JP5778080B2 - 多孔質ガラス母材の熱処理装置 - Google Patents

多孔質ガラス母材の熱処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質ガラス母材を熱処理してガラス化するための多孔質ガラス母材の熱処理装置に関するものである。
光ファイバ用のガラス母材を製造するためには、例えば、OVD法(Outside Vapor Deposition method)等によって製造された多孔質ガラス母材を熱処理してガラス化する方法がある。
多孔質ガラス母材をガラス化するための熱処理装置としては、例えば図11に示すような熱処理装置100が用いられる。熱処理装置100は、主に、発熱体105を保持する炉体103と、炉体103の内部に設置される均熱管107と、均熱管107の内部に設置される炉心管109等から構成される。
炉心管109は、上部外周に突設された鍔部109aと、下部外周に突設された鍔部109bとを有する。鍔部109aは、炉体103の上面に載せられ、鍔部109bは炉体103の底面に載せられて、炉心管109が炉体103に支持される。
炉心管103の上端は上蓋により塞がれており、この上蓋には孔115が形成される。孔115は、多孔質ガラス母材117を支持する支持部材を貫通する部位である。炉心管109の下端には処理ガス導入口111が設けられ、炉心管109内にHeガスやClガス等が供給される。また、炉心管109の上部には、炉心管109内の排気ガスを排出する排気口113が設けられる。
均熱管107は、発熱体105の配置による温度ムラ等を防止して均一に多孔質ガラス母材117を加熱するためのものである。炉心管109は、耐熱性や、処理ガス等に対する耐食性、内部に配置される多孔質ガラス母材に対する汚染防止等の観点から、通常、石英製のものが使用される。また、均熱管107は、耐熱性やその強度から、カーボン製のものが使用される。
石英系の多孔質ガラス母材117を熱処理するためには、通常、1400℃以上に加熱する必要がある。しかしながら、このような高温下で長時間使用すると、石英製の炉心管109が変形する恐れがある。すなわち、炉心管109が熱により軟化し、その自重によって変形(座屈など)を生じる恐れがある。
このような使用時における石英製の炉心管109の変形を押さえる方法としては、例えば、炉心管の自重を長手方向に分割して負担する炉心管自重分割負担手段を備えた加熱炉が提案されている(特許文献1)。
特開2000−226217号公報
しかし、カーボン製の均熱管と石英製の炉心管とを接触させた状態で前述のような高温で使用すると、炉心管を均熱管で支持しているにも関わらず、長期間の使用によって炉心管の変形が進行する。すなわち、従来の方法では、炉心管の変形を確実に防止することが困難であり、より長期間にわたって安定して使用可能な熱処理装置が要求されている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、従来と比較してより炉心管の変形を抑制することが可能な、多孔質ガラス母材の熱処理装置を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、本発明は、多孔質ガラス母材の熱処理装置であって、内部に多孔質ガラス母材を配置可能な石英製の炉心管と、前記炉心管の外周に設けられる均熱管と、前記均熱管の外周に設けられる発熱体と、前記発熱体を覆う炉体と、を具備し、前記均熱管は、前記発熱体によって1400℃以上に加熱される領域の少なくとも一部が前記炉心管と接触し、前記均熱管の前記炉心管との接触部は炭化ケイ素で構成されることを特徴とする多孔質ガラス母材の熱処理装置である。
前記均熱管はカーボン製であり、前記均熱管の前記炉心管との接触部には炭化ケイ素がコーティングされてもよく、前記均熱管は、前記炉心管との接触部に配置される炭化ケイ素製のスペーサを具備してもよい。
前記炉心管の外面には、径方向に突出する鍔部が、長手方向に所定間隔で複数形成され、前記均熱管は、長手方向に複数に分割されるとともに、周方向に複数に分割され、前記鍔部は、分割されたそれぞれの前記均熱管によって支持され、分割された前記均熱管の上下端面および内面が炭化ケイ素で構成されてもよい。
前記炉心管の外面には、径方向に突出する鉤型の第1の鍔部が、長手方向に所定間隔で複数形成され、前記均熱管の内面には、前記第1の鍔部と嵌合可能な鉤型の第2の鍔部が形成され、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とが嵌合し、前記炉心管が前記均熱管によって支持され、前記1の鍔部および前記炉心管と接触する前記第2の鍔部の表面が炭化ケイ素で構成されてもよい。
本発明によれば、石英製の炉心管を均熱管と接触させることで、炉心管を均熱管によって支持することができるとともに、炉心管と接触する部位が炭化ケイ素で構成されるため、炉心管と均熱管との接触界面でのカーボンによる石英の還元反応を抑えることができる。このため、均熱管の消耗を抑制することができ、これに伴う炉心管の変形を抑制することができる。
なお、炭化ケイ素は、カーボン表面の必要な部位にのみコーティングすることで、炭化ケイ素の使用を最小限に抑えることができる。また、コーティングではなく、均熱管の一部に、炭化ケイ素製のスペーサを設けて、石英製の均熱管とカーボンとが直接接触することを防止することもできる。
また、均熱管の外面に、径方向に突出する鍔部を複数形成し、長手方向に複数に分割されるとともに、周方向に複数に分割された均熱管によって炉心管(鍔部)を支持することで、炉心管の変形を抑制可能であるとともに、炉心管と接触する部位および炉心管の多少の変形によって接触する可能性がある部位を炭化ケイ素で構成することで、効率良く、均熱管等の消耗を抑え、炉心管のそれ以上の変形の進行を抑制することができる。
本発明によれば、従来と比較してより炉心管の変形を抑制することが可能な、多孔質ガラス母材の熱処理装置を提供することができる。
熱処理装置1を示す図で(a)は概略構成図、(b)は(a)のA部拡大図。 各反応の平衡定数を示す図。 熱処理装置20を示す概略構成図。 炉心管23および均熱管21の構成を示す分解斜視図。 炉心管23および均熱管21の構成を示す組み立て斜視図。 鍔部23b近傍の断面拡大図であり、図5のG部におけるH−H線断面図。 スペーサ31を用いた場合の、炉心管23および均熱管21の構成を示す分解斜視図。 図7に対する鍔部23b近傍の断面拡大図。 熱処理装置40を示す概略構成図。 鍔部23bの他の形態を示す図。 従来の熱処理装置100を示す概略構成図。
以下、本発明の実施の形態にかかる熱処理装置1について説明する。図1(a)は、熱処理装置1の概略構成図である。熱処理装置1は主に、炉体3、発熱体5、均熱管7、炉心管9等から構成される。
熱処理装置1は、発熱体5および発熱体5を保持する炉体3を有する。発熱体5は、熱処理対象となる多孔質ガラス母材を例えば1400℃以上に加熱可能である。なお、炉体3の内部には、ArガスやNガス等の不活性ガスを供給することが可能である。
発熱体5の内面側には、均熱管7が設けられる。均熱管7は、発熱体5からの熱を加熱対象に対して均一に伝えるものである。均熱管7は、高温での使用に対する耐熱性やコスト等を考慮して例えばカーボン製であることが望ましい。
均熱管7の内面側には、炉心管9が挿入される。炉心管9の外周面は均熱管7の内周面に接触する。したがって、少なくとも発熱体5による加熱領域においては、炉心管9の外周面側が均熱管7の内周面によって支持される。
炉心管9の下端側には処理ガス導入口11が設けられる。また、炉心管9の上端近傍には排気口13が設けられる。処理ガス導入口11から処理ガス(HeガスやClガス等)が炉心管9の内部に供給される(図中矢印B方向)。また、排気口13からは、炉心管9内部のガスが排出される(図中矢印C方向)。
炉心管9の上端部には上蓋が設けられ、上蓋には孔15が形成される。孔15は多孔質ガラス母材17を支持する支持部材を挿入する部位である。炉心管9内部に配置される多孔質ガラス母材17は、回転させながら徐々に下方に移動させられる。このようにすることで、多孔質ガラス母材17が炉心管9の内部において高温領域を通過する際に、処理ガス中で熱処理されて、下部から順次ガラス化することができる。なお、石英系の多孔質ガラス母材17をガラス化するためには、熱処理温度としては1400℃以上とすることが望ましい。この際、均熱管7と炉心管9との接触部の温度は、例えば1400〜1450℃程度となる。
図1(b)は図1(a)のA部拡大図であり、炉心管9と均熱管7との接触部近傍を示す断面拡大図である。前述の通り、均熱管7はカーボン製である。均熱管7の表面であって炉心管9との接触部にはコーティング7aが設けられる。コーティング7aは炭化ケイ素のコーティングである。
コーティング7aの厚みは、50μm〜200μmであることが望ましい。コーティング7aが50μmよりも薄いと、本発明の効果を十分に得ることができない。また、コーティング7aを200μmよりも厚くしてもそれ以上効果を得ることが困難であり、コストに対する十分な効果を得ることが困難である。したがって、コーティング7aの厚みは上述の範囲で設定される。なお、コーティング7aとしては、緻密なコーティング層を形成することが望ましく、例えばCVD等により形成することが好ましい。
また、均熱管7を構成する母材としては、コーティング7aを構成する炭化ケイ素に対して略同等の線膨張係数を有するカーボン製であることが望ましい。以上のように構成される熱処理装置1を用いれば、高温領域において、石英製の炉心管9は外周側を均熱管7によって支持されるため、その変形が抑制される。
ここで、発明者らは、コーティング7aを施さずに、石英製の炉心管9とカーボン製の均熱管7とを接触させると、1400℃以上の使用温度における界面においては、以下の反応が進行することを見出した。
SiO+C→SiO+CO (1)
すなわち、(1)式のように、均熱管のカーボンや炉心管の石英が反応によって消耗する。このため、均熱管7等の表面が消耗することで、炉心管9を十分に支持することが困難となるとともに、炉心管9も薄くなり変形が進行する。したがって、炉心管9の変形等に伴い、炉心管9等の交換を所定期間毎に行う必要がある。
一方、本発明の構成によれば、石英製の炉心管9は、均熱管7を構成するカーボンとは直接は接触しない。すなわち、均熱管7の表面を炭化ケイ素で構成することで、(1)式の反応が進行せず、以下の反応が進行する。
2SiO+SiC→3SiO+CO (2)
図2は、それぞれの(1)式、(2)式の反応の各温度における平衡定数を示す図である。図2のKは(1)式の反応(SiO(s)+C(s)=SiO(g)+CO(g))に対応するものであり、Lは(2)式の反応(2SiO(s)+SiC(s)=3SiO(g)+CO(g))に対応するものである。
図2からも明らかなように、1400℃近傍において、(1)式の反応の平衡定数に対して(2)式の反応の平衡定数は約5桁程度小さい。したがって、(1)式の反応と比較して、(2)式の反応は進行しにくい。すなわち、発明者らは、均熱管7の表面を炭化ケイ素とすることで、炭化ケイ素がカーボンと比較して消耗しにくいため(反応が進行しないため)、上述した反応に伴う炉心管9の変形を抑制可能であることを見出した。
以上のように、本発明によれば、従来のようなカーボンのみによる均熱管によって炉心管を支持する場合と比較して、均熱管等の消耗を抑制することができる。このため、炉心管の変形を抑制することができる。したがって、炉心管の寿命を延ばし、長期にわたって連続して当該炉心管を用いることができる。このため、光ファイバ母材の生産性を高めることができる。
特に、本発明においては、カーボンと酸素ガスとの反応を抑制するのではなく、あくまでも炉心管との接触部における石英とカーボンとの接触部における反応を抑制するものである。このため、コーティング7aは炉心管と接触する部位にのみ形成すればよい。
なお、本発明は、対象となる熱処理炉が炉体全体を減圧にしながら熱処理を行う減圧炉である場合に、より高い効果を得ることができる。これは、減圧することで還元雰囲気となり、接触部近傍の酸素分圧が小さくなるため、そもそも上記反応式((1)式および(2)式)が右側に進行しやすく、また、還元雰囲気となるため、炉心管の還元反応が進行しやすくなるためである。このため、従来の方法では急激に均熱管等の消耗が進行するが、本発明によれば、この消耗を確実に抑制することができる。
次に、他の実施形態について説明する。図3は、熱処理装置20を示す図である。なお、以下の説明において、熱処理装置1と同様の機能を奏する構成については、図1と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。熱処理装置20は熱処理装置1と比較して、炉心管および均熱管の構成が異なる。
石英製の炉心管23は、上部外周に突設された鍔部23aと、下部外周に突設された鍔部23cとを有する。鍔部23aは、炉体3の上面に載せられ、鍔部23cは炉体3の底面に載せられて、炉心管23が炉体3に支持される。また、炉心管23の鍔部23a、23cの中間であって、長手方向に所定間隔で複数の鍔部23bが設けられる。鍔部23bは、炉心管23の外周に突設される。
炉心管23内部に配置される多孔質ガラス母材17は、回転させながら複数の発熱体5で加熱される。このようにすることで、多孔質ガラス母材17を、炉心管9の内部においてガラス化させることができる。
なお、熱処理装置20は、長手方向に複数の発熱体5を有するため、これらの複数の発熱体5を同時に高温にすることにより多孔質ガラス母材17の全長を同時に加熱することができる。また、各発熱体への通電を制御することで発熱体5が作る加熱ゾーンを上下方向に動かすことにより、多孔質ガラス母材17の片端から順に加熱することも可能である。
このように長手方向に複数の発熱体5を有する熱処理装置20は、図1に示す発熱体5が1つである熱処理装置1と比較して、炉心管の変形が起き易い。したがって、長手方向に複数の発熱体5を有する熱処理装置20に本発明を適用するとより大きな効果が得られる。
炉心管23の外周には、均熱管21が所定の間隔をあけて設けられる。図4は、炉心管23および均熱管21の構成を示す分解斜視図であり、図5は組み立て斜視図である。均熱管21は長手方向に複数に分割される。また、均熱管21は、割り部25によって、周方向に複数(図では2つ)に分割される。
分割された均熱管21は、隣り合う鍔部23b間(鍔部23bと鍔部23aまたは23cとの間)に配置される(図中矢印F方向)。すなわち、周方向に分割された均熱管21が互いに向き合うように炉心管23の外周に嵌められる。また、長手方向に分割されたそれぞれの均熱管21は、上下に隣接する各鍔部23b間の長さに設定される。したがって、炉心管23自身の自重が、複数の均熱管21によって長手方向に分割されて負担される。すなわち、炉心管23は均熱管21によって支持され、高温加熱時に炉心管23が自重により座屈変形することが抑制される。
図6は、鍔部23b近傍の断面拡大図であり、図5のG部におけるH−H線断面図である。均熱管21の内面27(炉心管23との対向面)と、上下の端面29にはコーティング21aが形成される。コーティング21aは、前述のコーティング7aと同様の構成であり、炭化ケイ素で構成される。
すなわち、炉心管23(各鍔部)と接触する端面29にコーティング21aが形成されるため、石英製の炉心管23が均熱管21の母材であるカーボンと直接接触することがない。したがって、炉心管23と均熱管21との接触界面において、前述した(1)式の反応が進行せず、均熱管21等の消耗を抑制し、これによる炉心管23の変形を抑制することができる。
なお、本実施形態では、均熱管21の内面27にもコーティング21aが形成される。これは、炉心管23外周面と均熱管21の内周面との隙間が小さいため、炉心管23がわずかに変形した際に、炉心管23が均熱管21の内面と接触し、この接触部において、前述した(1)式の反応が進行することを防止するためである。
以上、本実施形態によれば、炉心管23の自重が、長手方向に複数に分割されて均熱管21によって支持されるため、炉心管23の座屈変形を抑制することができる。また、均熱管21は、炉心管23と接触する部位にコーティング21aが設けられるため、従来のようなカーボンと炉心管とが接触する場合と比較して、均熱管等の消耗を抑制することができる。このため、炉心管の変形を抑制することができる。したがって、炉心管の寿命を延ばし、長期にわたって連続して当該炉心管を用いることができる。
図7は、熱処理装置20に対して、さらにスペーサ31を用いた場合の、炉心管23および均熱管21の構成を示す分解斜視図であり、図8は、スペーサ31を用いた場合における図6に対応する断面図である。
スペーサ31は、炭化ケイ素からなる部材である。図7に示すように、スペーサ31は均熱管21とともに、隣り合う鍔部23b間(鍔部23bと鍔部23aまたは23cとの間)に配置される(図中矢印I方向)。また、長手方向に分割されたそれぞれの均熱管21と、上下に設けられるスペーサ31の厚みとを足した長さが、上下に隣接する各鍔部23b間の長さに設定される。したがって、炉心管23自身の自重が、複数の均熱管21およびスペーサ31によって長手方向に分割されて負担される。
なお、本発明においては、スペーサ31は均熱管21を構成する一部として扱うものとする。また、スペーサ31は、均熱管21と同一の断面形状である必要はなく、少なくとも、均熱管21の上下の端面29の一部に形成されれば良い。
図8に示すように、スペーサ31を用いることで、均熱管21の母材(カーボン)と炉心管23(鍔部23b)とが直接接触せず、スペーサ31を介して炉心管23が均熱管21に支持される。したがって、均熱管等の消耗を抑制することができる。このため、炉心管の変形を抑制することができる。
次に、さらに他の実施形態について説明する。図9は、熱処理装置40を示す図である。熱処理装置40はいわゆる減圧炉である。なお、以下の説明において、熱処理装置1または熱処理装置20と同様の機能を奏する構成については、図1および図3と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。熱処理装置40は熱処理装置1、20と比較して、炉心管23、炉体3および均熱管21の構成が異なる。
石英製の炉心管23は、下部外周に突設された鍔部23cを有する。鍔部23cは炉体3の底面に載せられて、炉心管23が炉体3に支持される。また、炉心管23の鍔部23a、23cの中間であって、長手方向に所定間隔で複数の鍔部23bが設けられる。鍔部23bは、炉心管23の外周に突設される。
炉心管23内部に配置される多孔質ガラス母材17は、回転させながら複数の発熱体5で加熱される。このようにすることで、多孔質ガラス母材17を、炉心管23の内部においてガラス化させることができる。
また、熱処理装置40には、真空ポンプ47が接続される。処理ガス導入口11から炉心管23の内部に導入されたガスは、処理ガス排出口43から真空ポンプ47によって排気される。また、炉体ガス導入口41から炉体3内部に導入されたガスは、炉体ガス排出口45より真空ポンプ47により排気され減圧することができる。
なお、熱処理装置40は、長手方向に複数の発熱体5を有するため、これらの複数の発熱体5を同時に高温にすることにより多孔質ガラス母材17の全長を同時に加熱することができる。また、各発熱体への通電を制御することで発熱体5が作る加熱ゾーンを上下方向に動かすことにより、多孔質ガラス母材17の片端から順に加熱することも可能である。
このように長手方向に複数の発熱体5を有する熱処理装置40は、図1に示す発熱体5が1つである熱処理装置1と比較して、炉心管23の変形が起き易い。したがって、長手方向に複数の発熱体5を有する熱処理装置40に本発明を適用するとより大きな効果が得られる。
熱処理装置20と同様に、炉心管23の外周には、均熱管21が所定の間隔をあけて設けられる。均熱管21は長手方向に複数に分割される。また、均熱管21は、周方向に複数に分割される。分割された均熱管21は、隣り合う鍔部23b間(鍔部23bと鍔部23aまたは23cとの間)に配置される。また、長手方向に分割されたそれぞれの均熱管21は、上下に隣接する各鍔部23b間の長さに設定される。したがって、炉心管23自身の自重が、複数の均熱管21によって長手方向に分割されて負担される。すなわち、炉心管23は均熱管21によって支持され、高温加熱時に炉心管23が自重により座屈変形することが抑制される。
以上、熱処理装置40によれば、熱処理装置20と同様の効果を得ることができる。特に、減圧炉では、前述の(1)式が右に進行しやすいため、より大きな効果を得ることができる。
なお、鍔部23b近傍の構成としては前述したような図6に示すように構成してもよく、図8のように構成してもよい。また、図10に示すように、鍔部23bを鉤型としてもよい。
図10に示す例では、炉心管23の外周には鉤型の鍔部23bが設けられる。鍔部23bは、炉心管23の外周に突出し先端において下方に屈曲して形成される。一方、均熱管21には、鍔部23dが設けられる。鍔部23dは、炉心管23の内面側に突出し、先端が上方に屈曲して形成される。鍔部23bと鍔部23dとは互いに嵌合することができる。均熱管21は、図4、図7に示すように、半割形状である。なお、均熱管21の長手方向については、一体であってもよく、図4、図7と同様に、複数に分割してもよい。
均熱管21の内径は、炉心管23の外周に形成された鍔部23bを含む外径よりも大きい。また、鍔部23dの位置での均熱管21の内径は、炉心管23の鍔部23b以外の部位における外径よりも大きい。なお、鍔部23dの内面側と炉心管23の外面との隙間は、鍔部23bの外面と均熱管21の内面との隙間よりも小さい。したがって、鍔部23bと鍔部23dとを嵌合させた際に、炉心管23(鍔部23b)は、鍔部23d以外において均熱管21とは接触しない。
鍔部23dは、均熱管21(鍔部23b)と接触する可能性のある部位に、前述したコーティング21aが形成される。したがって、石英製の炉心管23が均熱管21の母材であるカーボンと直接接触することがない。したがって、炉心管23と均熱管21との接触界面において、前述した(1)式の反応が進行せず、均熱管21等の消耗を抑制し、これによる炉心管23の変形を抑制することができる。なお、炉心管23が変形した際に、均熱管21と接触することを防止するため、鍔に23d以外における均熱管21の内面にコーティング21aを形成してもよい。
以下、石英製の炉心管およびカーボン製の均熱管を有する各種の熱処理装置を用いて長期使用を行い、その際の炉心管の寿命を調査した。なお、いずれの熱処理装置においても、炉心管と均熱管との接触部の最高温度が1450℃程度となる条件で使用された。結果を表1に示す。
Figure 0005778080
熱処理装置No.1は、図1に示す熱処理装置1と略同様の構造である。図1におけるコーティング7aとしては、炭化ケイ素をCVDによって50μm形成した。
熱処理装置No.2は、図3に示す熱処理装置20と略同様の構造である。図図6におけるコーティング21aとしては、炭化ケイ素をCVDによって100μm形成した。
熱処理装置No.3は、図1に示す熱処理装置1と略同様の構造であるが、均熱管にはコーティングを施さず、カーボンと炉心管とが直接接触するものである。
熱処理装置No.4は、図3に示す熱処理装置20と略同様の構造であるが、均熱管にはコーティングを施さず、カーボンと炉心管とが直接接触するものである。
表1に示すように、本発明の実施形態であるコーティングを施した熱処理装置No.1、No.2は、長期にわたって炉心管が破損等することなく、継続して使用することができた。
これに対し、コーティングを施していない熱処理装置No.3は、約1年の使用で、炉心管が座屈変形した。内部を確認すると、均熱管が消耗して薄くなっている部分が見られた。
また、同様にコーティングを施していない熱処理装置No.4は、約7カ月の使用で、炉心管が座屈変形して、割れが生じた。内部を確認すると、均熱管が消耗し、炉心管を支持することができない部位が見られた。
以上のように、石英製の炉心管を均熱管で支持することで、炉心管の変形を抑制するとともに、この接触部に炭化ケイ素のコーティングを施すことで、接触部における均熱管の消耗を抑制し、これに伴う炉心管の変形を抑制することができる。このため、炉心管の寿命を長くすることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記説明した各実施例の構成は、互いに組み合わせることが可能であることは言うまでもない。例えば、図10に示した鍔部23b、23dの構成を、熱処理装置1、20に適用してもよい。また、均熱管全体を炭化ケイ素で構成しても、当然に同様の効果を得ることができる。また、コーティング等の材質は、炭化ケイ素以外であってもよい。例えば、使用温度(約1400℃)において、前述した(1)式の平衡定数に対して、炭化ケイ素と同様に石英との反応の平衡定数の小さな物質(例えば5桁以上小さな物質)を用いてもよい。
1、20、40………熱処理装置
3………炉体
5………発熱体
7、21………均熱管
7a、21a………コーティング
9、23………炉心管
11………処理ガス導入口
13………排気口
15………孔
17………多孔質ガラス母材
23a、23b、23c………鍔部
25………割り部
27………内面
29………端面
31………スペーサ
41………炉体ガス導入口
43………処理ガス排出口
45………炉体ガス排出口
47………真空ポンプ
100………熱処理装置
103………炉体
105………発熱体
107………均熱管
109………炉心管
109a、109b………鍔部
111………処理ガス導入口
113………排気口
115………孔
117………多孔質ガラス母材

Claims (5)

  1. 多孔質ガラス母材の熱処理装置であって、
    内部に多孔質ガラス母材を配置可能な石英製の炉心管と、
    前記炉心管の外周に設けられる均熱管と、
    前記均熱管の外周に設けられる発熱体と、
    前記発熱体を覆う炉体と、
    を具備し、
    前記均熱管は、前記発熱体によって1400℃以上に加熱される領域の少なくとも一部が前記炉心管と接触し、前記均熱管の前記炉心管との接触部は炭化ケイ素で構成されることを特徴とする多孔質ガラス母材の熱処理装置。
  2. 前記均熱管はカーボン製であり、前記均熱管の前記炉心管との接触部には炭化ケイ素がコーティングされることを特徴とする請求項1記載の多孔質ガラス母材の熱処理装置。
  3. 前記均熱管はカーボン製であり、
    前記均熱管は、前記炉心管との接触部に配置される炭化ケイ素製のスペーサを具備することを特徴とする請求項1記載の多孔質ガラス母材の熱処理装置。
  4. 前記炉心管の外面には、径方向に突出する鍔部が、長手方向に所定間隔で複数形成され、
    前記均熱管は、長手方向に複数に分割されるとともに、周方向に複数に分割され、
    前記鍔部は、分割されたそれぞれの前記均熱管によって支持され、
    分割された前記均熱管の上下端面および内面が炭化ケイ素で構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多孔質ガラス母材の熱処理装置。
  5. 前記炉心管の外面には、径方向に突出する鉤型の第1の鍔部が、長手方向に所定間隔で複数形成され、
    前記均熱管の内面には、前記第1の鍔部と嵌合可能な鉤型の第2の鍔部が形成され、
    前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とが嵌合し、前記炉心管が前記均熱管によって支持され、
    前記1の鍔部および前記炉心管と接触する前記第2の鍔部の表面が炭化ケイ素で構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多孔質ガラス母材の熱処理装置。
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