JP5784884B2 - 静電塗装装置および静電塗装方法 - Google Patents
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Description
尚、ここでいう「塗着効率」とは、噴霧した塗料量に対する被塗物に塗着した塗料量の比を示す値である。
このため、既存の静電塗装装置をそのまま利用することが難しく、設備投資の必要性から、静電塗装に掛かるコストが増大するという課題があった。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
図1(a)に示す如く、本発明に係る静電塗装装置の一実施形態である静電塗装装置1は、被塗物たるワーク2に静電塗装を行うための装置であって、ロボット3、塗装ガン4、高電圧発生装置5、制御装置6等からなる構成としている。ここで、ワーク2は接地(アースGに接続)されており、電位を「0」としている。
尚、本実施形態では、静電塗装装置1を構成するロボット3が多関節型ロボットである場合を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置を構成するロボットの態様をこれに限定するものではない。
塗装ガン4は、ベルカップ4aをエアモータ等の駆動手段(図示せず)により回転させて、ベルカップ4aの内面に展延させた液状の塗料を遠心力により微粒化させることができる回転霧化型の塗装装置である。
また、ガン本体4bには、高電圧発生装置5が電気的に接続されており、塗料を供給するための手段である塗料配管(図示せず)や、シェーピングエアを供給するための手段であるエア配管(図示せず)等、もさらに接続されている。
また、本実施形態で示す塗装ガン4は、当該塗装ガン4の外部に高電圧発生装置5が設けられる態様としているが、本発明に係る静電塗装装置を構成する塗装ガンの態様をこれに限定するものではなく、高電圧発生装置が、塗装ガンのガン本体に内蔵される態様であってもよく、その他の種々の態様とすることが可能である。
さらに、塗装ガン4に塗料を供給するための手段の態様は、ガン本体4bに塗料配管を接続する態様に限定するものではなく、例えば、ガン本体に塗料を充填したカートリッジ型の容器を装填し、当該容器から塗料を供給する態様であってもよく、その他の種々の態様とすることが可能である。
尚、以下の説明では、高電圧発生装置5により印加する静電高電圧の値を電圧Vとして規定し、電圧Vを印加したときに生じる放電電流の値を電流Iとして規定する。また、放電電流Iが流れることによって形成される静電界を電界Eとして規定する。また、以下の説明では、発生させる静電高電圧の極性が負である場合を例示して説明をする。
高電圧発生装置5によって、塗装ガン4に負の電圧Vを印加すると、塗装ガン4を負側の電位に帯電させることができ、また、塗装ガン4によって噴霧される塗料粒子についても負側の電位に帯電させることができる。
そして、塗装ガン4からワーク2に向かって電位の勾配を有する静電界たる電界Eが形成され、この電界Eを利用して、ワーク2に対する静電塗装を行うことができる。
制御装置6は、高電圧発生装置5によって発生させる静電高電圧(即ち、電圧V)をコントロールするための装置であり、高電圧発生装置5に対してパルス条件を含む信号を出力することができる。
静電塗装装置1では、制御装置6から出力される指令信号に基づいて、高電圧発生装置5によって発生させる電圧Vをパルス状に切り換える構成としている。
尚、ここで言う「パルス状」とは、最大値か最小値のどちらかをとるように周期的に振幅が変化する状態を言い、矩形波状や正弦波状の変化等を含む概念である。
また、ここで言う「パルス条件」とは、パルス波形を決定するための各要素であって、振幅(電圧差)とパルス周期(パルス幅およびパルス間隔)を含んでいる。
また、制御装置6には、ワーク2の仕様や塗装条件(使用する塗料の種類、噴霧量、等の各種条件)に係る情報が予め記憶されており、ワーク2の仕様や塗装条件に係る情報と塗装ガン4の動作状態を示す信号に基づいて、制御装置6によって、静電塗装状況を判断するとともに、そのときの最適なパルス条件をリアルタイムで演算して求める構成としている。
そして、制御装置6は、リアルタイムで求めたそのときの最適なパルス条件に係る指令信号を、高電圧発生装置5に出力する構成としている。
図1(b)に示す如く、噴霧される塗料粒子xのワーク2の塗布面に対して垂直な方向への飛散速度をR、塗装ガン4のワーク2の塗布面に対して平行な方向への変位速度をP、ワーク2と塗装ガン4の塗装距離をL、として規定するとき、塗料粒子xが塗装ガン4から噴霧されてからワーク2に塗着するまでに要する時間tは、t=L/Rとして表される。
また、電界Eの有効範囲をWと規定すると、時間tの間における有効範囲Wのワーク2の塗布面に対して平行な方向への変位距離Dは、D=P・t(=P・L/R)として表される。
そして、これらの各パラメータR・P・L・t・W・D等によって、「静電塗装状況」が決定されるため、ロボット3から、これらの各パラメータR・P・L・t・W・Dに係る信号が制御装置6に入力される。
尚、実際の塗料粒子xは拡散方向や塗装ガン4の動作方向等は三次元的であるが、本実施形態の説明では、説明を容易にするために各パラメータR・P・L・W・D等を二次元的に表現するものとしている。
そして、電圧V1を印加するときと電圧V2を印加するときの各放電電流I1・I2の差をΔI(即ち、ΔI=I1−I2)と規定する。
また、パルス状に各電圧V1・V2を切り換えて印加すると、このときに生じる放電電流Iは尖鋭部を有する略三角波のパルス状に変化する。そして、このとき生じる放電電流Iのピーク値をピーク電流I3として規定する。
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法によれば、高電圧発生装置5により発生させる電圧Vの値は従来と同じ各電圧V1・V2としながら、より高い放電電流I(ピーク電流I3)を得ることが可能になる。
ここで、各電圧V1・V2をパルス状に印加するときの放電電流Iの差をΔIp(即ち、ΔIp=I3−I2)として規定する。
高電圧発生装置5により、従来のように定常的な電圧V1を塗装ガン4に印加すると、ワーク2と塗装ガン4の間で、図3(b)に示すような電気力線で表される電界E1が形成される。尚、電気力線の間隔がより密になっている部分においては、電界E1の強度がより強くなっている。
尚、ここで言う「電界の範囲」とは、塗料を塗着させるために必要なクーロン力Fを付与し得る強度を有する電界の範囲を意味しており、電界が存在する範囲を意味しているものではない。
尚、電界中の塗料粒子xに作用するクーロン力Fは、塗料粒子xの帯電量をqとし、電界(強度)をEとするとき、F=qEとして表される。
印加電圧が低い(例えば、電圧V2を印加する)場合、電界E1の有効範囲W1に比してさらに電界E2の有効範囲W2が狭くなっている。また電界E2では、電気力線の間隔が、電界E1の電気力線の間隔に比してより疎になっており、電界E2の強度は電界E1に比して弱くなっている。
電界E3の有効範囲W3は、電界E1の有効範囲W1に比して、さらに広範囲となっている。また電界E3では、電気力線の間隔が、電界E1の電気力線の間隔に比してより密になっており、電界E3の強度は、電界E1に比してより高くなっている。
つまり、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法では、制御装置6から出力される信号に従って、パルス条件(即ち、パルス幅t1、パルス間隔t2、振幅ΔV)を変更することによって、電界E3の強度や有効範囲W3を調整するようにしている。
このため、電界E3を通過して塗着される塗料粒子xには、電界Eの強度の増大および帯電量qの増大による相乗効果によって、従来に比してより大きいクーロン力Fが作用するため、ワーク2により強い力で引き付けられ、その結果、塗着効率を向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、制御装置6によって、所定のパルス幅t1と、パルス間隔t2と、振幅ΔVと、の各値を変更して、ワーク2と塗装ガン4との間に形成される電界Eの強度および有効範囲Wを調整するものである。
このような構成により、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を確実に実現することができる。
このため、ロボット3からリアルタイムで制御装置6に入力される各パラメータP・R・L等に係る信号(即ち、静電塗装状況)と制御装置6に予め記憶される塗装条件(塗料の種類や噴霧量等)に基づいて、制御装置6によって、高電圧発生装置5に対して出力する出力信号(即ち、パルス条件)をリアルタイムで変更することにより、確実に塗着効率を向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、制御装置6によって、塗装ガン4の変位速度P、塗装ガン4から噴霧される塗料粒子xの飛散速度R(即ち、塗装ガン4におけるシェーピングエア圧力)、塗装ガン4により噴霧する塗料の噴霧量Q、塗装ガン4とワーク2との塗装距離L、塗装ガン4により噴霧する塗料の種類、に応じて、所定のパルス幅t1と、パルス間隔t2と、振幅ΔVと、を変更するものである。
このような構成により、生じさせる電界E3の状況を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を図ることができる。
ここでは、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置による静電塗装方法を、パルス条件を変えながら実施した場合における電界の有効範囲および塗着効率の変化を示している。
このため、図5(b)に示す如く、電流比ΔIp/ΔIの値が、1.0〜1.2程度である場合には、塗着効率も従来と同等である。
このため、図5(b)に示す如く、電流比ΔIp/ΔIの値が、1.2を越える辺りから、塗着効率も顕著に向上するようになり、電流比ΔIp/ΔIをさらに増大させると(ΔIp/ΔI=1.5および2.0の場合を参照)、さらに顕著に塗着効率が向上している。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、制御装置6によって、高電圧発生装置5により電圧V1を定常的に印加した場合に生じる放電電流I1の値に比して、放電電流Iの最大値(ピーク電流I3)がが1.2倍を越える値となるように、所定のパルス幅t1と、パルス間隔t2と、振幅ΔVと、を設定するものである。
このような構成により、より効果的に、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を図ることができる。
2 ワーク
4 塗装ガン
5 高電圧発生装置
6 制御装置
Claims (14)
- 被塗物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、
該塗装ガンまたは前記塗装ガンに付設される電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、
該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、
を備える静電塗装装置であって、
前記制御装置は、
前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧が設定されるとともに、
前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧を、所定のパルス幅、パルス間隔、振幅でパルス状に切り換え可能に構成され、
前記制御装置によって、
前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加した場合に生じる放電電流の値に比して、放電電流の最大値が1.2倍を越える値となるように、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を設定する、
ことを特徴とする静電塗装装置。 - 前記制御装置は、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更して、
前記被塗物と前記塗装ガンとの間に形成される電界の強度および有効範囲を調整する、
ことを特徴とする請求項1記載の静電塗装装置。 - 前記制御装置は、
前記塗装ガンと前記被塗物との距離に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2記載の静電塗装装置。 - 前記制御装置は、
前記塗装ガンの変位速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の静電塗装装置。 - 前記制御装置は、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の飛散速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の静電塗装装置。 - 前記制御装置は、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の噴霧量に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の静電塗装装置。 - 前記制御装置は、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の種類に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載の静電塗装装置。 - 被塗物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、
該塗装ガンまたは前記塗装ガンに付設される電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、
該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、
を備える静電塗装装置による静電塗装方法であって、
前記制御装置において、前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、
静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、
該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧を設定するとともに、
前記制御装置によって、
所定のパルス幅、パルス間隔、振幅で、前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧をパルス状に切り換えて、
前記被塗物と前記塗装ガンとの間に、
前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加したときに形成される電界の強度および範囲に比して、高強度かつ広範囲の電界を形成するとともに、
前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加した場合に生じる放電電流の値に比して、放電電流の最大値が1.2倍を越える値となるように、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を設定する、
ことを特徴とする静電塗装方法。 - 前記制御装置によって、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅の各値を変更して、
前記被塗物と前記塗装ガンとの間に形成される電界の強度および有効範囲を調整する、
ことを特徴とする請求項8記載の静電塗装方法。 - 前記制御装置によって、
前記塗装ガンと前記被塗物との距離に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項9記載の静電塗装方法。 - 前記制御装置によって、
前記塗装ガンの変位速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の静電塗装方法。 - 前記制御装置によって、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の飛散速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載の静電塗装方法。 - 前記制御装置によって、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の噴霧量に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の静電塗装方法。 - 前記制御装置によって、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の種類に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項9〜請求項13のいずれか一項に記載の静電塗装方法。
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