚、詳細は後述するが、制御部100は、コンピュータプログラムに基づいて、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’とコンデンサの静電容量の基準値C0とに基づいて、損失係数D値と測定周波数に関するデータを算出する第1算出部と、インピーダンス測定部400により測定されたコンデンサのインピーダンスの測定結果に対して、並列等価回路モデルを適用してコンデンサの静電容量の測定値を算出する第2算出部と、第2算出部により算出されたコンデンサの静電容量の測定値から、被測定物の歪を算出する第3算出部の機能を有している。
記憶部200は、揮発性メモリー(例えば、RAM)、不揮発性メモリー(例えば、フラッシュメモリー、磁気ディスク)からなる。そして、記憶部200には、測定装置1を制御するためのコンピュータプログラム、測定条件に対応したインピーダンス測定部400の制御データが記憶されている。また、記憶部200には、後述するコンデンサのインピーダンス測定の測定結果から被測定物の歪を算出する算出モデルが記憶されている。
表示部300は、例えば、各種の情報を表示する液晶ディスプレイであり、後述する被測定物の歪を表示する。
インピーダンス測定部400は、例えば、発振器410、電流電圧変換部420、ベクトル比検出部430からなり、自動平衡ブリッジ法に基づいて、コンデンサのインピーダンス測定を行う。
入力部500は、例えば、スイッチ、タッチパネルであり、測定装置100の使用者の操作指示を受付ける。使用者は、入力部500を介して、測定装置100に対して、例えば、インピーダンス測定における測定条件や、後述するシミュレーションに用いるコンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’、コンデンサの静電容量の基準値C0を入力することができる。
===インピーダンス測定部の構成について===
本実施形態のインピーダンス測定部400は、自動平衡ブリッジ法によりインピーダンス測定を行う。
図3に、本実施形態のインピーダンス測定部400の構成の一例を示す。
インピーダンス測定部400は、発振器410、電流電圧変換部420、ベクトル比検出部430を備え、インピーダンス測定部400に接続されたコンデンサMのインピーダンスの測定を行う。
本実施形態では、コンデンサMは、静電容量が小さいコンデンサであり、上記のとおり1nF以下のものを測定対象としている。そして、コンデンサM(「DUT」と表示)は、4つの端子(Lc端子、Lp端子、Hc端子、Hp端子)を介して、インピーダンス測定部400と接続されている。
発振器410は、周波数シンセサイザから構成され、コンデンサMに印加する交流電圧を発生する。尚、本実施形態では、交流電圧は、後述するシミュレーションにより算出された適切な測定周波数の範囲内で決定された測定周波数の正弦波信号である。
電流電圧変換部420は、基準抵抗器421、零位検出器422から構成され、コンデンサMに流れる電流を電圧信号に変換して、ベクトル比検出部430に出力する。具体的には、電流電圧変換部420の零位検出器422は、零位検出器422の−側入力端に流れ込む電流を零とするように、基準抵抗器421に流れる電流とコンデンサMに流れる電流とを平衡させている。これによって、コンデンサMに流れる電流を基準抵抗器421に流し、電流を電圧信号に変換している。
ベクトル比検出部430は、コンデンサMに印加される電圧V1、及び電流電圧変換部420により電圧変換された電圧V2をそれぞれ測定し、コンデンサMのインピーダンスを算出する。具体的には、ベクトル比検出部430は、ベクトル電圧計431からなる。ベクトル比検出部430は、コンデンサMに印加される電圧V1のベクトルの大きさを測定するとともに、基準抵抗器421に印加される電圧V2のベクトルの大きさを測定し、電圧V1、電圧V2のベクトルの大きさの比、及び抵抗Rから、式1により、コンデンサMのインピーダンスZを算出する。
そして、ベクトル比検出部430は、電圧V1(発振器410の参照信号)と電圧V2(電流電圧変換部420から出力される信号)の位相差から、コンデンサMのインピーダンスZの抵抗成分及びリアクタンス成分を算出する。
一方、本実施形態では、コンデンサMは、並列等価回路モデルを適用したコンデンサであるから、インピーダンスは、コンデンサMの静電容量Cと、等価並列抵抗Rpにより式2により表すことができる。
(Zはインピーダンス(Ω)、Cは静電容量(F)、Rpは等価並列抵抗(Ω)、ωは角周波数(rad/s)を表す)
これより、本実施形態の測定装置1は、インピーダンス測定の測定結果から、式1、式2に基づいて、コンデンサMの静電容量の測定値を算出する。
本実施形態の測定装置1は、以上の構成により、コンデンサMの静電容量の測定値を算出している。
===測定フローについて===
次に、本実施形態の測定装置1を用いてコンデンサMの静電容量を測定する(変化を検出する)際の測定フローについて説明する。
図4に、本実施形態における測定フローを示す。
S1は、コンデンサMの静電容量の基準値C0と、電極間の絶縁抵抗Rp’に基づく並列等価回路モデルを用いたシミュレーションにより、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータを算出する工程である。
コンデンサの静電容量を正確に測定するためには、上記のとおり、寄生成分(抵抗成分)による影響が小さくなるように測定周波数を決定する必要がある。そこで、本実施形態では、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータをシミュレーションにより算出することで、適切な測定周波数の範囲を算出している。
尚、損失係数D値は、図5、及び式3に示すように、インピーダンスのリアクタンス成分に対する抵抗成分の比で表され、D値が小さいほど寄生成分の影響なく、正確な静電容量が測定できていることを理解できる。
ここで、1nF以下の静電容量の小さなコンデンサにおいては、等価並列抵抗Rpは、コンデンサの電極間の絶縁抵抗とみなすことができる。そのため、等価並列抵抗Rpとして、コンデンサMの設計値より予測される電極間の絶縁抵抗Rp’を用いることができる。また、コンデンサMの静電容量Cについても、コンデンサMの設計値より予測される基準値C
0を用いることができる。
そして、並列等価回路モデルにおいては、コンデンサのインピーダンスZは、式2のとおり表せる。
したがって、本工程では、測定装置1の使用者が入力部500に入力した、コンデンサMの静電容量の基準値C0と、電極間の絶縁抵抗Rp’とを用いて、次の式4により、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータをシミュレーションにより算出している。
図6に、シミュレーションにより算出した測定周波数fと損失係数D値の関係を示すグラフの一例を示す。図6に示すデータは、静電容量の基準値C
0が1.5pF、電極間の絶縁抵抗Rp’が100MΩのコンデンサの損失係数D値を、所定の測定周波数fごとに、式4を用いて算出したデータとなっている。
尚、本実施形態で用いているコンデンサMの設計値より予測される、静電容量の基準値C0、電極間の絶縁抵抗Rp’とは、コンデンサMの設計値(誘電体の電気抵抗率、電極間距離、電極が対向する部分の表面積、誘電体の比誘電率)より、式5、式6に基づいて、予測される値である。
(ρは電極間に挟まれる誘電体の電気抵抗率(Ω・m)、dは電極間距離(m)、Sはコンデンサの電極が対向する部分の表面積(m
2)を表す)
(C
0は静電容量(F)、ε
rは電極間に挟まれる誘電体の比誘電率、ε
0は真空の誘電率(F/m)、dは電極間距離(m)、Sは電極が対向する部分の表面積(m
2)を表す)
尚、コンデンサの静電容量の基準値C
0は、上記のコンデンサの設計値(電極間の膜厚、電極が対向する部分の表面積、誘電体材料の比誘電率)より予測される値のほか、コンデンサの使用開始時の静電容量の測定値や、前回測定したときの静電容量の測定値を用いることができる。
また、本工程は、適切な測定周波数fの範囲を算出することができれば、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータを算出する代わりに、損失係数D値に対応するその他の値を算出してもよい。例えば、リアクタンス成分に対する抵抗成分の比に代えて、抵抗成分に対するリアクタンス成分の比を算出してもよい。
また、本工程は、損失係数D値が0.1となるときの測定周波数fを算出するものでもよい。
S2は、S1で算出した測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータに基づいて、測定周波数fdを決定する工程である。
本実施形態では、損失係数D値の基準値として0.1以下となる測定周波数を用いた場合、寄生成分(抵抗成分)による影響が小さいと判断している。これより、本工程では、シミュレーション結果に基づいて、損失係数D値が0.1以下となる測定周波数を適切な測定周波数の範囲として判断している。尚、図6の例では、10kHz以上の測定周波数が適切である。
このとき、シミュレーションにより算出した損失係数D値は、測定周波数を大きくするほど小さな値として算出されることになるが、現実には、測定周波数を大きくしすぎると寄生インダクタンスの影響が大きくなり、静電容量の正確な測定を行うことができなくなる、すなわち損失係数D値の実測値も大きくなる。
そこで、本実施形態では、損失係数D値が、0.1となる測定周波数を下限として、0.001となる測定周波数を上限とする範囲内で、測定周波数fdを適宜決定する。ここで、損失係数D値が0.1以下となる測定周波数を下限としているのは、上記のとおり、インピーダンス測定時の等価並列抵抗の寄生成分の影響が大きくなるためである。そして、損失係数D値が略0.001となる測定周波数を上限としているのは、当該周波数を超えると、静電容量が小さなコンデンサでも寄生インダクタンスの影響が大きくなる傾向があるためである。
尚、1nF以下の静電容量の小さいコンデンサの場合、損失係数D値が略0.05となる測定周波数以上、かつ損失係数D値が略0.001となる測定周波数以下が最も寄生インダクタンスの影響がうけにくい傾向があるため、当該測定周波数の範囲を、最適な範囲としてもよい。
S3は、S2で決定した測定周波数fdを用いて、インピーダンス測定部400により、インピーダンスを測定する工程である。
本工程は、具体的には、発振器410の測定周波数をS2で決定した測定周波数fdに設定して、インピーダンス測定部400により、インピーンダンス測定を行う。そして、インピーンダンス測定の測定結果として、インピーダンス、及び電圧V1(発振器410の参照信号)と電圧V2(電流電圧変換部420から出力される信号)の位相差が計測される。
S4は、S3のインピーダンス測定の測定結果に基づいて、式1、式2により、コンデンサの静電容量の測定値を算出する工程である。
上記のとおり、コンデンサMは、並列等価回路モデルを適用したコンデンサであるから、インピーダンスは、コンデンサの静電容量Cと、等価並列抵抗Rpからなる式2により表すことができる。したがって、S3のインピーダンス測定の測定結果であるインピーダンス、及び電圧V1(発振器410の参照信号)と電圧V2(電流電圧変換部420から出力される信号)の位相差に基づいて、式1、式2により、コンデンサMの静電容量の測定値を算出することができる。
S5は、S4で算出したコンデンサMの静電容量の測定値に基づいて、被測定物の歪を算出する工程である。
本工程は、具体的には、コンデンサMの静電容量の測定値に基づいて、コンデンサMの電極間距離の変化量又は対向する面積の変化量を算出し、歪を算出する工程である。尚、歪の算出方法の一例は、後述する。
そして、測定装置1は、本工程で算出された歪を表示部300に表示させる。このときの表示態様は、例えば、測定日と歪を対応させて、テキストデータとして表示する。
===被測定物の構成について===
次に、本実施形態における被測定物の構成を説明する。
図7A、図7Bに、被測定物の構成の一例を示す。
尚、図7Aは、被測定物の斜視図、図7Bは、被測定物の断面図(後述する第1装置M800と第2装置M200の中心を通るXZ平面の切断面)を示している。
本実施形態の被測定物は、配管Pと、配管Pの表面に設置された第1装置M800と第2装置M200からなる。そして、第1装置M800と第2装置M200は、第1装置M800が有する筒状電極M72と第2装置M200が有する棒状電極M32を電極とし、筒状電極M72と棒状電極M32の間の大気を誘電体とするコンデンサMを形成している。
配管Pは、火力発電所に設けられた、ボイラ、タービン等に用いられる配管であり、高温環境下に晒され、歪が発生しやすい状態となっている。そして、配管PがX方向にひずんだ際、配管Pの表面に設置(固定)した第1装置M800(筒状電極M72)と第2装置M200(棒状電極M32)の距離が変化し、コンデンサMの静電容量が変化するため、当該静電容量の変化を検出することで、歪の測定を行っている。ここで、図7A、図7Bにおいては、Z軸は、第1装置M800及び第2装置M200が設置された高さ方向(垂直方向)に沿う軸であり、X軸は、配管Pの長手方向に沿う軸であり、Y軸は、X軸及びZ軸に対して直交する軸を示すものである。尚、以下の説明では、それぞれ単に「X方向」、「Y方向」、「Z方向」と表し、矢印の示す方向を+方向、矢印と逆の方向を−方向を表す。
以下に、第1装置M800、第2装置M200の具体的構成について説明する。
=第1装置=
第1装置M800は、第1取付装置M8、第1電極体M7から構成される。
第1取付装置M8は、第1電極体M7を配管Pに対して取り付けるための装置であり、底面(−Z)の四隅に配置された脚M85を介して配管Pに固定されている。
具体的には、第1取付装置M8は、X方向に円柱形状の穴を有する第1金属部材M81と、第1金属部材M81の円柱形状の穴の内周面に固定された第1絶縁部材M82、M83から構成される箱体であり、第1絶縁部材M82、M83の内周側に、第1電極体M7を挿入して配置する構成となっている。
第1金属部材M81は、−Y方向側の側面(長手方向に沿う側面)にX方向に伸びたスリットM8Bを有している。また、第1金属部材M81は、上面のスリットM8Bが設けられている側において、上面からスリットM8B部分を介在して底面付近まで−Z方向に伸びた螺子孔を有している(図示せず)。そして、螺子孔に螺子を挿入して、スリットM8BのZ方向の幅を調整し、第1金属部材M81を変形させて、第1電極体M7を第1取付装置M8に対して固定させることが可能となっている。
また、第1絶縁部材M82、M83は、配管Pに対して第1電極体M7を電気的に絶縁するための例えばセラミックス等の絶縁部材である。そして、第1絶縁部材M82は第1金属部材M81の円柱形状の穴の内周面の上側に沿うように、第1絶縁部材M83は第1金属部材M81の円柱形状の穴の内周面の下側に沿うように、一対となって第1金属部材M81の内周面に固定されている。
また、第1電極体M7は、上記のとおり第1絶縁部材M82、M83の内周側(円柱形状の穴の内周側)に配置され、第1取付装置M8の外側から内側に向かって、第1ケースM71、第1支持部材M73、筒状電極M72が配置されて構成されている。すなわち、内部の筒状電極M72の外周面と、第1絶縁部材M82、M83の内周面との間に、第1ケースM71、第1支持部材M73を介在させる構造となっている。
第1ケースM71は、絶縁性の第1支持部材M73と、筒状電極M72を収容する、内部に中空構造を呈する金属製の筐体である。第1ケースM71は、+X側の側面(第2装置と対向する側面と反対側の側面)に、側面を貫通する第1開口M74を有している。そして、第1同軸ケーブルLの一端が第1開口M74から挿入され、筒状電極M72の+X側(第2装置と対向する端部と反対側)の端部と接続されている。また、第1ケースM71は、−X側の側面(第2装置に対向する側の側面)に、側面を貫通する棒状電極M32の径よりも大きい径の第2開口M75を有している。そして、第2開口M75には、筒状電極M72の内部に至るまで、棒状電極M32の一端が挿入され、棒状電極M32がX軸に沿って進退自在となっている。
第1支持部材M73は、絶縁性の部材からなり、第1ケースM71に対して筒状電極M72が接触しないように、第1ケースM71の内部において筒状電極M72を支持している。尚、第1支持部材M73も第1ケースM71と+X側の側面(第2装置と対向する側面と反対側の側面)に、側面を貫通する開口(図示せず)を有し、第1同軸ケーブルLの一端が挿入されている。
そして、筒状電極M72は、棒状電極M32と共にコンデンサを形成するための金属製の部材である。筒状電極M72は、配管PのX方向に沿って延在し、−X方向(第2装置に対向する側)に開口を有する中空構造を呈する筒状の形状となっている。そして、筒状電極M72の−X方向の開口から棒状電極M32が挿入され、筒状電極M72と棒状電極M32が対向する部分において、大気を誘電体とするコンデンサMを形成している。すなわち、コンデンサMは、配管Pの表面上に固定された第1装置M800と、第1装置M800と対向する位置に、第1電極M800と独立して移動し得るように配管Pの表面上に固定された第2電極M200とにより形成されている。
=第2装置=
第2装置M200は、第2取付装置M2、第2電極体M3から構成される。
第2取付装置M2は、第2電極体M3を配管Pに対して取り付けるための装置であり、底面(−Z)の四隅に配置された脚M25を介して配管Pに固定されている。
尚、第2取付装置M2は、第1取付装置M8と同様の構成となっている。
具体的には、第2取付装置M2は、X方向に円柱形状の穴を有する第2金属部材M21と、第2金属部材M21の円柱形状の穴の内周面に固定された第2絶縁部材M22、M23から構成される箱体であり、第2絶縁部材M22、M23の内周側に、第2電極体M3を挿入して配置する構成となっている。
また、第2電極体M3は、第2絶縁部材M22、M23の内周側(円柱形状の穴の内周側)に配置され、第2取付装置M2の外側から内側に向かって第2ケースM31、第2支持部材M33、棒状電極M32が配置されて構成されている。すなわち、内部の棒状電極M32の外周面と第2絶縁部材M22、M23の内周面との間に、第2ケースM31、第2支持部材M33を介在させる構造となっている。
第2ケースM31は、絶縁性の第2支持部材M33、棒状電極M32の一部を収容する、内部に中空構造を呈する金属製の筐体である。そして、第2ケースM31は、−X側の側面(第1装置と対向する側面と反対側の側面)に、側面を貫通する第1開口M34を有している。そして、第2同軸ケーブルHの一端が、第1開口M34から挿入され、棒状電極M32の−X側(第1装置と対向する端部と反対側)の端部と接続されている。また、第2ケースM31は、+X側の側面(第1装置と対向の側面)に、側面を貫通する第2開口M35を有している。
第2支持部材M33は、絶縁性の部材からなり、第2ケースM31に対して棒状電極M32が接触しないように、第2ケースM31の内部において棒状電極M32を支持している。尚、第2支持部材M33も第2ケースM31と−X側の側面(第1装置と対向する側面と反対側の側面)に、側面を貫通する開口(図示せず)を有し、第2同軸ケーブルHの一端が挿入されている。
そして、棒状電極M32は、上記のとおり、筒状電極M72と共にコンデンサMを形成するための金属製の円柱形状を呈する部材であり、第2装置M200から第1装置M800側に向かって、配管PのX方向に沿って第2開口M35から突出する構造となっている。
尚、第1同軸ケーブルLは、例えば、T型BNCコネクタを介してインピーダンス測定部400の端子Lc、Lpに接続され(図示せず)、第2同軸ケーブルHは、例えば、T型BNCコネクタを介してインピーダンス測定部400の端子Hc、Hpに接続されている(図示せず)。そして、測定装置1は、これらを介して、コンデンサのインピーダンス測定を行うことが可能となっている。尚、第1同軸ケーブルL及び第2同軸ケーブルHは、それぞれ同軸ケーブルの外皮部分を第1ケースM71及び第2ケースM31に接続されている。また、第1ケースM71と第2ケースM31は、図示しない導電ケーブルで電気的に接続されており、測定装置1がコンデンサの静電容量を測定するときに、第2ケースM31、導電ケーブル、第1ケースM71に自動平衡ブリッジからのガード電流を流し、測定時のノイズを低減することができる構成となっている。
本実施形態のコンデンサMは、以上のように、棒状電極M32と筒状電極M72とが対向する領域で、大気を誘電体として形成されている。
そして、コンデンサMの静電容量の値は、X方向における第1装置M800と第2装置M200との間の距離D1に応じて定められることになる。従って、コンデンサMの静電容量の測定値の変動に基づいて、距離D1の変動を求めることが可能となる。
すなわち、本実施形態では、コンデンサMの静電容量の測定値に基づいて、式7に示すように棒状電極M32の外周面と、筒状電極M72の内周面とで対向する面積Sの変化を算出することができる。
(Cは静電容量(F)、ε
rは電極間に挟まれる誘電体の比誘電率、ε
0は真空の誘電率(F/m)、dは電極間距離(m)、Sは電極が対向する部分の表面積(m
2)を表す。また、C及びSの末尾の1、2は、今回の測定値と前回と測定値を表す)
そして、本実施形態では、筒状電極M72、棒状電極M32で形成されるX方向の切断面は、X方向の位置によらず同一となっており、筒状電極M72の外周面と、棒状電極M32の内周面とで対向する面積Sの変化量から、配管Pの表面のX方向の歪を算出している。
本実施形態では、以上のように、配管Pの歪による物理量の変化を、コンデンサの静電容量の変化として検出している。
以上、本実施形態によれば、コンデンサの静電容量の変化を検出する際に行うインピーダンス測定において、コンデンサに印加する交流電圧の測定周波数を簡易、かつ、正確に設定することができる。これによって、測定装置の使用者は、サンプルチェックとして、適当な測定周波数でコンデンサのインピーダンス測定を行い、当該測定周波数が適切な値か否かを判断するという作業を行う必要がなくなる。
<第2実施形態>
本実施形態では、S1で電極間の絶縁抵抗Rp’を設定する際に、電極間の絶縁抵抗Rp’の実測値を用いる点で、第1実施形態と異なっている。
コンデンサの電極の表面状態は温度や経年劣化によって変化し、それに伴ってコンデンサの電極間の絶縁抵抗は変化する。本実施形態は、そのような電極間の絶縁抵抗が変化しやすいコンデンサを測定対象とするときに特に有用である。具体的には、第1実施形態では、コンデンサMは、筒状電極M72、棒状電極M32を電極とし、筒状電極M72と棒状電極M32の間の大気を誘電体として構成したが、高温環境下では大気の誘電率は大きく変わらない一方、電極間の絶縁抵抗Rp’は、電極表面の汚損状態や周囲温度により大きく変化する。そのような場合、S1の工程で正確なシミュレーション結果を算出するためには、電極間の絶縁材料の絶縁抵抗Rp’(等価並列抵抗)を正確に把握する必要がある。
以下、本実施形態の態様について説明する。尚、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
図8に、本実施形態における測定フローを示す。
本実施形態では、S1の工程の前に、準備工程として、S0の工程を行う以外は、第1実施形態と同様である。
S0は、コンデンサMの電極間の絶縁抵抗を測定する工程である。
尚、本実施形態の測定装置1’は、図9に示すように、内部構成として絶縁抵抗測定部700を有している。絶縁抵抗測定部700は、一定の直流電圧を出力する電源と電流計からなり、コンデンサMに直流電圧を印加し、コンデンサMの電極間の絶縁抵抗Rp’を測定することができる構成となっている。尚、絶縁抵抗測定部700は、インピーダンス測定部400において、コンデンサに直流電圧を印加できる構成を追加して、インピーダンス測定部400と一体として構成されていてもよい。
そこで、本工程では、上記の絶縁抵抗測定部700を用いて、コンデンサMの電極間に一定の直流電圧を印加し、そのときコンデンサMに流れる漏れ電流の電流値により、電極間の絶縁抵抗を測定する。尚、図10に、コンデンサに直流電圧を印加したときの電流特性を示す。コンデンサに直流電圧を印加したとき、時系列に充電電流、漏れ電流が流れる。充電電流は、充電の際にコンデンサに流れる電流であり、漏れ電流は、充電電流の影響が少なくなった一定時間後に流れる一定の電流であり、電極間の絶縁抵抗に応じた電流値が流れる。本実施形態では、当該漏れ電流の電流値に基づいて、電極間の絶縁抵抗を測定する(印加した直流電圧を漏れ電流の電流値で除した値を、電極間の絶縁抵抗とする)。
そして、本実施形態のS1の工程では、S0の工程で測定した電極間の絶縁抵抗Rp’を用いて、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータをシミュレーションにより算出し、S2の工程では当該データに基づいて、測定周波数fdを決定している。
以上のように、本実施形態によれば、実測した電極間の絶縁抵抗Rp’を用いることによって、インピーダンス測定を行う際の測定周波数をより適切な値に設定することができる。
特に、上記のような長年の高温環境下での使用等による配管の歪を測定する場合、コンデンサの電極間の絶縁抵抗が変化している場合もあり、測定周波数の設定が煩雑である。しかし、本実施形態によれば、コンデンサの電極間の絶縁抵抗が変化した場合であっても、適切な測定周波数の設定も可能である。
尚、本実施形態では、S0の工程において、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’を、インピーダンス測定における温度条件と略同一の温度条件下で測定するようにしてもよい。具体的には、電極間の絶縁抵抗Rp’(等価並列抵抗)は、温度に依存して変化する場合がある。そして、インピーダンス測定を行う温度条件は、第1実施形態で説明した配管であれば、高温環境下(500℃程度)であるため、電極間の絶縁抵抗Rp’が平温環境と比して変動する傾向がある。
これより、S1の工程のシミュレーションを行う際には、インピーダンス測定における温度条件と略同一の温度条件下で測定された電極間の絶縁抵抗Rp’を用いることによって、インピーダンス測定を行う際の測定周波数をより適切な値に設定することができる。<第3実施形態>
本実施形態では、S1の工程において、コンデンサの静電容量の基準値C0を配管Pの歪にあわせて変更する点で、第1実施形態と異なっている。
以下、本実施形態の態様について説明する。尚、第1実施形態と共通する構成については省略する。
コンデンサの静電容量は、第1実施形態(図7、式6等)で示したとおり、電極間の距離、電極が対向する部分の表面積に応じて変化する。そのため、配管Pの歪が蓄積された場合、測定時のコンデンサの静電容量は、初期の設計値から大きく変化している。このような場合に、コンデンサのX方向の変位量を0とした想定した時の設計値に基づいてS1の工程におけるシミュレーションを行っても、正確なシミュレーション結果を算出することはできない。
そこで、本実施形態では、コンデンサの静電容量の基準値C0を、配管Pの歪にあわせて変更し、上記S1の工程におけるシミュレーションを行っている。具体的には、本実施形態では、前回のインピーダンス測定により算出されたコンデンサの静電容量の測定値をコンデンサの静電容量の基準値C0として設定し、シミュレーションにより、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータを算出する。
その際、例えば、測定対象となるコンデンサに対して、過去にインピーダンス測定を行ったときの、静電容量の測定値に関するデータを測定時(例えば、日時)と対応づけて、記憶部200に記憶させておき、使用者が、入力部500に測定対象となるコンデンサを入力することにより、対応するコンデンサの過去の静電容量の測定値に関するデータから、今回のインピーダンス測定時との時間の間隔が最も短い測定値、すなわち前回の測定値を選択して、静電容量の基準値C0が設定されるようにすればよい。尚、「今回のインピーダンス測定時」とは、現在の日時を表す。
そして、S2の工程では、上記のコンデンサの静電容量の基準値C0を用いて算出された測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータに基づいて、測定周波数fdを決定する。
これによって、インピーダンス測定を行う際の測定周波数をより適切な値に設定することができる。
尚、配管Pの表面の歪が予測し得るときは、コンデンサMの設計値(誘電体の電気抵抗率、電極間距離、電極が対向する部分の表面積、誘電体の比誘電率)と、配管Pの表面の歪の予測値に基づいて、式6を用いて、コンデンサMの静電容量を算出(予測)し、当該予測値をコンデンサの静電容量の基準値C0として設定してもよい。
<その他の実施形態>
尚、上記各実施形態では、第1装置M800が有する筒状電極M72と第2装置M200が有する棒状電極M32を電極とし、筒状電極M72と棒状電極M32の間の大気を誘電体とするコンデンサMを形成したが、誘電体材料は、大気に限らず、任意の絶縁材料に適用することができる。
また、上記各実施形態では、コンデンサMを第1装置M800、第2装置M200により形成したが、歪による物理量の変化をコンデンサの静電容量の変化として検出することができる構造であれば、コンデンサの構造は任意である。
また、上記各実施形態で説明した静電容量の基準値の設定方法、及び電極間の絶縁抵抗の設定方法は、任意に組み合わせ可能である。
また、本発明のインピーダンス測定方法は、配管以外にも、任意の対象物に適用し得る。 また、上記各実施形態では、インピーダンス測定部400は、自動平衡ブリッジ法により、インピーダンス測定を行っている。しかしながら、本発明は、任意のインピーダンス測定方法に用いることができ、例えば、IV法、交流ブリッジ法、共振法にも適用することができる。
また、上記各実施形態では、コンデンサからなる静電容量型センサを、物体の歪の測定に用いる場合について説明したが、歪の測定以外にも、圧力の変化の測定や、加速度の変化の測定を行う静電容量型センサにも用いることができる。
===結言===
以上より、上記各実施形態は、次のように記載できる。
上記各実施形態は、コンデンサの静電容量の変化を検出するインピーダンス測定方法であって、コンデンサの静電容量の基準値C0と、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’に基づく並列等価回路モデルを用いたシミュレーションにより、インピーダンス測定における測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータ(上記実施形態では、図6に示すデータに対応する)を算出する第1工程と、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータに基づいて、第1の周波数(上記実施形態では、損失係数が0.1となる測定周波数に対応する)と第1周波数よりも高い第2周波数(上記実施形態では、損失係数が0.001となる測定周波数に対応する)との間の範囲内で測定周波数fdを決定する第2工程と、第2工程で決定した測定周波数fdの交流電圧を用いて、コンデンサのインピーダンス測定を行う第3工程と、インピーダンス測定の測定結果に基づいて、コンデンサの静電容量の測定値を算出する第4工程と、を備えるインピーダンス測定方法を開示するものである。
これによって、コンデンサの静電容量をインピーダンス測定する際、コンデンサに印加する交流電圧の測定周波数を簡易、かつ、正確に設定することができる。
ここで、第1の周波数は、損失係数が略0.1となるときの測定周波数であってもよい。また、第2の周波数は、損失係数が略0.001となるときの測定周波数であってもよい。
ここで、第1工程は、コンデンサの静電容量の基準値C0と、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’とに基づいて、式4を用いたシミュレーションにより、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータを算出するものであってもよい。
ここで、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’は、コンデンサに直流電圧を印加することにより流れる漏れ電流値に基づいて設定されるものであってもよい。
ここで、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’は、少なくとも第3工程における温度に関する測定条件と略同一の温度条件下で測定された漏れ電流値に基づいて設定されるものであってもよい。これによって、コンデンサの静電容量をインピーダンス測定する際、コンデンサに印加する交流電圧の測定周波数をより正確に設定することができる。
ここで、第1の周波数は、損失係数が略0.05となるときの測定周波数であり、かつ、第2の周波数は、損失係数が略0.001となるときの測定周波数であってもよい。
ここで、コンデンサは、静電容量の基準値が1nF以下のコンデンサであってもよい。
ここで、コンデンサは、物体Pの表面上に固定された第1電極体M7と、第1電極体M7と対向する位置に、第1電極体M7と独立して移動し得るように物体の表面上に固定された第2電極体M3とにより形成され、物体Pの表面の歪を求めるべく、コンデンサの静電容量の測定値Cに基づいて、第1電極体M7と第2電極体M3の距離の変化を算出する第5工程を、更に有していてもよい。このとき、コンデンサの静電容量の基準値C0は、過去のインピーダンス測定により算出されたコンデンサの静電容量の測定値Cであって、今回のインピーダンス測定時との時間の間隔に基づいて選択された一の測定値Cであってもよい。これによって、コンデンサの静電容量をインピーダンス測定する際、物体の表面の歪により生じたコンデンサの静電容量の変化を反映させることができ、コンデンサに印加する交流電圧の測定周波数をより正確に設定することができる。
また、コンデンサの静電容量の基準値C0は、コンデンサの設計値と物体の歪の予測値に基づいて設定されてもよい。これによって、コンデンサの静電容量をインピーダンス測定する際、物体の表面の歪により生じたコンデンサの静電容量の変化を反映させることができ、コンデンサに印加する交流電圧の測定周波数をより正確に設定することができる。
上記各実施形態は、コンデンサの静電容量の変化を検出するインピーダンス測定装置1、1’であって、コンデンサの静電容量の基準値C0と、コンデンサの電極間の絶縁抵抗Rp’とに基づく並列等価回路モデルを用いたシミュレーションにより、インピーダンス測定における測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータを算出する第1算出部100と、測定周波数fと損失係数D値の関係を示すデータに基づいて、第1の周波数と第1周波数よりも高い第2周波数との間の範囲内で決定された測定周波数fdの交流電圧を用いてインピーダンス測定を行うインピーダンス測定部400と、インピーダンス測定部400のインピーダンス測定結果に基づいて、コンデンサの静電容量の測定値を算出する第2算出部100と、を備えるインピーダンス測定装置1、1’を開示するものである。
これによって、コンデンサの静電容量をインピーダンス測定する際、コンデンサに印加する交流電圧の測定周波数を簡易、かつ、正確に設定することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。