以下に、本発明に係るハイブリッド車両の変速制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係るハイブリッド車両の変速制御装置を備える車両の概略図である。本実施形態に係る変速制御装置2は、同図に示す車両1に搭載されており、この車両1は、内燃機関であるエンジン4と、電気で駆動する電動機であるモータジェネレータ10とを備えている。このように車両1は、走行時における動力源としてエンジン4とモータジェネレータ10とを用いる、いわゆるハイブリッド車両として設けられている。これらのように、動力源として設けられるエンジン4とモータジェネレータ10とは、複数のギヤ段を有すると共に、車両1の運転者が手動で変速を行うことができるように設けられている手動変速機30に連結されている。
この手動変速機30について説明すると、手動変速機30は、間隔を開けて平行に配設された入力軸32と出力軸34とを有しており、このうち入力軸32が、エンジン4とモータジェネレータ10に連結されている。詳しくは、入力軸32は、一端が、係合と開放とを切り替えることにより回転トルクの伝達と遮断とを切り替え可能なエンジン側クラッチ20を介して、エンジン4の回転軸であるクランクシャフト6に連結されている。
また、モータジェネレータ10に対しては、入力軸32においてエンジン4に連結されている側の端部の反対側の端部が、エンジン側クラッチ20と同様に、係合と開放とを切り替え可能なMG側クラッチ22を介して、モータジェネレータ10の回転軸である駆動軸12に連結されている。このMG側クラッチ22は、入力軸32とモータジェネレータ10との間の回転トルクの伝達状態を切り替える動力伝達切替手段として設けられており、MG側クラッチ22は、係合と開放とを切り替えることにより、入力軸32とモータジェネレータ10との間の回転トルクの伝達と遮断とを切り替え可能に設けられている。
これらのように設けられる入力軸32と出力軸34とには、変速ギヤ列が配設されている。この変速ギヤ列は、手動変速機30において、前進5段で、且つ、後退1段の変速段を構成する歯車群として設けられており、入力軸32上に設けられた第1ドライブギヤ41〜第5ドライブギヤ45と、出力軸34上に設けられた第1ドリブンギヤ51〜第5ドリブンギヤ55とにより構成されている。
これらのドライブギヤ40とドリブンギヤ50とは、第1ドライブギヤ41と第1ドリブンギヤ51、第2ドライブギヤ42と第2ドリブンギヤ52、第3ドライブギヤ43と第3ドリブンギヤ53、第4ドライブギヤ44と第4ドリブンギヤ54、第5ドライブギヤ45と第5ドリブンギヤ55とが、それぞれ常時噛み合った状態で設けられている。
これらのようにドライブギヤ40とドリブンギヤ50とは、共に複数が設けられているが、入力軸32上で隣り合うドライブギヤ40同士の間や、出力軸34上で隣り合うドリブンギヤ50同士の間には、複数の箇所にクラッチスリーブ(図示省略)が設けられている。
このクラッチスリーブは、クラッチスリーブの両側に位置して隣り合うドライブギヤ40の入力軸32に対する結合または空転の状態や、クラッチスリーブの両側に位置して隣り合うドリブンギヤ50の出力軸34に対する結合または空転の状態を作り出すことが可能に設けられている。手動変速機30は、このように設けられるクラッチスリーブを手動で動かし、入力軸32と出力軸34に結合されるギヤを選択することにより、入力軸32と出力軸34とは、選択したギヤによって回転が伝達可能になる。
その際に、変速の前後では入力軸32と出力軸34とで変速比が変化するため、結合しようとしているドライブギヤ40と入力軸32、またはドリブンギヤ50と出力軸34とは、回転速度に差が発生し易い状態になっているが、クラッチスリーブには、この回転速度を同調させるシンクロ機構が備えられている。このため、変速時には、選択したギヤ段のドライブギヤ40と入力軸32、またはドリブンギヤ50と出力軸34とは、シンクロ機構によって回転速度が同調して結合し易い状態になった後、結合することにより、選択したギヤによって回転が伝達可能になる。これにより、手動変速機30は選択したギヤ段に切り替えられ、所望の変速比に変速可能に設けられている。
さらに、入力軸32にはリバースドライブギヤ46が設けられており、出力軸34上にはリバースドリブンギヤ56が設けられている。これらのように設けられるリバースドライブギヤ46とリバースドリブンギヤ56とは、入力軸32及び出力軸34と平行に設けられたシャフトであるアイドラシャフト(図示省略)上に設けられたリバースアイドラギヤ57を介して噛み合い可能に設けられている。
このリバースドライブギヤ46及びリバースドリブンギヤ56も、リバースドライブギヤ46とリバースドリブンギヤ56とのうち一方が、クラッチスリーブによって入力軸32または出力軸34に対する結合と空転との切り替えが可能になっている。このため、このクラッチスリーブを手動で動かし、リバースアイドラギヤ57を介してリバースドライブギヤ46とリバースドリブンギヤ56とを噛み合わせることにより、出力軸34の回転を後退方向の回転にすることができる。
また、出力軸34は、左右の駆動輪66の回転差を吸収する差動装置であるデファレンシャルギヤ60との間で回転トルクの伝達が可能になっており、これにより手動変速機30は、エンジン4で発生した動力とモータジェネレータ10で発生した動力とを、車両1の駆動輪66側に伝達可能に設けられている。
詳しくは、手動変速機30の出力軸34には出力ギヤ58が設けられており、デファレンシャルギヤ60にはデフリングギヤ62が設けられており、この出力ギヤ58とデフリングギヤ62とが噛み合った状態で設けられている。これにより、出力軸34とデファレンシャルギヤ60との間で回転トルクの伝達が可能になっている。また、デファレンシャルギヤ60には、左右の駆動輪66に対して回転トルクを伝達可能なドライブシャフト64が連結されており、これにより、手動変速機30の出力軸34からデファレンシャルギヤ60に伝達された回転トルクは、左右の駆動輪66に伝達可能になっている。
なお、本実施形態に係る変速制御装置2が有する手動変速機30は、出力軸34がデファレンシャルギヤ60に接続されており、いわゆる前輪駆動車で多用される形態で設けられているが、手動変速機30は、これ以外で設けられていてもよい。例えば、手動変速機30の出力軸34は、車両1の前後方向に延びるプロペラシャフト(図示省略)に接続され、いわゆる後輪駆動車で多用される形態で設けられていてもよい。
手動変速機30の入力軸32にMG側クラッチ22を介して連結されているモータジェネレータ10は、電源として車両1に搭載されるバッテリ14に電気的に接続されており、バッテリ14から供給される電気によって作動可能になっている。また、このモータジェネレータ10は、発電機の機能も有しており、MG側クラッチ22を介して手動変速機30から伝達される回転トルクによって発電し、バッテリ14に蓄電することが可能になっている。
このように設けられるモータジェネレータ10及びエンジン4は、車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)70に接続されており、双方をECU70で制御することにより、車両1の走行時には、エンジン4とモータジェネレータ10との協調制御を行う。このように各部を制御可能なECU70のハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
また、モータジェネレータ10との間に介在しているMG側クラッチ22は、油圧により係合と開放とを切り替えることが可能になっており、このMG側クラッチ22の係合と開放の切り替え制御は、ECU70によって行う。また、ECU70には、車両1の走行時における各部の状態を検出する検出手段が接続されており、例えば、手動変速機30の入力軸32の回転数を検出する入力軸回転数センサ36が接続されている。また、手動変速機30の出力軸34にも同様に、出力軸34の回転数を検出する検出手段が設けられており、この検出手段もECU70に接続されているが、出力軸34の回転数は、駆動輪66の回転数と比例関係になっている。このため、出力軸34の回転数を検出する検出手段は、出力軸34の回転数を検出することを介して車速を検出する車速センサ38として設けられている。
図2は、車両の走行時に操作するペダル類の説明図である。車両1には、動力源としてエンジン4とモータジェネレータ10とが設けられているが、これらの動力源で発生する動力を車両1の走行時に運転者が調節する場合には、車内に設けられるアクセルペダル84を操作することにより行う。即ち、車内には、車両1の走行時に操作をするペダルとしてクラッチペダル80とブレーキペダル82とアクセルペダル84とが設けられており、エンジン4やモータジェネレータ10で発生する動力は、アクセルペダル84を操作することによって調節する。
また、エンジン4と手動変速機30との間に設けられるエンジン側クラッチ20は、クラッチペダル80を操作することにより、係合と開放とを切り替える。これにより、エンジン4と手動変速機30との間の回転トルクの伝達と遮断とを切り替える。
図3は、手動変速機の変速を行う際のシフトゲートの説明図である。また、手動変速機30は、車内に設けられるシフトレバー98を、シフトゲート90に沿って運転者が手動で操作することにより、ギヤ段を切り替える。具体的には、シフトゲート90には、手動変速機30のギヤ段に応じて、1速ゲート91、2速ゲート92、3速ゲート93、4速ゲート94、5速ゲート95、及びリバースゲート96が設けられており、シフトレバー98を、任意のギヤ段に対応するゲートに移動させる。また、シフトゲート90には、いずれのギヤ段も選択しないニュートラルポジション97が設けられており、シフトレバー98を、このニュートラルポジション97に位置させた場合には、手動変速機30は、入力軸32と出力軸34との間で回転トルクが伝達されない状態になる。
また、このように設けられるシフトゲート90には、シフトレバー98によって選択しているギヤ段の状態を検出するギヤポジションセンサ99が設けられている。このギヤポジションセンサ99は、ECU70に接続されており、シフトゲート90上における現在のシフトレバー98の位置を検出することを介して、選択されているギヤ段を検出し、検出結果をECU70に伝達する。
この実施形態に係る変速制御装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時は、運転者が操作をするアクセルペダル84に応じてECU70でエンジン4やモータジェネレータ10を制御し、アクセルペダル84の操作量に応じた動力をエンジン4やモータジェネレータ10に発生させる。
また、車両1の走行時には、走行状態に応じて運転者がシフトレバー98を操作することにより、運転者が任意で手動変速機30のギヤ段を切り替える。これにより、駆動輪66には、所望の回転トルクが所望の回転速度で伝達され、この回転トルクによって発生する駆動力により、車両1は走行する。
車両1の走行時は、このように手動変速機30を手動で変速しながら走行をするが、変速時には、変速の前後で手動変速機30の入力軸32の回転速度が変化する。即ち、手動変速機30の出力軸34は、当該出力軸34に設けられる出力ギヤ58が、デファレンシャルギヤ60のデフリングギヤ62に噛み合っているため、出力軸34の回転速度は、駆動輪66の回転速度に比例している。つまり、出力軸34の回転速度は車速に比例しているため、出力軸34の回転速度は、手動変速機30の変速の前後で大きくは変化しない。このため、変速比が変化することにより入力軸32と出力軸34との回転比が変化する変速の前後では、入力軸32の回転速度が変化する。
手動変速機30の変速時には、変速の前後でこのように入力軸32の回転速度が変化するため、手動で変速を行う場合には、クラッチペダル80を操作することにより、エンジン側クラッチ20を開放する。これにより、入力軸32には、クランクシャフト6の慣性モーメントが作用しなくなるため、入力軸32は、変速時に変速の前後で回転速度を変化させ易くなる。
ここで、手動変速機30の変速は、手動変速機30に設けられるクラッチスリーブを動かし、選択したギヤ段、即ち、目標となるギヤ段のドライブギヤ40と入力軸32、またはドリブンギヤ50と出力軸34との回転速度をシンクロ機構で同調させつつ結合させることにより行う。このため、このようにエンジン側クラッチ20を開放し、入力軸32の回転速度を変化させ易くした状態で変速操作を行うことにより、目標となるギヤ段のドライブギヤ40と入力軸32等は、シンクロ機構によって回転速度が同調し易くなり、結合し易くなる。このように、結合し易くなったドライブギヤ40と入力軸32等を結合することにより、手動変速機30は所望のギヤ段に変速する。
手動変速機30の変速時は、このようにエンジン側クラッチ20を開放してクランクシャフト6の慣性モーメントが作用しない状態にし、入力軸32の回転速度が変化し易い状態にして変速を行うが、手動変速機30の入力軸32には、エンジン4のみでなく、MG側クラッチ22を介してモータジェネレータ10も連結されている。このため、手動変速機30の変速時にエンジン側クラッチ20のみを開放して変速する場合、入力軸32には、MG側クラッチ22を介してモータジェネレータ10の駆動軸12等の回転体の慣性モーメントが作用する。この場合、シンクロ機構による回転速度の同調を行い難くなり、ギヤ段の変速を行い難くなる場合がある。
シンクロ機構で回転速度を同調させる手法について説明すると、手動変速機30の変速時に、変速時における目的のギヤ段のドライブギヤ40と入力軸32等の回転速度を同調させる場合には、シンクロ機構は、ギヤ側と軸側との回転差を摩擦力によって小さくすることによって同調させる。このため、相対的に回転をするギヤ側と軸側との相対的な慣性モーメントが大きい場合、シンクロ機構の摩擦力では回転差を小さくするのが困難になる場合がある。
つまり、シンクロ機構は、運転者が手動変速機30の変速時にシフトレバー98に加える程度の力によって発生する摩擦力を用いて回転差を小さくすることができるように設けられている。このため、変速時にシンクロ機構に所定以上の摩擦力が発生した場合、シンクロ機構は損傷し易くなる。即ち、相対的に回転をするギヤ側と軸側との相対的な慣性モーメントが大きい場合、双方の回転差を小さくするためにシンクロ機構で摩擦力が大きくなり過ぎ、シンクロ機構で回転速度を同調させることができる回転状態の許容範囲を超える場合がある。
このため、手動変速機30の変速時に、手動変速機30の回転体の回転状態がシンクロ機構で回転速度を同調させることができる許容範囲を超える場合には、MG側クラッチ22を開放させる。これにより、モータジェネレータ10は手動変速機30の入力軸32から切り離されるため、モータジェネレータ10の回転体の慣性モーメントは入力軸32に対して作用しなくなる。従って、入力軸32の慣性モーメントが小さくなるため、変速時にシンクロ機構で発生する摩擦力が小さい状態で、変速時における目的のギヤ段のドライブギヤ40と入力軸32等の回転速度を同調させることができる。これにより、シンクロ機構が損傷することなく、運転者が容易に手動で手動変速機30の変速を行うことが可能になる。
図4は、実施形態に係る変速制御装置の処理手順の概略を示すフロー図である。次に、手動変速機30の手動変速時の制御を本実施形態に係る変速制御装置2で行う場合の処理手順の概略について説明する。まず、変速ギヤを選択しているか否かを判定する(ステップST101)。即ち、手動変速機30は、いずれの変速ギヤも選択されていない状態であるニュートラル状態ではなく、いずれかの変速ギヤが選択されている状態であるか否かを、ギヤポジションセンサ99での検出結果に基づいて判定する。
この判定により、変速ギヤを選択していないと判定された場合(ステップST101、No判定)には、次に、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する(ステップST102)。このシンクロ動作最大回転数Ndiffは、車速センサ38で検出する現在の車速と、1速のギヤ比とに基づいて算出する。つまり、シンクロ機構は、目標となるギヤ段のドライブギヤ40と入力軸32等の回転速度を同調させるため、換言すると、目的のギヤ段の変速比に応じて入力軸32と出力軸34の回転速度を同調させる作用をする。また、出力軸34の回転速度は、車速と比例するが、車速が同じ速度の場合に、手動変速機30の入力軸32の回転速度が最も速くなるのは、ギヤ段が1速の場合になっている。
このため、現在の車速において、シンクロ機構の仕事量が最も大きくなる状態、即ち、シンクロ機構が最も厳しい条件は、入力軸32の回転が0の状態で、ギヤ段を1速に変速する場合になる。従って、車速センサ38で検出する現在の車速において1速に変速をする場合に、入力軸32の回転が0になった状態でドライブギヤ40と入力軸32等の回転速度を同調させる際の双方の回転速度の差、即ち、停止している入力軸32側に対して回転をしている側の回転数を、シンクロ動作最大回転数Ndiffとして算出する。
このように、手動変速機30の最低ギヤ段である1速は、手動変速機30が有するシンクロ機構に作用する負荷を判断する際の基準となるギヤ段として用いられる。運転者が手動変速機30の変速操作を行う場合は、この1速のギヤ比と車速とに基づいて、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する。
次に、シンクロ動作最大回転数Ndiffは許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST103)。この判定は、現在の車速に基づいて算出したシンクロ動作最大回転数Ndiffが、予め定められた所定の許容値であるシンクロ許容差回転以下であるか否かを判定することにより行う。このシンクロ許容差回転は、手動変速機30に備えられるシンクロ機構の耐久性を考慮し、シンクロ機構が損傷することなく、変速時にシンクロ機構で回転速度の同調を行うことができる回転数の差の許容値として予めECU70の記憶部に記憶されている。
なお、このシンクロ許容差回転は、シンクロ機構の耐久性以外に基づいて設定してもよく、例えば、運転者が変速操作を行う場合に、変速操作に対して違和感を覚えるか否かに基づいて設定してもよい。また、シンクロ許容差回転をシンクロ機構の耐久性に基づいて設定する場合には、シンクロ機構の摩耗等の劣化を考慮し、車両1の走行距離に応じて値を変化させてもよい。
シンクロ動作最大回転数Ndiffは許容範囲内であるか否かを判定する場合には、このシンクロ許容差回転と、算出したシンクロ動作最大回転数Ndiffとを比較し、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転以下であるか否かを判断することにより、許容範囲内であるか否かを判定する。
この判定により、シンクロ動作最大回転数Ndiffは許容範囲内ではないと判定された場合(ステップST103、No判定)には、MG側クラッチ22を開放する(ステップST104)。つまり、シンクロ動作最大回転数Ndiffはシンクロ許容差回転よりも大きく、許容範囲内ではないと判定された場合には、MG側クラッチ22を開放することにより、モータジェネレータ10を変速制御装置2の入力軸32から切り離す。即ち、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転を超える場合には、少なくとも手動変速機30の変速が完了するまではMG側クラッチ22を制御してMG側クラッチ22を開放することにより、モータジェネレータ10と手動変速機30との間の回転トルクの伝達を遮断する。これにより、モータジェネレータ10の駆動軸12等の回転時における慣性モーメントは入力軸32に対して作用しなくなるため、変速時におけるシンクロ機構に作用する負荷を小さくすることができる。
これに対し、シンクロ動作最大回転数Ndiffは許容範囲内であると判定された場合(ステップST103、Yes判定)、または、変速ギヤを選択していると判定された場合(ステップST101、Yes判定)には、MG側クラッチ22を接続している状態を維持する(ステップST105)。つまり、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転以下で、許容範囲内であると判定された場合や、いずれかの変速ギヤが選択されている状態である場合には、シンクロ機構には大きな負荷が作用しないため、この場合は、MG側クラッチ22を接続する。これにより、モータジェネレータ10は、MG側クラッチ22を介して手動変速機30の入力軸32に連結する。この場合、入力軸32とモータジェネレータ10との間で回転トルクの伝達が可能になるので、モータジェネレータ10で動力を発生した場合には、この動力を、手動変速機30を介して駆動輪66に伝達し、駆動輪66で駆動力を発生することができる。また、車両1の減速時には、車両1の運動エネルギに基づく駆動輪66側からの回転トルクの一部が手動変速機30からモータジェネレータ10に伝達され、この回転トルクを用いてモータジェネレータ10で発電をする。
図5は、手動変速機の変速時における各動作を示す説明図である。本実施形態に係る変速制御装置2では、上述したように手動変速機30の変速時に、シンクロ機構に作用する負荷が許容範囲であるか否かに応じてMG側クラッチ22の接続状態を切り替えているが、次に、変速時にシンクロ機構の負荷を考慮して制御を行う場合における各部の動作の状態について説明する。なお、以下の説明では、変速ギヤを1速、2速、3速の順で切り替える場合について説明する。
まず、変速ギヤが1速の状態で車両1が走行をしている場合は、エンジン側クラッチ20は係合状態になっており、MG側クラッチ22も係合状態になっている。このため、モータジェネレータ10は、手動変速機30の入力軸32に接続されている。この状態で車両1が加速する場合、エンジン4の回転数を上昇させるため、手動変速機30の入力軸32の回転数も上昇する。これにより、車速も上昇する。
この状態で、手動変速機30を1速から2速に変速をする場合、エンジン側クラッチ20を一旦開放する。これにより、エンジン4で発生する動力は手動変速機30には伝達されなくなるため、入力軸32の回転数は上昇しなくなり、車速も上昇しなくなる。また、変速を行う場合は、ニュートラルを通過するが、エンジン4で発生した動力が手動変速機30に伝達されない状態が継続している場合、入力軸32の回転数は、回転抵抗等によって徐々に低下する。
また、本実施形態に係る変速制御装置2では、このように手動変速機30の変速ギヤがニュートラルの場合に、シンクロ機構に作用する負荷の判定を行うが、その際の判定に用いるシンクロ動作最大回転数Ndiffは、現在の車速における1速への変速時に、入力軸32の回転が0の場合におけるシンクロ機構で同調させる回転速度の差になっている。このように、シンクロ動作最大回転数Ndiffに基づいて、シンクロ機構に作用する負荷の判定を行う場合には、変速を行うギヤ段に関わらず、現在の車速における1速への変速時における状態で判断するため、換言すると、現在の車速に基づいて判断することができる。即ち、現在の車速が許容範囲内であるか否かに応じて、手動変速機30の変速時にシンクロ機構に作用する負荷の判定を行うことができる。
このため、変速時に変速ギヤがニュートラルになった場合には、車速センサ38で検出する現在の車速が、シンクロ機構に作用する負荷が大きくなり過ぎることがないと判断できる車速の許容範囲内であるか否かを判定する。この判定により、現在の車速が許容範囲内である場合には、MG側クラッチ22の係合を維持し、モータジェネレータ10が入力軸32に接続されている状態を維持する。
手動変速機30の変速時に、シンクロ機構に作用する負荷が大きくないと判定された場合には、このようにモータジェネレータ10が入力軸32に接続されている状態を維持したまま、運転者が2速に変速をする。この場合、シンクロ機構は大きな負荷を受けることなく、第2ドライブギヤ42と入力軸32、または、第2ドリブンギヤ52と出力軸34との回転速度の差を小さくして回転速度を同調させる。これにより、運転者は容易に2速への変速を行う。
手動変速機30を2速に変速したら、エンジン側クラッチ20を係合する。これにより、エンジン4で発生した動力はエンジン側クラッチ20を介して手動変速機30の入力軸32に伝達されるため、入力軸32の回転数は上昇し、車速も上昇する。
その後、手動変速機30を2速から3速に変速をする場合も同様に、エンジン側クラッチ20を一旦開放し、手動変速機30を一旦ニュートラルの状態にする。この場合も、シンクロ機構に作用する負荷の判定を、車速センサ38で検出する現在の車速が許容範囲内であるか否かによって行うが、車両1を加速させることにより車速が大きくなっている場合、現在の車速が許容範囲より大きくなる場合がある。
このように、現在の車速が許容範囲より大きい場合には、モータジェネレータ10の接続の切り替えを行う。具体的には、MG側クラッチ22を制御することによってMG側クラッチ22を開放することにより、モータジェネレータ10を、手動変速機30の入力軸32から切り離す。
手動変速機30の変速時に、シンクロ機構に作用する負荷が大きくなると判定された場合には、このようにモータジェネレータ10を入力軸32から切り離した状態で、運転者が3速に変速をする。この場合、モータジェネレータ10の慣性モーメントは手動変速機30の入力軸32には伝達されないため、変速時にシンクロ機構は大きな負荷を受けることなく、第3ドライブギヤ43と入力軸32、または、第3ドリブンギヤ53と出力軸34との回転速度の差を小さくして回転速度を同調させる。これにより、運転者は容易に3速への変速を行う。
手動変速機30を3速に変速し、変速ギヤがニュートラルの状態ではないことを検出したら、再びモータジェネレータ10の接続の切り替えを行い、MG側クラッチ22を係合する。これにより、切り離されている状態のモータジェネレータ10を、手動変速機30の入力軸32に接続する。また、手動変速機30を3速に変速したら、エンジン側クラッチ20を係合する。これにより、手動変速機30の入力軸32は、エンジン4で発生する動力によって回転数が上昇し、これに伴い車速も上昇する。
以上の変速制御装置2は、運転者が手動変速機30の変速操作を行う場合は、1速のギヤ比と車速とに基づいてシンクロ動作最大回転数Ndiffを算出し、このシンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転を超える場合には、MG側クラッチ22を開放する。これにより、モータジェネレータ10と手動変速機30との間の回転トルクの伝達を遮断することができるため、手動変速機30に対するモータジェネレータ10の慣性モーメントの作用を遮断することができる。従って、手動変速機30の変速時に、目標となるドライブギヤ40と入力軸32等の回転速度をシンクロ機構で同調させる際におけるシンクロ機構の仕事量を小さくすることができる。
また、手動変速機30の変速時におけるMG側クラッチ22の開放は、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転を超える場合にのみ行い、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転以下の場合はMG側クラッチ22を開放せず、入力軸32に対するモータジェネレータ10の接続を維持する。このため、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転以下の場合は、モータジェネレータ10で発生する動力を駆動輪66に伝達し、駆動力として用いることができる。特に、低車速域などシンクロ機構の仕事量が比較的少ない走行状態における変速時に、モータジェネレータ10で発生する動力を効果的に駆動力として用いることができる。これらの結果、シンクロ機構への負担の軽減と駆動力の確保とを両立することができる。
また、MG側クラッチ22は、手動変速機30の入力軸32とモータジェネレータ10との接続と切り離しとを切り替え可能に設けられているため、シンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転を超える場合には、入力軸32に対してモータジェネレータ10を切り離すことにより、モータジェネレータ10の慣性モーメントが入力軸32に作用することを、より確実に抑えることができる。この結果、手動変速機30の変速時に、より確実に、シンクロ機構の仕事量を小さくすることができ、シンクロ機構への負担を軽減することができる。
また、シンクロ動作最大回転数Ndiffは、手動変速機30の最低ギヤ段である1速のギヤ比と車速とに基づいて算出するため、変速時にMG側クラッチ22の係合を維持するか否かの判断を、シンクロ機構への負荷が最も大きくなる条件に基づいて行うことができる。これにより、手動変速機30の変速時に、シンクロ機構の仕事量が大きい状態で変速することを抑制することができる。この結果、シンクロ機構への負担を、より確実に軽減することができる。
また、このように、1速のギヤ比と車速とに基づいてシンクロ動作最大回転数Ndiffを算出するため、車両1の走行中にエンジン4を停止し、惰性によって走行をする、いわゆるフリーラン時や、他の電動モータ(図示省略)で発生する動力のみによる走行であるEV走行時でも、フリーランやEV走行から抜け出る場合に、シンクロ機構を保護しつつ、変速ギヤを選択することができる。つまり、フリーラン時やEV走行時は、エンジン4を停止し、手動変速機30はニュートラルの状態で走行をするため、手動変速機30の入力軸32の回転数は0になる可能性が高くなる。これに対し、シンクロ機構に作用する負荷は、入力軸32の回転数が0で、変速ギヤが1速に切り替えられる場合が最も大きくなるが、シンクロ動作最大回転数Ndiffは、1速に変速される場合を考慮して算出している。このため、このシンクロ動作最大回転数Ndiffに基づいて、モータジェネレータ10と入力軸32との接続状態を切り替えることにより、より確実にシンクロ機構を保護することができる。この結果、車両1の走行状態に関わらず、シンクロ機構への負担を、より確実に軽減することができる。
なお、上述した変速制御装置2では、シンクロ動作最大回転数Ndiffは、1速のギヤ比と車速とに基づいて算出するが、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する場合は、1速以外のギヤ比も用いてもよい。例えば、シンクロ動作最大回転数Ndiffは、変速前における手動変速機30の入力軸32の回転数に応じて手動変速機30の最低ギヤ段のギヤ比、または最高ギヤ段のギヤ比と、車速とに基づいて算出してもよい。
つまり、手動変速機30は、各変速ギヤによってギヤ比が異なるため、車速が同じ場合における入力軸32の回転数は、ギヤ段によって異なる。一方、変速時におけるシンクロ機構の負荷は、変速時におけるドライブギヤ40と入力軸32等との回転速度の差が大きくなるに従って増加する。このため、現在の入力軸32の回転数が、現在の車速で1速が選択されている場合の回転数に近い場合には、シンクロ機構の負荷は、1速から離れるギヤ段が選択されるに従って大きくなり、最高ギヤ段である5速が選択された場合に最も大きくなる。
このように、シンクロ機構の負荷は、現在の車速の場合におけるいずれかの変速ギヤが選択されている場合における入力軸32の回転数と、現在の入力軸32の回転数との相対関係によって変化し、最低ギヤ段、または最高ギヤ段のいずれかに変速される場合における負荷が、現在の走行状態におけるシンクロ機構の負荷の最大値になる。従って、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する場合は、現在の入力軸32の回転数と、最低ギヤ段である1速が選択された場合における入力軸32の回転数、または、最高ギヤ段である5速が選択された場合における入力軸32の回転数とに基づいて算出してもよい。
具体的には、(現在の入力軸32の回転数>1速選択時の入力軸32の回転数)と、(1速選択時の入力軸32の回転数≧現在の入力軸32の回転数>5速選択時の入力軸32の回転数)と、(5速選択時の入力軸32の回転数≧現在の入力軸32の回転数)とで、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する際における算出方法が異なる。
まず、(現在の入力軸32の回転数>1速選択時の入力軸32の回転数)を満たす場合から説明すると、この場合は、(シンクロ動作最大回転数Ndiff=現在の入力軸32の回転数−5速選択時の入力軸32の回転数)を演算することにより算出する。つまり、現在の入力軸32の回転数が、1速選択時の入力軸32の回転数よりも高い場合には、現在の入力軸32の回転数は、5速選択時の入力軸32の回転数と最も離れ、5速を選択する場合に、ドライブギヤ40と入力軸32等との回転速度の差が大きくなる。このため、5速を選択する場合に、シンクロ機構の負荷が最も大きくなる。従って、この場合は、現在の入力軸32の回転数から5速選択時の入力軸32の回転数を減算することにより算出した双方の回転数の差が、シンクロ機構の負荷が最も大きくなる回転数、即ち、シンクロ動作最大回転数Ndiffになる。
次に、(5速選択時の入力軸32の回転数≧現在の入力軸32の回転数)を満たす場合について説明すると、この場合は、(シンクロ動作最大回転数Ndiff=1速選択時の入力軸32の回転数−現在の入力軸32の回転数)を演算することにより算出する。つまり、現在の入力軸32の回転数が、5速選択時の入力軸32の回転数以下の場合には、現在の入力軸32の回転数は、1速選択時の入力軸32の回転数と最も離れ、1速を選択する場合に、ドライブギヤ40と入力軸32等との回転速度の差が大きくなる。このため、1速を選択する場合に、シンクロ機構の負荷が最も大きくなる。従って、この場合は、5速選択時の入力軸32の回転数から現在の入力軸32の回転数を減算することにより算出した双方の回転数の差が、シンクロ動作最大回転数Ndiffになる。
最後に、(1速選択時の入力軸32の回転数≧現在の入力軸32の回転数>5速選択時の入力軸32の回転数)を満たす場合について説明すると、この場合は、現在の入力軸32の回転数は、1速選択時の入力軸32の回転数と、5速選択時の入力軸32の回転数との間の回転数になるため、双方の回転数の間における現在の入力軸32の回転数の位置によって、シンクロ動作最大回転数Ndiffの算出方法が異なる。つまり、現在の入力軸32の回転数と、1速または5速に変速した場合における入力軸32の回転数との差が大きい方を、シンクロ機構の負荷が最も大きくなる回転数であるシンクロ動作最大回転数Ndiffとして算出する。具体的には、(1速選択時の入力軸32の回転数−現在の入力軸32の回転数)と、(現在の入力軸32の回転数−5速選択時の入力軸32の回転数)との演算結果のうち、大きい方の値をシンクロ動作最大回転数Ndiffとする。
これらのように、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する場合は、最低ギヤ段のギヤ比と車速とに基づく入力軸32の回転数である最低ギヤ段の選択時の入力軸32の回転数と、最高ギヤ段のギヤ比と車速とに基づく入力軸32の回転数である最高ギヤ段の選択時の入力軸32の回転数と、現在の入力軸32の回転数とに基づいて算出してもよい。これにより、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する際に、車両1の走行状態に関わらず、より確実に、現在の走行状態においてシンクロ機構の負荷が最も大きくなる回転数を算出することができる。
このため、手動変速機30の変速を行う場合に、より確実に、シンクロ機構の作動状態が最も厳しくなる状態を考慮して、モータジェネレータ10と入力軸32との接続を切り替えることができる。従って、車両1の走行状態に関わらず、より確実に、シンクロ機構の仕事量が大きくなり過ぎることを抑制したり、シンクロ機構の仕事量が大きくなり過ぎない範囲内でモータジェネレータ10と入力軸32との接続を維持したまま変速を行うことにより、モータジェネレータ10で発生する動力を駆動力として用いたりすることができる。この結果、車両1の走行状態に関わらず、より確実に、シンクロ機構への負担の軽減と駆動力の確保とを両立することができる。
また、シンクロ機構の負担を判断する場合には、最低ギヤ段と最高ギヤ段以外の状態に基づいて判断してもよい。例えば、シンクロ機構は、各ギヤ段に設けられるシンクロ機構によって耐久性が異なる場合があるため、複数のシンクロ機構のうち、現在の車速において最も条件が厳しいシンクロ機構が設けられるギヤ段を、シンクロ動作最大回転数Ndiffを算出する際におけるギヤ段としてもよい。即ち、ギヤ段ごとにシンクロ許容差回転を設定し、現在の車速において、シンクロ許容差回転を基準とした場合におけるシンクロ動作回転数が最も大きくなるギヤ段のシンクロ動作回転数を、シンクロ動作最大回転数Ndiffとしてもよい。これにより、このように算出したシンクロ動作最大回転数Ndiffが、そのギヤ段のシンクロ許容差回転以下であるか否かに基づいてモータジェネレータ10と入力軸32との接続を切り替えることにより、シンクロ機構の耐久性がギヤ段ごとに異なる場合でも、シンクロ機構を適切に保護することができる。この結果、ギヤ段ごとのシンクロ機構の構成に関わらず、より確実に、シンクロ機構への負担の軽減することができる。
また、上述した変速制御装置2では、モータジェネレータ10は、MG側クラッチ22の係合と開放とを切り替えることにより、手動変速機30の入力軸32とのみ接続と切り離しが可能に設けられているが、モータジェネレータ10は、出力軸34に対しても接続可能に設けられていてもよい。モータジェネレータ10が、車両1の走行状態に応じて出力軸34に接続可能に設けられている場合でも、変速時に入力軸32に接続される機会がある場合には、シンクロ機構の負荷に応じて変速時のモータジェネレータ10と入力軸32との接続状態を切り替えてもよい。この場合、変速時にシンクロ動作最大回転数Ndiffがシンクロ許容差回転よりも大きい場合は、モータジェネレータ10を手動変速機30の出力軸34に接続してもよい。手動変速機30の変速時に、シンクロ動作最大回転数Ndiffが許容範囲を超える場合には、モータジェネレータ10を入力軸32から切り離すことができれば、変速時におけるシンクロ機構の仕事量に影響する、入力軸32の回転時の慣性モーメントを低減することができ、シンクロ機構の負担を軽減することができる。
また、上述した変速制御装置2では、手動変速機30は前進5段の変速ギヤが5速の変速機が用いられているが、変速ギヤの段数は5段以外でもよい。手動変速機30は、運転者が手動で変速を行い、変速時に回転速度の同調を行うシンクロ機構が設けられているものであれば、その形態は問わない。
また、上述した変速制御装置2では、選択されているギヤ段の検出はギヤポジションセンサ99によって行っているが、この検出はギヤポジションセンサ99以外を用いて行ってもよい。例えば、手動変速機30の入力軸32の回転数と車速とが分かれば変速比を算出することができ、この変速比より変速ギヤが分かるので、選択されているギヤ段は、入力軸回転数センサ36と車速センサ38との検出結果より推定してもよい。
また、上述した変速制御装置2では、モータジェネレータ10は、車両1の走行時における駆動力として用いる動力を発生したり、バッテリ14に蓄電する電気の発電を行ったりしているが、モータジェネレータ10は、これ以外の用途に用いてもよい。例えば、手動変速機30の変速を行う場合に、手動変速機30の入力軸32の回転数が、現在の車速において手動変速機30の最高ギヤ段を選択した場合における回転数以下にならないように、入力軸32の回転数をモータジェネレータ10で維持してもよい。これにより、変速時に入力軸32の回転数が低くなり過ぎることを防ぐことができる。反対に、変速時における手動変速機30の入力軸32の回転数が、現在の車速において手動変速機30の最低ギヤ段を選択した場合における回転数以上になった場合には、入力軸32の回転数をモータジェネレータ10で低下させてもよい。これにより、変速時に入力軸32の回転数が高くなり過ぎることを防ぐことができる。これらのように、モータジェネレータ10を、手動変速機30の変速時における入力軸32の回転数の調節に用いることにより、より確実に、シンクロ機構を保護することができる。