以下に、実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書で開示する発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本明細書の実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、発光素子の一態様について図1を用いて説明する。
図1(A)に示す素子構造は、一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれており、第1のEL層103と第2のEL層107との間には陽極101側から電子注入バッファー104、電子リレー層105、及び電荷発生層106が順次積層された構造を有する。
電荷発生層106は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層であり、発光素子のキャリアである正孔(ホール)と電子が発生する。電荷発生層106で発生した正孔は、第2のEL層107へ移動し、電子は電子リレー層105へ移動する。また、電子リレー層105は、電子輸送性が高いため、電子注入バッファー104へ電子を速やかに送ることが可能である。さらに、電子注入バッファー104は、第1のEL層103に電子を注入する場合の注入障壁を緩和することができるため、第1のEL層103への電子注入効率を高めることができる。
電子注入バッファー104には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。または、電子注入バッファー104を、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含む構成としてもよい。
図1(B)には、図1(A)の素子構造におけるバンド図を示す。図1(B)において、111は、陽極101のフェルミ準位、112は、陰極102のフェルミ準位、113は、第1のEL層103のLUMO(最低空分子軌道:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位、114は、電子リレー層105のLUMO準位、115は、電荷発生層106におけるアクセプターのアクセプター準位、116は、第2のEL層107のLUMO準位を示す。
図1(B)において、陽極101から注入された正孔は、第1のEL層103に注入される。一方、電荷発生層106で発生した電子は、電子リレー層105に移動した後、電子注入バッファー104を介して第1のEL層103へ注入され、正孔と再結合し、発光する。また、電荷発生層106で発生した正孔は、第2のEL層107へ移動し、第2のEL層107において、陰極102から注入された電子と再結合して発光する。
本実施の形態で示す発光素子において、電子リレー層105は、電荷発生層106において発生した電子を効率よく第1のEL層103に注入する層として機能するため、電子リレー層105には、LUMO準位が、電荷発生層106におけるアクセプターのアクセプター準位と、第1のEL層103のLUMO準位113との間の準位を占めるような材料を用いるのが好ましい。具体的には、LUMO準位がおよそ−5.0eV以上である材料を用いるのが好ましく、−5.0eV以上−3.0eV以下である材料を用いるのがより好ましい。
電荷発生層106に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー104に含まれる電子注入性の高い物質またはドナー性物質とは、それぞれ強いアクセプター性または強いドナー性を有するため、電荷発生層106と電子注入バッファー104が接した場合、界面にて電子の授受を起こし、発光素子の駆動電圧が上昇する。また、電荷発生層106と電子注入バッファー104とが接した界面でPN接合が形成されることで、発光素子の駆動電圧が上昇する可能性がある。しかしながら、本実施の形態で示す発光素子は、電子リレー層105によって電荷発生層106と電子注入バッファー104が接するのを防止することができ、電荷発生層106に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー104に含まれる電子注入性の高い物質またはドナー性物質とが、相互作用を起こすのを防ぐことができる。また、電子リレー層105に上記の範囲のLUMO準位を有する材料を用いることで、電子注入バッファー104との界面が強電界となるのを抑制し、且つ、電荷発生層106において発生した電子を効率よく第1のEL層103へと注入することができる。
また、図1(B)のバンド図に示すように、電荷発生層106から電子リレー層105に移動した電子は、電子注入バッファー104によって、注入障壁が緩和されるために第1のEL層103のLUMO準位113へと容易に注入される。なお、電荷発生層106において発生した正孔は、第2のEL層107に移動する。
次に、上述した発光素子に用いることができる材料について、具体的に説明する。
陽極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。
これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン等)、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の導電性ポリマーを用いても良い。但し、第1のEL層103の一部として、陽極101と接する電荷発生層を設ける場合には、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、様々な導電性材料を陽極101に用いることができる。
陰極102としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下であることが好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。
この他、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、または希土類金属の化合物(例えば、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiOx)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化エルビウム(ErF3)など)の薄膜と、アルミニウム等の金属膜とを積層することによって、陰極102を形成することも可能である。但し、第2のEL層107の一部として、陰極102と接する電荷発生層を設ける場合には、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を陰極102に用いることができる。
なお、本実施の形態に示す発光素子においては、陽極および陰極のうち、少なくとも一方が透光性を有すればよい。透光性は、ITOのような透明電極を用いるか、あるいは電極の膜厚を薄くすることにより確保できる。
第1のEL層103、及び第2のEL層107は、少なくとも発光層を含んで形成されていればよく、発光層以外の層が形成された積層構造であっても良い。なお、第1のEL層103に含まれる発光層と第2のEL層107に含まれる発光層とは、それぞれ異なっていてもよい。また、第1のEL層103および第2のEL層107はそれぞれ独立に、発光層以外の層が形成された積層構造であっても良い。発光層以外には、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質または電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等からなる層が挙げられる。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子輸送層、電子注入層等が挙げられ、これらは、陽極側から適宜組み合わせて構成することができる。さらに、第1のEL層103のうちの陽極101と接する側に電荷発生層を設けることもできる。
上述したEL層に含まれる各層を構成する材料について、以下に具体例を示す。
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
これ以外にも、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を正孔輸送層に用いることができる。
発光層は、発光物質を含む層である。発光物質としては、以下に示す蛍光性化合物を用いることができる。例えば、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。
また、発光物質としては、以下に示す燐光性化合物を用いることもできる。例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)2(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナート)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、(アセチルアセトナート)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナート)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))などが挙げられる。
なお、これらの発光物質は、ホスト材料に分散させて用いるのが好ましい。ホスト材料としては、例えば、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、BSPB(略称)などの芳香族アミン化合物、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−トリフェニルアミン(略称;PCBANB)などのカルバゾール誘導体、PVK(略称)、PVTPA(略称)、PTPDMA(略称)、Poly−TPD(略称)などの高分子化合物を含む正孔輸送性の高い物質や、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などの電子輸送性の高い物質を用いることができる。
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、Alq(略称)、Almq3(略称)、BeBq2(略称)、BAlq(略称)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他、Zn(BOX)2(略称)、Zn(BTZ)2(略称)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBD(略称)や、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称))、BPhen(略称)、BCP(略称)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
これ以外にも、PF−Py(略称)、PF−BPy(略称)などの高分子化合物を電子輸送層に用いることができる。
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入性の高い物質としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物が挙げられる。また、電子輸送性を有する物質中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることもできる。この様な構造とすることにより、陰極102からの電子注入効率をより高めることができる。
第1のEL層103または第2のEL層107に電荷発生層を設ける場合、電荷発生層は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層とする。第1のEL層103または第2のEL層107に電荷発生層を形成することにより、電極を形成する材料の仕事関数を考慮せずに陽極101または陰極102を形成することができる。
電荷発生層に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
また、電荷発生層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
なお、これらの層を適宜組み合わせて積層することにより、第1のEL層103または第2のEL層107を形成することができる。また、第1のEL層103または第2のEL層107の形成方法としては、用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)適宜選択することができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法などを用いることができる。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。
また、第1のEL層103と第2のEL層107との間には、陽極101側から順に電子注入バッファー104、電子リレー層105および電荷発生層106が設けられている。第2のEL層107と接して形成されるのは電荷発生層106であり、電荷発生層106と接して形成されるのは、電子リレー層105であり、電子リレー層105と第1のEL層103の間に接して形成されるのは、電子注入バッファー104である。
電荷発生層106は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む領域である。電荷発生層106、及び先に説明した第1のEL層103または第2のEL層107の一部に形成することができる電荷発生層106に、可視光領域に吸収スペクトルのピークが存在しない物質を用いることで、発光層から得られた発光の外部取り出し効率を向上させることができる。より具体的には、電荷発生層106として、可視光領域において波長420nm以上720nm以下に吸収のピークが存在しない物質を用いることで、実質的には発光効率を向上させることができる。
電荷発生層106に用いる正孔輸送性の高い物質としては、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。カルバゾール誘導体や芳香族炭化水素は、一般にHOMO準位が深く、EL層へのホール注入性が優れているため好適である。また、これらの物質はHOMO準位が深いため、酸化モリブデンのようなアクセプター性物質との間に電荷移動相互作用に基づく吸収が生じにくく、好適である。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
カルバゾール誘導体の具体例としては、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等が挙げられる。
芳香族炭化水素の具体例としては、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
また、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
ここで、特に、正孔輸送性の高い物質はアミン骨格を含まないことが好ましい。アミン骨格を含まない化合物とアクセプター性物質を用いて電荷発生層106を構成した場合、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質との電荷移動相互作用に基づく吸収が発生しないにも関わらず、電荷発生層として機能することを本発明者らは見出した。このことにより、可視光領域に吸収ピークを有さない電荷発生層を形成することが容易となるため、光の吸収による発光効率の低下を防ぐことができる。
なお、特許文献1で示されているように、従来は、電荷発生層においては酸化還元反応により電荷移動錯体が形成されていることが重要であるとされている。また特許文献1では、有機化合物のイオン化ポテンシャルが5.7eV以上になると、アクセプター性物質との間でその酸化還元反応が起こりにくくなるとされている。そのため、酸化還元反応を積極的に引き起こすため、有機化合物としてはイオン化ポテンシャルが5.7eV以下の物質、具体的にはアリールアミンのような電子供与性の高い物質が必要と考えられてきた。ところが、このようなアミン骨格を有する化合物とアクセプター性物質との間で酸化還元反応が起きると、可視光領域および赤外領域に電荷移動相互作用に基づく吸収が発生してしまう。実際、特許文献1で開示されている吸収スペクトルを見ると、アリールアミン骨格を有する化合物と酸化バナジウムを混合することにより、500nm付近および1300nm付近に新たな吸収が生じている。また、アリールアミン骨格を有する化合物と7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)を混合することにより、700nm、900nmおよび1200nm付近に新たな吸収が生じている。この場合、特に可視光領域の吸収ピークは発光効率を低下させる要因となってしまうが、従来は電荷移動錯体の形成が電荷発生層に必要不可欠であり、吸収はやむを得ないものと考えられてきた。
一方で、本発明の一態様では、アミン骨格を含まない化合物とアクセプター性物質を用いて電荷発生層106を形成しているが、可視光領域および赤外領域に電荷移動相互作用に基づく吸収を示さないにも関わらず電荷発生層として機能する。このような電荷発生層は、電界印加によるアシストにより電荷が発生し、ホール及び電子がEL層に注入されている可能性がある。この点は、従来の電荷発生層とは異なる点である。実際、アミン骨格を含まないカルバゾール誘導体である9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)は、イオン化ポテンシャルが5.7eV(理研計器社製、AC−2)であり、イオン化ポテンシャルの数値としてはかなり大きいためか、アクセプター性物質である酸化モリブデンと混合しても電荷移動相互作用に基づく吸収を生じない。しかしながら、電荷発生層としては機能するため、本発明の一態様に用いることができる。したがって、アミン骨格を含まない化合物のイオン化ポテンシャルの数値は、5.7eV以上が好ましい。
なお、アミン骨格を含まない化合物として、好ましくは、上述したCBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)、PCzPA(略称)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体や、t−BuDNA(略称)、DPPA(略称)、t−BuDBA(略称)、DNA(略称)、DPAnth(略称)、t−BuAnth(略称)、DMNA(略称)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、DPVBi(略称)、DPVPA(略称)等の芳香族炭化水素が挙げられる。さらに、PVKのようなカルバゾール誘導体のポリマーを用いても良い。
また、電荷発生層106に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。この他にも、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物を挙げることができる。
さらに、光学設計を行う際に、各層の膜厚を変化させると駆動電圧が上昇するおそれがある。従って、光学設計は、膜厚を変化させた場合においても、駆動電圧の変動が少ない電荷発生層106において行うことが好ましい。しかしながら、可視光領域に吸収スペクトルのピークが存在する電荷発生層106を厚膜化すると、発光層から得られた発光は、電荷発生層106に吸収されてしまい、発光の外部取り出し効率が低下してしまうおそれがある。そこで、電荷発生層106に用いる物質として、可視光領域に吸収スペクトルのピークが存在しない物質であることが好ましい。電荷発生層106において可視光領域に吸収スペクトルのピークが存在しない物質を用いることで、発光層から得られた発光の外部取り出し効率を向上させることができる。また、電荷発生層106を厚膜化することで、発光素子の短絡を防止することができる。
なお、電荷発生層106において、正孔輸送性の高い物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率でアクセプター性物質を添加することが好ましい。
なお、先に説明した第1のEL層103または第2のEL層107の一部に形成する電荷発生層は、電荷発生層106と同様の材料を用いて、同様の構造で形成することができる。また、第1のEL層103または第2のEL層107の一部に形成する電荷発生層と、電荷発生層106とに、可視光領域に吸収スペクトルのピークが存在しない物質を用いることで、発光層から得られた発光の外部取り出し効率をさらに向上させることができる。より具体的には、可視光領域において波長420nm以上720nm以下に吸収のピークが存在しない物質を用いることで、実質的には発光効率を向上させることができる。
電子リレー層105は、電荷発生層106においてアクセプター性物質がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層105には、電子輸送性の高い物質を含む層であり、またそのLUMO準位は、電荷発生層106におけるアクセプターのアクセプター準位と、第1のEL層103のLUMO準位との間の準位を占めるような材料を用いて形成するのが好ましい。具体的には、およそ−5.0eV以上のLUMO準位を有する材料を用いるのが好ましく、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下のLUMO準位を有する材料を用いるのがより好ましい。電子リレー層105に用いる物質としては、例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層105に用いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層105における電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
ここで、電子リレー層105は、駆動電圧を低減させるために薄膜化することが好ましい。また、電子リレー層105を薄膜化することにより発光層から得られた発光の外部取り出し効率を向上させることができる。特に、電子リレー層に好ましい化合物(下記のペリレン誘導体など)の多くは、可視光領域に強い吸収を有する場合が多いため、発光の外部取り出し効率の観点から、電子リレー層は1〜10nm程度の薄膜が好ましい。なお、電子リレー層はこのように薄膜化することが好ましいため、光学設計を行う際には、電荷発生層の膜厚の方を変化させることが好ましい。そして本発明の一態様では、電荷発生層は可視光領域に吸収ピークを有さないため、厚膜化しても外部取り出し効率が悪化しない。すなわち、駆動電圧を低減するための電子リレー層と、可視光領域に吸収ピークを有さず高効率化が達成できる電荷発生層との組み合わせは、大きな効果をもたらす。
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:HexPTC)等が挙げられる。
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN)6)、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。その他にも、パーフルオロペンタセン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ベンタデカフルオロオクチル−1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を電子リレー層105に用いることができる。
電子注入バッファー104は、電子リレー層105が受け取った電子を第1のEL層103に注入することができる層である。電子注入バッファー104を設けることにより、電荷発生層106と第1のEL層103との間の注入障壁を緩和することができるため、電荷発生層106で生じた電子を、第1のEL層103に容易に注入することができる。
電子注入バッファー104には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
また、電子注入バッファー104が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した第1のEL層103の一部に形成することができる電子輸送層の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
以上のような材料を組み合わせることにより、本実施の形態に示す発光素子を作製することができる。この発光素子からは、上述した発光物質からの発光が得られるが、発光層に用いる発光物質の種類を変えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ることもできる。
なお、本実施の形態では、2層のEL層が設けられた発光素子について記載しているが、EL層の層数は2層に限定されるものでは無く、2層以上、例えば3層あってもよい。発光素子にn(nは2以上の自然数)層のEL層を設ける場合、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層とm+1番目のEL層の間に、陽極側から順に電子注入バッファー、電子リレー層、及び電荷発生層を積層することで、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制することができる。
また、本実施の形態に示す発光素子は、各種基板の上に形成することができる。基板としては、例えばガラス、プラスチック、金属板、金属箔などを用いることができる。発光素子の発光を基板側から取り出す場合は、透光性を有する基板を用いればよい。ただし基板は、発光素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
なお、本実施の形態に示す発光素子の素子構造は、両電極が一基板上に格子状に形成されたパッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。また、スイッチの役割を果たす薄膜トランジスタ(TFT)等と電気的に接続された発光素子を有し、TFTによって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することもできる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTで構成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方からのみなるものであってもよい。また、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。また、単結晶半導体膜または微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)を用いてもよい。さらには、酸化物半導体、例えばインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体を用いることができる。
また、本実施の形態に示す発光素子の作製方法としては、ドライプロセス(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等)、ウェットプロセス(例えば、インクジェット法、スピンコート法、塗布法等)を問わず、種々の方法を用いて形成することができる。
また、本実施の形態に示す素子構造とすることにより、電荷発生層106と電子注入バッファー104との間に電子リレー層105が挟まれた構造となるため、電荷発生層106に含まれるアクセプターと、電子注入バッファー104に含まれる電子注入性の高い物質またはドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造とすることができる。従って、発光素子を低電圧で駆動することが可能となる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、実施の形態1で説明した基本構成に含まれる発光素子の一例について、図2(A)(B)を用いて説明する。具体的には、実施の形態1で示した発光素子のうち、電子注入バッファー104をアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、またはその化合物の単層とした場合について説明する。
本実施の形態で示す発光素子は、図2(A)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれており、第1のEL層103と第2のEL層107との間には陽極101側から電子注入バッファー104、電子リレー層105、及び電荷発生層106が順次積層された構造を有する。
本実施の形態2における陽極101、陰極102、第1のEL層103、第2のEL層107、電荷発生層106、および電子リレー層105には、実施の形態1で説明したものと同様の材料を用いることができる。
本実施の形態において、電子注入バッファー104に用いる物質としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)やストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ユウロピウム(Eu)やイッテルビウム(Yb)等の希土類金属、アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等の電子注入性の高い物質が挙げられる。
本実施の形態で示す発光素子は、電子注入バッファー104として、上記の金属またはその化合物の単層が設けられており、その膜厚は、駆動電圧の上昇を避ける為に非常に薄い膜厚(具体的には、1nm以下)で形成される。なお、本実施の形態において、第1のEL層103には電子注入バッファー104と接して電子輸送層108を形成するのが好ましく、電子注入バッファー104は、電子リレー層105とEL層103の一部である電子輸送層108とのほぼ界面に存在する。但し、電子輸送層108を形成した後、電子輸送層108上に電子注入バッファー104を形成する場合には、電子注入バッファー104を形成する物質の一部は、EL層103の一部である電子輸送層108にも存在しうる。同様に、電子注入バッファー104を形成する物質の一部は電子リレー層105にも存在しうる。
図2(B)には、図2(A)の素子構造におけるバンド図を示す。図2(B)において電子リレー層105と第1のEL層103との界面に電子注入バッファー104を設けることにより、電荷発生層106と第1のEL層103との間の注入障壁を緩和することができるため、電荷発生層106で生じた電子を第1のEL層103へと容易に注入することができる。また、電荷発生層106において発生した正孔は、第2のEL層107に移動する。
本実施の形態で示す電子注入バッファーの構造とすることにより、実施の形態3で示す電子注入バッファー(電子輸送性の高い物質にドナー性物質を添加して形成される)に比べて発光素子の駆動電圧を低減させることができる。なお、本実施の形態において、電子注入バッファー104における電子注入性の高い物質としては、アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等を用いることが好ましい。これらの電子注入性の高い物質は、空気中で安定な物質であるため、生産性が良く、量産に適する。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
(実施の形態3)
本実施の形態3では、実施の形態1で説明した基本構成に含まれる発光素子の一例について図3(A)(B)を用いて説明する。具体的には、実施の形態1で示した発光素子のうち、電子注入バッファー104を電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成した場合について説明する。
本実施の形態で示す発光素子は、図3(A)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれており、第1のEL層103と第2のEL層107との間には陽極101側から電子注入バッファー104、電子リレー層105、及び電荷発生層106が順次積層された構造を有する。また、電子注入バッファー104は、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される。
なお、本実施の形態では、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。これにより、膜質の良い電子注入バッファー104が得られ、また、反応性の良い電子注入バッファー104とすることができる。
本実施の形態3における陽極101、陰極102、EL層103、電荷発生層106、および電子リレー層105には、実施の形態1で説明したものと同様の材料を用いることができる。
本実施の形態において、電子注入バッファー104に用いる電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。
これ以外にも、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などの高分子化合物を用いることができる。
また、本実施の形態において、電子注入バッファー104に用いるドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等と用いることができる。また、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。また、電子注入バッファー104を形成する物質の一部は電子リレー層105にも存在しうる。
なお、本実施の形態において、第1のEL層103には電子注入バッファー104と接して電子輸送層108を形成してもよく、電子輸送層108を形成した場合、電子注入バッファー104に用いる電子輸送性の高い物質と、EL層103の一部である電子輸送層108に用いる電子輸送性の高い物質とは、同じであっても異なっていても良い。
本実施の形態で示す発光素子は、図3(A)に示すようにEL層103と電子リレー層105との間に電子輸送性の高い物質とドナー性物質とを含む電子注入バッファー104が形成されることが特徴である。この素子構造に対するバンド図を図3(B)に示す。
すなわち、電子注入バッファー104が形成されることにより、電子リレー層105と第1のEL層103との間の注入障壁を緩和することができるため、電荷発生層106で生じた電子を、第1のEL層103へと容易に注入することができる。また、電荷発生層106において発生した正孔は、第2のEL層107に移動する。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
(実施の形態4)
本実施の形態4では、実施の形態1で説明した基本構成に含まれる発光素子の別の一例について、図12を用いて説明する。
本実施の形態で示す発光素子は、図12(A)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれており、第1のEL層103と第2のEL層107との間には陽極101側から電子注入バッファー104、電子リレー層105、及び電荷発生層106が順次積層された構造を有する。
本実施の形態における陽極101、陰極102、電子注入バッファー104、電子リレー層105、及び電荷発生層106には、実施の形態1で説明したものと同様の材料を用いることができる。
本実施の形態において、第1のEL層103は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第1の発光層103aと、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2の発光層103bとを有する。また、第2のEL層107は、青緑色〜緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第3の発光層107aと、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第4の発光層107bとを有する。なお、第1の発光層103aと第2の発光層103bは逆の積層順であっても良い。また、第3の発光層107aと第4の発光層107bは逆の積層順であっても良い。
このような発光素子に対し、陽極101側をプラスに、陰極102側をマイナスにバイアスを印加すると、陽極101から注入された正孔と、電荷発生層106で生じ、電子リレー層105及び電子注入バッファー104を介して注入された電子とが第1の発光層103aまたは第2の発光層103bにおいて再結合して第1の発光330が得られる。さらに、陰極102から注入された電子と電荷発生層106で生じた正孔が第3の発光層107aまたは第4の発光層107bにおいて再結合して第2の発光340が得られる。
第1の発光330は、第1の発光層103aおよび第2の発光層103bの両方からの発光を合わせたものであるので、図12(B)に示す通り、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1のEL層103は2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈するものである。また、第2の発光340は、第3の発光層107aおよび第4の発光層107bの両方からの発光を合わせたものであるので、図12(B)に示す通り、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第2のEL層107は、第1のEL層103とは異なる2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈するものである。
したがって、本実施形態における発光素子は、第1の発光330および第2の発光340が重ね合わさる結果、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする発光が得られる。
本実施の形態において、例えば、第1の発光層103a(青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す)の発光輝度が、経時劣化あるいは電流密度により変化したとしても、スペクトル全体に対する第1の発光層103aの寄与は1/4程度であるため、色度のずれは比較的小さくて済む。
なお、上述の説明では、第1のEL層103が青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示し、第2のEL層107は青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示す場合を例に説明したが、それぞれ逆の関係であっても良い。すなわち、第2のEL層107が青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示し、第1のEL層103が青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示す構成であっても良い。また、第1のEL層103及び第2のEL層107はそれぞれ、発光層以外の層が形成された積層構造であっても良い。
次に、本実施の形態で示す発光素子のEL層に発光性の有機化合物として用いることのできる材料を説明する。ただし、本実施の形態で示す発光素子に適用できる材料は、これらに限定されるものではない。
青色〜青緑色の発光は、例えば、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)、9,10−ジフェニルアントラセンなどをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)などのスチリルアリーレン誘導体や、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(略称:DNA)、9,10−ビス(2−ナフチル)−2−t−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)などのアントラセン誘導体から得ることができる。また、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)等のポリマーを用いても良い。また、青色発光のゲスト材料としては、スチリルアミン誘導体が好ましく、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)や、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)スチルベン−4,4’−ジアミン(略称:PCA2S)などが挙げられる。特にYGA2Sは、450nm付近にピークを有しており好ましい。また、ホスト材料としては、アントラセン誘導体が好ましく、9,10−ビス(2−ナフチル)−2−t−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)が好適である。特に、CzPAは電気化学的に安定であるため好ましい。
青緑色〜緑色の発光は、例えば、クマリン30、クマリン6などのクマリン系色素や、ビス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジナト]ピコリナトイリジウム(略称:FIrpic)、ビス(2−フェニルピリジナト)アセチルアセトナトイリジウム(略称:Ir(ppy)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、上述のペリレンやTBPを5wt%以上の高濃度で適当なホスト材料に分散させることによっても得られる。また、BAlq、Zn(BTZ)2、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)クロロガリウム(Ga(mq)2Cl)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。また、青緑色〜緑色の発光層のゲスト材料としては、アントラセン誘導体が効率の高い発光が得られるため好ましい。例えば、9,10−ビス{4−[N−(4−ジフェニルアミノ)フェニル−N−フェニル]アミノフェニル}−2−tert−ブチルアントラセン(略称:DPABPA)を用いることにより、高効率な青緑色発光が得られる。また、2位にアミノ基が置換されたアントラセン誘導体は高効率な緑色発光が得られるため好ましく、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)が特に長寿命であり好適である。これらのホスト材料としてはアントラセン誘導体が好ましく、先に述べたCzPAが電気化学的に安定であるため好ましい。また、緑色発光と青色発光を組み合わせ、青色から緑色の波長領域に2つのピークを持つ発光素子を作製する場合、青色発光層のホストにCzPAのような電子輸送性のアントラセン誘導体を用い、緑色発光層のホストにNPBのようなホール輸送性の芳香族アミン化合物を用いると、青色発光層と緑色発光層との界面で発光が得られるため好ましい。すなわちこの場合、2PCAPAのような緑色発光材料のホストとしては、NPBの如き芳香族アミン化合物が好ましい。
黄色〜橙色の発光は、例えば、ルブレン、4−(ジシアノメチレン)−2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−6−メチル−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エテニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(Ir(thp)2(acac))、ビス(2−フェニルキノリナト)アセチルアセトナトイリジウム(Ir(pq)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。特に、ゲスト材料としてルブレンのようなテトラセン誘導体が、高効率かつ化学的に安定であるため好ましい。この場合のホスト材料としては、NPBのような芳香族アミン化合物が好ましい。他のホスト材料としては、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(略称:Znq2)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq2)などの金属錯体を用いることができる。また、ポリ(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。
橙色〜赤色の発光は、例えば、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−4H−ピラン(略称:BisDCM)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[2−(ジュロリジン−9−イル)エチニル]−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エテニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(略称:Ir(thp)2(acac))、などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。ビス(8−キノリノラト)亜鉛(略称:Znq2)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq2)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のポリマーを用いても良い。赤色発光を示すゲスト材料としては、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−4H−ピラン(略称:BisDCM)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[2−(ジュロリジン−9−イル)エチニル]−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エテニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、{2−イソプロピル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、{2,6−ビス[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)のような4H−ピラン誘導体が高効率であり、好ましい。特に、DCJTI、BisDCJTMは、620nm付近に発光ピークを有するため好ましい。
なお、上記の構成において、適当なホスト材料としては、発光性の有機化合物よりも発光色が短波長のものであるか、またはエネルギーギャップの大きいものであればよい。具体的には、実施の形態1で示した例に代表される正孔輸送材料や電子輸送材料から適宜選択することができる。また、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)などを使用しても良い。
本実施の形態で示した発光素子は、第1のEL層の発光スペクトルおよび第2のEL層の発光スペクトルが重ね合わさる結果、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域を幅広くカバーする白色発光が得られる。
なお、各積層の膜厚を調節し、意図的に光を僅かに干渉させることで、突出した鋭いピークの発生を抑え、台形の発光スペクトルとなるようにして、連続的なスペクトルを有する自然光に近づけてもよい。また、各積層の膜厚を調節し、意図的に光を僅かに干渉させることで、発光スペクトルのピークの位置も変化させることもできる。発光スペクトルに現れる複数のピーク強度をほぼ同じになるように各積層の膜厚を調節し、さらに、互いのピークの間隔を狭くすることによってより台形に近い発光スペクトルを有する白色発光を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、複数層の発光層のそれぞれにおいて、互いに補色となる発光色を重ね合わせることによって白色発光が得られるEL層を示した。以下において、補色の関係によって白色発光を呈するEL層の具体的な構成を説明する。
本実施の形態で示す発光素子に設けられたEL層は、例えば、正孔輸送性の高い物質と第1の発光物質とを含む第1の層と、正孔輸送性の高い物質と第2の発光物質とを含む第2の層と、電子輸送性の高い物質と第2の発光物質とを含む第3の層と、が陽極101から順に積層された構成とすることができる。
本実施の形態で示す発光素子のEL層において、白色発光を得るためには、第1の発光物質と第2の発光物質の両方が発光する必要がある。したがって、EL層内でのキャリアの輸送性を調節するためは、正孔輸送性の高い物質および電子輸送性の高い物質は、いずれもホスト材料とすることが好ましい。なお、EL層に用いることのできる正孔輸送性の高い物質、または電子輸送性の高い物質としては、実施の形態1で例示した物質を適宜用いることができる。
また、第1の発光物質および第2の発光物質は、それぞれの発光色が補色の関係となる物質を選択して用いることができる。補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。青色、黄色、青緑色、赤色に発光する物質としては、例えば、先に列挙した発光物質の中から適宜選択すればよい。なお、第2の発光物質の発光波長を第1の発光物質の発光波長よりも短波長とすることで、第2の発光物質の励起エネルギーの一部を第1の発光物質にエネルギー移動させ、第1の発光物質を発光させることができる。したがって、本実施の形態の発光素子においては、第2の発光物質の発光ピーク波長が、第1の発光物質の発光ピーク波長よりも短波長であることが好ましい。
本実施の形態で示す発光素子の構成は、第1の発光物質からの発光と第2の発光物質からの発光の両方が得られ、且つ、第1の発光物質と第2の発光物質の発光色が互いに補色の関係であるため白色発光が得られる。また、本実施の形態で示す発光素子の構成とすることで、長寿命な発光素子とすることができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した発光素子を含む発光装置の一態様について、図4を用いて説明する。図4は、該発光装置の断面図である。
図4において、四角の点線で囲まれているのは、発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、第1の電極13と第2の電極14との間に有機化合物を含む層15を有し、該有機化合物を含む層はn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と、m+1番目のEL層との間には、陽極側から順に、電子注入バッファーと、電子リレー層と、電荷発生層と、を含む層である。また、それぞれのEL層は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。すなわち、発光素子12は、実施の形態1乃至実施の形態4で示したような構成である。トランジスタ11のドレイン領域と第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本実施の形態の発光装置は、本実施の形態において、基板10上に設けられている。
なお、図4に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。なお、21はゲート電極、22はゲート絶縁膜、23は半導体層、24はn型の半導体層、25は電極、26は保護膜である。
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)、酸化物半導体等を用いてもよい。
酸化物半導体層としては、インジウム、ガリウム、アルミニウム、亜鉛及びスズから選んだ元素の複合酸化物を用いることができる。例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IZO)や酸化インジウムと酸化ガリウムと酸化亜鉛からなる酸化物(IGZO)をその例に挙げることができる。また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。また、多くの酸化物半導体、例えば酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IZO)や酸化インジウムと酸化ガリウムと酸化亜鉛からなる酸化物(IGZO)などはN型の半導体であるため、これらの化合物を活性層にもつトランジスタはNチャネル型となる。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
さらに、第1層間絶縁膜16は、図4(A)、(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、第1層間絶縁膜16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、第1層間絶縁膜16bはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、第1層間絶縁膜16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16a〜16cは、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
なお、図4(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16a〜16cのみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図4(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図4(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。第2層間絶縁膜19aはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、第2層間絶縁膜19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19a、19bは、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図4(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図4(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図4(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよいし、或いは、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
なお、図4に示す断面図では発光素子を1つのみ図示しているが、画素部において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。また、R(赤)G(緑)B(青)の色要素からなるカラー表示を行う場合、画素部には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子がそれぞれ複数形成される。また、色要素は、3色に限定されず、4色以上を用いても良いし、RGB以外の色を用いても良い。例えば、白色を加えて、RGBW(Wは白)とすることも可能である。
色要素の異なる発光素子の作製方法としては、それぞれのEL層ごとに塗り分けをする方法、全てのEL層を白色発光が得られる様に形成し、カラーフィルタと組み合わせることによって異なる色要素の発光素子を得る方法、全てのEL層を青色発光もしくはそれより短波長の発光が得られる様に形成し色変換層と組み合わせることによって異なる色要素の発光素子を得る方法等を用いることができる。
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を発光素子と同一基板上に設けずに発光素子を駆動させるパッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。図5(A)には実施の形態1乃至実施の形態4で示した発光素子を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図を示す。また、図5(B)は図5(A)の破線X−Yにおける断面図である。
図5において、基板951上には、電極952と電極956との間には有機化合物を含む層955が設けられている。該有機化合物を含む層はn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と、(m+1)番目のEL層との間には、陽極側から順に、電子注入バッファーと、電子リレー層と、電荷発生層と、を含む層である。また、それぞれのEL層は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有するのが好ましい。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。パッシブマトリクス型の発光装置においても、実施の形態1乃至実施の形態4で示した発光素子を含むことによって、低消費電力の発光装置を得ることができる。
本実施の形態で示した発光装置は、上記実施の形態で一例を示した発光素子を用いているため、高輝度且つ低駆動電圧であり、ひいては消費電力が低い発光装置とすることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5に示す発光装置をその一部に含む電子機器について説明する。本実施の形態で示す電子機器は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した発光素子を含み、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が低減された表示部を有する。
本実施の形態の電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図6に示す。
図6(A)携帯情報端末機器の一例を示している。携帯情報端末機器9200は、コンピュータを内蔵しており、様々なデータ処理を行うことが可能である。このような携帯情報端末機器9200としては、PDA(Personal Digital Assistance)が挙げられる。
携帯情報端末機器9200は、筐体9201および筐体9203の2つの筐体で構成されている。筐体9201と筐体9203は、連結部9207で折りたたみ可能に連結されている。筐体9201には表示部9202が組み込まれており、筐体9203はキーボード9205を備えている。もちろん、携帯情報端末機器9200の構成は上述のものに限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。表示部9202は、上記実施の形態で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9202も同様の特徴を有するため、この携帯情報端末機器は低消費電力化が図られている。
図6(B)は本実施の形態に係るデジタルビデオカメラの一例を示している。デジタルビデオカメラ9500は、筐体9501に表示部9503が組み込まれ、その他に各種操作部が設けられている。なお、デジタルビデオカメラ9500の構成は特に限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
このデジタルビデオカメラにおいて表示部9503は、上記実施の形態で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、駆動電圧が低く、高輝度で消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9503も同様の特徴を有するため、このデジタルビデオカメラは低消費電力化が図られている。
図6(C)は本実施の形態に係る携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9100は、筐体9102および筐体9101の2つの筐体で構成されており、連結部9103により折りたたみ可能に連結されている。筐体9102には表示部9104が組み込まれており、筐体9101には操作キー9106が設けられている。なお、携帯電話機9100の構成は特に限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
この携帯電話機において、表示部9104は、上記実施の形態で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9104も同様の特徴を有するため、この携帯電話は低消費電力化が図られている。また、携帯電話機などに設けられたディスプレイのバックライトとして、上記実施の形態で示した発光素子を用いても構わない。
図6(D)は携帯可能なコンピュータの一例を示している。コンピュータ9400は、開閉可能に連結された筐体9401と筐体9404を備えている。筐体9404には表示部9402が組み込まれ、筐体9401はキーボード9403などを備えている。なお、コンピュータ9400の構成は特に限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
このコンピュータにおいて、表示部9402は、上記実施の形態で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9402も同様の特徴を有するため、このコンピュータは低消費電力化が図られている。
図6(E)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9703により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9610により行うことができる。リモコン操作機9610が備える操作キー9609により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9603に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9610に、当該リモコン操作機9610から出力する情報を表示する表示部9607を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
このテレビジョン装置において、表示部9607、表示部9603の少なくとも一方は、上記実施の形態で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部も同様の特徴を有する。
以上の様に、上記実施の形態で示した発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1乃至実施の形態4で示した発光素子を用いることにより、高輝度の発光を呈し、低消費電力な表示部を有する電子機器を提供することが可能となる。
また、上記実施の形態で示した発光装置は、照明装置として用いることもできる。上記実施の形態で示した発光装置を照明装置として用いる一態様を、図7を用いて説明する。
図7は、上記実施の形態で一例を示した発光装置を、照明装置である電気スタンド、及び室内の照明装置として用いた例である。図7に示す電気スタンドは、光源3000を有し、光源3000として、上記実施の形態で一例を示した発光装置が用いられている。従って、消費電力の低い発光装置とすることができる。また、この発光装置は大面積化が可能であるため、照明装置を大面積の照明として用いることができる。また、この発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化の照明装置として用いることが可能となる。また、この発光装置は、フレキシブル化が可能であるため、例えば、照明装置3002のように、ロール型の照明とすることが可能である。このように、本実施の形態で示す発光装置を、室内の照明装置3001、3002として用いた部屋に、図6(E)で説明したような、テレビジョン装置を設置することもできる。
以上の様に、実施の形態5で示した発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。なお、本実施の形態は、実施の形態1乃至実施の形態5と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、本発明の一態様である発光素子について、図8を用いて説明する。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
以下に、本実施例の発光素子1、比較発光素子1及び比較発光素子2の作製方法を示す。
まず、発光素子1について説明する(図8(A)参照)。ガラス基板2100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極2101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
次に、第1の電極2101が形成された面が下方となるように、第1の電極2101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2101上に、正孔輸送性の高い物質である9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む、第1の電荷発生層2103aを形成した。その膜厚は50nmとし、CzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=CzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電荷発生層2103a上にNPBを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2103bを形成した。
さらに、CzPAと、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)と、を共蒸着することにより、正孔輸送層2103b上に30nmの膜厚の発光層2103cを形成した。ここで、CzPAと2PCAPAとの重量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。なお、CzPAは電子輸送性を有する物質であり、ゲスト材料である2PCAPAは緑色の発光を示す物質である。
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2103c上にAlqを膜厚10nm、次いでBphenを20nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2103dを形成した。これによって、第1の電荷発生層2103a、正孔輸送層2103b、発光層2103c、及び電子輸送層2103dを含む第1のEL層2103を形成した。
次いで、電子輸送層2103d上に、酸化リチウム(Li2O)を0.1nm蒸着することにより、電子注入バッファー2104を形成した。
次いで、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)を蒸着することにより、電子注入バッファー2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。なお、PTCBIのLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定の結果から−4.0eV程度である。
次に、電子リレー層2105上に、正孔輸送性の高い物質であるCzPAと、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、第2の電荷発生層2106を形成した。その膜厚は60nmとし、CzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=CzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
次いで、第2の電荷発生層2106上に、第2のEL層2107を作製した。その作製方法は、まず、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の電荷発生層2106上にNPBを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2107aを形成した。
その後、CzPAと、2PCAPAと、を共蒸着することにより、正孔輸送層2107a上に30nmの膜厚の発光層2107bを形成した。ここで、CzPAと2PCAPAとの重量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。なお、CzPAは電子輸送性を有する物質であり、ゲスト材料である2PCAPAは緑色の発光を示す物質である。
次いで、発光層2107b上に、Alqを膜厚10nm、次いでBphenを20nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2107cを形成した。電子輸送層2107c上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで蒸着することにより電子注入層2107dを形成した。これによって、正孔輸送層2107a、発光層2107b、電子輸送層2107c、電子注入層2107dを含む第2のEL層2107を形成した。
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107d上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2102を形成することで、発光素子1を作製した。
次に、比較発光素子1について説明する(図8(A)参照)。本実施例の比較発光素子1は、第1のEL層2103の第1の電荷発生層2103a、及び第2の電荷発生層2106以外は、発光素子1と同様に作製した。比較発光素子1においては、正孔輸送性の高い物質である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)と、を共蒸着することにより、第1の電極2101上に50nmの膜厚の第1の電荷発生層2103aを形成した。また、第1の電荷発生層2103aと同様に、NPBと酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、電子リレー層2105上に60nmの膜厚の第2の電荷発生層2106を形成した。第1の電荷発生層2103a及び第2の電荷発生層2106において、NPBと酸化モリブデン(VI)との重量比は、4:2(=NPB:酸化モリブデン(VI))となるように調節した。以上により、比較発光素子1を得た。
次に、比較発光素子2について説明する(図8(B)参照)。比較発光素子2は、発光素子1から電子リレー層2105を削除した構造であり、その他の層については、発光素子1と同様の作製方法にて形成した。比較発光素子2においては、電子注入バッファー2104を形成した後、電子注入バッファー2104上に、第2の電荷発生層2106を形成した。以上により、本実施例の比較発光素子2を得た。
以下の表1に発光素子1、比較発光素子1、比較発光素子2の素子構造を示す。
以上により得られた発光素子1、比較発光素子1、比較発光素子2を窒素雰囲気のグローブボックス内において、各発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は、室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子1、比較発光素子1及び比較発光素子2の電流密度−電圧特性を図9に示す。図9において、横軸は印加した電圧(V)、縦軸は電流密度(mA/cm2)を表している。また、電流効率―電流密度特性を図10に示す。図10において、横軸は電流密度(mA/cm2)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
図9より、電子リレー層が設けられた発光素子1及び比較発光素子1は、比較発光素子2と比べて低電圧で駆動することがわかった。また、図10より、電荷発生層にCzPAが含まれる発光素子1及び比較発光素子2は、比較発光素子1と比べて、高い電流効率が得られることがわかった。
次に、本実施例で用いたCzPAと酸化モリブデンとを含む層とNPBと酸化モリブデンとを含む層の光の透過率を測定した結果について図11を用いて説明する。
ガラス基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、CzPAと酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、CzPAと酸化モリブデンとを含む層を形成した。その膜厚は50nmとし、CzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=CzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
同様にして、ガラス基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、NPBと酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、NPBと酸化モリブデン(VI)とを含む層を形成した。その膜厚は50nmとし、NPBと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。
このようにして作製したCzPAと酸化モリブデンとを含む層及びNPBと酸化モリブデンとを含む層の光の透過率を測定した。図11に、CzPAと酸化モリブデンとを含む層の吸収スペクトルと、NPBと酸化モリブデンとを含む層の吸収スペクトルを示す。図11に示すように、NPBと酸化モリブデンとを含む層においては、可視光領域(500nm付近)に、吸収スペクトルのピークが生じていることがわかった。これに対し、CzPAと酸化モリブデンとを含む層においては、可視光領域及び近赤外領域においても電荷移動相互作用に基づく吸収スペクトルのピークは存在しないことがわかった。また、420nm〜720nmの範囲に吸収スペクトルのピークは存在しないことがわかった。
図11に示すように、アリールアミン化合物であるNPBと酸化モリブデンとを含む層は、可視光領域において吸収ピークが存在するため、これを図8に示す発光素子の電荷発生層に用いた場合、発光層からの発光が一部吸収されてしまい、図10に示す比較発光素子2のように発光効率の低下を招いてしまう。しかしながら、図11に示すように、アミン骨格を有さないカルバゾール誘導体であるCzPAと酸化モリブデンとを含む層は、可視光領域においても電荷移動相互作用に基づく吸収ピークは存在しないため、図8に示す発光素子の電荷発生層に用いても発光層からの発光は電荷発生層においてほとんど吸収されず、図10に示す発光素子1及び比較発光素子1は、比較発光素子2と比べて発光効率を向上させることができる。
図10、図11の結果より、CzPAと酸化モリブデンとを含む層を電荷発生層に用いた発光素子1は、NPBと酸化モリブデンとを含む層を電荷発生層に用いた比較発光素子1と比べて発光効率の高い発光素子であることがわかった。
以上の結果より、本実施例の発光素子1は、低電圧で駆動可能、かつ発光効率が高い発光素子であることが確認できた。
本実施例では、本発明の一態様である発光素子について、図8(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
以下に、本実施例の発光素子2および比較発光素子3の作製方法を示す。
まず、発光素子2について説明する(図8(A)参照)。ガラス基板2100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極2101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
次に、第1の電極2101が形成された面が下方となるように、第1の電極2101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2101上に、正孔輸送性の高い物質である9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む、第1の電荷発生層2103aを形成した。その膜厚は50nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電荷発生層2103a上にNPBを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2103bを形成した。
さらに、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)と、を共蒸着することにより、正孔輸送層2103b上に30nmの膜厚の発光層2103cを形成した。ここで、CzPAと2PCAPAとの重量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。なお、CzPAは電子輸送性を有する物質であり、ゲスト材料である2PCAPAは緑色の発光を示す物質である。
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2103c上にAlqを膜厚10nm、次いでBphenを10nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2103dを形成した。これによって、第1の電荷発生層2103a、正孔輸送層2103b、発光層2103c、及び電子輸送層2103dを含む第1のEL層2103を形成した。
次いで、電子輸送層2103d上に、酸化リチウム(Li2O)を0.1nm蒸着することにより、電子注入バッファー2104を形成した。
次いで、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)を蒸着することにより、電子注入バッファー2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。なお、PTCBIのLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定の結果から−4.0eV程度である。
次に、電子リレー層2105上に、正孔輸送性の高い物質であるPCzPAと、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、第2の電荷発生層2106を形成した。その膜厚は60nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
次いで、第2の電荷発生層2106上に、第2のEL層2107を作製した。その作製方法は、まず、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の電荷発生層2106上にNPBを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2107aを形成した。
その後、CzPAと、2PCAPAと、を共蒸着することにより、正孔輸送層2107a上に30nmの膜厚の発光層2107bを形成した。ここで、CzPAと2PCAPAとの重量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。なお、CzPAは電子輸送性を有する物質であり、ゲスト材料である2PCAPAは緑色の発光を示す物質である。
次いで、発光層2107b上に、Alqを膜厚10nm、次いでBphenを20nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2107cを形成した。電子輸送層2107c上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで蒸着することにより電子注入層2107dを形成した。これによって、正孔輸送層2107a、発光層2107b、電子輸送層2107c、電子注入層2107dを含む第2のEL層2107を形成した。
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107d上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2102を形成することで、発光素子2を作製した。
次に、比較発光素子3について説明する(図8(A)参照)。本実施例の比較発光素子3は、第1のEL層2103の第1の電荷発生層2103a、及び第2の電荷発生層2106以外は、本実施例で示した発光素子2と同様に作製した。比較発光素子3においては、正孔輸送性の高い物質である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)と、を共蒸着することにより、第1の電極2101上に50nmの膜厚の第1の電荷発生層2103aを形成した。また、第1の電荷発生層2103aと同様に、NPBと酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、電子リレー層2105上に60nmの膜厚の第2の電荷発生層2106を形成した。第1の電荷発生層2103a及び第2の電荷発生層2106において、NPBと酸化モリブデン(VI)との重量比は、4:2(=NPB:酸化モリブデン(VI))となるように調節した。以上により、比較発光素子3を得た。
以下の表2に発光素子2および比較発光素子3の素子構造を示す。
以上により得られた発光素子2及び比較発光素子3を窒素雰囲気のグローブボックス内において、各発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は、室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子2、比較発光素子3の電流密度−電圧特性を図13に示す。図13において、横軸は印加した電圧(V)、縦軸は電流密度(mA/cm2)を表している。また、電流効率―電流密度特性を図14に示す。図14において、横軸は電流密度(mA/cm2)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
図13より、電荷発生層にPCzPAを含む発光素子2は、比較発光素子3と比べて低電圧で駆動することがわかった。また、図14より、電荷発生層にPCzPAが含まれる発光素子2は、比較発光素子3と比べて、高い電流効率が得られることがわかった。
次に、本実施例で用いたPCzPAと酸化モリブデンとを含む層の光の透過率を測定した結果について図15を用いて説明する。
ガラス基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、PCzPAと酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、PCzPAと酸化モリブデンとを含む層を形成した。その膜厚は50nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
このようにして作製したPCzPAと酸化モリブデンとを含む層の光の透過率を測定した。図15に、PCzPAと酸化モリブデンとを含む層の吸収スペクトルを示す。図15に示すように、PCzPAと酸化モリブデンとを含む層においては、可視光領域及び近赤外領域においても電荷移動相互作用に基づく吸収スペクトルのピークは存在しないことがわかった。また、420nm〜720nmの範囲に吸収スペクトルのピークは存在しないことがわかった。なお、PCzPAのイオン化ポテンシャルは、5.7eV(理研計器社製、AC−2)と比較的大きな数値を示す。
図15に示すように、アミン骨格を有さないカルバゾール誘導体であるPCzPAと酸化モリブデンとを含む層は、可視光領域及び近赤外領域においても電荷移動相互作用に基づく吸収ピークは存在しないため、発光素子2の電荷発生層に用いても発光層からの発光は電荷発生層においてほとんど吸収されず、発光素子2は、発光効率を向上させることができる。
図13乃至図15の結果より、PCzPAと酸化モリブデンとを含む層を電荷発生層に用いた発光素子2は、発光効率の高い発光素子であることがわかった。
以上の結果より、本実施例の発光素子2は、低電圧で駆動可能、かつ発光効率が高い発光素子であることが確認できた。
本実施例では、本発明の一態様である発光素子について、図8(A)を用いて説明する。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
以下に、本実施例の発光素子3の作製方法を示す。
発光素子3について説明する(図8(A)参照)。ガラス基板2100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極2101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
次に、第1の電極2101が形成された面が下方となるように、第1の電極2101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2101上に、正孔輸送性の高い物質である9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む、第1の電荷発生層2103aを形成した。その膜厚は50nmとし、CzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=CzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電荷発生層2103a上にNPBを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2103bを形成した。
さらに、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、と、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)と、を20nmの膜厚で共蒸着した後、さらに、CzPAとSD1(商品名;SFC Co., Ltd製)を10nmの膜厚で共蒸着して積層することにより発光層2103cを形成した。なお、PCBAPAとPCBANBとの重量比は、1:1(=PCBAPA:PCBANB)となるように調節した。また、CzPAとSD1との重量比は、1:0.05(=CzPA:SD1)となるように調節した。
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2103c上にBphenを30nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2103dを形成した。これによって、第1の電荷発生層2103a、正孔輸送層2103b、発光層2103c、及び電子輸送層2103dを含む第1のEL層2103を形成した。
次いで、電子輸送層2103d上に、酸化リチウム(Li2O)を0.1nm蒸着することにより、電子注入バッファー2104を形成した。
次いで、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)を蒸着することにより、電子注入バッファー2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。なお、PTCBIのLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定の結果から−4.0eV程度である。
次に、電子リレー層2105上に、正孔輸送性の高い物質であるCzPAと、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、第2の電荷発生層2106を形成した。その膜厚は60nmとし、CzPAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=CzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
次いで、第2の電荷発生層2106上に、第2のEL層2107を作製した。その作製方法は、まず、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の電荷発生層2106上にNPBを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2107aを形成した。
その後、2−(4−{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアミノ}フェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール(略称:YGAO11)と、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))と、を10nm共蒸着した後、YGAO11とビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)_2acac)と、を20nm共蒸着することにより、正孔輸送層2107a上に発光層2107bを形成した。なお、YGAO11とIr(tppr)2(acac)との重量比は、1:0.06(=YGAO11:Ir(tppr)2(acac))となるように調節した。また、YGAO11とIr(ppy)_2acacとの重量比は、1:0.06(=YGAO11:Ir(ppy)_2acac)となるように調節した。
次いで、発光層2107b上に、BAlqを膜厚10nm、次いでBphenを20nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2107cを形成した。電子輸送層2107c上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで蒸着することにより電子注入層2107dを形成した。これによって、正孔輸送層2107a、発光層2107b、電子輸送層2107c、電子注入層2107dを含む第2のEL層2107を形成した。
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107d上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2102を形成することで、発光素子3を作製した。
以下の表3に発光素子3の素子構造を示す。
以上により得られた発光素子3を窒素雰囲気のグローブボックス内において、各発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は、室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子3の輝度−電流効率特性を図16に示す。図16において、横軸は輝度(cd/m2)を表し、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、電圧−輝度特性を図17に示す。図17において、横軸は電圧(V)を表し、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、輝度−パワー効率特性を図18に示す。図18において、横軸は輝度(cd/m2)を表し、縦軸はパワー効率(lm/W)を表す。また、発光素子3に0.1mAの電流を流したときの発光スペクトルを図19に示す。
また、発光素子3は、輝度950cd/m2のときのCIE色度座標は(x=0.34、y=0.39)であり、白色の発光であった。また、輝度950cd/m2のときの外部量子効率は、21.1%であり、高い効率を示した。また、平均演色評価数Raは91であり、演色性は良好であった。
以上の結果より、本実施例の発光素子3は、低電圧で駆動可能、かつ発光効率が高い発光素子であることが確認できた。
(参考例)
本参考例では、上記実施例で用いた材料の合成方法について具体的に説明する。
≪4(1−ナフチル)−4’(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−トリフェニルアミン(略称;PCBANB)の合成例≫
4(1−ナフチル)−4’(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−トリフェニルアミンの合成スキームを下記(A−1)に示す。
3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9H−カルバゾールを1.2g(3.0mmol)、4−(1−ナフチル)ジフェニルアミンを0.9g(3.0mmol)、ナトリウム tert−ブトキシドを0.5g(5.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を6.0mg(0.01mmol)、50mL三口フラスコへ入れ、この混合物へ、脱水キシレン15mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0.06mL(0.03mmol)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、120℃で4.5時間加熱撹拌し、反応させた。
反応後、この反応混合物にトルエン250mLを加え、この懸濁液をフロリジール、シリカゲル、アルミナ、セライトを通してろ過した。得られたろ液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液をフロリジール、アルミナ、シリカゲル、セライトを通してろ過してろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、アセトンとメタノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を収量1.5g、収率82%で得た。
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=1:10)は、目的物は0.34、3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9H−カルバゾールは0.46、4−(1−ナフチル)ジフェニルアミンは0.25だった。
上記ステップで得られた化合物を核磁気共鳴法(1H NMR)により測定した。以下に測定データを示す。測定結果から、目的物であるPCBANB(略称)が得られたことがわかった。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ(ppm)=7.07 (t, J=6.6Hz, 1H), 7.25−7.67 (m, 26H), 7.84 (d, J=7.8Hz, 1H), 7.89−7.92 (m, 1H), 8.03−8.07 (m, 1H), 8.18 (d, J=7.8Hz, 1H), 8.35 (d, J=0.9Hz, 1H)。