JP2004091916A - 耐摩耗鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼入れなしの圧延ままで、高い表面硬度が得られ、しかも靭性、溶接性および溶接や溶断の熱影響部での硬度低下がほとんどない安価な耐摩耗鋼の提供。
【解決手段】C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0%、Mn:1.0〜2.0%、Cr:0.8〜2.0%、Mo:0.5〜1.0%、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%、残部はFeおよび不純物で、下記の(1)式で表される焼入性指数DIが250以上の耐摩耗鋼。この鋼はCu、Ni、V、NbおよびTiのうちの1種以上を含んでもよい。
DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)……(1)
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木や鉱山用の建設機械および大型の産業機械の部材などに使用される耐摩耗鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブルドーザーやパワーショベルなどの建設機械やダンプカーの荷台、および鉱山設備などに使用される部材には、耐用期間の延長のために耐摩耗性に優れた鋼が使用される。
【0003】
耐摩耗性を向上させる方法としては、直接焼入れまたは再加熱焼入れ、あるいは焼入れ焼戻しによって鋼材の表面硬度を高めるのが一般的である。
【0004】
例えば、特開昭56−44748号公報には、式「PH=C+Mn/10+Mo/6+Cr/15+3V+40P+100B」で表されるPHが1.1 %以下で、REM または/およびCaを合計で0.0005〜0.010 %含む鋼を、直接焼入れまたは再加熱焼入れするか、さらには焼入れ後焼戻すことで、その組繊をマルテンサイトまたは低温焼戻しマルテンサイトとした低温溶接割れ感受性を低減させた耐摩耗性高張力鋼が示されている。
【0005】
特開昭60−59019号公報には、Mnを0.45%以下に制限する一方、不純物中のSb、Pbを0.015 %以下に抑制した鋼を、再加熱焼入れまたは直接焼入れすることにより耐遅れ破壊性を向上させるようにした耐摩耗鋼板の製造方法が示されている。また、この公報には、焼入れに引き続いて焼戻しを行うと残留応力が軽減され、平坦度を確保するためのレベリング作業が容易になることも示されている。
【0006】
特開昭64−10564号公報には、Bによる焼入性の向上効果を十分に発揮させるためにTi/N値を3.0以上にした鋼を、所定の冷却速度で冷却し、所定の温度域で冷却を停止することにより、内部の健全性などを向上させるようにした耐摩耗鋼の製造方法が示されている。
【0007】
しかし、上記の各公報に示される技術は、いずれも焼入れ処理、さらには焼入れ焼戻し処理を行うことを前提しており、次の問題があった。(1) 熱処理工程の増加によるコストアップや製造日数の長期化が避けられない。(2) 板厚が15mm以下の鋼板の場合、焼入れにより生じる残留応力によって平坦度が悪化するが、材料が硬化しているためにレベリング作業が困難である。(3) いずれの公報に示される実施例の鋼も、後述する焼入性指数DIが最も高いものでも188 でしかなく、焼入れしないとマルテンサイト組織が得られない。また、溶断や溶接による熱影響部のように高温に再加熱された後ゆっくりと冷却される部分ではフエライトやパーライト、またはベイナイトに変態し、靭性低下を引き起こすだけでなく、熱影響部では所望の硬度、言い換えれば耐摩耗性が確保できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の実状に鑑みてなされたもので、焼入れや焼入れ焼戻しの熱処理なしで優れた耐摩耗性および靭性を示すだけでなく、溶接性にも優れ、しかも溶断や溶接などの熱影響部の硬度低下が小さい、土木や鉱山用の建設機械および大型の産業機械などの部材として使用するのに好適な耐摩耗鋼を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の(1)から(4)までの耐摩耗鋼にある。
【0010】
(1)質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:1.0 〜2.0 %、Cr:0.8 〜2.0 %、Mo:0.5 〜1.0 %、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%を含み、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1) 式で表される焼入性指数DIが250 以上である耐摩耗鋼。
【0011】
DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)
×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)……(1)
ここで、式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0012】
(2)質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:1.0 〜2.0 %、Cr:0.8 〜2.0 %、Mo:0.5 〜1.0 %、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%、さらにCu:0.05〜1.0 %、Ni:0.05〜1.0 %およびV:0.01〜0.1 %のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(2) 式で表される焼入性指数DIが250 以上である耐摩耗鋼。
【0013】
DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)……(2)
ここで、式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0014】
(3)さらに、質量%で、Nb:0.01〜0.05%およびTi:0.005 〜0.025 %のうちの1種以上を含む上記(1)または(2)に記載の耐摩耗鋼。
【0015】
(4)旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度が15個/100μm以上である上記(1)から(3)までのいずれかに記載の耐摩耗鋼。
【0016】
なお、上記の旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度とは、図1にその測定方法と数の概念図を示すように、鋼を切断したときの断面における鋼の表面下1mmの位置において、ナイタールまたはピクリン酸と塩化第二鉄の混合溶液にてエッチングして旧オーステナイト粒界を現出させた後(同図の(a))、肉厚方向に任意に引いた長さ100μmの直線と交差する旧オーステナイト粒の粒界の数N(同図の(b))のことである。
【0017】
なお、エッチングは、ナイタールの場合には、エチルアルコール95ccと硝酸4ccからなるエッチング液で5〜20秒行う。また、ピクリン酸と塩化第二鉄の混合溶液の場合には、ピクリン酸飽和溶液90ccと10%塩化第二鉄水溶液5ccに、界面活性剤を少量加えたエッチング液で数秒〜数十秒行う。
【0018】
本発明者らは、コストアップや製造日数の長期化を回避するには焼入れや焼入れ焼戻し処理の省略が必要であるが、焼入れや焼入れ焼戻しなしでも優れた耐摩耗性および靭性を示し、しかも溶断や溶接などの熱影響部での硬度低下が小さい鋼にするためには、組織変態の冷却速度依存性が小さいことが必須であるとの考えに至り種々検討した。その結果、以下のことを知見し、上記の本発明を完成させた。
【0019】
(a) 鋼の化学組成を特定の範囲に制限するとともに、上記の(1)式または(2)式で表される焼入性指数DIが250 以上になるように成分調整すると、熱間圧延のままでマルテンサイト組織が得られて表面のブリネル硬さHBW(10/3000)が320 以上となり、耐摩耗性および靭性に優れるだけでなく、冷却速度の遅い溶断や溶接の熱影響部でもマルテンサイト変態が起こってこの部分の硬度低下が抑制される。
【0020】
なお、上記のブリネル硬さHBW(10/3000)とは、圧子の直径10mm、試験荷重29.42kN(3000kgf)による場合の硬さのことである。
【0021】
図2は、C含有量が0.20%で、他の合金元素の含有量を変化させて焼入性指数DIを種々変えたAr3変態点が650 ℃以上の鋼を、800 ℃から大気放冷した場合における焼入性指数DIと表面硬さHBW(10/3000)との関係を示す図である。
【0022】
図2からわかるように、DIが250以上の場合に表面硬さHBW(10/3000)320以上が得られている。
【0023】
(b) 旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度を15個/100μm以上にすると、靭性が一段と向上する。
【0024】
図3は、化学組成が、C:0.20%、Si:0.45%、Mn:1.55%、Cr:1.11%、Mo:0.69%、Ti:0.020%、sol.Al:0.023%、B:0.0009%、残部Feおよび不純物からなり、DIが449 の鋼を1160℃に加熱し、旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度が種々異なるように種々の条件で熱間圧延して得られた鋼板のシヤルピー衝撃試験結果である吸収エネルギーvE−20 (J)と旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度(個/100μm)との関係を示す図である。
【0025】
図3からわかるように、旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度が15個/100μm以上の場合、40J以上の吸収エネルギーが得られており、靭性が向上している。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の耐摩耗鋼を上記のように定めた理由を詳細に説明する。なお、以下において「%」は特に断らない限り「質量%」を表す。
【0027】
1.化学組成について
C:0.15〜0.25%
Cは耐摩耗性の支配因子である表面硬さを確保するために0.15%以上が必要である。しかし、0.25%を超えると靭性、溶接性を大きく阻害する。このため、C含有量は0.15〜0.25%とした。好ましいのは0.16〜0.24%、より好ましいのは0.17〜0.23%である。
【0028】
Si:0.10〜1.0 %
Siは脱酸剤として添加され、表面硬度の上昇に寄与するが、0.10%未満ではこれらの効果が十分でない。一方、1.0 %を超えると靭性を損なうおそれがある。このため、Si含有量は0.10〜1.0 %とした。好ましい範囲は0.20〜0.80%、より好ましい範囲は0.30〜0.60%である。
【0029】
Mn:1.0 〜2.0 %
Mnは焼入性を向上させて表面硬度を上昇させるが、1.0 %未満ではその効果が小さく、他の合金元素の添加が必要になり、コスト上昇を招く。一方、2.0 %を超えると靭性が著しく劣化する。このため、Mn含有量は1.0 〜2.0 %とした。好ましいのは1.20〜1.80%、より好ましいのは1.30〜1.60%である。
【0030】
Cr:0.8 〜2.0 %
Crは焼入性を高めて硬度および靭性を向上させるが、0.8 %未満ではその効果が十分でない。一方、2.0 %を超えると靭性が劣化する。よって、Cr含有量は0.8 〜2.0 %とした。好ましい範囲は0.85〜1.50%、より好ましい範囲は0.90〜1.30%である。
【0031】
Mo:0.5 〜1.0 %
Moは焼入性を高めて硬度を上昇させる他、粒界を強化して靭性を向上させる。しかし、0.5 %未満ではこれらの効果が期待できず、1.0 %を超えると硬度および靭性改善効果が飽和する。このため、Mo含有量は0.5 〜1.0 %とする。好ましいのは0.55〜0.85%、より好ましいのは0.60〜0.80%である。
【0032】
sol.Al:0.01〜0.10%
Alは脱酸剤として添加され、スラブ加熱時にAlNを生成して初期オーステナイト粒の過成長を効果的に抑制するが、その含有量がsol.Al含有量で0.01%未満ではこれらの効果が不十分である。一方、0.10%を超えるとAl系の非金属介在物量が増加し、靭性が著しく劣化する。従って、Alの含有量はsol.Al含有量で0.01〜0.10%とした。好ましい範囲は0.015〜0.050%、より好ましい範囲は0.020〜0.040%である。
【0033】
B:0.0005〜0.0025%
Bは0.0005%以上で焼入性を著しく向上させるが、0.0025%を超えると靭性劣化を招く。このため、B含有量は0.0005〜0.0025%とした。好ましいのは0.0007〜0.0018%、より好ましいのは0.0008〜0.0015%である。
【0034】
本発明の耐摩耗鋼の一つは、上記成分の残部が実質的にFe、言い換えればFeと不純物からなる鋼である。
【0035】
本発明の耐摩耗鋼のもう一つは、下記の第1群または第2群のうちの少なくとも1群の中から選んだ少なくとも1種の成分を含む鋼である。以下、これらの成分について説明する。
【0036】
第1群(NbおよびTi)
これらの元素はいずれも旧オーステナイト粒の扁平化と細粒化に寄与し、靭性を向上させる。また、Tiは不純物中のNを固定し、固溶B量の確保を容易にして焼入性を高め、硬度をも上昇させる。従って、その効果を得たい場合には1種以上を積極的に添加してよく、この場合、Nbは0.01%以上、Tiは0.005 %以上で上記の効果が顕著になる。しかし、Nbは0.05%を超えると溶接性が劣化し、Tiは0.025 %を超えるとかえって靭性が劣化する。このため、添加する場合のNb含有量は0.01〜0.05%、Ti含有量は0.005〜0.025%とするのがよい。一層好ましいNb含有量は0.012〜0.030%、Ti含有量は0.010〜0.020%である。
【0037】
第2群(Cu、NiおよびV)
これらの元素はいずれも硬度を上昇させる。また、NiおよびVは靭性も向上させる。従って、硬度を重視してより一層硬度を高めたい場合にはいずれか1種以上を積極的に添加してもよく、その効果はCuとNiは0.05%以上、Vは0.01%以上で顕著になる。しかし、Cuは1.0 %を超えるとスケールが発生して鋼の表面性状が悪くなる。また、Niは1.0 %、Vは0.1 %でその効果が飽和し、これ以上の添加はコスト上昇を招く。このため、添加する場合のCu含有量は0.05〜1.0 %、Ni含有量は0.01〜1.0 %、V含有量は0.01〜0.1 %とするのがよい。一層好ましいのは、Cu:0.20〜0.80%、Ni:0.10〜0.80%、V:0.03〜0.08%である。
【0038】
なお、不純物としてのP、S、NおよびO(酸素)は、いずれも、この種の鋼の不純物レベルであれば特に問題はなく、それぞれ、0.025 %、0.010 %、0.007 %および0.005 %まで許容できる。
【0039】
2.焼入性指数DIについて
以上に説明した化学組成を有する本発明の耐摩耗鋼は、上記の(1)式または(2)式で表される焼入れ性指数DIが250 以上でなければならない。
【0040】
即ち、DIが250 未満では、熱間圧延のままで鋼表面のブリネル硬さHBW(10/3000)が320 以上とならず、所望の耐摩耗性が確保できないからである。このことは、前述した図2および後述する実施例から明らかである。
【0041】
なお、DIは大きいほど望ましいので上限は規定しない。しかし、あまり大きすぎると溶接性が低下するだけでなく、遅れ破壊を助長することがある。従って、DIの上限は550 とするのがよい。DIの好ましい範囲は260 〜500 、より好ましい範囲は270 〜480 である。
【0042】
3.旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度について
以上に説明した本発明の耐摩耗鋼は、十分な靭性を有するが、旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度を15個/100μm以上にすると靭性が一段と向上する。従って、旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度は15個/100μm以上であることが望ましい。このことも、前述した図3および後述する実施例から明らかである。
【0043】
ここで、旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度が15個/100μm以上の場合に靭性が一段と向上するのは、次の理由によるものと思われる。即ち、通常の焼入れ処理によって得られる鋼(例えば鋼板)は、AC3変態点以上に再加熱されてオーステナイト粒が等軸的に成長した後に焼入れられる。このため、旧オーステナイト粒の扁平度合いが小さく、場合によっては再結晶により結晶粒が粗大化し、靭性の劣化を引き起こす。また、一般に、結晶粒径を小さくすれば、靭性が向上するが、結晶粒の微細化のために焼入温度を低くすると、焼入性の低下を引き起こし、所望の硬度、靭性が得られないという問題が生じる。
【0044】
これに対し、本発明の耐摩耗鋼は、圧延のままで製品にし、焼入れを行わないので、圧延により扁平になった旧オーステナイト粒がそのまま保存され、見かけの結晶粒径が小さい。そのため、靭性が向上するものと思われる。また、焼入性指数DIが250 以上と高いので、焼入れ不足が生じることがなく、硬度低下もない。
【0045】
以上に説明した本発明の耐摩耗鋼は、転炉や電気炉などを用いて溶製した溶鋼を、連続鋳造法や造塊法などで所定の圧延用素材に成形し、この素材を加熱して熱間圧延し、熱間圧延後は焼入れや焼入れ焼戻しの熱処理を施すことなく、そのまま製品とすることにより容易に製造できる。
【0046】
その際の製造条件には特別な制約はないが、素材の加熱温度は圧延効率を高めるために1100℃以上、圧延終了温度はフェライトが析出するのを防ぐためにAr3変態点以上とし、冷却は形状が良好な製品を得るために3℃/秒以下の冷却速度で行うのが望ましい。
【0047】
なお、形状が良好とは、製品が例えば鋼板の場合、平坦度を確保するためレベラーやプレスによる矯正が不要なことを意味する。
【0048】
また、冷却速度とは、圧延終了後に冷却を開始してから肉厚中心部が300℃に至るまでの平均冷却速度のことであり、冷却の具体例としては強制空冷や大気放冷を挙げることができる。板厚が15mmまでの鋼板の場合、大気放冷で3℃/秒以下の冷却速度が確保される。なお、肉厚中心部の温度は、板厚方向に分割した1次元モデルを用いて、板表面の実測温度から計算される。
【0049】
旧オーステナイト粒の粒界密度は、鋼の化学組成、素材の加熱温度、圧下率、圧延終了温度および冷却速度等により微妙に変化するが、例えば、素材の加熱温度、圧延終了温度および冷却速度が同じである場合、鋼の化学組成に応じて圧下率を適正に設定する(例えば、後述の実施例に示す最終5パスの累積圧下率に設定する)ことなどにより、任意の値に制御することが可能である。
【0050】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する13種類の鋼を溶製して得られた鋼塊を1160℃に加熱後、熱間圧延を行って板厚9mm、幅2500mm、長さ8000mmの鋼板に成形した。その際、780℃で圧延を終了し、そのまま大気放冷した。ただし、試験番号14の鋼板については、熱間圧延後、900℃に再加熱して焼入れを施した。なお、旧オーステナイト粒の粒界密度は、仕上げ圧延における5パスの累積圧下率を種々変えて変化させた。
【0051】
【表1】
Figure 2004091916
【0052】
得られた鋼板について、前述した方法により旧オーステナイト粒の粒界密度を調べた後、ブリネル硬さ試験、シヤルピー衝撃試験、溶接割れ試験、ガス切断面近傍のビッカース硬さ試験を行った。
【0053】
ブリネル硬さ試験は、JIS Z 2243に従って、鋼板表面のブリネル硬さHBW(10/3000)を測定した。
【0054】
シヤルピー衝撃試験は、板厚の中央位置から圧延方向と平行にJIS Z 2202に規定される幅7.5mmのサブサイズのVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242に従って−20℃における吸収エネルギーvE−20 (J)を求めた。
【0055】
溶接割れ試験は、JIS Z 3164に規定させる重ね縦手溶接割れ試験を行い、割れが発生しなかった場合を「○」、発生した場合を「×」と評価した。その際、拘束溶接は、常温で、入熱量0.86kJ/mmの炭酸ガスアーク溶接により行った。
【0056】
ガス切断面近傍のビッカース硬さ試験は、火口3番、酸素圧3MPa、シャープガス圧0.4MPa、切断速度250mm/minでガス切断した後、鋼板の表面下lmmで、かつ切断端面からの距離2mmの位置のビッカース硬さHV(10)をJIS Z 2244に従って測定した。
【0057】
以上の結果を、表2にまとめて示した。
【0058】
【表2】
Figure 2004091916
【0059】
表2からわかるように、本発明例の鋼板(試験番号1〜10)は、いずれも良好な性能を示しており、靭性、溶接性および熱影響部の硬度低下が小さい耐摩耗鋼である。また、試験番号1と2の対比からわかるように、旧オーステナイト粒の粒界密度が15個以上のものは靭性が特に良好である。
【0060】
なお、試験番号3の鋼板は、旧オーステナイト粒の粒界密度が14個と少ないにもかかわらず靭性が良好であるが、これはDIが255と小さく、マルテンサイトに含まれる転位量が少ないためである。
これに対し、比較例の鋼板のうち、試験番号11の鋼板は、表面硬度が535 で耐摩耗性は優れるものの、C含有量が本発明で規定する上限値を上回っているために靭性および溶接性が悪い。試験番号12の鋼板は、DIが220 と本発明で規定する下限値を下回っているために焼入性が不足で表面硬度が300 と低く、耐摩耗性が悪い。試験番号13の鋼板は、V含有量が本発明で規定する上限値を上回っているために靭性が著しく悪い。試験番号14の鋼板は、従来鋼で焼入れにより表面硬度が高く耐摩耗性は良好であるが、DIが小さすぎるためにガス切断面近傍の硬度低下が著しく、この部分の耐摩耗性が劣るだけでなく、旧オーステナイト粒の粒界密度が7個と少ないために靭性も悪い。
【0061】
【発明の効果】
本発明の耐摩耗鋼は、熱間圧延のままで、表面の硬度がHBW(10/3000)で320 以上と高く、耐摩耗性に優れており、靭性、溶接性および溶接や溶断の熱影響部の硬度低下がほとんどない。また、焼入れを必要としないために製品形状が悪化せず、形状矯正が省略可能で、焼入れが不要なこととの相乗効果により製造コストを大幅に低減できる。本発明によれば、土木や鉱山用の建設機械および大型の産業機械などの部材用の耐摩耗鋼を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】旧オーステナイト粒の粒界密度の測定方法と粒界の数とを示す概念図ある。
【図2】実験結果の一例を示す図で、焼入性指数DIと鋼表面のブリネル硬さHBW(10/3000)との関係を示す図である。
【図3】実験結果の一例を示す図で、旧オーステナイト粒の粒界密度と靭性との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:1.0 〜2.0 %、Cr:0.8 〜2.0 %、Mo:0.5 〜1.0 %、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%を含み、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1) 式で表される焼入性指数DIが250 以上であることを特徴とする耐摩耗鋼。
    DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)……(1)
    ここで、式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. 質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:1.0 〜2.0 %、Cr:0.8 〜2.0 %、Mo:0.5 〜1.0 %、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%、さらにNb:0.01〜0.05%およびTi:0.005 〜0.025 %のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(1) 式で表される焼入性指数DIが250 以上であることを特徴とする耐摩耗鋼。
    DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)……(1)
    ここで、式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  3. 質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:1.0 〜2.0 %、Cr:0.8 〜2.0 %、Mo:0.5 〜1.0 %、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%、さらにCu:0.05〜1.0 %、Ni:0.05〜1.0 %およびV:0.01〜0.1 %のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(2) 式で表される焼入性指数DIが250 以上であることを特徴とする耐摩耗鋼。
    DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)……(2)
    ここで、式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  4. 質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:1.0 〜2.0 %、Cr:0.8 〜2.0 %、Mo:0.5 〜1.0 %、sol.Al:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0025%、さらにCu:0.05〜1.0 %、Ni:0.05〜1.0 %およびV:0.01〜0.1 %のうちの1種以上、ならびにNb:0.01〜0.05%およびTi:0.005 〜0.025 %のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物からなり、下記の(2) 式で表される焼入性指数DIが250 以上であることを特徴とする耐摩耗鋼。
    DI=9.328×√C×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×(1+0.27×Cu)×(1+0.52×Ni)……(2)
    ここで、式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味する。
  5. 旧オーステナイト粒の厚さ方向の粒界密度が15個/100μm以上であることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の耐摩耗鋼。
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