JP5790477B2 - フロントフードのロック機構 - Google Patents

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本発明は、車両のフロントフードのロック機構に関する。
従来、前開きのフロントフードの車両には、フロントフードの全閉状態をロックするロック機構が設けられている。
このロック機構は、フロントフードに取着されたストライカと、車体側に取着されたラッチユニットとで構成され、ラッチユニットはメインラッチとセカンダリラッチとを有している。
メインラッチは、フロントフードの全閉状態でストライカに係止し全閉状態をロックする。
車室内からの操作でメインラッチを揺動させると、メインラッチはストライカを上昇させ、フロントフードは、前側が僅かに開き上昇可能な第1の半開状態となる。
セカンダリラッチは、第1の半開状態よりも僅かに開いたフロントフードの第2の半開状態でストライカに係止し、第2の半開状態を形成するものである。
したがって、セカンダリラッチは、高速走行中にメインラッチが誤操作された場合、風圧によりフロントフードが第1の半開状態から全開状態となることを阻止する。
ユーザーがフロントフードを全閉状態から全開状態にするには、まず、車室内からの操作でメインラッチによりフロントフードを第1の半開状態とし、次に、フロントフードの前側からの操作でセカンダリラッチを、該セカンダリラッチがストライカに係止しない退避位置に揺動させてフロントフードを持ち上げ、全開状態とする。
そして、メインラッチやセカンダリラッチを含むラッチユニットは、車体空間の前方に位置する車体フレームの箇所に複数のボルトにより締結されている。
特開2004−360416号 特開2006−299627号
一方、設計者が意図していない過酷な条件下での使用により、高速走行中に、全てのボルトが破損するなどしてラッチユニットが車体フレームから外れると、フロントフードの全閉状態、第1の半開状態、第2の半開状態を全て形成できなくなり、フロントフードが風圧により全開し前方の視界を遮る。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、設計者が意図していない過酷な条件下での使用により、走行中に、全てのボルトが破損するなどしてラッチユニットが車体フレームから外れた場合、フロントフードの半開状態を形成して、風圧によりフロントフードが全開状態となることを阻止するようにしたフロントフードのロック機構を提供することにある。
前記目的を達成するため本発明は、運転席の前方の車体空間を開閉する前開きのフロントフードと、複数のボルトにより車体側に締結され前記フロントフードに係合して前記フロントフードの全閉状態を形成するラッチユニットとを有するフロントフードのロック機構であって、前記複数のボルトが全て破損しても前記フロントフードの全閉状態よりも開いた前記フロントフードの半開状態を形成する取り付け片が、前記ラッチユニットと車体側とにわたって設けられていることを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、設計者が意図していない過酷な条件下での使用により、高速走行中にボルトが全て破断するなどして風圧によりラッチユニットと共にフロントフードが上昇すると、取り付け片によりフロントフードの全閉状態よりも開いたフロントフードの半開状態が形成される。
したがって、フロントフードの全開状態を阻止でき、運転者の視界を確保することができる。
また、フロントフードが走行中に半開状態になることから、運転者にフロントフードのロック機構に異常が生じたことを知らしめることができる。
請求項2記載の発明によれば、フロントフードが上昇する際に、取り付け片にはねじれなどの力が作用することがなく、主として引っ張り力のみが作用するので、取り付け片を最小限の厚さで最小限の大きさで形成でき、フロントフードのロック機構の軽量化、コンパクト化を図る上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、フロントフードが上昇するエネルギをエネルギ吸収部で吸収することから、フロントフードの上昇が停止する際の衝撃の発生を防止し、あるいは、衝撃を緩和でき、取り付け片やボルトの耐久性を高める上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、フロントフードのロック機構の部品点数の削減化、組み立て作業の簡易化を図る上で有利となる。
車両の前方から見たフロントフードの全閉状態の説明図である。 車両の後方から見たフロントフードの全閉状態の説明図である。 車両の前方から見たフロントフードの第1の半開状態の説明図である。 取り付け片の説明図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。 車両の側方から見たフロントフードの全閉状態の説明図である。 車両の側方から見たフロントフードの半開状態の説明図である。 図2とは異なった取り付け片とベースとの連結構造の説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
車両のフロントフード10は、運転席前方の車体空間を開閉するもので、後側を中心として前側が上方に開くように構成されている。
車体空間の前方上部には、フロントエンドアッパバー12が車幅方向に延在しており、フロントエンドアッパバー12の延在方向の中間部からフードロックステー14が下方に延在している。
フロントフード10のロック機構16は、フロントフード10の前方下面に取着されたストライカ20と、車体側に取着されたラッチユニット24と、取り付け片50とで構成されている。
ラッチユニット24は、ベース26と、メインラッチ28と、セカンダリラッチ30と、ポール32と、第1スプリング34、第2スプリング36、第3スプリング38とを有している。
ストライカ20は金属製の丸棒からなり、図1に示すように、フロントフード10下面のレインフォース42に取着される両端の基部2002と、各基部2002の端部から下方に垂設された脚部2004と、両脚部2004の下端を接続する係合軸2006とを有している。
ベース26は金属製の板材からなり、3本のボルトB1を介して、車体側であるフロントエンドアッパバー12およびフードロックステー14に締結されている。
ベース26には、係合軸2006の移動を可能としたベース側係合溝2602が形成され、ベース側係合溝2602は上下に延在し上方が開放されている。
メインラッチ28、セカンダリラッチ30、ポール32はそれぞれベース26に揺動可能に支持され、それぞれ金属製の板材で形成されている。
メインラッチ28にはメインラッチ側係合溝2802が形成されている。
メインラッチ側係合溝2802はベース側係合溝2602内に位置する係合軸2006に係合可能で、図1、図2に示すメインラッチ28の第1の揺動位置(イ)で、メインラッチ側係合溝2802は、ベース側係合溝2602内に位置する係合軸2006に係合し、ベース側係合溝2602内で係合軸2006を上下に移動不能に挟み込み、フロントフード10の全閉状態(A)が形成される。
図2に示すように、メインラッチ28の第1の揺動位置(イ)は、ポール32の係合部(不図示)がメインラッチ28の係合部(不図示)に係合することで保持され、この係合状態は第3スプリング38の弾性力により保持される。
ポール32の取り付け部にはケーブルワイヤWが取着され、運転席に設けられた操作部での操作によりケーブルワイヤWにより第3スプリング38の弾性力に抗してポール32が搖動すると、ポール32とメインラッチ28の係合状態が解除され、図3に示すように、メインラッチ28は第1スプリング34(図2参照)の弾性力により第2の揺動位置(ロ)となる。
第2の揺動位置(ロ)では、係合軸2006はメインラッチ側係合溝2802との係合が解除され、メインラッチ28の揺動によりメインラッチ側係合溝2802を構成する壁部に乗り上がり、係合軸2006はベース側係合溝2602内で上方への移動が可能な状態となる。
係合軸2006がメインラッチ側係合溝2802を構成する壁部に乗り上がった状態で、フロントフード10は全閉状態(A)から僅かに開いた第1の半開状態(B)となる。
図1に示すように、セカンダリラッチ30は支軸3002を介してベース26に揺動可能に支持されている。
セカンダリラッチ30は、基部3004の一端から突出する第1取り付け片3006と第2取り付け片3008とを有し、それらの間に係合軸2006の移動を可能とした案内溝3010が形成されている。
第1取り付け片3006の上端には、係合軸2006に係止可能なフック3012が設けられ、また、第1取り付け片3006の中間部には、指が掛けられる操作片3014が突出されている。
第2取り付け片3008の上部は、上端に至るにつれて第1取り付け片3006から次第に離れる傾斜部3016が形成されている。
ベース26と基部3004との間に第2スプリング36が架け渡され、第2スプリング36の付勢力によりセカンダリラッチ30を付勢しており、セカンダリラッチ30の長孔の縁部3020がベース26の突起2620に係止することで、セカンダリラッチ30は、図1〜図4に示すように、案内溝3010の下部がベース側係合溝2602に合致する起立位置(ハ)となる。
高速走行中にメインラッチ28が誤操作された場合、フロントフード10は第1の半開状態(B)となるため、風圧によりフロントフード10が開くが、係合軸2006がセカンダリラッチ30のフック3012に係止し、これによりフロントフード10は第1の半開状態(B)よりも僅かに開いた第2の半開状態(不図示)となり、フロントフード10の全開状態が阻止される。
ユーザーがフロントフード10を全閉状態(A)から全開状態にするには、まず、運転席での車室内操作でメインラッチ28によりストライカ20を上昇させてフロントフード10を第1の半開状態(B)とし、フロントフード10の前側から操作片3014に指を掛けてセカンダリラッチ30を第2スプリング36の弾性力に抗して、図3に想像線で示す退避位置(ニ)に揺動させる。
セカンダリラッチ30は退避位置(ニ)で、フック3012が係合軸2006の軌跡から外れ、フロントフード10の上方への移動を許容する。
そこでユーザーは、フロントフード10を持ち上げ、全開状態とする。
取り付け片50は、複数のボルトB1が全て破損し高速走行時に受ける風圧によりラッチユニット24と共にフロントフード10が上昇する際に、フロントフード10の全閉状態(A)よりも開いたフロントフード10の半開状態(C)(図6参照 )を形成するものである。
図1〜図5に示すように、取り付け片50は金属製の板材からなり、細長形状を呈して上下方向に延在し、その上部がラッチユニット24のベース26に連結され、下部がフードロックステー14にボルトB2で締結されることで、ラッチユニット24と車体側とにわたって設けられている。
より詳細に説明すると、取り付け片50の上部50Aは、図2に示すように、ベース26がフードロックステー14に当て付けられる面に溶接により固定され、ベース26と一体に上方に移動するように連結されている。取り付け片50とベース26との連結は、図7に溶接箇所を符号2650で示すようにスポット溶接により行ってもよく、あるいは、ボルト、ナットを用いるなど従来公知の様々な構造が採用可能である。
取り付け片50の上部50Aには、ベース26のボルト挿通孔と同軸上にボルト挿通孔5002が形成され、このボルト挿通孔5002に挿通されたボルトB1により、取り付け片50の上部50Aはベース26と共にフードロックステー14に締結されている。
取り付け片50の下部50Bにはボルト挿通孔5004が形成され、このボルト挿通孔5004に挿通されたボルトB2により、取り付け片50の下部50Bは、ラッチユニット24が締結された箇所から下方に離れたフードロックステー14の箇所に締結されている。
このボルトB2は、電装品であるホーン52を支持するブラケット54をフードロックステー14に締結するボルトB2と共用され、フロントフード10のロック機構16の部品点数の削減化、組み立て作業の簡易化を図る上で有利となっている。
また、図4〜図6に示すように、取り付け片50の長手方向の中間部に、風圧により上昇するフロントフード10により変形し、フロントフード10が上昇するエネルギを吸収するエネルギ吸収部50Cが設けられている。
図4に示すように、エネルギ吸収部50Cは、二股状に形成された2つの片体5006からなり、2つの片体5006は、上片部5006Aと、中間片部5006Bと、下片部5006Cとを有している。
上片部5006Aは、上部50Aから屈曲部5011を介してフードロックステー14の前方に延在している。
中間片部5006Bは、上片部5006Aの前端から屈曲部5012を介して下方に延在している。
下片部5006Cは、中間片部5006Bの下端から屈曲部5013を介してフードロックステー14側に延在し、その端部が屈曲部5014を介して下部50Bに接続されている。
したがって、エネルギ吸収部50Cは、4つの(複数の)屈曲部5011〜5014を含んで構成されている。
次に、本実施の形態の作用、効果について説明する。
設計者が意図していない過酷な条件下での使用により、高速走行中にメインラッチ側係合溝2802によりストライカ20が挟まれた全閉状態(A)で、3本のボルトB1が全て破断するなどしてラッチユニット24がフロントエンドアッパ―12およびフードロックステー14から切り離されると、風圧によりフロントフード10が上昇し、フロントフード10と一体にラッチユニット24も上昇する。
本実施の形態では、ラッチユニット24の上昇により、運転席に設けられた操作部とポール32の取り付け部との間の距離が大きくなることから、ケーブルワイヤWを介してポール32が搖動し、ポール32とメインラッチ28の係合状態が解除され、図3に示すように、メインラッチ28は第1スプリング34(図2参照)の弾性力により第2の揺動位置(ロ)となる。
上述のように第2の揺動位置(ロ)では、係合軸2006はベース側係合溝2602内で上方への移動が可能な状態であるため、風圧によりフロントフード10は上昇し、係合軸2006がセカンダリラッチ30のフック3012に係止する。
すなわち、係合軸2006がセカンダリラッチ30のフック3012に係止した状態で風圧によりフロントフード10が上昇する。
このフロントフード10を上昇させる力は取り付け片50に作用し、取り付け片50によりフロントフード10の全閉状態(A)よりも開いたフロントフード10の半開状態(C)が形成される。
本実施の形態では、係合軸2006がセカンダリラッチ30のフック3012に係止した状態でフロントフード10が上昇するので、取り付け片50により形成されるフロントフード10の半開状態(C)は、第2の半開状態よりもフロントフード10が開いた状態となっている。
したがって、本実施の形態によれば、フロントフード10の全開状態を阻止でき、運転者の視界を確保することができる。
また、走行中に、フロントフード10が半開状態になることから、運転者にフロントフード10のロック機構16に異常が生じたことを知らしめることができる。
また、取り付け片50は、フロントフード10が上昇する方向である上下方向に延在しているので、フロントフード10の上昇時、取り付け片50にはねじれなどの力が作用することがなく、主として引っ張り力のみが作用するので、取り付け片50を最小限の厚さ、大きさで形成でき、フロントフード10のロック機構16の軽量化、コンパクト化を図る上で有利となる。
また、フロントフード10の上昇が停止する際、エネルギ吸収部50Cの一部が変形された状態であれば、フロントフード10が上昇するエネルギの全てがエネルギ吸収部50Cの変形で吸収されているため、衝撃は発生しない。
一方、図6に示すように、フロントフード10の上昇が停止する際、エネルギ吸収部50Cの全ての部分が変形された状態であれば、すなわち、全ての屈曲部5011〜5014が伸びきった状態であれば、衝撃が発生する。しかしながら、エネルギ吸収部50Cの全ての部分が変形された状態では、フロントフード10が上昇するエネルギの一部を既に吸収しているため、その衝撃を緩和することができる。
したがって、フロントフード10の上昇が停止する際の衝撃の発生を防止し、あるいは、衝撃を緩和できるため、取り付け片50やボルトB2の耐久性を高める上で有利となる。
なお、取り付け片50の構造は、実施の形態の構造に限定されず、例えば、中間部に前方に突出する湾曲部を設けるなど種々考えられ、それらすべての構造に本発明は適用される。
要するに取り付け片50は、複数のボルトB1が全て破損し高速走行時に受ける風圧によりフロントフード10が上昇する際に、フロントフード10の全閉状態(A)よりも開いたフロントフード10の半開状態(C)を形成する大きさや形状で形成されていればよく、エネルギ吸収部50Cは必ずしも必要ではない。ただし、エネルギ吸収部50Cを設けると上述のようにフロントフード10の上昇が停止する際の衝撃の発生を防止し、あるいは、衝撃を緩和する上で有利となる。
また、本発明においてラッチユニット24は実施の形態の構造に限定されず、本発明は、従来公知の様々な構造のラッチユニット24に適用される。
10……フロントフード、16……フロントフードのロック機構、20……ストライカ、24……ラッチユニット、26……ベース、28……メインラッチ、30……セカンダリラッチ、3010……支軸、3012……フック、50……取り付け片、50C……エネルギ吸収部、B1、B2……ボルト。

Claims (4)

  1. 運転席の前方の車体空間を開閉する前開きのフロントフードと、
    複数のボルトにより車体側に締結され前記フロントフードに係合して前記フロントフードの全閉状態を形成するラッチユニットとを有するフロントフードのロック機構であって、
    前記複数のボルトが全て破損しても前記フロントフードの全閉状態よりも開いた前記フロントフードの半開状態を形成する取り付け片が、前記ラッチユニットと車体側とにわたって設けられている、
    ことを特徴とするフロントフードのロック機構。
  2. 前記取り付け片は細長形状を呈して上下方向に延在し、その上端が前記ラッチユニットに取着され、その下端が車体側に取着されている、
    ことを特徴とする請求項1記載のフロントフードのロック機構
  3. 前記取り付け片に、前記フロントフードが上昇する際に変形し前記フロントフードが上昇するエネルギを吸収するエネルギ吸収部が設けられている、
    ことを特徴とする請求項1または2記載のフロントフードのロック機構。
  4. 前記ラッチユニットの近傍に電装品がボルトで車体側に締結されており、
    前記電装品を車体側に締結する前記ボルトにより、前記取り付け片が車体側に締結されている、
    ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載のフロントフードのロック機構。
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