JP2004250757A - 低降伏比高張力鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.01〜0.1%(質量%の意味。以下同じ)、Si:1%以下(0%を含まない)、Mn:1.1〜2.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.02〜0.06%、N:0.002〜0.01%を含有する鋼において、固溶Ti量を0.005%未満にする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、引張強度に優れ、主として建築・橋梁などの構造物に有用な鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高張力鋼板は、ビルや橋梁などの構造物を建設する際に使用されるため、溶接特性(耐割れ性)及び引張強度(TS)に優れることが求められる。特に建築用に使用する引張強度(TS)が590MPa以上程度の高張力鋼板は、降伏比(YR=降伏強度/引張強度)を下げることも要求される。すなわちビルの高層化、大スパン化の進展にともない、建築用鋼板は、従来のTS490MPa級に比べてさらに高強度化、厚肉化してきており、TS590MPa級以上の高張力鋼板が広く使われるようになってきている。そして建築用鋼板では、大地震時の倒壊を防止するため、地震のエネルギーを鋼材の塑性変形によって吸収することを目的として、降伏比(YR)を80%以下にすることが要求されている。しかし、一般には、TSが大きくなるにつれて、降伏強度(YS)はさらに大きくなるため、高TSと低YRとを両立するのは困難である。
【0003】
現在、TS590MPa以上の高強度鋼板において、80%以下の低いYRを確保するために、Q’と称される特殊な熱処理を施すのが主流となっている(特許文献1参照)。すなわちTS590MPa級鋼板は、元々、熱間圧延後にQ処理(焼入処理;Ac3点以上の温度からの水冷)とT処理(焼戻処理;Ac1点未満に加熱した後の空冷)とからなる通常の2回熱処理を施すことによって製造されていたが、このようにして得られるTS590MPa級鋼板のYRは85%程度以上と高くなっていた。そこで、前記Q処理とT処理との間に、Q’処理と称される熱処理を施すことによって、すなわちQ−Q’−Tの3回に亘る熱処理を施すことによって低YRを達成している。しかし熱処理回数が増大するため、製造コストが上昇し、製造工期が長くなる。
【0004】
また前記Q’処理とは、Ac1点とAc3点との間の二相域温度に加熱した後で水冷する処理であり、軟質フェライトを生成させることによって低YR化を達成するものである。そのためQ’処理を施す場合には、全体の強度低下を防止するため、フェライト以外のミクロ組織を硬くしておく必要があり、Cや合金元素を増量する必要がある。従って溶接性が低下し、例えば、y型溶接割れ試験で評価した場合、ある程度の予熱を行わなければ割れを防止するのが困難である。
【0005】
従って高張力鋼板では、低YRを達成できる有力な技術は知られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−318号公報(従来技術の欄)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高張力鋼板において、極めて低いYRを達成できる鋼板を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、溶接特性(耐割れ性)に優れるだけでなく、高強度と低降伏比の両立をも達成できる鋼板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、固溶Ti量=0.005%を境に降伏比(YR)が急激に低下すること、しかし引張強さ(TS)の低下は緩やかであることを発見した。従って、Tiを添加して所定の強度を確保した上で、固溶Ti量を0.005%未満とすれば、降伏比が著しく小さくなることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち上記目的を達成し得た本発明の低降伏比高張力鋼板とは、C:0.01〜0.1%(質量%の意味。以下同じ)、Si:1%以下(0%を含まない)、Mn:1.1〜2.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.02〜0.06%、N:0.002〜0.01%を含有し、かつ固溶Ti量が0.005%未満である点に要旨を有するものである。なおこの鋼は、C量が抑制されているため、溶接時の耐割れ性にも優れている。
【0011】
なお前記鋼は実質的にベイナイト鋼であるのが望ましい。ベイナイト組織とすることで、高張力と低降伏比の両立がさらに容易となる。また前記鋼は、さらに、Ni:3%以下(0%を含まない)、Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、B:0.0005〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%などを含有していてもよい。なおこれら追加の元素を含有する場合及び有しない場合のいずれの場合でも、残部はFe及び不可避的不純物であってもよい。
【0012】
前記鋼は、固溶Ti量が0.005%以上である熱間圧延板を、焼入れ処理することなく焼戻し処理することによって製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、C:0.01〜0.1%(質量%の意味。以下同じ)、Si:1%以下(0%を含まない)、Mn:1.1〜2.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.02〜0.06%、N:0.002〜0.01%を含有する鋼を対象としている。以下、各成分量を上記範囲に設定した理由について述べる。
【0014】
(1)C:0.01〜0.1%
Cは強度確保に有用な元素であり、かかる作用を有効に発揮させるべく、その下限を0.01%に設定した。好ましくは0.02%以上、特に0.03%以上である。しかし、C添加量が過剰となると溶接後に熱影響部(HAZ)が硬化して割れが発生する虞があるため、その上限を0.1%に設定した。好ましくは0.09%以下、特に0.08%以下である。
【0015】
(2)Si:1%以下(0%を含まない)
Siが過剰になると溶接特性が阻害される為、その上限を1%に設定した。好ましくは0.6%以下、特に0.4%以下である。一方、Siは強度向上に有効な元素であるため、溶接特性を阻害しない範囲で添加するのが望ましい。好ましいSi量の下限は0.1%、特に0.2%である。
【0016】
(3)Mn:1.1〜2.5%
Mnは焼入れ性向上元素であり、本発明のような低C鋼において所定の強度を確保するのに有用である。このような作用を有効に発揮させる為にその下限を1.1%に設定した。好ましくは1.2%以上、特に1.25%以上である。但し、Mn添加量が過剰になると溶接特性が劣化する為、その上限を2.5%に設定した。好ましくは2.0%以下、特に1.75%以下である。
【0017】
(4)P:0.02%以下(0%を含まない)
Pが過剰になると溶接特性及び靭性が阻害される為、その上限を0.02%に設定した。好ましくは0.015%以下、特に0.013%以下である。
【0018】
(5)S:0.01%以下(0%を含まない)
Sが過剰になると硫化物系介在物(FeS、MnSなど)が多量に生成し、靭性が劣化するため、その上限を0.01%に設定した。好ましくは0.007%以下、特に0.005%以下である。
【0019】
(6)Al:0.1%以下(0%を含まない)
Alが過剰になると溶接特性が阻害されるため、その上限を0.1%に設定した。好ましくは0.08%以下、特に0.06%以下である。一方、Alは固溶酸素を捕捉し、鋼の靭性向上に寄与するため、溶接特性を阻害しない範囲で添加してもよい。好ましいAl量の下限は0.01%、特に0.02%である。
【0020】
(7)Ti:0.02〜0.06%
Tiは、強度向上の点で有用であり、後述する固溶Ti量を制御できる範囲で設定できる。通常、0.02%以上(例えば、0.03%以上、特に0.035%以上)、0.06%以下(例えば、0.05%以下、特に0.045%以下)である。
【0021】
(8)N:0.002〜0.01%
Nは、TiNを形成して固溶Ti量を減らす作用を有しているため、後述する固溶Ti量の制御と密接な関係を有している。Nは後述の固溶Ti量の制御が容易となる範囲から選択するのが望ましく、例えば、0.002%以上(好ましくは0.003%以上)、0.01%以下(好ましくは0.008%以下、特に0.006%以下)とする。
【0022】
また本発明の対象とする鋼では、残部はFe及び不可避的不純物であってもよく、必要に応じて種々の元素を含有していてもよい。例えば、上記成分に加えて、Ni:3%以下(0%を含まない)、Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、B:0.0006〜0.005%などを含有していてもよい。これら任意の元素は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
(1)Ni、Cu、Cr、Mo、V、Nb
Ni、Cu、Cr、Mo、V、Nbは強度向上に有効な元素である。好ましい添加量は、Ni:0.1%以上(特に0.2%以上)、Cu:0.1%以上(特に0.2%以上)、Cr:0.1%以上(特に0.3%以上)、Mo:0.02%以上(例えば0.05%以上、特に0.1%以上)、V:0.001%以上(特に0.002%以上)、Nb:0.005%以上(特に0.01%以上)である。但し、NiやCuを過剰に添加しても効果が飽和してしまい経済的に無駄であり、Crを過剰に添加すると溶接時の耐割れ性やHAZ靭性が低下する。またMoを過剰に添加すると溶接特性が低下し、NbやVを過剰に添加するとHAZ靭性が低下する。従って、これら元素の上限量を上記範囲に設定した。好ましい添加量は、Ni:2%以下(特に1%以下)、Cu:1%以下(特に0.5%以下)、Cr:1.5%以下(特に1%以下)である。なおこれらNi、Cu、Cr、Mo、V、及びNbは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
(2)B
Bは微量の添加によって鋼の焼入性を高めることができ、このような作用を有効に発揮させる為にその下限を0.0005%に設定した。好ましくは0.006%以上、さらに好ましくは0.001%以上、特に0.0012%以上である。但し、過剰に添加するとBN等のB化合物を形成して靭性が劣化する為、その上限を0.005%に設定した。好ましくは0.004%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。
【0025】
また本発明の対象とする鋼は、Caを含有していてもよい。CaはHAZ靭性の向上に有効な元素であり、かかる作用を有効に発揮させる為にその下限を0.0005%に設定した。好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.0013%以上である。一方、Caを過剰に添加すると粗大な鋼中介在物を形成して鋼の性質が悪化する為、その上限を0.005%に設定した。好ましくは0.004%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。
【0026】
そして本発明の鋼では、所定量以上のTiを含有しながらも固溶Tiは所定量以下に抑制されている。また望ましくは、組織はベイナイトである。ベイナイト組織は、高張力化と低降伏比化に有利であり、固溶Ti量が少ないことは低降伏比化の向上に有利であり、また母材靭性の向上にも有利である。加えて所定量以上のTiを含有しながらも固溶Tiが所定量以下に制御されていること(すなわちTi析出物が多いこと)は高強度化に有利である。そのため本発明の鋼を用いれば、高強度、低降伏比、及び高靭性を達成することができる。
【0027】
固溶Ti量は、0.005%未満、好ましくは0.004%以下、さらに好ましくは0.003%以下程度である。なお上記範囲でTiを添加している以上、固溶Tiを0%とすることは困難であり、通常、0.001%以上(例えば、0.0015%以上)程度である。
【0028】
また実質的にベイナイト組織であるとは、ベイナイト組織が主体であればよいことを意味しており、好ましくは面積比で50%以上がベイナイト組織である。
【0029】
本発明の鋼の引張強度(TS)は、例えば、590MPa以上(好ましくは、590〜780MPa程度)である。降伏強度(YS)は、例えば、440MPa以上(好ましくは460〜700MPa程度、さらに好ましくは480〜700MPa程度)である。また降伏比(YR)は、例えば、65〜80%程度、好ましくは65〜78%程度(例えば65〜73%程度、又は74〜78%程度)である。破面遷移温度(vTrs)は、例えば、−60℃以下(好ましくは−65〜−120℃程度)である。
【0030】
本発明の鋼板(厚板)は、構造部材(例えば、建築用部材、橋梁用部材)として極めて有用である。なお構造部材としての使用を考慮すると、本発明の鋼板の板厚は、少なくとも10mm以上であるのが望ましい。
【0031】
本発明の鋼は、例えば、上述した化学成分の鋼を溶製及び熱間圧延した後、必要に応じて焼入れ(焼入れする場合には、工程省略上の利点から、直接焼入れするのが望ましい)することによって製造できる。そして熱間圧延後(又は直接焼入れ後)の固溶Ti量が多い場合、例えば固溶Ti量が0.005%以上(好ましくは0.007〜0.030%程度)の場合には、次いでこの鋼を焼戻し処理することによって製造することができる。熱間圧延後の固溶Ti量を多くしておけば、焼入れ(水冷)の有無に拘わらず組織をベイナイトにすることができる。また焼戻しすることによって、Tiを析出させることができ、固溶Tiを低減することができる。
【0032】
一方、熱間圧延後(又は焼入れ後)の固溶Ti量が少ない場合には、そのまま(焼戻し処理することなしに)本発明の鋼を得ることができる。焼戻ししない場合には、焼戻しした場合に比べてYRをさらに小さくできる。
【0033】
なお圧延後(又は焼入れ後)の固溶Ti量を制御するためには、圧延時のスラブ加熱温度、圧延仕上温度、圧延後の冷却速度などを総合的に設定すればよい。これらの条件は互いに関連し、しかも鋼材の組成(添加Ti量、C量、N量など)によっても固溶Ti量は変化し得るため、各条件を一義的に設定するのは困難であるものの、下記の傾向を参考にすれば固溶Ti量を制御できる。
【0034】
傾向1:添加Ti量が多い程、固溶Ti量も多くなる。
【0035】
傾向2:Ti析出物を形成可能な元素(C,Nなど)が多い程、固溶Ti量は少なくなる。
【0036】
傾向3:スラブ加熱温度が高いほど、固溶Ti量は多くなる。加熱温度は、他の要件に応じて適宜設定されるが、通常、950〜1250℃程度の範囲から選択する。
【0037】
傾向4:圧延仕上温度が高いほど、固溶Ti量は多くなる。圧延仕上温度は、他の要件に応じて適宜設定されるが、通常、900〜700℃程度の範囲から選択する。
【0038】
傾向5:圧延後の冷却速度が速いほど、固溶Ti量は多くなる。冷却速度は、他の要件に応じて適宜設定されるが、通常、900℃〜室温の温度域を0.1〜100℃/秒程度の範囲から選択される速度で冷却する。
【0039】
具体的な製造条件は下記の実施例を参照できる。
【0040】
低YRの点を重視すれば焼戻し省略鋼の方が望ましいが、実用性を考慮すれば焼戻しした鋼の方が望ましいケースの方が多い。すなわちYRは80%以下であれば実用上十分な場合があり、焼戻しを行ってもこの程度の低YRは達成でき、しかも焼戻しした鋼の方がYSを高くすることができる。
【0041】
最も望ましい鋼は、スラブ加熱温度を低く(例えば、995℃以下、好ましくは980℃以下)し、焼入れ(特に直接焼入れ)することによって固溶Tiを低くし、そのまま焼戻し処理することなく得られる鋼である。この鋼は、固溶Tiが少なくかつ焼戻し処理を省略しているために極めて低いYRを達成できていると共に、スラブ加熱温度低下に基づく結晶粒の微細化と焼入れ強化によって焼戻し鋼と同程度の高いYSをも達成できる。
【0042】
上記のように、本発明では、Q−Q’−T処理などの煩雑な処理をすることなく、簡便に強度と降伏比に優れた鋼を得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0044】
実験例1
C:0.05%、Si:0.31%、Mn:1.52%、P:0.009%、S:0.002%、Al:0.038%、Ti:0.035%、N:0.0051%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物である鋼材を溶製し、下記表1に示す条件で圧延することにより、固溶Ti量が異なる種々の焼戻し省略鋼板(板厚30mm)を製造した。
【0045】
得られた鋼板の引張強度(TS)、降伏強度(YS)とを測定し、降伏比(YR=YS/TS)を算出すると共に、以下のようにして母材靭性を評価した。
【0046】
[母材靭性]
得られた鋼板から2mmVノッチ試験片を切り出し、この試験片を用いて破面遷移温度(vTrS)を求めた。
【0047】
結果を表1及び図1〜図4に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
図1より明らかなように、固溶Ti量が少なくなると引張強さ(TS)は低下するもののその低下は緩やかである。そして図3より明らかなように、固溶Ti量が0.005%未満になると、降伏比(YR)が急激に低下する。従って固溶Ti量を少なくすることで、高強度・低降伏比を得ることができる。また図4より明らかなように、固溶Tiを少なくするほど母材靭性を向上できる。
【0050】
実験例2
下記表2に示す化学成分を含有する鋼を溶製し、下記表3に示す条件で圧延した後、焼戻しすることにより(又は焼戻しすることなく圧延ままで)、固溶Ti量が異なる種々の厚鋼板(板厚30mm)を製造した。
【0051】
実施例1と同様にして、得られた鋼板の引張強さ(TS)、降伏強さ(YS)、降伏比(YR)、母材靭性を求めると共に、以下のようにして溶接特性(耐割れ性)を評価した。
【0052】
[母材靭性]
得られた鋼板から2mmVノッチ試験片を切り出し、この試験片を用いて破面遷移温度(vTrS)を求めた。
【0053】
[溶接特性(耐割れ性)]
得られた鋼板を突き合わせ、小入熱(1.5kJ/mm)のy型溶接割れ試験を行い、ルート割れが生じているか否かを目視で確認した。
【0054】
前記溶接を3回行い、ルート割れが生じる頻度(%)に基づいて溶接性(耐割れ性)を評価した。
【0055】
結果を表3に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2及び表3より明らかなように、No.2−21の鋼UではTi無添加であるため、引張強度が低い。No.2−12〜2−20の鋼L〜T(焼戻し省略鋼)は、Tiを添加しているため引張強度は改善されているが、固溶Tiが多いために、降伏比が70〜74%と高めになっており、靭性(vTrs)も−48〜−72℃程度と高めになっている。
【0059】
これらに対して、No.2−8〜2−11の鋼H〜Kは、前記No.2−12〜2−20と同様の焼戻し省略鋼であるが、固溶Tiが少ないため降伏比が66〜68%程度にまで低減でき、靭性(vTrs)も−69〜−92℃程度まで低減できている。すなわちTiを添加しながら固溶Tiを低減しているため、高い引張強さと、極めて低いYRと、極めて優れた靭性とを達成できている。
【0060】
そして固溶Tiを少なくしておけば、No.2−1〜2−6の鋼A〜Eより明らかなように、焼戻しを行ってもYRの上昇を抑制でき、具体的には77%以下にできている。しかも引張強さYSを上昇できる。
【0061】
なお焼戻し省略鋼であっても、No.2−7〜2−8の鋼F〜Gから明らかなように、スラブ加熱温度を低くし、かつ圧延後に直接焼入れ(水冷)しておけば、高YSを達成でき、加えてYRを著しく低いレベルに維持できる。
【0062】
また上記No.2−1〜2−11の鋼は、いずれも固溶Ti量が少ないために低温靭性が低くなっており、しかもC量が抑制されているため溶接時の耐割れ性に優れている。
【0063】
【発明の効果】
本発明の鋼は、所定量のTiが添加されているにも拘わらず固溶Tiが少なくなっているため、高強度、低降伏比、及び母材靭性にも優れている。
また低炭素鋼であるため、溶接特性(耐割れ性)にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実験例1における固溶Ti量と引張強度(TS)との関係を示すグラフである。
【図2】図2は実験例1における固溶Ti量と降伏強度(YS)との関係を示すグラフである。
【図3】図3は実験例1における固溶Ti量と降伏比(YR)との関係を示すグラフである。
【図4】図4は実験例1における固溶Ti量と母材靭性との関係を示すグラフである。
Claims (6)
- C:0.01〜0.1%(質量%の意味。以下同じ)、Si:1%以下(0%を含まない)、Mn:1.1〜2.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.02〜0.06%、N:0.002〜0.01%を含有し、かつ固溶Ti量が0.005%未満であることを特徴とする低降伏比高張力鋼板。
- 実質的にベイナイト組織である請求項1記載の低降伏比高張力鋼板。
- さらに、Ni:3%以下(0%を含まない)、Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、及びB:0.0005〜0.005%から選択された少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の低降伏比高張力鋼板。
- さらにCa:0.0005〜0.005%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の低降伏比高張力鋼板。
- 熱間圧延によって得られた鋼板を、焼入れ処理することなく焼戻し処理することによって得られる請求項1〜4のいずれかに記載の低降伏比高張力鋼板。
- 固溶Ti量が0.005%以上である熱間圧延板を前記焼戻し処理することによって得られる請求項4に記載の低降伏比高張力鋼板。
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