JP5790243B2 - セラミックハニカム構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、坏土のようなセラミック粘土については、その可塑性について様々な検討がなされており、セラミック粘土の可塑性は、保形性が大きく流動性が高いほど良好であるという研究報告がなされている(非特許文献1参照)。
また、特許文献2に開示された技術においては、各パラメータがある一定応力値(例えば2000Pa)を与えた時の粘弾性特性を規定しているが、各パラメータが概ね同等の特性を示すと判断できるのは、測定条件近傍の比較的狭い範囲に限られる。このため、坏土の特性を同等に維持しようとすると実際の生産現場における管理条件が厳しくなり、所望の成形速度が得られずに生産性が低下するといった不具合が生じるおそれがある。また、坏土の特性変動により成形条件が変化してしまい、得られる成形体にもバラツキが発生して外観不良及び形状不良の原因となるおそれがある。
また、特許文献4に開示された技術において、タイプCデュロメータによる硬度は、見かけ粘度の対数と良い相関が認められ、坏土の保形力よりも流動性特性を示すこととなり、保形性と流動性の最適なバランスを確保できないという問題がある。
また、非特許文献1に開示された技術は、セラミック粘土一般の可塑性に関するものであり、セラミックハニカム構造体に適用するためにはさらなる検討が必要となる。
従来においても、上述のように坏土の可塑性等について検討がなされてきた(特許文献1〜4及び非特許文献1参照)が、かかる技術に基づいてもセラミックハニカム構造体におけるセルヨレの発生を十分に防止することは困難であった。
少なくともセラミック原料とバインダと水とを含有する混合原料を混練して坏土を作製し、該坏土を押出成形して所定の長さに切断することによりハニカム成形体を得る混練・成形工程と、
上記ハニカム成形体を焼成して上記ハニカム構造体を得る焼成工程とを有し、
上記混練・成形工程においては、上記坏土を直径10mm、高さ10mmの円柱形状に成形してなる成形体を6mm/minの速度で圧縮し、縦軸を成形体にかかる応力(N/mm2)とし、横軸を成形体の歪として得られる応力−歪曲線について、変曲点を有すると共に、応力0、歪0の点から上記応力−歪曲線における圧縮開始初期の曲線部分に引いた接線の傾きによって規定される保形力が0.7〜1.6N/mm2であり、上記変曲点から歪が0.7になるまでに成形体に付与されたエネルギーとして規定される流動抵抗が0.1〜0.2Jであり、かつ上記保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)が0.15J/N/mm2以下である上記坏土を採用することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法にある(請求項1)。
上記混練・成形工程においては、まず、セラミック原料とバインダと水とを含有する混合原料を混練して坏土を作製する。そして、上記坏土を押出成形して所定の長さに切断することによりハニカム成形体を得る。このとき、上記坏土としては、上記保形力、上記流動抵抗、及びこれらの比(流動抵抗/保形力)が上記所定の範囲にあるものを採用する。
そのため、上記混練・成形工程後に得られる上記ハニカム成形体においては、自重等によるセル壁の変形(セルヨレ)が発生することを防止することができる。
上記製造方法においては、外皮と、該外皮内に多角形格子状に配設されたセル壁と、該セル壁内に区画されていると共に軸方向に沿って伸びる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体を製造する。
該セラミックハニカム構造体は、例えば貴金属等からなる排ガス浄化触媒を担持する担体として用いることができる。排ガス浄化触媒を担持したセラミックハニカム構造体は、排ガス流路中に配置して用いることができる。
上記混練・成形工程においては、少なくともセラミック原料とバインダと水とを含有する混合原料を混練して坏土を作製し、該坏土を押出成形して所定の長さに切断することによりハニカム成形体を得る。
上記保形力、上記流動抵抗、上記保形力に対する上記流動抵抗の比が上述の範囲から外れる場合には、セルヨレが発生し易くなるおそれがある。
この場合には、セルヨレの発生をより確実に防止することができる。
即ち、まず、上記坏土を直径10mm、高さ10mmの円柱形状に成形して成形体を得る。次いで、成形体を軸方向(高さ方向)に6mm/minの速度で圧縮する。このとき、成形体にかかる応力及び歪みを測定し、縦軸を成形体にかかる応力(N/mm2)とし、横軸を成形体の歪(単位なし)とする応力−歪曲線を得る(図7参照)。そして、同図に示すごとく、応力0、歪0の点から応力−歪曲線における圧縮開始初期の曲線部分(0点から変曲点Pまでの曲線部分)に引いた接線Kの傾きによって、上記保形力を規定することができる。
この場合には、上述のように保形力が0.7〜1.6N/mm2であり、流動抵抗が0.1〜0.2Jであり、かつ上記保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)が0.15J/N/mm2以下である上記坏土を得ることが容易になる。上記練り強さは、具体的には、混練条件を調整することにより制御することができる。例えば所定条件における混練回数を増やすことにより上記練り強さを0.85以下に調整することが可能になる。
上記坏土及び上記混合原料の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。
この場合には、より一層確実にセルヨレの発生を防止することができる。y=0.0013x+0.0569(65≦x≦95)の関係については、後述の実施例2において説明する。
この場合には、上述のように保形力が0.7〜1.6N/mm2であり、流動抵抗が0.1〜0.2Jであり、かつ上記保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)が0.15J/N/mm2以下である上記坏土を採用することによって得られる、セルヨレを防止できるという上述の作用効果がより顕著になる。
なお、セラミックハニカム構造体の強度を確保するという観点からは、上記セル壁の厚みは50μm以上にすることが好ましい。例えばセラミックハニカム構造体を所定のケースに収容して自動車の排気管に装着する場合には、ケースに収容するときに生じる圧力(ケーシング圧)に耐えうる強度が必要になる。セラミックハニカム構造体の強度は、セル壁の厚みに依存するため、十分な強度を確保するためには上述のようにセル壁の厚みを50μm以上にすることが好ましい。
この場合には、上述のように保形力が0.7〜1.6N/mm2であり、流動抵抗が0.1〜0.2Jであり、かつ上記保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)が0.15J/N/mm2以下である上記坏土を採用することによって得られる、セルヨレを防止できるという上述の作用効果がより顕著になる。
また、成形後のハニカム成形体は、スポンジなどの弾性材料からなる受け皿に配置されることが好ましい。これにより、ハニカム成形体の変形をより防止することができる。
上記焼成工程における焼成温度は、セラミック原料の種類やハニカム成形体の大きさ等によって適宜調整することができる。コージェライト化原料を用いる場合には、例えば温度1400〜1420℃で3〜12時間の焼成を行うことができる。
次に、セラミックハニカム構造体の製造方法の実施例及び比較例について説明する。
図1及び図2に示すごとく、本例において作製するセラミックハニカム構造体1は、外皮11と、外皮11内に多角形格子状に配設されたセル壁12と、セル壁12内に区画されていると共に、柱状のセラミックハニカム構造体1の軸方向に沿って伸びる多数のセル13とを有する。本例において、セル壁12は、正方形格子状に配設されており、セル13は、円柱状のセラミックハニカム構造体1の軸方向と垂直な断面、及びセラミックハニカム構造体1の端面14において正方形状となる。
混練・成形工程においては、図4に示すごとく、少なくともセラミック原料101とバインダ102と水103とを含有する混合原料を混練して坏土100を作製し、この坏土100を押出押出成形して所定の長さに切断してハニカム成形体10を得る(図5参照)。また、焼成工程においては、ハニカム成形体10を焼成してセラミックハニカム構造体1を得る(図1及び図2参照)。
本例においては、セラミック原料の組成及び混練条件を変更して作製した坏土を用いて複数のセラミックハニカム構造体を作製する。
このようにして、図4に示すごとく、タルク、カオリン等のセラミック原料101と、バインダ102と、潤滑材104と水103とを含有し、これらの原料の配合比及び混練条件が異なる27種類の坏土100(試料1〜27)を作製した。
各試料1〜27の坏土について、コージェライト化原料、水、バインダ、潤滑材の配合割合を後述の表1及び表2に示す。
練り強さは、混練前の混合原料の平均粒子径に対する混練後の坏土の平均粒子径の比によって規定される。混合原料及び坏土の平均粒子径は、混合原料及び坏土をそれぞれ水に分散させ、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径をもって平均粒子径とした。各試料の練り強さを後述の表1及び表2に示す。
まず、各試料の坏土を直径10mm、高さ10mmの円柱形状に成形して成形体を作製した。次いで、圧縮試験機である(株)島津製作所製のオートグラフ「卓上型EZ−GRAPH」を用いて、圧縮試験を行った。
具体的には、図6に示すごとく、まず、圧縮試験機2の荷重部(測定部)21に、成形体20を配置した。このとき円柱状の成形体20の上面側及び下面側にはそれぞれ厚み50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム25を配置した。そして、円柱状の成形体20を軸方向に6mm/minの速度で圧縮し、成形体20に応力(最大荷重:200N)を印加した。このとき、成形体にかかる応力及び歪みを測定し、成形体にかかる応力(N/mm2)を縦軸とし、成形体の歪(単位なし)を横軸とする応力−歪曲線を得た(図7参照)。そして、同図に示すごとく、応力0、歪0の点から応力−歪曲線における圧縮開始初期の曲線部分(0点から変曲点Pまでの曲線部分)に引いた接線Kの傾きを求め、これを保形力とした。その結果を後述の表1及び表2に示す。
「保形力」の測定において得られた応力−歪曲線において、変曲点から歪が0.7になるまで、具体的には成形体の高さが3mmになるまでに成形体に付与されたエネルギーを求めた。成形体に付与されたエネルギーは、変曲点Pから歪0.7の範囲における上記応力−歪曲線と、該応力−歪曲線における上記変曲点Pから横軸に下ろした垂線Lと、上記応力−歪曲線における歪0.7の点から横軸に下ろした垂線Mと、横軸とによって囲まれる面積によって算出することができる(図7参照)。このように算出されたエネルギーをもって流動抵抗とした。その結果を後述の表1及び表2に示す。
上記のようにして得られた各試料の保形力及び流動抵抗から、保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)を算出した。その結果を後述の表1及び表2に示す。
押出成形機3内に投入された坏土100は、スクリュー31によって金型33が配置された先端方向に送られる。金型33の手前には、坏土100を整流するためのフィルタ32が配置されており、フィルタ32を通って整流された坏土100が金型33に送られる。金型33は、四角形格子状の溝からなる排出流路(図示略)と当該溝の交点に坏土を分割供給する送給流路(図示略)とを備えた構造を有する。そして、坏土100は金型33から押し出された後、所定の長さで切断され、直径:105mm、高さ:110mmの円筒形状のハニカム構造に成形される。押出成形時の押出圧力は180kgf/cm2とした。また、金型としては、四角形状で、セル数が600メッシュ又は750メッシュの2種類のものを用いた。また、成形時には、セル壁の厚みを金型のスリット幅で調整し、90μm(3.5ミル)、75μm(3ミル)、75μm(2ミル)の3種類で成形した。
そして、押し出された成形体10は、自重による変形を防止すために、スポンジなどの弾性材料からなる受け皿4に載置した(図8参照)。このようにしてハニカム成形体10を得た。
このようにして、図1及び図2に示すごとく、セラミックハニカム構造体1を得た。
「セルヨレ発生率」
図3に示すごとく、セラミックハニカム構造体1において、セルピッチ(同図における幅A)の最小値からセル壁の厚み(同図における幅B)の最大値を差し引いた値を算出する。この値を一辺の長さとする正方形を想定し、この正方形に内接する円の直径と等しい直径を有する球状部を備えたピンゲージ5を作製する。そして、ピンゲージ5の球状部をセラミックハニカム構造体の端面から任意の20カ所のセル13内に挿入した。1カ所でもピンゲージ5がセル13内に入らなかった場合をセルヨレの発生ありとして評価した。そして、各試料の坏土を用いてそれぞれ20個のセラミックハニカム構造体を作製し、これら20個のセラミックハニカム構造体について、セルヨレの発生を調べた。20個のセラミックハニカム構造体のうち、セルヨレの発生ありとして評価されたサンプルの数を計測し、その割合を100分率で表し、セルヨレ発生率とした。その結果を表3に示す。
本例においては、セルヨレ発生率が0%であるセラミックハニカム構造体のセル壁の厚みと、保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)との関係を調べる例である。
実施例1の表1〜表3の結果に基づいて、セル数600メッシュ、セル壁の厚み95μmのセラミックハニカム構造体について、流動抵抗/保形力とセルヨレ発生率との関係を図10(a)に示す。
同様に、セル数600メッシュ、セル壁の厚み75μmのセラミックハニカム構造体について、流動抵抗/保形力とセルヨレ発生率との関係を図10(b)に示す。
さらに、セル数600メッシュ、セル壁の厚み65μmのセラミックハニカム構造体について、流動抵抗/保形力とセルヨレ発生率との関係を図10(c)に示す。
図11より知られるごとく、セルヨレの発生のないセラミックハニカム構造体は、上記流動抵抗/保形力(J/N/mm2)を縦軸(y)とし、上記セル壁の厚み(μm)を横軸(x)としたとき、y=0.0013x+0.0569(65≦x≦95)の関係を満足する。したがって、y=0.0013x+0.0569(65≦x≦95)の関係を満足するセラミックハニカム構造体は、セルヨレの発生をより確実に防止することができる。
11 外皮
12 セル壁
13 セル
10 ハニカム成形体
100 坏土
Claims (6)
- 外皮と、該外皮内に多角形格子状に配設されたセル壁と、該セル壁内に区画されていると共に軸方向に沿って伸びる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体の製造方法において、
少なくともセラミック原料とバインダと水とを含有する混合原料を混練して坏土を作製し、該坏土を押出成形して所定の長さに切断することによりハニカム成形体を得る混練・成形工程と、
上記ハニカム成形体を焼成して上記ハニカム構造体を得る焼成工程とを有し、
上記混練・成形工程においては、上記坏土を直径10mm、高さ10mmの円柱形状に成形してなる成形体を6mm/minの速度で圧縮し、縦軸を成形体にかかる応力(N/mm2)とし、横軸を成形体の歪として得られる応力−歪曲線について、変曲点を有すると共に、応力0、歪0の点から上記応力−歪曲線における圧縮開始初期の曲線部分に引いた接線の傾きによって規定される保形力が0.7〜1.6N/mm2であり、上記変曲点から歪が0.7になるまでに成形体に付与されたエネルギーとして規定される流動抵抗が0.1〜0.2Jであり、かつ上記保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)が0.15J/N/mm2以下である上記坏土を採用することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法において、上記坏土として、上記保形力に対する流動抵抗の比(流動抵抗/保形力)が0.12J/N/mm2以下であるものを採用することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法において、上記混練・成形工程においては、上記混合原料の平均粒子径に対する上記坏土の平均粒子径の比(坏土の平均粒子径/混合原料の平均粒子径)によって規定される練り強さが0.85以下となるように混練を行うことを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法において、上記流動抵抗/保形力(J/N/mm2)を縦軸(y)とし、上記セル壁の厚み(μm)を横軸(x)としたとき、y=0.0013x+0.0569(65≦x≦95)の関係を満足することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法において、上記成形工程においては、上記セル壁の厚みが75μm以下となるように上記坏土の成形を行うことを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法において、上記セラミック原料としては、コージェライト化原料を用いて、コージェライトからなる上記セラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
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