JP5776472B2 - 車両補強用中空部材 - Google Patents
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Description
本発明は、接合部信頼性、エネルギーコスト、表面性状、製品形状の各点で有利に製造できる、引張強度(TS)1470MPa以上級の車両補強用中空部材を提供することを目的とする。
(1) C:0.15〜0.20質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:1.5〜3.0質量%、P:0.020質量%以下、S:0.005質量%以下、N:0.005質量%以下、Al:0.01〜0.05質量%、Ti:0.1質量%以下、Nb:0.1質量%以下、B:0.0005〜0.0030質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、焼戻しマルテンサイト相:95体積%以上且つ残留オーステナイト相:5体積%未満を含む組織をなし、引張強度が1470MPa以上である電縫鋼管を素管に用い、該素管の管長さ方向の一部分における管周方向の全域若しくは一部に対し500〜750℃に加熱後室温まで冷却する熱処理を施してなり、該熱処理部の引張強度が未熱処理部に比し400MPa以上低く、且つ、前記熱処理部の引張強度と伸びの積が12000MPa・%以上であることを特徴とする車両補強用中空部材。
(2) 前記電縫鋼管は、Cu:0.20質量%以下を含有することを特徴とする(1)に記載の車両補強用中空部材。
[化学組成]
(C:0.15〜0.20質量%)
Cは、オーステナイト相を安定化させる元素であると共に、電縫鋼管の強度を得る為に必要な元素である。C含有量が0.15質量%未満ではマルテンサイト単相組織であっても1470MPa以上の引張強度を得る事が困難となる。一方、0.20質量%を超えると、鋼管の強度が過剰に上昇し、加工性が劣化する。この為、C量は0.15〜0.20質量%の範囲とする。好ましくは0.17〜0.19質量%の範囲である。
Siは、電縫溶接部の健全性を確保する為に添加され、その効果はその含有量が0.01〜0.5質量%で発揮される為、Siの含有量を0.01〜0.5質量%とする。
(Mn:1.5〜3.0質量%)
Mnは、管素材に用いる冷延鋼板のオーステナイトの焼入れ性を向上させて所望のマルテンサイトを生成させ、目標とする強度を確保するために必須な元素である。然し、含有量が1.5質量%未満であると、目標とする1470MPa以上の引張強度を得る事が困難となる。一方、3.0質量%を超えると偏析が顕著となり、又、電縫鋼管の強度が過剰に上昇し、加工性が劣化する。それ故、Mn量は1.5〜3.0質量%の範囲とする。好ましくは、1.5〜2.0質量%の範囲である。
Pは、粒界偏析による粒界破壊を助長する元素であり、その含有はできるだけ低い方が望ましい為、その上限を0.020質量%とする。好ましくは0.010質量%以下である。特に溶接性向上の観点からは、0.008質量%以下とする事が好ましい。
(S:0.005質量%以下)
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃特性や耐遅れ破壊特性の劣化を誘引する為、その含有量は極力低くする事が望ましく、その上限を0.005質量%とする。好ましくは0.001質量%以下である。
Alは、脱酸の為に有効な元素であるので、0.01質量%以上含有させるものとする。然しながら、多量に添加すると鋼板(電縫鋼管の素材)中の介在物が増加して延性を低下させる為、その上限を0.05質量%とする。
(N:0.005質量%以下)
Nは、不可避的不純物であり、窒化物を形成する。特に含有量が0.005質量%超になると窒化物の形成により高温及び低温での延性が低下する。その為、N量は0.005質量%以下とする。
Ti,Nbは何れも、炭化物や窒化物等の析出物を形成し、鋼の強度を上昇させる他、結晶粒を微細にする事により、降伏強度を高める為に有効な元素である。これらの効果を得る為には各0.01質量%以上の添加が好ましいが、各0.1質量%を超えるとその効果が飽和する。それ故Ti,Nb量は夫々0.1質量%以下とする。
Bは、鋼の焼入れ性を向上させ、マルテンサイト単相組織をより容易に得る為に有効な元素である。然しながら、含有量が0.0005質量%未満の添加ではその添加効果に乏しく、一方0.0030質量%を超えて添加しても焼入れ性向上効果は飽和し、むしろ延性の低下が懸念される。それ故、B量は0.0005〜0.0030質量%の範囲とする。好ましくは0.0005〜0.0020質量%の範囲である。
Cuは、本発明では任意選択添加元素であるが、オーステナイト相を安定化させ、マルテンサイト単相組織を得やすくするだけでなく、腐食環境下において鋼板表層に濃化層を形成する事により鋼中への水素の侵入を抑制し、耐遅れ破壊特性を向上させる作用がある。然しながら、添加量が0.20質量%を超えるとこれらの効果は飽和する為、Cuは0.20質量%以下で含有させるものとした。
上記成分を除いた残部はFe及び不可避的不純物である。
[素管のTS≧1470MPa]
素管のTSが1470MPa未満であると、車両補強用中空部材の強度特性が不十分であるため、TS≧1470MPaとする。
[素管の組織]
素管の組織は、TS1470MPa級以上の高強度と十分な延性を確保するために、焼戻しマルテンサイト相:95体積%以上且つ残留オーステナイト相:5体積%未満(残留オーステナイト相が0体積%の場合も含まれる)を含む組織とする必要がある。好ましくは、焼戻しマルテンサイト単相組織である。
[軟質化:Δ400MPa以上]
TS1470MPa以上の超高強度電縫鋼管に対しては、Δ400MPa以上の軟質化をさせないと軟質化部(熱処理部)の延性確保(TS×EL≧12000MPa・%)が難しく、部品形状設計の自由度(小R曲げ加工性)を向上させる事が難しい 上限はΔ700MPa程度とするのが望ましい。Δ700MPa程度を超えて軟質化しようとすると、加熱温度を高くする、加熱保持時間を長くする、冷却速度を速くする、の少なくとも何れか1つの措置をとらねばならず、熱伝導により所定部分以外の軟質化領域が増加し、軟質化領域の明瞭な区分けが困難となる。
[TS×EL≧12000MPa・%]
TS×ELが12000MPa・%未満では、軟質化部(熱処理部)の延性が不足し部品形状設計の自由度が小さい。本発明規定の組成及び組織の電縫鋼管に本発明規定の熱処理を施すことで、TS×EL≧12000MPa・%が達成できる。
[管体の熱処理]
(加熱温度:500〜750℃)
加熱温度が500℃未満では加熱保持時間が数秒以下の短時間加熱でΔ400MPa(TS低下分で400MPa)以上の軟質化を達成する事が困難であり、一方、750℃超では、水冷環境下で冷却速度が速い場合、焼入れ処理となり軟質化させることが困難となるばかりか、TS×ELバランスが12000MPa・%未満となり延性が低下する。又、加熱温度が高め、加熱保持時間が長め、冷却速度が遅めの場合、熱伝導により所定部分以外の軟質化領域が増加し、軟質化領域の明瞭な区分けができなくなる。よって、加熱温度:500〜750℃とする。
加熱手段は、誘導加熱、レーザー加熱などエネルギー密度が高く、所定部位のみを短時間で加熱できる手段が望ましい。
加熱により生成したスケールが問題となる場合には、後工程でショットブラスト、酸洗などにより除去する。又は、不活性ガス雰囲気下で加熱することにより生成が抑制される。
又、上記部分熱処理した管体10全長を試験片として、図2(a)に示す要領にて曲げ加工を行い、曲げ加工性評価を行った。
又、上記部分熱処理した管体10全長を試験片として、図4(a)に示す要領にて曲げ加工を行い、曲げ加工性評価を行った。
1A 誘導加熱コイル(管体の1/4周(90°)部を加熱)
2 水冷ノズル
3 熱処理部(管体の長さ方向の一部分における全周(360°)部)
3A 熱処理部(管体の長さ方向の一部分における1/4周(90°)部)
4 未熱処理部
7 JIS14A引張試験片
10 管体
Claims (2)
- C:0.15〜0.20質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:1.5〜3.0質量%、P:0.020質量%以下、S:0.005質量%以下、N:0.005質量%以下、Al:0.01〜0.05質量%、Ti:0.1質量%以下、Nb:0.1質量%以下、B:0.0005〜0.0030質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、焼戻しマルテンサイト相:95体積%以上且つ残留オーステナイト相:5体積%未満を含む組織をなし、引張強度が1470MPa以上である電縫鋼管を素管に用い、該素管の管長さ方向の一部分における管周方向の全域若しくは一部に対し500〜750℃に加熱後室温まで冷却する熱処理を施してなり、該熱処理部の引張強度が未熱処理部に比し400MPa以上低く、且つ、前記熱処理部の引張強度と伸びの積が12000MPa・%以上であることを特徴とする車両補強用中空部材。
- 前記電縫鋼管は、Cu:0.20質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の車両補強用中空部材。
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