JP5791066B2 - 上皮細胞の増殖促進方法、及び上皮細胞の増殖促進剤 - Google Patents

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本発明は、上皮細胞の増殖促進活性を有するペプチドを用いた上皮細胞の増殖促進方法、及び当該ペプチドを有効成分とする上皮細胞の増殖促進剤に関する。
ローヤルゼリーは、働き蜂が下咽頭腺と大腮腺から分泌する乳白色ゼリー状の栄養物質である。ローヤルゼリーは女王蜂幼虫の唯一の食糧であり、様々なビタミン類、ミネラル、糖質、アミノ酸、タンパク質成分を含み、非常に栄養価が高い。また、科学的に立証されてはいないものの、昔から、疲労回復作用、抗アレルギー作用、抗癌作用、免疫増強作用等の多くの薬理作用を有すると考えられている。このため、栄養補助食品や医薬品原料として広く用いられている。
近年、ローヤルゼリーの乾燥重量の約40%を占めるタンパク質が、ローヤルゼリーの主要な生理活性物質として、注目されてきている。例えば、特許文献1及び2には、ローヤルゼリー中に含まれている分子量約57kDaの糖タンパク質が、肝細胞の増殖促進活性を有することが記載されている。
ローヤルゼリーは、粘性が高い上に水に不溶性の成分も含まれており、食品や医薬品の原料としての取り扱い性が難しい場合も多い。ローヤルゼリーをタンパク質分解酵素等によって分解することにより、粘性を低下させ、水溶性や安定性を向上させることができる。さらに、分解により、ローヤルゼリーが有する生理活性が増強されることもある。例えば、特許文献3では、ローヤルゼリー中のタンパク質をプロテアーゼによって分解して得られる分子量3,000以下のペプチドを有効成分として含有する感染防御機能増強剤に係る発明が報告されている。また、ローヤルゼリー分解物が、分解処理前のローヤルゼリーには観察されなかった生理活性を有する場合もある。例えば、特許文献4では、ローヤルゼリーを、ペプシン並びにトリプシン及び/又はキモトリプシンにより処理して得られるローヤルゼリー分解物が、未分解のローヤルゼリーには観察されなかったアンギオテンシンI変換酵素に対する阻害活性を有することが報告されている。
現在用いられている方法の多くは、ローヤルゼリータンパク質を汎用されているプロテアーゼ等を用いて適当に分解しているにすぎない。汎用されている酵素は、ローヤルゼリーを本来の基質としているものではないため、不適当な箇所における分解により、本来有用であるペプチドの機能を失活させているおそれや、適当な箇所で分解されないことにより、生理活性を有するペプチドの産生効率が低くなるおそれがある。このため、ローヤルゼリーから、機能性ペプチド等の生理活性の高い分解物を効率よく得るためには、いずれの分解酵素を用いるかが重要である。実際に、特許文献4では、ペプシンにより処理して得られるローヤルゼリー分解物は、ペプシン並びにトリプシン及び/又はキモトリプシンにより処理して得られるローヤルゼリー分解物よりも阻害活性が顕著に低くなっている。
これに対して、ローヤルゼリーを主食とし、かつ、ローヤルゼリーの摂食により女王蜂への分化が制御されている女王蜂幼虫は、先天的にローヤルゼリーの分解に最適な分解酵素を有していると考えられる。つまり、女王蜂幼虫由来の分解酵素を用いることにより、ローヤルゼリーに含有されている機能性ペプチド等が有する生理活性を損なうおそれなく、ローヤルゼリーを分解することが期待できる。女王蜂幼虫由来の分解酵素については、特許文献5に、女王蜂幼虫中に内在する分解酵素を含有する組成物は、西洋ミツバチ(Apis mellifera) の2〜3日齢の女王蜂幼虫から遠心分離処理法を利用することによって調製できることが記載されている。さらに、特許文献5には、女王蜂幼虫由来の分解酵素を用いた分解処理により得られたローヤルゼリー分解物は、小腸由来の培養細胞に対して細胞増殖促進活性を有することも記載されている。
特開2002−80392号公報 特開2006−94727号公報 特開平8−59499号公報 特開2002−193997号公報 特開2008−228727号公報
特許文献5に記載されているローヤルゼリー分解酵素含有物は、ローヤルゼリーの分解に最適な酵素であり、当該ローヤルゼリー分解酵素含有物により得られたローヤルゼリー分解物は、細胞増殖促進活性を備えるペプチドを豊富に含んでいると考えられる。
しかしながら、ローヤルゼリー分解物中には、様々な成分が含まれており、細胞増殖促進活性を備えるペプチドはその一部でしかないため、所望の細胞増殖促進効果を得るためには、多量のローヤルゼリー分解物を摂取しなくてはならないこともあり、摂取効率が良くない。
本発明は、細胞増殖促進活性を有するペプチドを用いた上皮細胞の増殖促進方法、及び当該ペプチドを有効成分とする上皮細胞の増殖促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、西洋ミツバチの女王蜂幼虫由来の分解酵素によって分解されたローヤルゼリー分解物中に含まれている細胞増殖促進活性を有するペプチドを同定し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分とすることを特徴とする、上皮細胞の増殖促進剤、
(2) 腸管感染症及び潰瘍性大腸炎からなる群より選択される1種以上の疾患の治療又は予防のために用いられることを特徴とする、前記(1)に記載の上皮細胞の増殖促進剤、
(3) 前記(1)又は(2)に記載の上皮細胞の増殖促進剤を、上皮細胞に接触させること(但し、ヒトに接触させることを除く。)を特徴とする、上皮細胞の増殖促進方法、
を提供するものである。
本発明の上皮細胞の増殖促進方法及び上皮細胞の増殖促進剤により、上皮細胞の増殖を促進することができる。したがって、本発明の上皮細胞の増殖促進方法は、上皮細胞の損傷の修復を促進したり、腸管等の上皮細胞により形成される器官の形成が未発達である場合の器官形成を促進したりする効果が期待される。
実施例1において、Hi Trap Desaltingカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってRJ分解物(pH9)を分画し、吸光度(280nm)及び伝導率を測定した結果得られたチャート図である。 実施例1において、TSKgel ODS120−Tカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってフラクションD2(pH9)を分画し、吸光度(215nm)を測定した結果得られたチャート図である。 実施例1において、TSKgel ODS120−Tカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってフラクションD2−3を分画し、吸光度(215nm)を測定した結果得られたチャート図である。 実施例3において、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を示した図である。(a)は、ペプチドP1を含有させた培養液を添加した場合の結果であり、(b)は、ペプチドP2(非酸化型)を含有させた培養液を添加した場合の結果であり、(c)は、ペプチドP3を含有させた培養液を添加した場合の結果である。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、下記に示すペプチドからなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする。
配列番号1(Tyr−Ile−Asn−Arg−Glu−Tyr−Ile−Leu−Val−Leu)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP1)と、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2(Tyr−Pro−Asp−Trp−Ser−Phe−Ala)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP2(非酸化型))と、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のトリプトファン(Trp)が酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP2(酸化型))と、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3(Val−Pro−Ile−Phe−Asp−Arg−Tyr−Ile)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP3)と、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチド。
以下、これらのペプチドを、「細胞増殖促進活性ペプチド」と総称することがある。
本発明及び本願明細書において、ペプチド中のトリプトファンが酸化型であるとは、当該アミノ酸残基が、トリプトファン残基が酸化されて酸素原子が付加していることを意味する。
また、以下、ペプチドP2(非酸化型)とペプチドP2(酸化型)とを合わせて、ペプチドP2という。
後記実施例に示すようにペプチドP1、ペプチドP2、及びペプチドP3は、ローヤルゼリー(以下、RJ)を西洋ミツバチの女王蜂幼虫由来の分解酵素によって分解することによって得られるRJ分解物中に含まれているペプチドであり、上皮細胞に対する増殖促進活性を有する。より詳細には、これらのペプチドは、女王蜂幼虫由来の分解酵素によってRJをpH9で4時間以上酵素処理することにより得られたRJ分解物から、本発明者らによって新たに単離・同定された。
女王蜂幼虫由来の分解酵素は、女王蜂幼虫の体組織懸濁物から、酵素を含む組成物として得ることができる。具体的には、西洋ミツバチの2〜3日齢の女王蜂幼虫の体組織懸濁物を3層(白色固形の上層、黄白色に濁った溶液の中層、白色からやや褐色の沈殿の下層)に遠心分離し、黄白色に濁った溶液の中層を、RJ分解酵素含有物として回収することができる。
一般的に何らかの生理活性を有する機能性ペプチドは、そのN末端やC末端に数個のアミノ酸が付加された場合でも、当該ペプチドの機能性が失われない場合が多い。同様に、ペプチドP1、ペプチドP2、及びペプチドP3も、上皮細胞に対する増殖促進活性を損なうことなく、それらのN末端やC末端、さらにはその両方に、1〜数個のアミノ酸を付加することができる。
本発明においては、配列番号1〜3で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に付加されるアミノ酸の数は、アミノ酸付加後のペプチドが上皮細胞に対する増殖促進活性を有している限り、特に限定されるものではない。例えば、N末端又はC末端にそれぞれ、1〜5個、好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することができる。
よって、ペプチドP1、ペプチドP2、又はペプチドP3のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されており、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドも、ペプチドP1、ペプチドP2、及びペプチドP3と同様に、本発明の上皮細胞の増殖促進剤の有効成分とすることができる。
さらに、本発明においては、ペプチドP1、ペプチドP2、又はペプチドP3が有する上皮細胞の増殖促進活性を損なわない限り、ペプチドP1、ペプチドP2、又はペプチドP3中の1〜数個のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加させてもよい。具体的には、配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチド、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドからなる群より選択される1種以上のペプチドも、本発明の上皮細胞の増殖促進剤の有効成分とすることができる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤の有効成分である細胞増殖促進活性ペプチドは、ペプチド合成により得られた合成品であってもよく、RJ分解物から精製されたものであってもよい。例えば、RJ分解物をカラムクロマトグラフィーによって分画し、細胞増殖促進活性ペプチドを含有する画分を回収する。この回収された画分を、本発明の上皮細胞の増殖促進剤の有効成分とすることができる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、医薬品やサプリメント等の飲食品として単独で摂取されてもよく、他の飲食用組成物や医薬用組成物と同様に、飲食品や医薬品への添加剤として用いることもできる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤の剤型は、特に限定されるものではない。例えば、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等であってもよい。培養細胞等へ用いられる場合には、乾燥粉末や、水や緩衝液等の適当な溶液に溶解させた液剤であることが好ましい。一方、生物個体へ用いられる場合には、経口投与に適した剤型であることが好ましく、腸溶剤であることがより好ましい。その他、増殖を促進させたい上皮細胞が外用剤を直接塗布することが可能な部位にある場合には、軟膏剤やクリーム剤、液剤、ゲル剤であることも好ましい。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤に含まれる細胞増殖促進活性ペプチドは、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。また、これらの増殖促進剤に含まれる細胞増殖促進活性ペプチドの量は、該細胞増殖促進活性ペプチドの細胞増殖促進活性の作用効果が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、細胞増殖促進活性ペプチドの種類や、剤型等を考慮して、適宜決定することができる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、細胞増殖促進活性ペプチドのみからなるものであってもよく、その他の成分を含有するものであってもよい。その他の成分としては、細胞増殖促進活性ペプチドの活性を損なわない限り、どのような成分であってもよく、例えば、細胞増殖促進活性ペプチド以外のRJ由来の成分を含有していてもよく、抗菌性や抗酸化性等の機能性ペプチドを含有していてもよい。その他にも、本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、例えば、賦型剤、結合剤、界面活性剤、酸化防止剤、pH調整剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、殺菌剤、着色剤、矯味矯臭剤等の、医薬品や飲食品に添加される成分を含有することができる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤の製造方法は、含有される細胞増殖促進活性ペプチドの増殖促進活性を損なわない方法であれば特に限定されるものではなく、通常、機能性ペプチドを含有する飲食用組成物又は医薬用組成物を製造する場合に使用される方法を用いて製造することができる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤の投与量は、細胞増殖促進活性ペプチドの細胞増殖促進活性が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、細胞増殖促進活性ペプチドの種類、対象とする細胞の種類や状態、剤形、投与方法等を考慮して適宜決定することができる。例えば、培養細胞等の生物個体外の細胞へ用いる場合には、本発明の上皮細胞の増殖促進剤を、培養液中の細胞増殖促進活性ペプチドの含有量が0.1μg〜5mg/mL、好ましくは1μg〜1mg/mLとなるように培養液へ添加することができる。
生物個体に摂取させる場合には、本発明の上皮細胞の増殖促進剤の摂取量は、該細胞増殖促進活性ペプチドの細胞増殖促進活性が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、摂取する人や動物の体重、年齢、性別、剤型等により適宜決定することができる。例えば、細胞増殖促進活性ペプチドの一日当たりの摂取量が1μg〜5mg/kg、好ましくは1μg〜1mg/kgとなるように、1度に又は数回に分けて摂取させることが好ましい。
何らかの原因によって小腸上皮組織に損傷を受けた場合には、損傷部位近傍の正常な細胞が増殖することによって、損傷部位が修復される。したがって、本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、腸管上皮組織の損傷を伴う疾患の治療や予防のために好適に用いることができる。腸管上皮組織の損傷を伴う疾患としては、例えば、腸管感染症、潰瘍性大腸炎等が挙げられる。また、未熟児では腸管形成が不十分であり、壊死が起こりやすい等の問題が生じる場合があるが、本発明の上皮細胞の増殖促進剤によって腸管形成が促進される効果も期待することができる。
本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、腸管上皮細胞以外の上皮細胞、例えば皮膚由来上皮細胞に対しても増殖促進活性を有する。このため、本発明の上皮細胞の増殖促進剤は、火傷等の皮膚上皮組織の損傷に対する治療剤として機能することが期待できる。
例えば特許文献1や2に記載されている肝細胞の増殖促進活性を有するタンパク質は、経口投与された場合に、摂取された生体内の酵素によって消化を受けるため、増殖促進活性が大幅に低下してしまう可能性がある。これに対して、本発明の上皮細胞の増殖促進剤の有効成分はペプチドであり、タンパク質に比べて摂取された生物の体内消化酵素やpHの変化等による影響を受けにくいため、効率よく増殖促進作用を発揮し得る。
細胞増殖促進活性ペプチドにより上皮細胞の増殖が促進される作用機序は未だ明らかではないが、後記実施例4〜6の結果から、ペプチドP1の細胞増殖促進作用は、SrcファミリーからMEK5−ERK5経路、PI3K−Akt経路、JAK−STAT経路にシグナルが伝達されている可能性が示唆される。一方で、Srcファミリーを下流のシグナル伝達経として含み、細胞表面の受容体の一つとして働くことが報告されている分子として、インテグリンが挙げられる。インテグリンについては、これまでに、アポトーシスにおいてペプチドと相互作用をすることや、AktやSTATとの関連が報告されている(Ehattacharya, et al.: Biochem J, (2006) vol.397, p437-447)。また、インテグリンとSrcの間には、FAKを介してシグナルが伝達されているという報告もある(Guan: Matrix Biology (1997), vol.16, p195-200)。これらの知見から、ペプチドP1は、インテグリンとの相互作用により、FAKを介してSrcを活性化し、この結果、MEK5−ERK5経路、PI3K−Akt経路、JAK−STAT経路にシグナルが伝達されることによって細胞増殖が促進されている可能性がある。
本発明の上皮細胞の増殖促進方法は、少なくとも1種類の細胞増殖促進活性ペプチドを上皮細胞に接触させることを特徴とする。ペプチドP1、ペプチドP2、ペプチドP3等の細胞増殖促進活性ペプチドを接触させて増殖を促進させる上皮細胞は、生物個体の腸管や皮膚等の上皮組織に存在する細胞であってもよく、培養細胞等の生物個体外の細胞であってもよい。具体的には、生物個体外の細胞へは、当該細胞の培養液等に細胞増殖促進活性ペプチドを添加することによって、また、生物個体中の細胞へは、細胞増殖促進活性ペプチドを経口投与や上皮組織表面へ直接塗布又は噴霧することによって、細胞増殖促進活性ペプチドを上皮細胞に接触させることができる。
本発明において増殖を促進させる生物個体外の細胞は、ヒト由来の上皮細胞であってもよく、ヒト以外の動物由来の上皮細胞であってもよい。また、生物個体中の細胞増殖を促進させるために、細胞増殖促進活性ペプチドを投与する生物としては、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[参考例1] RJ分解酵素含有物の調製
約15gの3日齢の西洋ミツバチの女王蜂幼虫を、採取した後、氷冷した生理食塩水で洗浄した。その後、ポリエステル製の平均100メッシュの布(「テトロン」、東レ社製)を用いて女王蜂幼虫を裏ごしすることで、幼虫の表皮を破り、体液及び内臓を搾り出した。これにより、乳白色の幼虫懸濁物を調製した。
当該幼虫懸濁物を、pH7の50mMリン酸緩衝液を用いて2倍希釈した後、10,000×g、5℃で10分間遠心した。該遠心処理により、白色固形の上層、黄白色に濁った溶液の中層、白色からやや褐色の沈殿による下層の3層に分離された。該上層は脂質分、該下層は不溶性の体組織等と推定される。該中層を回収した後、さらに10,000×g、5℃で10分間遠心して3層に分離し、中層をRJ分解酵素含有物として回収した。該RJ分解酵素含有物を、除去しきれなかった不溶性の組織片を除去し、かつ滅菌するために、0.2μmのセルロースアセテート系フィルター(DISMIC−25CS、ADVANTEC社製)を用いて濾過した。これにより、黄色透明なRJ分解酵素含有物を得た。
該RJ分解酵素含有物のタンパク質濃度を、BSAを標準物質としてLowry法を用いて測定し、pH7の50mMリン酸緩衝液を用いて、3mg/mLのRJ分解酵素溶液を調製した。
[参考例2]RJタンパク質溶液の調製
RJ(中国産)10mLに、pH7.0の50mMリン酸緩衝液20mLを加えて混合して、RJ希釈溶液を調製した。該RJ希釈溶液を、25,000×g、5℃で20分間遠心した後、不溶性成分を除去し、上清を回収した。その後、該上清を、pH7.0の50mMリン酸緩衝液を用いて希釈し、30mg/mLのRJタンパク質溶液を調製した。
[実施例1]
RJ分解物中の上皮細胞増殖促進活性を有するペプチドP1を同定した。
1.RJタンパク質の分解
8mLの50mM Tri−HCl緩衝液(pH9)に、1mLの前記参考例2に記載する方法により調製したRJタンパク質溶液(30mg/mL)と、前記実施例1に記載する方法により調製した1mLのRJ分解酵素溶液(6mg/mL)を添加して混合した酵素反応液を調製した。該酵素反応液を37℃で24時間反応させた後、氷冷して反応を停止させ、RJ分解物(pH9)を得た。
2.ゲル濾過クロマトグラフィーによる分画
RJ分解物(pH9)を、Hi Trap Desaltingカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてサイズ分画を行った。吸光度(280nm)及び伝導率を測定して得られた溶出パターンに従って、比較的分子量の大きい脱塩した高分子量画分(以下、フラクションD1)と、比較的分子量が小さく塩を含む低分子量画分(以下、フラクションD2)の2つの画分を分取した。なお、低分子量画分は、分子量1000〜1500にピークを有する画分であった。
図1は、Hi Trap Desaltingカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってRJ分解物(pH9)を分画し、吸光度(280nm)及び伝導率を測定した結果得られたチャート図である。実線がRJ分解物(pH9)の吸光度、点線がRJ分解物(pH9)の伝導率を、それぞれ示している。図中、「D1」がフラクションD1として分取した画分であり、「D2」がフラクションD2として分取した画分である。
3.逆相クロマトグラフィーによる分画1
フラクションD2(pH9)を、TSKgel ODS120−Tカラム(東ソー社製)を用いて分画を行った。吸着バッファーとして、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を、溶出バッファーとして、0.05%TFA含有90%アセトニトリル溶液を、それぞれ用いて、グラジエント溶出を行った。
図2は、TSKgel ODS120−Tカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってフラクションD2(pH9)を分画し、吸光度(215nm)を測定した結果得られたチャート図である。図中、実線が吸光度を示し、点線がアセトニトリルの濃度を示す。図2に示すように、主に4つのピークが観察され、各ピークを含む4つの画分を、フラクションD2−1〜4としてそれぞれ分取した。各画分は、図2に示す。
4.フラクションD2−1〜4の上皮細胞増殖促進活性の測定
フラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べるため、ラットの小腸クリプト由来の培養細胞株IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。
具体的には、常法により培養されたIEC−6細胞の培養液を、FCS等の増殖因子を含有しない培養液(対照培養液)にフラクションD2−1〜4のいずれかを含有させた培養液に交換して、さらに24時間培養した。なお、各培養液には、フラクションD2−1〜4のいずれかを、フラクション由来のタンパク質濃度が10〜200μg/mLとなるように添加した。その後、培養液中に、テトラゾリウム塩WST−1(和光純薬工業社製)を添加して2時間培養した後、細胞培養液の450nmの吸光度を測定することにより、フォルマザン産物の産生量を測定した。各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量は、対照培養液を添加した場合に産生されたフォルマザン産物量に対する、各培養液を添加した場合に産生されたフォルマザン産物量の比率(%)で表した。ポジティブコントロールとして5%FCS含有培養液を、ネガティブコントロールとして対照培養液を、それぞれ用いた。
この結果、フラクションD2−3又はD2−4を含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、フラクションD2−3及びD2−4には、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。一方、フラクションD2−1又はD2−2を含有させた培養液で培養した場合には、いずれも、対照培養液で培養した場合と同様に細胞増殖量はほとんど変化せず、これらの画分には細胞増殖に著しい影響を与えることはないことが明らかになった。
5.逆相クロマトグラフィーによる分画2
フラクションD2−3(40〜45%アセトニトリル濃度によって溶出されるピークを有する画分)を、再度TSKgel ODS120−Tカラム(東ソー社製)を用いて分画を行った。吸着バッファーとして、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を、溶出バッファーとして、0.05%TFA含有90%アセトニトリル溶液を、それぞれ用いて、グラジエント溶出を行った。
図3は、TSKgel ODS120−Tカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってフラクションD2−3を分画し、吸光度(215nm)を測定した結果得られたチャート図である。図中、実線が吸光度を示し、点線がアセトニトリルの濃度を示す。図3に示すように、主に2つのピークが観察され、第1のピークの前のフラクションD2−3a(図3中の「a」)、第1のピークを含むフラクションD2−3b(図3中の「b」)、第2のピークを含むフラクションD2−3c(図3中の「c」)、及び第2のピークの後のフラクションD2−3d(図3中の「d」)の4つの画分を分取した。
6.フラクションD2−3a〜dの上皮細胞増殖促進活性の測定
フラクションD2−3a〜dが有する細胞増殖活性を調べるため、IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。具体的には、前記4.でフラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べた方法と同様にして行った。
この結果、フラクションD2−3aを含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、フラクションD2−3aには、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。一方、フラクションD2−3b、D2−3c、及びD2−3dを含有させた培養液で培養した場合には、いずれも、対照培養液で培養した場合と同様に細胞増殖量はほとんど変化せず、これらの画分には細胞増殖に著しい影響を与えることはないことが明らかになった。
7.フラクションD2−3a中のペプチドのアミノ酸配列の同定
上皮細胞に対する増殖促進活性を示したフラクションD2−3aに対して、MALDI−TOF MS分析を行った。その結果、7つの分子イオンピーク(m/z:906.633、1019.728、1132.727、1177.605、1230.750、1295.808)が得られた。それらに対してさらにMALDI−TOF MS/MS分析を行い、Mascot検索を行った結果、m/z:1295.808の分子イオンピークがMajor Royal Jelly Protein 1(MPJP1)の372〜381番目のYINREYILVL(Mw:1295.53)(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドであると同定された。
[実施例2]
RJ分解物中の上皮細胞増殖促進活性を有するペプチドP2(酸化型)及びペプチドP3を同定した。
1.逆相クロマトグラフィーによる分画1
実施例1の「2.ゲル濾過クロマトグラフィーによる分画」により得られたフラクションD2(pH9)を、Cosmosil(登録商標) 5C18−ARカラム(ナカライテスク社製)を用いて分画を行った。吸着バッファーとして、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を、溶出バッファーとして、0.05%TFA含有90%アセトニトリル溶液を、それぞれ用いて、グラジエント溶出を行った。この結果、主に5つのピークが観察され、各ピークを含む5つの画分を、フラクションD2’−1〜5としてそれぞれ分取した。
フラクションD2’−1〜5が有する細胞増殖活性を調べるため、IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。具体的には、前記4.でフラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べた方法と同様にして行った。この結果、フラクションD2’−5を含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、フラクションD2’−5には、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。
2.逆相クロマトグラフィーによる分画2
フラクションD2’−5を再度Cosmosil(登録商標) 5C18−ARカラム(ナカライテスク社製)を用いて、同様の条件で分画を行った。この結果、主に3つのピークが観察され、各ピークを含む5つの画分を、それぞれフラクションD2’−5a〜cとしてそれぞれ分取した。
フラクションD2’−5a〜cが有する細胞増殖活性を調べるため、IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。具体的には、前記4.でフラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べた方法と同様にして行った。
この結果、フラクションD2’−5a又はフラクションD2’−5cを含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、これらのフラクションには、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。
3.フラクションD2’−5a中のペプチドのアミノ酸配列の同定
上皮細胞に対する増殖促進活性を示したフラクションD2’−5aに対して、MALDI−TOF MS分析を行った。その結果、1つの分子イオンピーク(m/z:901.340)が得られた。それらに対してさらにMALDI−TOF MS/MS分析を行い、Mascot検索を行った結果、m/z:901.340の分子イオンピークがMPJP1の107〜113番目のYPDWSFA(Mw:901.93)(配列番号2)のアミノ酸配列からなり、かつ4番目のトリプトファン残基が酸化型であるペプチドであると同定された。
4.フラクションD2’−5c中のペプチドのアミノ酸配列の同定
上皮細胞に対する増殖促進活性を示したフラクションD2’−5cに対して、MALDI−TOF MS分析を行った。その結果、4つの分子イオンピーク(m/z:1022.617,1182.679,1256.705,1456.743)が得られた。それらに対してさらにMALDI−TOF MS/MS分析を行い、Mascot検索を行った結果、m/z:1022.617の分子イオンピークがMPJP1の366〜373番目のVPIFDRYI(Mw:1022.20)(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドであると同定された。
[実施例3]
IEC−6細胞を用いたWST−1法により、ペプチドP1、ペプチドP2(非酸化型)、及びペプチドP3が有する細胞増殖活性を比較した。ペプチドP1〜3は、常法により合成したものを用いた。
具体的には、常法により培養されたIEC−6細胞の培養液を、FCS等の増殖因子を含有しない培養液(対照培養液)にペプチドP1、ペプチドP2(非酸化型)、及びペプチドP3のいずれかを10〜500μg/mLになるように含有させた培養液に交換して、さらに24時間培養した。その後、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を、実施例1と同様にして測定した。ポジティブコントロールとして5%FCS含有培養液を、ネガティブコントロールとして対照培養液を、それぞれ用いた。
各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を図4に示す。(a)は、ペプチドP1を含有させた培養液を添加した場合の結果であり、(b)は、ペプチドP2(非酸化型)を含有させた培養液を添加した場合の結果であり、(c)は、ペプチドP3を含有させた培養液を添加した場合の結果である。図中、「0%FCS」は対照培養液を、「5%FCS」は5%FCS含有培養液を、それぞれ示している。また、残るカラムの各濃度は、各培養液中のペプチド濃度を示している。
この結果、いずれのペプチドを添加した場合にも、細胞増殖は有意に促進されており、ペプチドP1、ペプチドP2(非酸化型)、及びペプチドP3の全てが小腸上皮細胞の増殖促進活性を有することが確認された。中でも、ペプチドP1が最も強い細胞増殖促進作用を示した。
[実施例4]
ペプチドP1の上皮細胞増殖促進活性に関するシグナル伝達機構について、各種シグナル伝達阻害剤を用いて検討した。
シグナル伝達阻害剤としては、Genistein、AG1478、及びPP2を用いた。Genisteinは、細胞表面に存在する受容体型プロテインチロシンキナーゼ(PTK)と、非受容体型PTKの両方を非特異的に阻害するものである。また、AG1478は、代表的な受容体型PTKである上皮成長因子(EGF)のレセプターを特異的に阻害するものであり、PP2は、代表的な非受容体型PTKであるSrcファミリーを特異的に阻害するものである。
具体的には、常法により培養されたIEC−6細胞の培養液を、FCS等の増殖因子を含有しない培養液(対照培養液)にペプチドP1を含有させた培養液、又はペプチドP1と各種阻害剤を含有させた培養液に交換して、さらに24時間培養した。なお、ペプチドP1は100μg/mLになるように、Genisteinは10μMになるように、AG1478は2μMになるように、PP2は10μMになるように、それぞれ培養液に添加した。その後、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を、実施例1と同様にして測定した。ポジティブコントロールとして5%FCS含有培養液を、ネガティブコントロールとして対照培養液を、それぞれ用いた。
この結果、ペプチドP1及びGenisteinを含有させた培養液と、ペプチドP1及びPP2を含有させた培養液では、ペプチドP1のみを含有させた培養液よりも細胞増殖量が少なく、ペプチドP1による増殖促進活性は、GenisteinやPP2によって阻害されることが分かった。特にPP2を添加した場合には、ペプチドP1による増殖促進効果が完全に打ち消されていた。これらの結果から、ペプチドP1の増殖促進活性は、Srcファミリーを経て種々の下流経路に伝達されることにより発揮される可能性が示唆された。
一方で、ペプチドP1及びAG1478を含有させた培養液の細胞増殖量は、ペプチドP1のみを含有させた培養液と同程度であり、ペプチドP1による増殖促進活性は、AG1478によって阻害されないことが分かった。
[実施例5]
ペプチドP1の上皮細胞増殖促進活性とSrcファミリーの下流経路との関係を、各種シグナル伝達阻害剤を用いて検討した。
Srcファミリーの下流には、MAPK cascade、PI3K−Akt経路、及びJAK−STAT経路が存在すると報告されている。そこで、MAPK cascadeのMEKを阻害するPD98059、PI3K−Akt経路のPI3Kを阻害するWortmannin、JAK−STAT経路のJAKを阻害するAG490を培養液に添加し、ペプチドP1による増殖促進効果に対する影響を観察した。
具体的には、PD98059は47μMになるように、Wortmanninは10μMになるように、AG490は5μMになるように、それぞれ培養液に添加した以外は、実施例4と同様にしてIEC−6細胞の培養を行い、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を測定した。
この結果、3種類全ての阻害剤を添加した場合において、ペプチドP1による増殖促進活性は阻害された。これらの結果から、MAPK cascade、PI3K−Akt経路、及びJAK−STAT経路は、いずれもペプチドP1の細胞増殖促進活性に関与している可能性が示唆された。
[実施例6]
MAPK cascadeには、細胞増殖に関わる経路として、MEK1/2−ERK1/2経路とMEK5−ERK5経路が報告されている(例えば、Nishimoto, et al.: EMBO reports (2006), vol.7, p782-786)。そこで、ERK1/2を特異的に阻害するFR180204を用いて、ペプチドP1の上皮細胞増殖促進活性とMEK1/2−ERK1/2経路との関係を検討した。
具体的には、FR180204を10μMになるように培養液に添加した以外は、実施例4と同様にしてIEC−6細胞の培養を行い、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を測定した。
この結果、ペプチドP1及びFR180204を含有させた培養液の細胞増殖量は、ペプチドP1のみを含有させた培養液と同程度であり、ペプチドP1による増殖促進活性は、AG1478によって阻害されないことが分かった。これらの結果から、MAPK cascadeのうち、MEK5−ERK5経路が、ペプチドP1の細胞増殖促進活性に関与している可能性が示唆された。
本発明の上皮細胞の増殖促進方法及び上皮細胞の増殖促進剤は、上皮細胞の損傷からの回復を促進し得ることから、腸管感染症や潰瘍性大腸炎等の腸管上皮細胞の損傷を伴う疾患の治療や予防のための医薬や機能性食品等の有効成分として利用が可能である。さらに、上皮細胞の増殖メカニズムの解明等の学術分野でも利用が可能である。

Claims (3)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分とすることを特徴とする、上皮細胞の増殖促進剤。
  2. 腸管感染症及び潰瘍性大腸炎からなる群より選択される1種以上の疾患の治療又は予防のために用いられることを特徴とする、請求項1に記載の上皮細胞の増殖促進剤。
  3. 請求項1又は2に記載の上皮細胞の増殖促進剤を、上皮細胞に接触させること(但し、ヒトに接触させることを除く。)を特徴とする、上皮細胞の増殖促進方法。
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