JP5780888B2 - 2サイクルエンジン - Google Patents
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Description
2サイクルエンジンでは、吸入通路からクランク室内に流入した混合ガスを、掃気通路を通じて燃焼室内に流入させ、燃焼室内で混合ガスを燃焼させたときの膨張力によって、ピストンをシリンダ内で往復動させている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の2サイクルエンジンでは、掃気効率および燃焼効率が低い場合には、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)が増加するという問題がある。
また、掃気通路の開口部の周囲に棚部を形成することで、連通路内において開口部周辺の空間が拡張されるため、掃気通路内で圧縮された混合ガスが、連通路内で膨張して燃焼室内に噴出される。これにより、混合ガスの霧化や混合を促進させるとともに、混合ガスの圧力および速度に変化を持たせることができる。より詳細には、混合ガスがシリンダへ流入する際の圧力および速度を一定程度低下させる効果がある。また、燃焼室内の反排気ポート側に流入した混合ガスによって、燃焼室内の既燃焼ガスが排気ポートに押し出される。したがって、掃気効率および燃焼効率を向上させることができる。
また、掃気通路の断面積が小さくなることで、シリンダブロックの設計の自由度を高めることができる。例えば、シリンダブロックの側壁部の厚さを大きくし、クランクシャフトのクランクジャーナルを回転自在に支持するベアリングの受け面を大きくすることで、ベアリングの供回りを防ぐとともに、ベアリングの耐久性を高めることができる。
したがって、掃気ポートから燃焼室内に流入する混合ガスを反排気ポート側へ確実に指向することができるため、排気ポートに排気される未燃焼の混合ガスの量を大幅に低減することができる。
この構成では、掃気通路内で圧縮された混合ガスを、連通路内でより効果的に膨張させることができるため、混合ガスの霧化や混合を促進させるとともに、混合ガスの圧力および速度に変化を持たせることができ、掃気効率および燃焼効率を大幅に向上させることができる。
また、両掃気ポートから燃焼室内に流入した混合ガスが、燃焼室内で衝突することで、混合ガスの混合および拡散が促進されるため、燃焼効率をより向上させることができる。
特に、掃気ポートをダイバージェント形状に形成した場合には、掃気ポートから燃焼室内に噴出された混合ガスが効果的に拡散されるため、掃気効率および燃焼効率をより向上させることができる。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
図1に示す第一実施形態のエンジン1は、チェンソー、刈払機、ブロワなどの小型作業機械に用いられるもの2サイクルエンジンである。
エンジン1は、図2に示すように、シリンダ61aおよびクランク室62aが形成されたシリンダブロック60と、シリンダ61a内に摺動自在に装着されたピストン50と、クランク室62aに通じる吸入通路70と、燃焼室40に通じる排気通路80と、クランク室62aと燃焼室40とを連通させる掃気通路10A,10B(図5参照)と、クランク室62a内に収容されたクランクシャフト90と、を主に備えている。
第一実施形態のエンジン1における各種の動力機構は、公知の2サイクルエンジンと同様の構成であるため、本発明を構成する特徴的な構成以外は詳細な説明を省略している。
ピストン50が上死点に達すると、前回の掃気行程でシリンダ61a内に流入していた混合ガスが燃焼室40内で圧縮される。そして、点火プラグ41によって混合ガスに着火されると、その膨張力によってピストン50が押し下げられる。
ピストン50が下死点に達すると、図5に示すように、掃気通路10A,10Bが燃焼室40に通じた状態となり、混合ガスが掃気通路10A,10Bを通じて燃焼室40内に流入する。
図3に示すように、下死点に達したピストン50は、クランクシャフト90の回転力によって再び上昇し、吸入・圧縮行程が繰り返される。
下部ケース62の側壁部62bに形成された挿通孔62cの内周面には、ベアリング62dが内嵌されている。すなわち、挿通孔62cの内周面は、ベアリング62dの受け面となっている。
クランクジャーナル91は、ベアリング62dに挿通されており、その先端部は下部ケース62の外部に突出している。
クランクウェブ92は、コンロッド51を介してピストン50に連結されており、ピストン50の往復動に連動して、クランクウェブ92がクランクジャーナル91の軸回りに回転するように構成されている。
吸入通路70のシリンダ61a側の開口部71は、図4に示すように、ピストン50が下死点に位置したときには、ピストン50の側面によって閉塞され、図2に示すように、ピストン50が上死点に位置したときには、シリンダ61aの下部に開口してクランク室62a内に通じる。
排気ポート81は、図4に示すように、ピストン50が下死点に位置したときには、燃焼室40に通じた状態となり、図2に示すように、ピストン50が上死点に位置したときには、ピストン50の側面によって閉塞される。
なお、図1および図3では、第一掃気通路10A、第一連通路30Aおよび第一掃気ポート20Aの構成を分かり易く説明するために、シリンダブロック60の中心位置の断面に第一掃気通路10A、第一連通路30Aおよび第一掃気ポート20Aを図示している。
また、図5に示す第二掃気通路10Bも第一掃気通路10Aと同様に、下端部がクランク室62a(図1参照)に通じるとともに、上端部には後記する第二連通路30Bの底面31に開口した開口部11が形成されている。
シリンダ61aの中心位置P1よりも排気ポート81側で、排気ポート81の両側(図5における上下両側)となる位置には、シリンダ61aを挟んで対向している二つの第一掃気ポート20A,20Aが形成されている。また、中心位置P1よりも吸入通路70側で、排気ポート81の両側となる位置には、シリンダ61aを挟んで対向している二つの第二掃気ポート20B,20Bが形成されている。
したがって、開口部11から連通路30A,30B内に流入した混合ガスは、連通路30A,30Bによって反排気ポート側に向けて案内され、掃気ポート20A,20Bから燃焼室40内の反排気ポート側に向けて噴出される。
連通路30A,30Bを形成する両側面32,33のうち反排気ポート側の側面33は、図5に示すように、上部ブロック61においてシリンダ61aの径方向の外側から掃気ポート20A,20Bに向かうに従って、排気ポート81側の側面32から離れるように傾斜している。つまり、連通路30A,30Bの反排気ポート側の側面33は、燃焼室40(シリンダ61a)内の反排気ポート側に向かうように形成されている。そして、連通路30A,30Aにおいてシリンダ61aの周方向(水平方向)の開口幅は、開口部11から掃気ポート20A,20Bに向かうに従って拡大されている。
棚部36は、連通路30Aの反排気ポート側の側面33を、開口部11の反排気ポート側の縁部(第一掃気通路10Aの反排気ポート側の内面)に対して、反排気ポート側にオフセットさせることで形成された部位である。
連通路30A内には、第一掃気通路10Aの内周面、棚部36および反排気ポート側の側面33によって段差部が形成されている。
このように、開口部11の縁部と反排気ポート側の側面33とは、棚部36を挟んで横方向(シリンダ61aの周方向)に離れている。そして、開口部11の周囲において、棚部36の上方には、反排気ポート側に拡張された空間が形成されている。
図3に示すように、ピストン50が下死点に達すると、第一掃気ポート20A,20Aが燃焼室40に通じた状態となる。これにより、クランク室62a内に充填されていた混合ガスが第一掃気通路10A,10A、第一連通路30A,30Aおよび第一掃気ポート20A,20Aを通じて燃焼室40内に流入する。なお、混合ガスはクランク室62aから第一掃気通路10Aに流入した際に圧縮される。
連通路30Aは、図3に示すように、開口部11から第一掃気ポート20Aに向かうに従って、断面積が大きくなるダイバージェント形状に形成されているため、第一掃気ポート20Aから燃焼室40内に噴出される混合ガスが効果的に拡散される。
したがって、混合ガスの霧化や混合を促進させるとともに、混合ガスの圧力および速度に変化を持たせることができるため、混合ガスの掃気効率および燃焼効率を大幅に向上させることができる。
したがって、混合ガスが反排気ポート側の側面33に当たって、排気ポート81側に反射するのを防ぐことができ、第一掃気ポート20Aから燃焼室40内に流入する混合ガスを反排気ポート側へ確実に指向することができる。これにより、排気ポート81に排気される未燃焼の混合ガスの量が大幅に低減される。
したがって、第一実施形態の第二連通路30Bには、第一連通路30Aのように棚部36が形成されていないが、第二連通路30Bに棚部を形成した場合には、各掃気ポート20A,20Bから燃焼室40内に流入する混合ガスを、よりスムーズに反排気ポート側に流すことができる。
また、各掃気ポート20A,20Bから燃焼室40内に流入した混合ガスが、燃焼室40内で衝突することで、混合ガスの混合および拡散が促進されるため、混合ガスの燃焼効率を向上させることができる。
また、第一実施形態のエンジン1は、前記した従来のエンジンと比較して、燃料消費量が約22%低減されるとともに、熱効率が向上することで、燃料消費率が約26%低減された。
具体的には、第一実施形態のエンジン1では、前記した従来のエンジンと比較して、掃気通路10A,10Bの断面積を約17%低減することができ、出力が約4%向上することが確認された。
第一実施形態では、図5に示すように、四つの掃気ポート20A,20Bが形成されているが、その数は限定されるものではなく、二つの第一掃気ポート20A,20Aのみが形成されていてもよい。
また、図5に示すように、開口部11が矩形断面となっているが、その形状は限定されるものではなく、例えば、円形状や三角形状の断面であってもよい。
第二実施形態のエンジン2は、図7に示すように、連通路30Aの底部35の棚部37が、開口部11の縁部と、排気ポート81側の側面32との間に入り込んでいる点が、第一実施形態のエンジン1(図5参照)と異なっている。
棚部37は、図7に示すように、排気ポート81側の側面32の奥側の一部を、開口部11の排気ポート81側の縁部(第一掃気通路10Aの排気ポート81側の内面)に対して、排気ポート81側にオフセットさせることで形成された部位である。
連通路30A内には、図8に示すように、第一掃気通路10Aの内周面、棚部37および排気ポート81側(図7参照)の側面32によって段差部が形成されており、開口部11の縁部と排気ポート81側の側面32とは、棚部37を挟んで横方向(シリンダ61aの周方向)に離れている。そして、開口部11の周囲において、棚部37の上方には、排気ポート81側に拡張された空間が形成されている。
図7に示すように、第一掃気通路10Aの開口部11と、第一連通路30Aの掃気ポート側の側面32との間に形成された棚部37によって、第一連通路30A内において開口部11周辺の空間が拡張されている。つまり、第一連通路30Aにおけるシリンダ61aの軸線方向の断面積は、第一掃気通路10Aの開口部11におけるシリンダ61aの径方向の断面積よりも大きくなっている。これにより、ピストンの下降に伴って、開口部11から第一連通路内30Aに流入した混合ガスは、第一連通路30A内で膨張する。
また、連通路30Aは、開口部11から第一掃気ポート20Aに向かうに従って、断面積が大きくなるダイバージェント形状に形成されているため、第一掃気ポート20Aから燃焼室40内に噴出される混合ガスが効果的に拡散される。
したがって、混合ガスの霧化や混合を促進させるとともに、混合ガスの圧力および速度に変化を持たせることができるため、混合ガスの掃気効率および燃焼効率を大幅に向上させることができる。
また、各掃気ポート20A,20Bから燃焼室40内に流入した混合ガスが、燃焼室40内で衝突することで、混合ガスの混合および拡散が促進されるため、混合ガスの燃焼効率を向上させることができる。
また、掃気通路10A,10Bの断面積が小さくなることで、下部ケースの側壁部の厚みを大きくすることができ、クランクジャーナルを回転自在に支持するベアリングの受け面を大きくすることができるため、ベアリングの共回りを防ぐとともに、ベアリングの耐久性を高めることができる。
第二実施形態では、図7に示すように、四つの掃気ポート20A,20Bが形成されているが、その数は限定されるものではない。また、図8に示すように、棚部37が平面視で三角形状となっているが、その形状は限定されるものではない。また、図7に示すように、開口部11が矩形断面となっているが、その形状は限定されるものではない。
本発明のエンジンの他の構成としては、図9(a)に示すように、第一掃気通路10Aの開口部11の縁部と、第一連通路30Aの反排気ポート側および排気ポート側の両側面32,33との間にそれぞれ棚部36,37を形成してもよい。
2 エンジン(第二実施形態)
10A 第一掃気通路
10B 第二掃気通路
11 開口部
20A 第一掃気ポート
20B 第二掃気ポート
30A 第一連通路
30B 第二連通路
31 底面
32 排気ポート側の側面
33 反排気ポート側の側面
34 天井面
35 底部
36 棚部(第一実施形態)
37 棚部(第二実施形態)
38 棚部(他の実施形態)
40 燃焼室
50 ピストン
51 コンロッド
60 シリンダブロック
61 上部ブロック
61a シリンダ
62 下部ケース
62a クランク室
62b 側壁部
62d ベアリング
70 吸入通路
80 排気通路
81 排気ポート
90 クランクシャフト
91 クランクジャーナル
92 クランクウェブ
Claims (6)
- シリンダおよびクランク室が形成されたシリンダブロックと、
前記シリンダ内に摺動自在に装着されたピストンと、を備え、
前記シリンダブロックには、
前記シリンダの内周面に開口した排気ポートを通じて、前記シリンダ内の燃焼室に通じる排気通路と、
前記シリンダの内周面に開口した掃気ポートと、
前記掃気ポートから前記シリンダの径方向に形成された連通路と、
前記シリンダの軸方向に形成され、前記クランク室に通じるとともに、前記連通路の底面に開口部が形成された掃気通路と、が形成された2サイクルエンジンであって、
前記連通路を形成する反排気ポート側の側面が、前記燃焼室内の反排気ポート側に向かうように形成され、
前記連通路の底部に、前記掃気通路の開口部と、前記掃気通路の開口部の周囲に形成された棚部と、が形成され、
前記棚部は、前記掃気通路の開口部と、前記連通路の反排気ポート側の側面との間に入り込んでおり、
前記棚部は、前記連通路の反排気ポート側の側面を、前記掃気通路に対して反排気ポート側にオフセットさせることで形成されていることを特徴とする2サイクルエンジン。 - シリンダおよびクランク室が形成されたシリンダブロックと、
前記シリンダ内に摺動自在に装着されたピストンと、を備え、
前記シリンダブロックには、
前記シリンダの内周面に開口した排気ポートを通じて、前記シリンダ内の燃焼室に通じる排気通路と、
前記シリンダの内周面に開口した掃気ポートと、
前記掃気ポートから前記シリンダの径方向に形成された連通路と、
前記シリンダの軸方向に形成され、前記クランク室に通じるとともに、前記連通路の底面に開口部が形成された掃気通路と、が形成された2サイクルエンジンであって、
前記連通路を形成する反排気ポート側の側面が、前記燃焼室内の反排気ポート側に向かうように形成され、
前記連通路の底部に、前記掃気通路の開口部と、前記掃気通路の開口部の周囲に形成された棚部と、が形成され、
前記棚部は、前記掃気通路の開口部と、前記連通路の排気ポート側の側面との間に入り込んでいることを特徴とする2サイクルエンジン。 - 前記連通路における前記シリンダの軸線方向の断面積は、前記掃気通路における前記シリンダの径方向の断面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2サイクルエンジン。
- 前記連通路において前記シリンダの周方向の開口幅は、前記掃気通路の開口部側から前記掃気ポート側に向かうに従って拡大されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の2サイクルエンジン。
- 前記連通路の天井面は、前記掃気通路側から前記掃気ポート側に向かうに従って、シリンダヘッド側に傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の2サイクルエンジン。
- 前記排気ポートの両側に二つの前記掃気ポートが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の2サイクルエンジン。
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