JP5778344B2 - 力発生機構 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば鉄道車両、自動車等の車両のダンパ装置等に好適に用いられる力発生機構に関する。
一般に、鉄道車両、自動車等の車両には、ばね上(車体側)とばね下(台車側、車軸側)との間に減衰力調整式緩衝器等のダンパ装置が設けられている。このようなダンパ装置として、油圧ダンパと電磁力ダンパとを並列に設ける構成としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−252203号公報
特許文献1による従来技術によれば、油圧ダンパと電磁力ダンパとを並列に設けている。一方、運転状況等に応じて、油圧ダンパ(減衰ダンパ)と電磁力ダンパ(電動式ダンパ)との何れかを単独で用いることや両者(減衰ダンパと電動式ダンパ)を並列で用いることができることが望ましい。
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、状況に応じて所望の力を発生させることができる力発生機構を提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明は、相対運動する一方の部材と他方の部材の2部材間に設けられる力発生機構であって、該力発生機構は、複数の直動型の力発生手段からなり、一と他の前記力発生手段との間には、該一と他の前記力発生手段を力学的に直列接続と並列接続に切換え可能な切換手段が設けられたことを特徴としている。
本発明によれば、状況に応じて所望の力を発生させることができる。
本発明の第1の実施の形態による力発生機構が搭載された鉄道車両を示す断面図である。 台車、力発生機構等を示す図1中の矢示II−II方向からみた断面図である。 力発生機構の切換手段等を模式的に示す斜視図である。 台車、力発生機構等を模式的に示す斜視図である。 力発生機構を切換状態(運転モード)毎に示す図2と同方向から見た模式的な平面図である。 力発生機構の動作原理を説明するために力発生機構を切換状態毎に示す模式的な説明図である。 力発生機構の動きを説明するために力発生機構をその状態を表す変数と共に示す模式的な説明図である。 図1中のコントローラを示すブロック図である。 図1中のコントローラによる制御内容を示す流れ図である。 図9中の通常運転モードの処理の内容を示す流れ図である。 図9中のセーフモード1の処理の内容を示す流れ図である。 図9中のセーフモード2の処理の内容を示す流れ図である。 図10中の不調判定処理の内容を示す流れ図である。 図11中の電動式ダンパ固着判定処理の内容を示す流れ図である。 本発明の第2の実施の形態による力発生機構を示す横断面図である。 力発生機構の原理を説明するために力発生機構を切換状態毎に示す模式的な説明図である。 本発明の第3の実施の形態による力発生機構を示す横断面図である。 本発明の第1の変形例による力発生機構を示す図6と同方向からみた模式図である。 本発明の第2の変形例による力発生機構を示す図16と同方向からみた模式図である。 本発明の第3の変形例による力発生機構を示す図6と同方向からみた模式図である。 本発明の第4の変形例による力発生機構を示す図16と同方向からみた模式図である。 本発明の第5の変形例による力発生機構を示す図6と同方向からみた模式図である。 本発明の第6の変形例による力発生機構を示す図16と同方向からみた模式図である。 本発明の第7の変形例による力発生機構を示す図16と同方向からみた模式図である。 本発明の第8の変形例による力発生機構を示す図16と同方向からみた模式図である。
以下、本発明の実施の形態による力発生機構を、例えば鉄道車両に搭載されるダンパ装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図14は本発明の第1の実施の形態を示している。図において、鉄道車両1は、例えば乗客、乗員等が乗車する車体2と、該車体2の下側に設けられ車輪3を介して2本のレール4に案内される台車5とにより大略構成されている。なお、図1および図4では、車体2の前,後方向の一側に設けられた1台の台車5のみを示しているが、台車5は、車体2の前,後方向の両側にそれぞれ設けられるものである。
ここで、車体2の下部、より具体的には、車体2の下面側で各台車5と上,下方向に対向する部位には、該車体2の下面から下側に突出するように中心ピン6が固設されている。この中心ピン6には、後述するダンパ装置12を構成するギヤ装置15のピニオン19が、転がり軸受等の軸受7を介して取付けられている。
一方、台車5は、左,右方向に離間して設けられた左側梁5A,右側梁5Bと、これら左,右の側梁5A,5Bを連結する前横梁5C、中央前横梁5D、中央後横梁5E、後横梁5Fとにより大略構成されている。そして、左,右の側梁5A,5Bは、車輪3が取付けられた車軸8を、軸受装置9を介して回転可能に支持している。
また、車体2に設けられた中心ピン6と台車5の中央横梁5D,5Eとの間には、これら車体2と台車5との間で前,後方向に加わる牽引力や制動力を伝達する牽引装置(図示せず)が設けられている。牽引装置は、例えば上からみてI字状またはZ字状のリンク機構により構成されている。そして、牽引装置は、台車5に対して車体2が上,下方向、左,右方向、ヨー(台車旋回)方向、およびピッチング方向に相対変位する(動く)ことを許容しつつ、これら車体2と台車5との間で牽引力や制動力を伝達できるように、車体2の中心ピン6と台車5の中央横梁5D,5Eとの間を連結している。
また、台車5の中央前横梁5Dには、左,右方向の一側(図示の例では右側)寄りに位置して取付ブラケット5Gが設けられている。この取付ブラケット5Gには、後述するダンパ装置12を構成する電動式ダンパ14(の固定子14A)がピン付ゴムブッシュ14Dを介して揺動可能に取付けられている。一方、中央後横梁5Eには、左,右方向の他側(図示の例では左側)寄りに位置して取付ブラケット5Hが設けられている。この取付ブラケット5Hには、ダンパ装置12を構成する減衰ダンパ13(のシリンダ13A)がピン付ゴムブッシュ13Dを介して揺動可能に取付けられている。
ばね上となる車体2とばね下となる台車5との間には、サスペンション装置10が設けられている。サスペンション装置10は、台車5に対して車体2を上,下方向および左,右方向の揺動を可能に支持する空気ばね11と、車体2(に設けられた中心ピン6)と台車5(の中央横梁5D,5E)との間に設けられた力発生機構としてのダンパ装置12とにより大略構成されている。ここで、空気ばね11は、車体2と台車5との間に左,右方向に離間して一対設けられている。台車5は、車体2の前,後方向の両側にそれぞれ設けられているため、一車両当たり(一車体当たり)、合計2個のサスペンション装置10、即ち、合計4個の空気ばね11と2個のダンパ装置12を有する構成となっている。
次に、車体2と台車5との間で制振を行うダンパ装置12について説明する。
力発生機構としてのダンパ装置12は、相対運動する一方の部材としての車体2と他方の部材としての台車5との2部材間に設けられている。ダンパ装置12は、車体2と台車5の振動(相対変位)を抑制すべく、両者間で力(推力、減衰力)を(能動的ないし受動的に)発生するものである。より具体的には、ダンパ装置12は、台車5に対する車体2の左,右方向の振動に対し、この振動を低減させる力(推力、減衰力)を発生することにより、車体2の左,右方向の振動を抑制する左右動ダンパ装置として構成されている。
ここで、ダンパ装置12は、複数の直動型の力発生手段、具体的には、一の力発生手段としての減衰ダンパ13と、他の力発生手段としての電動式ダンパ14とからなり、これら減衰ダンパ13と電動式ダンパ14との間には、切換手段としてのギヤ装置15が設けられている。換言すれば、ダンパ装置12は、力発生手段としての減衰ダンパ13と、力発生手段としての電動式ダンパ14と、切換手段としてのギヤ装置15とにより大略構成されている。
一の力発生手段としての減衰ダンパ13は、シリンダ13Aからロッド13Bが突出し、該ロッド13Bの進退の運動エネルギを熱エネルギに変換することで減衰力を発生するものである。具体的には、減衰ダンパ13は、例えば、作動油等の作動流体(の粘性抵抗)により減衰力を発生する油圧ダンパ(油圧緩衝器)等の流体圧ダンパ(流体圧緩衝器)、摺動面同士が摺動するときの摩擦抵抗により減衰力を発生する摩擦ダンパ(摩擦緩衝器)等により構成している。なお、図3〜図6(および後述する図16、図18〜図25)では、減衰ダンパ13と後述する電動式ダンパ14とを区別し易くするために、減衰ダンパ13には、代表例である油圧ダンパを意味する「H−DMP」の文字を付している。
減衰ダンパ13は、作動流体が封入された筒状のシリンダ13Aと、該シリンダ13A内に変位可能に収納されたピストン(図示せず)と、一端側(図1〜図5の右端側)がシリンダ13Aの一端から突出すると共に他端側(図1〜図5の左端側)がピストンに固着されるロッド13Bと、ピストンを含むシリンダ13A内に設けられ作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生機構(図示せず)とにより大略構成されている。
減衰ダンパ13のボトム側となるシリンダ13Aの基端(図1〜図5の左端)には、該シリンダ13Aの基端を台車5に取付けるための取付アイ13Cが設けられている。この場合、取付アイ13Cの内側には、ピン付ゴムブッシュ13Dが固着され、該ピン付ゴムブッシュ13Dの取付ピンが台車5の取付ブラケット5Hにボルト等を用いて固定されている。
一方、減衰ダンパ13のロッド側となるロッド13Bの先端(図1〜図5の右端)には、該ロッド13Bの先端を後述するラック18に取付けるための取付アイ13Eが設けられている。この場合、取付アイ13Eの内側には、ピン付ゴムブッシュ13Fが固着され、該ピン付ゴムブッシュ13Fの取付ピンがラック18のダンパ取付部18Cにボルト等を用いて固定されている。ピン付ゴムブッシュ13D、13Fは、ゴムブッシュが弾性変形することにより、車体2のロールや台車5のヨーに伴う力を吸収するものである。
また、減衰ダンパ13(または、減衰ダンパ13のロッド13Bと台車5との間)には、シリンダ13Aとロッド13Bとの相対移動(シリンダ13Aに対するロッド13Bの進退)を阻止(禁止)する減衰ダンパロック装置13G(図6および図8参照)が設けられている。この減衰ダンパロック装置13Gは、シリンダ13Aとロッド13Bとの相対変位に対する抵抗力を可変に調整するもので、抵抗力を最大にしたときに、シリンダ13Aとロッド13Bとの相対移動が阻止(ロック)される。
このような減衰ダンパロック装置13Gは、抵抗力を最大にする(ロックする)ための構成として、例えば、シリンダ13A内での作動流体の流れを阻止(遮断)する構成、シリンダ13Aに対してロッド13Bを機械的に固定する構成、台車5に対してロッド13Bを機械的に固定する構成等を採用することができる。即ち、減衰ダンパロック装置13Gは、摩擦によるもの、ピン(係合)によるもの、油圧によるもの等、必要な抵抗力を得られるものであれば、各種の構成(ロック機構、ブレーキ機構)を採用することができる。
図8に示すように、減衰ダンパロック装置13Gは後述するコントローラ23に接続され、該コントローラ23からの指令信号(制御信号)によってロック状態と非ロック状態(解除状態)とに切換えられる。例えば、減衰ダンパロック装置13Gは、後述する図5および図6の(B)に示す通常運転モードのときに、コントローラ23からの信号に応じてロック状態に切換えられる。この場合は、後述の電動式ダンパ14を単独で用いる運転状態(運転モード)を実現することができる。
他の力発生手段としての電動式ダンパ14は、固定子14Aと該固定子14Aに対して直線方向に相対移動する可動子14Bとからなるものである。具体的には、電動式ダンパ14は、電力の供給(通電)に基づいて力を発生する電動アクチュエータ、例えば、電機子(のコイル)と永久磁石との間の吸引、反発力に基づいて直線方向の推力を発生させる3相リニア同期モータ等のリニアモータ(リニアアクチュエータ)により構成している。なお、図3〜図6(および後述する図16、図18〜図25)では、電動式ダンパ14と減衰ダンパ13とを区別し易くするために、電動式ダンパ14には、代表例である電動アクチュエータを意味する「ACTR」の文字を付している。
電動式ダンパ14は、複数のコイルが設けられた電機子を有する筒状の固定子14Aと、軸方向に並んで配置された複数の円筒状の永久磁石を有する可動子14Bとにより大略構成されている。電機子のコイルに電流を流すと、各コイルに流れる電流と永久磁石との間に電磁力が生じ、この電磁力によって推力(減衰力)が発生する。この推力は、後述するコントローラ23(図8参照)から出力される推力指令値(制御信号、指令電流)に応じて調節される。
固定子14Aの基端(図1〜図5の右端)には、該固定子14Aの基端を台車5の取付ブラケット5Gに取付けるための取付アイ14Cが設けられている。この場合、取付アイ14Cの内側には、ピン付ゴムブッシュ14Dが固着され、該ピン付ゴムブッシュ14Dの取付ピンが台車5の取付ブラケット5Gにボルト等を用いて固定されている。
一方、電動式ダンパ14の可動子14Bの先端(図1〜図5の左端)には、該可動子14Bの先端を後述するラック17に取付けるための取付アイ14Eが設けられている。この場合、取付アイ14Eの内側には、ピン付ゴムブッシュ14Fが固着され、該ピン付ゴムブッシュ14Fの取付ピンがラック17のダンパ取付部17Cにボルト等を用いて固定されている。ピン付ゴムブッシュ14D、14Fは、ゴムブッシュが弾性変形することにより、車体2のロールや台車5のヨーに伴う力を吸収するものである。
なお、電動式ダンパ14(または、電動式ダンパ14の可動子14Bと台車5との間)には、必要に応じて、固定子14Aと可動子14Bとの相対移動(固定子14Aに対する可動子14Bの進退)を阻止(禁止)する電動式ダンパロック装置を設けることができる。この場合は、電動式ダンパロック装置は、コントローラ23からの指令(信号)に応じてロック状態を実現できるものとして構成することができる。これにより、電動式ダンパロック装置は、後述する図5および図6の(C)に示すセーフモード2の状態、即ち、電動式ダンパ14の固定子14Aと可動子14Bとが固着(固渋)する状態と同等の状態を、コントローラ23の指令により作り出すことができる。換言すれば、電動式ダンパロック装置を設けた場合には、コントローラ23の指令により電動式ダンパ14をロック(可動子14Bを固定)することにより、減衰ダンパ13を単独で用いる運転状態(運転モード)を作り出すことができる。
切換手段としてのギヤ装置15は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14との間に設けられている。ギヤ装置15は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14を力学的に直列接続と並列接続に切換え可能にするものである。このために、ギヤ装置15は、ギヤケース16と、2本のラック17,18と、ピニオン19と、ピニオンブレーキ装置20とにより大略構成されている。
ギヤケース16は、略直方体状で中空の箱体として形成され、中央部に中心ピン6を挿通(貫通)した状態で車体2の下側に取付けられている。ギヤケース16は、車体2の下面に対向する上板部16A(図1参照)と、ラック17,18およびピニオン19を間に挟んで上板部16Aと上,下方向に対向する下板部16Bと、これら上板部16Aと下板部16Bとの間で四方を囲む前板部16C、後板部16D、左板部16E、右板部16Fとにより構成されている。
上板部16Aと下板部16Bには、中央位置にそれぞれ中心ピン6が挿通される開口(図示省略)が設けられている。上板部16Aと下板部16Bは、その開口に中心ピン6を挿通した状態で、車体2側である中心ピン6に固定される。前板部16Cには、ラック17の腕部17Bが挿通される開口16C1が設けられ、後板部16Dには、ラック18の腕部18Bが挿通される開口16D1が設けられている。左板部16Eと右板部16Fには、ラック17,18が変位可能に挿通される逃げ穴16E1,16F1がそれぞれ設けられている。
ギヤケース16内には、2本のラック(ラックギヤ)17,18がピニオン19を車体2の前,後方向で挟むように配置されている。これら2本のラック17,18は、図示しない軸受、摺動部材等を介してギヤケース16内に左,右方向の変位を可能に支持されている。ここで、ギヤ装置15を構成する1対のラック17,18とピニオン19との3部材は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14と車体2との3者にそれぞれ設けられる(取付けられる)もので、本実施の形態では、減衰ダンパ13のロッド13Bと電動式ダンパ14の可動子14Bとにそれぞれラック17,18を設けると共に、車体2にピニオン19を設ける構成となっている。
前側のラック17は、左,右方向に伸びピニオン19と噛合する歯部(ラック部)17Aと、該歯部17Aの左,右方向の中央位置から前方に延びる腕部17Bとにより大略構成されている。腕部17Bは、先端側がギヤケース16の開口16C1から突出すると共に、その先端にはダンパ取付部17Cが設けられている。このダンパ取付部17Cには、電動式ダンパ14の可動子14Bの取付アイ14Eがピン付ゴムブッシュ14Fを介して取付けられている。
後側のラック18は、左,右方向に伸びピニオン19と噛合する歯部(ラック部)18Aと、該歯部18Aの左,右方向の中央位置から後方に延びる腕部18Bとにより大略構成されている。腕部18Cは、先端側がギヤケース16の開口16D1から突出すると共に、その先端にはダンパ取付部18Cが設けられている。このダンパ取付部18Cには、減衰ダンパ13のロッド13Bの取付アイ13Eがピン付ゴムブッシュ13Fを介して取付けられている。
ピニオン(ピニオンギヤ)19は、外周側がラック17,18に噛合する歯部19Aとなった円環状部材として形成され、台車5の回転中心(旋回中心)と同心に配置されている。この場合、ピニオン19は、車体2から下方に延びる中心ピン6を囲むように設けられている。より具体的には、ピニオン19は、中心ピン6に転がり軸受7を介して該中心ピン6に対する回転を可能に取付けられている。そして、ピニオン19(の歯部19A)は、前,後方向に180度離間した2箇所位置で各ラック17,18(の歯部17A,18B)と噛合している。
従って、後述するピニオンブレーキ装置20が解除されているとき(ピニオン19の回転が自由のとき)は、ラック17,18が左,右方向に変位すると、この変位に伴ってピニオン19は中心ピン6の周囲を回転する。この場合に、例えば、減衰ダンパロック装置13Gがロック状態、即ち、シリンダ13Aに対してロッド13Bが固定されているときは、ラック18が台車5に対して固定される。このため、電動式ダンパ14の推力に基づいてラック17が左,右方向に変位すると、ピニオン19が中心ピン6の周囲を回転しつつ左,右方向に変位する。なお、減衰ダンパ13、電動式ダンパ14、ラック17,18、ピニオン19の詳細な動きは後述する。
ラック17,18およびピニオン19と共にギヤ装置15を構成するピニオンブレーキ装置20(図2および図8参照)は、例えばピニオン19と対向してギヤケース16内に設けられている。ピニオンブレーキ装置20は、ピニオン19のギヤの摩擦力を可変とするものである。具体的には、ピニオンブレーキ装置20は、摩擦力を最大にしたときに、ピニオン19が中心ピン6(車体2)に対して回転するのを阻止(禁止)し、摩擦力を最小(0、解除)にしたときに、中心ピン6(車体2)に対するピニオン19の回転を許す(自由にする)ものである。
ピニオンブレーキ装置20は、例えば、ピニオン19に対して摩擦係合する係合部(図示せず)を備えた構成とすることができる。即ち、摩擦力が最大となる制動状態(ロック状態)のときには、係合部をピニオン19に押付ける(係合させる)ことによりピニオン19の回転を阻止し、摩擦力が最小となる非制動状態(解除状態)のときは、係合部をピニオン19から退避さる(非係合状態とする)ことによりピニオン19の回転を許容する構成とすることができる。
なお、ピニオンブレーキ装置20は、このような摩擦係合による構成に限るものではない。即ち、ピニオンブレーキ装置20は、摩擦によるもの、ピン(係合)によるもの、油圧によるもの等、必要な抵抗力(摩擦力)を得られるものであれば、各種の構成(ブレーキ機構、ロック機構)を採用することができる。
図8に示すように、ピニオンブレーキ装置20は、後述するコントローラ23に接続され、該コントローラ23からの指令信号(制御信号)によって制動状態(ロック状態)と非制動状態(解除状態)とに切換えられる。例えば、ピニオンブレーキ装置20は、後述する図5および図6の(D)に示すセーフモード1のときに、コントローラ23からの指令(信号)により制動状態(ロック状態)に切換えられる。この場合は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とが並列接続となり、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14との両方を用いる運転状態(運転モード)を実現することができる。
一方、図5および図6の(B)に示す通常運転モード、図5および図6の(C)に示すセーフモード2のときは、ピニオンブレーキ装置20は、コントローラ23からの指令(信号)により非制動状態(解除状態)となり、中心ピン6を中心とするピニオン19の回転が許される。この場合は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とが力学的に直列接続となる。そして、このような直列接続のときに、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とのうちの一方のダンパを固定(伸縮を禁止)することにより、他方のダンパを単独で用いる運転状態(運転モード)を実現することができる。例えば、減衰ダンパロック装置13Gをロック状態にすることにより、電動式ダンパ14を単独で用いる運転状態、即ち、図5および図6の(B)に示す通常運転モードを実現することができる。
次に、ダンパ装置12の動作原理を、図6を用いて説明する。図6では、ダンパ装置12の各構成部材の動きを分かり易くするために、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とを伸縮方向が同じになるように配置している。また、減衰ダンパ13のロッド13Bと電動式ダンパ14の可動子14Bは、ラック17,18(歯部17A,18A)が互いに向き合うように直接形成されたものとして模式的に表している。さらに、図6では、図1〜図5の中心ピン6に対応する部材、即ち、車体2とピニオン19とを接続(締結)する部材(車体締結部材)を棒状の部材(ロッド部材)として表している。
なお、図6中の(B)の黒塗り三角形X1は、減衰ダンパロック装置13Gにより、ロッド13Bがロック(固定)されていることを表している。図6中の(C)の黒塗り三角形X2は、電動式ダンパ14の不調により、または、必要に応じて設ける電動式ダンパロック装置により、可動子14Bがロック(固着、固定)されていることを表している。図6中の(D)の黒塗り三角形X3は、ピニオンブレーキ装置20によりピニオン19の回転が阻止(ロック)されていることを表している。
図6中の(A)は、中立状態(中立位置、初期位置)を示している。この場合は、例えば、減衰ダンパロック装置13G、ピニオンブレーキ装置20、必要に応じて設ける電動式ダンパロック装置のロックは全て解除されている(または全てロックされている)状態に対応する。
図6中の(B)は、通常運転モード、即ち、減衰ダンパロック装置13Gがロック(固定)されると共に、ピニオンブレーキ装置20(および必要に応じて設ける電動式ダンパロック装置)のロックが解除されるアクティブ動作時を表している。この状態では、減衰ダンパ13のシリンダ13Aとロッド13Bとの相対変位が制限(阻止)され(ロッド13Bが台車5に対して固定され)、電動式ダンパ14の固定子14Aと可動子14Bの相対変位、および、ピニオン19の回転は制限(阻止)されない。
この場合は、車体2側からの入力により中心ピン6(ピニオン19)が車体2と共に車体2の左,右方向(図6の上,下方向)に変位(振動)すると、減衰ダンパ13のロッド13Bの変位が制限されているから、該ロッド13Bのラック18(歯部18A)に噛み合ったピニオン19は、この噛み合いに基づいてロッド13Bのラック18(歯部18A)に沿って回転しつつ車体2の左,右方向(図6の上,下方向)に変位する。これと共に、ピニオン19は、電動式ダンパ14の固定子14Aのラック17(歯部17A)にも噛み合っているため、該固定子14Aは、ピニオン19の左,右方向(図6の上,下方向)の変位に伴って、ピニオン19の変位方向と同方向に該ピニオン19の2倍の変位量で変位する。
このとき、減衰ダンパ13はロックされており、減衰ダンパ13が電動式ダンパ14の動きを打ち消すよう作用しない(電動式ダンパ14の動きを阻害しない)。このため、電動式ダンパ14の発生力は、効率よく中心ピン6(車体2)に伝達される。また、ピニオン19とラック17,18との間で減速機構(減速機)が構成されているため、中心ピン6(車体2)には、電動式ダンパ14の発生力の2倍の力が伝達される。
図6中の(C)は、セーフモード2、即ち、減衰ダンパロック装置13Gおよびピニオンブレーキ装置20のロックが解除されると共に、電動式ダンパ14の不調により、または必要に応じて設ける電動式ダンパロック装置により電動式ダンパ14がロック(固着、固定)されるパッシブ動作時を示している。この状態では、電動式ダンパ14の固定子14Aと可動子14Bの相対変位が制限(阻止)され、減衰ダンパ13のシリンダ13Aとロッド13Bとの相対変位、ピニオン19の回転は制限(阻止)されない。
この場合、車体2側からの入力により中心ピン6(ピニオン19)が車体2と共に車体2の左,右方向(図6の上,下方向)に変位(振動)すると、電動式ダンパ14の可動子14Bの変位が制限されているから、該可動子14Bのラック17(歯部17A)に噛み合ったピニオン19は、この噛み合いに基づいて可動子14Bのラック17(歯部17A)に沿って回転しつつ車体2の左,右方向(図6の上,下方向)に変位する。これと共に、ピニオン19は、減衰ダンパ13のロッド13Bのラック18(歯部18A)にも噛み合っているため、該ロッド13Bは、ピニオン19の左,右方向(図6の上,下方向)の変位に伴って、ピニオン19の変位方向と同方向に該ピニオン19の2倍の変位量で変位する。
このとき、電動式ダンパ14は仕事をしていないため、中心ピン6(車体2)の動き(=ピニオン19の動き)は、減衰ダンパ13により吸収される。この場合、ピニオン19とラック17,18との間で減速機構(減速機)が構成されているため、中心ピン6(車体2)からの力は、減衰ダンパ13に半分の力で伝達される。
図6中の(D)は、セーフモード1、即ち、減衰ダンパロック装置13G(および必要に応じて設ける電動式ダンパロック装置)のロックが解除されると共に、ピニオンブレーキ装置20がロックされる並列動作時を示している。この状態では、ピニオン19の回転が制限(阻止)され、電動式ダンパ14の固定子14Aと可動子14Bの相対変位、および、減衰ダンパ13のシリンダ13Aとロッド13Bとの相対変位は制限されない。
この場合、車体2側からの入力により中心ピン6(ピニオン19)が車体2と共に車体2の左,右方向(図6の上,下方向)に変位(振動)すると、電動式ダンパの可動子14Bのラック17(歯部17A)と減衰ダンパ13のロッド13Bのラック18(歯部18A)とがピニオン19と噛合しており、かつ、ピニオン19の回転が制限(阻止)されているため、電動式ダンパ14の可動子14Bと減衰ダンパ13のロッド13Bは、ピニオン19の左,右方向(図6の上,下方向)の変位に伴って、ピニオン19の変位方向と同方向に該ピニオン19と同じ変位量で変位する。
次に、ダンパ装置12の動きを、図7で定義する変数を用いて説明する。なお、図7では、簡略化のために、電動式ダンパ14を減衰係数C1の流体圧緩衝器として表現し、減衰ダンパ13を減衰係数C2の流体圧緩衝器として表現している。また、図7でも、図6と同様に、図1〜図5の中心ピン6に相当する部材、即ち、車体2とピニオン19とを接続(締結)する部材(車体締結部材)を棒状の部材(ロッド部材)として表している。
ここで、図7中の各変数(パラメータ)は、下記の通りである。なお、各変数の方向は図7の各矢印の方向に従うものとする。
1:電動式ダンパ14の可動子14Bの移動速度[m/s]
1:電動式ダンパ14の可動子14Bから発生する力[N]
2:減衰ダンパ13のロッド13Bの移動速度[m/s]
2:減衰ダンパ13のロッド13Bから発生する力[N]
ω:ピニオン19の角速度[rad/s]
r:ピニオン19の半径[m]
r:ピニオン19の制動トルク[N・m]
r:ピニオン19とラック17,18との噛合部(接触点)での制動力[N]
r:ピニオン19の等価回転減衰係数[N・m/rad/s]
v:ロッド部材(中心ピン6、車体2)の移動速度[m/s]
F:ロッド部材(中心ピン6、車体2)から発生する力[N]
ここで、電動式ダンパ14の可動子14B、減衰ダンパ13のロッド13B、中心ピン4(車体2)の速度と力は、下記の数1式、数2式の関係が成立する。
Figure 0005778344
Figure 0005778344
ピニオン19の回転方向に対しては、下記の数3式、数4式の関係が成立する。
Figure 0005778344
Figure 0005778344
数3式、数4式より、ピニオン19とラック17,18との噛合部(接触点)での制動力Frは、ピニオン19を回転ダンパと見立てて下記の数5式で表現される。
Figure 0005778344
ここで、ピニオン19の回転方向の等価減衰係数をCrと定義したのに対し、直動方向の等価減衰係数をC0[N/m/s]と定義すると、下記の数6式の関係が成立する。
Figure 0005778344
この場合、ピニオン19とラック17,18との噛合部(接触点)での制動力Frは、直動方向の変数のみを用いて下記の数7式のように表現される。
Figure 0005778344
また、電動式ダンパ14の発生力(推力)、減衰ダンパ13の発生力(減衰力、吸収力)は、力のつり合いの式より、下記の数8式、数9式のように表現される。
Figure 0005778344
Figure 0005778344
これを用いると、電動式ダンパ14、減衰ダンパ13、ピニオン19の仕事は、エネルギ保存側にて、下記の数10式のように表現される。
Figure 0005778344
ここで、数10式の左辺は、次のように整理できる。
Figure 0005778344
一方、数10式の右辺は、次のように整理できる。
Figure 0005778344
左辺=右辺、即ち、数11式=数12式より、次のように整理できる。
Figure 0005778344
よって、数13式が成立するとき、v1、vには、次の数14式または数15式の関係が成立する。
Figure 0005778344
Figure 0005778344
数14式の場合、ピニオン19は非回転で、下記の数16式となるから、電動式ダンパ14と減衰ダンパ13は並列接続となる。即ち、ダンパ装置12は、並列機構となる。
Figure 0005778344
数15式の場合、ピニオン19は回転し、下記の数17式となる。
Figure 0005778344
数15式より、v1は数18式、vは数19式となる。
Figure 0005778344
Figure 0005778344
ここで、エネルギ保存側の式、即ち、数11式と数12式より、数20式のように整理できる。
Figure 0005778344
ここで、Cを合成減衰係数として下記の数21式で表すと、Fvは数22式で表せる。
Figure 0005778344
Figure 0005778344
合成減衰係数Cは、本実施の形態のダンパ装置12の見かけ上の減衰係数となる。以上をまとめると、C0=0のときは、数21式の合成減衰係数Cは、下記の数23式となる。
Figure 0005778344
即ち、C0=0のときは、電動式ダンパ14と減衰ダンパ13とが直列に接続されているに等しい。一方、C0=∞のときは、数21式の合成減衰係数Cは、下記の数24式となる。
Figure 0005778344
従って、C0=∞のときは、数21式の合成減衰係数Cは、下記の数25式となる。
Figure 0005778344
即ち、C0=∞のときは、電動式ダンパ14と減衰ダンパ13とが並列に接続されているに等しい。さらに、0<C0<∞のときは、合成減衰係数Cは数21式であり、これは、並列接続と直列接続の中間状態である。以上より、本実施の形態のダンパ装置12は、2つの能動的または受動的なダンパ(力発生手段)を、力学的に直列接続と並列接続に切換えることが可能な構成であるといえる。
ここで、図6の(B)の通常運転モード(アクティブ動作時)の場合は、C0=0、かつ、C2=∞であるため、数23式は、下記の数26式となる。
Figure 0005778344
ここで、C2=∞より、Cは下記の数27式で表せる。
Figure 0005778344
さらに、図6の(B)の通常運転モード(アクティブ動作時)の場合は、v2=0であるから、数17式は、下記の数28式となる。
Figure 0005778344
従って、Fは下記の数29式となる。
Figure 0005778344
即ち、通常運転モード(アクティブ動作時)の場合は、ダンパ装置12全体の推力Fが電動式ダンパ14の推力F1の2倍となる。
図6の(C)のセーフモード2(パッシブ動作時)の場合も同様に、ダンパ装置12全体の減衰力Fは、減衰ダンパ13の減衰力F2の2倍となる。この場合に、ダンパ装置12全体の減衰力を、従来の減衰ダンパを単体で用いる構成と同程度にするためには、C=4C2より、本実施の形態の減衰ダンパ13は、従来の単体の減衰ダンパと比較して減衰係数が1/4のものとする必要がある。図6の(D)の並列動作に関しては、数16式の通りである。
次に、図4および図5を用いて、ダンパ装置12の切換状態を鉄道車両1の運転状況(運転モード)と対応させて説明する。なお、図4および図5では、車体2、台車5、ダンパ装置12の各部位の動きを分かり易くするために、減衰ダンパ13のロッド13Bと電動式ダンパ14の可動子14Bは、ラック17,18(歯部17A,18A)が直接形成されたものとして模式的に表している。また、図5中の黒塗り三角形X1,X2,X3は、図6と同様に、ロッド13Bの変位、可動子14Bの変位、ピニオン19の回転が阻止(禁止)されていることを表している。
図5中の(A)は、図6の(A)に対応するもので、中立状態(初期位置、中立位置)を示している。この場合は、例えば、ロッド13B、可動子14B、ピニオン19の何れもがロックされない(または全てロックされた)状態に対応する。
図5中の(B)は、図6の(B)に対応するもので、電動式ダンパ14単独で車体2と台車5との間の振動の抑制を行う通常運転モード(アクティブモード)を示している。このモードでは、減衰ダンパロック装置13Gをロック(固定)すると共にピニオンブレーキ装置20のロックを解除する。
この場合は、走行中の車体2への空気力外乱や、曲線通過時の車体2のスウェー、軌道(レール4)の歪みに伴う台車5のスウェー等により、車体2と台車5が左,右方向に相対変位すると、ピニオン19は、ロックされた減衰ダンパ13のロッド13Bに沿って回転しつつ車体2の左,右方向に変位する。このとき、ピニオン19は、電動式ダンパ14の可動子14Bのラック17にも噛み合っている。このため、可動子14Bは、車体2と台車5の相対変位、即ち、台車5に対するピニオン19の左,右方向の変位に伴って、車体2(ピニオン19)の変位方向と同方向に車体2(ピニオン19)の2倍の変位量で変位しつつ、車体2と台車5間の振動を制御(抑制)する。この場合、車体2と台車5との間には、電動式ダンパ14の発生力の2倍の力が制御力(制振力)として加わる。従って、例えば、電動式ダンパのみを単独で設ける構成と比較して、発生力の小さい電動式ダンパ14を用いることができる。
図5中の(C)は、図6の(C)に対応するもので、電動式ダンパ14の不調、具体的には、可動子14Bが固定子14Aと固着(固渋)することにより電動式ダンパ14がストローク(伸縮)しなくなったときに切換えられるセーフモード2(パッシブモード)を示している。このモードでは、減衰ダンパロック装置13Gとピニオンブレーキ装置20の両方のロック(制動)を解除する。
この場合は、走行中の車体2への空気力外乱や、曲線通過時の車体2のスウェー、軌道(レール4)の歪みに伴う台車5のスウェー等により、車体2と台車5が左,右方向に相対変位すると、ピニオン19は、固着した電動式ダンパ14の可動子14Bに沿って回転しつつ車体2の左,右方向に変位する。このとき、ピニオン19は、減衰ダンパ13のロッド13Bのラック18にも噛み合っている。このため、ロッド13Bは、車体2と台車5の相対変位、即ち、台車5に対するピニオン19の左,右方向の変位に伴って、車体2(ピニオン19)の変位方向と同方向に該車体2(ピニオン19)の2倍の変位量で変位しつつ、車体2と台車5間の振動を抑制(吸収)する。この場合、車体2と台車5との間には、減衰ダンパ13の減衰力の2倍の力が吸収力(制振力)として加わる。
図5中の(D)は、図6の(D)に対応するもので、電動式ダンパ14の不調、具体的には、電動式ダンパ14への通電(電源供給)が停止等することにより電動式ダンパ14の推力が不足する場合に切換えられるセーフモード1(並列モード)を示している。このモードでは、ピニオンブレーキ装置20を制動(ロック)状態とすると共に、減衰ダンパロック装置13Gのロックを解除する。
この場合は、走行中の車体2への空気力外乱や、曲線通過時の車体2のスウェー、軌道(レール4)の歪みに伴う台車5のスウェー等により、車体2と台車5が左,右方向に相対変位すると、ピニオン19の左,右方向の変位に伴って、電動式ダンパ14の可動子14Bと減衰ダンパ13のロッド13Bがピニオン19の変位方向と同方向に該ピニオン19と同じ変位量で変位する。このとき、電動式ダンパ14の推力が不足していても、減衰ダンパ13により車体2と台車5間の振動を抑制(吸収)することができる。
ところで、図5中の(B)の通常運転モード(アクティブモード)、および、図5中の(C)のセーフモード2(パッシブモード)では、電動式ダンパ14の可動子14Bの変位量、または、減衰ダンパ13のロッド13Bの変位量は、台車5と車体2間の変位量に対して2倍になる。例えば、営業路線走行中の車体2と台車5との相対変位量が±20mm程度とすると、通常運転モードでは、電動式ダンパ14の可動子14Bの変位量は、±40mm程度となる。
ここで、車両基地での転線(ポイントの通過)や空気ばね11が損傷(パンク)したときの車体2と台車5との大きな相対変位、即ち、±50〜70mm程度の大変位の入力の可能性を考慮すると、電動式ダンパ14の可動子14Bの最大変位量は、±100〜140mm程度となる。このため、これに合せて、電動式ダンパ14の最大ストローク長さ(許容変位量)を設定すると、電動式ダンパ14に軸方向に並んで配置する永久磁石の量が増大し、コストの増大に繋がる虞がある。
そこで、車両基地での転線や空気ばね11が損傷したときのような車体2と台車5との間の相対変位が大きくなるときは、電動式ダンパ14に不調(推力不足)がなくても、通常運転モードからセーフモード1(並列モード)に切換えるようにすることが考えられる。この場合、即ち、セーフモード1(並列モード)は、電動式ダンパ14の可動子14Bの変位量、または、減衰ダンパ13のロッド13Bの変位量は、車体2と台車5間の変位量と同じになるため、電動式ダンパ14の最大ストローク長さを抑制できる。例えば、電動式ダンパ14の最大ストローク長さを、従来構成(電動式ダンパを単独で設ける構成)と同じ長さ(±50〜70mm程度)に設定することができる。
なお、図5中の(C)のセーフモード2(パッシブモード)、即ち、可動子14Bと固定子14Aとが固着(固渋)することにより電動式ダンパ14がストロークしなくなったときは、この状態で車両基地に帰着する可能性がある。この点を考慮すると、減衰ダンパ13の最大ストローク長さ(許容変位量)は、従来構成(減衰ダンパを単独で設ける構成)の2倍の長さ(±100〜140mm程度)を確保することが好ましい。
次に、車体2に設けられた加速度センサ21とギヤ装置15に設けられたピニオン回転センサ22に就いて説明する。
図1に示すように、車体2には、ダンパ装置12の近傍に位置して加速度センサ21が設けられている。この加速度センサ21は、鉄道車両1のばね上側となる車体2側で該車体2の左,右方向の振動加速度(車体左右加速度)を検出し、その検出信号を後述のコントローラ23に出力するものである。なお、加速度センサ21は、例えば車体2の前,後方向両側に設けられた各台車5に対応してそれぞれ設けるため、一車両当たり(一車体当たり)、合計2個の加速度センサ21を有する構成となっている。
図2に示すように、ギヤ装置15のギヤケース16には、例えばピニオン19と対向する位置にピニオン回転センサ22が設けられている。このピニオン回転センサ22は、ピニオンの19回転を検出し、その検出信号を後述のコントローラ23に出力するものである。
次に、ダンパ装置12の制御、即ち、車体2と台車5との間の制振制御(電動式ダンパ14の出力制御)およびギヤ装置15の切換制御を行うコントローラ23に就いて説明する。
23はマイクロコンピュータ等により構成されるコントローラで、該コントローラ23は、鉄道車両1の運転状況、不調状況等を判定してダンパ装置12の切換を行うと共に、車体2の左,右方向の振動を低減すべく、電動式ダンパ14の推力を調整するものである。コントローラ23は、その入力側が加速度センサ21、ピニオン回転センサ22、電動式ダンパ14等に接続され、出力側が電動式ダンパ14、減衰ダンパロック装置13G、ピニオンブレーキ装置20等に接続されている。コントローラ23は、ROM、RAM等からなるメモリ(図示省略)を有し、該メモリには、図8中の振動制御部29で用いられる処理用プログラム(図10のステップ15で実行される処理プログラム)、図8中のモード切換判定部32で用いられる処理プログラム(図9〜図14に示す処理プログラム)、モード切換の判定に用いる閾値等が格納されている。
ここで、コントローラ23は、図8に示すように、車体左右加速度入力部24、電動式ダンパ変位入力部25、電動式ダンパ電流入力部26、ピニオン回転角入力部27、車両位置情報取得部28、振動制御部29、電流制御部30、電動式ダンパ電流出力部31、モード切換判定部32、減衰ダンパロック装置信号出力部33、ピニオンブレーキ装置信号出力部34等を含んで構成されている。
車体左右加速度入力部24は、加速度センサ21が接続され、該加速度センサ21から車体2の左,右方向の加速度が入力されるものである。電動式ダンパ変位入力部25は、電動式ダンパ14に接続され、該電動式ダンパ14から可動子14Bの変位(ストローク量、伸縮量)が入力されるものである。電動式ダンパ電流入力部26は、電動式ダンパ14のUVW線(図示せず)に接続され、電流出力回路から電動式ダンパ14に供給される電流値が入力されるものである。ピニオン回転角入力部27は、ピニオン回転センサ22に接続され、ピニオン19の変位(回転速度、回転角)が入力されるものである。
振動制御部29は、車体左右加速度入力部24から車体2の左,右方向の加速度が入力され、該加速度に基づいて電動式ダンパ14が発生すべき力に対応する推力指令値を演算する。例えば、振動制御部29は、スカイフック制御則、LQG制御則、あるいはH∞制御則等に従って推力指令値を算出するものである。電流制御部30は、振動制御部29からの推力指令値と、電動式ダンパ変位入力部25からの電動式ダンパ14の変位から求まる電気角と、電動式ダンパ電流入力部26からのUVW相の電流値とに基づいて、電動式ダンパ14に流れる電流を制御するための電流指令を出力するものである。電動式ダンパ電流出力部31は、電流制御部30からの電流指令に基づいて、電動式ダンパ14の電流出力回路を動作させるものである。
モード切換判定部32は、ピニオン回転角入力部27からのピニオン19の変位(回転角)、車両位置情報取得部28からの車両1の位置情報、電動式ダンパ変位入力部25からの電動式ダンパ14の変位、電動式ダンパ電流入力部26からの電流値に基づいて、ダンパ装置12の切換状態(運転モード)を通常運転モードとセーフモード1とセーフモード2の何れにするかを判定するものである。そして、モード切換判定部32は、判定したモードに応じて、減衰ダンパロック装置13Gをロックするための信号、ピニオンブレーキ装置20を解除するための信号等を出力するものである。
減衰ダンパロック装置信号出力部33は、モード切換判定部32からの信号に基づいて、減衰ダンパロック装置13Gにロック信号(または解除信号)を出力するものである。ピニオンブレーキ装置信号出力部34は、モード切換判定部32からの信号に基づいて、ピニオンブレーキ装置20にブレーキ解除信号(またはブレーキ信号)を出力するものである。
なお、ダンパ装置12は、コントローラ23に電源が入っていない状態(電源の供給が断たれた状態)で、並列モード(セーフモード1)になるように設定している。即ち、減衰ダンパロック装置13Gは、電力非供給時(電源オフ時)にロックを解除し、電力供給時(信号入力時)にロックする、デフォルトロック解除のものとし、ピニオンブレーキ装置20は、電力非供給時(電源オフ時)に制動し、電力供給時(信号入力時)に制動を解除する、デフォルト制動のものとする。さらに、電動式ダンパ14は、電力非供給時(電源オフ時)に自由に伸縮するフリー状態となる。このような設定の場合は、減衰ダンパロック装置信号出力部33は、減衰ダンパロック装置13Gをロックするときにロック信号を出力(電力を供給)するものとし、ピニオンブレーキ装置信号出力部34は、ピニオンブレーキ装置20のブレーキを解除するときに、ブレーキ解除信号を出力(電力を供給)するものとする。
次に、コントローラ23が実行するダンパ装置12の制御用のプログラムについて図9ないし図14を用いて説明する。
先ず、図9は、コントローラ23のメインフローの処理を示している。このメインフローは、制御演算の実行周期毎にタイマ割り込み等によって呼び出される。メインフローでは、先ず、ステップ1で、通信処理等により車両位置情報を取得する。この車両位置情報は、コントローラ23の車両位置情報取得部28で取得されるものを用いる。続くステップ2では、ステップ1で取得した車両位置情報に基づいて、通常運転モードに移行できる路線か否か、即ち、乗客等を輸送する営業路線を走行しているか、それとも、車両基地中のような車体2と台車5間の変位が過度に大きくなる軌道を走行しているかを判定する。
ステップ2で、「YES」、即ち、通常運転モードに移行できる路線であると判定された場合は、ステップ3に進み、状態フラグは何か、即ち、現在のモードが何れのモードであるかを判定する。このステップ3で、状態フラグが通常運転モードであると判定された場合は、ステップ4に進み、通常運転モードの処理を実行する。
ステップ3で、状態フラグがセーフモード1であると判定された場合は、ステップ5に進み、セーフモード1の処理を実行する。なお、このステップ5で実行されるセーフモード1は、電動式ダンパ14の推力が不足した場合のセーフモード1に対応する。
ステップ3で、状態フラグがセーフモード2であると判定された場合は、ステップ6に進み、セーフモード2の処理を実行する。なお、セーフモード2は、電動式ダンパ14が固着した(ストロークができなくなった)場合のモードである。
ここで、セーフモード1の状態フラグは、通常運転モード処理においてのみ立てられる。また、セーフモード2の状態フラグは、通常運転モード処理またはセーフモード1の処理においてのみ立てられる。そして、初期設定(デフォルト)の状態フラグは、通常運転モードに設定している。このため、鉄道車両1(コントローラ23)の電源投入後、通常運転モードに移行できる路線に入って最初は、必ず通常運転モードの処理が実行される。
一方、ステップ2で、「NO」、即ち、通常運転モードに移行できる路線でないと判定された場合は、ステップ7に進み、状態フラグが通常運転モードであるか否かの判定を行う。このステップ7で、「YES」、即ち、状態フラグが通常運転モードであると判定された場合は、ステップ8に進み、セーフモード1の処理を実行する。一方、ステップ7で、「NO」、即ち、状態フラグが通常運転モードでないと判定された場合は、ステップ3に進み、続く処理を行う。
これにより、通常運転モードに移行できる路線でない(例えば車両基地)と判定された場合は、状態フラグがセーフモード2以外の時に、セーフモード1となるようにできる。このようにセーフモード1にする理由は、車両基地での転線(ポイントの通過)等により車体2と台車5とが大きく相対変位しても、電動式ダンパ14のストローク量がその変位の2倍とならないようにするためである。
次に、図10は、ステップ4で実行する通常運転モードの処理を示している。ここで、通常運転モードでは、ダンパ装置12をアクティブ状態で使用するために、減衰ダンパロック装置13Gをロックすると共に、ピニオンブレーキ装置20を解除する。そして、通常運転モードでは、電動式ダンパ14の振動制御・電流制御を実行すると共に、後述する不調判定処理を実行する。
具体的には、ステップ11では、減衰ダンパロック装置13Gのロックが解除されているか否か、即ち、直前の制御周期で減衰ダンパロック装置13Gが解除の状態か否かを判定する。このステップ11で、「YES」、即ち、減衰ダンパロック装置13Gのロックが解除されていると判定された場合は、ステップ12に進む。この場合、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とが並列動作の状態から減衰ダンパロック装置13Gをロックさせる場合に、ロックするタイミングでの減衰ダンパ13のストローク位置やストローク速度によっては、減衰ダンパロック装置13Gに過大な力が加わる虞や、電動式ダンパ14の動作範囲が制限される虞がある。
そこで、減衰ダンパロック装置13Gをロックするタイミングを見計らうべく、まず、ステップ12では、電動式ダンパ14のストローク位置がストローク中心位置(初期位置)の近傍であるかを判定する。電動式ダンパ14のストローク位置は、電動式ダンパ変位入力部25に入力されるものを用いる。ステップ12で、「NO」、即ち、電動式ダンパ14のストローク位置がストローク中心位置の近傍でないと判定された場合は、減衰ダンパロック装置13Gのロックは行わず、図10のリターン、図9のリターンを介して、図9のスタートに戻る。
一方、ステップ12で、「YES」、即ち、電動式ダンパ14のストローク位置がストローク中心位置の近傍であると判定された場合は、ステップ13に進み、ピニオン19の回転速度が十分に遅い(回転速度が予め設定した減衰ダンパロック装置13Gのロックを行える閾値以下である)か否かを判定する。このステップ13で、「NO」、即ち、ピニオン19の回転速度が十分に遅くない(速い)と判定された場合は、減衰ダンパロック装置13Gのロックは行わず、図10のリターン、図9のリターンを介して、図9のスタートに戻る。
ステップ13で、「YES」、即ち、ピニオン19の回転速度が十分に遅いと判定された場合、または、ステップ11で、「NO」、即ち、減衰ダンパロック装置13Gがロックされていると判定された場合は、ステップ14に進み、ダンパロック装置13Gをロックする(ロックしたままとする)と共に、ピニオンブレーキ装置20のブレーキを解除する(解除したままとする)。これにより、図5の(B)および図6の(B)に示すアクティブ動作の状態となり(または、アクティブ動作状態が維持され)、続くステップ15で、振動制御・電流制御を実行する。即ち、ステップ15では、所定の制御側に基づいて振動制御部29で電動式ダンパ14が出力すべき推力に対応する推力指令値を演算すると共に、電流制御部30、電動式ダンパ電流出力部31を介してその推力に対応する指令電流を電動式ダンパ14に出力する。これにより、車両の乗り心地や走行安定性を確保することができる。次いで、ステップ16で、後述する不調判定処理を実行する。
次に、図11は、ステップ5で実行するセーフモード1の処理を示している。ここで、セーフモード1では、ダンパ装置12を並列状態で使用するために、減衰ダンパロック装置13Gのロックを解除すると共に、ピニオンブレーキ装置20を制動状態(ロック状態)にする。そして、セーフモード1では、電動式ダンパ14の固着判定処理を実行する。
このようなセーフモード1では、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とが直列接続(直列動作)の状態からピニオンブレーキ装置20を制動状態(ロック状態)する場合に、ロックするタイミングでの電動式ダンパ14のストローク位置やストローク速度によっては、電動式ダンパ14の動作範囲が制限される虞がある。そこで、ピニオンブレーキ装置20の制動(ロック)タイミングを見計らうべく、まず、ステップ21では、ステップ12と同様に、電動式ダンパ14のストローク位置がストローク中心位置(初期位置)の近傍であるかを判定する。
ステップ21で、「NO」、即ち、電動式ダンパ14のストローク位置がストローク中心位置の近傍でないと判定された場合は、ピニオンブレーキ装置20の制動は行わず、図11のリターン、図9のリターンを介して、図9のスタートに戻る。一方、ステップ21で、「YES」、即ち、電動式ダンパ14のストローク位置がストローク中心位置の近傍であると判定された場合は、ステップ22に進み、ピニオン19の回転速度が十分に遅い(回転速度が予め設定したピニオンブレーキ装置20の制動を行える閾値以下である)か否かを判定する。
このステップ22で、「NO」、即ち、ピニオン19の回転速度が十分に遅くない(速い)と判定された場合は、ピニオンブレーキ装置20の制動は行わず、図11のリターン、図9のリターンを介して、図9のスタートに戻る。一方、ステップ22で、「YES」、即ち、ピニオン19の回転速度が十分に遅いと判定された場合は、ステップ23に進み、減衰ダンパロック装置13Gを解除の状態にすると共に、ピニオンブレーキ装置20を制動の状態にする。これにより、図5の(D)および図6の(D)に示す並列動作の状態となり、続くステップ24で、後述する電動式ダンパ14の固着判定処理を実行する。
次に、図12は、ステップ6で実行するセーフモード2の処理を示している。ここで、セーフモード2では、電動式ダンパ14が固着したときに移行するモードである。このセーフモード2では、鉄道車両1の走行安定性を確保すべく、セーフモード2の処理に移行後直ちに、即ち、ステップ31で、減衰ダンパロック装置13Gを解除の状態にすると共にピニオンブレーキ装置20を解除の状態にする。これにより、図5の(C)および図6の(C)に示すパッシブ動作の状態となる。この場合は、例えば車両基地で電動式ダンパ14の修理が行われるまで、セーフモード2の状態は維持される。
次に、図13は、ステップ16で実行する不調判定処理を示している。不調判定処理では、電動式ダンパ14の不調を判定し、その不調に応じた状態フラグを設定するものである。
このために、ステップ41では、電動式ダンパ14のストロークに変化があるか否かを判定する。電動式ダンパ14のストロークは、電動式ダンパ変位入力部25に入力されるものを用いる。ステップ41で、「YES」、即ち、電動式ダンパ14のストロークに変化があると判定された場合は、ステップ42に進み、電動式ダンパ14に電流が流れているか否かを判定する。電動式ダンパ14の電流値は、電動式ダンパ電流入力部26に入力されるものを用いる。ステップ42で、「YES」、即ち、電動式ダンパ14に電流制御部30で生成した電流指令通りの電流が流れていると判定された場合は、電動式ダンパ14に不調がないと考えられるため、図13のリターン、図10のリターンを介して、図9のスタートに戻る。
一方、ステップ42で、「NO」、即ち、電動式ダンパ14に電流制御部30で生成した電流指令通りの電流が流れていないと判定された場合(特に電流値が足りない場合)は、電動式ダンパ14に電流が供給されず該電動式ダンパ14の推力が不足している状態と考えられる。この場合は、ステップ43に進み、状態フラグを「セーフモード1」に設定し、リターンに進む。
また、ステップ41で、「NO」、即ち、電動式ダンパ14のストロークに変化がないと判定された場合は、ステップ44に進み、車体2の左,右方向の加速度に(正常時とは異なる)変化があるか否かを判定する。車体2の左,右方向の加速度は、車体左右加速度入力部24に入力されるものを用いる。ステップ44で、「YES」、即ち、車体左右加速度に(正常時と異なる)変化があると判定された場合は、電動式ダンパ14がストロークせずに車体2が過剰に振動している状態、即ち、電動式ダンパ14が固着している状態と考えられる。この場合は、ステップ45に進み、状態フラグを、「セーフモード2」に設定し、リターンに進む。一方、ステップ44で、「NO」、即ち、車体左右加速度に(正常時と異なる)変化がないと判定された場合は、ステップ42に進み、続く処理を行う。
次に、図14は、ステップ24で実行する電動式ダンパ固着判定処理を示している。電動式ダンパ固着判定処理では、電動式ダンパ14が固着(ないし固渋)しているか否かを判定し、その判定に応じて状態フラグを設定するものである。
このために、ステップ51では、ステップ41と同様に、電動式ダンパ14のストロークに変化があるか否かを判定する。ステップ51で、「YES」、即ち、電動式ダンパ14のストロークに変化があると判定された場合は、電動式ダンパ14は固着していないと考えられるため、図14のリターン、図11のリターン、図9のリターンを介して、図9のスタートに戻る。
一方、ステップ51で、「NO」、即ち、電動式ダンパ14のストロークに変化がないと判定された場合は、ステップ52に進み、ステップ44と同様に、車体左右加速度に(正常時とは異なる)変化があるか否かを判定する。ステップ52で、「YES」、即ち、車体左右加速度に(正常時と異なる)変化があると判定された場合は、電動式ダンパ14がストロークせずに車体2が過剰に振動していると考えられる。この場合は、ステップ53に進み、状態フラグを、「セーフモード2」に設定し、リターンに進む。一方、ステップ52で、「NO」、即ち、車体左右加速度に(正常時と異なる)変化がないと判定された場合は、図14のリターンに進む。
以上、図9〜図14に示す処理においては、通常運転モードからセーフモード1、セーフモード2の何れかのモードに移ることができても、セーフモード1の状態フラグやセーフモード2の状態フラグが設定された場合は、セーフモード1から通常運転モード、セーフモード2から通常運転モードに移ることができないよう(非復帰)に設計している。さらに、セーフモード1からはセーフモード2に移るが、セーフモード2からはセーフモード1に移ることができないように(非復帰)に設計している。この理由は、セーフモード2の電動式ダンパ14の固着(固渋)は、車両基地での修理の必要性が高いためである。
本実施の形態によるダンパ装置12は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、通常運転モードのときは、減衰ダンパロック装置13Gがロック(固定)されると共に、ピニオンブレーキ装置20の制動(ロック)が解除され、アクティブ動作状態となる。この場合は、車体2が左,右方向に振動すると、電動式ダンパ14により振動を抑制するために必要な推力が出力され、車両の乗り心地や走行安定性を確保することができる。
一方、車両基地を走行するときや、電動式ダンパ14への電流の供給が断たれる等により電動式ダンパ14の推力が不足するときは、減衰ダンパロック装置13Gのロックが解除されると共に、ピニオンブレーキ装置20がロックされ、セーフモード1の状態、即ち、並列動作状態となる。この場合は、車体2が左,右方向に振動すると、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14により、または、減衰ダンパ13のみにより、その振動を抑制することができる。
さらに、電動式ダンパ14が固着したときは、減衰ダンパロック装置13Gのロックが解除されると共に、ピニオンブレーキ装置20のロックも解除され、セーフモード2の状態、即ち、パッシブ動作状態となる。
なお、ピニオン19とラック17,18により構成されるギヤ装置15が固着した場合、例えば、ピニオン19とラック17,18との噛合部への異物混入等によりピニオン19が回転しなくなった場合は、セーフモード1(並列動作)の状態にすることができる。即ち、ギヤ装置15が固着した場合は、ピニオン19の回転をピニオンブレーキ装置20により規制(ロック)し、かつ、減衰ダンパ13の相対変位を許可することにより、車体2と台車5との間の変位を減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とにより吸収することができる。
このように、本実施の形態によれば、電動式ダンパ14に推力不足や固着の不調が生じても、さらには、ギヤ装置15の固着の不調が生じても、セーフモード1やセーフモード2で運転することができ、フェールセーフ性を向上することができる。
ところで、運転時に電動式ダンパへの電流の供給が断たれるといった電源断の不調に対するフェールセーフ性を確保するためには、電動式ダンパと減衰ダンパとの両方を設ける構成とすることが考えられる。ただし、電動式ダンパと減衰ダンパとを単に並列に接続するだけでは、通常運転時に減衰ダンパが電動式ダンパの発生力を打ち消すよう作用する虞がある。
一方、ボールねじやローラねじによる回転−直動変換機構(減速機構)を有する電動式ダンパの場合は、電流断の不調時に、例えば減速機構を介して電動モータを回転させる抵抗が減衰力として作用するため、減衰力が0になることを防止できる。しかし、そのままでは、例えば減速機構が固着したときに、乗り心地や走行安定性が低下する虞がある。そこで、回転−直動変換機構(減速機構)を有する電動式ダンパに対し、減衰ダンパを直列に取付ける構成が考えられる。しかし、この場合は、減衰ダンパが電動式ダンパの変位を吸収する虞がある。
これに対し、本実施の形態によれば、ダンパ装置12は、運転状況や電動式ダンパ14、ギヤ装置15の正常・不調に拘わらず、そのときの状況(運転状況、不調状況)に対応した所望の力を発生させることができる。即ち、本実施の形態によれば、ギヤ装置15により、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とを直列接続と並列接続とに切換えることができる。
このため、運転状況、不調状況に応じて、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とのうちの一方のダンパまたは両方のダンパを用いて所望の力を発生させることができる。即ち、例えば、ピニオンブレーキ装置20を解除することにより減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とを力学的に直列接続にすることができる。この場合に、減衰ダンパロック装置13Gをロックすることにより、電動式ダンパ14を単独で用いることができる。また、例えば、ピニオンブレーキ装置20をロックする(と共に減衰ダンパロック装置13Gを解除する)ことにより並列接続にすることができる。この場合は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14との両方のダンパから(電動式ダンパ14が電源断状態のときは減衰ダンパ13から)力を得ることができる。
本実施の形態によれば、切換手段としてのギヤ装置15をラック17,18とピニオン19とにより構成しているので、直列接続と並列接続との何れの切換状態(運転モード)でも、ギヤ装置15による力の伝達を安定して行うことができる。
本実施の形態によれば、ピニオンブレーキ装置20によりピニオン19のギヤの摩擦力を可変としているので、例えば摩擦力を0(ピニオン19の回転を自由)にすることにより、切換状態を直列接続(通常運転モード、セーフモード2)にすることができる。一方、摩擦力を最大にする(ピニオン19の回転を固定する)ことにより、切換状態を並列接続(セーフモード1)にすることができる。
本実施の形態によれば、力発生機構としてのダンパ装置12を、車体2と台車5との間に設ける左右動ダンパとして用いる構成としているので、車体2と台車5との間で、運転状況、不調状況に応じた所望の力を安定して発生させることができ、鉄道車両1の性能の向上を図ることができる。
本実施の形態によれば、電動式ダンパ14の固定子14A側と減衰ダンパ13のシリンダ13A側を台車5に取付けると共に、電動式ダンパ14の可動子14B側と減衰ダンパ13のロッド13B側にそれぞれラック17,18を設け、更に、車体2にピニオン19を設けると共に、該ピニオン19を径方向から挟むように各ラック17,18を噛合させる構成としている。そして、減衰ダンパ13のシリンダ13Aとロッド13Bとの相対変位を規制する減衰ダンパロック装置13Gと、ピニオン19の回転を規制するピニオンブレーキ装置20とを有する構成としている。
このため、通常運転を行うとき(正常時)は、ピニオン19の回転を規制せず、減衰ダンパ13の相対変位(伸縮)を減衰ダンパロック装置13Gにより規制することにより、電動式ダンパ14の全ての出力を、ラック17とピニオン19を経由して車体2に伝えることができる。即ち、正常時に、電動式ダンパ14の発生力が減衰ダンパ13により吸収されることを防止して、ダンパ装置12全体としての性能の確保を図ることができる。
また、正常時は、電動式ダンパ14の発生力がラック17とピニオン19を介して車体2側に伝わるため、電動式ダンパ14の発生力を倍力して車体2側に伝えることができる。これにより、電動式ダンパ14を発生力の小さいものにより構成しても、ダンパ装置12全体としての発生力を大きくすることができる。
一方、不調時、例えば、電動式ダンパ14の減衰力が電源断等により不足したときは、ピニオン19の回転をピニオンブレーキ装置20により規制し、減衰ダンパ13の相対変位を許可することにより、車体2と台車5との間の変位を減衰ダンパ13により吸収することができる。これにより、ダンパ装置12全体として無減衰となることを防止することができ、フェールセーフ性の向上、ダンパ装置12の信頼性の向上を図ることができる。
また、電動式ダンパ14が固着したときは、ピニオン19の回転と減衰ダンパ13の相対変位を許可することにより、車体2と台車5との間の変位を減衰ダンパ13により吸収することができる。このため、この面からも、フェールセーフ性を向上することができ、ダンパ装置12の信頼性を確保することができる。
さらに、ピニオン19とラック17,18により構成されるギヤ装置15が固着した場合、例えば、ピニオン19とラック17,18との噛合部への異物混入等によりピニオン19が回転しなくなった場合は、ピニオン19の回転をピニオンブレーキ装置20により規制し、かつ、減衰ダンパ13の相対変位を許可することにより、車体2と台車5との間の変位を減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とにより吸収することができる。この場合は、減衰ダンパ13と電動式ダンパ14とが並列接続されたダンパ装置12として力を発生させることができる。このため、この面からも、フェールセーフ性の向上、ダンパ装置12の信頼性の向上を図ることができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、電動式ダンパ14の固定子14Aを台車5側に取付けると共に可動子14Bにラック17を設け(取付け)、減衰ダンパ13のシリンダ13Aを台車5側に取付けると共にロッド13Bにラック18を設ける(取付ける)構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、電動式ダンパの可動子を台車側に取付けると共に固定子にラックを設け(取付け)、減衰ダンパのロッドを台車側に取付けると共にシリンダにラックを設ける(取付ける)構成としてもよい。即ち、電動式ダンパの固定子と可動子とのうちの何れか一方を一方の部材(または他方の部材)に取付けると共に他方にラックを設け(取付け)、減衰ダンパのシリンダとロッドとのうちの一方を一方の部材(または他方の部材)に取付けると共に他方にラックを設ける(取付ける)構成とすることができる。
次に、図15および図16は本発明の第2の実施の形態を示している。上述した第1の実施の形態では、電動式ダンパ側と減衰ダンパ側にそれぞれラックを設けると共に、車体側にピニオンを設ける構成としている。これに対し、本実施の形態では、電動式ダンパ側と台車側とにそれぞれラックを設けると共に、減衰ダンパ側にピニオンを設ける構成としている。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
本実施の形態のダンパ装置41は、相対運動する一方の部材としての車体2と他方の部材としての台車5との2部材間に設けられている。ここで、ダンパ装置41は、力発生手段としての一対の減衰ダンパ42と、力発生手段としての電動式ダンパ43と、切換手段としてのギヤ装置44とにより大略構成されている。
各減衰ダンパ42は、上述した第1の実施の形態の減衰ダンパ13と同様に、シリンダ42Aからロッド42Bが突出し、該ロッド42Bの進退の運動エネルギを熱エネルギに変換することで減衰力を発生するものである。ここで、各減衰ダンパ42のボトム側となるシリンダ42Aの基端は、後述する電動式ダンパ43の固定子43Aの内側に取付けられている。一方、各減衰ダンパ42のロッド側となるロッド42Bの先端には、後述するギヤ装置44を構成するピニオン47が設けられている。
さらに、減衰ダンパ42には、シリンダ42Aとロッド42Bとの相対移動(シリンダ42Aに対するロッド42Bの進退)を阻止(禁止)する減衰ダンパロック装置42C(図16参照)が設けられている。この減衰ダンパロック装置42Cは、前述の第1の形態の減衰ダンパロック装置13Gと同様のもので、例えば、シリンダ42A内での作動流体の流れを阻止(遮断)することによりロック状態を実現する構成を採用することができる。
電動式ダンパ43は、上述した第1の実施の形態の電動式ダンパ14と同様に、固定子43Aと該固定子43Aに対して直線方向に相対移動する可動子43Bとからなるものである。即ち、電動式ダンパ43は、3相リニア同期モータとして構成されたもので、U相、V相、W相のコイル43C,43D,43Eが設けられた電機子43Fを有する有底筒状の固定子43Aと、軸方向に並んで配置された複数の円筒状の永久磁石43Gを有する筒状の可動子43Bとにより大略構成されている。
固定子43Aの基端には、該固定子43Aの基端を車体2側に取付けるための取付アイ43Hが設けられている。一方、可動子43Bの内径側には、後述するギヤ装置44を構成するラック45が設けられている。また、可動子43Bと固定子43Aとが同軸を保ったまま相対変位(伸縮)できるように、例えば、固定子43Aには、可動子43Bに対し永久磁石43Gおよびラック45の歯部45Aと干渉しない位置で摺動するガイドピン(図示せず)を設けている。
さらに、電動式ダンパ43には、固定子43Aと可動子43Bとの相対移動(固定子43Aに対する可動子43Bの進退)を阻止(禁止)する電動式ダンパロック装置43J(図16参照)が設けられている。この電動式ダンパロック装置43Jは、前述の第1の形態で必要に応じて設けられる電動式ダンパロック装置と同様のものとして構成することができる。例えば、電動式ダンパロック装置43Jは、例えば前記ガイドピンに設け、ロックするときは、ガイドピンに対して可動子43Bが固定される構成とすることができる。
ギヤ装置44は、減衰ダンパ42と電動式ダンパ43との間に設けられている。ギヤ装置44は、減衰ダンパ42と電動式ダンパ43を力学的に直列接続と並列接続に切換え可能にするものである。このために、ギヤ装置44は、一方のラック(ラックギヤ)45と、他方のラック(ラックギヤ)46と、ピニオン(ピニオンギヤ)47,47とにより大略構成され、一方のラック45と他方のラック46がピニオン47を挟んで互いに向き合って配置されている。
一方のラック45は、電動式ダンパ43の可動子43Bに一体的に形成されている。即ち、一方のラック45は、電動式ダンパ43の可動子43Bの内側に、ピニオン47と噛合する歯部45Aを互いに対向して長さ方向(軸方向)に形成することにより構成している。
他方のラック46は、棒状のロッド部材46Aと、該ロッド部材46Aの一端側に長さ方向(軸方向)に延びて設けられピニオン47と噛合する歯部46Bとにより構成されている。そして、ロッド部材46Aの基端には、他方のラック46を台車5側に取付けるための取付アイ46Cが設けられている。なお、ロッド部材46A(他方のラック46)と電動式ダンパ43の固定子43Aとが同軸を保ったまま相対変位(伸縮)できるように、例えば、ロッド部材46Aと固定子43Aおよび減衰ダンパ42との間には、ロッド部材46Aの位置決め(中心決め)を図るための軸受(図示せず)を設けている。
ピニオン47,47は、外周側がラック45,46に噛合する歯部47Aとなった円環状部材として形成され、減衰ダンパ42のロッド42Bの先端にそれぞれ取付けられている。この場合、各ピニオン47は、ロッド42Bの先端に転がり軸受(図示せず)を介して回転を可能に取付けられている。各ピニオン47の回転中心軸線は、ロッド42Bの中心軸線に対して直交している。
なお、ギヤ装置44は、必要に応じて、ピニオン47のギヤの摩擦力を可変とする(ピニオン47の回転を阻止する)ピニオンブレーキ装置を設ける構成とすることができる。このピニオンブレーキ装置は、上述した第1の実施の形態のピニオンブレーキ装置20と同様のものとして構成することができる。ピニオンブレーキ装置は、後述する図16の(D)に示す状態、即ち、ギヤ装置44のラック45,46とピニオン47とが固着(固渋)する状態と同等の状態を作り出すことができる。
次に、ダンパ装置41の動作原理を、図16を用いて説明する。図16では、ダンパ装置41の各構成部材の動きを分かり易くするために、減衰ダンパ42を1本設ける構成とすると共に、一個のピニオン47にラック45,46を噛合させた構成として表している。また、図16中の(B)の黒塗り三角形X1は、減衰ダンパロック装置42Cにより、ロッド42Bがロック(固定)されていることを表している。図16中の(C)の黒塗り三角形X2は、電動式ダンパロック装置43Jにより可動子43Bがロック(固定)されていることを表している。図16中の(D)の黒塗り三角形X3は、ダンパ装置41の不調により、または、必要に応じて設けるピニオンブレーキ装置により、ピニオン47の回転がロック(固着、固定)されていることを表している。
図16中の(A)は、中立状態(中立位置、初期位置)を示している。この場合は、例えば、減衰ダンパロック装置42C、電動式ダンパロック装置43J、必要に応じて設けるピニオンブレーキ装置のロックは全て解除(または全てロック)されている状態に対応する。
図16中の(B)は、減衰ダンパロック装置42Cがロック(固定)されると共に、電動式ダンパロック装置43J(および必要に応じて設けるピニオンブレーキ装置)のロックが解除されるアクティブ動作時を表している。この状態では、減衰ダンパ42のシリンダ42Aとロッド42Bとの相対変位が制限(阻止)され、電動式ダンパ43の固定子43Aと可動子43Bの相対変位、および、ピニオン47の回転は制限(阻止)されない。
この場合は、台車5側からの入力により台車5側のラック46が台車5と共に左,右方向(図16の上,下方向)に変位(振動)すると、減衰ダンパ42のロッド42Bの変位が制限されているから、ピニオン47の回転を介して電動式ダンパ43の可動子43Bが、ラック46の変位方向と逆方向に該ラック46と同じ変位量で変位する。このとき、減衰ダンパ42はロックされており、該減衰ダンパ42が電動式ダンパ43の動きを打ち消すよう作用しない(電動式ダンパ43の動きを阻害しない)。このため、電動式ダンパ43の発生力は、全て台車5側のラック46に(振動を抑制する力として)伝達される。このようなアクティブ動作の状態は、電動式ダンパ43に不調がないと判定されるときのモード(通常運転モード)として用いることができ、この場合は、電動式ダンパ43により乗り心地制御を行うことができる。
図6中の(C)は、減衰ダンパロック装置42C(および必要に応じて設けるピニオンブレーキ装置)のロックが解除されると共に、電動式ダンパロック装置43Jにより電動式ダンパ43がロック(固定)されるパッシブ動作時を示している。この状態では、電動式ダンパ43の固定子43Aと可動子43Bの相対変位が制限(阻止)され、減衰ダンパ42のシリンダ42Aとロッド42Bとの相対変位、ピニオン47の回転は制限(阻止)されない。
この場合、台車5側からの入力により台車5側のラック46が台車5と共に台車5の左,右方向(図16の上,下方向)に変位(振動)すると、電動式ダンパ43の可動子43Bの変位が制限されているから、ピニオン47が回転しつつラック46の変位と同方向に該ラック46の半分(1/2)の変位量で変位する。これにより、減衰ダンパ42のロッド42Bが、ラック46(台車5)の変位と同方向に該ラック46の半分(1/2)の変位量で変位する。
このとき、電動式ダンパ43はロックされており仕事をしないため、台車5側のラック46から入力された仕事は、全て減衰ダンパ42により吸収する。この場合、ピニオン47とラック45,46との間で減速機構(減速機)が構成されており、台車5側のラック46の変位の半分(1/2)が減衰ダンパ42の変位となると共に、減衰ダンパ42の発生力の半分(1/2)が台車5側のラック46に伝わる。従って、本実施の形態のダンパ装置41を構成する減衰ダンパ42は、従来の単体で用いられる減衰ダンパと比較して減衰係数が4倍のものとすることにより、単体で用いられる減衰ダンパと同等の減衰力を発生させることができる。
このようなパッシブ動作の状態は、電動式ダンパ43に不調があると判定されたときのモード(セーフモード)として用いることができ、この場合は、減衰ダンパ42により乗り心地を確保することができる。なお、アクティブ動作の状態とパッシブ動作の状態とは、電動式ダンパ43の不調に応じて切換えることができる他、例えば、電動式ダンパ43の不調がないとき、すなわち、通常の運転のときでも、任意に(必要に応じて)切換えることができる。
図16中の(D)は、減衰ダンパロック装置42Cおよび電動式ダンパロック装置43Jのロックが解除されると共に、ギヤ装置44の不調により、または必要に応じて設けるピニオンブレーキ装置によりピニオン47の回転がロック(固着、固定)される並列動作時を表している。この状態では、ピニオン47の回転が制限(阻止)され、電動式ダンパ43の固定子43Aと可動子43Bの相対変位、および、減衰ダンパ42のシリンダ42Aとロッド42Bとの相対変位は制限されない。
この場合は、電動式ダンパ43の可動子43Bと減衰ダンパ42のロッド42Bは、台車5側のラック46の変位と同方向に同量変位する。これにより、ギヤ装置44が固着した場合でも、台車5側のラック46の変位(ストローク)を可能にでき、フェールセーフ性、信頼性を向上することができる。なお、上述したように、パッシブ動作の際のダンパ装置41全体の減衰力を確保するために、減衰ダンパ42の減衰係数を、従来の単体で用いる場合の4倍にした場合は、並列動作の際に、電動式ダンパ43の発生力を0にすると、ダンパ装置41は、従来の単体で用いる場合と比較して4倍硬くなる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、本実施の形態の場合も、運転状況や電動式ダンパ43、ギヤ装置44の正常・不調に拘わらず、そのときの状況に対応した所望の力を発生させることができる。
次に、図17は、本発明の第3の実施の形態を示している。上述した第1の実施の形態と第2の実施の形態では、切換手段を、ラックとピニオンからなるギヤ装置により構成している。これに対し、本実施の形態では、切換手段を、作動流体の流量を調整する流量調整装置と減衰ダンパの伸縮を阻止(禁止)する減衰ダンパロック装置とにより構成している。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
本実施の形態のダンパ装置51は、力発生手段としての減衰ダンパ52と、力発生手段としての電動式ダンパ65と、切換手段としての流量調整装置66および減衰ダンパロック装置67とにより大略構成されている。
減衰ダンパ52は、シリンダ53から一対のロッド59,60が突出し、該ロッド59,60の進退の運動エネルギを熱エネルギに変換することで減衰力を発生するものである。即ち、減衰ダンパ52は、作動油等の作動流体が封入された筒状のシリンダ53と、該シリンダ53内に変位可能に収納され該シリンダ53内を第1のロッド側油室54、第2のロッド側油室55、中間油室56の3室に区切る第1のピストン57,第2のピストン58と、一端側がシリンダ53の一端から突出すると共に他端側が第1のピストン57に固着される第1のロッド59と、一端側がシリンダ53の他端から突出すると共に他端側が第2のピストン58に固着される第2のロッド60とを含んで構成されている。
ここで、シリンダ53は、円筒状のシリンダ本体53Aと、該シリンダ本体53Aの軸方向両端側の各開口を、後述する電動式ダンパ65の可動子65Bの軸方向両端側の各開口と共にそれぞれ閉塞する第1の蓋部材53B,第2の蓋部材53Cとにより構成されている。第1の蓋部材53Bには、作動流体が収容されるリザーバ53B1が設けられている。また、第1の蓋部材53Bには、後述する減衰ダンパロック装置67が取付けられている。
また、第1のロッド59の一端には、車体2側または台車5側に取付けられる第1の取付アイ61が設けられ、第2のロッド60の一端には、台車5側または車体2側に取付けられる第2の取付アイ62が設けられている。第2の取付アイ62は、後述する電動式ダンパ65の固定子65Aの底部65A1から突出している。即ち、第2の取付アイ62には、第2のロッド60と固定子65Aとが固定され、これら第2のロッド60と固定子65Aとが一体に変位する構成となっている。
さらに、第1のピストン57と第1のロッド59には、第1のロッド側油室54と中間油室56との間を接続し、これら第1のロッド側油室54と中間油室56との間で作動油が流通する第1の油路63が設けられている。第2のピストン58と第2のロッド60には、第2のロッド側油室55と中間油室56との間を接続し、これら第2のロッド側油室55と中間油室56との間で作動油が流通する第2の油路64が設けられている。
ここで、第1の油路63の途中部位には、作動流体の流れに対する抵抗となる絞り等の減衰力発生機構(図示せず)が設けられている。この減衰力発生機構は、第1のロッド側油室54と中間油室56との間で作動流体の流れを抑制することにより、第1のロッド59とシリンダ53との間で減衰力を発生させるものである。一方、第2の油路64には、後述する流量調整装置66が設けられている。
電動式ダンパ65は、固定子65Aと該固定子65Aに対して直線方向に相対移動する可動子65Bとからなるものである。即ち、電動式ダンパ65は、リニアモータとして構成され、コイル65Cが設けられた電機子65Dを有する有底筒状の固定子65Aと、軸方向に並んで配置された複数の円筒状の永久磁石65Eを有する筒状の可動子65Bとにより大略構成されている。
固定子65Aの底部65A1には、第2のロッド60に設けられた第2の取付アイ62を取付ける取付穴65A2が設けられている。これにより、固定子65Aと第2のロッド60は、共通の取付アイとなる第2の取付アイ62を介して車体2側または台車5側に取付けられる。一方、可動子65Bは、減衰ダンパ52のシリンダ53の外径側に位置して該シリンダ53に取付けられている。具体的には、可動子65Bは、内側にシリンダ53を挿通した状態で、その軸方向両端開口をシリンダ53の蓋部材53B,53Cにより閉塞することにより、シリンダ53に取付けられている。
流量調整装置66は、後述の減衰ダンパロック装置67と共に切換手段を構成し、減衰ダンパ52と電動式ダンパ65とを直列接続と並列接続とに切換えるものである。ここで、流量調整装置66は、減衰ダンパ52と電動式ダンパ65との間に位置して第2の油路64の途中に設けられている。流量調整装置66は、作動流体が通過する第2の油路64の開口面積を拡縮するもので、例えば、開口面積が最大となる全開状態と、開口面積が0となる全閉状態と、その中間(全開状態と全閉状態との間)となる絞り状態とに切換えられる。
減衰ダンパロック装置67は、減衰ダンパ52と電動式ダンパ65との間に位置して第1の蓋部材53Bに取付けられている。減衰ダンパロック装置67は、シリンダ53と第1のロッド59との相対移動(シリンダ53に対する第1のロッド59の進退)を阻止(禁止)するものである。減衰ダンパロック装置67は、第1のロッド59と係合する係合ピン67Aを有し、ロックするときは、係合ピン67Aを第1のロッド59と係合させることにより、シリンダ53と第1のロッド59との相対移動を阻止する。一方、ロックを解除するときは、係合ピン67Aを第1のロッド59から退避させ、係合ピン67Aと第1のロッド59とを非係合状態とする。これにより、シリンダ53と第1のロッド59との相対移動が許される。
次に、本実施の形態によるダンパ装置51の作動について説明する。
流量調整装置66が全開状態のときは、第2のロッド側油室55と中間油室56との間で作動流体の流れが円滑に行われ、シリンダ53に対する第2のロッド60の相対変位が自由になる。この場合に、減衰ダンパロック装置67をロックする(第1のロッド59とシリンダ53との相対変位を阻止する)ことにより、電動式ダンパ65を単独で用いるアクティブ動作とすることができる。
一方、流量調整装置66が全閉状態のときは、第2のロッド側油室55と中間油室56との間で作動流体の流れが遮断(阻止)され、シリンダ53に対する第2のロッド60の相対変位が阻止(禁止)される。この場合に、減衰ダンパロック装置67のロックを解除する(第1のロッド59とシリンダ53との相対変位を許す)ことにより、シリンダ53と第1のロッド59との間で減衰力を発生させることができる。これにより、減衰ダンパ52を単独で用いるパッシブ動作(直列接続)とすることができる。
一方、流量調整装置66が絞り状態のときは、第2のロッド側油室55と中間油室56との間で作動流体の流れを抑制することができ、第2のロッド60とシリンダ53との間で減衰力を発生させることができる。即ち、流量調整装置66が、第2のロッド60とシリンダ53との間で減衰力を発生させる減衰力発生機構として機能する。この場合に、減衰ダンパロック装置67をロックすることにより、減衰ダンパ52と電動式ダンパ65とを並列で動作させることができる並列動作状態(並列接続)にすることができる。
かくして、このように構成される第3の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、本実施の形態の場合も、運転状況や電動式ダンパ65の正常・不調等に拘わらず、そのときの状況に対応した所望の力を発生させることができる。
なお、上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態では、電動式ダンパ14,43を直動型(ダイレクトドライブ)のリニアモータにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図18に示す第1の変形例および図19に示す第2の変形例のように、電動式ダンパ71を、固定子を有する回転モータ71Aと可動子を有する(ボールねじ式等の)回転−直動変換機構71Bとにより構成してもよい。この場合、図18は、第1の実施の形態の変形例に対応し、図19は、第2の実施の形態の変形例に対応するものである。
上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態では、ギヤ装置15,44を、単一の歯部19A,47Aを有するピニオン19,47に1対のラック17,18,45,46が噛合する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図20に示す第3の変形例および図21に示す第4の変形例のように、ピニオン81を、外径の異なる歯部81A,81Bを有する構成とすると共に、それぞれの歯部81A,81Bにラック17,18,45,46が噛合する構成としてもよい。なお、図20は、第1の実施の形態の変形例に対応し、図21は、第2の実施の形態の変形例に対応するものである。
このような構成の場合は、ラック17,18,45,46の変位量とピニオン81の変位量との関係は、ピニオン81の各歯部81A,81Bの直径の比によって決まる。このため、ピニオン81の各歯部81A,81Bの直径比の設定により、電動式ダンパ(電動アクチュエータ)14,43を低速高トルクのものや高速低トルクのものにすることができ、設計の自由度を向上することができる。
上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態では、ギヤ装置15,44を単一のピニオン19,47により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図22に示す第5の変形例および図23に示す第6の変形例のように、複数のピニオン91,92を並列配置で設ける構成としてもよい。なお、図22は、第1の実施の形態の変形例に対応し、図23は、第2の実施の形態の変形例に対応するものである。このような構成の場合は、ラック17,18,45,46とピニオン91,92との噛合部位の強度、耐久性の確保を図ることができる。
上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態では、切換手段をラック17,18,45,46とピニオン19,47からなるギヤ装置15,44により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図24に示す第7の変形例のように、減衰ダンパ42のロッド42Bと電動式ダンパ43の可動子43Bと車体側に設けられた車体締結部材101とを連結ロッド102により連結する構成としてもよい。この場合、連結ロッド102は、ロッド42B、可動子43B、車体締結部材101に対して軸受、ピン等の回転支持部材103を介して揺動可能に連結する、なお、図24は、第2の実施の形態の変形例に対応するものである。
上述した第1の実施の形態や第2の実施の形態では、減衰ダンパ13,42として減衰力が一定のものを用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図25に示す第8の変形例のように、減衰ダンパ111として減衰力の調整が可能なもの(セミアクティブダンパ)を用いる構成としてもよい。
この場合、並列接続時に、電動式ダンパ43と減衰ダンパ111との両方の発生力(推力、減衰力)を調節(制御)することができる(ダンパ装置41の発生力を電動式ダンパ43と減衰ダンパ111とで分担して発生させることができる)。より具体的には、ダンパ装置41の発生力のうち、抵抗力を主として減衰ダンパ111で担い、アシスト力を主として電動式ダンパ43に担わせることにより、車両の振動低減を図りつつ、消費電力を低減することができる。さらに、抵抗力を減衰ダンパ111で担う際に、電動式ダンパ43を回生領域で働かせることで、更なる消費電力の低減を図ることができる。
上述した第1の実施の形態では、ギヤ装置15のピニオン19を車体2の中心ピン6を囲むように設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ピニオンを中心ピン(牽引装置の柱)から外れた位置に設ける構成としてもよい。即ち、ギヤ装置(切換手段)は、車体と台車との間で他の部材と干渉しない部位等に、台車と車体間の構成や牽引装置の構成等に応じて配置することができる。このことは、第2の実施の形態や第3の実施の形態についても同様である。
上述した各実施の形態では、力発生機構としてのダンパ装置12,41,51を減衰ダンパ13,42,52と電動式ダンパ14,43,65とが横置きとなる状態で鉄道車両等の車両(の車体2と台車5との間)に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、力発生機構を減衰ダンパと電動式ダンパとが縦置きとなる状態で自動車等の車両(の車体と車軸との間)に取付ける構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、力発生機構としてのダンパ装置12,41,51を車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる電磁サスペンションに用いてもよい。
以上の実施の形態によれば、状況に応じて所望の力を発生させることができる。
即ち、切換手段により、一の力発生手段と他の力発生手段とを直列接続と並列接続とに切換えることができる。このため、状況に応じて切換手段により直列接続と並列接続とを切換えることにより、一の力発生手段と他の力発生手段とのうちの一方または両方を用いて所望の力を発生させることができる。
実施の形態によれば、切換手段は、減衰ダンパと電動式ダンパとを直列接続と並列接続とに切換えることができる。このため、状況に応じて切換手段により直列接続と並列接続とを切換えることにより、減衰ダンパと電動式ダンパとのうちの一方のダンパまたは両方のダンパを用いて所望の力を発生させることができる。この場合、例えば切換手段により直列接続にすると共に、減衰ダンパと電動式ダンパとのうちの一方のダンパをロック(固定)することにより、他方のダンパを単独で用いることができる。また、例えば、切換手段により並列接続にすることにより、減衰ダンパと電動式ダンパとの両方のダンパから力を得るようにすることができる。
実施の形態によれば、切換手段を、ラックとピニオンとにより構成しているので、直列接続と並列接続との何れの切換状態(運転モード)でも、切換手段による力の伝達を安定して行うことができる。この場合、切換手段は、ピニオンと、該ピニオンに噛合する1対のラックとにより構成し、一方の部材には、減衰ダンパのロッドとシリンダとの一方と電動式ダンパの固定子と可動子との一方を取付け、減衰ダンパのロッドとシリンダとの他方には、ピニオンと一対のラックとの3つの部材のうちの何れかを取付け、電動式ダンパの固定子と可動子との他方には、残り2つの部材のうちの何れかを取付け、他方の部材には、残り1つの部材を取付けることができる。
実施の形態によれば、ピニオンのギヤの摩擦力を可変としているので、例えば摩擦力を0(ピニオンの回転を自由)にすることにより、切換状態を例えば直列接続にすることができる。一方、摩擦力を最大にする(ピニオンの回転を阻止する)ことにより、切換状態を例えば並列接続にすることができる。この場合、一方の力発生手段(例えば電動式ダンパ)と他方の力発生手段(例えば減衰ダンパ)のうちの少なくとも一方には、相対移動(伸縮)を規制(阻止,禁止)するロック装置(ブレーキ装置)を設けることにより、パッシブ状態とアクティブ状態とを切換えることができる。
実施の形態によれば、力発生機構を車体と台車との間に設ける左右動ダンパとして用いる構成としているので、車体と台車との間で状況に応じた所望の力を安定して発生させることができる。これにより、鉄道車両の性能の向上を図ることができる。
2 車体(一方の部材または他方の部材)
5 台車(他方の部材または一方の部材)
12,41,51 ダンパ装置(力発生機構、左右動ダンパ装置)
13,42,52,111 減衰ダンパ(力発生手段)
13A,42A,53 シリンダ
13B,42B ロッド
14,43,65,71 電動式ダンパ(力発生手段)
14A,43A,65A 固定子
14B,43B,65B 可動子
15,44 ギヤ装置(切換手段)
17,18,45,46 ラック
19,47,81,91,92 ピニオン
20 ピニオンブレーキ装置
59 第1のロッド
60 第2のロッド
66 流量調整装置(切換手段)
67 減衰ダンパロック装置(切換手段)
102 連結ロッド(切換手段)

Claims (9)

  1. 相対運動する一方の部材と他方の部材の2部材間に設けられる力発生機構であって、
    該力発生機構は、複数の直動型の力発生手段からなり、
    一と他の前記力発生手段との間には、該一と他の前記力発生手段を力学的に直列接続と並列接続に切換え可能な切換手段が設けられたことを特徴とする力発生機構。
  2. 前記切換手段は、前記一と他の前記力発生手段を力学的に直列接続と並列接続によって発生する力の配分を切換えることを特徴とする請求項1に記載の力発生機構。
  3. 一の前記力発生手段は、シリンダからロッドが突出し、該ロッドの進退の運動エネルギを熱エネルギに変換することで減衰力を発生する減衰ダンパであって、
    他の前記力発生手段は、固定子と該固定子に対して直線方向に相対移動する可動子とからなる電動式ダンパであることを特徴とする請求項1または2に記載の力発生機構。
  4. 前記切換手段は、ラックとピニオンからなることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の力発生機構。
  5. 前記ピニオンのギヤの摩擦力を可変とすることを特徴とする請求項4に記載の力発生機構。
  6. 前記一方の部材は車体、前記他方の部材は台車であって、前記力発生機構は左右動ダンパ装置であることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の力発生機構。
  7. 前記車体と前記台車との間には、前記台車に対して前記車体を上、下方向および左、右方向の揺動を可能に支持する空気ばねを設けることを特徴とする請求項6に記載の力発生機構。
  8. 前記減衰ダンパのロッドと前記電動式ダンパの可動子とにそれぞれラックを設けると共に、前記車体にピニオンを設ける構成とすることを特徴とする請求項6に記載の力発生機構。
  9. 前記ピニオンは前記台車の回転中心と同心に配置されることを特徴とする請求項8に記載の力発生機構。
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