JP2012092046A - 上皮細胞の増殖促進方法、及び上皮細胞の増殖促進剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定な配列のアミノ酸配列からなるペプチドと、別の特定な配列のアミノ酸配列からなるペプチドと、この「別の特定な配列」のアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、更に別の特定な配列のアミノ酸配列からなるペプチドと、これらのアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、からなる群より選択される1種以上のペプチド。当該ペプチドを、上皮細胞に接触させる、上皮細胞の増殖促進方法。
【選択図】なし
Description
しかしながら、ローヤルゼリー分解物中には、様々な成分が含まれており、細胞増殖促進活性を備えるペプチドはその一部でしかないため、所望の細胞増殖促進効果を得るためには、多量のローヤルゼリー分解物を摂取しなくてはならないこともあり、摂取効率が良くない。
(1) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
からなる群より選択される1種以上のペプチドを、上皮細胞に接触させることを特徴とする、上皮細胞の増殖促進方法、
(2) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
からなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする、上皮細胞の増殖促進剤、
(3) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
からなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする、前記(2)に記載の上皮細胞の増殖促進剤、
(4) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドからなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする、前記(3)に記載の上皮細胞の増殖促進剤、
(5) 腸管感染症及び潰瘍性大腸炎からなる群より選択される1種以上の疾患の治療又は予防のために用いられることを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれか一つに記載の上皮細胞の増殖促進剤、
(6) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、からなる群より選択される1種のペプチド、
を提供するものである。
配列番号1(Tyr−Ile−Asn−Arg−Glu−Tyr−Ile−Leu−Val−Leu)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP1)と、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2(Tyr−Pro−Asp−Trp−Ser−Phe−Ala)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP2(非酸化型))と、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のトリプトファン(Trp)が酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP2(酸化型))と、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3(Val−Pro−Ile−Phe−Asp−Arg−Tyr−Ile)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドP3)と、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチド。
以下、これらのペプチドを、「細胞増殖促進活性ペプチド」と総称することがある。
また、以下、ペプチドP2(非酸化型)とペプチドP2(酸化型)とを合わせて、ペプチドP2という。
約15gの3日齢の西洋ミツバチの女王蜂幼虫を、採取した後、氷冷した生理食塩水で洗浄した。その後、ポリエステル製の平均100メッシュの布(「テトロン」、東レ社製)を用いて女王蜂幼虫を裏ごしすることで、幼虫の表皮を破り、体液及び内臓を搾り出した。これにより、乳白色の幼虫懸濁物を調製した。
当該幼虫懸濁物を、pH7の50mMリン酸緩衝液を用いて2倍希釈した後、10,000×g、5℃で10分間遠心した。該遠心処理により、白色固形の上層、黄白色に濁った溶液の中層、白色からやや褐色の沈殿による下層の3層に分離された。該上層は脂質分、該下層は不溶性の体組織等と推定される。該中層を回収した後、さらに10,000×g、5℃で10分間遠心して3層に分離し、中層をRJ分解酵素含有物として回収した。該RJ分解酵素含有物を、除去しきれなかった不溶性の組織片を除去し、かつ滅菌するために、0.2μmのセルロースアセテート系フィルター(DISMIC−25CS、ADVANTEC社製)を用いて濾過した。これにより、黄色透明なRJ分解酵素含有物を得た。
該RJ分解酵素含有物のタンパク質濃度を、BSAを標準物質としてLowry法を用いて測定し、pH7の50mMリン酸緩衝液を用いて、3mg/mLのRJ分解酵素溶液を調製した。
RJ(中国産)10mLに、pH7.0の50mMリン酸緩衝液20mLを加えて混合して、RJ希釈溶液を調製した。該RJ希釈溶液を、25,000×g、5℃で20分間遠心した後、不溶性成分を除去し、上清を回収した。その後、該上清を、pH7.0の50mMリン酸緩衝液を用いて希釈し、30mg/mLのRJタンパク質溶液を調製した。
RJ分解物中の上皮細胞増殖促進活性を有するペプチドP1を同定した。
1.RJタンパク質の分解
8mLの50mM Tri−HCl緩衝液(pH9)に、1mLの前記参考例2に記載する方法により調製したRJタンパク質溶液(30mg/mL)と、前記実施例1に記載する方法により調製した1mLのRJ分解酵素溶液(6mg/mL)を添加して混合した酵素反応液を調製した。該酵素反応液を37℃で24時間反応させた後、氷冷して反応を停止させ、RJ分解物(pH9)を得た。
RJ分解物(pH9)を、Hi Trap Desaltingカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてサイズ分画を行った。吸光度(280nm)及び伝導率を測定して得られた溶出パターンに従って、比較的分子量の大きい脱塩した高分子量画分(以下、フラクションD1)と、比較的分子量が小さく塩を含む低分子量画分(以下、フラクションD2)の2つの画分を分取した。なお、低分子量画分は、分子量1000〜1500にピークを有する画分であった。
図1は、Hi Trap Desaltingカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってRJ分解物(pH9)を分画し、吸光度(280nm)及び伝導率を測定した結果得られたチャート図である。実線がRJ分解物(pH9)の吸光度、点線がRJ分解物(pH9)の伝導率を、それぞれ示している。図中、「D1」がフラクションD1として分取した画分であり、「D2」がフラクションD2として分取した画分である。
フラクションD2(pH9)を、TSKgel ODS120−Tカラム(東ソー社製)を用いて分画を行った。吸着バッファーとして、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を、溶出バッファーとして、0.05%TFA含有90%アセトニトリル溶液を、それぞれ用いて、グラジエント溶出を行った。
図2は、TSKgel ODS120−Tカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってフラクションD2(pH9)を分画し、吸光度(215nm)を測定した結果得られたチャート図である。図中、実線が吸光度を示し、点線がアセトニトリルの濃度を示す。図2に示すように、主に4つのピークが観察され、各ピークを含む4つの画分を、フラクションD2−1〜4としてそれぞれ分取した。各画分は、図2に示す。
フラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べるため、ラットの小腸クリプト由来の培養細胞株IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。
具体的には、常法により培養されたIEC−6細胞の培養液を、FCS等の増殖因子を含有しない培養液(対照培養液)にフラクションD2−1〜4のいずれかを含有させた培養液に交換して、さらに24時間培養した。なお、各培養液には、フラクションD2−1〜4のいずれかを、フラクション由来のタンパク質濃度が10〜200μg/mLとなるように添加した。その後、培養液中に、テトラゾリウム塩WST−1(和光純薬工業社製)を添加して2時間培養した後、細胞培養液の450nmの吸光度を測定することにより、フォルマザン産物の産生量を測定した。各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量は、対照培養液を添加した場合に産生されたフォルマザン産物量に対する、各培養液を添加した場合に産生されたフォルマザン産物量の比率(%)で表した。ポジティブコントロールとして5%FCS含有培養液を、ネガティブコントロールとして対照培養液を、それぞれ用いた。
フラクションD2−3(40〜45%アセトニトリル濃度によって溶出されるピークを有する画分)を、再度TSKgel ODS120−Tカラム(東ソー社製)を用いて分画を行った。吸着バッファーとして、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を、溶出バッファーとして、0.05%TFA含有90%アセトニトリル溶液を、それぞれ用いて、グラジエント溶出を行った。
図3は、TSKgel ODS120−Tカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによってフラクションD2−3を分画し、吸光度(215nm)を測定した結果得られたチャート図である。図中、実線が吸光度を示し、点線がアセトニトリルの濃度を示す。図3に示すように、主に2つのピークが観察され、第1のピークの前のフラクションD2−3a(図3中の「a」)、第1のピークを含むフラクションD2−3b(図3中の「b」)、第2のピークを含むフラクションD2−3c(図3中の「c」)、及び第2のピークの後のフラクションD2−3d(図3中の「d」)の4つの画分を分取した。
フラクションD2−3a〜dが有する細胞増殖活性を調べるため、IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。具体的には、前記4.でフラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べた方法と同様にして行った。
この結果、フラクションD2−3aを含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、フラクションD2−3aには、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。一方、フラクションD2−3b、D2−3c、及びD2−3dを含有させた培養液で培養した場合には、いずれも、対照培養液で培養した場合と同様に細胞増殖量はほとんど変化せず、これらの画分には細胞増殖に著しい影響を与えることはないことが明らかになった。
上皮細胞に対する増殖促進活性を示したフラクションD2−3aに対して、MALDI−TOF MS分析を行った。その結果、7つの分子イオンピーク(m/z:906.633、1019.728、1132.727、1177.605、1230.750、1295.808)が得られた。それらに対してさらにMALDI−TOF MS/MS分析を行い、Mascot検索を行った結果、m/z:1295.808の分子イオンピークがMajor Royal Jelly Protein 1(MPJP1)の372〜381番目のYINREYILVL(Mw:1295.53)(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドであると同定された。
RJ分解物中の上皮細胞増殖促進活性を有するペプチドP2(酸化型)及びペプチドP3を同定した。
1.逆相クロマトグラフィーによる分画1
実施例1の「2.ゲル濾過クロマトグラフィーによる分画」により得られたフラクションD2(pH9)を、Cosmosil(登録商標) 5C18−ARカラム(ナカライテスク社製)を用いて分画を行った。吸着バッファーとして、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を、溶出バッファーとして、0.05%TFA含有90%アセトニトリル溶液を、それぞれ用いて、グラジエント溶出を行った。この結果、主に5つのピークが観察され、各ピークを含む5つの画分を、フラクションD2’−1〜5としてそれぞれ分取した。
フラクションD2’−1〜5が有する細胞増殖活性を調べるため、IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。具体的には、前記4.でフラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べた方法と同様にして行った。この結果、フラクションD2’−5を含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、フラクションD2’−5には、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。
フラクションD2’−5を再度Cosmosil(登録商標) 5C18−ARカラム(ナカライテスク社製)を用いて、同様の条件で分画を行った。この結果、主に3つのピークが観察され、各ピークを含む5つの画分を、それぞれフラクションD2’−5a〜cとしてそれぞれ分取した。
フラクションD2’−5a〜cが有する細胞増殖活性を調べるため、IEC−6細胞を用いてWST−1法を行った。具体的には、前記4.でフラクションD2−1〜4が有する細胞増殖活性を調べた方法と同様にして行った。
この結果、フラクションD2’−5a又はフラクションD2’−5cを含有させた培養液で培養した場合には、対照培養液で培養した場合よりも細胞増殖量が増大しており、これらのフラクションには、細胞増殖促進活性を有する成分が含まれていることが確認された。
上皮細胞に対する増殖促進活性を示したフラクションD2’−5aに対して、MALDI−TOF MS分析を行った。その結果、1つの分子イオンピーク(m/z:901.340)が得られた。それらに対してさらにMALDI−TOF MS/MS分析を行い、Mascot検索を行った結果、m/z:901.340の分子イオンピークがMPJP1の107〜113番目のYPDWSFA(Mw:901.93)(配列番号2)のアミノ酸配列からなり、かつ4番目のトリプトファン残基が酸化型であるペプチドであると同定された。
上皮細胞に対する増殖促進活性を示したフラクションD2’−5cに対して、MALDI−TOF MS分析を行った。その結果、4つの分子イオンピーク(m/z:1022.617,1182.679,1256.705,1456.743)が得られた。それらに対してさらにMALDI−TOF MS/MS分析を行い、Mascot検索を行った結果、m/z:1022.617の分子イオンピークがMPJP1の366〜373番目のVPIFDRYI(Mw:1022.20)(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドであると同定された。
IEC−6細胞を用いたWST−1法により、ペプチドP1、ペプチドP2(非酸化型)、及びペプチドP3が有する細胞増殖活性を比較した。ペプチドP1〜3は、常法により合成したものを用いた。
具体的には、常法により培養されたIEC−6細胞の培養液を、FCS等の増殖因子を含有しない培養液(対照培養液)にペプチドP1、ペプチドP2(非酸化型)、及びペプチドP3のいずれかを10〜500μg/mLになるように含有させた培養液に交換して、さらに24時間培養した。その後、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を、実施例1と同様にして測定した。ポジティブコントロールとして5%FCS含有培養液を、ネガティブコントロールとして対照培養液を、それぞれ用いた。
この結果、いずれのペプチドを添加した場合にも、細胞増殖は有意に促進されており、ペプチドP1、ペプチドP2(非酸化型)、及びペプチドP3の全てが小腸上皮細胞の増殖促進活性を有することが確認された。中でも、ペプチドP1が最も強い細胞増殖促進作用を示した。
ペプチドP1の上皮細胞増殖促進活性に関するシグナル伝達機構について、各種シグナル伝達阻害剤を用いて検討した。
シグナル伝達阻害剤としては、Genistein、AG1478、及びPP2を用いた。Genisteinは、細胞表面に存在する受容体型プロテインチロシンキナーゼ(PTK)と、非受容体型PTKの両方を非特異的に阻害するものである。また、AG1478は、代表的な受容体型PTKである上皮成長因子(EGF)のレセプターを特異的に阻害するものであり、PP2は、代表的な非受容体型PTKであるSrcファミリーを特異的に阻害するものである。
一方で、ペプチドP1及びAG1478を含有させた培養液の細胞増殖量は、ペプチドP1のみを含有させた培養液と同程度であり、ペプチドP1による増殖促進活性は、AG1478によって阻害されないことが分かった。
ペプチドP1の上皮細胞増殖促進活性とSrcファミリーの下流経路との関係を、各種シグナル伝達阻害剤を用いて検討した。
Srcファミリーの下流には、MAPK cascade、PI3K−Akt経路、及びJAK−STAT経路が存在すると報告されている。そこで、MAPK cascadeのMEKを阻害するPD98059、PI3K−Akt経路のPI3Kを阻害するWortmannin、JAK−STAT経路のJAKを阻害するAG490を培養液に添加し、ペプチドP1による増殖促進効果に対する影響を観察した。
具体的には、PD98059は47μMになるように、Wortmanninは10μMになるように、AG490は5μMになるように、それぞれ培養液に添加した以外は、実施例4と同様にしてIEC−6細胞の培養を行い、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を測定した。
この結果、3種類全ての阻害剤を添加した場合において、ペプチドP1による増殖促進活性は阻害された。これらの結果から、MAPK cascade、PI3K−Akt経路、及びJAK−STAT経路は、いずれもペプチドP1の細胞増殖促進活性に関与している可能性が示唆された。
MAPK cascadeには、細胞増殖に関わる経路として、MEK1/2−ERK1/2経路とMEK5−ERK5経路が報告されている(例えば、Nishimoto, et al.: EMBO reports (2006), vol.7, p782-786)。そこで、ERK1/2を特異的に阻害するFR180204を用いて、ペプチドP1の上皮細胞増殖促進活性とMEK1/2−ERK1/2経路との関係を検討した。
具体的には、FR180204を10μMになるように培養液に添加した以外は、実施例4と同様にしてIEC−6細胞の培養を行い、各培養液を用いて培養した場合の細胞増殖量を測定した。
この結果、ペプチドP1及びFR180204を含有させた培養液の細胞増殖量は、ペプチドP1のみを含有させた培養液と同程度であり、ペプチドP1による増殖促進活性は、AG1478によって阻害されないことが分かった。これらの結果から、MAPK cascadeのうち、MEK5−ERK5経路が、ペプチドP1の細胞増殖促進活性に関与している可能性が示唆された。
Claims (6)
- 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
からなる群より選択される1種以上のペプチドを、上皮細胞に接触させることを特徴とする、上皮細胞の増殖促進方法。 - 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
からなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする、上皮細胞の増殖促進剤。 - 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列のN末端及びC末端の少なくともいずれか一方に1〜数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなるペプチドと、
からなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする請求項2に上皮細胞の増殖促進剤。 - 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドからなる群より選択される1種以上のペプチドを有効成分とすることを特徴とする請求項3に記載の上皮細胞の増殖促進剤。
- 腸管感染症及び潰瘍性大腸炎からなる群より選択される1種以上の疾患の治療又は予防のために用いられることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の上皮細胞の増殖促進剤。
- 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号2で表されるアミノ酸配列中の4番目のTrpが酸化型であるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、
配列番号3で表されるアミノ酸配列に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上皮細胞に対する増殖促進活性を有するペプチドと、
からなる群より選択される1種のペプチド。
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