JP5793681B2 - 電力計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電力計測装置にかかり、特に磁性体薄膜をセンサとして用い、電流及び電圧を入力して、両入力から得られる電力に相当する信号を直接出力する電力計測装置に関する。
近年、インターネット等を利用する環境が整ってきた中で、電力の遠隔検針を含めた計測システムの開発が進められている。
例えば使用した電力を円盤の回転数に変換し、積算演算を行うという既存の積算電力計に、回転を検出するセンサを付加したり、電流計(CT)、電圧計(PT)を新たに付加するものが提案されている。このような計測システムでは、電子回路やマイクロプロセッサによる乗算計算を行い、電力を計測するなどの方法が用いられる。しかし、このような電力計は、装置が大型化するだけでなく、高価なものとなり、また、余計なエネルギーを消費しかねないという状況である。
そこで消費電力をそのまま電気量として測定することができるとともに、小型化及び集積化の可能な電力計の開発が望まれている。
そして最近では、磁性体薄膜の磁気抵抗効果を利用し、消費電力を電気量のまま測定することの可能な電力計測装置が提案されている(非特許文献1,2)。
この電力計測装置では、交流が流れる一次導体に対し、平行となるように基板上に配された磁性体薄膜を用いたもので、この磁性体薄膜の両端に抵抗を介して一次電圧が印加され、磁性体薄膜の両端から出力を取り出す電力センサを用いている。そしてこの電力計測装置は、電力センサから、2倍周波数成分の振幅値に基づき電力Pを取り出す方式をとる。
この電力計測装置では、強磁性体等の磁性体内において、電流と磁化のなす角度によりその磁性体の電気抵抗値が変わる現象であるプレーナホール効果を利用し、線形特性を得ることができる点に着目し、電力に比例する信号成分を取り出すようにしている。
ここで用いられる電力センサは、外部磁界の変化を電気信号に変換する素子であり、強磁性体薄膜や半導体薄膜等の磁界検出膜をパターニングし、その磁界検出膜のパターンに電流を流し電圧変化として外部磁界の変化を電気信号に変換するものである。
ここで出力信号は、抵抗値R1が磁気抵抗変化によりR1+ΔR1に変化するとして、次式(1)のようになる。
Figure 0005793681
(式1)
:電圧、I:計測電流、cosθ:力率、ω:角周波数、
:素子電流(膜を流れる電流)、R1−R4:端子間の各抵抗
k:膜固有の特性で決まる係数
ここで出力は、直流成分の項(DC)と、交流成分の項(ω、2ω)に分けられる。
A1はブリッジ抵抗のアンバランスで生ずる電力と関係のない不要な項、A2は電力に比例する項(瞬時電力)である。
しかしながら、上記電力計測装置においては、2ω成分の振幅値I・Vの値を計測し、別途cosθを計測し、別途掛け算を行って、I・V・cosθを得るという方法をとっており、力率が1でない場合は力率を別途計測し演算する必要があった。また、高調波成分を有する電流波形の場合、基本波成分の電力しか取り出すことができないという問題があった。
また、プレーナホール効果を利用した電力計測手法では出力値が小さく,また検出電流として突入電流などの大きな電流が流れると,磁性体薄膜が磁化反転を起こし出力特性が変わるという問題があった。
また、測定精度を向上するには、磁気抵抗素子パターンとコアとの寸法精度の向上が重要な条件となっている。そこで、特許文献1では、レーザを用いて切り込みを入れることによりブリッジの抵抗値を調整する技術が提案されている。
また、この方法において、高感度化をはかるために、ブリッジを構成する抵抗の抵抗値を調整する技術も提案されている(特許文献2)。
磁性膜を用いた薄膜電力計(電気学会マグネティックス研究会資料 VOL.MAG−05No.182) 磁性膜を用いた薄膜電力計(電気学会マグネティックス研究会資料 VOL.MAG−08No.192)
特開2003−130888号公報 特開平1−105178号公報
特にブリッジ回路を用いた磁気抵抗素子では、磁気抵抗の変化を出力特性として取り出すため、ブリッジ回路を構成する各エレメントは高精度に抵抗値を調整する必要がある。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、高精度でかつ安定的に電力を計測することができる電力計測装置を提供することを目的とする。
そこで本発明は、電流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された磁性体薄膜と、前記一次導体に接続され、前記磁性体薄膜に素子電流を供給する電流入出力端子を備えた給電部と、前記電流入出力端子の中間位置に接続されるとともに、電圧入出力端子を備え、前記磁性体薄膜両端の出力を検出する検出部とを、具備した電力計測装置であって、前記磁性体薄膜あるいはその周辺部の抵抗値を調整する調整部を具備し、前記調整部は、前記磁性体薄膜にバイアス磁界を印加するバイアス磁界印加部であり、前記磁性体薄膜はブリッジ構造をとるように順次配列された第1乃至第4の磁性体成分で構成され、前記第1乃至第4の磁性体成分の少なくとも一つが前記磁性体薄膜の磁気抵抗を調整する前記調整部を具備し、電流が流れる一次導体に対し、平行となるように、前記磁性体薄膜に素子電流を供給し、前記調整部は、前記第1乃至第4の磁性体成分を選択酸化可能に形成された領域であることを特徴とする。
また本発明は、上記電力計測装置であって、前記バイアス磁界印加部は磁石であるものを含む。
本発明によれば、磁性体薄膜の磁気抵抗を調整する調整部を具備しているため、直接高感度でかつ信頼性の高い電力測定が実現可能となる。
本発明の電力測定装置の原理説明図 同等価回路図 (a)及び(b)は本発明の実施の形態1の電力計測装置のトリミング方法を示す拡大図 本発明の実施の形態1の電力計測装置のトリミング方法を示す拡大図 同等価回路の要部説明図 電力計測装置の比較例を示す説明図,(a)はシングル抵抗を用いた場合、(b)はハーフブリッジ回路を用いた場合を示す図 電力計測装置における磁化方向を示す説明図 (a)及び(b)は本発明の実施の形態1の電力計測装置における磁気抵抗効果の説明図 (a)及び(b)はブリッジに対してθが0°のバイアス磁界があった場合とθが90°のバイアス磁界があった場合の実施の形態1の電力計測装置における計測電流を示す説明図 同電力計測装置における計測磁界と抵抗値との関係を示す図 同電力計測装置における計測磁界強度と素子出力電圧との関係を示す図 本発明の実施の形態2の電力計測装置の上面図 本発明の実施の形態2の電力計測装置の断面図 本発明の実施の形態2の電力計測装置の磁界センサの磁性体薄膜パターンの要部拡大図 本発明の実施の形態2の電力計測装置の磁界センサの素子特性を測定するための測定装置を示す回路説明図 本発明の実施の形態2の電力計測装置の磁界センサの要部断面を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態3の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態4の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態4の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態5の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態5の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態6の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 (a)および(b)は、本発明の実施の形態6の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図 本発明の実施の形態7の電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示す図
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明の電力計測装置では、図1に概念図を示すように、強磁性体薄膜などの磁性体薄膜パターンからなる第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dでブリッジ構造を構成する。図2はこの電力計測装置の原理説明図である。そしてこの第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれが、抵抗値を調整するための抵抗値調整部3tを具備したことを特徴とするものである。すなわち、電流が流れる一次導体200に対し、平行となるように、ブリッジ構造をとり、対称な第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dで構成される磁性体薄膜パターンを配置する。そして、この一次導体200から、ブリッジ構造における電流入出力端子A,Bを介してこの磁性体薄膜に素子電流を供給するとともに、この電流入出力端子A,Bの中間位置に電圧入力端子C及び電圧出力端子Dを接続し、出力を検出する。この電力計測装置では、ブリッジ構造を構成する第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれに抵抗体薄膜からなる調整パターンpを形成し、調整部3tを構成している。そしてこの調整パターンpをレーザトリミングすることで、抵抗値を調整している。そして強磁性体薄膜のブリッジに対し、素子電流を供給する方向に対し直交する方向に出力取り出しを行い、直接電力を取り出すようにしている。
本実施の形態1の第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dは、通常の線状パターンで構成されている。製造後、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定し、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように調整パターンpをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整する。この調整パターンpはたとえばアルミニウムパターンで構成されている。
例えば、図1に示す、第1の磁性体成分3aにおいて測定された抵抗値の測定値rがr<Rであるとき、レーザトリミングを行う。図3(a)及び(b)にトリミング方法の拡大図を示す。つまり、図3(a)に示す状態のとき、レーザトリミングを行い、図3(b)に示すように、除去部Cを形成する。このようにレーザトリミングにより除去部Cを形成することで調整パターンpのパターン幅が小さく、かつ長くなり、第1の磁性体成分3aの抵抗値は大きくなって、第1の磁性体成分3aの抵抗値はRにそろう。
また、さらに抵抗値を大きくしたい場合には、図4に示すように、この除去部Cをさらに深くすることで、調整パターンpのパターン幅がさらに小さく、かつ長くなり、第1の磁性体成分3aの抵抗値はさらに大きくなる。
一方、第1の磁性体成分3aの抵抗値がRよりも大きい時は、たとえば半田を滴下するなど抵抗体パターンに低抵抗の金属を重ねることで、抵抗値を小さくし、Rにそろえるようにすることができる。
このようにブリッジ構造を構成する各磁性体成分の各抵抗値をそろえることができ、容易に高感度で信頼性の高い磁界センサを提供することができる。従ってこの磁界センサを用いることにより信頼性の高い電力計測装置を提供することができる。
なお、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpに非磁性体であるアルミニウムパターンを用いているため、磁性体部分の磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
つまりこの電力計測装置の電力計測について説明する。この電力計測装置は、図2に原理説明図を示すように、ブリッジ構造をなす4つのパターンからなる磁性体薄膜(第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3d)が中心に対して対称な位置にあり、この強磁性体薄膜パターン上にある電流入出力端子A、Bを通電部とし強磁性体薄膜パターンの中心を通る直線上にCDを設け、線分CDを電圧入出力端子CDとし出力取り出しを行う。電圧入出力端子CDを結ぶ線分CDは、この電流入出力端子A、Bを結ぶ線分に直交する。そして線分AD、線分AC、線分CB、線分BDがブリッジ構造をとる第1乃至第4の磁性体成分を構成する。つまり素子電流を供給する方向ABに直交する方向CDを出力取り出し方向としている。
このとき、図1に示すように、磁性体薄膜(第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3d)の電流入出力端子A、Bに沿って配置された導体200に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界ベクトルを(H)、素子の持つ自発磁化ベクトルを(M)とする。このとき、磁界ベクトル、素子の持つ自発磁化ベクトルを合成した磁束密度ベクトルをBM―0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルBM―0のなす角をθとする。そして、磁性体薄膜3の点A−B間の各部抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の各部抵抗値変化の最大値をΔRとする。このとき、点C−D間の電圧VC−Dは、電圧VA−Cと電圧VA−Dとの差で表すことができる。
これをプレーナホール効果により、数式化すると、
C―D=I(ΔRsin2θ) (式2)
で表すことができる。ここで、BM―0は磁束密度ベクトル、Iは素子電流である。
従って、交流磁界を印加した時、正負を判定することができる。
次に、図2に示すように、この強磁性体薄膜3のパターンを4つのブリッジ成分R−Rとした場合を考える。この電力計測装置の要部を等価回路説明図として図5に示す。4つのブリッジ成分R−Rに固定抵抗Rを介して負荷Lが接続され、交流電源Pに接続されている。まず、図2に示す等価回路図において、次の(式3)が成立し、点C−D間の電圧VC−Dは、点B−A間の電圧VB−Aに比例する(式3)参照)。VB―Aは負荷電圧に比例する。
Figure 0005793681
(式3)
そしてこの抵抗のアンバランスの度合いは負荷電流に比例する。従って、C−D間電圧VC―Dは、負荷電流に比例する。
従って、C−D間電圧VC―Dは負荷で消費される電力に比例することになる。
このように、フルブリッジ回路の場合、出力は、負荷電流による抵抗変化分と負荷電圧の積となるため、(式3)から明らかなように、出力がダイレクトに電力信号I・Vに比例した値となる。従って、適切な定数1/kを乗じることにより、C−D間電圧VC―Dから電力情報(I・V)を得ることができる。
これに対し、図6(a)及び(b)に電力計測装置の比較例を示す。図6(a)は、シングル抵抗を用いた場合、図6(b)は、ハーフブリッジ回路を用いた場合である。
シングル抵抗を用いた場合、固定抵抗をR、磁性体薄膜による抵抗成分をRとしたとき、磁性体薄膜の抵抗成分R両端の電圧Vmは以下のとおりとなる。
Figure 0005793681
(式4)
ここでRは負荷電流に比例するが、Vmは電力に比例しない。
負荷電流が0であるときも、V≠0であれば出力VmはVm≠0。
一方、図6(b)に示すように、ハーフブリッジ回路を用いた場合を考える。
ハーフブリッジ回路を用いた場合、磁性体薄膜による2つの抵抗成分をR、Rとしたとき、これら2つの抵抗成分をR、R両端の出力電圧V(、V)は以下のとおりとなる。
Figure 0005793681
(式5)
ハーフブリッジ回路において、出力は磁性体薄膜抵抗の中心値に負荷電流磁界による抵抗変化分を加えた値と負荷電圧との積に比例する。
そのため、出力には負荷電流によらない項(0.5V)が含まれ、出力値は電力値とならない。
通常、kI<0.01となり、V中の電力情報は、1/50以下であり、信号処理で電力信号だけ取り出せたとしても、S/N比が極めて小さくなるという問題がある。ここでkは比例定数である。
このように、シングル抵抗の場合、あるいはハーフブリッジの場合は、直接電力信号として取り出すことができないことがわかる。
これに対し、本発明のフルブリッジ回路を用いた場合、出力は負荷電流による抵抗変化分と、負荷電圧の積となるため、出力がそのまま電力信号となっている。従って、容易に電力成分の取り出しを行うことが出来ることが分かる。
以上説明してきたように、本実施の形態1の電力計測装置によれば、高抵抗の第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれに調整部3tを具備している。この調整部3tを構成する調整パターンpをトリミングすることで、抵抗値をそろえることができ、容易に抵抗値調整が可能で信頼性の高い調整部を備えた、高感度の電力計測装置を提供することが可能となる。
また、本発明の電力計測装置に、さらに小型のバイアス磁石を配置することで、より高感度化を図ることができる。
次に、本発明の電力計測装置において、磁性体薄膜に対して一方向に直流磁界を印加する磁界印加手段を有するのが望ましい点について説明する。
図7は磁化方向を示す説明図である。磁石などの磁界印加手段によりバイアス磁界(Hb)を印加して、計測を行う場合、磁性体薄膜[4つの成分]中の磁化(J)は、計測電流に応じて発生する磁界である計測磁界(Hex)との和となる。
磁化(J)=Hb+Hex
ところで、磁性体薄膜の電気抵抗値は、図8(a)及び(b)に説明図を示すように、R−Rの4個の磁性体薄膜成分からなるブリッジを考えた場合、電流iと磁化J間の角度をθとしたとき、
Rmr=R+ΔRcosθ
となり、抵抗Rmrはθが0の場合抵抗値は最大となり、θが90°の場合、最小となることがわかる。つまり、電流iと磁化J間の角度をθが0であるとき、抵抗値は最大となり、検出感度は最大となる。
また、R−Rの4個の磁気抵抗成分からなるブリッジに対してバイアス磁界のみを印加した場合と,バイアス磁界方向に対して90°方向の計測磁界がバイアス磁界に重畳されている場合を,図9(a)及び(b)にそれぞれ示す。計測磁界は,計測電流に由来して発生している磁界である。
又、外部からの計測磁界強度の変化に対する抵抗値の変化を図10に示す。RはHex=0の場合,磁化ベクトルJの方向はバイアス磁界Hbと同じ方向となる。この時Rに流れる電流方向と磁化ベクトルがなす角度は45°であり,Rmr=R+0.5ΔRとなる。計測電流が流れ,図9(b)のHex正方向に磁界が印加されると,磁化方向JはHb方向からHex方向に傾いてくる。傾きが大きくなるにつれRを流れる電流と磁化方向Jのなす角θが大きくなり、Rの抵抗値は減少する。HexがHbと等しくなった時,磁化方向JとRを流れる電流のなす角度が90°となり,Rmr=Rとなり抵抗値は最小値をとる。さらに強いHexを与えると、磁化方向JとRを流れる電流のなす角は90°を超えるので、抵抗値は上昇する。計測電流が逆方向に流れる。一方、−Hex方向の磁界が加わる場合は、−Hexの絶対値の増加と共に磁化方向JはHb方向から−Hex方向に傾き、抵抗値は上昇する。Hb=|−Hex|のとき磁化方向JとRに流れる電流方向が平行(θ=0)となり抵抗値は最大値Rmr=R+ΔRとなる。さらに−Hexの絶対値を大きくすると磁化方向Jはさらに−Hex側に傾き、Rを流れる電流方向と磁化方向Jのなす角が広がり、抵抗値は小さくなる。RはRと同じ電流方向であるため、Hexに対してRと同じ抵抗変化を示す。R,Rに流れる電流方向はRに流れる電流方向と90°違うため、Hexに対してRと逆の抵抗変化を示す。
さらに素子に印加される電圧が一定のとき、計測磁界強度と素子出力電圧との関係を図11に示す。先に求めたHexに対するR〜Rの値を(式3)に当てはめた。また、入力電圧VB−Dは一定とした。
Figure 0005793681
(式6)
以上のように,ブリッジ構成を成す4区間が、それぞれの区間において長手方向が隣り合う区間の長手方向とのなす角が90°の関係をなすように構成し,一次導体による磁界に略直交する方向にバイアス磁界を印加することで、出力を大きくすることが出来る。
このように、ブリッジ構造をもつ磁性体薄膜に対して一方向に直流磁界を印加する磁界印加手段を有することで、磁性体薄膜の磁化方向を容易に制御することができ、出力が大きくなり、線形性を得ることができる。なお、この構成によれば、一方向に直流磁界を印加すればよいため、ブリッジ構成を成す4区間の磁性体薄膜に対し、ひとつの磁界印加手段でよく、電力計測装置の装置構成の簡略化を図ることが可能となる。これに対し前述した非特許文献2の薄膜電力計の場合は、隣接要素毎に計測磁界の方向を変えるかあるいは一次導体を曲げる必要があり、装置構成が複雑となる。
また、交流の素子電流により生ずる磁界よりも大きい直流磁界を設けることで、薄膜両端の出力のふらつきを抑制することができる。
さらにまた、4区間を構成する高抵抗の第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのうち、抵抗値Rからのずれを生じた磁性体薄膜に対し、必要な区間のみバイアス磁界を印加することにより、出力特性を調整することができる。
なお、本実施の形態1では、抵抗体薄膜を用いた調整部3tに加え、バイアス磁界を印加するバイアス印加手段を用いたが、調整部3tを用いることなく、バイアス磁界を印加するバイアス印加手段のみを用いるようにしてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態2の電力計測装置について説明する。図12にこの電力計測装置で用いられる磁界センサの上面図、図13に断面図を示す。図13は図12のX1−X1断面図である。この磁界センサは図12及び13に示すように、シリコンからなる基板1表面に絶縁膜2として酸化シリコン膜を形成し、この絶縁膜2上に強磁性特性を有する磁性体薄膜3からなる第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dを形成している。第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dは、4つのミアンダパターンRm1、Rm2、Rm3,Rm4を形成している。このミアンダパターンRm1、Rm2、Rm3,Rm4の直径方向に沿って給電部5A、5Bを構成する導体パターンと、検出部5C、5Dとしての導体パターンとを具備したものである。この検出部5C、5Dとしての導体パターンは、給電部5A、5Bから供給される素子電流の方向に直交する方向に形成される。そして各導体パターンの先端にはパッド10A、10B、10C、10Dが設けられており、この各パッド10A、10B、10C、10Dに、調整部5tを構成する調整パターンpが接続されている。ここでは各パッド10A、10B、10C、10Dが調整パターンpからなる調整部5tを構成するようになっている。
なお、本実施の形態でも、実施の形態1と同様、図2に原理説明図を示したように、ブリッジ構造をなす4つの磁性体薄膜3のパターンの中心に対して対称な位置にあり、この強磁性体薄膜パターンの周縁上にある点A、Bを通電部としている。そして、この線分ABを素子電流の供給方向とし、この方向ABに直交するとともに、線分ABを2等分する線分CDを出力取り出し方向すなわち検出方向としている。ここで素子電流を供給する給電部5A、5Bを結ぶ線分と、検出部5C、5Dを結ぶ線分は直交している。
ここで磁性体薄膜としては、単層構造の強磁性体薄膜のほか、強磁性体/非磁性導電体構造のアンチフェロ結合型薄膜、高保磁力強磁性体/非磁性導電体/低保磁力強磁性体構造の誘導フェリ非結合型薄膜、半強磁性体/強磁性体/非磁性導電体/強磁性体構造のスピンバルブ型薄膜、Co/Ag系統の非固溶系グラニュラー型薄膜などから選択して形成される。
また導体パターンとしては金、銅、アルミニウムなどが用いられる。
次に、この磁界センサの製造工程について説明する。
基板1としてのシリコン基板表面に、絶縁膜2としての酸化シリコン膜を形成し、この上層に、スパッタリング法により、磁性体薄膜3を形成する。
そして、フォトリソグラフィによりこの磁性体薄膜3をパターニングし、ミアンダ形状パターンを4つ、互いに隣接するミアンダ形状パターンの主パターンの方向が90°ずつずれるように形成する。
こののち、スパッタリング法により、金などの導電体薄膜を形成し、フォトリソグラフィによりパターニングし、図12及び図13に示すような、調整部5t、給電部5A、5B及び検出部5C、5Dを形成する。またこれら給電部及び検出部に相当する位置にパッド10A、10B、10C、10Dを形成する。
そして必要に応じて保護膜を形成し、磁界センサが完成する。
ここで、ミアンダ形状パターンの幅Wは10μm、長さLは1mmであった。このようにミアンダ形状パターンを構成することにより、電流方向はひとつのミアンダ形状パターンの中では、長手方向に沿った主パターンと短い副パターンの組み合わせとなっている。主パターンは副パターンに対して十分に大きいため、2方向の主パターンとみなすことができる。つまり長手方向に沿ったパターンの繰り返しパターンであるとみなすことができる。すなわち、図14に要部拡大図を示すように、主パターンは、互いに180°異なる方向のパターンの組み合わせパターンとなる。従って、パターン長がそのままRmrの増大につながることになる。
このように本実施の電力計測装置によれば、磁界センサを構成する磁性体薄膜の各ブロックをミアンダ形状パターンとしているため磁性体薄膜の幅が小さくなるだけでなく、パターン長が増大することになる。従って、そのままRmrの増大につながるため、電気抵抗が増大し、出力を大きくすることができる。
この磁界センサの出力特性を確認するため、図15に示すような測定装置を用いて実験を行った。図12乃至14に示した磁界センサ501の給電部A、Bに、交流電源507から変圧器506及び抵抗505を介して交流を供給する。そして、磁界センサ501の検出部C、Dにアンプ502を介して表示部としてのオシロスコープ504を接続したものである。503は安定化電源である。なおこの測定装置は鉄製のケーシング500内に収納されている。ここでは、この素子を搭載した素子基板を鉛直に配置し、素子と、測定すべき電流線との離間距離を約3mmとして測定を行った。
このようにして得られた電流値と、素子出力電圧によれば、アンプによるオフセット以外はオフセットもなく、信頼性の高いものとなる。
なお、前記実施の形態では、鉛直方向に配置した素子基板を用いた測定について説明したが、測定すべき電線を素子基板上に載せることによって測定を行うようにしてもよい。
また前記実施の形態において、各ミアンダ形状パターンにおいて幅及び膜厚は一定とするのが望ましい。
また、磁性体薄膜は、ミアンダ形状パターンのブリッジ構造であることから、専有面積当りの長さを大きくとることができ、高抵抗化をはかることができ、素子の外形を大きくすることなく、出力を大きくすることが可能となる。また、長い対称形であるため、素子電流方向に対して平行となるように形成することができ、高感度で、信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
さらにまた、ここでミアンダパターンは、ブリッジ構成を成す4区間が、それぞれの区間において長手方向が隣り合う区間の長手方向とのなす角が90°の関係となるように構成されている。従って隣り合う区間で抵抗変化が反対となり、もっとも効率よく抵抗値の不平衡が起こるため、出力を大きくすることが出来る。
ここで磁性体薄膜3は、図16に示すようにエポキシ樹脂などの保護膜11で覆われているのが望ましい。この構成によれば、磁力により表面に付着しやすい磁性粉を直接付着させないようにすることで出力特性の安定化を図ることが可能となる。
また、この電力計測装置においては磁界センサの入出力パッド10A−10Dをパッケージの4隅に配置することで端子をパッケージ内部で分離形成することができ、絶縁性を確保することが可能となる。
本実施の形態では、計測磁界を印加していないが、本実施の形態1の電力計測装置に対し、以下の実施の形態に示すように、一方向に小さな計測磁界を印加することで、より安定に電力計測を行うことが可能となる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図17(a)及び(b)にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3tを、抵抗値の調整量が確認できるように、目盛mを持つ調整パターンpで構成する。
この場合も製造後、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定し、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように調整パターンpをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整する。この調整パターンpはたとえばアルミニウムパターンで構成され、目盛mをもつ導体パターンで構成されている。
例えば、図1に示す、第1の磁性体成分3aにおいて測定された抵抗値の測定値rがr<Rであるとき、図17(a)及び(b)にトリミング方法の拡大図を示すように、レーザトリミングを行う。つまり、図17(a)に示す初期状態から、レーザトリミングを行い、図17(b)に示すように、除去部Cを形成する。このとき、あらかじめ測定された抵抗値と基準値との差から除去すべき範囲を決定し、除去位置の目盛mを決定しておくことで、より効率よく所望の抵抗値を得ることが可能となる。このようにレーザトリミングにより所望の目盛mまで除去部Cを形成することで調整パターンpのパターン幅が小さく、かつ長くなり、第1の磁性体成分3aの抵抗値は目盛m分だけ大きくなって、第1の磁性体成分3aの抵抗値はRにそろう。
なお、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpに非磁性体であるアルミニウムパターンを用いているため、磁性体部分の磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpに非磁性体である銅パターンを用いているため、磁性体部分の磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図18及び19にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3tを、レーザトリミングすることで、電流が通過する領域の膜厚を調整する。図18及び19において、(a)が平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
この場合も製造後、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定し、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように調整パターンpをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整する。この調整パターンpはたとえば銅パターンで構成されている。
例えば、図1に示す、第1の磁性体成分3aにおいて測定された抵抗値の測定値rがr<Rであるとき、図18及び19にトリミング方法の拡大図を示すように、レーザトリミングを行う。つまり、図18(a)及び(b)に示す初期状態から、レーザトリミングを行い、図19(a)及び(b)に示すように、調整パターンpの膜厚を小さくし、抵抗値を増大させる。このとき、あらかじめ測定された抵抗値と基準値との差から除去すべき範囲を決定し、厚さの変化量を決定しておくことで、より効率よく所望の抵抗値を得ることが可能となる。このようにレーザトリミングにより膜厚を薄くすることで調整パターンpの抵抗値が大きくなり、第1の磁性体成分3aの抵抗値はこの分だけ大きくなって、第1の磁性体成分3aの抵抗値はRにそろう。
なお、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpに非磁性体である銅パターンを用いているため、磁性体部分の磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図20及び21にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3tとして独立した調整部設けるのではなく、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dを構成する磁性体薄膜自身をレーザトリミングすることで、磁性体成分の膜厚を調整する。図20及び21において、(a)が平面図、(b)は(a)のA−A断面図である
この場合も製造後、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定し、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dそのものをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整する。
例えば、図1に示す、第1の磁性体成分3aにおいて測定された抵抗値の測定値rがr<Rであるとき、図20及び21にトリミング方法の拡大図を示すように、レーザトリミングを行う。つまり、図20(a)及び(b)に示す初期状態から、レーザトリミングを行い、図21(a)及び(b)に示すように、膜厚を小さくし、抵抗値を増大させる。このとき、あらかじめ測定された抵抗値と基準値との差から除去すべき範囲を決定し、厚さの変化量を決定しておくことで、より効率よく所望の抵抗値を得ることが可能となる。このようにレーザトリミングにより磁性体薄膜の膜厚が小さくなり、第1の磁性体成分3aの抵抗値はこの分だけ大きくなって、第1の磁性体成分3aの抵抗値はRにそろう。
なお、本実施の形態の電力計測装置では、調整部として磁性体薄膜そのものを用いているが、パターンを変更するのではなく膜厚を変更しているため、磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpの作用を磁性体薄膜そのものの膜厚調整で達成しているため、別途調整パターンpを設ける必要がなく、専有面積の低減を図ることができ、より小型化が可能となる。
なお、前記実施の形態では、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dそのものをレーザトリミングすることでブリッジ構造の不平衡を調整したが、別途調整パターンpを付加しても良い。この場合も同様にレーザトリミングを用いて抵抗値を調整することができる。
また、調整部が磁性体薄膜と、温度特性及び磁気特性が同等であるため、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図22及び23にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部3Qを、選択酸化により抵抗値が増大する金属パターンからなる調整パターンpで構成し、選択酸化により、電流通過部の膜厚を調整する。図22及び23において、(a)が平面図、(b)は(a)のA−A断面図である
この場合も製造後、まず、第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dのそれぞれの抵抗値を測定する。そして、ブリッジ構造の各抵抗値が一定の基準値Rとなるように第1乃至第4の磁性体成分3a乃至3dに対応する調整部3Qの調整パターンpを選択酸化し、一部の抵抗値を増大させることでブリッジ構造の不平衡を調整する。
例えば、図1に示す、第1の磁性体成分3aにおいて測定された抵抗値の測定値rがr<Rであるとき、図22及び23にトリミング方法の拡大図を示すように、選択酸化を行う。つまり、図22(a)及び(b)に示す初期状態から、選択酸化を行い、図23(a)及び(b)に示すように、一部を表面酸化させ、導体部分の膜厚を小さくし、抵抗値を増大させる。調整パターンpの表面が表面酸化により酸化膜パターンopとなり、実質的に抵抗が増大する。このとき、あらかじめ測定された抵抗値と基準値との差から除去すべき範囲を決定し、厚さの変化量を決定しておくことで、より効率よく所望の抵抗値を得ることが可能となる。このように選択酸化により、第1の磁性体成分3aの抵抗値はこの分だけ大きくなって、第1の磁性体成分3aの抵抗値はRにそろう。
なお、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpに非磁性体であるアルミニウムパターンを用いているため、磁気特性を変化させることなく抵抗値を調整することが可能である。
また、本実施の形態の電力計測装置では、調整パターンpを選択酸化したが、磁性体薄膜そのものを選択酸化してもよい。このため、別途調整パターンpを設ける必要がなく、専有面積の低減を図ることができ、より小型化が可能となる。
また、使用する調整パターンpは磁性体薄膜と、温度特性が同等であるものを用いるのが望ましい、これにより温度変化が生じた場合にもブリッジの平衡を保つことが可能となる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7の電力計測装置について説明する。
本実施の形態では、図24にこの電力計測装置の磁界センサの抵抗値調整工程を示すように、調整部13を、磁性体成分に並列接続されたチップ抵抗からなる調整用抵抗13cで構成したものである。この構成により、チップ抵抗の抵抗値を選択することで一部の抵抗値を増大あるいは低減させることでブリッジ構造の不平衡を調整する。
この構成によれば、容易にブリッジ出力の調整を行うことが可能となる。
実施の形態1乃至7では磁界センサはチップ部品で構成し、回路基板を構成するプリント配線基板に搭載するようにしたが、本実施の形態では回路基板を構成するプリント配線基板あるいはガラス基板上に直接磁性体薄膜のパターンを形成し集積化したものである。そして、給電部及び検出部を構成する導体パターンを配線パターンと同一工程で形成する。なお増幅器やA/D変換器、CPUはチップ部品で構成する。あるいはシリコン基板上に処理回路を集積化するとともに、絶縁膜を介して磁界センサを形成し、モノリシック素子とすることも可能である。
この構成によれば、より薄型化小型化が可能となる。
なお、前記実施の形態1乃至7で説明した電力計測装置においても、磁性体薄膜と磁界印か手段としての磁石を同一基板上に形成したモノリシック素子を用いてもよいことはいうまでもない。なおここでは磁性体薄膜として強磁性体薄膜を使用するのが望ましい。
上記電力計測装置においても、基板上に磁性体薄膜を形成することで、磁界センサと処理回路が基板で一体化でき更なる薄型化・小型化が可能となる。
また、上記電力計測装置において、配線パターンが給電部と検出電極部と同一の導体層で構成されたもので構成してもよい。この場合も磁界センサは、基板上に成膜された磁性体薄膜と、磁性体薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、磁性体薄膜両端の出力を検出する検出電極部とを具備している。
この構成によれば、通常の回路基板の構成に加えて、磁性体薄膜のパターンを形成するだけでよいため、極めて容易に形成可能である。
また、上記電力計測装置において、磁性体薄膜は、素子電流を供給する方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されるのが望ましい。ここで磁気抵抗が対称となる構成は、電気抵抗値が等しく、かつ同一形状の磁性体薄膜パターンで構成することで得られる。
この構成によれば、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されているため、Vmr出力の最大値を大きく取ることができ、システムとしてのS/N比が向上する。
また、上記電力計測装置において、検出部に並列接続されたコンデンサを有していてもよい。
この構成によれば、コンデンサでVmr信号を平滑化することで、周期未満の短期間で直流成分を取り出すことができるので高速で電力値を得ることができ、直流成分を簡単な回路構成で検出することが可能となる。
また、上記電力計測装置を用い、磁性体薄膜のパターンに対し、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように、素子電流を供給する工程と、前記素子電流の供給によって生起された出力の直流成分を取り出し、電力情報とする。
この構成によれば、力率を別途計測する必要がなく、簡単に計測することができ、かつ積算による場合に比べ、誤差も低減される。
また、磁界センサは、磁性体薄膜は、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されていてもよい。ここで、磁界センサは、磁性体薄膜と、磁性体薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、素子電流の供給方向に直交する方向における前記磁性体薄膜(端部間)の電圧を検出する検出部とを具備している。
この構成によれば、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
また本発明の磁界測定方法は、磁性体薄膜のパターンに対し、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように、素子電流を供給し、前記素子電流の供給方向に直交する方向で、前記磁性体薄膜(端部間)の電圧を検出することで磁界強度を測定する。
この構成によれば、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。なおここでは磁性体薄膜として強磁性体薄膜を使用するのが望ましい。
なお、前記実施の形態では、磁性体薄膜をスパッタリング法で形成したが、スパッタリング法に限定されることなく、真空蒸着法あるいは、塗布法、浸漬法などによっても形成可能である。
また基板についても、シリコンなどの半導体基板のほか、サファイア、ガラス、セラミック等の無機系基板あるいは、樹脂等の有機系基板などいずれを用いてもよい。これらのなかでは特に、いわゆる可撓性に優れ、薄くて軽いものを用いることが好ましく、例えば、印刷配線板等として広く使用されているプラスチックフィルムと同様の基板を使用することができる。より具体的には、プラスチックフィルム材質として公知の各種の材料、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリポロピレン(PP)、テフロン(登録商標)等が利用可能である。可撓性の基板を用いることにより、測定すべき電線を囲むように配置するなど、より高感度となるように配置することが可能となる。また、ハンダによる接合を考慮して、耐熱性の高いポリイミドフィルムを用いるようにしてもよい。なお基板の厚さは、特に限定されるものではないが、1〜300μm程度の厚さのものが好ましい。
さらにまた、ガラス基板などの基板上に直接磁性体薄膜パターンを形成して磁界センサを形成してもよいが、一旦チップを形成し、これをガラス基板やプリント配線基板などにワイヤボンディング法や、フリップチップ法で実装するようにしてもよい。またチップ内に、処理回路も含めて集積化することでより高精度で信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
なお前記実施の形態に限定されるものではなく、磁性体薄膜の出力取り出し方向を素子電流の供給方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成するものであれば適用可能である。これにより、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
また前記実施の形態では強磁性体薄膜を用いた磁界センサを用いたが、これに限定されることなく他の磁界センサを用いてもよい。
また、磁界センサを構成する磁性体薄膜は、高感度化の点からは磁化方向が素子電流の方向と一致するように形成されるのが望ましい。ブリッジを構成する場合の磁性体薄膜は、高感度化の点からは磁化方向が各ブリッジを流れる電流の方向に対して絶対値で45°あるいは135°の角度をなすように形成されるのが望ましい。
1 基板
2 絶縁膜
3、33 磁性体薄膜((環状)パターン)
3a、3b、3c、3d 磁性体成分
3t、3Q 調整部
p 調整パターン
m 目盛
C 除去部
10A、10B、10C、10D パッド
m1、Rm2、Rm3、Rm4 ミアンダパターン
5A、5B 給電部
5C、5D 検出部
5t 調整部
11 保護膜
13 調整部
13c 調整用抵抗
200 一次導体
500 ケーシング
501 磁界センサ
502 アンプ
503 安定化電源
504 オシロスコープ
505 抵抗
506 変圧器
507 交流電源

Claims (2)

  1. 電流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された磁性体薄膜と、
    前記一次導体に接続され、前記磁性体薄膜に素子電流を供給する電流入出力端子を備えた給電部と、
    前記電流入出力端子の中間位置に接続されるとともに、電圧入出力端子を備え、前記磁性体薄膜両端の出力を検出する検出部とを具備した電力計測装置であって、
    前記磁性体薄膜あるいはその周辺部の抵抗値を調整する調整部を具備し、
    前記調整部は、前記磁性体薄膜にバイアス磁界を印加するバイアス磁界印加部であり、
    前記磁性体薄膜はブリッジ構造をとるように順次配列された第1乃至第4の磁性体成分で構成され、前記第1乃至第4の磁性体成分の少なくとも一つが前記磁性体薄膜の磁気抵抗を調整する前記調整部を具備し、電流が流れる一次導体に対し、平行となるように、前記磁性体薄膜に素子電流を供給し、
    前記調整部は、前記第1乃至第4の磁性体成分を選択酸化可能に形成された領域である電力計測装置。
  2. 請求項に記載の電力計測装置であって、
    前記バイアス磁界印加部は磁石である電力計測装置。
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