JP5787296B2 - ガラス板及びガラス板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ガラス板及びガラス板の製造方法に関する。
例えば、オーバーフローダウンドロー法を用いたガラス板の製造方法では、成形工程において、熔融ガラスは、成形炉内に配された成形体上部からオーバーフローし、成形体の両側に分かれ、それぞれ成形体表面を伝って下方に流れ、成形体の下端で合流することによりガラスリボンに成形される。そして、成形されたガラスリボンが成形体の下方に配された冷却ローラ対によってその幅方向両端が狭持されながら下方向に引き込まれることで、ガラスリボンは、所望の厚みに引き延ばされ、徐冷される。
ところで、携帯電話機等の小型機器に搭載されたディスプレイは、消費電力を低減できる等の理由から、薄膜トランジスタ(TFT)の製造に低温ポリシリコン(LTPS)が多く用いられている。携帯電話機等のディスプレイは、近年ますます高精細化が求められているが、画素のピッチずれを引き起こす要因となる、ディスプレイパネル製造時の熱収縮が問題となっている。
このような製造時の熱収縮を抑えるために、ガラス組成の調節などによってガラス板の歪点を高くすることで、熱収縮率を低減することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、歪点を高くすると、失透温度が上がり、熔融ガラスの成形時に失透が生じやすくなる。この問題は、ダウンドロー法によるガラス板の製造において、特に顕著である。このような成形時の失透を防止するためには、成形炉内雰囲気の温度を上げ、或いは成形時の熔融ガラスの温度を上げることが有効である。
ところで、図1に示すように、熔融ガラス中のホウ素などは、SiOと比較して揮発しやすく、成形時に揮発することが知られている(特許文献2)。なお、図1は、アルカリ金属酸化物を含まないガラス組成のガラス板について、いくつかのガラス深さで測定したSi及び揮発成分の各濃度を示すグラフである。上述した失透温度が比較的高いガラス板の製造において、成形炉内雰囲気の温度を上げ、或いは成形時の熔融ガラスの温度を上げると、熔融ガラス中のホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発量が多くなってしまう。ホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発量が多くなり過ぎると、ガラス表面におけるホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の濃度が低下して、ガラス表面の失透温度がさらに上昇し、失透が生じやすくなる。このように、ホウ素やアルカリ土類金属などは、成形時揮発するものの、ガラス原料の熔解性を確保する観点からは添加される。
特開2002−3240号公報 国際公開第2011/077734号
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、ガラス板の熱収縮を抑えつつ成形時の失透を防ぐために、熱収縮率の低減と耐失透性の確保とを両立できるガラス板の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、局部的な失透を抑えることができるフラットパネルディスプレイ用ガラス板を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る、ガラス板の製造方法は、
Siと、ガラス熔融状態においてSiよりも揮発しやすい揮発成分と、を含むガラス原料を熔解して、歪点が670℃以上である熔融ガラスをつくる熔解工程と、
オーバーフローダウンドロー法を用いて、前記熔融ガラスを成形してガラスリボンを形成する成形工程と、
前記ガラスリボンを冷却する徐冷工程と、を含み、
前記成形工程では、
前記熔融ガラスを、炉壁で囲まれて構成される成形炉内に設けられた成形体の両側の側壁を伝わって流下させ、前記成形体の下方端部で合流させることでガラスリボンを形成し、かつ、成形炉内雰囲気を制御することで、前記熔融ガラス及び前記ガラスリボンからの前記揮発成分の揮発を抑制する揮発抑制処理を行い、
前記ガラス板は、失透温度が1150〜1280℃であるディスプレイ用ガラス板である、ことを特徴とする。
また、前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気の揮発成分分圧が制御される、ことが好ましい。
さらに、前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気のB、Mg、Ca、Sr、Baの少なくともいずれか1つの揮発を抑制する、ことが好ましい。
前記成形工程における熔融ガラスの温度は1220℃以上である、ことが好ましい。
前記ガラス板の厚さは.1mm〜1.2mmであり、前記ガラス板の幅方向の長さは500mm〜3500mmであり、前記ガラス板の縦方向の長さが500mm〜3500mmである、ことが好ましい。
前記ガラス板は、液晶ディスプレイに用いるガラス基板である、ことが好ましい。
前記ガラス板は、RO量(LiO、NaO、KOの合計量)を0〜2質量%含む、ことが好ましい。
熱処理によって生じるガラス板の熱収縮を抑えるためにガラス板の歪点を上げた場合、成形工程において失透が生じやすくなる傾向がある。しかし、本発明の製造方法によれば、成形工程において揮発抑制処理が施されることで、少なくとも熔融ガラスからの揮発成分の揮発が抑えられるため、上述のようなガラス板の製造時であっても、ガラス表面に失透が起きるのを防止することができる。
また、本発明のガラス板によれば、表面部のB含有率が中心部のB含有率よりも高い。このようなガラス板を製造するので、製造段階において局部的な失透の発生が抑えられている。
従来のガラス板について、ガラス深さとSi及び揮発成分の各濃度との関係を示す図である。 本実施形態のガラス板の製造方法のフローの一例を示す図である。 本実施形態の熔解工程〜切断工程を行う装置を模式的に示す図である。 本実施形態の成形工程及び徐冷工程を行う成形装置の構成を主に示す図である。 図4の成形装置の成形体をより詳細に示す図である。 図4の成形装置をより詳細に示す図である。 本実施形態の変形例1で用いられる成形装置をより詳細に示す図である。 本実施形態のガラス板を示す図である。
以下、本実施形態のガラス板の製造方法について説明する。
(ガラス板の製造方法の全体概要)
図2は、ガラス板の製造方法の工程図である。
この製造方法では、無アルカリガラス、アルカリ微量ガラス、アルカリガラスのいずれを用いてガラス板を製造してもよい。なお、本明細書では、無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスであり、アルカリ金属酸化物の含有量が0.05質量%未満のガラスを示すものとする。また、アルカリ微量ガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量が0.05〜2質量%のガラスを示すものとする。さらに、アルカリガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量が2質量%を超えるガラスを示すものとする。
この製造方法は、低温ポリシリコン(LTPS)薄膜トランジスタ(TFT)が形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造方法に好適である。また、酸化物半導体TFTが形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造にも好適である。フラットパネルディスプレイには、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイが含まれる。このような用途で用いられるガラス板については、後述する。なお、本実施形態のガラス板の製造方法は、太陽電池が形成されるガラス板等、フラットパネルディスプレイ以外の用途のガラス板の製造方法にも適用できる。
本実施形態の製造方法は、フラットパネルディスプレイ用のガラス板の製造方法であって、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で箱詰めもしくは積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
図3は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行う装置を模式的に示す図である。当該装置は、図3に示すように、主に熔解装置200と、成形装置300と、切断装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄槽202と、攪拌槽203と、第1配管204と、第2配管205と、を有する。成形装置300については後述する。熔解槽201、清澄槽202、攪拌槽203、第1配管204は、後述する炉30の外側に設置され、第2配管205は攪拌槽203から炉内部空間内に延びて設置されている。熔熔解槽201と清澄槽202との間のガラス供給管以降第2配管205まで、白金又は白金合金により構成されている。
熔解工程(ST1)では、熔解槽201内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および電極を用いた直接通電で加熱して熔解することで熔融ガラスを得る。
清澄工程(ST2)は、清澄槽202において行われ、清澄槽202内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれる気泡が、清澄剤の還元反応で生じた酸素を吸収することにより成長し液面に浮上して放出される。その後、熔融ガラスを冷却する過程で清澄剤の還元反応により気泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程(ST3)では、第1配管204を通って供給された攪拌槽203内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程(ST4)では、第2配管205を通して熔融ガラスが成形装置300に供給される。
成形装置300では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをガラスリボンG(図4参照)に成形し、ガラスリボンGの流れを作る。本実施形態では、後述する成形体310を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST6)では、所望の厚さに成形されて流れるガラスリボンGが切断可能となるように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置400において、成形装置300から供給されたガラスリボンGを所定の長さに切断することで、板状のガラス板G1(図4参照)を得る。切断されたガラス板G1はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板G1が作製される。この後、ガラス端面の研削、研磨、さらにはガラス板の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理、失透等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板G1が最終製品として梱包される。なお、本発明のガラス板の製造方法は、切断工程を有していなくてもよく、例えば、切断工程に代えて、成形装置300から供給されたガラスリボンGを長尺のまま巻き取る工程を有していてもよい。
(成形工程及び徐冷工程の説明)
図4は、成形工程及び徐冷工程を行う成形装置300の構成を主に示す図である。
成形工程(ST5)を行う成形炉40および徐冷工程(ST6)を行う徐冷炉50は、耐火物で構成された炉壁に囲まれて構成されている。成形炉40は、徐冷炉50に対して鉛直上方に設けられている。なお、成形炉40および徐冷炉50をあわせて炉30という。炉30の炉壁で囲まれた炉内部空間に、成形体310と、雰囲気仕切り部材320と、冷却ローラ330と、搬送ローラ350a〜350cと、が設けられている。
成形体310は、図3に示す第2配管205を通して熔解装置200から流れてくる熔融ガラスをガラスリボンGに成形する。これにより、成形装置300内で、鉛直下方のガラスリボンGの流れが作られる。成形体310は、耐火レンガ等によって構成された細長い構造体であり、図4に示すように断面が楔形状を成している。成形体310の上部には、熔融ガラスを導く流路となる供給溝312が設けられている。供給溝312は、成形装置300に設けられた供給口において第2配管205と接続され、第2配管205を通して流れてくる熔融ガラスは、供給溝312を伝って流れる。供給溝312の深さは、熔融ガラスの流れの下流ほど浅くなっており、溝312から熔融ガラスが鉛直下方に向かって溢れ出るようになっている。
供給溝312から溢れ出た熔融ガラスは、成形体310の両側の側壁の垂直壁面および傾斜壁面を伝わって流下する。側壁を流れた熔融ガラスは、図4に示す成形体310の下方端部313で合流し、1つのガラスリボンGが成形される。ここで、本実施形態において、熔融ガラスとは、熔融されたガラスのうち成形体310の下方端部313で合流するよりも上流側のガラスをいい、ガラスリボンGとは、成形体310の下方端部313で合流した後の帯状のガラスをいう。
ここで、図5を参照して、成形体310に基いてより詳細に説明する。図5は、成形体310をより詳細に示す図である。
成形工程で用いる成形体310は、本体部314と、一対のガイド板316と、を主に有する。本体部314は、耐火レンガで構成されている。一対のガイド板316は、白金または白金合金により構成された板部材であり、本体部314の両側の端部に設けられて、熔融ガラスのガイド部として機能する。ガイド部とは、ガイド板316の縁部分であって、垂直壁面313a及び傾斜壁面313bから突出した部分であり、壁面を伝って流れる熔融ガラスの位置と幅を規制する部分をいう。ガイド板316のそれぞれは、ガイド部の高さ分、本体部314の形状に比べて面積が大きい形状を成している。一対のガイド板316のうち、第2配管205と接続される側のガイド板316には、本体部314の供給溝312に熔融ガラスを供給するための切り欠き部が設けられている。
成形装置300は、成形体310の上部に設けられた供給溝312に第2配管205を介して熔融ガラスを供給することにより、供給溝312の上部から熔融ガラスを溢れ出させる。そのとき、成形体310の壁面から突出した一対のガイド部が熔融ガラスの流れの幅を規制しつつ、成形体310の下部の両側それぞれの側壁の壁面に沿って熔融ガラスを流下させる。成形装置300は、流下する熔融ガラスを、成形体310の最下端部313に導き、最下端部313において両側の壁面のそれぞれを流れる熔融ガラスを合流させることにより、ガラスリボンGを成形する。成形されたガラスリボンGは、冷却ローラ330によって下方に引っ張られる。
成形体310の下方端部313の下方近傍には、雰囲気仕切り部材320が設けられている。雰囲気仕切り部材320は、一対の板状の断熱部材であって、ガラスリボンGを厚さ方向の両側から挟むように構成されている。すなわち、雰囲気仕切り部材320には、ガラスリボンGと接触しない程度に隙間があけられている。雰囲気仕切り部材320は、成形炉内部空間を仕切ることにより、雰囲気仕切り部材320の上方の炉内部空間と下方の炉内部空間との間の熱の移動を遮断する。本実施形態において、後述する揮発成分の揮発抑制処理が主に行われるのは、成形炉40内のうち、上記雰囲気仕切り部材320の上方の炉内部空間である。
雰囲気仕切り部材320の下方には冷却ローラ330が設けられている。冷却ローラ330は、ガラスリボンGの幅方向の両端近傍のガラスリボンG表面と接触して、ガラスリボンGを下方に引き下げて所望の厚さにガラスリボンGをするとともに、ガラスリボンGを冷却する。なお、冷却ローラ330は、他の実施形態では、雰囲気仕切り部材320の上方に設けられてもよい。
冷却ローラ330の下方には、搬送ローラ350a〜350cが所定の間隔で設けられ、ガラスリボンGを下方向にけん引する。冷却ローラ330を含む下方の空間は、徐冷炉50の炉内部空間となっている。搬送ローラ350a〜350cのそれぞれは、ローラ対を有し、ガラスリボンGの両側を挟むようにガラスリボンGの幅方向の両側端部に設けられている。なお、徐冷工程における徐冷条件として、ガラスリボンBを徐冷点から(歪点−50℃)の温度まで冷却する冷却速度が、0.5℃/秒未満では、製造設備が巨大化し、生産性が低下してしまう。他方、5.5℃/秒以上では、熱収縮率を十分に小さくすることができない。したがって、徐冷点から(歪点−50℃)の温度まで冷却する冷却速度は、0.5℃/秒〜5.5℃/秒であることが好ましく、0.8℃/秒〜3.0℃/秒であることがさらに好ましい。なお、ガラスリボンBの温度とは、ガラスリボンBの幅方向の中心部の温度であるものとする。
このように、成形装置300は、成形体310を通って流下した熔融ガラスからガラスリボンGを成形する。その際、成形したガラスリボンGは重力に従って成形体310の壁面を鉛直下方に落下する流れから、下方に位置する冷却ローラ330および搬送ローラ350a〜350cを用いて下方に強制的に引かれる流れに変化する。
成形炉40の炉壁の外側には、大気圧雰囲気に対して建物Bの隔壁で区切られた空間、すなわち炉外部空間S1,S2,S3a〜S3cが設けられている。これらの空間のそれぞれは、高さ方向に関して、床面411,412,413a〜413cによって区切られている。すなわち、成形装置300は、複数のフロアを有する建物Bに設けられ、床面によって複数に区切られた炉外部空間(部分空間)S1,S2,S3a〜S3cが各フロアに設けられている。さらに、炉外部空間S3cの下方には、フロア414上に壁で区切られた空間S4(切断空間)が設けられている。空間S4には、炉壁は設けられない。
成形炉40には、図示されない複数のヒータが配されている。成形炉40内の雰囲気温度は、ヒータとこれに接続された図示されない制御装置により、成形工程の間、例えば1200〜1300℃の範囲内に保たれるよう制御される。なお、成形工程では、成形炉40の雰囲気温度が、1200℃以上になるよう制御された成形炉40内に配置された成形体310から熔融ガラスをオーバーフローさせることが好ましい。LTPS・TFTがガラス板に形成される場合などの熱処理の際の熱収縮を抑制するために、ガラス板の歪点を上げると、ガラス板の失透温度が高くなり、成形工程において失透が起きやすくなってしまうが、ここでは、成形炉40内の雰囲気温度を1200℃以上に高めることによって、失透の防止を図っている。なお、1200℃以上になるよう制御された成形炉40内に配置された成形体310から熔融ガラスをオーバーフローさせることと、上述した、例えば1220℃以上の熔融ガラスを成形体310からオーバーフローさせることとは、単独でまたは組み合わせて行われてよい。
炉30の内側あるいは外側には、炉30内の揮発成分濃度(分圧)を調整するための揮発成分供給装置が設けられている。揮発成分供給装置としては、揮発成分供給容器517(図6参照)が挙げられる。揮発成分供給容器517は、白金または白金合金で構成された皿状の容器であり、揮発成分(例えば、B)を収容できる。揮発成分供給容器517は、成形炉40内の雰囲気仕切り部材320上の複数箇所に載置することができる。各揮発成分供給容器517に収容される揮発成分(例えば、B)の合計量は、成形装置300の運転中、成形炉40内、特に雰囲気仕切り部材320の上方の炉内部空間において、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からの揮発成分の揮発を十分に抑制できるだけの量である。熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からの揮発成分の揮発を十分に抑制できるだけの量は、例えば、最終製品であるガラス板をX線光電子分光装置で測定した結果から決定することができる。例えば、最終製品であるガラス板をX線光電子分光装置で測定した結果、ガラス板表面の揮発成分の濃度がガラス板の厚さ方向の中心部の揮発成分濃度よりも小さくなっていた場合、成形炉40内の揮発成分濃度(分圧)が十分ではないので、揮発したと考えられる揮発成分の揮発成分供給容器517に収容される合計量を、成形装置300の運転が終了した後に、あるいは成形装置300の運転中に揮発成分供給容器517に増加させる。本実施形態では、成形装置300の運転開始前に、予め炉外部空間S2内のヒータにより、炉内温度が、運転中の成形炉40内温度と同程度となるよう保たれる。これにより、揮発成分供給容器517内の揮発成分を、気体の状態で成形炉40内に満たすことができる。そして、成形装置300の運転中も、絶えず揮発成分供給容器517から揮発成分ガスが成形炉40内に満たされ、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面の揮発成分が揮発しにくい雰囲気が保たれる。よって、ここでも、ガラス板の局部的な失透を生じにくくすることができる。なお、成形、徐冷後のガラス板の表面組成をX線光電子分光装置等で定期的に測定し、ガラス板表面での揮発成分の揮発が確認された場合、揮発成分供給容器517内の揮発成分が消費されてしまい、成形炉30内の揮発成分濃度(分圧)が低下したと判断し、揮発成分供給容器517に揮発成分を供給するようにしてもよい。
(揮発抑制処理)
成形工程では、熔融ガラスの成形と並行して、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラスからの揮発成分の揮発を抑制する揮発抑制処理が行われる。ここでは、例えば、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)が、熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)以上になるよう制御される。なお、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)は、必ずしも熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)と同等以上に制御する必要はなく、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)が熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)以下であっても、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)を高くする処理を何ら行わなかった場合と比較すると、揮発成分の揮発量を低減することができる。
揮発抑制処理に先立って、成形装置300の運転前に、揮発成分供給容器517などの揮発成分供給装置により、成形炉40内に揮発成分が供給され、予め成形炉40内の雰囲気中の揮発成分濃度を上げておくことが好ましい。
なお、本実施形態において揮発成分とは、例えば成形炉に供給される熔融ガラスの温度において、Siよりも飽和蒸気圧の大きい成分を示す。揮発成分としては、ホウ素(B)、アルカリ土類金属(Ma、Ca、Sr、Ba)、アルカリ金属(Li、Na、K)、Al等が挙げられる。特に、ホウ素とアルカリ金属(Li、Na、K)が共存すると、揮発が促進される。なお、ホウ素(B)、アルカリ土類金属(Ma、Ca、Sr、Ba)は失透温度を低下させる効果が大きいため、B、Ma、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1つの揮発を抑制する処理を行うことが好ましい。
このような揮発抑制処理によれば、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラスの成形炉40内雰囲気と接触する表面からホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発が抑制されることで、ガラスの失透温度が上がってしまうのを防いで、ガラス表面での失透が生じやすいガラス組成に変化するのを回避することができる。また、熔融ガラスのうち、成形体310のガイド板316に接触しながら下方に流れる領域も、ホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分分圧が高く保たれた雰囲気中で成形されることで、揮発成分の揮発が抑制され、失透が生じにくくなる。
そして、このような揮発抑制処理は、LTPS・TFTが形成されるフラットパネルディスプレイ用のガラス板の製造時に、特に有効である。LTPS・TFTが形成されるフラットパネルディスプレイの製造時には、熱収縮が問題となるため、一般的に、熱収縮率を小さくするためにガラス板の歪点を上げるが、単純に歪点を上げるだけでは、失透温度が高くなる場合があり、成形時に失透が生じやすくなる。このような成形時の失透を防止するために、成形炉内の雰囲気温度を高くする又は熔融ガラスの温度を上げることが考えられる。しかし、成形炉40内の雰囲気温度や熔融ガラスの温度が高くなると、熔融ガラスからホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発量が多くなり、熔融ガラス表面におけるホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の濃度が低下し、失透が生じやすくなる。しかし、本実施形態のガラス板の製造方法によれば、上述のように、揮発抑制処理により、ホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発が抑制されることで、失透が生じにくくなる。
また、このような揮発抑制処理が施されて製造されたガラス板は、AlやBなどの揮発成分の揮発が抑制されるため、表面にAlやBなどの揮発成分の濃度が低く耐酸性に強い領域は形成されがたい。このため、剥離帯電を防止するためのガラス表面エッチングを効率よく行うことができる。なお、剥離帯電とは、液晶ディスプレイ等の製造工程で用いる半導体形成装置において、薄膜形成やドライエッチング等のプロセス処理毎にサセプタ等の載置台に載せられて処理されたガラス板が載置台から取り外される時に生じる帯電をいう。この帯電が蓄積されて大きくなると、新たに載置台に載せて別のプロセス処理をしたとき、ガラス板が帯電により載置台に吸着されるので、ガラス板を載置台から取り外すことが難しくなり、最終的にガラス板を破損させるといった問題が生じる。このため剥離帯電を防止するためにガラス表面のうち少なくとも載置台に接する面にエッチング処理を行う。
(変形例1)
変形例1の成形工程で用いられる成形装置は、炉30の外側には、アルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分ガスを成形炉40内に送り込むための揮発成分ガス供給装置419(図7参照)が設けられている。揮発成分ガス供給装置419の構成は特に限定されないが、固体の揮発成分(例えば、B)が収容されかつ固体の揮発成分を加熱して揮発成分含有ガスを生成させる槽419aを有するとともに、先端が成形炉40内に延びる配管420に接続されていてもよい。揮発成分ガス供給装置419は、配管420途中に設けられた弁420aが開閉することにより、揮発成分含有ガスの供給量が調節されてもよい。弁420aは、図示されない制御装置に接続さている。
また、必須ではないが、揮発成分分圧センサ418を設けてもよい。分圧センサ418は、炉内部空間の揮発成分濃度(分圧)を直接計測するものに制限されず、他の雰囲気成分の測定値を代用するものであってもよい。揮発成分分圧センサ418は、成形炉40内に設けられている。なお、揮発成分分圧センサ418は、成形炉40内に常設されている必要はなく、炉内部空間の揮発成分分圧の測定時に挿入されてもよい。あるいは、炉内部空間の揮発成分分圧は、揮発成分分圧センサ418を用いる代わりに、炉内部空間の雰囲気から所定量の気体を取り出し、その気体中に含まれる揮発成分量を測定することで計測することもできる。
このとき供給される揮発成分の量は、例えば、成形炉40内の揮発成分濃度(分圧)が、過去の成形装置300運転時における熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)の平均値と等しくなる量である。このとき成形炉40内に供給される揮発成分含有ガスの温度は、成形装置300の運転時における成形炉40内の温度と同程度となるよう加熱されていることが好ましい。これにより、成形時に、熔融ガラス及びガラスリボンGのうち少なくとも熔融ガラスに揮発成分含有ガスが接触して冷却されてしまうのを防ぎ、ガラス板において板厚偏差が生じるのを回避することができる。より詳細には、熔融ガラス及びガラスリボンGのうち少なくとも熔融ガラスに揮発成分含有ガスが接触した領域のみ冷却され、粘度が高くなってしまうことを抑制できるので、冷却ローラ330によってガラスリボンGが引き伸ばされる際に、粘度が高くなった領域のみ十分に引き伸ばすことができず、板厚が厚くなってしまうということを回避することができる。
成形装置300の運転が開始され、成形工程が行われている間、揮発成分分圧センサ418により、成形炉40内の揮発成分分圧が計測され、成形炉40内の揮発成分分圧は、成形工程の間、例えば常に熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)以上に保たれ、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からのアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分の揮発が抑えられる。
また、成形炉40内において揮発成分濃度(分圧)を高くするように制御することにより、成形炉40内の気圧も高くなり、ガラスリボンGに沿って発生する上昇気流が成形炉40内に進入することも抑制することができる。これにより、上記上昇気流が成形炉40内に存在する熔融ガラスあるいはガラスリボンGと接触することを抑制できるので、成形炉40内に存在する熔融ガラス及び/又はガラスリボンGのうち、上記上昇気流と接触する領域の温度が局部的に低下してしまうことを抑制できる。このように、上昇気流が接触した領域のみ冷却され、粘度が高くなってしまうことを抑制できるので、冷却ローラ330によってガラスリボンGが引き伸ばされる際に、粘度が高くなった領域のみ十分に引き伸ばすことができず、板厚が厚くなってしまうということを回避することができる。
なお、上述した揮発抑制処理において、成形炉40内の揮発成分分圧を熔融ガラスの揮発成分分圧以上になるよう制御することに代えて、成形炉40内の揮発成分分圧が予め定められた圧力の範囲内になるよう制御されてもよい。
(変形例2)
次に、本実施形態のガラス板の製造方法の変形例2について説明する。
変形例2の成形工程で用いられる図示されない成形装置は、成形炉40に揮発成分ガス供給装置419が接続されているのに代えて、成形炉40の炉壁に固体の揮発成分が付着されていることを除いて、図7の成形装置300と同様に構成されている。付着される揮発成分の量は、成形装置の運転中、成形炉40内に、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からの揮発成分の揮発を十分に抑制できるだけの量である。熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からの揮発成分の揮発を十分に抑制できるだけの量は、最終製品であるガラス板をX線光電子分光装置で測定した結果に基づいて決定することができる。揮発成分は、炉壁内側の全面または一部に付着されてよい。また、揮発成分は、雰囲気仕切り部材320上面の全面または一部に付着されてもよい。
この変形例2でも、成形装置の運転開始前に、予め炉外部空間S2内のヒータにより、炉内温度が成形工程中の炉内温度と同程度に保たれる。これにより、炉壁に付着したアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分を気化させて成形炉40内に満たすことができる。また、成形装置の運転中も、絶えず炉壁からアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分ガスが放出されて成形炉40内に滞留し、熔融ガラス表面のアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分が揮発しにくい雰囲気が保たれる。よって、ここでも、ガラス板の局部的な失透を生じにくくすることができる。
(変形例3)
本実施形態と変形例1〜2とを含む3つの例では、成形炉40内の揮発成分濃度を上昇させる例を挙げて説明したが、特に失透が生じやすい領域(熔融ガラス近傍の雰囲気)にのみ揮発成分濃度を上昇させてもよい。具体的には、上述したガイド板316周辺雰囲気にのみ揮発成分ガス供給するなどして、揮発成分の揮発を抑制することもできる。
以上、本実施形態の製造方法について、本実施形態と変形例1〜3とを含む4つの例を示して説明したが、これらの例は、単独でまたは2以上組み合わせて用いることができる。
次に、本実施形態のガラス板について説明する。
(ガラス組成)
本実施形態に用いられるガラスの種類としては、ボロシリケイトガラス、アルミノシリケイトガラス、アルミノボロシリケイトガラス、等が挙げられる。
ここで、ガラス板のガラス成分について説明する。以下の説明では、質量%を単に%で示す。ガラス板は、Siと、ガラス熔融状態においてSiよりも揮発しやすい揮発成分と、を含む。ガラス板は、例えば、ガラス成分として、主にSiO、Al、B、MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO、KO、ZrO、TiO、ZnO、P等を含有することができる。
SiOは、骨格成分であり、必須成分である。SiO量が少なすぎると、耐酸性低下、耐熱性(歪点およびTg)低下、熱膨張係数増加及び耐バッファードフッ酸(BHF)低下が起こる場合がある。また、低密度化を図ることが困難となる場合もある。一方、SiO量が多すぎると、熔融粘性が著しく高くなり、熔解及び成形が困難になる場合がある。また、耐失透性が低下する場合もある。したがって、SiOの含有率は、52〜78%が好ましく、57〜75%がより好ましく、57〜68%がさらに好ましい。
Alは、分相を抑制し、歪点を高くして低温粘性を向上させる必須成分である。Al量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。また、低温粘性低下による耐熱性の低下や熱収縮率の増大、ヤング率低下および耐酸性の低下が起こる場合もある。一方、Al量が多すぎると、ガラスの失透温度が上昇して、失透が生じやすくなるため、成形性が悪化する。したがって、Alの含有率は、3〜25%が好ましく、8〜25%がより好ましく、10〜23%がさらに好ましい。
は、高温粘性を低下させ、失透温度を低下させ、熔解性を改善する必須成分である。B量が少なすぎると、熔解性低下、耐BHF低下、耐失透性低下および熱膨張係数増加が起こる場合がある。また、密度が増加して、低密度化を図ることが困難となる場合もある。一方、B量が多すぎると、歪点などの低温粘性低下に起因する、耐熱性低下や熱収縮率の増大、耐酸性低下およびヤング率低下が起こる場合がある。また、ガラス熔解時のBの揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。したがって、Bの含有率は、3〜15%が好ましく、3〜11%未満がより好ましく、3〜9%がさらに好ましい。
MgOは、熔解性を向上させる成分である。また、MgOは、アルカリ土類金属の中では密度を増加させにくい成分であるので、その含有量を相対的に増加させると、ガラスの低密度化を図りやすくなる。本実施形態のガラス板において、MgOは必須ではない。しかし、MgOを含有させることにより、熔解性の向上及び切粉発生の抑制を実現できるので、MgOが含まれていてもよい。一方、MgOの含有量が多すぎると、ガラスの失透温度が急激に上昇するため、熔解、成形性が悪化(耐失透性が低下)する。また、耐BHFが低下し、耐酸性が低下する。特に、失透温度を低下させた場合には、実質的に含有させないことが好ましい。したがって、本実施形態のガラス板では、MgOの含有率は、0〜15%が好ましく、0〜10%がより好ましく、0〜5%がさらに好ましく、0〜2%未満が好ましさらに好ましい。MgOは、実質的に含まないことがより好ましい。本明細書において、実質的に含まないとは、0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことを意味する。
CaOは、ガラスの失透温度を急激に上げることなく、ガラスの熔解性を向上させるのに有効な成分である。また、CaOは、アルカリ土類金属の中では、密度を増加させにくい成分であるので、CaO量を相対的に増加させると、ガラスの低密度化を図りやすくなる。CaO量が少なすぎると、高温時の粘性上昇による熔解性低下および耐失透性低下が起こりやすくなる。一方、CaO量が多すぎると、熱膨張係数の増加が起こりやすくなり、密度が上昇する。これらの理由から、CaOの含有率は、0〜20%が好ましく、3.6〜16%がより好ましく、5〜12%がさらに好ましく、6超〜12%がさらに好ましい。
SrOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。SrOは、必須成分ではないが、含有させると耐失透性向上および熔解性向上が実現できるので、含まれていてもよい。しかし、SrO量が多すぎると、密度が向上してしまう。したがって、密度を低下させたい場合には、実質的にSrOを含有させないことが好ましい。したがって、本実施形態のガラス板では、SrOの含有率は、0〜10%が好ましく、0〜2%がより好ましく、0〜0.5%がさらに好ましく実質的に含まないのがより好ましい。
BaOは、耐失透性および熔解性を向上させる成分である。また、BaOを含有させることにより、熱膨張係数が増大すると共に密度が過度に増加してしまう。したがって、本実施形態のガラス板では、BaOの含有率は、0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜1%がさらに好ましく、環境負荷の問題から、実質的に含まないのがより好ましい。
LiO、NaOは、熔解性を向上させる成分であるが、ガラス板から溶出してTFT特性を劣化させたり、ガラスの熱膨張係数を大きくして熱処理時にガラス板を破損したり、過度に耐熱性を低下させるおそれのある成分である。また、LiO、NaOの存在下では、これらが存在しない場合と比べ、Bは揮発しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス板は、LiOおよびNaOの含有率は、0〜0.1%が好ましく、実質的に含まないのがより好ましい。
Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄性を発揮させる成分である。また、KOは、熔解性を向上させ、さらにガラス融液の比抵抗を低下させる成分である。したがって、KOは、必須成分ではないが、含有させるとガラス融液の比抵抗低下、清澄性向上および熔解性向上を実現できる。一方、ガラス板から溶出してTFT特性を劣化させるおそれがあったり、KO量が多すぎると、熱膨張係数が増大したり、耐熱性が過度に低下する場合がある。また、KOの存在下では、これらが存在しない場合と比べ、Bは揮発しやすくなる。なお、KOは、ガラス板から溶出してTFT特性を劣化させるおそれがあるが、Li2OやNa2Oと比較して、分子量が大きいため、ガラス板から溶出しにく
い。このことから、アルカリ金属酸化物を含有させる場合には、K2Oを含有させることが好ましい。そのため、本実施形態のガラス板では、KOの含有率は、0〜0.8%が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.3%がさらに好ましい。
ZrOおよびTiOは、ガラスの化学的耐久性および低温粘性を向上させる成分である。ZrOおよびTiOは、必須成分ではないが、含有させることで低温粘性の上昇及び耐酸性向上を実現できる。しかし、ZrO含有量およびTiO含有量が多くなりすぎると、失透温度が著しく上昇するため、耐失透性および成形性が低下する場合がある。特に、ZrOは、融点が高く難溶なため、一部が熔解炉の底部に堆積する問題を引き起こす。これらの未熔解の成分が、ガラス素地に混入すると、インクルージョンとしてガラスの品質悪化を引き起こすことがある。また、TiOは、ガラスを着色させる成分なので、ディスプレイ用板には好ましくない。以上の理由から、本実施形態のガラス板では、ZrOおよびTiOの含有率は、0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましく、より好ましくは、本実施形態のガラス板は、ZrOおよびTiOを実質的に含有しない。
ZnOは、耐BHF性および熔解性を向上させる成分であるので含まれていてもよいが、必須成分ではない。しかし、ZnO量が多くなりすぎると、失透温度上昇、低温粘性低下および密度上昇が起こる場合がある。そのため、本実施形態のガラス板では、ZnOの含有率は、0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましく、より好ましくは、本実施形態のガラス板はZnOを実質的に有しない。
は、高温粘性を低下させ、熔解性を向上させる成分であるので含まれていてもよいが、必須成分ではない。しかし、P含有量が多すぎると、ガラス熔解時のPの揮発によりガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、低温粘性が低下すると共に、耐酸性が著しく悪化したり、乳白が生じやすくなったりする。そのため、本実施形態のガラス板では、Pの含有率は、0〜3%が好ましく、0〜1%がより好ましく、0〜0.5%がさらに好ましく、より好ましくは、本実施形態のガラス板は、Pを実質的に有しない。
清澄剤として、環境への負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものがガラス組成に含まれる。例えば、Sn、Fe、Ce、Tb、MoおよびWの金属酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。清澄剤としては、SnOが好適である。清澄剤が少なすぎると、泡品質が悪化する。清澄剤の含有量が多くなり過ぎると、失透や着色等の原因となる。したがって、例えば清澄剤としてSnOが用いられる場合は、その含有率は0.01〜0.5%が好ましく、0.03〜0.3%がより好ましく、0.05〜0.25%がさらに好ましい。
Feは、清澄剤としての働きの他に、高温粘性を低下させ、比抵抗を低下させる働きを行う成分である。Feは必須成分ではないが、高温粘性が高く、熔解が困難なガラスにおいては、高温粘性や比抵抗を低下させるために含有させることが好ましい。Fe含有量が多くなりすぎると、ガラスが着色して透過率が低下する場合がある。また、Fe含有量が多くなりすぎると、低温粘性が低下してしまう。そのため、本実施形態のガラス板では、Feの含有率は、0〜0.1%が好ましく、0〜0.08%がより好ましく、0.001〜0.05%がさらに好ましく、0.005〜0.04%がさらに好ましい。
上述した成分に加え、本実施形態のガラス板は、ガラスの様々な熔融、清澄、および成形の物理的特性を調節するために、様々な他の酸化物を含有しても差し支えない。そのような他の酸化物の例としては、以下に限られないが、MnO、Nb25、MoO3、Ta2
5、WO3、Y23、およびLa23が挙げられる。
なお、As、Sb、PbOおよびFは、環境負荷が大きい物質であり、実質的に含まないことが好ましい。
SiO+Alは、小さすぎると、歪点が低下する。一方、SiO+Alは、大きすぎると、耐失透性が悪化する。したがって、SiO+Alは、75%が好ましく以上、76〜88%がより好ましく、77〜85%がさらに好ましく、78〜82%がさらに好ましい。
+Pは、小さすぎると、熔解性が低下する。一方、B+Pは、大きすぎると、ガラス熔解時のB+Pの揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、歪点が低下する。したがって、B+Pは、3〜15%が好ましく、3〜11%未満がより好ましく、4〜9%がさらに好ましく、5〜9%がさらに好ましい。
CaO/RO(ROは、MgO,CaO,SrO,BaOのうち含有するものの合計量)は、0.5〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、0.85超〜1がさらに好ましく、0.92〜1がさらに好ましく、0.95〜1がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐失透性と熔解性を両立することができる。さらに低密度化を図ることができる。また、複数のアルカリ土類金属を含有させるよりも、CaOのみを含有させた方が歪点を上昇させることができる。CaOは原料が安価であり、入手が容易である。
ガラスの熔解性の確保と成形時の揮発成分の揮発量の増加を抑制する点から、(SiO+2×Al)/Bは、8.0〜19.0が好ましく、9.5超〜19.0がより好ましく、9.5超〜17.0がさらに好ましく、10.0〜15.5がさらに好ましい。なお、本明細書において、例えば、9.5超というときは、9.5を超えることを意味する。本実施形態のガラス板は、LTPS・TFTが形成されるフラットパネルディスプレイ用のガラス板に好適であり、例えば、このような組成のものが好ましく用いられる。
SrO+BaOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。SrO+BaOは、必須ではないが、含有されると、耐失透性の向上、熔解性の向上を実現できる。一方、SrO+BaOは、大きすぎると、密度が上がってしまう。SrO+BaOは、0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜3%未満がさらに好ましく、0〜1がさらに好ましい。密度を低下させたい場合には、実質的に含有しないことがより好ましい。
RO+ZnO+Bは、少なすぎると熔解性が低下し、多すぎると歪点が低下する。したがって、7〜25%が好ましく、10〜23%が好ましく、12〜20%未満が好ましく、16〜20%がさらに好ましい。
O(LiO,NaO,KO)は、ガラスの塩基性度を高め、清澄剤の酸化を容易にして、清澄性を発揮させる成分である。また、熔解性向上、比抵抗を低下させる成分である。ROは、必須成分ではないが、比抵抗の低下、清澄性の向上、熔解性の向上が実現される。一方、RO量(LiO,NaO,KOの合計量)が多すぎると、ガラス板から溶出してTFT特性が劣化するおそれがある。したがって、RO量は、0〜2%が好ましく、0〜0.8%がより好ましく、0〜0.5%がさらに好ましく、0.01〜0.5%が一層好ましく、0.1〜0.4%が尚一層好ましい。
O/ROについて、KOは、LiOやNaOと比較して、分子量が大きいため、ガラス板から溶出しにくいため、ROを含有させる場合には、KOを含有させることが好ましい。一方、LiO,NaOの割合が大きいと、ガラス板から溶出してTFT特性を劣化させるおそれがある。したがって、KO/ROは、0.5〜1が好ましく、0.8〜1がより好ましい。
ROは、熔解性を向上させる成分である。RO量が少なすぎると、熔解性が悪化する。一方、RO量が多すぎると、歪点が低下し、密度が上昇し、ヤング率が低下する。また熱膨張係数が増大する。したがって、ROは、5〜20%が好ましく、5〜16%未満がより好ましく、6〜14%がさらに好ましく、8〜13%がさらに好ましい。
本実施形態のガラス板は、上記各成分を適宜組み合わせることによって実現することができるので、組成比は限定されないが、一例として、以下のような組成比のガラス板を挙げることができる。
SiO 52〜78質量%、
Al 3〜25質量%、
3〜15質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO 0〜10質量%、
BaO 0〜10質量%、
SnO 0〜0.5質量%、
が含有されるガラス板。
さらに他の一例として、以下のような組成比のガラス板を挙げることができる。
SiO 57〜68質量%、
Al 10〜23質量%、
3〜15質量%、
MgO 0〜10質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO 0〜10質量%、
BaO 0〜10質量%、
アルカリ土類金属酸化物 5〜20質量%、
が含有され、
(SiO+2×Al)/Bが8.0〜19.0である、ガラス板。
なお、アルカリ土類金属酸化物は、MgO、CaO、SrO、BaOの少なくともいずれか1つ、これら合計の濃度を指す。
これら2種のガラス板は、いずれも、より好ましくは、As、Sbは実質的に含有しない。さらに、BaOも環境負荷の大きな物質であるため、ガラス板は実質的に含有しないことが好ましい。また、これら2種のガラス板をTFTが形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス板に適用する場合は、アルカリ金属酸化物は実質的に含有しないことが好ましい。また、アルカリ金属酸化物は揮発しやすい成分であることから、揮発成分の揮発を抑制するという観点からは、0〜2%しか含有しないことが好ましい。また、アルカリ金属酸化物は、熔解性を高める観点から、0.01〜0.4%含有されてよい。また、液晶ディスプレイ用ガラス板や有機ELディスプレイ用ガラス板は、薄膜トランジスタ(TFT)の特性劣化を防止する観点から、LiO、NaOは実質的に含有されない。また、いずれのガラス板も、より好ましくは、Feは0.005〜0.05%(より好ましくは、0.01〜0.1質量%)含有されている。
(ガラス板のガラス特性)
ガラス板の失透温度は、1280℃以下であれば、ダウンドロー法でガラス板の成形がしやすくなる。そして、ダウンドロー法を適用することで、ガラス板の表面品質を向上できる。また、生産コストも低減することができる。失透温度が高すぎると、失透が生じやすく、耐失透性が低下する。また、ダウンドロー法で安定した生産ができなくなるおそれがある。したがって、失透温度は、1150〜1280℃が好ましく、1200〜1280℃がより好ましく、1200〜1250℃がさらに好ましい。
なお、失透温度は、例えば、次のようにして求められる。試験片ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得る。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させる。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れる。この白金ボートを、1080〜1320℃の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察する。失透が観察された最高温度を、失透温度とする。
ガラス板の熱膨張係数は、大きいと、熱処理工程において、熱衝撃や熱収縮量が増大する。他方、熱膨張係数が小さいと、他のガラス板上に形成される金属、有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数との整合がとりにくくなり、周辺部が剥離してしまう。また、LTPS・TFTの製造工程では、急加熱と急冷が繰り返され、ガラス板にかかる熱衝撃は大きくなる。さらに、大型のガラス板は、熱処理工程において、温度差(温度分布)がつきやすく、ガラス板の破壊確率が高くなる。熱膨張係数は、60×10−7−1未満が好ましく、38×10−7−1未満がより好ましく、26〜37×10−7−1未満がさらに好ましく、28〜36×10−7−1未満がより一層好ましく、30〜36×10−7−1未満がさらに好ましく、31〜35×10−7−1がさらに一層好ましく、32〜35×10−7−1未満が特に好ましい。このような範囲とすることで、熱膨張差から生じる熱応力を低減することができる。
なお、熱膨張係数は、例えば次のようにして求められる。試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とする。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量との測定結果を基に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張系数として測定する。
ガラス板の歪点は、低いと、ディスプレイ製造時の熱処理工程において熱収縮が生じやすくなる。したがって、670℃以上が好ましく、680℃以上がより好ましく、685℃以上がさらに好ましく、690℃以上がさらに一層好ましい。なお、歪点は、試験片ガラスに対して、ビーム曲げ測定装置を用いて測定を行い、ビーム曲げ法に従い、計算により求められる。
ガラス板の熱収縮率(量)は、大きくなると、画素のピッチズレを引き起こし、高精細なディスプレイを実現できない。したがって、ガラス板の熱収縮率は、60ppm以下が好ましく、55ppm以下がより好ましく、50ppm以下がより一層好ましく、48ppm以下がさらに好ましく、45ppm以下がさらに一層好ましい。なお、熱収縮率は、ここでは、0.7mm厚の熱収縮測定用試料ガラス板を昇降温速度が10℃/min、550℃で1時間の熱処理が2回施された後のガラス板の収縮量を用いて以下の式により求められる。
熱収縮率(ppm)=(熱処理後のガラス板の収縮量/熱処理前のガラス板の長さ)×10
ガラス板の密度は、大きくなりすぎると、ガラス板の軽量化が困難となり、ディスプレイの軽量化も図れなくなる。したがって、2.5g/cm以下が好ましく、2.45g/cm以下がより好ましく、2.4g/cm以下がさらに好ましい。なお、密度は、ヤング率測定用の板状サンプルをアルキメデス法によって測定される。
ガラス板の液相粘度は、液相粘度が104.5dPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは104.9dPa・s以上である。液相粘度を上記範囲とすることで、成形時に失透結晶が発生し難くなるため、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形しやすくなる。これにより、ガラス板の表面品位を向上できるとともに、ガラス板の生産コストを低減することができる。
液相粘度は、熔解温度の測定結果を用いて、失透温度での粘度を算出することで得られる。熔解温度は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定され、この測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度が算出されて得られる。
ガラス板の厚さは、例えば0.1mm〜1.5mmである。好ましくは0.1〜1.2mm、より好ましくは0.3〜1.0mm、さらにより好ましくは0.3〜0.8mm、特に好ましくは0.3〜0.5mmである。
本実施形態のガラス板の幅方向の長さは、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。一方、ガラス板の縦方向の長さも、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。
本実施形態のガラス板の製造方法は、オーバーフローダウンドロー法のほか、スリットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法等、他の製造方法にも適用できる。特に、オーバーフローダウンドロー法などと比較して、成形温度が高いフロート法では、揮発成分の揮発が生じやすいため、本実施形態の効果が有効となる。
(ガラス板の概略説明)
以下、図8を参照して、本実施形態のガラス板について説明する。
図8は、本実施形態のガラス板10を示す図である。
本実施形態のガラス板10は、フラットパネルディスプレイ用のガラス板である。フラットパネルディスプレイには、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイが含まれる。液晶ディスプレイには、ガラス板の表面にアモルファスシリコン(α−Si)薄膜トランジスタ(TFT)、低温ポリシリコン(LTPS)TFT等、いずれのタイプのTFTを形成したディスプレイも含まれる。
本実施形態のガラス板10は、フラットパネルディスプレイ用ガラス板に必須の成分であるBを含有する。ガラス板10は、表面部10aのB含有率が、厚さ方向の中心部10bのB含有率よりも高い。表面部10aは、ガラス板10の厚さ方向(図8において紙面上下方向)両側の領域であって、それぞれの側のガラス表面を含む。表面部10aの厚さは、特に限定されず、少なくともガラス表面を含んでいればよい。表面部10aの厚さは、ガラス板10の厚さの15万分の1〜1万分の1であり、例えば、2〜40nmである。中心部10bは、ガラス板10の厚さ方向中心を含む厚さ方向の領域である。中心部10bの厚さは、特に限定されず、少なくとも厚さ方向中心を含んでいればよい。本実施形態では、中心部は、表面部10a以外のガラス板内部の部分をいう。
含有率は、質量%で表してもよく、B原子濃度(%)で表してもよい。B原子濃度は、後述するように、X線光電子分光装置を用いて測定される。ガラス板10は、厚さ方向の中心から各表面に向かうほどB含有率が高くなるB含有率の分布を有しているのが好ましい。表面部10a及び中心部10bは、本実施形態では、互いに隣接しているが、他の実施形態では、表面部10aと中心部10bとの間に他の厚さ方向の領域があってもよい。すなわち、ガラス板10は、当該他の厚さ方向の領域として、B含有率が表面部10aより高い領域を有してもよく、B含有率が中心部10bより低い領域を有してもよい。また、2つの表面部10aは、B含有率が同一または異なってよい。
このようなガラス板10は、表面部10aのB含有率が中心部10bよりも高く、ガラス表面において失透の起きにくいガラス組成となっている。つまり、このガラス板は、製造段階において局部的な失透が抑制されている。
また、このガラス板10の製造時のガラスリボンの状態では、ガラス板10と同様に、表面部10aのB含有率が高いため、表面からBが揮発したとしても、SiOの濃度が高く耐酸性に強いSiリッチ領域は形成されない。ガラス板10においてもSiリッチ領域が形成されないので、剥離帯電を防止するためにガラス表面に形成した剥離帯電防止膜のエッチングによる除去を効率よく行うことができる。なお、剥離帯電とは、液晶ディスプレイ等の製造工程で用いる半導体形成装置において、薄膜形成やドライエッチング等のプロセス処理毎にサセプタ等の載置台に載せられて処理されたガラス板が載置台から取り外される時に生じる帯電をいう。この帯電が蓄積されて大きくなると、新たに載置台に載せて別のプロセス処理をしたとき、ガラス板が帯電により載置台に吸着されるので、ガラス板を載置台から取り外すことが難しくなり、最終的にガラス板を破損させるといった問題が生じる。このため剥離帯電を防止するためにガラス表面に剥離帯電防止膜が形成される。本実施形態のガラス板10aは、この剥離帯電防止膜をエッチャントを用いて効率よく除去することができる。
(実験例)
本実施形態の効果を確認するために、成形炉40内の雰囲気仕切り部材320の上方の炉壁に揮発成分を予め付着させることで揮発抑制処理を行って、オーバーフローダウンドロー法にて、下記表1に示す組成比および特性のアルミノシリケートガラス、アルカリアルミシリケートガラスのガラス板を製造し、失透発生の有無を評価した。ガラス板のサイズは、0.5mm厚で幅方向長さ2000mm×長手方向長さ2500mmであった。
Figure 0005787296
表1に示す特性のうち、ヤング率および比弾性率は下記要領で測定し、その他の特性は上述した測定方法により測定した。
(ヤング率)
ヤング率は、厚さ5mmのガラスを作成して、超音波パルス法により測定した。
(比弾性率)
ヤング率で示される弾性率を密度で除して求めた。
得られたガラス板に失透が発生しているか、目視により確認した。結果、ガラス板に、失透は生じていなかった。
他方、揮発抑制処理を行わずにガラス板を製造し、失透発生の有無を確認した。結果、ガラス板の表面部分に失透が生じているガラス板があった。
以上から明らかなように、成形時に揮発抑制処理を行うことにより、ガラス板の局部的な失透を抑えることができた。
以上、本発明のガラス板及びガラス板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
本発明は、フラットパネルディスプレイ用ガラス板だけでなく、携帯機器のディスプレイを保護するカバーガラス、携帯機器の筐体用ガラス板、磁気ディスク用ガラス板などにも適用することが可能である。
30 炉
40 成形炉
50 徐冷炉
200 熔解装置
201 熔解槽
202 清澄槽
203 攪拌槽
204 第1配管
205 第2配管
300 成形装置
310 成形体
311 供給口
312 溝
313 下方端部
316 ガイド板
320 雰囲気仕切り部材
330 冷却ローラ
350a〜350h 搬送ローラ
400 切断装置
411,412,413a,413b,413c,414 床面
418 揮発成分分圧センサ
419 揮発成分ガス供給装置
419a 揮発成分槽
420 配管
420a 弁
517 揮発成分供給装置
S1,S2,S3a〜S3c 炉外部空間
G ガラスリボン
G1 ガラス板

Claims (7)

  1. ガラス板の製造方法であって、
    Siと、ガラス熔融状態においてSiよりも揮発しやすい揮発成分と、を含むガラス原料を熔解して、歪点が670℃以上である熔融ガラスをつくる熔解工程と、
    オーバーフローダウンドロー法を用いて、前記熔融ガラスを成形してガラスリボンを形成する成形工程と、
    前記ガラスリボンを冷却する徐冷工程と、を含み、
    前記成形工程では、
    前記熔融ガラスを、炉壁で囲まれて構成される成形炉内に設けられた成形体の両側の側壁を伝わって流下させ、前記成形体の下方端部で合流させることでガラスリボンを形成し、かつ、成形炉内雰囲気を制御することで、前記熔融ガラス及び前記ガラスリボンからの前記揮発成分の揮発を抑制する揮発抑制処理を行
    前記ガラス板は、失透温度が1150〜1280℃であるディスプレイ用ガラス板である、ことを特徴とするガラス板の製造方法。
  2. 前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気の揮発成分分圧が制御される、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
  3. 前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気のB、Mg、Ca、Sr、Baの少なくともいずれか1つの揮発を抑制する、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
  4. 前記成形工程における熔融ガラスの温度は1220℃以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  5. 前記ガラス板の厚さは0.1mm〜1.2mmであり、前記ガラス板の幅方向の長さは500mm〜3500mmであり、前記ガラス板の縦方向の長さが500mm〜3500mmである、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  6. 前記ガラス板は、液晶ディスプレイに用いるガラス基板である、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  7. 前記ガラス板は、RO量(LiO、NaO、KOの合計量)を0〜2質量%含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
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