以下、複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第一実施形態)
まず、第一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1に示すように、静電塗装装置10は、スプレーガン20および電源制御装置30を備えている。スプレーガン20の本体は、例えば電気的絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂により構成されている。スプレーガン20は、塗料バルブ21、塗料経路22、エアバルブ23、エア経路24、ノズル25、高電圧発生部26、および高電圧出力部27などを有している。
塗料バルブ21およびエアバルブ23は、例えば電磁弁などで構成され、外部の信号により開閉操作が行われる。本実施形態では、塗料バルブ21およびエアバルブ23は、電源制御装置30からの信号により開閉される。塗料バルブ21は、塗料経路22を介して、塗料供給源としての塗料ポンプ40および塗料タンク41に接続されている。塗料タンク41内の塗料は、塗料ポンプ40によって、塗料経路22を通り塗料バルブ21へ供給される。塗料経路22は、電気的絶縁性を有する例えば合成樹脂製のホースなどで構成されている。エアバルブ23は、エア経路24を介してコンプレッサ42に接続されている。コンプレッサ42で生じた圧縮空気は、エア経路24を通ってエアバルブ23へ供給される。
ノズル25は、スプレーガン20本体の先端部に設けられている。ノズル25の内部には、詳細は図示しないが、塗料供給口や、霧化エア孔およびパターン形成エア孔が設けられている。ノズル25の塗料供給口には塗料バルブ21が接続されているとともに、霧化エア孔およびパターン形成エア孔にはエアバルブ23が接続されている。電源制御装置30からの信号を受けて塗料バルブ21およびエアバルブ23が解放されると、ノズル25には、塗料バルブ21を介して塗料が供給されるとともに、エアバルブ23を介して圧縮空気が供給される。ノズル25に供給された塗料は、霧化エア孔から吐出される圧縮空気によって微粒子化されるとともに、パターン形成エア孔から吐出される圧縮空気によって塗装に適した形状つまり塗装パターンに形成されて噴霧される。
高電圧発生部26は、いわゆるカスケードと称され、入力される交流電圧に比例した直流の高電圧を出力する。本実施形態では、高電圧発生部26は、入力電圧を5000倍程度に昇圧して出力する。高電圧発生部26は、電力線11によって電源制御装置30に接続されている。高電圧発生部26は、入力トランス261、倍電圧整流回路262、出力抵抗263を有している。入力トランス261は、電源制御装置30と倍電圧整流回路262との間を電気的に絶縁し、電源制御装置30から供給される交流電圧Vacを倍電圧整流回路262へ出力する。倍電圧整流回路262は、例えばコッククロフト・ウォルトン型の昇圧整流回路で構成されている。倍電圧整流回路262は、入力トランス261から入力された交流電圧を昇圧および整流し、直流の高電圧に変換する。
倍電圧整流回路262から出力された直流の高電圧は、出力抵抗263を介して高電圧出力部27に供給され、高電圧出力部27から直流の高電圧Vdcとして出力される。高電圧出力部27は、例えばピン形状の金属電極で構成され、ノズル25の近傍に設けられている。そのため、ノズル25から噴霧された塗料の微粒子には、高電圧出力部27から出力される直流の高電圧Vdcが印加される。なお、倍電圧整流回路262は、回路内の図示しないダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正または負のいずれかに設定することができる。本実施形態の場合、倍電圧整流回路262の出力電圧の極性は、接地電位に対して負になるように構成されている。したがって、微粒子化された塗料は負の高電圧に帯電される。なお、本明細書中において、高電圧Vdcの値は、便宜上、正負の区別無く絶対値で表している。
電源制御装置30は、電流検出回路31、電源部32、および制御部33を有している。電流検出回路31は、被塗装物60および高電圧発生部26に流れる電流Iの大きさを検出し、その検出結果を制御部33に与える。この場合、電流検出回路31は、電流検出手段として機能する。電源部32は、二個のスイッチング素子321、出力トランス322、直流電源323、および発振回路324を有している。電源部32は、高電圧発生部26に対して電圧を供給する電源手段として機能する。
すなわち、二個のスイッチング素子321は、例えばMOSFETなどの半導体スイッチにより構成されており、通電により導通状態が制御可能である。スイッチング素子321は、それぞれゲート側が発振回路324に接続され、ドレイン側が出力トランス322の一次側の端部に接続され、ソース側が電源グランドに接地されている。
直流電源323は、いわゆるスイッチング電源で構成されており、例えば2Vから20V程度の直流の電圧を任意に出力することができる。直流電源323の負極側は、電源グランドに接地されている。また、直流電源323の正極側は、出力トランス322の一次側に接続され、スイッチング素子321を介して電源グランドに接地されている。
発振回路324は、二個のスイッチング素子321に対してそれぞれ駆動信号を出力する。スイッチング素子311は、発振回路324から入力される駆動信号に連動してその通電状態が変化する。発振回路324は、二個のスイッチング素子311の導通状態が互いに重なることがないタイミングで交互に駆動信号を出力し、これにより二個のスイッチング素子321の導通状態を交互に切り替える。そのため、直流電源323から出力トランス322の一次側に印加される電圧の向きは、駆動信号に連動して交互に切り替わる。これにより、電源部32の出力として、出力トランス322の二次側には、図2の(a)、(b)に示すように直流電源323の電圧に応じた低電圧の交流、この場合、正および負のパルス電圧が交互に切り替わる交流パルス電圧Vacが発生する。本実施形態の場合、駆動信号は、交流パルス電圧Vacの周波数が20kHz程度となるように設定されている。
制御部33は、図示しないCPUや、ROM、RAM、および記憶手段としての不揮発性メモリ34などを有したマイクロコンピュータにより構成されている。制御部33は、電源部32の出力を制御する制御手段として機能する。すなわち、制御部33は、発振回路324駆動信号の出力および停止を制御することで、スプレーガン20の高電圧発生部26から出力される高電圧Vdcの出力および停止を制御する。また、制御部33は、直流電源323および発振回路324を制御することにより、スプレーガン20の高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcの大きさを二段階で変更することができる。
第一段階では、制御部33は、主に直流電源323を制御することで、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcを変更する。すなわち、制御部33は、直流電源323から出力される電圧の大きさを変更することで、電源部32から出力される交流パルス電圧Vacの電圧の大きさを変更する。すると、倍電圧整流回路262に入力される交流パルス電圧Vacの電圧が変化し、これにより高電圧出力部27から出力される直流の高電圧Vdcの大きさを変更することができる。この場合、直流電源323からは、2Vから20Vの範囲の電圧が出力される。そのため、交流パルス電圧Vacの電圧は2Vから20Vの範囲で変化され、これにより高電圧出力部27からは10kVから100kVの範囲で高電圧Vdcが出力される。
第二段階では、制御部33は、主に発振回路324を制御して交流パルス電圧Vacのデューティ比を変更することで、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcの大きさを変更する。これは、入力される交流パルス電圧Vacのデューティ比に基づいて昇圧倍率が変化する倍電圧整流回路262の特性を利用している。この場合、制御部33は、発振回路324の駆動信号の出力期間を調整してスイッチング素子321の通電期間を変更することで、交流パルス電圧Vacのデューティ比を増減させる。これにより倍電圧整流回路262の昇圧倍率が変化し、その結果、高電圧出力部27から出力される直流電圧Vdcを変更することができる。そのため、第二段階では、第一段階における高電圧Vdcの下限を下回って、高電圧Vdcを調整することができる。
本実施形態では、交流パルス電圧Vacの電圧が2Vであって周波数が20kHzである場合、図2の(a)に示すように、デューティ比が50%であれば高電圧Vdcの電圧は10kVとなる。また、図2の(b)に示すように、デューティ比が25%であれば高電圧Vdcの電圧は5kVとなる。なお、本実施形態において、交流パルス電圧Vacの周波数は、二個のスイッチング素子321の駆動によって交流パルス電圧Vacを構成する正および負のパルス電圧がそれぞれ一回出力されたことをもって一周期としている。すなわち、交流パルス電圧Vacの一周期は正または負のパルス電圧のパルス周期であり、交流パルス電圧Vacの周波数は一般的な交流電圧の周波数と同義である。また、本実施形態において交流パルス電圧Vacのデューティ比とは、前記パルス周期に対して正または負のパルス電圧のパルス幅が占める割合をいう。
制御部33の不揮発性メモリ34は、電源部32から出力する交流パルス電圧Vacを決定するための設定として、第一設定および第二設定を記憶している。制御部33は、第一設定または第二設定のいずれかを選択することで、選択した設定に対応する高電圧Vdcに切り替えて、その高電圧Vdcを高電圧出力部27から出力させる。第一設定は、塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生しているか否かを検出するための設定である。第一設定において、直流電源323の出力電圧は2Vであり、交流パルス電圧Vacのデューティ比は25%である。第一設定によれば、電流検出回路31によって塗料経路22の電気的な絶縁状態を検出するための第一出力電圧として、高電圧出力部27から5kV程度の高電圧Vdcが出力される。
ここで、塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生していると、塗料経路22内の塗料の絶縁抵抗が極端に低下するため塗料を介して電流が流れ、その結果、倍電圧整流回路262に流れる電流Iが増大する。第一設定において、制御部33は、電流検出回路31から倍電圧整流回路262に流れる電流Iの検出結果を受け、その検出電流Iが所定値以下であれば塗料の絶縁抵抗が高いことからメタルブリッジが発生していないと判断する。一方、検出電流Iが所定値を超えていればメタルブリッジが発生していると判断する。
例えば、本実施形態において第一設定が選択されている場合、塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生していると、倍電圧整流回路262に流れる電流Iは20μA程度となる。一方、メタルブリッジが発生していなければ、倍電圧整流回路262に流れる電流Iは2μA程度となる。このため、制御部33は、メタルブリッジを判断するための閾値すなわち所定値を例えば10μAに設定し、電流検出回路31の検出による電流Iが10μA以下であればメタルブリッジは発生していないと判断し、10μAを超えていればメタルブリッジが発生していると判断する。このように、第一設定が選択されている場合、制御部33は、電流検出回路31により検出した電流Iに基づいて塗料経路22内の電気的な絶縁状態を検出することができる。この場合、電源制御装置30は、絶縁抵抗を検出するいわゆるメガオームテスタとして機能する。
なお、塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生している場合、高電圧出力部27から出力される電圧Vdcは設定値よりも低くなる。例えば、第一設定が選択されている場合、メタルブリッジが発生していなければ、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcは、設定値5kVとほぼ同じ値となる。一方、メタルブリッジが発生していると、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcは、設定値5kVよりも低い1kV程度となる。このため、塗料経路22内にメタルブリッジが発生しているか否かの判断は、高電圧出力部27から実際に出力される高電圧Vdcの電圧を検出することにより判断してもよい。この場合、例えば高電圧出力部27と接地電位との差を検出する電圧検出回路を設ける。そして、制御部33は、第一設定を選択している場合に、電圧検出回路の検出結果が例えば4kVを超えていればメタルブリッジは生じていないと判断し、4kV以下であればメタルブリッジが生じていると判断すればよい。
第一設定が選択されている間は、高電圧出力部27から連続的または断続的に5kVの高電圧Vdcが出力される。そのため、塗料経路22内にメタルブリッジが発生している場合、倍電圧整流回路262には最大で20μA程度の電流が流れることになるが、この電流値は、出力抵抗263を破壊することがない範囲に設定されている。すなわち、第一設定における第一出力電圧は、塗料経路22内にメタルブリッジが発生している状態で高電圧出力部27から高電圧Vdcを出力した場合であっても、倍電圧整流回路262に流れる電流Iによって出力抵抗263が破壊されない値に設定されている。
第二設定は、スプレーガン20のノズル25から噴霧される塗料を高電圧に帯電させるための設定である。第二設定において、直流電源323の出力電圧は16Vであり、交流パルス電圧Vacのデューティ比は50%である。この場合、第一設定における交流パルス電圧Vacのデューティ比は、第二設定における交流パルス電圧Vacのデューティ比より小さい。第二設定によれば、塗料を高電圧に帯電させるための第二出力電圧として、高電圧出力部27から80kV程度の高電圧Vdcが出力される。なお、第一設定および第二設定において、交流パルス電圧Vacの周波数は何れも20kHzに設定されている。
次に、本実施形態における静電塗装装置10の使用態様について説明する。
図3に示すように、静電塗装装置10は、例えば電源制御装置30の制御部33が上位装置50と通信可能に接続されて製造ラインに組み込まれる。そして、静電塗装装置10は、上位装置50の指令によって、移動される被塗装物60を塗装する。本実施形態では、一台の上位装置50に対して一台の静電塗装装置10が接続されている。この場合、被塗装物60の移動は、上位装置50によって管理されている。
次に、制御部33と上位装置50との通信内容について説明する。図6などに示すように、上位装置50は、制御部33に対して、高電圧出力信号A1、塗装信号A2、および設定選択信号A3を出力する。高電圧出力信号A1は、上位装置50が制御部33に対して高電圧出力部27から高電圧Vdcの出力を許可する信号であって、ONおよびOFFの二値で構成されている。制御部33は、高電圧出力信号A1のONが入力されると、電源部32を制御して高電圧出力部27から設定に応じた高電圧Vdcを出力させる。一方、制御部33は、高電圧出力信号A1のOFFが入力されると、高電圧出力部27からの高電圧Vdcの出力を停止する。
塗装信号A2は、上位装置50が制御部33に対してノズル25から塗料の噴霧を許可する信号であって、ONおよびOFFの二値で構成されている。制御部33は、塗装信号A2のONが入力されると、塗料バルブ21およびエアバルブ23を解放して塗料を噴霧する。一方、制御部33は、塗装信号A2のOFFが入力されると、塗料バルブ21およびエアバルブ23を閉鎖して塗料の噴霧を停止する。
設定選択信号A3は、上位装置50が制御部33に対して高電圧Vdcの設定の選択を指示するための信号であって、1および2の二値で構成されている。制御部33は、設定選択信号A3の1が入力されると、第一設定を選択し、高電圧出力部27から5kVの高電圧Vdcの出力が可能となる。これにより制御部33は、塗料経路22の電気的な絶縁状態を検出するための抵抗検出モードへ移行する。一方、制御部33は、設定選択信号A3の2が入力されると、第二設定を選択し、高電圧出力部27から80kVの高電圧Vdcの出力が可能となる。これにより制御部33は、塗料を高電圧に帯電させて静電塗装を行う通常塗装モードへ移行する。
制御部33は、上位装置50に対して、異常発生信号B1およびメタルブリッジ発生信号B2を出力する。異常発生信号B1は、制御部33が上位装置50に対してメタルブリッジ以外の異常の発生を示す信号であって、ONおよびOFFの二値で構成されている。制御部33は、電流検出回路31によって高電圧発生部26に所定期間を超えて過電流が流れたことを検出した場合には、人などが高電圧出力部27に異常接近した等と判断し、異常発生信号B1のONを出力する。一方、特に過電流等の異常の発生がなく、高電圧Vdcを出力しても問題無い場合は、異常発生信号B1のOFFを出力する。
メタルブリッジ発生信号B2は、制御部33が上位装置50に対して塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生したことを示す信号であって、ONおよびOFFの二値で構成されている。制御部33は、電流検出回路31の検出結果に基づいてメタルブリッジが発生していると判断した場合には、メタルブリッジ発生信号B2のONを出力し、それ以外の場合はOFFを出力する。
次に、上位装置50および制御部33の制御内容について説明する。
上位装置50は、図4に示すように、静電塗装に関する制御が開始されると(スタート)、ステップS10において、制御部33から入力される異常発生信号B1の状態を判断する。異常発生信号B1がONでなければ(NO)、異常発生は無いと判断してステップS11へ移行する。ステップS11では、被塗装物60の移動状況に応じて、高電圧出力信号A1および塗装信号A2を設定する。例えば、上位装置50は、被塗装物60が静電塗装装置10の塗装範囲内に接近した場合は、高電圧出力信号A1および塗装信号A2のONを出力し、高電圧Vdcの出力および塗料の噴霧を許可する。
その後、ステップS12へ移行し、ステップS11で設定した塗装信号A2がOFFであれば(NO)、ステップS13へ移行する。ステップS13では、塗装信号A2がOFFであることから、塗料の噴霧が実行されていない。この場合、塗料経路22内の塗料に流れが生じず、塗料内の金属粒子が沈殿してメタルブリッジが生じやすい状態になっている。そのため、ステップS13では、メタルブリッジの発生を検出する抵抗検出モードへ移行させるために設定選択信号A3を1に設定して制御部33へ出力する。その後、ステップS18へ移行する。
一方、ステップS12において、塗装信号A2がONであれば(YES)、ステップS14へ移行してメタルブリッジ発生信号B2の状態を判断する。ステップS14においてメタルブリッジ発生信号B2がOFFであれば(YES)、ステップS15へ移行する。ステップS15では、通常塗装モードへ移行させるために設定選択信号A3を2に設定して制御部33へ出力する。その後、ステップS18へ移行する。また、ステップS14においてメタルブリッジ発生信号がONであれば(NO)、ステップS13へ移行し、抵抗検出モードへ移行させるために設定選択信号A3を1に設定して制御部33へ出力する。このとき、塗装信号A2はONであるため、静電塗装装置10からは塗料が噴霧されている。
塗料経路22内のメタルブリッジは、塗料を噴霧して塗料経路22内の塗料に流れを生じさせることで解消することが多い。そのため、ステップS14を経てステップS13が実行された場合は、塗料の噴霧を実行してメタルブリッジの解消を図るとともに、第一設定を選択して高電圧出力部27から第一出力電圧である5kVの高電圧Vdcを出力し、電流検出回路31の検出結果によりメタルブリッジの解消を判断する。その後、ステップS18へ移行する。
また、ステップS10において、異常発生信号B1のONが入力されると(YES)、ステップS16へ移行する。ステップS16では、メタルブリッジ以外の異常が生じているため、高電圧出力信号A1および塗装信号A2のOFFを出力し、高電圧Vdcの出力および塗料の噴霧を停止させる。そして、ステップS17へ移行し、図示しないブザーなどを駆動させることで作業者に対して静電塗装装置10の異常を報知する。その後、ステップS18へ移行する。
上位装置50は、ステップS18において、例えば被塗装物60の塗装状況によって塗装作業を終了するか否かを判断する。作業を続行すると判断した場合は(NO)、ステップS10へ移行してステップS10からステップS18を繰り返す。一方、作業終了と判断した場合は(YES)、静電塗装に関する制御を終了する(終了)。
制御部33は、図5に示すように、静電塗装に関する制御が開始されると(スタート)、ステップS20において、上位装置50から入力された設定選択信号A3の状態を判断する。設定選択信号A3が2であれば、ステップS21へ移行する。ステップS21では、第二設定を選択して高電圧Vdcを80kVに設定し、通常塗装モードへ移行する。その後、ステップS29へ移行する。
一方、ステップS20において、設定選択信号A3が1であれば、ステップS22へ移行する。ステップS22では、第一設定を選択して高電圧Vdcを5kVに設定し、抵抗検出モードへ移行する。その後ステップS23へ移行し、電流検出回路31の検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を判断する。ステップS23において、電流検出回路31による検出電流Iが第一設定におけるメタルブリッジの判断の閾値となる10μA以下であれば(NO)、ステップS24へ移行する。ステップS24では、メタルブリッジの発生は無いと判断してメタルブリッジ発生信号B2のOFFを出力し、その後ステップS29へ移行する。
一方、ステップS23において、検出電流Iが閾値である10μAを超えていれば(YES)、ステップS25へ移行する。ステップS25では、メタルブリッジが発生していると判断してメタルブリッジ発生信号B2のONを出力し、その後ステップS26へ移行する。ステップS26では、上位装置50から入力される塗装信号A2の状態を判断する。塗装信号A2の入力がOFFであれば(NO)、塗料が噴霧されないため、メタルブリッジが発生していてもメタルブリッジの解消が図られていない。そのため、メタルブリッジの検出を継続するために、ステップS29へ移行する。
これに対し、ステップS26において塗装信号A2の入力がONであれば(YES)、塗料が噴霧されてメタルブリッジの解消が図られている。この場合、ステップS27へ移行し、塗装信号A2がONとなって塗料の噴霧が開始されてから所定期間、例えば1秒程度経過したか否かを判断する。所定期間経過していない場合は(NO)、所定期間経過するまで、塗料を噴霧してメタルブリッジの解消を図るためにステップS29へ移行する。一方、所定期間経過していれば(YES)、所定期間の塗料の噴霧によっても電流検出回路31の検出電流Iが閾値10μA以下にならないことを示している。この場合、ステップS28へ移行してメタルブリッジ以外の異常が発生していると判断し、異常発生信号B1のONを上位装置50へ出力するとともに、高電圧Vdcの出力を停止させる。その後、ステップS29へ移行する。
ステップS29では、上位装置50からの指示によって塗装作業を終了するか否かを判断する。塗装作業を続行する場合は(NO)、ステップS20へ移行し、ステップS20からステップS29を繰り返す。一方、塗装作業を終了する場合は(YES)、静電塗装に関する制御を終了する(終了)。
次に、図6に示すメタルブリッジが発生していない場合、図7に示すメタルブリッジが発生している場合、図8に示すメタルブリッジ以外の異常が発生している場合、の三態様の具体的な動作について説明する。なお、図6から図8において、検出電圧Vは、高電圧出力部27から実際に出力される電圧値、すなわち高電圧出力部27と接地電位との実際の電位差を示している。
図6に示すメタルブリッジが発生していない場合において、静電塗装に関する制御が開始された直後は、C1で示すように、高電圧出力信号A1、塗装信号A2、異常発生信号B1、およびメタルブリッジ発生信号B2は、何れもOFFに設定されている。また、設定選択信号A3は1が出力されており、これにより抵抗検出モードに設定されている。このとき、高電圧出力部27は高電圧Vdcを出力しておらず、ノズル25も塗料を噴霧していない。
その後、被塗装物60が接近すると、上位装置50は、塗装前の準備として塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生しているか否かを検出する。そのため、上位装置50は、C2で示すように、高電圧出力信号A1のONを出力し、高電圧出力部27から第一出力電圧5kVに設定された高電圧Vdcを出力させる。この場合、電流検出回路31は、高電圧出力部27から第一出力電圧5kVを出力した状態で検出電流Iを検出する。そして、制御部33は、検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を判断する。図6ではメタルブリッジは発生していないため、検出電流Iは閾値10μAを超えず、そのためメタルブリッジ発生信号B2もONになることがない。
そして、さらに被塗装物60が接近すると、上位装置50は、C3で示すように塗装信号A2のONを出力して塗料の噴霧を許可するとともに、設定選択信号A3を2に変更する。制御部33は、塗装信号A2のONを受けて塗料バルブ21およびエアバルブ23を解放して塗料を噴霧するとともに、設定選択信号A3の変更を受けて高電圧出力部27の出力を第二出力電圧80kVに設定し、通常塗装モードへ移行する。これにより、ノズル25から噴霧された塗料は、第二出力電圧80kVに設定された高電圧Vdcによって直流の高電圧に帯電されて被塗装物60を塗装する。この場合、被塗装物60が通過しながら塗装されているC4からC5の期間においては、検出電流Iは30〜40μA程度となっている。
その後、被塗装物60の塗装が終了すると、上位装置50は、C6で示すように塗装信号A2のOFFを出力するとともに設定選択信号A3を1に変更する。これにより、塗料の噴霧が停止されるとともに、高電圧出力部27からは第一出力電圧5kVに設定された高電圧Vdcが出力される。続けて新たな被塗装物60を塗装する場合は、高電圧出力信号A1のONを維持したまま、C2からC6の工程を繰り返す。一方、塗装を終了する場合、上位装置50は、C7で示すように、高電圧出力信号A1のOFFを出力し、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcを停止する。これにより、一連の塗装工程が終了する。
図7に示すメタルブリッジが発生している場合においても、制御部33は、まず図6に示すC1、C2と同様の工程D1、D2を経て、D2で示すように第一出力電圧5kVによる検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を判断する。図7ではメタルブリッジが発生しているため、検出電流Iは、D3で示すように閾値10μAを超えて検出される。この場合、制御部33は、メタルブリッジ発生信号B2のONを出力する。
D3からD4の期間は、被塗装物60が静電塗装装置10の塗装範囲に接近していないため塗装信号A2のONは出力されない。この場合、塗料の噴霧は行わず、第一出力電圧5kVによる検出電流Iの検出を行ってメタルブリッジ解消の判断を継続する。その後、被塗装物60が接近すると、上位装置50は、D4で示すように塗装信号A2のONを出力して塗料の噴霧を許可し、これにより、メタルブリッジの解消が図られる。この場合、検出電流Iが閾値である10μAを超えていても、メタルブリッジの解消を図っている所定期間例えば1秒程度の期間は静電塗装装置10が停止することはない。そして、制御部33は、D5で示すように、塗装信号A2のONが出力されてから所定期間内に検出電流Iが閾値10μA以下となると、メタルブリッジが解消されたと判断してメタルブリッジ発生信号B2のOFFを出力する。
上位装置50は、メタルブリッジ発生信号B2のOFFを受けて、設定選択信号A3を2に変更する。すると、D6に示すように、制御部33は、塗料の噴霧を継続するとともに、設定選択信号A3の変更を受けて通常塗装モードへ移行し、高電圧出力部27の出力を第二出力電圧80kVに設定する。これにより、ノズル25から噴霧された塗料は、第二出力電圧80kVによって高電圧に帯電されて、被塗装物60を静電塗装する。この場合、被塗装物60が通過しながら塗装されているD6からD7の期間においては、検出電流Iは30〜40μA程度の値となっている。その後、被塗装物60の塗装が終了すると、上位装置50は、図6のC6、C7で示す工程と同様の工程D8、D9を経て一連の塗装工程が終了する。
図8に示すメタルブリッジ以外の異常が発生した場合においても、制御部33は、まず図6に示すC1、C2と同様の工程E1、E2を経て、E2で示すように第一出力電圧5kVによる検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を判断する。図8では、メタルブリッジ以外の異常が発生しているが、この場合も、D3で示すように検出電流Iが閾値10μAを超えて検出される。そのため、制御部33は、まずメタルブリッジ発生信号B2のONを出力する。
E3からE4の期間は、図7のD3からD4の期間と同様に、被塗装物60が静電塗装装置10の塗装範囲に接近していないため塗装信号A2のONは出力されない。この場合、塗料の噴霧は行わず、第一出力電圧5kVによる検出電流Iの検出を行ってメタルブリッジ解消の判断を継続する。その後、被塗装物60が接近すると、上位装置50は、E4で示すように塗装信号A2のONを出力して塗料の噴霧を許可し、これにより、メタルブリッジの解消が図られる。上位装置50は、被塗装物60が接近しても、メタルブリッジ発生信号B2がOFFに変更されるまでは、設定選択信号A3を2に変更しない。このため、メタルブリッジ発生信号B2のONが出力されている間は、高電圧出力部27から第二出力電圧80kVの高電圧Vdcは出力されない。
そして、所定期間例えば1秒程度の塗料の噴霧によっても検出電流Iが閾値10μA以下とならない場合、制御部33は、E6で示すように、メタルブリッジ発生信号B2のOFFを出力する。そして制御装置33は、メタルブリッジ以外の異常が発生していると判断して異常発生信号B1のONを出力するとともに、高電圧Vdcの出力を停止させる。その後、上位装置50は、異常発生信号B1のONを受けて、高電圧出力信号A1および塗装信号A2のOFFを出力する。これにより、静電塗装装置10は、E7で示すように塗料の噴霧を停止する。
上記構成によれば、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcは、第一出力電圧5kVと第二出力電圧80kVとが切り替えられて出力される。そして、制御部33は、電流検出回路31による検出電流Iに基づいて、電源部32の出力を、第一出力電圧5kVに設定するための第一設定または第二出力電圧80kVに設定するための第二設定に切り替える。第一出力電圧5kVは、電流検出回路31による検出電流Iに基づいて塗料経路22内の塗料の電気的な絶縁状態を検出するためのものであり、第二出力電圧80kVは、ノズル25から噴霧される塗料を高電圧に帯電させるためのものである。制御部33は、電流検出回路31の検出電流Iに基づいて塗料経路22内の塗料にメタルブリッジが発生したと判断した場合には、高電圧出力部27から第一出力電圧5kVに設定された高電圧Vdcを出力することで、いわゆるメガオームテスタとして機能し、これにより塗料経路22内の絶縁状態すなわちメタルブリッジの発生の有無を検出することができる。
第一出力電圧5kVは、塗料を高電圧に帯電させるための第二出力電圧80kVよりも十分に低く、この第一出力電圧5kVによる電流Iが高電圧出力部27に流れたとしても高電圧発生部26が破壊されないように設定されている。そのため、メタルブリッジが発生した場合、高電圧発生部26を破壊することなく第一出力電圧5kVを出力し続けることができ、メタルブリッジの解消を随時検出することができる。これにより、メタルブリッジの解消を早期に判断することができ、その結果、メタルブリッジを解消するための捨て吹きに要する塗料の無駄を極力低減することができる。
そして、メタルブリッジの解消を早期に判断できることから、塗料を高電圧に帯電させるための高電圧Vdcの電圧も早期に回復することができる。すなわち、塗料を高電圧に帯電させることなく塗装する期間が低減され、その結果、塗装品質を向上が図られる。
さらに、第一出力電圧5kVは、第二出力電圧80kVよりも十分に低いため、物体が接近していた場合であっても、第一出力電圧5kVを出力することによる安全性が低下を極力抑制することができる。
また、メタルブリッジが発生した場合には、静電塗装装置10を停止させることなくメタルブリッジを早期に解消することができるため、メタルブリッジの発生による不要な停止を低減することができ、その結果、生産性の向上が図られる。
制御部33は、発振回路324を制御して交流パルス電圧Vacのデューティ比を変更することにより、高電圧出力部27から出力される高電圧Vdcを、直流電源323の下限を下回る範囲のものとすることができる。そのため、従来構成を大幅に変更することなく、第二出力電圧80kVよりも十分に低い第一出力電圧5kVを出力することができる。
また、上記構成によれば、メタルブリッジの検出を経た後に第二出力電圧80kVの高電圧Vdcを出力して塗装するため、例えば塗料を充填した後や休憩時間後など、塗料の流れが無くなってメタルブリッジが生じやすい場合であっても、早期にメタルブリッジの検出および解消を図ることができる。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図9から図14を参照して説明する。
第二実施形態では、図9に示すように、一台の上位装置50に対して複数、この場合、二台の静電塗装装置101、102が接続されている。なお、被塗装物60の流れ方向に対して、第一静電塗装装置101が上流側となり、第二静電塗装装置102が下流側となる。また、第一静電塗装装置101および第二静電塗装装置102は、共に第一実施形態の静電塗装装置10と同様に構成されているが、これらの構成要素を区別する場合には次のように示す。
すなわち、第一静電塗装装置101では、スプレーガン20を第一スプレーガン201とし、電源制御装置30を第一電源制御装置301とし、制御部33を第一制御部331とし、異常発生信号B1を異常発生信号B11とし、メタルブリッジ発生信号B2をメタルブリッジ発生信号B21とし、高電圧Vdcを高電圧Vdc1とする。また、第二静電塗装装置102では、スプレーガン20を第二スプレーガン202とし、電源制御装置30を第二電源制御部302とし、制御部33を第二制御部332とし、異常発生信号B1を異常発生信号B12とし、メタルブリッジ発生信号B2をメタルブリッジ発生信号B22とし、高電圧Vdcを高電圧Vdc2とする。なお、第二実施形態において、メタルブリッジ発生信号B21、B22は、各静電塗装装置101、102自身がメタルブリッジの有無を判断するための指標であるため、上位装置50へ出力することを要しない。
第二実施形態において、各静電塗装装置101、102の制御部331、332は、上位装置50からの設定選択信号A3によらず、それぞれ制御部331、332自身で通常塗装モードまたは抵抗検出モードを選択する。この場合、上位装置50は、図12などに示すように、第一静電塗装装置101および第二静電塗装装置102に対して共通の高電圧出力信号A1を出力する。これにより、上位装置50は、各制御部331、332に対して高電圧出力信号A1を一括で設定する。また、上位装置50は、第一静電塗装装置101に対して塗装信号A21を出力し、第二静電塗装装置102に対して塗装信号A22を出力する。これにより、上位装置50は、各静電塗装装置101、102に対して塗装信号A21、A22を個別に設定する。
上位装置50は、図10に示すように、静電塗装に関する制御が開始されると(スタート)、ステップS30において、各静電塗装装置101、102から入力される異常発生信号B11、B12の状態を判断する。各異常発生信号B11、B12がONでなければ(NO)、各静電塗装装置101、102に異常の発生は無いと判断してステップS31へ移行する。ステップS31では、被塗装物60の移動状況に応じて、高電圧出力信号A1および塗装信号A21、A22を設定する。その後、ステップS34へ移行する。
一方、ステップS30において、異常発生信号B11、B12の少なくとも何れか一方のONが入力された場合(YES)、ステップS32へ移行する。ステップS32では、高電圧出力信号A1および塗装信号A21、A22のOFFを出力し、各静電塗装装置101、102の高電圧Vdc1、Vdc2および塗料の噴霧を停止させる。なお、被塗装物60の状態によっては、異常が発生した静電塗装装置10のみ高電圧Vdcおよび塗料の噴霧を停止させてもよい。その後、ステップS33へ移行し、作業者に対して静電塗装装置10の異常を報知する。そして、ステップS34へ移行し、作業を続行する場合は(NO)、ステップS30へ移行してステップS30からステップS34を繰り返す。一方、作業を終了する場合は(YES)、静電塗装に関する制御を終了する(終了)。
制御部33は、図11に示すように、静電塗装に関する制御が開始されると(スタート)、ステップS40において、上位装置50から入力された塗装信号A2の状態を判断する。塗装信号A2がOFFであれば(NO)、ステップS41へ移行して、第一設定による抵抗検出モードを選択し、電圧Vdcを5kVに設定する。その後、ステップS50へ移行する。
一方、ステップS40において、塗装信号A2がONであれば(YES)、ステップS42へ移行し、現在の塗装モードが抵抗検出モードであるか否かを判断する。抵抗検出モードでなければ(NO)、ステップS50へ移行し、抵抗検出モードであれば(YES)ステップS43へ移行する。ステップS43では、電流検出回路31の検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を検出する。検出電流Iが10μA以下であれば(NO)、ステップS44へ移行し、メタルブリッジの発生は無いと判断して、メタルブリッジ発生信号B2をOFFする。その後、ステップS45へ移行し、第二設定による通常塗装モードを選択し、電圧Vdcを80kVに設定する。この場合、ステップS40を経てるため、塗料が噴霧されている。したがって、高電圧出力部27から第二出力電圧80kVの高電圧Vdcを出力することにより、被塗装物60に対して静電塗装が行われる。そしてステップS50へ移行する。
一方、ステップS43において、検出電流Iが10μAを超えていれば(YES)、ステップS46へ移行し、メタルブリッジが発生していると判断してメタルブリッジ発生信号B2をONに設定する。その後、ステップS47において抵抗検出モードを維持し、第一設定による第一出力電圧5kVに設定された高電圧Vdcの出力を継続する。この場合、ステップS40を経てるため、塗料が噴霧されている。このため、塗料の噴霧によりメタルブリッジの解消が図られるとともに、検出電流Iが検出されることによりメタルブリッジ解消の判断が可能となる。
そしてステップS48へ移行し、塗装信号A2がONとなって塗料の噴霧が開始されてから所定期間、例えば1秒程度経過したか否かを判断する。所定期間経過していない場合は(NO)、所定期間経過するまで、塗料を噴霧してメタルブリッジの解消を図るためにステップS50へ移行する。一方、所定期間経過していれば(YES)、所定期間の塗料の噴霧によってもメタルブリッジが解消されず、メタルブリッジ以外の異常が発生していると判断し、異常発生信号B1のONを上位装置50へ出力するとともに、高電圧Vdcの出力を停止する。その後、ステップS50へ移行する。ステップS50では、上位装置50からの指示によって塗装作業を終了するか否かを判断し、塗装作業を続行する場合は(NO)、ステップS40へ移行し、ステップS40からステップS50を繰り返す。一方、塗装作業を終了する場合は(YES)、静電塗装に関する制御を終了する(終了)。
次に、図12に示すメタルブリッジが発生していない場合、図13に示すメタルブリッジが発生している場合、図14に示すメタルブリッジ以外の異常が発生している場合、の三態様の具体的な動作について説明する。
図12に示すメタルブリッジが発生していない場合において、静電塗装に関する制御が開始された直後は、F1で示すように、高電圧出力信号A1、塗装信号A21、A22、異常発生信号B11、B12、およびメタルブリッジ発生信号B21、B22は、何れもOFFに設定されている。また、各静電塗装装置101、102の塗装モードは、第一設定が選択されて抵抗検出モードに設定されている。このとき、各静電塗装装置101、102の各高電圧出力部27からは、高電圧Vdc1、Vdc2は出力されておらず、塗料の噴霧もされていない。
その後、被塗装物60が接近すると、上位装置50は、F2で示すように高電圧出力信号A1のONを出力し、各高電圧出力部27から第一出力電圧5kVに設定された高電圧Vdc1、Vdc2をそれぞれ出力させる。各制御部331、332は、それぞれ検出電流Iを検出してメタルブリッジの発生を判断する。そして、さらに被塗装物60が接近すると、上位装置50は、F3で示すように、まず上流側の第一静電塗装装置101に対し、塗装信号A21のONを出力して塗料の噴霧を許可する。第一静電塗装装置101は、塗装信号A21のONを受けて塗料を噴霧するとともに、自己のメタルブリッジ発生信号B21がOFFであることを条件として、第二設定を選択して通常塗装モードへ移行し、第二出力電圧80kVに設定された高電圧Vdc1を出力する。これにより、F4からF5の期間において、第一静電塗装装置101の塗装範囲内における静電塗装が行われる。
被塗装物60が第一静電塗装装置101の塗装範囲を通過すると、上位装置50は、F5で示すように塗装信号A21のOFFを出力して第一静電塗装装置101による静電塗装を終了する。第一静電塗装装置101は、塗装信号A21のOFFを受けて、塗料の噴霧を停止するとともに、第一設定を選択して抵抗検出モードへ移行し、第一出力電圧5kVに設定された高電圧Vdc1を出力する。その後、被塗装物60が第二静電塗装装置102の塗装範囲内に接近すると、上位装置50は、F6で示すように塗装信号A22のONを出力し、第二静電塗装装置102に対して塗料の噴霧を許可する。これにより、第二静電塗装装置102は、F3からF5の期間における第一静電塗装装置101と同様に、F6からF8の期間において被塗装物60を静電塗装する。
その後、続けて新たな被塗装物60を塗装する場合は、高電圧出力信号A1のONを維持したまま、F1からF8の工程を繰り返す。一方、塗装を終了する場合、上位装置50は、F9で示すように、高電圧出力信号A1のOFFを出力し、各静電塗装装置101、102の高電圧出力部27から出力される高電圧Vdc1、Vdc2をそれぞれ停止する。これにより、一連の塗装工程が終了する。
図13に示すように、各静電塗装装置101、102にメタルブリッジが発生している場合においても、各静電塗装装置101、102は、まず図12に示すF1、F2と同様の工程G1、G2を経て、G2で示すように、第一出力電圧5kVによる検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を判断する。図13では、各静電塗装装置101、102にメタルブリッジが発生しており、メタルブリッジ発生信号B21、B22はONとなる。
G3からG4の期間は、被塗装物60が、各静電塗装装置101、102の塗装範囲内に接近していないため、塗装信号A21、A22のONは出力されない。この場合、各静電塗装装置101、102は、第一出力電圧5kVの出力によりメタルブリッジ解消の検出を継続する。その後、さらに被塗装物60が接近すると、上位装置50は、G4で示すように、まず塗装信号A21のONを出力し、第一静電塗装装置101に対して塗料の噴霧を許可する。これにより、第一静電塗装装置101のメタルブリッジの解消が図られる。そして、第一静電塗装装置101は、検出電流Iに基づいてメタルブリッジが解消されたと判断すると、G5で示すようにメタルブリッジ発生信号B21をOFFに設定する。そして、第一静電塗装装置101は、自己のメタルブリッジ発生信号B21がOFFになったことを受けて、第二設定を選択して通常塗装モードへ移行し、第二出力電圧80kVに設定された高電圧Vdc1を出力する。これにより、G5からG6の期間において、第一静電塗装装置101の塗装範囲内における静電塗装が行われる。
被塗装物60が第一静電塗装装置101の塗装範囲を通過すると、上位装置50は、図12のG5と同様に、第一静電塗装装置101による静電塗装を終了する。その後、被塗装物60が第二静電塗装装置102の塗装範囲内に接近すると、上位装置50は、G7からG10の期間において、G4からG6の期間と同様の工程が行われ、第二静電塗装装置102によって被塗装物60が静電塗装される。
その後、続けて新たな被塗装物60を塗装する場合は、高電圧出力信号A1のONを維持したまま、G1からF10の工程を繰り返す。一方、塗装を終了する場合、上位装置50は、G10で示すように、高電圧出力信号A1のOFFを出力し、各静電塗装装置101、102の高電圧出力部27から出力される高電圧Vdc1、Vdc2をそれぞれ停止する。これにより、一連の塗装工程が終了する。
図14に示すメタルブリッジ以外の異常が発生した場合において、各静電塗装装置101、102は、まず、図12に示すF1、F2と同様の工程H1、H2を経て、H2で示すように、第一出力電圧5kVによる検出電流Iに基づいてメタルブリッジの有無を判断する。図14は、第一静電塗装装置101にメタルブリッジ以外の異常が発生し、第二静電塗装装置102には、メタルブリッジおよびメタルブリッジ以外の異常の何れも発生していない場合を示している。この場合も、第一静電塗装装置101の検出電流Iが閾値10μAを超えて検出されるため、H3で示すように、まず、第一静電塗装装置101のメタルブリッジ発生信号B21がONとなる。この場合、第二静電塗装装置102のメタルブリッジ発生信号B22はOFFとなっている。
被塗装物60が接近すると、上位装置50は、H4で示すように塗装信号A21のONを出力し、第一静電塗装装置101に対して塗料の噴霧を許可する。これにより、第一静電塗装装置101のメタルブリッジの解消が図られる。しかし、所定期間塗料を噴霧してもメタルブリッジ発生信号がOFFとならない場合、第一静電塗装装置101は、H5で示すように、メタルブリッジ発生信号B21をOFFに設定する。そして第一静電塗装装置101は、メタルブリッジ以外の異常が発生していると判断し、上位装置50に対して異常発生信号B11のONを出力するとともに、高電圧Vdcの出力を停止する。
上位装置50は、異常発生信号B11のONを受けて、高電圧出力信号A1および塗装信号A21、A22のOFFを出力する。これにより、H6で示すように、第一静電塗装装置101は塗料の噴霧を停止するとともに、第二静電塗装装置102は高電圧Vdc2の出力および塗料の噴霧を停止する。なお、被塗装物60の状態によっては、異常発生信号B11のONが出力された第一静電塗装装置101を停止し、第二静電塗装装置102は継続して動作させる構成でもよい。
上記第二実施形態によれば、一台の上位装置50に対して複数の静電塗装装置10を接続した場合であっても、上記第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第二実施形態において、各静電塗装装置10は、抵抗検出モードと通常塗装モードとの選択を自ら行うため、従来から使用されている上位装置50の構成を大幅に変更する必要がない。そのため、静電塗装装置10によるメタルブリッジの検出を、汎用性の高いものとすることができる。
また、上記の通り、各静電塗装装置10は、上位装置50からの設定選択信号A3の出力によらずに、抵抗検出モードから通常塗装モードへ移行することができる。このため、メタルブリッジの解消後は、より早期に第二設定による第二出力電圧80kVを出力させて高電圧に帯電された静電塗装を行うことができる。これにより、塗装品質および生産性の向上が図られる。
なお、上記第一実施形態において、一台の上位装置50に対して複数台の静電塗装装置10を接続することもでき、また、上記第二実施形態において、一台の上位装置50に対して一台の静電塗装装置10を接続する構成でもよい。
また、異常発生信号やメタルブリッジ信号に換えて、異常無し信号やメタルブリッジ無し信号を用いてもよい。この場合、異常無し信号は、静電塗装装置10が正常であればONを出力し、正常でなくなった場合にOFFを出力する。同様に、メタルブリッジ無し信号は、メタルブリッジが発生していない場合にONを出力し、メタルブリッジが発生した場合にOFFを出力する。これによれば、フェールセーフの観点からも、より安全側とすることができる。
また、静電塗装装置10は、上位装置50に接続されないで使用することもできる。この場合、スプレーガン20にトリガを設け、作業者がトリガを引き操作することにより塗料の噴霧および高電圧Vdcの出力が行われる構成でもよい。
また、使用される塗料は金属の粒子を含んだいわゆるメタリック塗料に限られず、例えばカーボンなどの導電性の粒子を含んだいわゆる機能性塗料などでもよい。
そして本発明の実施形態は、上記したかつ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。