JP5474504B2 - 静電塗装装置および静電塗装装置の塗料汚れ防止方法 - Google Patents

静電塗装装置および静電塗装装置の塗料汚れ防止方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電塗装装置の技術に関し、より詳しくは、静電塗装装置の塗料汚れを防止するための技術に関する。
従来、静電塗装装置が備える塗装ガンやロボットアームに、塗料ミストが付着して汚れること(即ち、塗料汚れ)を防止するための技術が知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
特許文献1に開示された従来技術では、被塗装物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、塗装ガンを被塗装物に対して移動させるロボットアームを具備する静電塗装装置において、塗装ガンによって塗料に電圧を印加する構成であって、ロボットアームに対しても、塗料に印加する電圧と同極性の電圧を印加し、ロボットアームの周囲に塗料ミストと反発し合う電界バリアを形成することによって、空中を拡散してロボットアームに接近してくる塗料ミストがロボットアームに付着することを防止して、ロボットアームの塗料汚れを防止する構成としている。
空中を拡散してロボットアームに接近してくる塗料ミストは、塗装ガンから被塗装物に向けて噴霧される塗料の噴流の流れに沿って、一旦被塗装物に接近した後に被塗装物に塗着されずにオーバースプレーされ、被塗装物の周囲に間接的に拡散する塗料ミストが大半であり、この塗料ミストによるロボットアーム等の塗料汚れを防止することが、従来技術の主たる目的となっている。尚、このような一旦被塗装物に接近した後に被塗装物に塗着されずにオーバースプレーされ被塗装物の周囲に間接的に拡散する塗料ミストを、以後、間接塗料ミストと呼ぶ。
特開2007−69136号公報
例えば、自動車の車体を塗装するための塗装ラインにおいて、従来は、車体の上面部を塗装する工程と、車体の側面部を塗装する工程が、塗装ラインの上流・下流に分かれて配置されることが多く、車体の上面部を塗装するための静電塗装装置と、車体の側面部を塗装するための静電塗装装置は、塗装工程ごとに離間して配置される場合が多かった。
このため、ある静電塗装装置の塗装ガンから噴霧された塗料ミストが、他の静電塗装装置に直接的に到達して、複数の静電塗装装置が互いに塗料を掛け合うような状況が生じることは少なかった。尚、このようなある静電塗装装置の塗装ガンから噴霧され他の静電塗装装置に直接的に到達する塗料ミストを、以後、直接塗料ミストと呼ぶ。
一方、昨今では、塗装ラインのコンパクト化を図るニーズが高まっており、各部(上面部や側面部)を塗装するための各静電塗装装置を、より接近させて配置する場合が多くなってきた。
このため、複数の各静電塗装装置で互いに塗料を掛け合う状況が発生するようになり、静電塗装装置(特にロボットアーム)の直接塗料ミストによる塗料汚れが以前にも増して懸念される状況となっていた。
しかしながら、従来技術に係る塗料汚れの防止方法では、直接塗料ミストと間接塗料ミストが混在している状況では、静電塗装装置の塗料汚れを十分に防止することができないという問題があった。
本発明は、係る現状の課題を鑑みてなされたものであり、ロボットアームの周囲に直接塗料ミストと間接塗料ミストが混在している状況において、静電塗装装置の塗料汚れを確実に防止することができる静電塗装装置および静電塗装装置の塗料汚れ防止方法を提供することを目的としている。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、被塗装物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、前記塗装ガンを前記被塗装物に対して移動させるロボットアームと、前記塗装ガンに電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記ロボットアームに、前記第一の電圧印加手段によって前記塗装ガンに印加する電圧と同じ極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、を備え、前記第二の電圧印加手段が、前記ロボットアームに印加するための電圧を発生する電圧発生手段と、該電圧発生手段によって発生する電圧の電位を変更する電圧変更手段と、を備える静電塗装装置であって、前記電圧変更手段は、前記ロボットアームの周囲に異なる特性を有する複数種類の塗料ミストが混在している場合において、前記電圧発生手段により発生する電圧を、前記複数種類の塗料ミストのそれぞれの特性に応じた複数の電位に、前記ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じた所定の周期でパルス状に変更するものである。
請求項2においては、前記所定の周期のうち、前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が高い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間は、前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が低い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間に比して、長くするものである。
請求項3においては、前記電圧変更手段は、前記複数の電位を、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更するものである。
請求項4においては、前記電圧変更手段は、前記所定の周期を、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更するものである。
請求項5においては、前記電圧変更手段は、前記複数の電位と前記所定の周期を、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更するものである。
請求項6においては、被塗装物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、前記塗装ガンを前記被塗装物に対して移動させるロボットアームと、前記塗装ガンに電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記ロボットアームに、前記第一の電圧印加手段によって前記塗装ガンに印加する電圧と同じ極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、を備え、前記第二の電圧印加手段が、前記ロボットアームに印加するための電圧を発生する電圧発生手段と、該電圧発生手段によって発生する電圧の電位を変更する電圧変更手段と、を備える静電塗装装置の塗料汚れ防止方法であって、前記ロボットアームの周囲に異なる特性を有する複数種類の塗料ミストが混在している場合において、前記電圧発生手段により発生する電圧を、前記電圧変更手段によって、前記複数種類の塗料ミストのそれぞれの特性に応じた複数の電位に、前記ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じた所定の周期でパルス状に変更するものである。
請求項7においては、前記所定の周期のうち、前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が高い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間は、前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が低い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間に比して、長くするものである。
請求項8においては、前記複数の電位を、前記電圧変更手段によって、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更するものである。
請求項9においては、前記所定の周期を、前記電圧変更手段によって、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更するものである。
請求項10においては、前記複数の電位と前記所定の周期を、前記電圧変更手段によって、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、ロボットアームの周囲に特性が異なる複数種類の塗料ミストが混在している場合に、各塗料ミストによるロボットアームの塗料汚れを確実に防止することができる。
請求項2においては、ロボットアームの周囲に特性が異なる複数種類の塗料ミストが混在している場合に、各塗料ミストによるロボットアームの塗料汚れをより確実に防止することができる。
請求項3においては、ロボットアームに対する印加電圧を、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、最適化することができる。
請求項4においては、ロボットアームに対する印加電圧を変更する周期を、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、最適化することができる。
請求項5においては、ロボットアームに対する印加電圧と、該印加電圧を変更する周期を、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、最適化することができる。
請求項6においては、ロボットアームの周囲に特性が異なる複数種類の塗料ミストが混在している場合に、各塗料ミストによるロボットアームの塗料汚れを確実に防止することができる。
請求項7においては、ロボットアームの周囲に特性が異なる複数種類の塗料ミストが混在している場合に、各塗料ミストによるロボットアームの塗料汚れをより確実に防止することができる。
請求項8においては、ロボットアームに対する印加電圧を、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、最適化することができる。
請求項9においては、ロボットアームに対する印加電圧を変更する周期を、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、最適化することができる。
請求項10においては、ロボットアームに対する印加電圧と、該印加電圧を変更する周期を、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、最適化することができる。
本発明の一実施態様に係る静電塗装装置の全体構成を示す模式図。 本発明の一実施態様に係る塗装ガンおよびロボットアームの構成を示す部分模式図、(a)塗装ガンおよびロボットアームの構成を示す部分模式図、(b)高電圧発生装置の構成を示す模式図。 静電塗装装置による電界バリアの生成状況を示す模式図。 本発明の一実施態様に係る静電塗装装置の配置状況を示す模式図。 ロボットアームの周囲における塗料ミストの発生状況を示す模式図。 直接塗料ミストと間接塗料ミストに対する印加電圧と汚れ面積比の関係を調査した実験結果を示すグラフ。 本発明に係る静電塗装装置の塗料汚れ防止方法における電圧の印加状況を説明する模式図。 同一塗装ライン上に離間して静電塗装装置が配置される場合における印加電圧の設定変更状況を示す模式図。 同一塗装ライン上に接近して静電塗装装置が配置される場合における印加電圧の設定変更状況を示す模式図。
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明に係る静電塗装装置の全体構成について、図1〜図4を用いて説明をする。
図1および図4に示す如く、本発明に係る静電塗装装置の一実施態様である静電塗装装置1は、塗装を施す対象物である被塗装物(車体2)に対して、静電塗装を行うための装置であり、塗装ガン3、ロボットアーム4等を備えている。
尚、本実施例では、自動車の車体2を塗装する用途に用いられる静電塗装装置1を例示して説明を行うが、本発明に係る静電塗装装置の用途をこれに限定するものではない。
図1および図2(a)に示す如く、塗装ガン3は、被塗装物(車体2)に対して塗料を噴霧するための装置であり、ベルカップ3a、高電圧発生装置3b、リング電極3c等を備えている。
塗装ガン3は、ベルカップ3aを図示しないエアモータ等の駆動手段により回転させて、ベルカップ3aの内面に展延させた流体塗料を遠心力で微粒化させるとともに、高電圧発生装置3bによって、該塗装ガン3に負の静電高電圧を印加して、微粒化した塗料の粒子を負側に帯電させることができる回転霧化型の塗装装置である。
そして、負側に帯電した塗料と接地された(即ち、電位が0Vである)被塗装物(車体2)との間で形成される静電電界を利用して、車体2に対する静電塗装を行うことができる。
図3に示す如く、塗装ガン3は、高電圧発生装置3bにより発生させる負の静電高電圧によって、負側に帯電されるため、塗装ガン3の表面から離れる方向に勾配を有する静電界m1・m1・・・が形成される。そして、この静電界m1・m1・・・によって、塗装ガン3の周囲に、負側に帯電した塗料ミストと反発し合う電界バリアを形成し、この電界バリアの作用により、塗装ガン3の塗料汚れを防止している。
さらに、高電圧発生装置3bにより発生させる負の静電高電圧は、リング電極3cに対しても印加される。リング電極3cには、複数の針状電極3d・3d・・・が、該リング電極3cの半径方向外側に向けて突設されている。そして、各針状電極3d・3d・・・によって形成される静電界m2・m2・・・によって、リング電極3cの周囲に負側に帯電した塗料ミストと反発しあうより強力な電界バリアを形成し、この電界バリアの作用により、塗装ガン3の塗料汚れをより確実に防止する構成としている。
図1に示す如く、ロボットアーム4は、その下部において基台部7に回動可能に連結される上下アーム5と、該上下アーム5の上部にその後端部が回動可能に連結される水平アーム6とから構成され、前記上下アーム5、水平アーム6を各回動支点で回動させることで、前記水平アーム6の先端部に設けた塗装ガン3が、被塗装物(車体2)に対して移動されるように構成されている。
また、水平アーム6は、その先端部に塗装ガン3の連結筒3eが連結される第一アーム部6aと、その先端部に前記第一アーム部6aが連結される第二アーム部6bと、その先端部に前記第二アーム部6bが連結され、その後端部に前記上下アーム5が回動可能に連結される第三アーム部6cと、を有する構成としている。
また、第三アーム部6cは、前記上下アーム5を介して接地(アース接続)される構成としている。
また、図1および図2(a)に示す如く、第一アーム部6aには、二つの屈折部6d・6eが設けられ、各屈折部6d・6eにおいて第一アーム部6aが屈折動作される構成となっており、これにより、塗装ガン3が、図中における時計方向、又は、反時計方向に角度を変更することができる。
また、塗装ガン3を先端に取り付ける連結筒3eは、第一アーム部6aに対し、軸方向に回転駆動される構成となっており、これにより、塗装ガン3が、連結筒3eの軸を中心として角度を変更することができる。これにより、塗装ガン3の被塗装物(車体2)に対する角度が自由に設定できるように構成されている。
また、第一アーム部6aには、高電圧発生装置9が内蔵され、第一アーム部6aの外周表面全体に、塗装ガン3と同極性の電圧が印加される。
図1および図2(a)(b)に示す如く、高電圧発生装置9は、高電圧発生部9aと、コントローラ9bと、を備えている。
高電圧発生部9aは、所謂カスケードと呼ばれる昇圧回路を備えた部位であり、電源部によって生じさせる負極性の電圧を昇圧して、例えば、数十kV程度の負極性の高電圧を発生させることができる。
コントローラ9bは、高電圧発生部9aにおいて発生させる高電圧の電圧値をコントロールするための部位であり、コントローラ9bに設定しておくプログラムに従って、高電圧発生部9aによって発生する高電圧の電圧値や、印加する電圧を変更する周期をパルス状に変更することができる。
尚、本実施例では、高電圧発生部9aが1系統であって、高電圧発生部9aで発生させる電圧自体をコントローラ9bによって周期的に変化させることができる態様の高電圧発生装置9を例示しているが、例えば、2系統の高電圧発生部を備え、電圧切り替え部によって、いずれの高電圧発生部によって発生させた印加電圧を採用するかを切り替える態様の高電圧発生装置等であってもよく、本発明に係る静電塗装装置が備える高電圧発生装置の態様をこれに限定するものではない。
そして、図3に示す如く、第一アーム部6aの表面から離れる方向に勾配を有する静電界m3・m3・・・が形成される。そして、この静電界m3・m3・・・によって、第一アーム部6aの周囲に、負側に帯電した塗料ミストと反発し合う電界バリアを形成し、この電界バリアの作用により、第一アーム部6a(即ち、ロボットアーム4)の塗料汚れを防止している。
また、図1および図2(a)(b)に示す如く、第一アーム部6aの外周には、塗料に印加される電圧と同極性の電圧が印加されるリング電極8(リング状の静電電極)が設けられる。さらにリング電極8には、円錐形状の複数の針状電極8a・8a・・・が、リング電極8から半径方向外側へ向けて放射状に突設されている。
そして、図3に示す如く、この針状電極8a・8a・・・からは、リング電極8から離れる方向に勾配を有する静電界m4・m4・・・が形成される。
また、この静電界m4・m4・・・によって、第一アーム部6a(リング電極8)の周囲に、負側の帯電した塗料ミストと反発し合うより強力な電界バリアを形成し、この電界バリアの作用により、第一アーム部6a(即ち、ロボットアーム4)の塗料汚れをより確実に防止する構成としている。
尚、本実施形態では、ロボットアーム4にリング電極8を備える態様を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置が備えるロボットアームは、必ずしもリング電極を備えていなくてもよい。
また、本実施形態では、高電圧発生装置9を、ロボットアーム4内に内蔵している態様を例示しているが、これに限定するものではなく、例えば、高電圧発生装置をロボットアームの外部に備える構成とし、電線等を介してロボットアームと接続する態様とすることも可能である。
次に、塗装ラインにおける静電塗装装置の配置状況について、図4および図5を用いて説明をする。ここでは、図4に示すように、車体2・2・・・に対する塗装工程を実施するための塗装ライン10において、車体2の主に上面部を塗装するための静電塗装装置1Aと、車体2の主に側面部やハッチの裏面部を塗装するための静電塗装装置1Bと、が配置される場合を例示して説明をする。
図4に示す如く、各静電塗装装置1A・1Bは、車体2の上面部や側面部等を同時に塗装することができるように、接近して配置されており、静電塗装装置1Aから噴霧された塗料が、直接的に静電塗装装置1Bまで到達する可能性があるとともに、静電塗装装置1Bから噴霧された塗料が、直接的に静電塗装装置1Aまで到達する可能性がある。
このため、複数の静電塗装装置1A・1Bが接近して配置される場合には、各ロボットアーム4・4・・・の周囲には、静電塗装装置1A(あるいは、静電塗装装置1B)から噴霧され、直接的に静電塗装装置1B(あるいは、静電塗装装置1A)に到達する塗料ミスト(以後、直接塗料ミストXと呼ぶ)と、静電塗装装置1A(あるいは、静電塗装装置1B)から車体2に向けて噴霧され、車体2に一旦接近してから間接的に拡散する塗料ミスト(以後、間接塗料ミストYと呼ぶ)が混在している。
ここで、各静電塗装装置1A・1Bの離間距離が小さいほど、各ロボットアーム4A・4Bの周囲に存在する直接塗料ミストXが増加する傾向にあり、各静電塗装装置1A・1Bの離間距離が大きいほど、各ロボットアーム4A・4Bの周囲に存在する直接塗料ミストXが減少する傾向にある。また、各静電塗装装置1A・1Bの離間距離が一定距離以上になれば、各ロボットアーム4A・4Bの周囲に存在する直接塗料ミストXは存在しなくなる(あるいは考慮する必要がない程度に少なくなる)。
ここで、直接塗料ミストXおよび間接塗料ミストYの各特性について、図5および図6を用いて説明をする。
図5に示す如く、直接塗料ミストXは、例えば、静電塗装装置1Aから噴霧され、直接的に静電塗装装置1Bに接近するため、塗装ガン3の高電圧発生装置3bによって印加された静電荷(電子)を車体2によって奪われることなく静電塗装装置1Bの周囲に拡散し浮遊するため、印加された静電荷(電子)をほぼそのまま保持している。
一方、間接塗料ミストYは、図5に示すように、例えば、静電塗装装置1Bからハッチの裏面部に向けて噴霧され、車体2に一旦接近してから間接的にロボットアーム4に接近するため、塗装ガン3の高電圧発生装置3bによって印加された静電荷(電子)を車体2に奪われつつ、静電塗装装置1Bのロボットアーム4の周囲に拡散し浮遊するため、印加された静電荷(電子)に比して、間接塗料ミストYが保持している静電荷(電子)は減少している。
つまり、直接塗料ミストXと間接塗料ミストYは、拡散経路が異なるために帯電量が相異するという特性があり、直接塗料ミストXと間接塗料ミストYの静電荷(電子)の帯電量を比較すると、直接塗料ミストXの方が間接塗料ミストYに比して、帯電量が相対的に大きくなる傾向にある。
次に、直接塗料ミストXと間接塗料ミストYのそれぞれについて、静電塗装装置のロボットアームに対する印加電圧と、ロボットアームの汚れ面積(汚れ具合)との関係を求めた図6に示す実験結果に基づいて、各塗料ミストX・Yの特性を説明する。
まず、直接塗料ミストXに係る実験結果について、説明する。
図6に示す如く、本実験に用いられた直接塗料ミストXは、ロボットアームに対する印加電圧が−45kV付近である場合に汚れ面積比が最小となっている。また、印加電圧を−45kVよりも低く(即ち、0Vに近く)していくと、汚れ面積比が増大していき、印加電圧が0Vのときに汚れ面積比が最大となっている。この印加電圧が0Vである状況は、ロボットアームが接地されている状況に等しく、ロボットアームに対して積極的に静電塗装を行うのと同じ状況になるため、印加電圧が0Vのときに汚れ面積比が最大となるのは当然の結果と言える。
また、印加電圧を−45kVよりも高く(即ち、より負側に大きく)していくと、それに伴って汚れ面積比も微増していく傾向が認められる。尚、ここで言う汚れ面積比とは、ロボットアームの表面上に所定面積の測定範囲を設定した場合における、当該測定範囲の面積に対する当該測定範囲における塗料の付着面積の割合を意味している。
つまり、直接塗料ミストXとロボットアームに対する印加電圧との関係は、ロボットアームに対する印加電圧が高すぎても低すぎても、直接塗料ミストXによる塗料汚れを防止する効果(以後、防汚効果と記載する)が低下する関係にあり、直接塗料ミストXの帯電量に応じた印加電圧の最適値が存在していることが判る。
そして、本実験に用いた直接塗料ミストXに対しては、ロボットアームに対する印加電圧の最適値は−45kV付近であり、印加電圧を−45kV付近に設定すれば、直接塗料ミストXに対して、最も高い防汚効果が得られることが判る。
次に、間接塗料ミストYに係る実験結果について、説明する。
図6に示す如く、本実験に用いられた間接塗料ミストYは、ロボットアームに対する印加電圧が−15kV付近である場合に汚れ面積比が最小となっている。また、印加電圧を−15kVよりも低く(即ち、0Vに近く)していくと、汚れ面積比が増大している。
また、印加電圧を−15kVよりも高く(即ち、より負側に大きく)していくと、それに伴って汚れ面積比も増大していき、印加電圧が−120kVのとき(本実験における最も負側に大きい電圧の印加時)に汚れ面積比が最大となっている。
つまり、間接塗料ミストYとロボットアームに対する印加電圧との関係は、ロボットアームに対する印加電圧が高すぎても低すぎても、間接塗料ミストYに対する防汚効果が低下する関係にあり、間接塗料ミストYの帯電量に応じた印加電圧の最適値が存在していることが判る。
そして、本実験に用いた間接塗料ミストYに対しては、ロボットアームに対する印加電圧の最適値は−15kV付近であり、印加電圧を−15kV付近に設定すれば、間接塗料ミストYに対して、最も高い防汚効果が得られることが判る。
そして、このような直接塗料ミストXおよび間接塗料ミストYに係る各実験結果を総合すると、直接塗料ミストXの方が間接塗料ミストYに比して、帯電量が相対的に大きくなる傾向が認められることの裏付けができた。そして、直接塗料ミストXおよび間接塗料ミストYとでは、帯電量に応じて最も高い防汚効果が得られる印加電圧が決まることや、直接塗料ミストXと間接塗料ミストYとでは、最も高い防汚効果が得られる印加電圧が異なっていること、さらに、ロボットアームに対する印加電圧が適正でなければ、電界バリアによる防汚効果が低下すること等が判明した。
このため、例えば、間接塗料ミストYに対する防汚効果を優先して、ロボットアームに対する印加電圧を−15kVに設定すると、直接塗料ミストXに対する防汚効果が得にくくなり、また、直接塗料ミストXに対する防汚効果を優先して、印加電圧を−45kVに設定すると、間接塗料ミストYに対する防汚効果が得にくくなる。
そこで、本実験例の場合であれば、直接塗料ミストXと間接塗料ミストYの双方に対する防汚効果を考慮して、ロボットアームに対する印加電圧を−30kVに設定することができる。この場合、双方の塗料ミストX・Yに対して最も高い防汚効果を得ることはできないものの、双方の塗料ミストX・Yに対して実用上許容できる程度の防汚効果を得ることが可能である。このような設定は、従来から行われていたが、この場合、ロボットアームにある程度の塗料汚れが発生することは許容せざるを得ない状況となる。
また、図5に示すように、車体2の外板を塗装する工程よりも、車体2の内板やハッチの裏面部を塗装する工程の方が、間接塗料ミストYの発生量が増加する傾向があるため、塗装対象部位に応じて間接塗料ミストYの発生量は変化している。
さらに、塗装対象部位の形状によって、車体2と塗料ミストが接近する距離や時間が異なってくるため、塗装対象部位に応じて、間接塗料ミストYの帯電量も変化している。
即ち、ロボットアーム4の周囲に直接塗料ミストXおよび間接塗料ミストYが混在している状況において、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)は、各静電塗装装置1A・1Bの配置状況や、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位等に応じて様々に変化している。このため、状況ごとにロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの性状を把握した上で、各状況に応じた防汚対策を行わなければ、十分な汚れ防止効果を確保することは困難であることが判った。
そこで、本発明に係る静電塗装装置の塗料汚れ防止方法では、異なる特性を有する複数種類の塗料ミストがロボットアームの周囲に混在している状況において、ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に対応した最適な電圧をロボットアームに印加することにより、常に最適な防汚効果を確保できるようにして、ロボットアームに対する塗料汚れの改善を図っている。
尚、本実施例では、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの「性状」の意味を、塗料ミストの浮遊量、存在比率および帯電量等を含む概念として規定している。
次に、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置の塗料汚れ防止方法について、図7および図8を用いて説明をする。ここでは、直接塗料ミストXに最適な電位をV1(以下、印加電圧V1とも呼ぶ)とし、間接塗料ミストYに最適な電位をV2(以下、印加電圧V2とも呼ぶ)と規定している。また、各印加電圧V1・V2の印加時間をそれぞれt1・t2と規定して、以下の説明を行う。
本発明の一実施態様に係る静電塗装装置の塗料汚れ防止方法では、図7に示すように、ロボットアーム4に対して、印加電圧V1・V2をパルス状(即ち、周期的)に周期Tで変更している。尚、ここで言うパルス状とは、振幅が最大値か最小値のどちらかをとるように周期的に変化する状態を言い、矩形波状や正弦波状の変化等を含む概念である。
具体的には、高電圧発生装置9のコントローラ9bによって周期Tで高電圧発生部9aによって発生させる電圧の電位をV1・V2でパルス状に変更して、ロボットアーム4に対して印加電圧V1・V2を交互に印加する構成としている(図2(b)参照)。
ここで、各印加電圧V1・V2を変更する周期Tは、直接塗料ミストXに最適な印加電圧V1の印加時間t1と、間接塗料ミストYに最適な印加電圧V2の印加時間t2によって、T=t1+t2として表すことができる。
このように、印加電圧V1・V2を所定の周期Tでパルス状に変更することで、ロボットアーム4に対して、直接塗料ミストXに対する最適な防汚効果と、間接塗料ミストYに対する最適な防汚効果を同時に得ることが可能になる。
尚、塗装工程の進行状況や塗装ガン3による塗装部位に応じて、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)が、どのように変化するかについては、予め実験等を行うことによって把握しておく。そして、状況ごとに把握した性状に基づいて、ロボットアーム4に対する最適な印加電圧V1・V2や周期T(即ち、印加時間t1・t2)を塗装工程の進行状況や塗装ガン3による塗装部位に応じた設定値としてコントローラ9bに記憶させておく。そして、実際のロボットアームの汚れ状況を確認しながら、最適な印加電圧V1・V2や周期Tの設定値を適宜修正していくことが可能である。
また本実施例では、ロボットアーム4の周囲に、1種類の直接塗料ミストXと1種類の間接塗料ミストYが混在している場合を例示して説明しているが、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1において対応できるロボットアーム4の周囲に混在している塗料ミストの種類数を2種類に限定するものではない。
例えば、各塗料ミストX・Yとは性状が異なる他の塗料ミストZがさらに混在している場合であっても、当該塗料ミストZに最適な印加電圧V3およびその印加時間t3をさらに設定し、コントローラ9bによって、印加電圧V1〜V3を周期T(T=t1+t2+t3)で変更することにより、ロボットアーム4に対して、各塗料ミストX・Y・Zに対する最適な防汚効果を同時に得ることが可能である。
即ち、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1では、ロボットアーム4の周囲に3種類以上の異なる特性を有する塗料ミストが混在している場合であっても、それぞれの塗料ミストに対応した印加電圧および印加時間を設定することによって、複数種類の塗料ミストに対する最適な防汚効果を同時に得ることができる。
即ち、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1は、被塗装物である車体2に対して塗料を噴霧する塗装ガン3と、塗装ガン3を車体2に対して移動させるロボットアーム4と、塗装ガン3によって噴霧する塗料に、電圧を印加する第一の電圧印加手段である高電圧発生装置3bと、ロボットアーム4に、塗料に印加する電圧と同じ極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段である高電圧発生装置9と、を備え、高電圧発生装置9が、ロボットアーム4に印加するための電圧を発生する電圧発生手段である高電圧発生部9aと、該高電圧発生部9aによって発生する電圧の電位を変更する電圧変更手段であるコントローラ9bと、を備えるものであって、コントローラ9bは、ロボットアーム4の周囲に異なる特性を有する複数種類の塗料ミスト(本実施例では2種類の各塗料ミストX・Y)が混在している場合において、高電圧発生部9aにより発生する電圧を、各塗料ミストX・Yのそれぞれの特性に応じた複数の電位V1・V2に、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミスト(即ち、各塗料ミストX・Yが混在する塗料ミスト)の性状に応じた所定の周期T(T=t1+t2)でパルス状に変更するものである。
これにより、ロボットアーム4の周囲に特性が異なる複数種類(本実施例では2種類)の各塗料ミストX・Yが混在している場合に、各塗料ミストX・Yによるロボットアーム4の塗料汚れを確実に防止することができる。
ここで、図8に示す如く、塗装ライン10上にロボットアーム4A・4Bを離間して配置する場合における、本発明の適用例を説明する。
このような配置例の塗装ライン10において、ロボットアーム4Aの周囲には、直接塗料ミストXが比較的少なく、また、間接塗料ミストYが直接塗料ミストXに比して多く存在している。
このため、ロボットアーム4Aが備える高電圧発生装置9(詳しくは、コントローラ9b)における周期Tの設定は、間接塗料ミストYに最適な印加電圧V2の印加時間t2を長めに設定し、t1<t2とする。また、高電圧発生部9aにより発生させる複数の電位の設定は、ロボットアーム4Aの周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じた印加電圧V1・V2とする。
一方、ロボットアーム4Bの周囲においても、直接塗料ミストXが比較的少なく、また、間接塗料ミストYが直接塗料ミストXに比して多く存在している。このため、ロボットアーム4Bが備える高電圧発生装置9(詳しくは、コントローラ9b)における周期Tの設定は、間接塗料ミストYに最適な印加電圧V2の印加時間t2を長めに設定し、t1<t2とする。また、高電圧発生部9aにより発生させる複数の電位の設定は、ロボットアーム4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じた印加電圧V1・V2とする。
つまり、各ロボットアーム4A・4Bでは、その配置状態によって、その周囲に存在している塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)が異なっているため、各ロボットアーム4A・4Bの高電圧発生装置9・9における印加電圧V1・V2および印加時間t1・t2の設定値は、各ロボットアーム4A・4Bの配置状況に応じてそれぞれ個別に設定している。
このように、各ロボットアーム4A・4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じて、各高電圧発生装置9・9における各パラメータ(各印加電圧V1・V2および各印加時間t1・t2)を最適値に設定することにより、各ロボットアーム4A・4Bに対する防汚効果を最適化することができる。
次に、図9に示す如く、塗装ライン10上にロボットアーム4A・4Bを接近して配置する場合における、本発明の適用例を説明する。ここでは、塗装ライン10上に配置されるロボットアーム4Aによって、車体2の外板の上面部の塗装が施され、ロボットアーム4Bによって、外板の側面部と、ハッチの裏面部の両方を塗装するような場合を想定している。
このような配置例の塗装ライン10では、ロボットアーム4Bの塗装ガン3によって、外板の側面部を塗装している場面(工程)では、ロボットアーム4Bの周囲に直接塗料ミストXが多く存在しており、また間接塗料ミストYは比較的少ない状況にある。
このため、ロボットアーム4Bが備える高電圧発生装置9(詳しくは、コントローラ9b)における周期Tの設定は、直接塗料ミストXに最適な印加電圧V1の印加時間t1を長めに設定し、t1>t2とする。また、高電圧発生部9aにより発生させる複数の電位の設定は、ロボットアーム4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じた印加電圧V1・V2とする。
また、ロボットアーム4Aが備える高電圧発生装置9(詳しくは、コントローラ9b)における周期Tの設定も同様に、直接塗料ミストXに最適な印加電圧V1の印加時間t1を長めに設定し、t1>t2とする。また、高電圧発生部9aにより発生させる複数の電位の設定は、ロボットアーム4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じた印加電圧V1・V2とする。
ところが、同じロボットアーム4Bの塗装ガン3によって、ハッチの裏面部を塗装している場面(工程)に移行すると、各ロボットアーム4A・4Bの距離が離間するため、ロボットアーム4Bの周囲において、直接塗料ミストXは減少するが、間接塗料ミストYが急激に増加する。
このため、ロボットアーム4Bが備える高電圧発生装置9(詳しくは、コントローラ9b)における周期Tの設定は、間接塗料ミストYに最適な印加電圧V2の印加時間t2を長めに設定し、t1<t2となるように変更する。また、高電圧発生部9aにより発生させる複数の電位の設定は、ロボットアーム4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じた印加電圧V1・V2に変更する。
一方、ロボットアーム4Aの周囲においても、直接塗料ミストXは減少するため、ロボットアーム4Aが備える高電圧発生装置9(詳しくは、コントローラ9b)における周期Tの設定は、間接塗料ミストYに最適な印加電圧V2の印加時間t2を長めに設定し、t1<t2となるように変更する。また、高電圧発生部9aにより発生させる複数の電位の設定は、ロボットアーム4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じた印加電圧V1・V2に変更する。
即ち、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1におけるコントローラ9bは、所定の周期Tを、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位に応じて変更するものである。
また、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1の塗料汚れ防止方法は、所定の周期Tを、コントローラ9bによって、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位に応じて変更するものである。
これにより、ロボットアーム4に対する各印加電圧V1・V2を変更する周期Tを、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じて、最適化することができる。
さらに、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1は、所定の周期Tのうち、複数種類(本実施例では2種類)の各塗料ミストX・Yのうち存在比率が高い塗料ミスト(例えば、直接塗料ミストX)に適した電位V1の電圧をロボットアーム4に印加する時間t1は、各塗料ミストX・Yのうち存在比率が低い塗料ミスト(例えば、間接塗料ミストY)に適した電位V2の電圧をロボットアーム4に印加する時間t2に比して、長くする(即ち、t1>t2とする)ものである。
また、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1の塗料汚れ防止方法は、所定の周期Tのうち、複数種類(本実施例では2種類)の各塗料ミストX・Yのうち存在比率が高い塗料ミスト(例えば、直接塗料ミストX)に適した電位V1の電圧をロボットアーム4に印加する時間t1は、各塗料ミストX・Yのうち存在比率が低い塗料ミスト(例えば、間接塗料ミストY)に適した電位V2の電圧をロボットアーム4に印加する時間t2に比して、長くする(即ち、t1>t2とする)ものである。
これにより、ロボットアーム4の周囲に特性が異なる複数種類(本実施例では2種類)の各塗料ミストX・Yが混在している場合に、各塗料ミストX・Yによるロボットアーム4の塗料汚れをより確実に防止することができる。
つまり、各ロボットアーム4A・4Bでは、その配置状態、塗装工程の進行状況、塗装ガン3による塗装部位の変化等によって、その周囲に存在している各塗料ミストX・Yの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)が異なっているため、各ロボットアーム4A・4Bの高電圧発生装置9・9に対する印加電圧V1・V2および印加時間t1・t2の設定値は、各ロボットアーム4A・4Bの周囲に存在している塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じてそれぞれ個別に設定している。
即ち、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1におけるコントローラ9bは、複数の電位(本実施例では2種類の電位V1・V2)を、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位に応じて変更するものである。
また、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1の塗料汚れ防止方法は、複数の電位(本実施例では2種類の電位V1・V2)を、コントローラ9bによって、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位に応じて変更するものである。
これにより、ロボットアーム4に対する各印加電圧V1・V2を、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じて、最適化することができる。
また、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1におけるコントローラ9bは、複数の電位(本実施例では2種類の電位V1・V2)と所定の周期Tを、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位に応じて変更するものである。
さらに、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置の塗料汚れ防止方法は、複数の電位(本実施例では2種類の電位V1・V2)と所定の周期Tを、コントローラ9bによって、塗装工程の進行状況および塗装ガン3による塗装部位に応じて変更するものである。
これにより、ロボットアーム4に対する各印加電圧V1・V2と、各印加電圧V1・V2を変更する周期Tを、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミストの性状(即ち、各塗料ミストX・Yの浮遊量、存在比率および帯電量等)に応じて、最適化することができる。
つまり、本発明に係る静電塗装装置の塗料汚れ防止方法では、同一のロボットアーム4Bであっても、塗装工程の進行状況や塗装部位に応じて、ロボットアーム4Bの周囲に存在する塗料ミストの性状が変化する場合には、そのロボットアーム4の塗装工程の進行状況や塗装部位に応じて、各パラメータ(各印加電圧V1・V2および各印加時間t1・t2)の設定をその都度最適値に変更するようにしている。これにより、ロボットアーム4に対する防汚効果を最適化することができ、直接塗料ミストXと間接塗料ミストYが混在している場合であっても、確実にロボットアーム4の塗料汚れを防止することができる。
即ち、本発明の一実施態様に係る塗料汚れ防止方法は、本発明の一実施態様に係る静電塗装装置1は、被塗装物である車体2に対して塗料を噴霧する塗装ガン3と、塗装ガン3を車体2に対して移動させるロボットアーム4と、塗装ガン3によって噴霧する塗料に、電圧を印加する第一の電圧印加手段である高電圧発生装置3bと、ロボットアーム4に、塗料に印加する電圧と同じ極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段である高電圧発生装置9と、を備え、高電圧発生装置9が、ロボットアーム4に印加するための電圧を発生する電圧発生手段である高電圧発生部9aと、該高電圧発生部9aによって発生する電圧の電位を変更する電圧変更手段であるコントローラ9bと、を備える静電塗装装置1の塗料汚れ防止方法であって、ロボットアーム4の周囲に異なる特性を有する複数種類(本実施例では2種類)の各塗料ミストX・Yが混在している場合において、高電圧発生部9aにより発生する電圧を、コントローラ9bによって、各塗料ミストX・Yのそれぞれの特性に応じた複数(本実施例では2種類)の電位V1・V2に、ロボットアーム4の周囲に存在する塗料ミスト(即ち、各塗料ミストX・Yが混在する塗料ミスト)の性状に応じた所定の周期Tでパルス状に変更するものである。
これにより、ロボットアーム4の周囲に特性が異なる複数種類(本実施例では2種類)の各塗料ミストX・Yが混在している場合に、各塗料ミストX・Yによるロボットアーム4の塗料汚れを確実に防止することができる。
1 静電塗装装置
2 車体
3 塗装ガン
3b 高電圧発生装置
4 ロボットアーム
9 高電圧発生装置
9a 高電圧発生部
9b コントローラ

Claims (10)

  1. 被塗装物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、
    前記塗装ガンを前記被塗装物に対して移動させるロボットアームと、
    前記塗装ガンに電圧を印加する第一の電圧印加手段と、
    前記ロボットアームに、前記第一の電圧印加手段によって前記塗装ガンに印加する電圧と同じ極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、
    を備え、
    前記第二の電圧印加手段が、
    前記ロボットアームに印加するための電圧を発生する電圧発生手段と、
    該電圧発生手段によって発生する電圧の電位を変更する電圧変更手段と、
    を備える静電塗装装置であって、
    前記電圧変更手段は、
    前記ロボットアームの周囲に異なる特性を有する複数種類の塗料ミストが混在している場合において、
    前記電圧発生手段により発生する電圧を、
    前記複数種類の塗料ミストのそれぞれの特性に応じた複数の電位に、
    前記ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じた所定の周期でパルス状に変更する、
    ことを特徴とする静電塗装装置。
  2. 前記所定の周期のうち、
    前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が高い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間は、
    前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が低い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間に比して、長くする、
    ことを特徴とする請求項1に記載の静電塗装装置。
  3. 前記電圧変更手段は、
    前記複数の電位を、
    塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更する、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電塗装装置。
  4. 前記電圧変更手段は、
    前記所定の周期を、
    塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更する、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電塗装装置。
  5. 前記電圧変更手段は、
    前記複数の電位と前記所定の周期を、
    塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更する、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電塗装装置。
  6. 被塗装物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、
    前記塗装ガンを前記被塗装物に対して移動させるロボットアームと、
    前記塗装ガンに電圧を印加する第一の電圧印加手段と、
    前記ロボットアームに、前記第一の電圧印加手段によって前記塗装ガンに印加する電圧と同じ極性の電圧を印加する第二の電圧印加手段と、
    を備え、
    前記第二の電圧印加手段が、
    前記ロボットアームに印加するための電圧を発生する電圧発生手段と、
    該電圧発生手段によって発生する電圧の電位を変更する電圧変更手段と、
    を備える静電塗装装置の塗料汚れ防止方法であって、
    前記ロボットアームの周囲に異なる特性を有する複数種類の塗料ミストが混在している場合において、
    前記電圧発生手段により発生する電圧を、
    前記電圧変更手段によって、
    前記複数種類の塗料ミストのそれぞれの特性に応じた複数の電位に、
    前記ロボットアームの周囲に存在する塗料ミストの性状に応じた所定の周期でパルス状に変更する、
    ことを特徴とする静電塗装装置の塗料汚れ防止方法。
  7. 前記所定の周期のうち、
    前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が高い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間は、
    前記複数種類の塗料ミストのうち存在比率が低い塗料ミストに適した電位の電圧を前記ロボットアームに印加する時間に比して、長くする、
    ことを特徴とする請求項6に記載の静電塗装装置の塗料汚れ防止方法。
  8. 前記複数の電位を、
    前記電圧変更手段によって、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更する、
    ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の静電塗装装置の塗料汚れ防止方法。
  9. 前記所定の周期を、
    前記電圧変更手段によって、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更する、
    ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の静電塗装装置の塗料汚れ防止方法。
  10. 前記複数の電位と前記所定の周期を、
    前記電圧変更手段によって、塗装工程の進行状況および前記塗装ガンによる塗装部位に応じて変更する、
    ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の静電塗装装置の塗料汚れ防止方法。
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