JP2009186226A - 透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射防止機能を備え、かつ硬度が十分に高く耐傷性が確保された透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の透光性部材1は、透光性を有する基材10を備え、基材10の体表面部における少なくとも一部には、反射防止機能を有する反射防止層11が形成され、反射防止層11は、基材10に注入されたホウ素イオンを含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、カバーガラスなどの透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法に関する。
従来、時刻表示などの視認性を高めるため、カバーガラス(風防)と呼ばれる透光性部材に反射防止膜(減反射膜)を形成することが知られている(特許文献1)。反射防止膜は、無機膜が数層〜数十層積層されて構成されることが一般的であり、カバーガラスのように高い硬度が求められる場合には、光透過率が高いうえ低屈折率でかつ比較的硬度が高いSiOが反射防止膜の最表層に成膜されることが多い。特許文献1には、SiOを最表層および最下層とし、SiO膜とSi膜とが交互に積層された反射防止膜が記載されている。
特開2004−271480号公報
ここで、カバーガラスに多用されるサファイア基板の硬度はISO14577準拠の測定値で約52269N/mm(5330kgf/mm2を換算した値。以下同様)と高硬度であるが、SiO膜の硬度はISO14577準拠の測定値で約13700N/mm〜約19600N/mm程度と、耐傷性を確保するのに十分な硬度とは言い難い(蒸着によるSiO2層は約13700N/mm2(1400kgf/mm2)、スパッタによるSiO2層は約19600N/mm2(2000kgf/mm2)))。このような反射防止膜をカバーガラスの外側の面に形成すると、外部からの衝撃等で膜が剥離するなどして光透過率が低下し、時刻表示等の視認性が低下するおそれがあるため、反射防止膜をカバーガラスの外側の面に形成することは難しい。このため、SiOを最表層とする反射防止膜が形成される箇所は、実質、カバーガラスの内側の面に限定されていた。すなわち、耐傷性が要求される部分への反射防止層の形成が難しかった。
以上に鑑みて、本発明の目的は、反射防止機能を備え、かつ硬度が十分に高く耐傷性が確保された透光性部材、時計、および透光性部材の製造方法を提供することにある。
本発明の透光性部材は、透光性を有する基材を備え、前記基材の体表面部における少なくとも一部には、反射防止機能を有する反射防止層が形成され、前記反射防止層は、前記基材に注入されたホウ素イオンを含むことを特徴とする。
ここで、本発明に係る反射防止層は、注入された前記イオンが基材において存在する部分を言い、基材の体表面から基材の内部に亘って所定深さで形成された層状の領域である。前記イオンの存在により、反射防止層における屈折率は基材における反射防止層以外の部分(イオン非注入部)における屈折率よりも小さくなる。
なお、透光性部材の材質としては、サファイア、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
この発明では、基材に注入された前記イオンを含んで反射防止層が形成される。ここで、基材にイオンが注入されることで形成された反射防止層の屈折率は、基材における反射防止層以外の部分(イオン非注入部)の屈折率よりも小さい。反射防止層の屈折率は、イオンと基材との体積比率に基づく平均とみなせる。このため、基材と空気との屈折率の差を小さくでき、これによって光透過率を増大させることが可能となるので、反射率を低減することが可能となる。
本発明の反射防止層は、基材の体表面から基材内部に亘って形成され、基材の一部を構成するため、基材の体表面に反射防止膜が成膜される場合とは異なり、基材表面の硬度が基材自体の硬度となる。つまり、基材の硬度を維持して透光性部材が設けられる製品の実用に十分な硬度を確保しつつ、基材に反射防止機能を付与することが可能となる。すなわち、耐傷性と反射防止機能とを併せ持つ透光性部材を実現できる。本発明に係る反射防止層は耐傷性を有するため、本発明の透光性部材をカバー部材として使用する場合にそのカバー部材の外側の部分に反射防止機能を付与することが可能となる。
そして、本発明の透光性部材が機器の情報表示部のカバー部材として設けられる場合には、透光性部材の反射防止機能によって情報の視認性が向上する。この視認性は、透光性部材の耐傷性によって長期に亘り維持される。
本発明の透光性部材において、前記基材には、溶融状態の酸化ホウ素からイオン化されたホウ素イオンが注入されることが好ましい。
この発明によれば、溶融状態の酸化ホウ素を使用し、基材の内部にイオンを拡散させることにより、基材の深い位置にまでホウ素イオンを注入することが可能となる。
また、本発明のように溶融した酸化ホウ素を使用してイオン注入を行うことにより、イオン打ち込みなどとは違って、基材の深い位置にまでイオンを注入しても基材が損傷しない。
本発明の透光性部材において、前記基材は、前記反射防止層と、前記イオンが注入されないイオン非注入部とを有し、前記反射防止層における前記イオン非注入部の屈折率よりも屈折率が小さい部分の厚みは、50nm以上、150nm以下であることが好ましい。
この発明によれば、反射防止層における前記部分の厚みが適切であることにより、可視光領域略全体に亘って良好に反射率を低減できる。これにより、透光性部材の無色透明化を図ることができる。前記イオン注入深さが50nm未満の場合には、特に青の帯域における反射率が大きい。また、前記イオン注入深さが150nmを超えた場合には、特に赤の帯域における反射率が大きい。
ここで、基材の体表面からの深さに応じてイオン濃度が異なる場合には、反射防止層の内部において微視的には、屈折率が異なる複数の光学層が形成されるものと想定できる。これらの光学層により、屈折率が異なる多層構造の反射防止膜を形成することなく、広範囲な波長および広範囲な入射角の光に対応した反射防止効果が得られる。このような反射防止効果が本発明によって簡易にかつ安価に得られる。
本発明の透光性部材において、前記反射防止層の最表層部の屈折率は、1.6以下であることが好ましい。
この発明によれば、反射防止層の最表層部の屈折率が1.6以下と低く、これによって基材と空気との界面における屈折率の差が小さくなるため、良好な反射防止効果が得られる。
本発明の透光性部材において、前記イオンが注入された前記体表面部の表面硬度は、24500N/mm(約2500kgf/mm2)以上であることが好ましい。
この発明によれば、携帯される腕時計、懐中時計などの時計や、携帯情報機器などの実用に十分な耐傷性が得られる。
ここで、前記表面硬度は、ISO14577に準拠した方法で測定された値である。この測定には、圧子と、圧子への荷重を制御する荷重制御機構と、圧子の変位を検出するセンサとを有するナノインデンターが使用される。
本発明の透光性部材において、前記イオンが注入された前記体表面部の表面硬度は、前記イオンの注入前における前記基材の硬度よりも大きいことが好ましい。
この発明では、イオン注入により基材の体表面部の圧縮応力が増すことで、表面硬度が注入前よりも大きくなる。これにより、耐傷性をより一層向上させることができる。
本発明の透光性部材において、前記透光性部材は、カバー部材とされ、前記反射防止層は、前記カバー部材の内側の部分および外側の部分のうち、少なくとも外側の部分に形成されることが好ましい。
本発明によれば、カバー部材の外側から入射する光の反射を入射側で防止できるため、カバー部材の内側である射出側の部分に反射防止層が形成された場合よりも良好な反射防止効果が得られる。
また、外部に露出するためより高い耐傷性が要求されるカバー部材の外側の部分に反射防止層が形成されることで、耐傷性確保の意義を大きくできる。
本発明の時計は、前述の透光性部材を備え、前記透光性部材は、時計体を収容するケースに設けられることを特徴とする。
この発明によれば、前述の透光性部材を備えることにより、前述と同様の作用および効果を享受できる。ここで、透光性部材は、例えばカバーガラス(風防)としてケースに設けられる。
本発明の透光性部材の製造方法は、酸化ホウ素を溶融する酸化ホウ素溶融工程と、溶融状態の酸化ホウ素に前記基材を浸漬することによって、溶融状態の酸化ホウ素からイオン化したホウ素イオンを前記基材に注入するイオン注入工程と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、前述の透光性部材に係る発明と同様に、反射防止層が基材の一部を構成し、基材の体表面の硬度が基材自体の硬度となるため、耐傷性と反射防止機能とを併せ持つ透光性部材を実現できる。
また、溶融状態の酸化ホウ素を使用することにより、前述したような反射防止層の厚みなどを容易に実現できる。さらに、本発明のように溶融した酸化ホウ素を使用してイオン注入を行うことにより、イオン打ち込みなどとは違って、基材の深い位置にまでイオンを注入しても基材が損傷しない。
このような本発明によれば、反射防止機能と耐傷性とを併せ持つ透光性部材、これを備えた時計、および透光性部材の製造方法を提供できる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.腕時計の構成〕
図1は、本実施形態の透光性部材としてのカバーガラス1を備えた腕時計を示す。カバーガラス1は、時計体(ムーブメント)3を収容するケース4に設けられる。ケース4には裏蓋5が設けられる。
本実施形態のカバーガラス1は、サファイア製の基材10から形成される。この基材10の体表面部は、前面部10A、後面部10B、および側面部10Cからなる。前面部10Aは、カバーガラス1の外側の部分に相当する。後面部10Bは、カバーガラス1の内側の部分に相当し、文字板6および指針7に対向する。
〔2.カバーガラスの製造方法〕
本実施形態のカバーガラス1の体表面部には、ホウ素イオンが注入される。このホウ素イオンの注入には、まず、酸化ホウ素を500℃以上に加熱して溶融する酸化ホウ素溶融工程を実施する。このように酸化ホウ素を溶融することにより、ホウ素がイオン化される。
次に、溶融状態の酸化ホウ素中に基材10を30分間浸漬するイオン注入工程を実施する。これにより、ホウ素イオンが基材10の内部に拡散する。
〔3.カバーガラスの構成〕
図2は、上述の製造方法により製造されたカバーガラス1の前面部10Aを模式的に示す。上述のイオン注入処理前における基材10の硬度は、約52269N/mm(5330kgf/mm2)であり、イオン注入処理前における基材10の屈折率は1.769である。
基材10の前面部10Aには、基材10にホウ素イオンが注入されることによって反射防止層11が形成されている。この反射防止層11は、基材10の体表面Aから基材10の内部に亘って所定深さで形成された層状の領域であり、基材10に注入された状態のホウ素イオンを含む。基材10は、この反射防止層11と、ホウ素イオンが注入されていないイオン非注入部12とを有して構成される。
なお、本実施形態では、前面部10A、後面部10B、および側面部10Cのそれぞれに反射防止層11が形成される。
本実施形態の反射防止層11の最表層部110における屈折率は1.6以下である。
また、反射防止層11におけるイオン非注入部12の屈折率「1.769」よりも屈折率が小さい部分111の厚みは、50nm以上、150nm以下である。本実施形態のように溶融酸化ホウ素への浸漬によるイオン注入を行うことにより、基材10の表面を損傷することなく、基材10の深い位置にまでホウ素イオンを高濃度に注入できる。
ここで、反射防止層11におけるホウ素イオンの分布状態は、基材10の体表面Aからの深さによって異なっており、反射防止層11の内部において微視的には、屈折率が異なる複数の光学層が形成されるものと想定できる。このような多層構造によって光の波長や基材表面への入射角への依存性が少なくなり、可視光領域略全体に亘って反射率を良好に低減できる。
カバーガラス1の反射率は、例えば、カバーガラス1を透過した光の強度と、カバーガラス1を透過しない光の強度との差に基づいて測定可能である。そして、標準光の反射率と視感反射率とを可視光領域の各波長において掛け合わせた値の積算値に基づいて評価用の反射率を求め、この反射率を使用してカバーガラス1の光学特性を評価することが好ましい。これにより、目視の場合の反射防止性能を適切に評価できる。
イオンが注入された基材10の体表面部の表面硬度は、ナノインデンターを使用したISO14577準拠の測定値で24500N/mm(約2500kgf/mm2)以上である。ここで、イオン注入により基材10の体表面部の圧縮応力が増すことで、表面硬度がイオン注入前よりも大きくなる。
上述したような反射防止層11による反射防止機能により、カバーガラス1を通して文字板6および指針7がはっきりと視認可能となり、視認性が向上する。ここで、カバーガラス1の前面部10Aの表面硬度が腕時計の使用上十分な硬度(24500N/mm(約2500kgf/mm2)以上)であるため、カバーガラス1は優れた耐傷性を有する。これにより、外部衝撃を受けた際に光学特性が変化して透過率が低下することなく、長期に亘って優れた視認性を維持できる。
なお、反射防止層11は基材10自体であるため、基材表面に反射防止膜が成膜される場合と異なり、外部衝撃で膜が基材から剥離し、透過率が低下するなどの問題が生じない。
〔4.本実施形態による効果〕
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)カバーガラス1の反射防止層11は、基材10に注入されたイオンを含んで形成され、基材10の一部を構成するため、反射防止層11の硬度が基材10自体の硬度となる。つまり、基材10の硬度を維持して腕時計の実用に十分な硬度を確保しつつ、基材10に反射防止機能を付与することが可能となる。これにより、耐傷性と反射防止機能とを併せ持つカバーガラス1を実現できる。
(2)カバーガラス1の反射防止機能により、時刻情報の視認性が向上する。この視認性は、カバーガラス1の耐傷性によって長期に亘り維持できる。
(3)反射防止層11におけるイオン非注入部12の屈折率よりも屈折率が小さい部分の厚みが適切であることにより、可視光領域略全体に亘って良好に反射率を低減できる。これにより、透光性部材の無色透明化を図ることができる。
(4)また、基材10の体表面Aからの深さに応じてイオン濃度が異なることで、微視的には反射防止層11の内部において、屈折率が互いに異なる複数の光学層が形成されたものと想定できるため、高価な多層構造の反射防止膜を形成することなく、広範囲な波長および広範囲な入射角の光に対応した反射防止効果が得られる。このような反射防止効果が反射防止層11によって簡易にかつ安価に得られる。
(5)反射防止層11の最表層部110の屈折率が1.6以下と低く、これによって反射防止層11の屈折率と空気の屈折率「1」との差が小さくなる。このため、良好な反射防止効果が得られる。
(6)基材10の前面部10Aの表面硬度が24500N/mm(約2500kgf/mm2)以上であることにより、腕時計の実用に十分な硬度が得られる。
(7)カバーガラス1の前面部10Aに形成された反射防止層11によって、カバーガラス1の外側から基材10に入射する光の反射を入射側で防止できる。このため、カバーガラス1の後面部10Bに反射防止層が形成された場合よりも良好な反射防止効果が得られる。
(8)溶融した酸化ホウ素を使用し、基材10の内部にホウ素イオンを拡散させることにより、反射防止層11における低屈折率の部分111の厚みや、前述したイオン分布状態などを容易に実現できる。
また、本実施形態のように溶融した酸化ホウ素を使用してイオン注入を行うことにより、基材10を損傷することなく、基材10の深い位置にまでイオンを注入できる。
〔本発明の変形例〕
本発明は、以上述べた実施形態には限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で種々の改良および変形を行うことが可能である。
前記実施形態では、カバーガラス1の体表面部全体(前面部10A、後面部10B、および側面部10C)に反射防止層11が設けられていたが、カバーガラス1の体表面部の一部にのみ、例えば前面部10Aのみに反射防止層が設けられてもよい。但し、前面部10Aと後面部10Bとの両方に反射防止層を形成することにより、カバーガラス1の反射防止性能をより一層高くできる。
前記実施形態では風防としてのカバーガラス1に本発明が適用された例を示したが、本発明の透光性部材は、風防としてのカバーガラスに限定されない。機械式時計などでは、裏蓋5(図1)が設けられる位置にカバー部材としての透光性部材が設けられ、この透光性部材を介して時計体の内部の機構を視認可能なシースルーバック仕様とされていることがある。このような場合、この透光性部材に本発明を適用できる。
なお、透光性部材の基材としては、高硬度のサファイアが好適であるが、このほか、石英ガラス、ソーダガラス等の使用も検討してよい。
ここで、石英ガラス、ソーダガラス等が使用され、サファイア等と比べて基材の硬度が低い場合でも、本発明に係るイオン注入によって基材の最表面部の硬度が大きくなるため、腕時計の実用に十分な硬度を確保できる。
また、本発明の透光性部材は、時計に使用されるカバー部材に限らず、携帯電話、携帯情報機器、計測機器、ディジタルカメラ、プリンタ、プロジェクタ、ダイビングコンピュータ、脈拍計等の各種機器における情報表示部のカバー部材として好適に使用できる。
なお、本発明の透光性部材は、カバー部材には限定されない。本発明に係る反射防止層は、透光性部材の基材において硬度確保と反射防止機能とが要求される任意の箇所に形成される。
以下に説明する実施例1および実施例2ではそれぞれ、前記実施形態と同様にサファイア製の基材を使用し、前記実施形態と同様の方法で基材にイオンを注入することによってカバーガラスを製造した。
具体的に、酸化ホウ素を500℃に加熱して溶融し、溶融状態の酸化ホウ素に基材全体を浸漬してホウ素イオンを基材の体表面部に拡散させた。これにより、基材の体表面部全体に反射防止層を形成した。
〔カバーガラスの光学特性の評価〕
上記の製造条件で製造されたカバーガラスについて、光学特性の評価および硬度測定を行った。
下記の表1に、注入したイオン種と、イオン注入量と、注入深さと、反射率と、硬度とをそれぞれ示す。なお、イオン注入量、注入深さ、屈折率、反射率、および硬度のそれぞれの意味を下記に示す。
イオン注入量:イオン注入状態の指標であり、このイオン注入量に基づいて酸化ホウ素の加熱温度などが決められる。
注入深さ:基材をその表面(体表面)から深さ方向に二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析してイオン濃度を測定し、このイオン濃度に基づいて求められる。基材表面から、反射防止に寄与する実効的な屈折率を成し得るイオン濃度とされた位置までの深さであり、例えば、イオン濃度が反射防止層の最表層部における値の1/2となる基材表面からの深さである。
なお、イオン濃度は、測定分解能に応じた深さごとのイオン数から求められる。
屈折率 :反射防止層の最表層部の屈折率である。
反射率 :基材表面に対して90°の入射角で入射する標準光の反射率を求め、この反射率と、入射角90°の場合の視感感度とを可視光領域の各波長において掛け合わせた値の積算値に基づいて算出した値である。
硬度 :ナノインデンターを使用して基材の体表面部の表面硬度を測定した値であり、ISO14577に準拠する。
Figure 2009186226
なお、表中の試験No.「0」は、イオンが注入されていないサファイア製基材の屈折率、反射率、および硬度を示す(以降の実施例においても同じ)。
上記表に示すように、酸化ホウ素の加熱温度が500℃の本実施例では前記イオン注入深さは70nmである。上記表の通り、イオン注入によって反射防止層の屈折率が低下するとともに、基材の反射率が低下する。
上記の表に示すように、イオン注入によって基材表面の硬度が注入前よりも大きくなる。これは、イオン注入により基材の体表面部の圧縮応力が増したためと考えられる。上記表1のNo.「0」および「1」のそれぞれのカバーガラスについて、以下に示す耐傷性試験1および耐傷性試験2を行った。
〔耐傷性試験1〕
文具用カッターの刃を基材の表面に垂直に当て、当該カッターに10kgの荷重をかけながら、カッターの刃を基材の表面に沿って直線的に移動させる。このようなカッターの刃の移動動作を10回行った後、実体顕微鏡で基材表面の傷の有無を観察した。
(その試験結果)
上記表1のNo.「0」および「1」のいずれのカバーガラスについても、傷はつかなかった。
〔耐傷性試験2〕
次のような落砂試験を行う。水平面に対してカバーガラスを45°の傾斜角度で配置する。この際、反射防止層が形成された側が上面側になるようにカバーガラスを配置する。このように配置したカバーガラスの反射防止層に向かって、水平面より1mの高さから砂を落下させる。その後、カバーガラスを洗浄し、試験前におけるカバーガラスの透過率と、試験後におけるカバーガラスの透過率との差△Tに基づいて、傷の付きづらさを評価した。
なお、使用する砂の材質は、黒色炭化ケイ素インゴットおよび緑色炭化ケイ素インゴットを粉砕、分級して製造されたカーボランダムである。この試験では、中心粒径が600〜850μmのカーボランダム#24を800cm使用した。
(その試験結果)
上記表1のNo.「0」および「1」のいずれのカバーガラスについても、△Tが0.01%となり、耐傷性が良好であった。
以上の耐傷性試験1および耐傷性試験2から、本実施例のカバーガラスはいずれも良好な耐傷性を有する。
次に、実施例2を示す。イオン注入状態の指標としてのイオン注入量は、本実施例では1.0E17ions/cmであり、酸化ホウ素の加熱温度は600℃である。
〔カバーガラスの光学特性の評価〕
上記の製造条件で製造されたカバーガラスの光学特性の評価を行った結果を、下記の表2に示す。なお、表中の注入深さ、屈折率、反射率、および硬度のそれぞれの意味は、実施例1で既に述べた。
Figure 2009186226
上記表に示すように、本実施例では前記イオン注入深さは90nmである。上記表の通り、イオン注入によって基材表面の屈折率が低下するとともに、基材の反射率が低下する。本実施例では、イオン注入深さが実施例1よりも深いため、低反射率化の効果が実施例1よりも大きい。
〔耐傷性の試験〕
上記表2のNo.「0」および「1」のそれぞれのカバーガラスについて、実施例1で述べた耐傷性試験1および耐傷性試験2を行ったところ、実施例1と同様の試験結果が得られた。本実施例のカバーガラスはいずれも、良好な耐傷性を有する。
〔実施例1および実施例2のまとめ〕
以上の実施例1、2から、イオン注入量が多いほど、カバーガラスの基材表面の屈折率を低くできる。ここで、反射率には前記イオン注入深さが影響し、イオン注入深さ50nm以上、150nm以下の範囲において、反射率を良好に低減できる。
また、イオン注入により、基材表面の硬度がサファイアの硬度よりも大きくなるため、耐傷性を大きく向上させることができる。
次に、基材の硬度と耐傷性との関係を示す。本実施例では、硬度が相違する各基材について、実施例1で述べた耐傷性試験1、2を行った。耐傷性試験1、2の結果を次の表に示す。
Figure 2009186226
また、図3は、基材最表層部の硬度と、△Tとの関係を示す。この硬度は、ナノインデンターを使用したISO14577準拠の測定値である。
上記表3および図3から、硬度が約24500N/mm以上の場合に、カッターでも傷つかず、また、△Tが2%以下となる。このため、腕時計の実用に十分な耐傷性が確保される。
本発明の実施形態に係るカバーガラスを備えた時計の断面図。 前記実施形態に係るカバーガラスの前面部を示す模式図。 本発明の実施例に係るグラフであり、硬度と耐傷性との関係を示す。
符号の説明
1・・・カバーガラス(透光性部材)、10・・・基材、10A・・・前面部(体表面部)、11・・・反射防止層、12・・・イオン非注入部、110・・・最表層部。

Claims (9)

  1. 透光性を有する基材を備え、
    前記基材の体表面部における少なくとも一部には、反射防止機能を有する反射防止層が形成され、
    前記反射防止層は、前記基材に注入されたホウ素イオンを含む
    ことを特徴とする透光性部材。
  2. 請求項1に記載の透光性部材において、
    前記基材には、溶融状態の酸化ホウ素からイオン化されたホウ素イオンが注入される
    ことを特徴とする透光性部材。
  3. 請求項1または2に記載の透光性部材において、
    前記基材は、前記反射防止層と、前記イオンが注入されないイオン非注入部とを有し、
    前記反射防止層における前記イオン非注入部の屈折率よりも屈折率が小さい部分の厚みは、50nm以上、150nm以下である
    ことを特徴とする透光性部材。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の透光性部材において、
    前記反射防止層の最表層部の屈折率は、1.6以下である
    ことを特徴とする透光性部材。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の透光性部材において、
    前記イオンが注入された前記体表面部の表面硬度は、24500N/mm以上である
    ことを特徴とする透光性部材。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の透光性部材において、
    前記イオンが注入された前記体表面部の表面硬度は、前記イオンの注入前における前記基材の硬度よりも大きい
    ことを特徴とする透光性部材。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の透光性部材において、
    前記透光性部材は、カバー部材とされ、
    前記反射防止層は、前記カバー部材の内側の部分および外側の部分のうち、少なくとも外側の部分に形成される
    ことを特徴とする透光性部材。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の透光性部材を備え、
    前記透光性部材は、時計体を収容するケースに設けられる
    ことを特徴とする時計。
  9. 透光性を有する基材を備える透光性部材の製造方法であって、
    酸化ホウ素を溶融する酸化ホウ素溶融工程と、
    溶融状態の酸化ホウ素に前記基材を浸漬することによって、溶融状態の酸化ホウ素からイオン化したホウ素イオンを前記基材に注入するイオン注入工程と、を備える
    ことを特徴とする透光性部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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