JP5794859B2 - 制振形材 - Google Patents
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Description
既に述べたように、アルミ押出形材は軽量で高い剛性を実現できるが、比重が低いため、従来用いられていた鋼鉄製の構造部材に比べて振動を伝えやすいものとなっている。したがって、車両の構造部材としてアルミ押出形材を用いる場合には、車輪やモータからのキャビン(客室)への振動騒音伝搬を鋼鉄部材以上に抑制する必要がある。
特許文献1に開示の制振形材によれば、制振形材の重量変化を少なく抑えつつ、高さが増すというような形状変化も必要とせずに遮音効果を高めることができるとされている。
図8は、制振樹脂(制振材)を設けたアルミ押出形材(制振形材)を長手方向に対して垂直に切断したときの断面を示す図である。図8(a)は、従来の制振形材を示す図である。鉄道車両用途の場合、アルミ押出形材は、紙面に垂直な方向に10〜25mの長さをもち、制振材もまた、10〜25mの長さにわたり、当該アルミ押出形材と接着されている。接着の方法は種々考えられるが一例として、シート状に成形された制振材を押出形材の所定の位置に設置したあとに全体を加熱し、制振材の自重によりアルミ表面に制振材を熱融着させる方法が考えられる。
図8(b)は、図8(a)の制振形材に対して、単純に制振材の量(断面での幅)を削減した構造を示す図である。併せて、図8(b)には、アルミ押出形材が振動状態にあるときの傾斜リブ及び面板の振幅分布を一点鎖線で示している。
上述の問題に鑑み、本発明は、軽量化の効果を有すると共に制振効果も高い制振形材を提供することを目的とする。
本発明に係る制振形材は、対向する面板と前記対向する面板を連結する複数のリブとにより構成される形材であり、面板とリブにより形成される中空部の内面のうち、リブの両端を除いた中央部のみに制振材が設けられていることを特徴とする。
好ましくは、前記制振材が前記リブの中央部であってリブの幅の60%の領域に設けられているとよい。
好ましくは、前記中空部の内面のうち、面板の両端を除いた中央部のみに制振材が設けられているとよい。
好ましくは、前記制振材が前記面板の中央部であってリブの幅の60%の領域に設けられているとよい。
好ましくは、前記リブの中央部に制振材を配備すべく、リブの中央部に位置決め突起が形成され、前記制振材は、前記位置決め突起と接するようにリブ上に設けられるとよい。
好ましくは、前記リブは、制振材が設けられる中央部の肉厚が、制振材が設けられない部分の肉厚よりも薄く形成されているとよい。
好ましくは、前記面板の中央部に制振材を配備すべく、面板の中央部に位置決め突起が形成され、前記制振材は、前記位置決め突起と接するように面板上に設けられるとよい。
好ましくは、前記リブは、面板との連結部分である分岐部から中央部にかけて肉厚が薄くなるように形成されているとよい。
なお、本発明に係る制振形材の最も好ましい形態は、対向する面板と前記対向する面板を連結する複数のリブとにより構成される形材であり、面板とリブにより形成される中空部の内面のうち、リブの両端を除いた中央部のみに制振材が設けられ、前記制振材が前記リブの中央部であってリブの幅の60%の領域に配備され、前記リブの中央部に制振材を配備すべく、リブの中央部に位置決め凹部又は位置決め突起が形成され、前記制振材は、前記位置決め凹部又は位置決め突起と接するようにリブ上に設けられることを特徴とする。
(第1実施形態)
図1〜図3、図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る制振形材1Aの構成を示している。制振形材1Aは、トラス型の中空のアルミ押出形材2Aと、制振樹脂3とから構成されている。アルミ押出形材2Aは、アルミ合金から押出加工により製造される長尺のトラス断面構造部材である。よって、図1に示すように、アルミ押出形材2Aの長手方向に対して垂直に切断したときの断面は、長手方向のいずれの位置においても同じである。
図1を参照して、アルミ押出形材2Aは、対向する2枚上下の面板4,5と、上下の面板4,5を斜めに連結する複数の傾斜リブ(リブ)6とを含んで構成されている。
複数のリブ6は、平板部材であり上下の面板をジグザグにつなぐものである。複数のリブ6は、上下の面板4,5の平行方向に対して斜めに傾斜するように配置されており、隣り合うリブ6,6が交互に反対方向に傾斜するように配置されて、トラス構造を実現している。トラス構造を有するアルミ押出形材2Aは、上下の面板4,5の間に三角形の中空部7,8を有している。中空部7,8は、隣り合う2つの傾斜リブ6,6と面板4又は面板5の平坦部とで囲まれた三角形状となっている。中空部7,8において、上下の面板4,5に相当する部分を平坦部9,10という。
まず、正立中空部7において、制振樹脂3は下の面板5の平坦部9の断面幅方向でほぼ中央付近に設けられる。言い換えれば、制振樹脂3は下の面板5の上面のほぼ中央に設けられるともいえる。
なお、図1には示していないが、倒立中空部8において、上の面板4の平坦部10の断面幅方向でほぼ中央付近に、制振樹脂3を設けてもよい。この場合、制振樹脂3は上の面板4の上面に設けられるともいえる。
図7は、制振形材1Aの下側の面板5の下面の1点に正弦波交番力を作用させ振幅一定で周波数を変化させたときの上側の面板4の上面の振動レベルの周波数に対する変化を表すグラフであり、横軸を周波数(Hz)、縦軸を単位加振力あたりの振動レベル(10dB/div.)とし、制振樹脂(制振材)3を設けていない場合(条件1)と、従来の制振樹脂3の配置による場合(条件2)と、本発明の制振樹脂3の配置による場合(条件3)についての結果を示している。なお、条件2、条件3とも、正立中空部7の平坦部9には制振樹脂3を設けずに、傾斜リブ6にだけ同一の制振樹脂3を配置した。よって、傾斜リブ6に対する制振樹脂3の配置の違いによる制振効果の違いを比較した。
つまり、傾斜リブ6の少なくとも1つの面の中央部に制振材が設けられている制振形材1Aによれば、軽量化を図りつつも、図8(b)の一点鎖線で示すような、面板4,5及び傾斜リブ6の長手方向略中央に発生する振動振幅を確実に抑制することができ、高い制振効果を発揮することができるようになる。
すなわち、本実施形態による制振樹脂3の幅は、面板4,5(2つの傾斜リブ6間の距離である平坦部9,10)の幅の約60%である。また、傾斜リブ6に設けられる制振樹脂3の幅も、傾斜リブ6の幅の約60%である。制振樹脂3は、この約60%幅の制振樹脂3の中央位置と、傾斜リブ6の中央位置及び平坦部9,10の中央位置とがほぼ一致するように設けられている。
図2及び図3は、平坦部9,10及び傾斜リブ6を両端が支持されたアルミ基材の梁とみなし、その両端支持梁に制振樹脂(制振材)3を貼り付けたときの損失係数を表すグラフである。
図3は、パターンBとして、本実施形態の制振形材1Aと同様に両端支持梁の中央位置に制振材3を貼付した場合を示しており、図2と同様に制振材3の幅aを変化させつつ実験した結果を示している。
制振樹脂3は、上述したように求められる制振性に応じて、適切な厚み及び材質を選定して用いられる。厚みについては、例えば1〜10mm程度である。材質は、制振特性に優れた変形アスファルト系樹脂やブチルゴム系特殊合成ゴムなどが用いられる。この制振樹脂3は、予めシート状に成形されたものを所定の位置に設置した後に加熱によって制振樹脂の接着面が溶融し、制振樹脂の自重によってアルミ表面に融着するものが考えられる。しかし、このような方法に限らず、溶剤に溶かした液状の制振樹脂を中空部に挿入したノズル先端から吐出させ、中空部内面に塗布する方法も考えられる。また、熱分解型の発泡剤を予め制振樹脂に分散混練したシート状のものあるいは液状のものを中空部のアルミ表面の所定位置に配置、塗布した後、加熱により接着と同時に制振樹脂を発泡させて制振樹脂の厚みを増やす方法も考えられる。なお、このような発泡型制振材を用いれば、発泡しないタイプの制振材に比べて厚みを薄くすることで、制振材の自重を小さくして加熱接着の際の制振材のずれや垂れ落ちを防止できるとともに、発泡後は分厚くなり、十分な制振性を維持しながら、さらに軽量化が可能になる。
つぎに、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図5に示すように、本実施形態による制振形材1Bは、第1実施形態による制振形材1Aとほぼ同様の構成であり、アルミ押出形材2Bにおいて、制振樹脂3が設けられる傾斜リブ6の中央部の構成が異なるだけである。具体的には、傾斜リブ6の肉厚が制振樹脂3が設けられる中央部だけ薄くなるように構成されている。
図4を参照しながら、中央部の肉厚を減少させる理由について説明する。図4は、基材と制振樹脂3の2層型複合制振材に関する板厚と損失係数の関係を示すグラフである。図4のグラフは、基材の板厚d1に対する制振樹脂3の厚みd2の比(ξ=d2/d1)を横軸とし、制振樹脂3単独での損失係数η2に対する2層型複合制振材の損失係数ηの比(η/η2)を縦軸としている。なお、図4は、基材のヤング率E1に対する制振樹脂3のヤング率E2の比a(E1/E2)を様々に変化させた場合の結果を示している。
以上に述べたように、本実施形態による制振形材1Bは、制振樹脂3を増やすことなく制振効果を向上させることができる。それだけでなく、制振形材1Bの製造過程において、制振樹脂3を傾斜リブ6の中央部に確実に配置することができる。
図6を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図6(a)に示すように、本実施形態による制振形材1Cは、第1実施形態による制振形材1Aと同様に、アルミ押出形材2Cが正立中空部13及び倒立中空部14を有する構成である。
しかし、本実施形態による制振形材1Cは、正立中空部13及び倒立中空部14の構成が第1及び第2実施形態の正立中空部7及び倒立中空部8とは異なるので、以下に説明する。
正立中空部13において、面板17の平坦部15はその両端部から中央部に向けて傾斜的に下っている。つまり、面板17の肉厚が平坦部15の両端部(tB)から中央部(A−1部)に向けて減少し、平坦部15の中央部が最も肉厚が薄く(tA−1)なっている。
2A,2B,2C アルミ押出形材
3 制振樹脂
4,5,17,18 面板
6,16 傾斜リブ
7,13 正立中空部
8,14 倒立中空部
9,10,15,19 平坦部
11 位置決め凹部
12 位置決め突起(突起)
Claims (7)
- 対向する面板と前記対向する面板を連結する複数のリブとにより構成される形材であり、面板とリブにより形成される中空部の内面のうち、リブの両端を除いた中央部のみに制振材が設けられ、前記制振材が前記リブの中央部であってリブの幅の60%の領域に配備され、
前記リブの中央部に制振材を配備すべく、リブの中央部に位置決め凹部又は位置決め突起が形成され、前記制振材は、前記位置決め凹部又は位置決め突起と接するようにリブ上に設けられることを特徴とする制振形材。 - 前記中空部の内面のうち、両端を除いた面板の中央部のみに制振材が設けられ、前記制振材が前記面板の中央部であって面板の幅の60%の領域に配備されていることを特徴とする請求項1に記載の制振形材。
- 前記リブは、制振材が設けられる中央部の肉厚が、制振材が設けられない部分の肉厚よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振形材。
- 前記面板は、制振材が設けられる中央部の肉厚が、制振材が設けられない部分の肉厚よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制振形材。
- 前記面板の中央部に制振材を配備すべく、面板の中央部に位置決め突起が形成され、
前記制振材は、前記位置決め突起と接するように面板上に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制振形材。 - 前記リブは、面板との連結部分である分岐部から中央部にかけて肉厚が薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の制振形材。
- 前記面板は、リブとの連結部分である分岐部から中央部にかけて肉厚が薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の制振形材。
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