JP5787296B2 - ガラス板及びガラス板の製造方法 - Google Patents
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このような製造時の熱収縮を抑えるために、ガラス組成の調節などによってガラス板の歪点を高くすることで、熱収縮率を低減することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、歪点を高くすると、失透温度が上がり、熔融ガラスの成形時に失透が生じやすくなる。この問題は、ダウンドロー法によるガラス板の製造において、特に顕著である。このような成形時の失透を防止するためには、成形炉内雰囲気の温度を上げ、或いは成形時の熔融ガラスの温度を上げることが有効である。
Siと、ガラス熔融状態においてSiよりも揮発しやすい揮発成分と、を含むガラス原料を熔解して、歪点が670℃以上である熔融ガラスをつくる熔解工程と、
オーバーフローダウンドロー法を用いて、前記熔融ガラスを成形してガラスリボンを形成する成形工程と、
前記ガラスリボンを冷却する徐冷工程と、を含み、
前記成形工程では、
前記熔融ガラスを、炉壁で囲まれて構成される成形炉内に設けられた成形体の両側の側壁を伝わって流下させ、前記成形体の下方端部で合流させることでガラスリボンを形成し、かつ、成形炉内雰囲気を制御することで、前記熔融ガラス及び前記ガラスリボンからの前記揮発成分の揮発を抑制する揮発抑制処理を行い、
前記ガラス板は、失透温度が1150〜1280℃であるディスプレイ用ガラス板である、ことを特徴とする。
さらに、前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気のB、Mg、Ca、Sr、Baの少なくともいずれか1つの揮発を抑制する、ことが好ましい。
前記成形工程における熔融ガラスの温度は1220℃以上である、ことが好ましい。
前記ガラス板の厚さは.1mm〜1.2mmであり、前記ガラス板の幅方向の長さは500mm〜3500mmであり、前記ガラス板の縦方向の長さが500mm〜3500mmである、ことが好ましい。
前記ガラス板は、液晶ディスプレイに用いるガラス基板である、ことが好ましい。
前記ガラス板は、R2O量(Li2O、Na2O、K2Oの合計量)を0〜2質量%含む、ことが好ましい。
また、本発明のガラス板によれば、表面部のB2O3含有率が中心部のB2O3含有率よりも高い。このようなガラス板を製造するので、製造段階において局部的な失透の発生が抑えられている。
図2は、ガラス板の製造方法の工程図である。
この製造方法では、無アルカリガラス、アルカリ微量ガラス、アルカリガラスのいずれを用いてガラス板を製造してもよい。なお、本明細書では、無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスであり、アルカリ金属酸化物の含有量が0.05質量%未満のガラスを示すものとする。また、アルカリ微量ガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量が0.05〜2質量%のガラスを示すものとする。さらに、アルカリガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量が2質量%を超えるガラスを示すものとする。
この製造方法は、低温ポリシリコン(LTPS)薄膜トランジスタ(TFT)が形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造方法に好適である。また、酸化物半導体TFTが形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造にも好適である。フラットパネルディスプレイには、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイが含まれる。このような用途で用いられるガラス板については、後述する。なお、本実施形態のガラス板の製造方法は、太陽電池が形成されるガラス板等、フラットパネルディスプレイ以外の用途のガラス板の製造方法にも適用できる。
本実施形態の製造方法は、フラットパネルディスプレイ用のガラス板の製造方法であって、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で箱詰めもしくは積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
清澄工程(ST2)は、清澄槽202において行われ、清澄槽202内の熔融ガラスを加熱することにより、熔融ガラス中に含まれる気泡が、清澄剤の還元反応で生じた酸素を吸収することにより成長し液面に浮上して放出される。その後、熔融ガラスを冷却する過程で清澄剤の還元反応により気泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程(ST3)では、第1配管204を通って供給された攪拌槽203内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程(ST4)では、第2配管205を通して熔融ガラスが成形装置300に供給される。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをガラスリボンG(図4参照)に成形し、ガラスリボンGの流れを作る。本実施形態では、後述する成形体310を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST6)では、所望の厚さに成形されて流れるガラスリボンGが切断可能となるように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置400において、成形装置300から供給されたガラスリボンGを所定の長さに切断することで、板状のガラス板G1(図4参照)を得る。切断されたガラス板G1はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板G1が作製される。この後、ガラス端面の研削、研磨、さらにはガラス板の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理、失透等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板G1が最終製品として梱包される。なお、本発明のガラス板の製造方法は、切断工程を有していなくてもよく、例えば、切断工程に代えて、成形装置300から供給されたガラスリボンGを長尺のまま巻き取る工程を有していてもよい。
図4は、成形工程及び徐冷工程を行う成形装置300の構成を主に示す図である。
成形工程(ST5)を行う成形炉40および徐冷工程(ST6)を行う徐冷炉50は、耐火物で構成された炉壁に囲まれて構成されている。成形炉40は、徐冷炉50に対して鉛直上方に設けられている。なお、成形炉40および徐冷炉50をあわせて炉30という。炉30の炉壁で囲まれた炉内部空間に、成形体310と、雰囲気仕切り部材320と、冷却ローラ330と、搬送ローラ350a〜350cと、が設けられている。
成形体310は、図3に示す第2配管205を通して熔解装置200から流れてくる熔融ガラスをガラスリボンGに成形する。これにより、成形装置300内で、鉛直下方のガラスリボンGの流れが作られる。成形体310は、耐火レンガ等によって構成された細長い構造体であり、図4に示すように断面が楔形状を成している。成形体310の上部には、熔融ガラスを導く流路となる供給溝312が設けられている。供給溝312は、成形装置300に設けられた供給口において第2配管205と接続され、第2配管205を通して流れてくる熔融ガラスは、供給溝312を伝って流れる。供給溝312の深さは、熔融ガラスの流れの下流ほど浅くなっており、溝312から熔融ガラスが鉛直下方に向かって溢れ出るようになっている。
ここで、図5を参照して、成形体310に基いてより詳細に説明する。図5は、成形体310をより詳細に示す図である。
成形工程で用いる成形体310は、本体部314と、一対のガイド板316と、を主に有する。本体部314は、耐火レンガで構成されている。一対のガイド板316は、白金または白金合金により構成された板部材であり、本体部314の両側の端部に設けられて、熔融ガラスのガイド部として機能する。ガイド部とは、ガイド板316の縁部分であって、垂直壁面313a及び傾斜壁面313bから突出した部分であり、壁面を伝って流れる熔融ガラスの位置と幅を規制する部分をいう。ガイド板316のそれぞれは、ガイド部の高さ分、本体部314の形状に比べて面積が大きい形状を成している。一対のガイド板316のうち、第2配管205と接続される側のガイド板316には、本体部314の供給溝312に熔融ガラスを供給するための切り欠き部が設けられている。
このように、成形装置300は、成形体310を通って流下した熔融ガラスからガラスリボンGを成形する。その際、成形したガラスリボンGは重力に従って成形体310の壁面を鉛直下方に落下する流れから、下方に位置する冷却ローラ330および搬送ローラ350a〜350cを用いて下方に強制的に引かれる流れに変化する。
成形工程では、熔融ガラスの成形と並行して、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラスからの揮発成分の揮発を抑制する揮発抑制処理が行われる。ここでは、例えば、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)が、熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)以上になるよう制御される。なお、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)は、必ずしも熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)と同等以上に制御する必要はなく、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)が熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)以下であっても、成形炉40内雰囲気の揮発成分濃度(分圧)を高くする処理を何ら行わなかった場合と比較すると、揮発成分の揮発量を低減することができる。
揮発抑制処理に先立って、成形装置300の運転前に、揮発成分供給容器517などの揮発成分供給装置により、成形炉40内に揮発成分が供給され、予め成形炉40内の雰囲気中の揮発成分濃度を上げておくことが好ましい。
なお、本実施形態において揮発成分とは、例えば成形炉に供給される熔融ガラスの温度において、Siよりも飽和蒸気圧の大きい成分を示す。揮発成分としては、ホウ素(B)、アルカリ土類金属(Ma、Ca、Sr、Ba)、アルカリ金属(Li、Na、K)、Al等が挙げられる。特に、ホウ素とアルカリ金属(Li、Na、K)が共存すると、揮発が促進される。なお、ホウ素(B)、アルカリ土類金属(Ma、Ca、Sr、Ba)は失透温度を低下させる効果が大きいため、B、Ma、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1つの揮発を抑制する処理を行うことが好ましい。
そして、このような揮発抑制処理は、LTPS・TFTが形成されるフラットパネルディスプレイ用のガラス板の製造時に、特に有効である。LTPS・TFTが形成されるフラットパネルディスプレイの製造時には、熱収縮が問題となるため、一般的に、熱収縮率を小さくするためにガラス板の歪点を上げるが、単純に歪点を上げるだけでは、失透温度が高くなる場合があり、成形時に失透が生じやすくなる。このような成形時の失透を防止するために、成形炉内の雰囲気温度を高くする又は熔融ガラスの温度を上げることが考えられる。しかし、成形炉40内の雰囲気温度や熔融ガラスの温度が高くなると、熔融ガラスからホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発量が多くなり、熔融ガラス表面におけるホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の濃度が低下し、失透が生じやすくなる。しかし、本実施形態のガラス板の製造方法によれば、上述のように、揮発抑制処理により、ホウ素やアルカリ土類金属などの揮発成分の揮発が抑制されることで、失透が生じにくくなる。
変形例1の成形工程で用いられる成形装置は、炉30の外側には、アルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分ガスを成形炉40内に送り込むための揮発成分ガス供給装置419(図7参照)が設けられている。揮発成分ガス供給装置419の構成は特に限定されないが、固体の揮発成分(例えば、B2O3)が収容されかつ固体の揮発成分を加熱して揮発成分含有ガスを生成させる槽419aを有するとともに、先端が成形炉40内に延びる配管420に接続されていてもよい。揮発成分ガス供給装置419は、配管420途中に設けられた弁420aが開閉することにより、揮発成分含有ガスの供給量が調節されてもよい。弁420aは、図示されない制御装置に接続さている。
このとき供給される揮発成分の量は、例えば、成形炉40内の揮発成分濃度(分圧)が、過去の成形装置300運転時における熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)の平均値と等しくなる量である。このとき成形炉40内に供給される揮発成分含有ガスの温度は、成形装置300の運転時における成形炉40内の温度と同程度となるよう加熱されていることが好ましい。これにより、成形時に、熔融ガラス及びガラスリボンGのうち少なくとも熔融ガラスに揮発成分含有ガスが接触して冷却されてしまうのを防ぎ、ガラス板において板厚偏差が生じるのを回避することができる。より詳細には、熔融ガラス及びガラスリボンGのうち少なくとも熔融ガラスに揮発成分含有ガスが接触した領域のみ冷却され、粘度が高くなってしまうことを抑制できるので、冷却ローラ330によってガラスリボンGが引き伸ばされる際に、粘度が高くなった領域のみ十分に引き伸ばすことができず、板厚が厚くなってしまうということを回避することができる。
成形装置300の運転が開始され、成形工程が行われている間、揮発成分分圧センサ418により、成形炉40内の揮発成分分圧が計測され、成形炉40内の揮発成分分圧は、成形工程の間、例えば常に熔融ガラスの揮発成分濃度(分圧)以上に保たれ、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からのアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分の揮発が抑えられる。
なお、上述した揮発抑制処理において、成形炉40内の揮発成分分圧を熔融ガラスの揮発成分分圧以上になるよう制御することに代えて、成形炉40内の揮発成分分圧が予め定められた圧力の範囲内になるよう制御されてもよい。
次に、本実施形態のガラス板の製造方法の変形例2について説明する。
変形例2の成形工程で用いられる図示されない成形装置は、成形炉40に揮発成分ガス供給装置419が接続されているのに代えて、成形炉40の炉壁に固体の揮発成分が付着されていることを除いて、図7の成形装置300と同様に構成されている。付着される揮発成分の量は、成形装置の運転中、成形炉40内に、熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からの揮発成分の揮発を十分に抑制できるだけの量である。熔融ガラス表面及びガラスリボンG表面のうち少なくとも熔融ガラス表面からの揮発成分の揮発を十分に抑制できるだけの量は、最終製品であるガラス板をX線光電子分光装置で測定した結果に基づいて決定することができる。揮発成分は、炉壁内側の全面または一部に付着されてよい。また、揮発成分は、雰囲気仕切り部材320上面の全面または一部に付着されてもよい。
この変形例2でも、成形装置の運転開始前に、予め炉外部空間S2内のヒータにより、炉内温度が成形工程中の炉内温度と同程度に保たれる。これにより、炉壁に付着したアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分を気化させて成形炉40内に満たすことができる。また、成形装置の運転中も、絶えず炉壁からアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分ガスが放出されて成形炉40内に滞留し、熔融ガラス表面のアルカリ土類金属やホウ素などの揮発成分が揮発しにくい雰囲気が保たれる。よって、ここでも、ガラス板の局部的な失透を生じにくくすることができる。
本実施形態と変形例1〜2とを含む3つの例では、成形炉40内の揮発成分濃度を上昇させる例を挙げて説明したが、特に失透が生じやすい領域(熔融ガラス近傍の雰囲気)にのみ揮発成分濃度を上昇させてもよい。具体的には、上述したガイド板316周辺雰囲気にのみ揮発成分ガス供給するなどして、揮発成分の揮発を抑制することもできる。
以上、本実施形態の製造方法について、本実施形態と変形例1〜3とを含む4つの例を示して説明したが、これらの例は、単独でまたは2以上組み合わせて用いることができる。
(ガラス組成)
本実施形態に用いられるガラスの種類としては、ボロシリケイトガラス、アルミノシリケイトガラス、アルミノボロシリケイトガラス、等が挙げられる。
い。このことから、アルカリ金属酸化物を含有させる場合には、K2Oを含有させることが好ましい。そのため、本実施形態のガラス板では、K2Oの含有率は、0〜0.8%が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.3%がさらに好ましい。
O5、WO3、Y2O3、およびLa2O3が挙げられる。
SiO2+Al2O3は、小さすぎると、歪点が低下する。一方、SiO2+Al2O3は、大きすぎると、耐失透性が悪化する。したがって、SiO2+Al2O3は、75%が好ましく以上、76〜88%がより好ましく、77〜85%がさらに好ましく、78〜82%がさらに好ましい。
CaO/RO(ROは、MgO,CaO,SrO,BaOのうち含有するものの合計量)は、0.5〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、0.85超〜1がさらに好ましく、0.92〜1がさらに好ましく、0.95〜1がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐失透性と熔解性を両立することができる。さらに低密度化を図ることができる。また、複数のアルカリ土類金属を含有させるよりも、CaOのみを含有させた方が歪点を上昇させることができる。CaOは原料が安価であり、入手が容易である。
SrO+BaOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。SrO+BaOは、必須ではないが、含有されると、耐失透性の向上、熔解性の向上を実現できる。一方、SrO+BaOは、大きすぎると、密度が上がってしまう。SrO+BaOは、0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜3%未満がさらに好ましく、0〜1がさらに好ましい。密度を低下させたい場合には、実質的に含有しないことがより好ましい。
RO+ZnO+B2O3は、少なすぎると熔解性が低下し、多すぎると歪点が低下する。したがって、7〜25%が好ましく、10〜23%が好ましく、12〜20%未満が好ましく、16〜20%がさらに好ましい。
ROは、熔解性を向上させる成分である。RO量が少なすぎると、熔解性が悪化する。一方、RO量が多すぎると、歪点が低下し、密度が上昇し、ヤング率が低下する。また熱膨張係数が増大する。したがって、ROは、5〜20%が好ましく、5〜16%未満がより好ましく、6〜14%がさらに好ましく、8〜13%がさらに好ましい。
SiO2 52〜78質量%、
Al2O3 3〜25質量%、
B2O3 3〜15質量%、
MgO 0〜15質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO 0〜10質量%、
BaO 0〜10質量%、
SnO2 0〜0.5質量%、
が含有されるガラス板。
SiO2 57〜68質量%、
Al2O3 10〜23質量%、
B2O3 3〜15質量%、
MgO 0〜10質量%、
CaO 0〜20質量%、
SrO 0〜10質量%、
BaO 0〜10質量%、
アルカリ土類金属酸化物 5〜20質量%、
が含有され、
(SiO2+2×Al2O3)/B2O3が8.0〜19.0である、ガラス板。
なお、アルカリ土類金属酸化物は、MgO、CaO、SrO、BaOの少なくともいずれか1つ、これら合計の濃度を指す。
ガラス板の失透温度は、1280℃以下であれば、ダウンドロー法でガラス板の成形がしやすくなる。そして、ダウンドロー法を適用することで、ガラス板の表面品質を向上できる。また、生産コストも低減することができる。失透温度が高すぎると、失透が生じやすく、耐失透性が低下する。また、ダウンドロー法で安定した生産ができなくなるおそれがある。したがって、失透温度は、1150〜1280℃が好ましく、1200〜1280℃がより好ましく、1200〜1250℃がさらに好ましい。
なお、失透温度は、例えば、次のようにして求められる。試験片ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得る。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させる。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れる。この白金ボートを、1080〜1320℃の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察する。失透が観察された最高温度を、失透温度とする。
なお、熱膨張係数は、例えば次のようにして求められる。試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とする。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量との測定結果を基に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張系数として測定する。
熱収縮率(ppm)=(熱処理後のガラス板の収縮量/熱処理前のガラス板の長さ)×106
液相粘度は、熔解温度の測定結果を用いて、失透温度での粘度を算出することで得られる。熔解温度は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定され、この測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度が算出されて得られる。
本実施形態のガラス板の幅方向の長さは、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。一方、ガラス板の縦方向の長さも、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。
本実施形態のガラス板の製造方法は、オーバーフローダウンドロー法のほか、スリットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法等、他の製造方法にも適用できる。特に、オーバーフローダウンドロー法などと比較して、成形温度が高いフロート法では、揮発成分の揮発が生じやすいため、本実施形態の効果が有効となる。
以下、図8を参照して、本実施形態のガラス板について説明する。
図8は、本実施形態のガラス板10を示す図である。
本実施形態のガラス板10は、フラットパネルディスプレイ用のガラス板である。フラットパネルディスプレイには、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイが含まれる。液晶ディスプレイには、ガラス板の表面にアモルファスシリコン(α−Si)薄膜トランジスタ(TFT)、低温ポリシリコン(LTPS)TFT等、いずれのタイプのTFTを形成したディスプレイも含まれる。
本実施形態のガラス板10は、フラットパネルディスプレイ用ガラス板に必須の成分であるB2O3を含有する。ガラス板10は、表面部10aのB2O3含有率が、厚さ方向の中心部10bのB2O3含有率よりも高い。表面部10aは、ガラス板10の厚さ方向(図8において紙面上下方向)両側の領域であって、それぞれの側のガラス表面を含む。表面部10aの厚さは、特に限定されず、少なくともガラス表面を含んでいればよい。表面部10aの厚さは、ガラス板10の厚さの15万分の1〜1万分の1であり、例えば、2〜40nmである。中心部10bは、ガラス板10の厚さ方向中心を含む厚さ方向の領域である。中心部10bの厚さは、特に限定されず、少なくとも厚さ方向中心を含んでいればよい。本実施形態では、中心部は、表面部10a以外のガラス板内部の部分をいう。
このようなガラス板10は、表面部10aのB2O3含有率が中心部10bよりも高く、ガラス表面において失透の起きにくいガラス組成となっている。つまり、このガラス板は、製造段階において局部的な失透が抑制されている。
本実施形態の効果を確認するために、成形炉40内の雰囲気仕切り部材320の上方の炉壁に揮発成分を予め付着させることで揮発抑制処理を行って、オーバーフローダウンドロー法にて、下記表1に示す組成比および特性のアルミノシリケートガラス、アルカリアルミシリケートガラスのガラス板を製造し、失透発生の有無を評価した。ガラス板のサイズは、0.5mm厚で幅方向長さ2000mm×長手方向長さ2500mmであった。
(ヤング率)
ヤング率は、厚さ5mmのガラスを作成して、超音波パルス法により測定した。
(比弾性率)
ヤング率で示される弾性率を密度で除して求めた。
他方、揮発抑制処理を行わずにガラス板を製造し、失透発生の有無を確認した。結果、ガラス板の表面部分に失透が生じているガラス板があった。
以上から明らかなように、成形時に揮発抑制処理を行うことにより、ガラス板の局部的な失透を抑えることができた。
40 成形炉
50 徐冷炉
200 熔解装置
201 熔解槽
202 清澄槽
203 攪拌槽
204 第1配管
205 第2配管
300 成形装置
310 成形体
311 供給口
312 溝
313 下方端部
316 ガイド板
320 雰囲気仕切り部材
330 冷却ローラ
350a〜350h 搬送ローラ
400 切断装置
411,412,413a,413b,413c,414 床面
418 揮発成分分圧センサ
419 揮発成分ガス供給装置
419a 揮発成分槽
420 配管
420a 弁
517 揮発成分供給装置
S1,S2,S3a〜S3c 炉外部空間
G ガラスリボン
G1 ガラス板
Claims (7)
- ガラス板の製造方法であって、
Siと、ガラス熔融状態においてSiよりも揮発しやすい揮発成分と、を含むガラス原料を熔解して、歪点が670℃以上である熔融ガラスをつくる熔解工程と、
オーバーフローダウンドロー法を用いて、前記熔融ガラスを成形してガラスリボンを形成する成形工程と、
前記ガラスリボンを冷却する徐冷工程と、を含み、
前記成形工程では、
前記熔融ガラスを、炉壁で囲まれて構成される成形炉内に設けられた成形体の両側の側壁を伝わって流下させ、前記成形体の下方端部で合流させることでガラスリボンを形成し、かつ、成形炉内雰囲気を制御することで、前記熔融ガラス及び前記ガラスリボンからの前記揮発成分の揮発を抑制する揮発抑制処理を行い、
前記ガラス板は、失透温度が1150〜1280℃であるディスプレイ用ガラス板である、ことを特徴とするガラス板の製造方法。 - 前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気の揮発成分分圧が制御される、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
- 前記揮発抑制処理では、前記成形炉内雰囲気のB、Mg、Ca、Sr、Baの少なくともいずれか1つの揮発を抑制する、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
- 前記成形工程における熔融ガラスの温度は1220℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
- 前記ガラス板の厚さは0.1mm〜1.2mmであり、前記ガラス板の幅方向の長さは500mm〜3500mmであり、前記ガラス板の縦方向の長さが500mm〜3500mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
- 前記ガラス板は、液晶ディスプレイに用いるガラス基板である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
- 前記ガラス板は、R2O量(Li2O、Na2O、K2Oの合計量)を0〜2質量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
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