JP4515370B2 - 高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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1)先行文献などが教示するようにしてポリゴナルフェライトを活用するのではなく、むしろポリゴナルフェライトの生成を抑えることが引張強さ700MPa以上、降伏強さ650MPa以上の高強度鋼板では曲げ加工性の向上につながること、すなわち複合組織ではなく低Cのベイナイト主体(90面積%以上)の組織にして組織(材質)バラツキを軽減することが曲げ加工性向上の点で極めて重要であること、
2)ただしこの場合、C量が低減されており確実に引張強さを700MPa以上、降伏強さ650MPa以上にするためにはさらなる工夫が必要であること、そしてCr、Mn、Bを添加し、かつTi析出物を粗大化を防止しながら利用すると、曲げ加工性に悪影響を与えることなく所定の引張強さ及び降伏強さを確保できることを見出し、本発明を完成した。
N:0.006%以下、Ti−3.4N:0.02%以上を満足し、ベイナイト組織の面積率が90%以上であり、
鋼板を厚さ方向に切断し、この切断面において2mm×2mmであって鋼板表面に接する視野を設定し、この視野内における円相当径30μm以上の介在物の個数が1個未満であり、
鋼板の表側表面から深さ1mmの箇所の硬さと、裏側表面から深さ1mmの箇所の硬さがいずれもHv300以下である点に要旨を有する。
N :0.006%以下 …(2)
Ti−3.4N:0.02%以上 …(3)
Tiは、TiCやTiCNを析出し、強度を大きく向上させるのに有効である。またTiはフリーNを固定し、Bの焼入性確保に極めて有効である。これらの観点からTi量は、0.04%以上、好ましくは0.05%以上、特に0.06%以上とした。なおTi量が多くなると、粗大なTi析出物が析出し易くなる。従ってTi量は、例えば、0.15%以下、好ましくは0.12%以下、さらに好ましくは0.10%以下である。
Si:0.5%以下
Al:0.1%以下
P:0.05%以下
S:0.01%以下
Cu:2%以下
Ni:2.5%以下
Mo:1%以下
これらCu、Ni、及びMoは、いずれも強度確保に有用な元素である。特にCuは、固溶強化および析出強化によって強度[引張強さ(TS)と降伏強さ(YS)]を高めるために有効に作用する。Cuは0%超であればよいが、前記作用効果を明瞭に発揮させるには、0.05%以上、特に0.10%以上含有させることが望ましい。しかし過剰に含有させると、熱間加工性を阻害させるため2%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下にする。
Nb:0.05%以下
V :0.1%以下
これらNb及びVは、析出強化及び組織微細化効果があり、高強度化に有用な元素である。NbやVは0%超であればよいが、この様な作用を明瞭に発揮させる為には、Nb:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、V:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)にすることが推奨される。但し、これら元素を過剰に添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。従ってNb:0.05%以下(好ましくは0.03%以下)、V:0.1%以下(好ましくは0.05%以下)にする。
Ca:0.005%以下
REM:0.05%以下
Caは、SをCaSとして固定すると共に、粒状の非金属介在物として形態を制御することにより、靭性を向上させて、偏析部からの破壊を防止するのに有効である。Caは0%超であればよいが、この様な効果を十分に発揮させるには、Caを0.0005%以上(より好ましくは0.0010%以上)含有させることが好ましい。一方、Caを過剰に含有させても、これらの効果は飽和するばかりか靭性が却って劣化する。よってCa含有量は、0.005%以下、好ましくは0.004%以下にする。
表1に示す化学組成の鋼片(厚さ250mm)を温度(鋼片内の最高表面温度)1100℃に加熱し、鋼片表面の板面内の最大温度差(温度偏差)が60℃になるように均熱処理した後、板厚50mmまで圧延(圧延終了温度850℃)し、冷却速度10℃/秒で室温まで冷却した。次いでテンパー温度(再加熱温度)600℃で焼戻しした。
鋼板を厚さ(深さ)方向に切断し、鋼板の長手方向中央付近の切断面において、深さ1/4t部(tは板厚)をナイタールで腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM:倍率2000倍)観察により組織を同定した後、ベイナイト組織(上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、ベイニティックフェライト組織、グラニュラーベイニティックフェライト組織)、マルテンサイト組織(島状マルテンサイトを含む)、及びポリゴナルフェライト組織の面積率を求めた。
鋼板を厚さ方向に切断し、この切断面のうち鋼板の長手方向中央付近において、2mm×2mmであって鋼板表面に接する視野を5つ設定し、各視野について光学顕微鏡(倍率100倍)で観察した。円相当径が30μm以上になる介在物の個数を求め、視野数で除して平均個数を求めた。
鋼板を厚さ方向に切断し、鋼板の長手方向中央付近の切断面において、鋼板の表側表面から深さ1mmの箇所、深さ1/4t(tは板厚)の箇所、深さ3/4tの箇所、並びに裏側表面から深さ1mmの箇所の合計4箇所のビッカース硬さ(JIS Z 2244)を測定した。またこれら4点のうち最も硬い部分と最も柔らかい部分の硬さの差を求めた。
鋼板の長手方向中央(かつ1/4t部)から4号試験片(JIS Z 2201)を採取し、引張強さ(TS2)と降伏強さ(YS)を測定した。また鋼板を長手方向先端から1mの箇所で切断し、また後端から1mの箇所でも切断し、これら先後の切断面から100mm以内の箇所(かつ1/4t部)からも4号試験片(JIS Z 2201)を採取し、引張強さ(TS1)を測定した。先端側の引張強さと後端側の引張強さのうち大きい方を鋼板端部の引張強さ(TS1)として採用し、TS1−TS2の値(最大値)を求めた。
鋼板の長手方向中央に相当し、かつ1/4t部に相当する箇所からVノッチ試験片(JIS Z 2202)を採取し、温度−40℃でシャルピー衝撃試験(JIS Z 2242)を行った。
鋼板の長手方向中央から曲げ試験片(300mm幅×450mm長さ×50mm厚)を採取し、曲げ半径175mm(板厚50mmの3.5倍に相当)で角度90°の冷間曲げ加工を行った。割れの発生の有無を目視で確認した。
表3に示す化学組成の鋼片を用い、表3に示す条件で圧延、冷却、再加熱を行う以外は実験例1と同様にした。
Claims (9)
- C:0.01〜0.10質量%、Si:0.5質量%以下、Mn:0.5〜2.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Cr:0.4〜2質量%、Ti:0.04〜0.15質量%、B:0.0005〜0.005質量%、Al:0.1質量%以下を含有し、残部はFe及び不可避不純物である鋼板であって、
N:0.006質量%以下、Ti−3.4N:0.02質量%以上を満足し、ベイナイト組織の面積率が90%以上であり、
鋼板を厚さ方向に切断し、この切断面において2mm×2mmであって鋼板表面に接する視野を設定し、この視野内における円相当径30μm以上の介在物の個数が1個未満であり、
鋼板の表側表面から深さ1mmの箇所の硬さと、裏側表面から深さ1mmの箇所の硬さがいずれもHv300以下であることを特徴とする冷間曲げ加工性に優れた引張強さ700MPa以上、降伏強さ650MPa以上、板厚10mm以上の高強度鋼板。 - さらにCu:2質量%以下、Ni:2.5質量%以下、及びMo:1質量%以下から選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載の高強度鋼板。
- さらにNb:0.05質量%以下、及びV:0.1質量%以下から選択される少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の高強度鋼板。
- さらにCa:0.005質量%以下、及びREM:0.05質量%以下から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼板。
- マルテンサイト組織とポリゴナルフェライト組織の合計の面積率が10%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼板。
- 鋼板の表側表面から深さ1mmの箇所、深さ1/4t(tは板厚)の箇所、及び深さ3/4tの箇所、並びに裏側表面から深さ1mmの箇所の合計4箇所間での硬さの差の最大値が40Hv以下である請求項1〜5のいずれかに記載の高強度鋼板。
- 鋼板の先端又は後端の切断面から100mm以内の箇所における引張強さTS1と、鋼板中央部の引張強さTS2との差(TS1−TS2)の最大値が、50MPa以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高強度鋼板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼片を加熱して鋼片内の最高表面温度を1000℃以上、鋼片表面の板面内の最大温度差を80℃以下にした後、圧延し、その後1〜50℃/秒の速度で室温まで冷却することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
- 前記冷却の後、さらに500℃以上Ac1点以下に再加熱し、次いで冷却する請求項8に記載の高強度鋼板の製造方法。
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