JP5793681B2 - 電力計測装置 - Google Patents
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Description
例えば使用した電力を円盤の回転数に変換し、積算演算を行うという既存の積算電力計に、回転を検出するセンサを付加したり、電流計(CT)、電圧計(PT)を新たに付加するものが提案されている。このような計測システムでは、電子回路やマイクロプロセッサによる乗算計算を行い、電力を計測するなどの方法が用いられる。しかし、このような電力計は、装置が大型化するだけでなく、高価なものとなり、また、余計なエネルギーを消費しかねないという状況である。
そこで消費電力をそのまま電気量として測定することができるとともに、小型化及び集積化の可能な電力計の開発が望まれている。
ここで用いられる電力センサは、外部磁界の変化を電気信号に変換する素子であり、強磁性体薄膜や半導体薄膜等の磁界検出膜をパターニングし、その磁界検出膜のパターンに電流を流し電圧変化として外部磁界の変化を電気信号に変換するものである。
V1:電圧、I1:計測電流、cosθ:力率、ω:角周波数、
I2:素子電流(膜を流れる電流)、R1−R4:端子間の各抵抗
k:膜固有の特性で決まる係数
ここで出力は、直流成分の項(DC)と、交流成分の項(ω、2ω)に分けられる。
A1はブリッジ抵抗のアンバランスで生ずる電力と関係のない不要な項、A2は電力に比例する項(瞬時電力)である。
しかしながら、上記電力計測装置においては、2ω成分の振幅値I1・V1の値を計測し、別途cosθを計測し、別途掛け算を行って、I1・V1・cosθを得るという方法をとっており、力率が1でない場合は力率を別途計測し演算する必要があった。また、高調波成分を有する電流波形の場合、基本波成分の電力しか取り出すことができないという問題があった。
また、プレーナホール効果を利用した電力計測手法では出力値が小さく,また検出電流として突入電流などの大きな電流が流れると,磁性体薄膜が磁化反転を起こし出力特性が変わるという問題があった。
また、この方法において、高感度化をはかるために、ブリッジを構成する抵抗の抵抗値を調整する技術も提案されている(特許文献2)。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、高精度でかつ安定的に電力を計測することができる電力計測装置を提供することを目的とする。
(実施の形態1)
本発明の電力計測装置では、図1に概念図を示すように、強磁性体薄膜などの磁性体薄膜パターンからなる第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dでブリッジ構造を構成する。図2はこの電力計測装置の原理説明図である。そしてこの第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれが、抵抗値を調整するための抵抗値調整部3tを具備したことを特徴とするものである。すなわち、電流が流れる一次導体200に対し、平行となるように、ブリッジ構造をとり、対称な第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dで構成される磁性体薄膜パターンを配置する。そして、この一次導体200から、ブリッジ構造における電流入出力端子A,Bを介してこの磁性体薄膜に素子電流を供給するとともに、この電流入出力端子A,Bの中間位置に電圧入力端子C及び電圧出力端子Dを接続し、出力を検出する。この電力計測装置では、ブリッジ構造を構成する第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれに抵抗体薄膜からなる調整パターンpを形成し、調整部3tを構成している。そしてこの調整パターンpをレーザトリミングすることで、抵抗値を調整している。そして強磁性体薄膜のブリッジに対し、素子電流を供給する方向に対し直交する方向に出力取り出しを行い、直接電力を取り出すようにしている。
一方、第1の磁性体成分3aの抵抗値がRよりも大きい時は、たとえば半田を滴下するなど抵抗体パターンに低抵抗の金属を重ねることで、抵抗値を小さくし、Rにそろえるようにすることができる。
このようにブリッジ構造を構成する各磁性体成分の各抵抗値をそろえることができ、容易に高感度で信頼性の高い磁界センサを提供することができる。従ってこの磁界センサを用いることにより信頼性の高い電力計測装置を提供することができる。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
これをプレーナホール効果により、数式化すると、
VC―D=I2(ΔRsin2θ) (式2)
で表すことができる。ここで、BM―0は磁束密度ベクトル、I2は素子電流である。
従って、交流磁界を印加した時、正負を判定することができる。
従って、C−D間電圧VC―Dは負荷で消費される電力に比例することになる。
シングル抵抗を用いた場合、固定抵抗をR、磁性体薄膜による抵抗成分をR1としたとき、磁性体薄膜の抵抗成分R1両端の電圧Vmは以下のとおりとなる。
ここでR1は負荷電流に比例するが、Vmは電力に比例しない。
負荷電流が0であるときも、V≠0であれば出力VmはVm≠0。
ハーフブリッジ回路を用いた場合、磁性体薄膜による2つの抵抗成分をR1、R2としたとき、これら2つの抵抗成分をR1、R2両端の出力電圧V1(、V2)は以下のとおりとなる。
そのため、出力には負荷電流によらない項(0.5V)が含まれ、出力値は電力値とならない。
通常、kI<0.01となり、V1中の電力情報は、1/50以下であり、信号処理で電力信号だけ取り出せたとしても、S/N比が極めて小さくなるという問題がある。ここでkは比例定数である。
これに対し、本発明のフルブリッジ回路を用いた場合、出力は負荷電流による抵抗変化分と、負荷電圧の積となるため、出力がそのまま電力信号となっている。従って、容易に電力成分の取り出しを行うことが出来ることが分かる。
図7は磁化方向を示す説明図である。磁石などの磁界印加手段によりバイアス磁界(Hb)を印加して、計測を行う場合、磁性体薄膜[4つの成分]中の磁化(J)は、計測電流に応じて発生する磁界である計測磁界(Hex)との和となる。
磁化(J)=Hb+Hex
Rmr=R+ΔRcos2θ
となり、抵抗Rmrはθが0の場合抵抗値は最大となり、θが90°の場合、最小となることがわかる。つまり、電流iと磁化J間の角度をθが0であるとき、抵抗値は最大となり、検出感度は最大となる。
さらに素子に印加される電圧が一定のとき、計測磁界強度と素子出力電圧との関係を図11に示す。先に求めたHexに対するR1〜R4の値を(式3)に当てはめた。また、入力電圧VB−Dは一定とした。
また、交流の素子電流により生ずる磁界よりも大きい直流磁界を設けることで、薄膜両端の出力のふらつきを抑制することができる。
なお、本実施の形態1では、抵抗体薄膜を用いた調整部3tに加え、バイアス磁界を印加するバイアス印加手段を用いたが、調整部3tを用いることなく、バイアス磁界を印加するバイアス印加手段のみを用いるようにしてもよい。
本実施の形態2の電力計測装置について説明する。図12にこの電力計測装置で用いられる磁界センサの上面図、図13に断面図を示す。図13は図12のX1−X1断面図である。この磁界センサは図12及び13に示すように、シリコンからなる基板1表面に絶縁膜2として酸化シリコン膜を形成し、この絶縁膜2上に強磁性特性を有する磁性体薄膜3からなる第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dを形成している。第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dは、4つのミアンダパターンRm1、Rm2、Rm3,Rm4を形成している。このミアンダパターンRm1、Rm2、Rm3,Rm4の直径方向に沿って給電部5A、5Bを構成する導体パターンと、検出部5C、5Dとしての導体パターンとを具備したものである。この検出部5C、5Dとしての導体パターンは、給電部5A、5Bから供給される素子電流の方向に直交する方向に形成される。そして各導体パターンの先端にはパッド10A、10B、10C、10Dが設けられており、この各パッド10A、10B、10C、10Dに、調整部5tを構成する調整パターンpが接続されている。ここでは各パッド10A、10B、10C、10Dが調整パターンpからなる調整部5tを構成するようになっている。
また導体パターンとしては金、銅、アルミニウムなどが用いられる。
基板1としてのシリコン基板表面に、絶縁膜2としての酸化シリコン膜を形成し、この上層に、スパッタリング法により、磁性体薄膜3を形成する。
そして、フォトリソグラフィによりこの磁性体薄膜3をパターニングし、ミアンダ形状パターンを4つ、互いに隣接するミアンダ形状パターンの主パターンの方向が90°ずつずれるように形成する。
こののち、スパッタリング法により、金などの導電体薄膜を形成し、フォトリソグラフィによりパターニングし、図12及び図13に示すような、調整部5t、給電部5A、5B及び検出部5C、5Dを形成する。またこれら給電部及び検出部に相当する位置にパッド10A、10B、10C、10Dを形成する。
そして必要に応じて保護膜を形成し、磁界センサが完成する。
また、磁性体薄膜は、ミアンダ形状パターンのブリッジ構造であることから、専有面積当りの長さを大きくとることができ、高抵抗化をはかることができ、素子の外形を大きくすることなく、出力を大きくすることが可能となる。また、長い対称形であるため、素子電流方向に対して平行となるように形成することができ、高感度で、信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
また、この電力計測装置においては磁界センサの入出力パッド10A−10Dをパッケージの4隅に配置することで端子をパッケージ内部で分離形成することができ、絶縁性を確保することが可能となる。
本実施の形態では、計測磁界を印加していないが、本実施の形態1の電力計測装置に対し、以下の実施の形態に示すように、一方向に小さな計測磁界を印加することで、より安定に電力計測を行うことが可能となる。
次に、本発明の実施の形態3の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図17(a)及び(b)にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3tを、抵抗値の調整量が確認できるように、目盛mを持つ調整パターンpで構成する。
この場合も製造後、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定し、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように調整パターンpをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整する。この調整パターンpはたとえばアルミニウムパターンで構成され、目盛mをもつ導体パターンで構成されている。
また、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpに非磁性体である銅パターンを用いているため、磁性体部分の磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
次に、本発明の実施の形態4の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図18及び19にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3tを、レーザトリミングすることで、電流が通過する領域の膜厚を調整する。図18及び19において、(a)が平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
この場合も製造後、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定し、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように調整パターンpをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整する。この調整パターンpはたとえば銅パターンで構成されている。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
次に、本発明の実施の形態5の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図20及び21にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3tとして独立した調整部設けるのではなく、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dを構成する磁性体薄膜自身をレーザトリミングすることで、磁性体成分の膜厚を調整する。図20及び21において、(a)が平面図、(b)は(a)のA−A断面図である
例えば、図1に示す、第1の磁性体成分3aにおいて測定された抵抗値の測定値rがr<Rであるとき、図20及び21にトリミング方法の拡大図を示すように、レーザトリミングを行う。つまり、図20(a)及び(b)に示す初期状態から、レーザトリミングを行い、図21(a)及び(b)に示すように、膜厚を小さくし、抵抗値を増大させる。このとき、あらかじめ測定された抵抗値と基準値との差から除去すべき範囲を決定し、厚さの変化量を決定しておくことで、より効率よく所望の抵抗値を得ることが可能となる。このようにレーザトリミングにより磁性体薄膜の膜厚が小さくなり、第1の磁性体成分3aの抵抗値はこの分だけ大きくなって、第1の磁性体成分3aの抵抗値はRにそろう。
なお、前記実施の形態では、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dそのものをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整したが、別途調整パターンpを付加しても良い。この場合も同様にレーザトリミングを用いて抵抗値を調整することができる。
また、調整部が磁性体薄膜と、温度特性及び磁気特性が同等であるため、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
次に、本発明の実施の形態6の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図22及び23にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3Qを、選択酸化により抵抗値が増大する金属パターンからなる調整パターンpで構成し、選択酸化により、電流通過部の膜厚を調整する。図22及び23において、(a)が平面図、(b)は(a)のA−A断面図である
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
次に、本発明の実施の形態7の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図24にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部13を、磁性体成分に並列接続されたチップ抵抗からなる調整用抵抗13cで構成したものである。この構成により、チップ抵抗の抵抗値を選択することで一部の抵抗値を増大あるいは低減させることでブリッジ構造の不平衡を調整する。
この構成によれば、容易にブリッジ出力の調整を行うことが可能となる。
この構成によれば、より薄型化小型化が可能となる。
なお、前記実施の形態1乃至7で説明した電力計測装置においても、磁性体薄膜と磁界印か手段としての磁石を同一基板上に形成したモノリシック素子を用いてもよいことはいうまでもない。なおここでは磁性体薄膜として強磁性体薄膜を使用するのが望ましい。
この構成によれば、通常の回路基板の構成に加えて、磁性体薄膜のパターンを形成するだけでよいため、極めて容易に形成可能である。
この構成によれば、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されているため、Vmr出力の最大値を大きく取ることができ、システムとしてのS/N比が向上する。
この構成によれば、コンデンサでVmr信号を平滑化することで、周期未満の短期間で直流成分を取り出すことができるので高速で電力値を得ることができ、直流成分を簡単な回路構成で検出することが可能となる。
この構成によれば、力率を別途計測する必要がなく、簡単に計測することができ、かつ積算による場合に比べ、誤差も低減される。
この構成によれば、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
この構成によれば、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。なおここでは磁性体薄膜として強磁性体薄膜を使用するのが望ましい。
また前記実施の形態では強磁性体薄膜を用いた磁界センサを用いたが、これに限定されることなく他の磁界センサを用いてもよい。
2 絶縁膜
3、33 磁性体薄膜((環状)パターン)
3a、3b、3c、3d 磁性体成分
3t、3Q 調整部
p 調整パターン
m 目盛
C 除去部
10A、10B、10C、10D パッド
Rm1、Rm2、Rm3、Rm4 ミアンダパターン
5A、5B 給電部
5C、5D 検出部
5t 調整部
11 保護膜
13 調整部
13c 調整用抵抗
200 一次導体
500 ケーシング
501 磁界センサ
502 アンプ
503 安定化電源
504 オシロスコープ
505 抵抗
506 変圧器
507 交流電源
Claims (2)
- 電流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された磁性体薄膜と、
前記一次導体に接続され、前記磁性体薄膜に素子電流を供給する電流入出力端子を備えた給電部と、
前記電流入出力端子の中間位置に接続されるとともに、電圧入出力端子を備え、前記磁性体薄膜両端の出力を検出する検出部とを具備した電力計測装置であって、
前記磁性体薄膜あるいはその周辺部の抵抗値を調整する調整部を具備し、
前記調整部は、前記磁性体薄膜にバイアス磁界を印加するバイアス磁界印加部であり、
前記磁性体薄膜はブリッジ構造をとるように順次配列された第1乃至第4の磁性体成分で構成され、前記第1乃至第4の磁性体成分の少なくとも一つが前記磁性体薄膜の磁気抵抗を調整する前記調整部を具備し、電流が流れる一次導体に対し、平行となるように、前記磁性体薄膜に素子電流を供給し、
前記調整部は、前記第1乃至第4の磁性体成分を選択酸化可能に形成された領域である電力計測装置。 - 請求項1に記載の電力計測装置であって、
前記バイアス磁界印加部は磁石である電力計測装置。
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