定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、定義を含めて、本出願が優先される。文脈によって別段に必要とされない限り、単数形は、複数形を含むものとし、複数形は単数形を含むものとする。本明細書に言及されるすべての刊行物、特許、および他の引用文献は、各個々の刊行物または特許出願が、引用により組み込まれるよう具体的かつ個々に示されるかのように、すべての目的のために、それらのすべての内容の全体が引用により組み込まれる。
本明細書に記載のものと類似のまたは等価の方法および材料は、本明細書に記載の方法の実施または試験において用いることができるが、適切な方法および材料を下記に記載する。材料、方法、および実施例は、説明目的のみであり、制限するよう意図するものではない。本明細書に記載の抗体および方法に関する他の特徴および利点は、詳細な説明からおよび特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
本発明をさらに定義するために、以下の用語および定義を提供する。
用語「a」または「an」の実体は、該実体のうちの1つ以上を指すよう留意されるべきであり、例えば、「免疫グロブリン分子」(an immunoglobulin molecule)は、1つ以上の免疫グロブリン分子を表すよう理解される。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つの」は、本明細書で交換可能に用いることができる。
本明細書および特許請求の範囲を通じて、語「を含む(comprise)」または「を含む(comprises)」もしくは「を含む(comprising)」などの変化形は、任意の列挙された整数または整数の群の包含を示すが、任意の他の整数または整数の群の排除を示さない。
本明細書で使用する場合、本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される用語「からなる(consists of)」または「からなる(consist of))」もしくは「からなる((consisting of)」などの変化形は、任意の列挙された整数または整数の群の包含を示すが、追加的な整数または整数の群は、具体的な方法、構造、または組成物に追加することはできない。
本明細書で使用する場合、本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される用語「本質的に〜からなる(consists essentially of)」、または「本質的に〜からなる(consist essentially of)」、または「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、任意の列挙された整数または整数の群の包含を示し、特定した方法、構造、または組成の基本的なまたは新規の特性を大幅に変更しない任意の列挙された整数または整数の群の任意の包含を示す。
本明細書で使用する場合、「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な薬用量および期間での有効な量を指す。治療結果は、例えば、症状の低減、生存期間の延長、改良された可動性、またはそれに類するものであり得る。「治療有効量」は、所望の治療結果の任意の1つまたは複数の所望の治療結果の任意の組み合わせを達成することができる。治療結果は、「治癒」である必要はない。
本明細書で使用する場合、「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するのに必要な薬用量および期間での有効量を指す。典型的には、予防用量は、疾患前に、またはより早期の段階において対象において用いられるので、予防有効量は、治療有効量よりも少ないであろう。
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」は、非翻訳5’および3’配列を含めた全長cDNA配列、コード化配列、ならびに核酸配列の断片、エピトープ、ドメイン、および変異形のヌクレオチド配列を含むことができる。ポリヌクレオチドは、修飾されていないRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドから構成することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖もしくは一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成することができる。加えて、ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域から構成することができる。また、ポリヌクレオチドは、安定性または他の理由のために修飾された1つ以上の修飾された塩基またはDNAもしくはRNA主鎖を含むことができる。「修飾された」塩基には、例えば、トリチル化した塩基およびイノシンなどの通常ではない塩基が挙げられる。種々の修飾がDNAおよびRNAに対してなされ得、従って、「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的に、または代謝的に修飾された形態を包含する。
ポリペプチドは、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸、すなわちペプチドアイソスターから構成することができ、20個の遺伝子でコードされるアミノ酸以外のアミノ酸(例えば、非天然アミノ酸)を含むことができる。本明細書に記載のポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然の過程によって、または当技術分野で周知の化学修飾技術によってのいずれかで修飾することができる。このような修飾は、基本の教科書に、およびより詳細な研究書に、ならびに多数の研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、およびアミノもしくはカルボキシル末端を含めたポリペプチドにおけるいずれにでも生じることができる。同じ種類の修飾は、所与のポリペプチドにおけるいくつかの部位において、同じまたは異なる程度で存在することができる。また、所与のポリペプチドは、多くの種類の修飾を含むことができる。ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果として分岐することができ、該ポリペプチドは、分岐を有するまたは有さない環状であり得る。環状、分岐鎖、および分岐鎖環状ポリペプチドは、翻訳後天然過程から結果として生じることができ、または合成方法によって作製することができる。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP‐リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有交差架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ‐カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン化など、タンパク質に対するアミノ酸の転移RNA仲介性付加が挙げられる(例えば、Proteins − Structure And Molecular Properties, 2nd Ed., T.E. Creighton, W.H. Freeman and Company, New York (1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B.C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, pgs. 1−12 (1983);Seifter et al., Meth Enzymol 182:626−646 (1990); Rattan et al., Ann NY Acad Sci 663:48−62 (1992)参照)。
用語「断片」、「変異形」、「誘導体」、および「類似体」は、デスレセプター6(DR6)アンタゴニストに言及する場合、神経系細胞生存を促進する任意のアンタゴニスト分子が含まれる。可溶性DR6ポリペプチドには、DR6タンパク質分解性断片、欠失断片、および特に動物に送達されると作用部位により容易に到達する断片を含むことができる。ポリペプチド断片にはさらに、直鎖および3次元エピトープを含めた天然ポリペプチドの抗原性または免疫原性エピトープを含むポリペプチドの任意の部分を含む。可溶性DR6ポリペプチドは、先に記載した断片を含めた変異体DR6領域、およびまた、アミノ酸の置換、欠失、もしくは挿入により変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むことができる。対立遺伝子変異体などの変異体が天然に生じることができる。「対立遺伝子変異体」の意図するものは、生物体の染色体における所与の座を占有する遺伝子の代替的な形態である(Genes II, Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, New York (1985))。非天然に生じる変異形は、当技術分野で公知の変異原性技術を用いて生じることができる。可溶性DR6ポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を含むことができる。また、DR6アンタゴニストには、誘導体分子を含むことができる。例えば、可溶性DR6ポリペプチドには、天然のポリペプチドでは認められない追加的な特徴を呈するよう変化したDR6領域を含むことができる。例には、融合タンパク質およびタンパク質抱合体が挙げられる。
「ポリペプチド断片」は、DR6ポリペプチドの短いアミノ酸配列を指す。タンパク質断片は、「独立している」か、断片が領域の一部を形成するより大きなポリペプチド内に含むことができる。ポリペプチド断片の代表的な例には、例えば長さ約5アミノ酸、約10アミノ酸、約15アミノ酸、約20アミノ酸、約30アミノ酸、約40アミノ酸、約50アミノ酸、約60アミノ酸、約70アミノ酸、約80アミノ酸、約90アミノ酸、および約100アミノ酸を含む断片が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「抗原結合分子」(「ABM」)は、その最も広範な意味で、抗原性決定因子に特異的に結合する分子を指す。成熟した抗体の断片が抗原に特異的に結合することができることは当業者によって理解される。従って、抗原結合分子は、該用語が本明細書で使用される場合、標的抗原に特異的に結合する成熟した抗体の断片を含むが、これに限定されない。ABMは、定常領域を含む必要がない。特定の実施態様において、1つ以上の定常領域が存在する場合、定常領域は、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一であり、例えば、少なくとも約85〜90%、または約95%以上同一である。ABMは、糖鎖工学で操作して、抗体依存性細胞毒性を高めることができる。
抗体または免疫グロブリン。一実施態様において、本明細書に開示の治療方法において使用するためのDR6アンタゴニストは、「抗体」または「免疫グロブリン」分子、またはその免疫特異的断片、例えば、天然の抗体もしくは免疫グロブリン分子、または抗体分子と類似の様式で抗原に結合する操作した抗体分子もしくは断片である。用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、本明細書で交換可能に用いられる。本明細書で使用する場合、用語抗体または免疫グロブリンは、モノクローナル、ポリクローナル、および多選択性(例えば、二重特異性)抗体を含めた全抗体分子、ならびにFc領域を有しかつ結合特異性を保有する抗体断片、ならびに免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含みかつ結合特異性を保有する融合タンパク質を含むよう意図される。また、VH断片、VL断片、Fab断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、ミニボディ、二重特異性抗体、三重特異性抗体、および四重特異性抗体を含むがこれらに限定されない、結合特異性を保有する抗体断片も包含される(例えば、Hudson and Souriau, Nature Med. 9: 129−134 (2003)参照)。また、ヒト化抗体、霊長類化抗体、およびキメラ抗体も包含される。
下記により詳細に論じるように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することのできる5つの広範なクラスのポリペプチドを含む。5つのクラスはすべて、記載の方法において明確に有用であるが、以下の論議は一般的に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに向けられる。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000〜70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4つの鎖は典型的には、「Y」立体配置のジスルフィド結合によって結合し、ここで、軽鎖は、「Y」の開口部で始まり、続いて可変領域を通じて重鎖を囲む。
軽鎖および重鎖の両方は、構造的および機能的相同性の領域へと分割される。用語「定常」および「可変」は機能的に用いられる。この点において、軽(VL)鎖および重(VH)鎖の両部分の可変ドメインが、抗原認識および特異性を決定することが認められるであろう。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2、またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤性移動度、Fc受容体結合、補体結合など、重要な生物学的特性を与える。慣例によって、定常領域ドメインの付番は、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて増大する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり;CH3およびCLドメインは実際にそれぞれ、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を含む。
軽鎖は、カッパまたはラムダとして分類される(κ、λ)。各重鎖クラスは、κまたはλのいずれかの軽鎖と結合することができる。一般に、軽鎖および重鎖は互いに共有結合し、2つの重鎖の「尾」部分は、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生じる場合、ジスルフィド共有結合または非共有結合によって互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列は、Y立体配置の分岐末端におけるN末端から、各鎖の下部におけるC末端へと走っている。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらのうちにいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を有することを認めるであろう。この鎖の性質により、抗体の「クラス」がそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEと決定される。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、十分に特徴づけられており、機能的分化を与えることが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の修飾されたバージョンは、本開示の点で当業者に容易に認められ、従って、本発明の範囲内である。
先に記載したとおり、可変領域によって、抗体は、抗原におけるエピトープを選択的に認識し特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメインが、組み合わさって、3次元抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この4要素からなる抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖の各々における3つの相補性決定領域(CDR)によって規定される。いくつかの場合、例えば、ラクダ科種由来のまたはラクダ科免疫グロブリンに基づいて操作されたある免疫グロブリンにおいて、完全な免疫グロブリン分子は、軽鎖なしで重鎖のみからなることができる。例えば、Hamers Casterman et al., Nature 363:446 448 (1993)を参照されたい。
天然の抗体において、各抗原結合ドメインに存在する6個の「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境における3次元立体配置を取る際に抗原結合ドメインを形成するよう特定的に配置されたアミノ酸の短い非隣接配列である。抗原結合ドメインにおけるアミノ酸の残りは、「フレームワーク」領域と呼ばれ、分子間変動性がより少ない。フレームワーク領域は、主にβ‐シート立体配座を取り、CDRは、β‐シート構造を接続し、かついくつかの場合その一部を形成するループを形成する。従って、フレームワーク領域は、鎖間非共有結合性相互作用による正確な向きにCDRを配置するよう提供する足場を形成するよう作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫応答性抗原におけるエピトープに相補的な表面を規定する。この相補的な表面は、抗体の同族のエピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。CDRとフレームワーク領域とをそれぞれ含むアミノ酸は、精確に定義されているので、当業者によって任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について容易に同定することができる(それらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる”Sequences of Proteins of Immunological Interest,” Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983);およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901−917 (1987)参照)。
当技術分野内で用いられおよび/または受け入れられている用語に関して2つ以上の定義がある場合、本明細書で用いられる用語の定義は、そうではない旨が明確に記載されていない限り、このような意味をすべて含むよう意図される。具体的な例は、重鎖および軽鎖の両ポリペプチドの可変領域内に認められる非隣接の抗原結合部位を記載するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, ”Sequences of Proteins of Immunological Interest” (1983)によって、およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901−917 (1987)によって、記載されており、これらは引用により本明細書に組み込まれており、ここで、定義には、互いに対して比較する場合、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体またはその変異体のCDRを指すためのいずれかの定義の適用は、本明細書で定義されおよび用いられる用語の範囲内であるよう意図される。先に引用した引用文献の各々によって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基は、比較として下記の表1に示す。特定のCDRを包含する実際の残基数は、CDRの配列および大きさに応じて変動する。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられれば、どの残基が特定のCDRを成すかを日常的に決定することができる。
また、Kabatらは、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列についての付番システムも定義した。当業者は、配列自体以外の実験データに何ら頼ることなく、任意の可変ドメイン配列にこの「Kabat付番」のシステムを明確に割り当てることができる。本明細書で使用する場合、「Kabat付番」は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, ”Sequence of Proteins of Immunological Interest” (1983)によって示される付番システムを指す。別段の指定がない限り、C35抗体またはその抗原結合断片、変異形、または誘導体における具体的なアミノ酸残基の位置の付番に対する引用は、Kabat付番システムに従う。
しかしながら、ラクダ科種において、VHHと呼ばれる重鎖可変領域は、完全なCDRを形成する。ラクダ科VHH可変領域と従来の抗体に由来する可変領域(VH)の間の主な差には、(a)VH軽鎖接触表面における、VHHにおける対応する領域と比較して、より疎水性のアミノ酸、(b)VHHにおけるより長いCDR3、および(c)VHHにおけるCDR1とCDR3の間のジスルフィド結合の頻繁な発生が含まれる。
一実施態様において、抗原結合分子は、抗体分子の少なくとも1つの重鎖または軽鎖CDRを含む。別の実施態様において、抗原結合分子は、1つ以上の抗体分子由来の少なくとも2つのCDRを含む。別の実施態様において、抗原結合分子は、1つ以上の抗体分子由来の少なくとも3つのCDRを含む。別の実施態様において、抗原結合分子は、1つ以上の抗体分子由来の少なくとも4つのCDRを含む。別の実施態様において、抗原結合分子は、1つ以上の抗体分子由来の少なくとも5つのCDRを含む。別の実施態様において、抗原結合分子は、1つ以上の抗体分子由来の少なくとも6つのCDRを含む。対象の抗原結合分子に含まれることのできる少なくとも1つのCDRを含む典型的な抗体分子は、当技術分野で公知であり、典型的な分子は本明細書に記載される。
本明細書に記載の方法において使用するための抗体またはその免疫特異的断片には、ポリクローナル、モノクローナル、多選択性、ヒト、ヒト化、霊長類化、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’、およびF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合したFvs(sdFv)、VLまたはVHのいずれかのドメインを含む断片、Fab発現ライブラリによって生じる断片、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示の結合分子に対する抗Id抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。scFvは、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスであり得る。
一本鎖抗体を含めた抗体断片は、可変領域単独を、または以下の完全体または一部との組み合わせで含むことができる:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメイン。また、抗原結合断片は、可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインとの任意の組み合わせも含むことができる。本明細書に開示の診断および治療方法において使用するための抗体またはその免疫特異的断片は、鳥類および哺乳類を含めた任意の動物起源に由来し得る。ある実施態様において、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリ抗体である。別の実施態様におおいて、可変領域は起源における軟骨魚類(condricthoid)であり得る(例えば、サメ由来)。本明細書で使用する場合、「ヒト」抗体には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、ならびにヒト免疫グロブリンライブラリから、または1つ以上のヒト免疫グロブリンについて遺伝子導入した動物から単離した抗体、および下記に記載したような、および例えばKucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号における内在性免疫グロブリンを発現しない抗体が含まれる。
本明細書で使用する場合、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖由来のアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、下記のうちの少なくとも1つを含む:CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中間部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはその変異形もしくは断片。例えば、結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインと、ヒンジドメインの少なくとも一部と、CH2ドメインとを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインとCH3ドメインとを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインと、ヒンジドメインの少なくとも一部と、CH2ドメインと、CH3ドメインとを含むポリペプチド鎖を含むことができる。別の実施態様において、ポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、結合しているポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部を欠失することができる(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)。先に示したように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)が、天然の免疫グロブリン分子からアミノ酸配列が異なるように修飾することができることは、当業者によって理解されるであろう。
ある実施態様において、本明細書に開示の治療方法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片、多量体の1つのポリペプチド鎖の重鎖部分は、多量体の第二のポリペプチド鎖上のものと同一である。あるいは、本明細書に記載の方法において使用するための重鎖部分含有単量体は、同一ではない。例えば、各単量体は、異なる標的結合部位を含むことができ、例えば二重特異性抗体を形成する。
本明細書に開示の診断および治療方法において使用するための結合ポリペプチドの重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子由来のCH1ドメインと、IgG3分子由来のヒンジ領域とを含むことができる。別の例において、重鎖部分は、IgG1分子に一部およびIgG3分子に一部由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、IgG1分子に一部、およびIgG4分子に一部由来するキメラヒンジを含むことができる。
本明細書で使用する場合、用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖由来のアミノ酸配列を含む。典型的には、軽鎖部分は、VLまたはCLドメインのうちの少なくとも1つを含む。
免疫グロブリン由来のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンの重鎖部分または軽鎖部分)の非天然変異形をコードする単離された核酸分子は、1つ以上のヌクレオチドの置換、付加、または欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列へと導入し、それにより1つ以上のアミノ酸の置換、付加、または欠失が、コードされるタンパク質へと導入されることによって作製することができる。変異は、部位特異的変異誘発およびPCR仲介性変異誘発などの標準的な技術によって導入することができる。例えば、保存的アミノ酸置換は、1つ以上の非必須アミノ酸残基においてなされる。
また、本明細書に開示の治療方法において使用するための抗体またはその免疫特異的断片は、ポリペプチドに対するそれらの結合親和性に関して記載されまたは明記することができる。例えば、結合親和性には、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、または10−15M未満の解離定数またはKDを有するものを含む。
本明細書に開示の治療方法において使用するための抗体またはその免疫特異的断片は、本明細書に記載のとおり、DR6のアンタゴニストとして作用する。例えば、本明細書に記載の方法において使用するための抗体は、DR6ポリペプチドのアンタゴニストとして機能することができ、該ポリペプチドの抑制活性を遮断しまたは阻害する。
本明細書で使用する場合、用語「キメラ抗体」は、免疫応答性の領域または部位が、第一の種から得られまたは該種に由来し、かつ(未処置で、部分的な、または修飾されることができる)定常領域が、第二の種から得られる任意の抗体を意味するものとする。ある実施態様において、標的結合領域または部位は、非ヒト起源(例えば、マウスまたは霊長類)に由来するであろうし、定常領域はヒトである。
本明細書で使用する場合、用語「操作された抗体」は、重鎖および軽鎖のいずれかまたはその両方における可変ドメインが、既知の特異性の抗体由来の1つ以上のCDRを少なくとも部分的に置き換えることによって、および必要な場合、部分的なフレームワーク領域の置換および配列の変更によって変化する抗体を指す。CDRは、フレームワーク領域の由来する抗体と同じクラスまたはさらには同じサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRが、異なるクラスの抗体および/または異なる種由来の抗体に由来するであろうことは予見される。公知の特異性の非ヒト抗体由来の1つ以上の「ドナー」CDRが、ヒト重鎖または軽鎖フレームワーク領域へと接ぎ合わされた操作された抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」と呼ばれる。いくつかの場合、1つの可変ドメインの別の可変ドメインに対する抗原結合能を移すために、CDRのすべてをドナー可変領域由来の完全なCDRと置き換えることは必要ではない。むしろ、いくつかの場合、標的結合部位の活性を維持することが必要な該残基を移すことしか必要ではない。例えば、米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、および第6,180,370号に示される説明を考慮すると、そのことは、慣例の実験を実施することによって、または機能的な操作されたもしくはヒト化抗体を得るための試行錯誤の試験によってのいずれかで、当業者の能力内に十分あるであろう。
本明細書で使用する場合、ヒト化したという用語は、非ヒト抗原結合分子、例えば、親分子の抗原結合特性を保有しまたは実質的に保有するが、ヒトにおいてほとんど免疫原性のないマウス抗体に由来する抗原結合分子を指すために用いられる。このことは、(a)全非ヒト可変ドメインをヒト定常領域へと接ぎ合わせ、キメラ抗体を作製すること、(b)非ヒトCDRのみをヒトフレームワークおよび定常領域へと、決定的なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性もしくは抗体機能を保有するのに重要なもの)を保持するとともにもしくは保持せずに接ぎ合わせること、または(c)全非ヒト可変ドメインを移植するが、それらを表面残基の置換によってヒト様セクションで「覆うこと」、を含めた種々の方法によって達成することができる。このような方法は、Jones et al., Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 81:6851−6855 (1984);Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65−92 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534−1536 (1988);Padlan, Molec. Immun., 28:489−498 (1991);Padlan, Molec. Immun., 31(3):169−217 (1994)に開示されており、それらはすべて、それらの内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。一般的に3つの相補性決定領域またはCDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)が抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインの各々にあり、それらは、抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインの各々における4つのフレームワークサブ領域(すなわち、FR1、FR2、FR3、およびFR4)に隣接している:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。ヒト化抗体に関する考察はとりわけ、米国特許第6,632,927号、および米国出願公開第2003/0175269号において認められ得、これらは両方とも、それらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用する場合、用語「連結した」、「融合した」、または「融合」は、交換可能に用いられる。これらの用語は、化学的な抱合または組換え手段を含めたどんな手段によっても、もう2つの要素または構成要素を互いに結合させることを指す。「インフレーム融合」は、元のオープンリーディングフレーム(ORF)の正確な読み枠を維持する様式で、連続したより長いORFを形成するために2つ以上のORFを結合させることを指す。従って、結果として得られた組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに相当する2つ以上のセグメントを含む単一のタンパク質である(元のORFのセグメントは通常、天然にそのように結合するようにはなっていない。)。読み枠が従って、融合されたセグメントを通じて連続的となるが、セグメントは、例えばインフレームリンカー配列によって物理的にまたは空間的に分離することができる。
ポリペプチドの文脈において、「線形的順序」または「配列」は、配列における互いに隣接する残基がポリペプチドの一次構造において連続的である、アミノ末端からカルボキシル末端への方向におけるポリペプチドのアミノ酸の順序である。
本明細書で使用される用語「発現」は、遺伝子が、生化学物質、例えばRNAまたはポリペプチドを生じる過程を指す。過程には、遺伝子ノックダウン、ならびに一過性発現および安定発現の両方を含むが限定されない細胞内での遺伝子の機能的存在の任意の現れを含む。該過程には、遺伝子のメッセンジャーRNA(MRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または任意の他のRNA産物への転写、およびこのようなMRNAのポリペプチドへの翻訳を含むが、限定されない。最終的な所望の産物が生化学的である場合、発現には、該生化学物質および任意の前駆体の生成を含む。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳類」は、診断、予後診断、または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳類対象である。哺乳類対象には、ヒト、飼育動物、家畜、動物園動物、スポーツ用動物、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、仔猫、ウシなどのペット動物、類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジーなどの霊長類、イヌおよびオオカミなどのイヌ科、ネコ、ライオン、およびトラなどのネコ科;ウマ、ロバ、およびシマウマなどのウマ類、ウシ、ブタ、およびヒツジなどの食品動物、シカおよびキリンなどの有蹄動物、などが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、哺乳類は、ヒト対象である。
用語「RNA干渉」または「RNAi」は、siRNAによる遺伝子発現のサイレンシングまたは低下を指す。これは、発現停止した遺伝子の配列とその二本鎖領域で相同であるsiRNAによって開始する、動物および植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程である。遺伝子は、生物体に対して内在性または外来性であり得、染色体へと結合して存在し得、またはゲノムへと結合していないトランスフェクションベクターに存在し得る。遺伝子の発現は、完全にまたは部分的に阻害される。また、RNAiは、標的RNAの機能を阻害するとみなすこともでき、標的RNAの機能は、完全または部分的であり得る。
デスレセプター6(DR6/TNFRSF21)
DR6が、ニューロンおよびオリゴデンドロサイト前駆細胞を含めた神経系の細胞において発現し、DR6がこれらの細胞において細胞死を誘導することができることが発見された。
DR6は、655個のアミノ酸からなるポリペプチドである。ある実施態様において、ヒトポリペプチドは、配列番号1(受入番号:NM_014452)のヌクレオチドを含むMRNAによってコードされる。ある実施態様において、ヒトDR6ポリペプチド配列は、配列番号2(受入番号:O75509)のアミノ酸を含む。また、マウスDR6は、655アミノ酸ポリペプチドである。ある実施態様において、マウスDR6は、配列番号3(受入番号:NM_178589)のヌクレオチドを含むMRNAによってコードされる。ある実施態様において、マウスDR6ポリペプチド配列は、配列番号4(受入番号:NP_848704)のアミノ酸配列を含む。
表2は、配列番号2の配列に基づいたアミノ酸残基番号に従ったDR6ドメインおよび他の領域を列挙する。当業者は、下記に列挙されたドメインの開始残基および終止残基は、用いるコンピュータモデリングプログラム、ドメインを決定するのに用いる方法、微小な配列変動などに応じて変動し得ることを認識するであろう。
p75/TNR16
p75ニューロトロフィン受容体がDR6のリガンドであることも発見された。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー16(TNR16またはTNFRSF16)または神経成長因子受容体(NGFR)としても知られるp75は、427個のアミノ酸からなるポリペプチドである。ヒトポリペプチド配列は受入番号NP_002498(配列番号165)であり、核酸配列は受入番号NM_002507(配列番号166)である。p75タンパク質は、DR6タンパク質と同様に、4つのTNFRシステインリッチなモチーフを含む細胞外領域、膜貫通領域、デスドメインを含む細胞内領域がある。p75が、NGF、BDNF、NT‐3、およびNT‐4に結合することができる低親和性受容体であることがすでに示されている(Mi et al. Nat. Neuroscience 7:221−228 (2004))。加えて、p75は、LINGO‐1/Nogo‐66受容体シグナル伝達の構成要素であり、換言すれば(Id.)、ニューロン細胞の生存および死滅を仲介することができる。
DR6およびp75のアンタゴニストを使用する方法
一実施態様において、方法は、神経系の細胞をDR6アンタゴニストと接触させることを含む、該細胞の生存を促進するための方法である。別の実施態様は、オリゴデンドロサイト細胞またはオリゴデンドロサイト前駆細胞を、DR6アンタゴニストと接触させることを含む、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法を提供する。別の実施態様は、ニューロン細胞とオリゴデンドロサイトまたはオリゴデンドロサイト前駆細胞との混合物をDR6アンタゴニストと接触させることを含む、ミエリン形成を促進するための方法を提供する。さらに別の実施態様は、DR6のp75に対する結合が阻害される条件下で、DR6ポリペプチドおよび/またはp75ポリペプチドをDR6アンタゴニストと接触させることを含む、DR6およびp75の結合を阻害する方法を提供する。同様に、また、本明細書に記載の方法には、DR6ポリペプチドおよび/またはp75ポリペプチドをp75アンタゴニストと接触させることを含む、DR6のp75に対する結合を阻害する方法が含まれる。
DR6アンタゴニストは、DR6アンタゴニストポリペプチド、DR6アンタゴニスト化合物、DR6抗体、DR6アンタゴニストポリヌクレオチド、DR6アプタマー、または2つ以上のDR6アンタゴニストの組み合わせであり得る。追加的な実施態様には、治療有効量のDR6アンタゴニストを投与することを含む、神経系の細胞の死滅と関連した病態を治療するための方法が含まれる。
p75アンタゴニストは、p75アンタゴニストポリペプチド、p75アンタゴニスト化合物、p75抗体、p75アンタゴニストポリヌクレオチド、p75アプタマー、または2つ以上のp75アンタゴニストの組み合わせであり得る。追加的な実施態様には、治療有効量のDR6アンタゴニストをp75アンタゴニストと併用して投与することを含む、神経系の細胞の死滅と関連した病態を治療するための方法が含まれる。
いくつかの特定の実施態様において、神経系細胞の死滅と関連した病態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患(例えば、ALSまたはルー・ゲーリック病とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症)多発性硬化症、ニューロン外傷、または大脳虚血(例えば、脳卒中)であり得る。別の実施態様は、治療有効量のDR6アンタゴニストを投与することを含む、ニューロン変性の疾患を治療するための方法を提供する。
神経系の細胞には、中枢神経系(または「CNS」)の細胞および末梢神経系の細胞(または「PNS細胞」)の両細胞が含まれる。CNS細胞には、脳における細胞および脊髄における細胞、ならびにこのような細胞に由来する細胞株が挙げられる。PS細胞には例えば、後根神経節ニューロン、シュワン細胞、運動ニューロン、およびこのような細胞に由来する細胞株が挙げられる。神経系の細胞には例えば、皮質ニューロン、運動ニューロン、後根神経節(DRG)ニューロンなどのニューロン、およびこのような細胞に由来する細胞株が挙げられる。また、神経細胞には、ニューロン支持細胞またはミクログリアおよびマクログリアを含めたグリア細胞が挙げられる。マクログリア細胞の例には、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、および放射状グリア細胞が挙げられる。また、神経系の細胞には、オリゴデンドロサイト前駆細胞などのこれらの細胞の前駆細胞、およびこのような細胞に由来する細胞株が挙げられる。
DR6アンタゴニストポリペプチド
本明細書で用いられるDR6アンタゴニストには、天然のDR6の生物学的機能を遮断し、阻害し、または干渉するDR6アンタゴニストのポリペプチドが含まれる。具体的には、可溶性DR6ポリペプチドには、可溶性DR6ポリペプチドの断片、変異体、または誘導体が挙げられる。先の表1は、ヒトDR6ポリペプチドの種々のドメインを記載する。同様のドメイン構造は、他の種、例えば、マウスまたはラットDR6のDR6ポリペプチドについて推定することができる。可溶性DR6ポリペプチドは典型的には、DR6ポリペプチドの膜貫通ドメインを欠失し、任意に、DR6ポリペプチドの細胞質ドメインを欠失している。例えば、ある可溶性ヒトDR6ポリペプチドは、ヒトDR6の膜貫通ドメインを成す、配列番号2のアミノ酸351〜367を欠失する。別の可溶性ヒトDR6ポリペプチドは、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの両方を欠失する(配列番号2のアミノ酸350〜655)。加えて、ある可溶性DR6ポリペプチドは、DR6ポリペプチドのTNFR様システインリッチモチーフおよび/または細胞外ドメイン全体(配列番号2のアミノ酸40〜349、配列番号2の40〜350、配列番号2の41〜349、または配列番号2の41〜350に相当)のうちの1つ以上を含む。当業者が認識するであろうように、DR6の細胞外ドメイン全体は、細胞外ドメインポリペプチドのC末端またはN末端のいずれかにおいて追加的なまたはより少ないアミノ酸を含むことができる。可溶性アンタゴニストDR6ポリペプチドは、シグナル配列を含むことができ、または含むことができない。
本明細書に記載の方法において使用するための追加的な可溶性DR6ポリペプチドには、配列番号2のアミノ酸1〜40;配列番号2の1〜41;配列番号2の65〜105;配列番号2の106〜145;配列番号2の146〜185;および配列番号2の186〜212を含む、これらから本質的になる、もしくはこれらからなる可溶性DR6ポリペプチド;またはこのようなポリペプチドの断片、変異体、もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の方法において使用するためのさらなる可溶性DR6ポリペプチドには、配列番号2のアミノ酸1〜40;配列番号2の1〜41;配列番号2の1〜64;配列番号2の1〜105;配列番号2の1〜145;配列番号2の1〜185;配列番号2の1〜212;配列番号2の1〜349を含む、これらから本質的になる、もしくはこれらからなる可溶性DR6ポリペプチド;またはこのようなポリペプチドの断片、変異体、もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の方法において使用するためのなおもさらなる可溶性DR6ポリペプチドには、配列番号2のアミノ酸41〜64;配列番号2の41〜105;配列番号2の41〜145;配列番号2の41〜185;配列番号2の41〜212;配列番号2の41〜349;配列番号2の41〜350;配列番号2の42〜64;配列番号2の42〜105;配列番号2の42〜145;配列番号2の42〜185;配列番号2の42〜212;配列番号2の42〜349;および配列番号2の42〜350を含む、これらから本質的になる、もしくはこれらからなるDR6ポリペプチド;またはこのようなポリペプチドの断片、変異体、もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の方法において使用するための追加的な可溶性DR6ポリペプチドには、配列番号2のアミノ酸65〜105;配列番号2の65〜212;配列番号2の65〜349;配列番号2の106〜145;配列番号2の106〜212;配列番号2の106〜349;配列番号2の146〜185;配列番号2の146〜212;配列番号2の146〜349;配列番号2の186〜212;配列番号2の186〜349;および配列番号2の213〜349を含む、これらから本質的になる、もしくはこれらからなる可溶性DR6ポリペプチド;またはこのようなポリペプチドの断片、変異体、もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
また、変異体DR6ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチド由来の配列から変化することもできる。特に、あるアミノ酸置換は、DR6生物活性の実質上の損失がないまま、DR6配列へと導入することができる。典型的な実施態様において、変異体DR6ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換を含み、および/または配列番号2のアミノ酸41〜349もしくは配列番号4の等価の断片からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。配列番号2または配列番号4の任意の所与の断片に由来する配列において異なる変異体DR6ポリペプチドには、1つ以上のアミノ酸置換(保存的もしくは非保存的)、1つ以上の欠失、および/または1つ以上の挿入を含むことができる。ある実施態様において、可溶性DR6ポリペプチドは、例えば哺乳類におけるニューロンおよびOPCなどのニューロン系の細胞の生存を促進する。
可溶性DR6ポリペプチドは、配列番号2または配列番号4の少なくとも6の、例えば、10、15、20、25、30、40、50、60、70、100、またはそれより多くのアミノ酸の断片を含むことができる。加えて、可溶性DR6ポリペプチドまたはドミナント・ネガティブDR6ポリペプチドは、少なくとも1の、例えば、5、10、15、または20の保存的アミノ酸置換を含むことができる。また、配列番号2または配列番号4の参照DR6ポリペプチドと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一の可溶性DR6ポリペプチドの対応する断片も意図される。
「DR6参照アミノ酸配列」または「参照アミノ酸配列」は、任意のアミノ酸置換を導入しない指定された配列を意味する。当業者が理解するであろうように、置換がない場合、「単離されたポリペプチド」は、参照アミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。
保存的置換には、以下の群内の置換が挙げられる:バリン、アラニン、およびグリシン;ロイシン、バリン、およびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリン、システイン、およびトレオニン;リシンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性疎水性アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性の)アミノ酸には、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性の)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。同じ群の別メンバーによる上記の極性、塩基性、または酸性の基の1つのメンバーの任意の置換は、保存的置換だと考えることができる。
非保存的置換には、(i)電気陽性側鎖(例えば、Arg、His、またはLys)を有する残基がelectDR6egative残基(例えば、GluまたはAsp)と置換され、または該残基によって置換される、(ii)親水性残基(例えば、SerまたはThr)が、疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe、またはVal)と置換され、または該残基によって置換される、(iii)システィンまたはプロリンが任意の他の残基と置換され、またはその残基によって置換される、あるいは(iv)かさのある疎水性側鎖または芳香族側鎖(例えば、Val、Ile、Phe、またはTrp)を有する残基が、より小さな側鎖を有するもの(例えば、Ala、Ser)または側鎖のないもの(例えば、Gly)と置換され、またはこのようなものによって置換される置換が含まれる。
当技術分野で公知のように、2つのポリペプチド間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列を第二のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。本明細書で論じられる際、任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるかどうかは、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)など、当技術分野で公知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェア決定することができるが、該プログラムに限定されるわけではない。BESTFITは、SmithおよびWaterman, Advances in Applied Mathematics 2:482−489 (1981)の局所相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見出す。BESTFITまたはその他の配列整列プログラムを用いて、特定の配列が例えば本明細書に記載の参照配列と95%同一であるかどうかを決定する場合、パラメータがもちろん設定され、それにより同一性の%が、参照ポリペプチド配列の全長にわたって算出され、参照配列におけるアミノ酸の総数の最大5%の相同性におけるギャップが許容される。
当業者によって十分に理解されるであろうように、先に列挙したものなどのDR6断片は、例えば、DR6ドメイン領域の代替的な推定に基づいたいずれかの末端(より長いかまたはより短いかのいずれか)において長さが例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸ほど変動することができる。加えて、先に列挙した任意の断片には、さらに、N末端における分泌シグナルペプチド、例えば配列番号2のアミノ酸1〜40、または配列番号2のアミノ酸1〜41を含むことができる。また、本明細書のほかの箇所に記載したものなど、他の分泌シグナルペプチドも用いることができる。また、配列番号2、配列番号4、または本明細書に記載のそれらの断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一である可溶性DR6ポリペプチドの対応する断片も意図される。
本明細書に記載の方法において使用するための可溶性DR6ポリペプチドには、2つ以上の可溶性DR6ポリペプチドの任意の組み合わせを含むことができる。従って、ホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれもが企図される。本明細書に記載する2つ以上の可溶性DR6ポリペプチドは、直接的に結合することができ、または適切なペプチドリンカーを介して結合することができる。このようなペプチドリンカーは、本明細書の他の箇所に記載されている。
本明細書に記載の方法において使用するための可溶性DR6ポリペプチドは、環状であり得る。可溶性DR6ポリペプチドの環化は、直鎖状ペプチドの立体配座の自由度を低下させ、結果的に、より構造的に拘束された分子を生じる。ペプチドの環化に関する多くの方法が、当技術分野で公知である。例えば、ペプチドのN末端アミノ酸残基とC末端アミノ酸残基の間のアミド結合の形成による「主鎖から主鎖への」環化である。「主鎖から主鎖への」環化法は、2つのω−チオアミノ酸残基(例えば、システイン、ホモシステイン)の間のジスルフィド架橋の形成を含む。本明細書に記載のある可溶性DR6ペプチドは、ペプチドのN末端およびC末端の修飾を含み、環状DR6ポリペプチドを形成する。このような修飾には、システイン残基、アセチル化システイン残基、NH2部分およびビオチンを有するシステイン残基が挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチド環化に関する他の方法は、LIおよびRoller. Curr. Top. Med. Chem. 3:325−341 (2002)に記載されており、そのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載の方法において使用するための環状DR6ポリペプチドには、C1LSPX9X10X11C2(配列番号5)(式中、X1は、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、またはアスパラギンであり、X2は、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、またはアスパラギンであり、X3は、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、またはアスパラギンであり、C1は任意に、結合する環化を促進する部分(例えば、アセチル基またはビオチン)を有し、C2は任意に、結合する環化を促進する部分(例えば、NH2部分)を有する。)が含まれるが、これに限定されない。
いくつかの実施態様において、DR6アンタゴニストポリペプチドは、p75に対するDR6の結合を阻害する。いくつかの実施態様において、DR6アンタゴニストポリペプチドは、p75に対するDR6の結合を阻害するが、APPに対するDR6の結合を防止しない。
DR6アンタゴニスト化合物
本明細書に記載の方法におけるDR6アンタゴニストには、アンタゴニスト化合物の不在下におけるDR6の活性と比較したDR6の活性を阻害または低下させる任意の化学物質または合成化合物が含まれる。DR6アンタゴニスト化合物は、p75に対するDR6の結合を阻害するものであり得る。また、DR6アンタゴニスト化合物は、p75に対するDR6の結合を阻害するが、APPに対するDR6の結合を防止しないものでもあり得る。
当業者は、本明細書の他の箇所に記載のアッセイを用いて、例えば神経系細胞の生存を修飾する化合物についてのスクリーニングによって、本明細書に記載の方法において有用であろうDR6アンタゴニスト化合物についてスクリーニングおよび試験する方法を存じているであろう。
DR6抗体またはその免疫特異的断片
また、本明細書に記載の方法において使用するためのDR6アンタゴニストには、DR6活性のアンタゴニストであるDR6抗原結合分子、DR特異的抗体、または抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体が含まれる。例えば、ニューロンにおいて発現するDR6に対するあるDR6抗原結合分子またはDR6抗体の結合は、アポトーシスを阻害しまたは細胞の生存を促進する。
ある実施態様において、抗体は、DR6に特異的に結合する抗体、または抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、ここで、抗体は、神経系の細胞の生存を促進する。ある実施態様において、抗体は、DR6に特異的に結合する抗体、または抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、ここで、抗体は、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進する。ある実施態様において、DR6抗体は、DR6に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、ここで、抗体はミエリン形成を促進する。他の実施態様において、DR6抗体は、p75に対するDR6の結合を阻害する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体である。他の実施態様において、DR6抗体は、p75に対するDR6の結合を阻害するが、APPに対するDR6の結合を防止しない抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体である。
DR6抗体には、先のいずれかのポリクローナル、モノクローナル、多選択性、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン欠失型抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab発現ライブラリによって生じる断片、抗イディオタイプ(抗ID)抗体(例えば、本明細書に記載の抗体に対する抗ID抗体を含む。)、およびエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分、すなわち抗原を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスであり得る。
本明細書に記載の方法において使用するためのあるDR6アンタゴニスト抗体は、特定のDR6ポリペプチド断片またはドメイン、例えば、本明細書に記載のDR6ポリペプチド、断片、変異体、または誘導体に特異的にまたは優先的に結合する。このようなDR6ポリペプチド断片には、DR6の1つ以上のTNFR様システインリッチなモチーフを含む、該モチーフから本質的になる、または該モチーフからなるDR6ポリペプチドが挙げられるが、これに限定されない。このような断片には例えば、配列番号2のアミノ酸65〜105;配列番号2の106〜145;配列番号2の146〜185;配列番号2の186〜212;配列番号2の65〜145;配列番号2の65〜185;配列番号2の65〜212;配列番号2の106〜185;配列番号2の106〜212;および配列番号2の146〜212を含む、これらから本質的になる断片が挙げられる。このような断片にはまた、配列番号2の134〜189;配列番号2の168〜189;および配列番号2の134〜168が挙げられる。また、配列番号2のアミノ酸65〜105;配列番号2の106〜145;配列番号2の146〜185;配列番号2の186〜212;配列番号2の65〜145;配列番号2の65〜185;配列番号2の65〜212;配列番号2の106〜185;配列番号2の106〜212;配列番号2の146〜212;配列番号2の134〜189;配列番号2の168〜189;および配列番号2の134〜168と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一の変異体DR6ポリペプチドの対応する断片も意図される。いくつかの実施態様において、DR6抗体、その抗原結合断片、変異体、または誘導体は、DR6と相互作用するためにCys3およびCys4の両領域を必要とする。
他の実施態様において、抗体は、DR6の少なくとも1つのエピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、こおこで、エピトープは、配列番号2または配列番号4の少なくとも約4〜5個のアミノ酸、配列番号2または配列番号4の少なくとも7個の、少なくとも9個の、少なくとも約15〜約30のアミノ酸を含み、該アミノ酸から本質的になり、または該アミノ酸からなる。記載の配列番号2または配列番号4の所与のエピトープのアミノ酸は、連続的または直鎖であり得るが、そうである必要はない。ある実施態様において、DR6の少なくとも1つのエピトープは、細胞の表面に発現するものとして、または例えばIgG Fc領域に融合した可溶性断片として、DR6の細胞外ドメインによって形成される非直鎖状エピトープを含み、該エピトープから本質的になり、または該エピトープからなる。従って、ある実施態様において、DR6の少なくとも1つのエピトープは、配列番号2または配列番号4の少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、約15〜約30、または少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100の連続的なまたは非連続的なアミノ酸を含み、該アミノ酸から本質的になり、または該アミノ酸からなり、ここで、非連続的なアミノ酸は、タンパク質フォールディングを通じてエピトープを形成する。
他の実施態様において、抗体は、DR6の少なくとも1つのエピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、ここで、エピトープは、先に記載の配列番号2または配列番号4の1、2、3、4、5、6、またはそれより多くの連続的なまたは非連続的なアミノ酸に加えて、タンパク質を修飾する追加的な部分を含み、該部分から本質的になり、または該部分からなり、例えば、炭水化物部分は、DR6抗体が、タンパク質の修飾されていないバージョンに対するよりも、修飾された標的タンパク質に対して高い親和性で結合するよう含まれることができる。あるいは、DR6抗体は、標的タンパク質の修飾されていないバージョンにまったく結合しない。
ある態様において、抗体は、DR6ポリペプチドもしくはその断片、またはDR6変異体ポリペプチドに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、親和性は、所与の参照モノクローナル抗体についての解離定数(KD)よりも低いKDを特徴とする。
ある実施態様において、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、先に記載のDR6または断片もしくは変異体の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合し、すなわち、関連していないまたはランダムなエピトープに結合するであろうよりも容易にこのようなエピトープに結合し;先に記載のDR6または断片もしくは変異体の少なくとも1つのエピトープに優先的に結合し、すなわち、関連する同様の相同的なまたは類似的なエピトープに結合するであろうよりも容易にこのようなエピトープに結合し;先に記載のDR6または断片もしくは変異体に特異的にまたは優先的にそれ自体結合する参照抗体の結合を競合的に阻害し;あるいは、5×10−2M、約10−2M、約5×10−3M、約10−3M、約5×10−4M、約10−4M、約5×10−5M、約10−5M、約5×10−6M、約10−6M、約5×10−7M、約10−7M、約5×10−8M、約10−8M、約5×10−9M、約10−9M、約5×10−10M、約10−10M、約5×10−11M、約10−11M、約5×10−12M、約10−12M、約5×10−13M、約10−13M、約5×10−14M、約10−14M、約5×10−15M、または約10−15Mの解離定数KDを特徴とする親和性で、先に記載のDR6または断片もしくは変異体の少なくとも1つのエピトープに結合する。特定の態様において、抗体またはその断片は、マウスDR6ポリペプチドまたはその断片と比較して、ヒトDR6ポリペプチドまたはその断片に優先的に結合する。別の特定の態様において、抗体またはその断片は、1つ以上のDR6ポリペプチドまたはその断片、例えば、1つ以上の哺乳類DR6ポリペプチドに優先的に結合する。
抗体結合解離定数の文脈で使用する際の、用語「約」は、抗体親和性を測定するのに利用される方法における固有の変動を認める。例えば、用いた機器の精確さのレベル、測定した試料数に基づいた標準誤差、および丸め誤差に依存して、用語「約10−2M」は、例えば、0.05M〜0.005Mを含み得る。
具体的な実施態様において、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、5×10−2秒−1、10−2秒−1、5×10−3秒−1、または10−3秒−1以下のオフ速度(K(オフ))でDR6ポリぺプチド、またはその断片もしくは変異体に結合する。あるいは、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、5×10−4秒−1、10−4秒−1、5×10−5秒−1、または10−5秒−15×10−6秒−1、10−6秒−1、5×10−7秒−1、または10−7秒−1以下のオフ速度(K(オフ))でDR6ポリペプチドまたはその断片もしくは変異体に結合する。
他の実施態様において、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、103M−1秒−1、5×103M−1秒−1、104M−1秒−1、または5×104M−1秒−1以上のオン速度(K(オン))でDR6ポリペプチドまたはその断片もしくは変異体に結合する。あるいは、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、105M−1秒−1、5×105M−1秒−1、106M−1秒−1、または5×106M−1秒−1、または107M−1秒−1以上のオン速度(K(オン))でDR6ポリペプチドまたはその断片もしくは変異体に結合する。
一実施態様において、DR6抗体には、あるモノクローナル抗体、ならびにその断片、変異体、および誘導体の少なくとも抗原結合ドメインが表3および4に示されるDR6抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体が含まれる。表3は、ファージディスプレイライブラリから同定されたヒト抗DR6 Fab領域を列挙する。表4は、ハイブリドーマに由来するマウス抗DR6抗体を列挙する。
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合ドメイン」は、抗原におけるエピトープ(例えば、DR6のエピトープ)を特異的に結合する部位を含む。抗体の抗原結合ドメインには典型的には、免疫グロブリン重鎖可変領域の少なくとも一部と、免疫グロブリン軽鎖可変領域の少なくとも一部が含まれる。これらの可変領域によって形成された結合部位が、抗体の特異性を決定する。
いくつかの実施態様において、DR6抗体は、DR6抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、DR6抗体は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、およびM73‐C04からなる群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、または1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナル抗体と同じDR6エピトープに特異的に結合する。
いくつかの実施態様において、DR6抗体は、DR6抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、DR6抗体は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、および M73‐C04からなる群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、またはDR6に対する結合由来の1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナル抗体を競合的に阻害する。
いくつかの実施態様において、DR6抗体は、DR6抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体であり、DR6抗体は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、およびM73‐C04からなる群から選択されるモノクローナルFab抗体断片または1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナルの抗原結合ドメインと同一のものを含む。
いくつかの実施態様において、DR6抗体は、2007年12月21日出願の国際公開第WO2008/080045号に記載の3F4.48、4B6.9.7、または1E5.57からなる群から選択される抗体ではない。いくつかの実施態様において、DR6抗体は、DR6に対する3F4.48、4B6.9.7、または1E5.57の結合を競合的に阻害する抗体からなる群から選択される抗体ではない。
いくつかの実施態様において、DR6抗体は、アンタゴニスト抗体である。
抗体を作製する方法は、当技術分野で周知であり、本明細書に記載される。一旦、シグナル配列を有さない全長のDR6の種々の断片に対するまたは全長のDR6に対する抗体が作製されると、抗体または抗原結合断片が結合するのがDR6のどのアミノ酸またはエピトープかを決定することを、本明細書に記載のエピトープマッピングプロトコールおよび当技術分野で公知の方法によって決定することができる(例えば、「Chapter 11 − Immunology」, Current Protocols in Molecular Biology, Ed. Ausubel et al., v.2, John Wiley & Sons, Inc. (1996)に記載の二重抗体サンドイッチELISA)。追加的なエピトープマッピングプロトコールは、Morris, G. Epitope Mapping Protocols, New Jersey: Humana Press (1996)において認められることができ、これらは両方ともそれらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。また、エピトープマッピングは、市販の手段によって実施することができる(すなわち、ProtoPROBE, Inc. (Milwaukee, Wisconsin))。
加えて、次に、DR6の任意の部分に結合する作製された抗体は、例えば、神経系の細胞の生存を促進し、神経の細胞の死滅と関連した病態を治療し、および神経系の細胞のアポトーシスを予防するDR6のアンタゴニストとして作用する能力についてスクリーニングすることができる。抗体は、実施例において詳述した方法に従って、これらのおよび他の特性についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載の抗体の他の機能は、本明細書の実施例において記載の他のアッセイを用いて試験することができる。
一実施態様において、本明細書に記載の方法において使用するためのDR6アンタゴニストは、抗体分子、またはその免疫特異的断片である。別段の記載がない限り、本明細書で使用される場合、抗体に対する参照における「その断片」は、免疫特異的断片、すなわち抗原特異的断片を指す。
一実施態様において、本明細書に記載の方法において使用するための結合分子または抗原結合分子は、合成定常領域を含み、ここで、1つ以上のドメインは、部分的にまたは完全に欠失している(「ドメイン欠失型抗体」)。本明細書に記載のある方法は、DR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片の投与を含み、この中で、定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一断片が欠失しまたはさもなければ変化して、ほぼ同一の免疫原性の変化していない全抗体と比較した場合に、低いエフェクター機能などの所望の生化学的特徴、非共有結合的に二量体化する能力、作用部位において局在する高い能力、短い血清半減期、または増加した血清半減期を提供する。例えば、本明細書に記載の治療方法において使用するためのある抗体は、免疫グロブリン重鎖と同様のポリペプチド鎖を含むが、1つ以上の重鎖ドメインの少なくとも一部を欠失するドメイン欠失型抗体である。
ある実施態様において、適合性のある修飾された抗体は、CH2ドメイン全体が除去されたドメイン欠失型コンストラクトまたは変異体を含むであろう(ΔCH2コンストラクト)。他の実施態様について、短い結合ペプチドは、欠失型ドメインと置換して、可変領域についての移動の可撓性および自由を提供することができる。当業者は、抗体の異化反応速度に関するCH2ドメインの調節特性により、ある環境下で望ましくあり得ることを理解するであろう。ドメイン欠失型コンストラクトは、IgG1ヒト定常ドメインベクター(例えば、Biogen IDEC Incorporated製)を用いて得ることができる(例えば、WO 02/060955A2およびWO02/096948A2参照)。この典型的なベクターを操作して、CH2ドメインを欠失し、ドメイン欠失型IgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供した。
ある実施態様において、本明細書に開示の方法において使用するための修飾された抗体は、ミニボディである。ミニボディは、当技術分野に記載の方法を用いて作製することができる(例えば、参照、例えば、米国特許第5,837,821号またはWO94/09817A参照)。
一実施態様において、本明細書に開示の治療方法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその断片は、単量体サブユニット間の結合を可能にする限り、数個のまたはさらには単一のアミノ酸の欠失または置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された領域における単一のアミノ酸の変異はFc結合を実質的に低下させ、それにより意図される作用部位に対する局在を増大させるのに十分であり得る。同様に、調節されるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つ以上の定常領域のその部分を単純に欠失することが望ましくあり得る。定常領域のこのような部分的な欠失は、抗体の選択された特徴(血清半減期)を改善するとともに、対象の定常領域ドメインと関連した他の望ましい機能を未変化のままにすることができる。その上、先に言及したように、開示した抗体の定常領域は、結果として生じるコンストラクトの特性を高める1つ以上のアミノ酸の変異または置換を通じて合成的であり得る。この点において、保存された結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を乱すことが可能であり、それと同時に修飾された抗体の立体配座および免疫原性特性を実質的に維持することができる。さらに他の実施態様は、定常領域への1つ以上のアミノ酸の付加を含み、エフェクター機能などの望ましい特徴を高めまたは、より多くの細胞毒素もしくは炭水化物の結合を提供する。このような実施態様において、選択された定常領域ドメインに由来する具体的な配列を挿入または複製することが望ましくあり得る。
本明細書に記載の治療方法において使用するためのあるDR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片において、Fc部分は、当技術分野で公知の技術を用いてエフェクター機能を低下させるために変異させることができる。例えば、定常領域の修飾を用いて、高い抗原特異性または抗体可撓性による高い局在性を可能にするジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を修飾することができる。修飾に関して結果として生じる生理学的特性、生物学的利用率、および他の生化学的効果は、過度の実験をせずに周知の免疫学的技術を用いて容易に測定および定量化することができる。
また、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む。)を含み、該変異体から本質的になり、または該変異体からなる抗体の使用も提供し、該抗体またはその断片は、DR6ポリペプチドに免疫特異的に結合する。当業者に公知の標準的な技術を用いて、結合分子をコードするヌクレオチド配列における変異を導入することができ、それらの技術には、アミノ酸置換を結果的に生じる部位特異的変異誘発およびPCR仲介性変異誘発が含まれるがこれらに限定されない。種々の実施態様において、変異体(誘導体を含む。)は、参照VH領域、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VL領域、VLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3に対する50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換をコードする。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が同様の電荷を備えた側鎖を有するアミノ酸残基で置換されることである。同様の電荷を備えた側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電していない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を備えたアミノ酸が挙げられる。あるいは、変異は、飽和変異誘発などによるコード化配列の全部または部分に沿って無作為に導入することができ、結果として生じる変異体は、生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する変異体を同定することができる。
例えば、抗体分子のフレームワーク領域のみにおいて、またはCDR領域のみにおいて、変異を導入することは可能である。導入された変異は、サイレントまたは中性ミスセンス変異であり得、すなわち、抗原を結合する抗体の能力に何ら、またはほとんど影響がない。これらの種類の変異は、コドンの使用を最適化するために、またはハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。あるいは、非中性ミスセンス変異は、抗原を結合する抗体の能力を変化させることができる。最もサイレントかつ中性のミスセンス変異の位置は、フレームワーク領域にある可能性が高いのに対し、最も非中性のミスセンス変異の位置は、CDRにある可能性が高いが、このことは絶対的な必要条件ではない。当業者は、抗原結合活性の変化のないこと、または結合活性における変化(例えば、抗原結合活性における改善、または抗体特異性の変化)などの望ましい特性を有する変異体分子を設計および試験することができるであろう。変異誘発の後、コード化したタンパク質は、慣例通りに発現することができ、コード化したタンパク質の機能的および/または生物学的活性は、本明細書に記載の技術を用いて、または当技術分野で公知の技術を慣例通りに改変することによって決定することができる。
一実施態様において、抗体は、二重特異性結合分子、結合ポリペプチド、または抗体、例えば、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン欠失型抗体、または2つ以上のエピトープ、例えば、2つ以上の抗原または同一の抗原における2つ以上のエピトープに対する結合特異性を有する融合タンパク質である。一実施態様において、二重特異性抗体は、DR6における少なくとも1つのエピトープに特異的な少なくとも1つの結合ドメインを有する。二重特異性抗体は、DR6のエピトープに特異的な2つの標的結合ドメインと、第二の標的に特異的な2つの標的結合ドメインとを有する四価の抗体であり得る。従って、四価の二重特異性抗体は、各特異性について二価であり得る。
本明細書に開示の診断法および治療法において使用するための抗体またはその免疫特異的断片の修飾した形態は、当技術分野で公知の技術を用いて全前駆体または親抗体から作製することができる。典型的な技術は、本明細書でより詳細に考察される。
本明細書に開示の診断法および治療法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片は、当技術分野で公知の技術を用いて作製または製造することができる。ある実施態様において、抗体分子またはその断片は、「組換えで産生され」、すなわち、組換えDNA技術を用いて産生される。抗体分子またはその断片を作製するための典型的な技術は、本明細書の他の箇所でより詳細に考察される。
本明細書に記載の方法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその断片は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって生成することができる。
ポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の種々の手順によって産生することができる。例えば、DR6免疫特異的断片は、ウサギ、マウス、ラットなどを含むがこれらに限定されない種々の宿主動物に投与して、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を導入することができる。種々のアジュバントを用いて、宿主の種に応じて免疫学的応答を増大させることができ、該アジュバントには、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リソレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、キーホール・リンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。また、このようなアジュバントも当技術分野で周知である。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体、およびファージディスプレイ技術、またはこれらの組み合わせの使用を含めた、当技術分野で公知の広範な種々の技術を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知のものを含むハイブリドーマ技術を用いて産生することができ、例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. (1988);Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas Elsevier, N.Y., 563−681 (1981)に教示することができる(該引用文献は、それらのすべての内容の全体が引用により組み込まれる。)。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術を通じて産生される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、任意の真核クローン、原核クローン、またはファージクローンを含めた単一のクローンに由来する抗体を指し、それが産生される方法を指すのではない。従って、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術を通じて産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマおよび組換え体の使用、ならびにファージディスプレイ技術を含めた、当技術分野で公知の広範な種々の技術を用いて調製することができる。
当技術分野で認識されるプロトコールを用いて、一例において、抗体は、関連抗原(例えば、精製済みDR6抗原またはこのような抗原を含む細胞もしくは細胞抽出物)およびアジュバントの複数回の皮下または腹腔内注射によって哺乳類において産生される。この免疫化は典型的には、活性化型脾細胞またはリンパ球由来の抗原応答性抗体の産生を含む免疫応答を誘発する。結果として生じる抗体は、動物の血清から回収して、ポリクローナル調製物を提供することができるが、脾臓、リンパ節、または末梢血由来の個々のリンパ球を単離して、モノクローナル抗体(MAb)の均質な調製物を提供することがしばしば望ましい。ある具体的な実施態様において、リンパ球は、脾臓から得られる。
この周知の過程(Kohler et al., Nature 256:495 (1975))において抗原を注射された哺乳類由来の比較的短い寿命のまたは致死のリンパ球は、不死の腫瘍細胞株(例えば、ミエローマ細胞株)と融合して、従って、不死でありかつB細胞の遺伝的にコードされた抗体を産生することのできるハイブリッド細胞または「ハイブリドーマ」を産生する。結果として生じるハイブリッドは、単一の抗体の形成に特異的な遺伝子を含む各個々の系を用いた選択、希釈、および再増殖によって、単一の遺伝子系に分離される。該ハイブリドーマは、所望の抗原に対して均質である抗体を産生し、純粋な遺伝的系譜に関して、「モノクローナル」と呼ばれる。
典型的には、このようにして調製されるハイブリドーマ細胞は、融合していない親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培地において蒔種されおよび増殖される。当業者は、ハイブリドーマの形成、選択、および増殖のための試薬、細胞株、および培地が、数多くの源から市販されており、標準化されたプロトコールが十分に確立されていることを認識するであろう。一般的に、ハイブリドーマ細胞が増殖している培地は、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。ある実施態様において、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降、放射線免疫検定法(RIA)、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELIZA)などのインビトロでのアッセイによって決定される。所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングすることができ、標準的な方法によって増殖することができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, pp. 59−103 (1986))。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体が、例えば、プロテイン‐A、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィなどの従来の精製手順によって培地、腹水、または血清から分離することができることは、さらに認められるであろう。
特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって生成することができる。例えば、FabおよびF(ab’)2断片は、パパイン(Fab断片を産生するため)またはペプシン(F(ab’)2断片を産生するため)などの酵素を用いて免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断によって産生することができる。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖定常領域、および重鎖のCH1ドメインを含む。
また、当業者は、DNAコード抗体または抗体断片(例えば、抗原結合部位)は、抗体ファージライブラリから得られ得ることを認識するであろう。特に、このようなファージを利用して、レパートリーまたは組み合わせ抗体ライブラリから発現する抗原結合ドメインを示すことができる(例えば、ヒトまたはマウス)。関心対象の抗原を結合する抗原結合ドメインを発現させるファージは、抗原により、例えば、標識した抗原または固体表面もしくはビーズに結合したもしくは捕捉した抗原を用いて、選択または同定することができる。これらの方法において用いられるファージは典型的には、ファージから発現したIDおよびM13結合ドメインを含むフィラメント状ファージであり、Fab、Fv、またはジスルフィドで安定化したFv抗体ドメインは、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えで融合される。典型的な方法は、例えば、欧州特許第368 684 B1号;米国特許第5,969,108号、Hoogenboom, H.R. and Chames, Immunol. Today 21:371 (2000); Nagy et al. Nat. Med. 8:801 (2002);Huie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:2682 (2001);Lui et al., J. Mol. Biol. 315:1063 (2002)に示されており、これらの各々は、引用により本明細書に組み込まれる。いくつかの刊行物(例えば、Marks et al., Bio/Technology 10:779−783 (1992))は、鎖シャッフリング(chain shhuffling)、ならびに組み合わせ感染、および大ファージライブラリを構築するための戦略としてのインビボでの組換えによる高親和性ヒト抗体の産生を記載している。別の実施態様において、リボソームディスプレイを用いて、ディスプレイプラットフォームとしてのバクテリオファージを置き換えることができる(例えば、Hanes et al., Nat. Biotechnol. 18:1287 (2000);Wilson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:3750 (2001);またはIrving et al., J. Immunol. Methods 248:31 (2001)参照)。さらに別の実施態様において、細胞表面ライブラリは、抗体についてスクリーニングすることができる(Boder et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:10701 (2000); Daugherty et al., J. Immunol. Methods 243:211 (2000))。このような手順は、モノクローナル抗体の単離およびその後のクローニングのための伝統的なハイブリドーマ技術に対する代替物を提供する。
ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に表示される。特に、VHおよびVL領域をコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリ(例えば、リンパ組織のヒトもしくはマウスcDNAライブラリ)または合成cDNAライブラリから増幅される。ある実施態様において、VHおよびVL領域をコードするDNAは、PCRによってscFvリンカーによって互いに接合され、ファージミドベクター(例えば、PCANTAB6またはPCoMB3HSS)へとクローニングされる。ベクターは、大腸菌において電気穿孔され、大腸菌はヘルパーファージに感染する。これらの方法において用いたファージは典型的にはFDおよびM13を含めたフィラメント状ファージであり、VHまたはVL領域は通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかに組換えで融合される。関心対象の抗原(例えば、DR6ポリペプチドまたはその断片)に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識済み抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉した抗原を用いて、選択または同定することができる。
抗体を作製するのに使用することのできるファージディスプレイ法に関する追加的な例には、Brinkman et al., J. Immunol. Methods 182:41−50 (1995);Ames et al., J. Immunol. Methods 184:177−186 (1995);Kettleborough et al., Eur. J. Immunol. 24:952−958 (1994);Persic et al., Gene 187:9−18 (1997);Burton et al., Advances in Immunology57:191−280 (1994);PCT出願第 PCT/GB91/01134号;PCT公開WO 90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;ならびに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号、および第5,969,108号に開示されているものが挙げられ、これらの各々のすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。
先の引用文献において記載されるように、ファージ選択の後、ファージ由来の抗体コード領域を単離および使用して、ヒト抗体を含めた全抗体、またはその他の所望の抗原結合断片を生成することができ、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含めた任意の所望の宿主において発現させることができる。例えば、また、PCT公開WO 92/22324;Mullinax et al., BioTechniques 12(6):864−869 (1992);およびSawai et al., AJRI 34:26−34 (1995);およびBetter et al., Science 240:1041−1043 (1988)において開示されたものなど、当技術分野で公知の方法を用いた、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片を組換えで産生する技術を採用することもできる(該引用文献は、それらのすべての内容の全体が引用により組み込まれる)。
別の実施態様において、所望のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定することができる(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによる)。ある実施態様において、単離またはサブクローニングされたハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの源として機能する。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターへと入れることができ、次に、これを大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはさもなくば免疫グロブリンを産生しないミエローマ細胞などの原核または真核宿主細胞へとトランスフェクトする。より特別には、単離されたDNA(本明細書に記載の通り合成的であり得る。)を用いて、引用により本明細書に組み込まれる1995年1月25日出願のNewmanら、米国特許第5,658,570号に記載の製造抗体のための定常および可変領域配列をクローニングすることができる。本質的に、このことは、選択された細胞からのRNAの抽出、cDNAへの変換、およびIg特異的プライマーを用いたPCRによる増幅を必要とする。また、この目的に適したプライマーは、米国特許第5,658,570号に記載されている。下記により詳細に論議されるであろうように、所望の抗体を発現する形質転換した細胞は、比較的多量で増殖して、免疫グロブリンの臨床的および商業的供給を提供することができる。
具体的な実施態様において、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を調べて、当技術分野で周知の方法によって、例えば、他の重鎖および軽鎖可変領域の公知のアミノ酸配列との比較で、配列の高可変性(hypervariability)領域を決定することによって、相補性決定領域(CDR)の配列を同定することができる。慣例通りの組換えDNA技術を用いて、1つ以上のCDRをフレームワーク領域内に、例えば、ヒトフレームワーク領域に挿入して、非ヒト抗体をヒト化することができる。フレームワーク領域は、天然のまたはコンセンサスフレームワーク領域、例えば、ヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、ヒトフレームワーク領域のリストについてはChothia et al., J. Mol. Biol.278:457−479 (1998)参照)。ある実施態様において、フレームワーク領域とCDRとの組み合わせによって生成したポリヌクレオチドは、所望のポリペプチド、例えばDR6の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体をコードする。さらなる実施態様において、1つ以上のアミノ酸置換が、フレームワーク領域内でなされ、例えば、抗原に対する抗体の結合を改善することができる。加えて、このような方法を用いて、鎖内ジスルフィド結合に参加する1つ以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製して、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合を欠失する抗体分子を生成することができる。ポリヌクレオチドに対する他の変化が企図され、当技術分野の技術内である。
ある実施態様において、本明細書に開示の治療方法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片は、治療されるべき動物における、例えば、ヒトにおける有害な免疫応答を誘発しない。一実施態様において、本明細書に開示の治療方法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片は、当技術分野で認識される技術を用いてその免疫原性を低下させるよう修飾される。例えば、抗体は、ヒト化、霊長類化、脱免疫化であり得、またはキメラ抗体を作製することができる。これらの種類の抗体は、非ヒト抗体、典型的にはマウスまたは霊長類抗体に由来し、親抗体の抗原結合特性を保有するかまたは実質的に保有するが、ヒトにおける免疫原性は低い。このことは、(a)非ヒト可変ドメイン全体をヒト定常領域へと接ぎ合わせて、キメラ抗体を生成すること、(b)非ヒト相補性決定領域(CDR)の1つ以上の少なくとも一部をヒトフレームワークおよび定常領域へと、決定的なフレームワーク残基の保有とともにまたはそれなしで接ぎ合わせること、または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によってヒト様セクションで該ドメイン全体を「覆うこと」を含めた種々の方法によって達成することができる。このような方法は、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851−6855 (1984);Morrison et al., Adv. Immunol. 44:65−92 (1988);Verhoeyen et al., Science 239:1534−1536 (1988);Padlan, Molec. Immun. 28:489−498 (1991);Padlan, Molec. Immun. 31:169−217 (1994)、ならびに米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、および第6,190,370号に開示されており、それらのすべての内容の全体引用により本明細書により組み込まれる。
また、脱免疫化を用いて、抗体の免疫原性を低下させることもできる。本明細書で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを修飾するための抗体の変化を含まむ(例えば、WO9852976A1、WO0034317A2参照)。例えば、出発抗体由来のVHおよびVL配列を分析して、各V領域由来のヒトT細胞エピトープ「マップ」が、相補性決定領域(CDR)および配列内の他の重要な残基と関連して、エピトープの位置を示す。T細胞エピトープマップ由来の個々のT細胞エピトープを分析して、最終的な抗体の活性を変化させることのリスクが低い代替的なアミノ酸置換を同定する。アミノ酸置換の組み合わせを含むある種々の代替的なVHおよびVL配列を設計し、これらの配列をその後、ある範囲の結合ポリペプチド、例えば、本明細書に開示の診断法および治療法において使用するためのDR6アンタゴニスト抗体またはその免疫特異的断片へと組み込み、次に、それを機能について試験する。典型的には、12〜24の変異体抗体を生成および試験する。次に、修飾されたVおよびヒトC領域を含む完全な重鎖および軽鎖遺伝子を発現ベクターへとクローニングし、その後のプラスミドを細胞株へと導入して、全抗体を産生する。次に、抗体を適切な生化学的および生物学的アッセイにおいて比較し、最適な変異体を同定する。
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体など、異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を産生するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、それらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれるMorrison, Science 229:1202 (1985);Oi et al., BioTechniques 4:214 (1986);Gillies et al., J. Immunol. Methods 125:191−202 (1989);Takeda et al., Nature 314:452−454 (1985)、Neuberger et al., Nature 312:604−608 (1984);米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第4,816397号を参照されたい。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有する所望の抗原を結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、CDRドナー抗体由来の対応する残基と置換され、抗原結合を変化させ、例えば改善する。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリング、および特定の位置における通常でないフレームワーク残基を同定するための配列比較によって同定される(例えば、それらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれるQueenら、米国特許第5,585,089号;Riechmann et al., Nature 332:323 (1988)参照)。抗体は、例えばCDR接ぎ合わせ(欧州特許第239,400号;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;および第5,585,089号)、化粧張り(veneering)または表面修復(resurfacing)(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489−498 (1991);Studnicka et al., Protein Engineering 7(6):805−814 (1994);Roguska. et al., PNAS 91:969−973 (1994)))、および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含めた当技術分野で公知の種々の技術を用いてヒト化することができる。
組換え抗体を生成するためのさらに別の高度に効率的な手段が、Newman, Biotechnology10: 1455−1460 (1992)によって開示される。具体的には、この技術は結果として、サル可変ドメインおよびヒト定常配列を含む霊長類化抗体の生成を生じる。この引用文献は、そのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。そのうえ、また、この技術は、これらの各々が引用により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許第5,658,570号、第5,693,780号、および第5,756,096号にも記載されている。
完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置に特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリを用いた先に記載したファージディスプレイ法を含めた当技術分野で公知の種々の方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびにPCT公開WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741も参照されたく;それらの各々のすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。
また、ヒト抗体は、機能的内在性免疫グロブリンを発現できないが、内在性免疫グロブリン産生のできないヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて産生することもできる(例えば、それらの各々が引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,075,181号、第5,939,598号、第5,591,669号、および第5,589,369号参照)。例えば、キメラおよび生殖系列変異マウスにおける抗体重鎖接合領域のホモ接合性欠失が結果として、内在性抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されている。ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子複合体は、無作為に、またはマウス胚性幹細胞への相同的組換えによって導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域は、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同的組換えによってヒト免疫グロブリン座の導入と別個に、または同時に非機能的にすることができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内在性抗体産生を防止する。修飾された胚性幹細胞を発展させ、胚盤胞へと微量注入して、キメラマウスを作出する。次に、キメラマウスを荒廃させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を作出する。トランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば所望の標的ポリペプチドの全部または部分を用いて、通常の様式で免疫化する。抗原指向性のモノクローナル抗体を、従来のハイブリドーマ技術を用いて免疫化したトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスによって含まれるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配列し、その後、クラスの切り替えおよび体細胞の変異を受ける。従って、このような技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術に関する概観については、Lonberg and Huszar Int. Rev. Immunol.13:65−93 (1995)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術、ならびにこのような抗体を産生するためのプロトコールに関する詳細な考察については、例えば、PCT公開WO 98/24893;WO 96/34096;WO 96/33735;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;および第5,939,598号を参照されたく、それらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。加えて、Abgenix, Inc. (Freemont, Calif.) and GenPharm (San Jose, Calif.)などの企業は、先に記載のものと同様の技術を用いて選択された抗原に対して指向するヒト抗体を提供することに従事し得る。
SCIDマウスを用いてヒト抗体を生成する別の手段は、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第5,811,524号に開示されている。また、これらのヒト抗体と関連した遺伝材料が、本明細書に記載の通り単離および操作することもできることは認められるであろう。
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技術を用いて生成することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を用いて、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers et al., Bio/Technology 12:899−903 (1988))。例えば、VHCDR3のみが変動しないランダムライブラリからの選択を開示している米国特許第5,565,332号も参照されたい。
あるいは、一本鎖抗体の産生について記載した技術(米国特許第4,694,778号;Science 242:423−442 (1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883 (1988);およびWard et al., Nature 334:544−554 (1989))を使用することができる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖断片を連結することによって形成され、結果として一本鎖抗体を生じる。また、大腸菌における機能的Fv断片の構築についての技術も使用することができる(Skerra et al., Science 242:1038−1041 (1988))。一本鎖Fvおよび抗体を産生するために使用することのできる技術の例には、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Huston et al., Methods in Enzymology 203:46−88 (1991);およびShu et al., PNAS 90:7995−7999 (1993)に記載されたものが挙げられる。
別の実施態様において、リンパ球は、顕微操作および単離された可変遺伝子によって選択することができる。例えば、末梢血単核細胞は、免疫化した哺乳類から単離して、約7日間インビトロで培養することができる。培養物は、スクリーニング基準に適合する特定のIgGについてスクリーニングすることができる。陽性ウェル由来の細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞は、FACSによって、または該細胞を補体仲介性溶血性プラークアッセイにおいて同定することによって単離することができる。Ig産生B細胞はチューブへと顕微操作し得、VHおよびVL遺伝子は、例えばRT‐PCRを用いて増幅することができる。VHおよびVL遺伝子は、発現のために、抗体発現ベクターへとクローニングすることができ、細胞(例えば、真核または原核細胞)へとトランスフェクトすることができる。
あるいは、抗体産生細胞株は、当業者に周知の技術を用いて選択および培養することができる。このような技術は、種々の実験室マニュアルおよび主要な刊行物において記載されている。この点において、下記に記載の方法において使用するのに適した技術は、Current Protocols in Immunology, Coligan et al., Eds., Green Publishing Associates and Wiley−Interscience, John Wiley and Sons, New York (1991)に記載されており、補遺を含め、それらのすべての内容の全体が引用により本明細書に組み込まれる。
本明細書に開示の治療法において使用するための抗体は、抗体の合成について当技術分野で公知の任意の方法によって、特に化学合成によって、または本明細書に記載の組換え発現技術によって産生することができる。
抗原結合DNA配列の対立遺伝子、変異体、および変異が本明細書に記載の方法において使用することができることはさらに認められるであろう。
一実施態様において、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、周知の方法に従って逆転写酵素およびDNAポリメラーゼを用いて同時にまたは別個にのいずれかで作製することができる。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開された重鎖および軽鎖DNAならびにDNAおよびアミノ酸の配列に基づいたより特異的なプライマーによって開始することができる。先に考察したように、また、PCRを用いて、抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離することができる。この場合、ライブラリは、共通のプライマーまたは、マウス定常領域プローブなどのより大きな相同的プローブによってスクリーニングすることができる。
DNA、典型的にはプラスミドDNAは、例えば、組換えDNA技術に関する先の引用文献において詳細に示される標準的な周知の技術に従って制限マッピングおよび配列決定される、当技術分野で公知の技術を用いて、細胞から単離することができる。もちろん、DNAは、単離過程またはその後の分析の間の任意の時点で合成的であり得る。
抗体、またはその断片、誘導体、もしくは類似体、例えば、DR6アンタゴニストである抗体の重鎖または軽鎖の組換え発現は、抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。一旦、抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはそれらの部分(例えば、重鎖もしくは軽鎖可変ドメインを含む。)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクターは、当技術分野で周知の技術を用いた組換えDNA技術によって産生することができる。従って、ヌクレオチド配列をコードする抗体を含むポリヌクレオチドを発現することによってタンパク質を調製するための方法が、本明細書に記載される。当業者に周知の方法を用いて、抗体コード配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えが挙げられる。また、プロモータに作用可能に連結された抗体分子またはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターも本明細書で考慮される。このようなベクターには、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、PCT公開WO 86/05807;PCT公開WO 89/01036;および米国特許第5,122,464号参照)、抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖全体の発現のためにこのようなベクターへとクローニングすることができる。
発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと転移し、次に、トランスフェクトした細胞は、従来技術によって培養され、本明細書に記載の方法において使用するための抗体を産生する。従って、また、異種性プロモータに作用可能に連結された抗体またはその重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞も、本明細書に記載される。二本鎖抗体の発現についてのある実施態様において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、下記に記載の通り、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞において同時発現させることができる。
種々の宿主‐発現ベクター系を利用して、本明細書の他の箇所に記載の方法において使用するための抗体分子を発現させることができる。
宿主細胞は、2つの発現ベクター、すなわち、重鎖由来のポリペプチドをコードする第一のベクターおよび軽鎖由来のポリペプチドをコードする第二のベクターを用いて同時にトランスフェクトすることができる。2つのベクターは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含むことができる。あるいは、重鎖および軽鎖の両ポリペプチドをコードする単一のベクターを用いることができる。このような状況において、軽鎖は、重鎖の前に有利に配置され、過剰量の毒性のない重鎖を回避する(Proudfoot, Nature 322:52 (1986);Kohler, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197 (1980))。重鎖および軽鎖についてのコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含むことができる。
一旦、抗体分子が組換え発現すると、免疫グロブリン分子の精製のための当技術分野で公知の任意の方法によって、例えばクロマトグラフィ(例えば、イオン交換、特にプロテインA後の特異的な抗原に対する親和性による親和性、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィ)、遠心分離、吸収率較差溶解度によって、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって精製することができる。あるいは、抗体の親和性を増大させるための方法が、US 2002 0123057 A1に開示されている。
さらに、下記により詳細に記載されるように、本明細書に記載の任意のDR6抗体または抗体断片を1つ以上のポリマーに抱合(共有結合)することができる。1つの特定の実施態様において、特異的エピトープ、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv断片、または一本鎖抗体を認識する抗体断片は、ポリマーに抱合することができる。このような抱合に適したポリマーの例には、ポリペプチド、糖ポリマー、およびポリアルキレングリコール鎖が挙げられる(下記により詳細に記載の通り)。一般的に用いられるポリマーのクラスは、ポリアルキレングリコールである。ポリエチレングリコール(PEG)は、最も頻繁に用いられる。PEG部分、例えば、1、2、3、4、または5PEGポリマーは、DR6抗体またはその断片に抱合して、血清半減期を延ばすことができる。PEG部分は、非抗原性であり、本質的に生物学的に不活性である。用いたPEG部分は、分岐または非分岐であり得る。
DR6抗体をコードするポリヌクレオチド
本明細書に記載のポリヌクレオチドには、DR6抗体をコードする核酸分子、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体が含まれる。
一実施態様において、ポリヌクレオチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであり、ここで、重鎖可変領域のCDRの少なくとも1つまたは重鎖可変領域のVH‐CDRの少なくとも2つは、本明細に開示のモノクローナルDR6抗体由来の参照重鎖VH‐CDR1、VH‐CDR2、またはVH‐CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。あるいは、VHのVH‐CDR1、VH‐CDR2、およびVH‐CDR3領域は、本明細書に開示のモノクローナルDR6抗体由来の参照重鎖VH‐CDR1、VH‐CDR2、およびVH‐CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。従って、本実施態様によると、重鎖可変領域は、表5に示されるポリペプチド配列と関連したVH‐CDR1、VH‐CDR2、またはVH‐CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであり、ここで、軽鎖可変領域のVL‐CDRの少なくとも1つまたは軽鎖可変領域のVL− CDRの少なくとも2つは、本明細書に開示のモノクローナルDR6抗体由来の参照軽鎖VL‐CDR1、VL‐CDR2、またはVL‐CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。あるいは、VLのVL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3領域は、本明細書に開示のモノクローナルDR6抗体由来の参照軽鎖VL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。従って、本実施態様によると、軽鎖可変領域は、表5に示されるポリペプチド配列と関連したVL‐CDR1、VL‐CDR2、またはVL‐CDR3ポリペプチド配列を有する。
当技術分野で公知のように、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチドの間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアミノ酸または核酸配列を、第二のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列と比較することによって決定される。本明細書で考察される際、任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるかどうかは、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)などだがこれに限定されない、当技術分野で公知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定することができる。BESTFITは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482−489 (1981)の局所相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見出す。BESTFITまたは任意の他の配列整列プログラムを用いて、特定の配列が例えば参照配列と95%同一であるかどうかを決定する場合、パラメータはもちろん、同一性の%が参照ポリペプチド配列の全長にわたって算出され、かつ、参照配列におけるアミノ酸の総数の最大5%の相同性におけるギャップが許容されるよう設定される。
ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVHを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。ある実施態様において、VHポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、それによりコードされるアミノ酸配列を変化させずに変化する。例えば、配列は、所与の種における改善されたコドン使用のために変化して、スプライス位置または除去制限酵素部位を除去することができる。これらなどの配列の最適化は、実施例に記載されており、当業者によって周知であり、および慣例通りに実施される。
別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、VH‐CDR1、VH‐CDR2、およびVH‐CDR3領域が、表5に示すVH‐CDR1、VH‐CDR2、およびVH‐CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、該核酸からなる、単離されたポリヌクレオチドである。ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVHを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドは、抗体VHポリペプチドをコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドであり、ここで、VHポリペプチドは、配列番号8、9、および10;配列番号18、19、および20;配列番号28、29、および30;配列番号38、39、および40;配列番号48、49、および50;配列番号58、59、および60;配列番号68、69、および70;配列番号78、79、および80;配列番号88、89、および90;配列番号98、99、および100;配列番号108、109、および110;配列番号118、119、および120;ならびに配列番号128、129、および130からなる群から選択されるVH‐CDR1、VH‐CDR2、およびVH‐CDR3アミノ酸配列を含み、VH‐CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片は、DR6に特異的に結合する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVHを含み、VHから本質的になり、またはVHからなる抗体またはその抗原結合断片は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、およびM73‐C04からなる群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、または1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナル抗体と同じDR6エピトープに特異的にまたは優先的に結合し、あるいは、このようなモノクローナル抗体または断片がDR6に結合するのを競合的に阻害する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVHを含み、VHから本質的になり、またはVHからなる抗体またはその抗原結合断片は、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11 M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、または10−15 M以下の解離定数(KD)を特徴とする親和性で、DR6ポリペプチドもしくはその断片、またはDR6変異体ポリペプチドに特異的にまたは優先的に結合する。
ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVLを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、VL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3領域が、表5に示されるVL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドである。ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVLを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
さらなる態様において、ポリヌクレオチドは、VL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3領域が、表5に示されるVL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3群をコードするヌクレオチド配列と同一であるヌクレオチド配列によってコードされる免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドである。ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVLを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドは、抗体VLポリペプチドをコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドであり、該VLポリペプチドは、配列番号13、14、および15;配列番号23、24、および25;配列番号33、34、および35;配列番号43、44、および45;配列番号53、54、および55;配列番号63、64、および65;配列番号73、74、および75;配列番号83、84、および85;配列番号93、94、および95;配列番号103、104、および105;配列番号113、114、および115;配列番号123、124、および125;ならびに配列番号133、134、および135からなる群から選択されるVL‐CDR1、VL‐CDR2、およびVL‐CDR3アミノ酸配列を含み、該VL‐CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片は、DR6に特異的に結合する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVLを含み、VLから本質的になり、またはVLからなる抗体またはその抗原結合断片は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、およびM73‐C04からなる群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、または1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナル抗体と同じDR6エピトープに特異的にまたは優先的に結合し、あるいは、このようなモノクローナル抗体または断片がDR6に結合するのを競合的に阻害する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVLを含み、VLから本質的になり、またはVLからなる抗体またはその抗原結合断片は、DR6ポリペプチドもしくはその断片、またはDR6変異体ポリペプチドに、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、または10−15M以下の解離定数(KD)を特徴とする親和性で特異的にまたは優先的に結合する。
さらなる実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127からなる群から選択される参照VHポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一のVHをコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVHを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
別の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127からなる群から選択されるポリペプチド配列を有するVHをコードする核酸配列を含み、該核酸配列から本質的になり、または該核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされるVHを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
さらなる実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、および126からなる群から選択される参照核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一のVHコード核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、このようなポリヌクレオチドによってコードされるVHを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
別の態様において、ポリヌクレオチドは、VHをコードする核酸配列を含み、該核酸配列から本質的になり、または該核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチドであり得、ここで、VHのアミノ酸配列は、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127からなる群から選択される。また、ポリヌクレオチドは、VHをコードする核酸配列を含み、該核酸配列から本質的になり、または該核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチドであり得、核酸の配列は、配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、および126からなる群から選択される。ある実施態様において、このようなポリヌクレオチドによってコードされるVHを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVHを含み、VHから本質的になり、またはVHからなる抗体またはその抗原結合断片は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、およびM73‐C04からなる群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、または1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナル抗体と同じDR6エピトープに特異的にまたは優先的に結合し、あるいは、このようなモノクローナル抗体または断片がDR6に結合するのを競合的に阻害するか、あるいはこのようなモノクローナル抗体がDR6に結合するのを競合的に阻害する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVHを含み、VHから本質的になり、VHからなる抗体またはその抗原結合断片は、DR6ポリペプチドもしくはその断片、またはDR6変異体ポリペプチドに、5×10−2 M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、または10−15M以下の解離定数(KD)を特徴とする親和性で特異的にまたは優先的に結合する。
さらなる実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、および132からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する参照VLポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一のVLをコードする核酸を含み、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであり得る。さらなる実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、および131からなる群から選択される参照核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一のVLコード核酸を含む、該核酸から本質的になり、または該核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、このようなポリヌクレオチドによってコードされるVLを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
別の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、および132からなる群から選択されるポリペプチド配列を有するVLをコードする核酸配列を含み、該核酸配列から本質的になり、または該核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチドであり得る。ポリヌクレオチドは、VLをコードする核酸配列を含み、該核酸配列から本質的になり、または該核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチドであり得、核酸の配列は、配列番号11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、および131からなる群から選択される。ある実施態様において、このようなポリヌクレオチドによってコードされるVLを含む抗体または抗原結合断片は、DR6に特異的にまたは優先的に結合する。
ある実施態様において、先に記載のポリヌクレオチドの1つ以上によってコードされるVLを含み、VLから本質的になり、またはVLからなる抗体またはその抗原結合断片は、M50‐H01、M51‐H09、M53‐E04、M53‐F04、M62‐B02、M63‐E10、M66‐B03、M67‐G02、M72‐F03、およびM73‐C04からなる群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、または1P1D6.3、1P2F2.1、および1P5D10.2からなる群から選択される参照モノクローナル抗体と同じDR6エピトープに特異的にまたは優先的に結合し、あるいはこのようなモノクローナル抗体または断片がDR6に結合するのを競合的に阻害する。
特定の実施形態では、上述の1以上のポリヌクレオチドによってコードされるVLを含み、本質的にそれから成る、又はそれから成る抗体又はその抗原結合断片は、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、又は10−15M以下の解離定数(KD)を特徴とする親和性にて、DR6ポリペプチド若しくはその断片又はDR6変異体ポリペプチドに特異的に又は優先的に結合する。
上述のポリヌクレオチドのいずれかは、たとえば、コードされるポリペプチドの分泌を指示するシグナルペプチド、本明細書で記載されるような抗体定常領域、又は本明細書で記載されるようなそのほかの異種ポリペプチドをコードする追加の核酸をさらに包含することができる。
また、本明細書のほかでさらに詳細に記載されるように、組成物は、上述の1以上のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む組成物を包含する。一実施形態では、組成物は第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドを含む組成物を包含し、上記第1のポリヌクレオチドは本明細書で記載されるようなVHポリペプチドをコードし、上記第2のポリヌクレオチドは本明細書で記載されるようなVLポリペプチドをコードする。具体的には、組成物はVHポリペプチド及びVLポリペプチドを含み、本質的にそれらから成り、それらから成るが、VHポリペプチド及びVLポリペプチドはそれぞれ、配列番号7と12、17と22、27と32、37と42、47と52、57と62、67と72、77と82、87と92、97と102、107と112、117と122、及び127と132から成る群から選択される参照VHポリペプチドとVLポリペプチドのアミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるポリペプチドをコードする。又は代わりに、組成物は、配列番号6と11、16と21、26と31、36と41、46と51、56と61、66と71、76と81、86と91、96と101、106と111、116と121、及び126と131から成る群から選択される参照VHとVLの核酸配列にそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるVHポリヌクレオチドとVLポリヌクレオチドを含み、本質的にそれらから成り、それらから成る。特定の実施形態では、そのような組成物におけるポリヌクレオチドによってコードされるVH及びVLを含む抗体又は抗原結合断片は、特異的に又は優先的にDR6に結合する。
本明細書で記載されるポリヌクレオチドはほかで記載されるようなポリヌクレオチドの断片も包含する。さらに、本明細書で記載されるような融合ポリヌクレオチド、Fab断片及びそのほかの誘導体をコードするポリヌクレオチドも企図される。
ポリヌクレオチドは当該技術で既知の任意の方法によって作製することができ、又は製造することができる。たとえば、抗体のヌクレオチド配列が既知であれば、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチド(たとえば、Kutmeier et al., BioTechniques 17:242 (1994)に記載されたように)から組み立てることができ、それには、手短には、抗体をコードする配列の部分を含有する重なり合ったオリゴヌクレオチドの合成と、それらオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結と、次いで連結したオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅が関与する。
或いは、DR6抗体をコードするポリヌクレオチド、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体は、好適な供給源からの核酸から生成することができる。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが利用可能ではないが、抗体分子の配列が分かっている場合、抗体をコードする核酸は、配列の3’及び5’末端とハイブリッド形成可能な合成プライマーを用いたPCR増幅によって、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてクローニングし、該抗体若しくはそのほかのDR6抗体をコードするcDNAライブラリから、たとえば、cDNAクローンを特定することによって、好適な供給源(たとえば、抗体cDNAライブラリ、又は該抗体又はそのほかのDR6抗体を発現している組織又は細胞、たとえば、抗体を発現するように選抜されたハイブリドーマから単離されたポリA+RNAのような核酸から生成されるcDNAライブラリ)から化学的に合成する又は入手することができる。次いで、当該技術で周知の任意の方法を用いて、PCRによって生成された増幅核酸を複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体のヌクレオチド配列及び相当するアミノ酸配列がいったん決定すると、ヌクレオチド配列の操作について当該技術で周知の方法、たとえば、組換えDNA技法、部位特定変異誘発、PCRなど(たとえば、双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990) and Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1998)に記載された技法を参照)を用いてそのヌクレオチド配列を操作し、たとえば、アミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入を創出するために異なったアミノ酸配列を有する抗体を生成することができる。
DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、未修飾のRNA若しくはDNA又は修飾されたRNA若しくはDNAであることができる任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドから構成され得る。たとえば、DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA,及び一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNAから構成されることができ、ハイブリッド分子は、一本鎖、さらに通常では二本鎖、又は一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であり得るDNA及びRNAを含む。さらに、DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNA若しくはDNA又はRNAとDNAの双方を含む三本鎖領域から構成され得る。DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性又はそのほかの理由で修飾された1以上の修飾された塩基又はDNA又はRNAの主鎖も含有することができる。「修飾された」塩基には、たとえば、トリチル化塩基、及びイノシンのような稀な塩基が挙げられる。多様な修飾がDNA又はRNAに為される;従って、「ポリヌクレオチド」は化学的に、酵素的に、又は代謝的に修飾された形態を包含する。
免疫グロブリン(たとえば、免疫グロブリン重鎖部分又は軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドは、1以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失がコードされたタンパク質に導入されるように1以上のヌクレオチドの置換、付加又は欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作り出すことができる。部位特定変異誘発及びPCR介在性変異誘発のような常法によって変異を導入することができる。1以上の非必須アミノ酸残基にて保存的なアミノ酸置換を行うことができる。
DR6抗体ポリペプチド
DR6抗体を構成する単離されたポリペプチド、及びそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも本明細書で記載される。DR6抗体は、免疫グロブリン分子に由来するDR6−特異的抗原結合領域をコードするポリペプチド、たとえば、アミノ酸配列を含む。指定されたタンパク質に「由来する」ポリペプチド又はアミノ酸は、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドの起源を指す。特定の場合では、特定の出発ポリペプチド又はアミノ酸の配列に由来するポリペプチド又はアミノ酸配列は、出発配列又はその一部と本質的に同一であるアミノ酸配列を有し、その際、一部は、少なくとも10〜20アミノ酸、少なくとも20〜30アミノ酸、少なくとも30〜50アミノ酸から成り、又は出発配列の起源を有するとき、当業者に特定可能である。
一実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成るポリペプチドであることができ、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも1つ又は重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つは、本明細書で開示されるモノクローナルDR6抗体からの参照の重鎖VH−CDR1、VH−CDR2又はVH−CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。或いは、VHのVH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の領域は、本明細書で開示されるモノクローナルDR6抗体からの参照の重鎖VH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。従って、本実施形態によれば、重鎖可変領域は、上記表5に示される群に関係するH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3のポリペプチド配列を有する。表5がカバットシステムによって定義されるVH−CDRを示すが、ほかのCDRの定義、たとえば、コチアシステムによって定義されるVH−CDRも記載される。特定の実施形態では、VHを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
別の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の領域は、表5に示されるVH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の群と同一であるポリペプチド配列を有する。特定の実施形態では、VHを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
別の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の領域は、VH−CDRの任意の1つにおける1、2、3、4、5又は6のアミノ酸置換を除いて、表5に示されるVH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の群と同一であるポリペプチド配列を有する。さらに大きなCDR、たとえば、VH−CDR3では、VH−CDRを含むVHがDR6に特異的に又は優先的に結合する限り、CDRにて追加の置換が行われ得る。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。特定の実施形態では、VHを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
一部の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の領域は、上記VH−CDRの少なくとも1つにおける1、2、3、4、5又は6のアミノ酸置換を除いて、配列番号8と9と10;配列番号18と19と20;配列番号28と29と30;配列番号38と39と40;配列番号48と49と50;配列番号58と59と60;配列番号68と69と70;配列番号78と79と80;配列番号88と89と90;配列番号98と99と100;配列番号108と109と110;配列番号118と119と120;及び配列番号:128と129と130から成る群から選択されるポリペプチド配列を有する。
一部の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3の領域は、配列番号8と9と10;配列番号18と19と20;配列番号28と29と30;配列番号38と39と40;配列番号48と49と50;配列番号58と59と60;配列番号68と69と70;配列番号78と79と80;配列番号88と89と90;配列番号98と99と100;配列番号108と109と110;配列番号118と119と120;及び配列番号:128と129と130から成る群から選択されるポリペプチド配列を有する。
さらなる実施形態では、ポリペプチドは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117及び127から成る群から選択される参照VHポリペプチドアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるVHポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができる。特定の実施形態では、VHポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
別の態様では、ポリペプチドは、配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117及び127から成る群から選択されるVHポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができる。特定の実施形態では、VHポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
特定の実施形態では、上述の1以上のVHポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る抗体又はその抗原結合断片は、M50−H01、M51−H09、M53−E04、M53−F04、M62−B02、M63−E10、M66−B03、M67−G02、M72−F03及びM73−C04から成る群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、又は1P1D6.3、1P2F2.1及び1P5D10.2から成る群から選択される参照モノクローナル抗体と同一のDR6エピトープに特異的に又は優先的に結合する、或いはそのようなモノクローナル抗体がDR6に結合するのを競合的に阻害する。
特定の実施形態では、上述の1以上のVHポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る抗体又はその抗原結合断片は、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、又は10−15M以下の解離定数(KD)を特徴とする親和性にて、DR6ポリペプチド若しくはその断片又はDR6変異体ポリペプチドに特異的に又は優先的に結合する。
別の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ又は軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つは、本明細書で開示されるモノクローナルDR6抗体からの参照の軽鎖VL−CDR1、VL−CDR2又はVL−CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。或いは、VLのVL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の領域は、本明細書で開示されるモノクローナルDR6抗体からの参照の軽鎖VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。従って、本実施形態によれば、軽鎖可変領域は、上記表5に示されるポリペプチドに関係するVL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3のポリペプチド配列を有する。表5がカバットシステムによって定義されるVL−CDRを示すが、ほかのCDRの定義、たとえば、コチアシステムによって定義されるVL−CDRsも記載される。特定の実施形態では、VLポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
別の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の領域は、表5に示されるVL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の群と同一であるポリペプチド配列を有する。特定の実施形態では、VLポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
別の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の領域は、VL−CDRの任意の1つにおける1、2、3、4、5又は6のアミノ酸置換を除いて、表5に示されるVL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の群と同一であるポリペプチド配列を有する。さらに大きなCDRでは、VL−CDRを含むVLがDR6に特異的に又は優先的に結合する限り、VL−CDRにて追加の置換が行われ得る。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。特定の実施形態では、VLを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
一部の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の領域は、上記VL−CDRの少なくとも1つにおける1、2、3、4、5又は6のアミノ酸置換を除いて、配列番号13と14と15;配列番号23と24と25;配列番号33と34と35;配列番号43と44と45;配列番号53と54と55;配列番号63と64と65;配列番号73と74と75;配列番号83と84と85;配列番号93と94と95;配列番号103と104と105;配列番号113と114と115;配列番号123と124と125;及び配列番号:133と134と135から成る群から選択されるポリペプチド配列を有する。
一部の実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができ、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3の領域は、配列番号13と14と15;配列番号23と24と25;配列番号33と34と35;配列番号43と44と45;配列番号53と54と55;配列番号63と64と65;配列番号73と74と75;配列番号83と84と85;配列番号93と94と95;配列番号103と104と105;配列番号113と114と115;配列番号123と124と125;及び配列番号:133と134と135から成る群から選択されるポリペプチド配列を有する。
さらなる実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122及び132成る群から選択される参照VLポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるVLポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができる。特定の実施形態では、VLポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
別の態様では、ポリペプチドは、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122及び132成る群から選択されるVLポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る単離されたポリペプチドであることができる。特定の実施形態では、VLポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
特定の実施形態では、上述の1以上のVLポリペプチドを含む、本質的にそれから成る抗体又はその抗原結合断片は、M50−H01、M51−H09、M53−E04、M53−F04、M62−B02、M63−E10、M66−B03、M67−G02、M72−F03及びM73−C04から成る群から選択される参照モノクローナルFab抗体断片、又は1P1D6.3、1P2F2.1及び1P5D10.2から成る群から選択される参照モノクローナルと同一のDR6エピトープに特異的に又は優先的に結合し、或いはそのようなモノクローナル抗体又は断片がDR6に結合するのを競合的に阻害する。
特定の実施形態では、上述の1以上のVLポリペプチドを含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る抗体又はその抗原結合断片は、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、又は10−15M以下の解離定数(KD)を特徴とする親和性にて、DR6ポリペプチド若しくはその断片又はDR6変異体ポリペプチドに特異的に又は優先的に結合する。
ほかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、VHポリペプチド及びVLポリペプチドを含み、本質的にそれから成り、又はそれから成るが、VHポリペプチド及びVLポリペプチドはそれぞれ、配列番号7と12、17と22、27と32、37と42、47と52、57と62、67と72、77と82、87と92、97と102、107と112、117と122、及び127と132から成る群から選択される参照VHポリペプチドとVLポリペプチドのアミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。特定の実施形態では、VH及びVLのポリペプチドを含む抗体又は抗原結合断片は特異的に又は優先的にDR6に結合する。
上述のポリペプチドのいずれかはさらに、たとえば、コードされるポリペプチドの分泌を指示するシグナルペプチド、本明細書で記載されるような抗体定常領域、又は本明細書で記載されるようなそのほかの異種ポリペプチドのような追加のポリペプチドを包含することができる。さらに、ポリペプチドはほかで記載されるようなポリペプチド断片を包含する。さらに、ポリペプチドは、本明細書で記載されるような、融合ポリペプチド、Fab断片、及びそのほかの誘導体を包含する。
また、本明細書のほかでさらに詳細に記載されるように、本組成物は上述のポリペプチドを含む組成物を包含する。
本明細書で開示されるようなDR6抗体ポリペプチドは、それらが由来する天然に存在する結合ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるように修飾することができるが当業者によって理解されるであろう。たとえば、指定されたタンパク質に由来するポリペプチド又はアミノ酸の配列は、出発配列に類似することができ、たとえば、出発配列に特定の比率の同一性を有することができ、たとえば、それは、出発配列に60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%同一であることができる。
さらに、保存的置換又は「非必須」アミノ酸領域での変化をもたらすヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失又は挿入を行うことができる。たとえば、指定されたタンパク質に由来するポリペプチド又はアミノ酸の配列は、1以上の個々のアミノ酸の置換、挿入又は欠失、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20以上の個々のアミノ酸の置換、挿入又は欠失を除いて、出発配列と同一であり得る。指定されたタンパク質に由来するポリペプチド又はアミノ酸の配列は、1以上の個々のアミノ酸の置換、挿入又は欠失、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20以上の個々のアミノ酸の置換、挿入又は欠失を除いて、出発配列と同一であり得る。ほかの実施形態では、指定されたタンパク質に由来するポリペプチド又はアミノ酸の配列は、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、15以下、又は20以下の個々のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を除いて出発配列と同一であり得る。特定の実施形態では、指定されたタンパク質に由来するポリペプチド又はアミノ酸の配列は、出発配列に対して1〜5、1〜10、1〜15、又は1〜20の個々のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を有する。
特定のDR6抗体ペプチドは、ヒトのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含む、本質的にそれから成る。又はそれから成る。しかしながら、特定のDR6抗体ペプチドは、別の哺乳類種に由来する1以上の連続したアミノ酸を含む。たとえば、DR抗体は、霊長類の重鎖部分、ヒンジ部分又は抗原結合領域を包含し得る。別の例では、非マウス抗体ポリペプチド、たとえば、DR抗体の抗原結合部位に、1以上のマウス由来のアミノ酸が存在し得る。別の実施形態では、DR6抗体の抗原結合部位は完全にマウスのものである。特定の治療応用では、DR特異的な抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは類似体は、抗体が投与される動物に対して免疫原性ではないように設計される。
特定の実施形態では、DR6抗体ポリペプチドは、通常、抗体に伴わないアミノ酸配列又は1以上の部分を含む。例となる修飾は以下でさらに詳説される。たとえば、単鎖Fv抗体断片は、柔軟なリンカー配列を含むことができ、又は修飾されて官能部分(たとえば、PEG、薬剤、毒素又は標識)を加えることができる。
DR6抗体ポリペプチドは、融合タンパク質を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成ることができる。融合タンパク質は、たとえば、少なくとも1つの標的結合部位を持つ免疫グロブリン抗原結合部位と、少なくとも1つの異種部分、すなわち、天然では天然に連結されない部分とを含むキメラ分子である。アミノ酸配列は通常、融合ポリペプチドで一緒になる別々のタンパク質に存在することができ、又は、融合ポリペプチドにおける新しい配置に置かれる同一のタンパク質に通常存在することができる。融合タンパク質は、たとえば、化学合成によって、又はペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを創出し、翻訳することによって作り出すことができる。
用語「異種」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドに適用されるとき、ポリヌクレオチド又はポリペプチドが、比較される実体の残りとは明確に異なるな実体に由来することを意味する。たとえば、本明細書で使用されるとき、DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは類似体に融合される「異種ポリペプチド」は、同一種の非免疫グロブリンポリペプチド、又は異なった種の免疫グロブリン若しくは非免疫グロブリンのポリペプチドに由来する。
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術で定義されており、塩基性側鎖(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。従って、免疫グロブリンポリペプチドにおける非必須アミノ酸残基は、同一側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基によって置き換えることができる。別の実施形態では、アミノ酸の鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順及び/又は組成が異なる構造的に類似する鎖によって置き換えることができる。
或いは、別の実施形態では、たとえば、飽和変異誘発によって、免疫グロブリンのコーディング配列のすべて又は一部に沿って変異を無作為に導入することができ、得られた変異体は、本明細書で開示される診断法及び治療法で使用するためにDR6抗体に組み入れることができ、所望の抗原、たとえば、DR6に結合するその能力についてスクリーニングすることができる。
融合ポリペプチド及び抗体
本明細書で開示される治療法で使用するためのDR6ポリペプチド及び抗体はさらに、N又はC末端にて組換え的に異種ポリペプチドに融合することができる。たとえば、D6拮抗物質ポリペプチド又は抗体は、検出アッセイで標識として有用な分子及びたとえば、異種ポリペプチド、薬剤、放射性核種、又は毒素のようなエフェクター分子に組換え的に融合する、又は結合させることができる。たとえば、PCT公開WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;及び欧州特許第396,387号を参照のこと。
本明細書で開示される治療法で使用するためのDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体は、ペプチド結合又は修飾されたペプチド結合、すなわち、ペプチドイソスターによって互いに連結されたアミノ酸から構成され得るが、20の遺伝子にコードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含有することができる。
DR6拮抗物質は、DR6機能を阻害するDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体の融合を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体が融合される異種ポリペプチドは機能に関して有用であり、又は拮抗物質ポリペプチド又は抗体を標的とするのに有用である。特定の実施形態では、可溶性DR6拮抗物質ポリペプチド、たとえば、細胞外ドメイン(配列番号2の1〜349又は41〜349のアミノ酸に相当する)を含むDR6ポリペプチド又はほかの可溶性DR6ポリペプチド断片、本明細書で開示される変異体若しくは誘導体は、異種ポリペプチド部分に結合されてDR拮抗物質融合ポリペプチドを形成する。DR拮抗物質融合タンパク質及び抗体を用いて、種々の目的、たとえば、高い血清中半減期、改善された生体利用効率、特定の臓器又は組織の種類への生体内ターゲティング、改善された組換え発現の効率、改善された宿主細胞の分泌、精製の容易さ、及び高い結合力を達成することができる。達成される目的によって、異種部分は不活性であり得、又は生物学的に活性があり得る。また、試験管内で又は生体内で、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に安定的に結合されるように、又は切断可能であるようにそれを選択することができる。これらそのほかの目的を達成する異種部分は当該技術で既知である。
DR6拮抗物質融合ポリペプチド又は抗体の発現への代替として、選択された異種部分を事前に形成し、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に化学的に結合することができる。ほとんどの場合、選択された異種部分は、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に融合されようと、抱合されようと同様に機能するであろう。従って、異種アミノ酸配列の以下の議論では、特に言及されない限り、異種配列は、融合タンパク質の形態で又は化学的抱合体としてDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に連結され得ることが理解されるべきである。
DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体のような薬理学的に活性のあるポリペプチドは、生体内で迅速なクリアランスを示すことが多く、生体で治療上有効な濃度を達成するのは大用量を必要とする。さらに、約60kDaより小さなポリペプチドは、糸球体濾過を受ける可能性があり、腎臓毒性をもたらすことがある。DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体のような相対的に小さなポリペプチドの融合又は抱合を用いてそのような腎臓毒性のリスクを減らす又は回避することができる。治療用ポリペプチドの生体内の安定性、すなわち、血清中半減期を高めるための種々の異種アミノ酸配列、すなわち、ポリペプチド部分又は「担体」が知られている。
その長い半減期、生体内での広い分布、及び酵素機能又は免疫機能の欠如のために、本質的に完全長のヒト血清アルブミン(HSA)又はHSA断片が、異種部分として一般に用いられる。Yehら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:1904−08(1992)及びSyedら、Blood、89:3243−52(1997)の教示のような方法及び物質の適用を介して、HSAを用いて、有意に高い、たとえば、10倍〜100倍高い生体内での安定性を示す一方で、DR6部分によって薬理学的活性を示すDR6拮抗物質融合ポリペプチド又は抗体又はポリペプチド/抗体の抱合体を形成することができる。HSAのC末端をDR6ポリペプチドのN末端に融合することができる。HSAは天然に分泌されるタンパク質なので、融合タンパク質が真核生物、たとえば、哺乳類の発現系で産生される場合、HSAのシグナル配列を活用して可溶性DR6融合タンパク質の分泌を細胞培養培地で得ることができる。
特定の実施形態では、本明細書で記載される方法で使用するためのDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体はさらにターゲティング部分を含む。ターゲティング部分には、生体の特定の部分、たとえば、脳又はその中の区画への局在を方向付けるタンパク質やペプチドが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書で記載される方法で使用するためのDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体は、脳のターゲティング部分に連結又は融合される。脳のターゲティング部分は、共有結合され(任意で切断可能である、たとえば、直接的な、翻訳的融合、又は直接若しくはスペーサ分子を介した化学結合)、又は非共有結合される(たとえば、アビジン、ビオチン、プロテインA、IgGなどのような可逆的相互作用を介した)。ほかの実施形態では、本明細書で記載される方法で使用するためのDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体が、1以上の脳のターゲティング部分に連結される。追加の実施形態では、脳のターゲティング部分は、本明細書で記載される方法で使用するための複数のDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に連結される。
DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に会合する脳のターゲティング部分は、そのようなDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体の脳での送達を向上させる。タンパク質又は治療剤に融合すると、脳血管関門(BBB)を介してタンパク質又は治療剤を送達する多数のポリペプチドが記載されている。非限定例には、単一ドメイン抗体FC5(Abulrob et al. (2005) J. Neurochem. 95, 1201−1214);ヒトのインスリン受容体に対するモノクローナル抗体、mAB83−14(Pardridge et al. (1995) Pharmacol. Res. 12, 807−816);ヒトのトランスフェリン受容体(hTfR(に結合するB2、B6及びB8ペプチド(Xia et al. (2000) J. Virol. 74, 11359−11366);トランスフェリン受容体に対するモノクローナル抗体、OX26(Pardridge et al. (1991) J. Pharmacol. Exp. Ther. 259, 66−70);並びに米国特許第6,306,365号が挙げられる。上記参考文献の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
DR6拮抗物質組成物の改善された脳への送達は、当該技術で定評のある多数の手段によって判定される。たとえば、脳のターゲティング部分に連結された、放射性標識した、酵素標識した、又は蛍光標識したDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体を動物に投与すること;脳の局在を判定すること;及び脳のターゲティング部分に会合していない同等の放射性標識したDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体との局在を比較すること。高いターゲティングを判定するそのほかの手段は上記参考文献に記載されている。
シグナル配列は、小胞体の膜を横切ってタンパク質の輸送を開始するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。イムノフシンを構築するのに有用なシグナル配列には、抗体の軽鎖シグナル配列、たとえば、抗体14.18(Gillies et al., J. Immunol. Meth. 125:191−202 (1989))、抗体の重鎖シグナル配列、たとえば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakano et al., Nature 286:5774 (1980))が挙げられる。或いは、ほかのシグナル配列を使用することができる。たとえば、Watson,Nucl.Acids Res.12:5145 (1984)を参照のこと。シグナルペプチドは通常、シグナルペプチダーゼによって小胞体の内腔にて切断される。これは結果的にFc領域とDR6ペプチドを含有するイムノフシンタンパク質の分泌を生じる。
一部の実施形態では、DNA配列は、分泌カセットとDR6ポリペプチドの間でタンパク質分解の切断部位をコードすることができる。そのような切断部位は、たとえば、コードされた融合タンパク質のタンパク質分解切断を提供するので、標的タンパク質からFcドメインを分離する。有用なタンパク質分解の切断部位には、たとえば、トリプシン、プラスミン、トロンビン、Xa因子又はエンテロキナーゼKのようなタンパク質分解酵素によって認識されるアミノ酸配列が挙げられる。
分泌カセットは、複製可能な発現ベクターに組み入れることができる。有用なベクターには、線形の核酸、プラスミド、ファージミド、コスミドなどが挙げられる。例となる発現ベクターは、イムノフシンDNAの転写が、ヒトのサイトメガロウイルスのエンハンサ及びプロモータの制御下に置かれるpdCである。たとえば、Loら、Biochim.Biophys.Acta、1088:712(1991);及びLoら、Protein Engineering、11:495−500(1998)を参照のこと。DR6ポリペプチドをコードするDNAによって適当な宿主細胞を形質転換し、又はそれに形質移入し、DRポリペプチドの発現と分泌に用いることができる。通常使用される宿主細胞には、不死化したハイブリドーマ細胞、骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞及びCOS細胞が挙げられる。
一実施形態では、DRポリペプチドは、ヒンジ及びFc領域、すなわち、Ig重鎖の定常領域のC末端部分に融合される。DR6−Fc融合の利点の可能性には、溶解性、生体内での安定性、多価性、たとえば、二量体化が挙げられる。使用されるFc領域は、IgA、IgD、又はIgGのFc領域(ヒンジCH2−CH3)であり得る。或いは、それは、IgE又はIgMのFc領域(ヒンジCH2−CH3−CH4)であり得る。IgGのFc領域、たとえば、IgG1のFc領域又はIgG4のFc領域が一般に使用される。一実施形態では、化学的にIgGのFcを定義するパパイン切断部位のすぐ上流のヒンジで開始する配列(すなわち、残基216、カバットシステムに従って114である重鎖定常領域の最初の残基)、又はそのほかの免疫グロブリンの類似の部位を融合に使用する。融合が行われる正確な部位は決定的ではなく;特定の部位は周知であり、生物活性、分泌、又は分子の結合特性を最適化するために選択することができる。Fc融合をコードするDNAを構築し、発現させる物質及び方法は当該技術で既知であり、それらを適用して過度の実験を行うことなくDR6に融合を得ることができる。本明細書に記載される一部の方法は、Captonらの米国特許第5,428,130号及び同第5,565,335号に記載されたもののようなDR6融合タンパク質を採用する。
一部の実施形態では、完全に無傷で野生型のFc領域は、本明細書で記載される方法で使用されるFc融合タンパク質では不必要で、望ましくない可能性があるエフェクター機能を示す。従って、分泌カセットの構築中にFc領域から特定の結合部位を削除することができる。たとえば、軽鎖との共発現は不必要なので、重鎖結合タンパク質、Bip(Hendershot et al., Immunol. Today 8:111−14 (1987))のための結合部位は、この部位がイムノフシンの十分な分泌を妨害しないようにIgEのFc領域のCH2ドメインから削除される。IgMにて存在するような膜貫通ドメイン配列も一般に削除される。
特定の実施形態では、IgG1のFc領域が使用される。或いは、免疫グロブリンγ(γ−2、γ−3及びγ−4)のほかのサブクラスのFc領域を分泌カセットで使用することができる。免疫グロブリンγ−1のIgG1Fc領域には少なくともヒンジ領域の一部、CH2領域及びCH3領域が含まれる。一部の実施形態では、免疫グロブリンγ−1のFc領域はCH2欠失Fcであり、それは、ヒンジ領域の一部とCH3領域を含むが、CH2領域を含まない。CH2欠失Fcは、Gilliesら、Hum.Antibod.Hybridomas、1:47(1990)によって記載されている。一部の実施形態では、IgA、IgD、IgE又はIgMの1つのFc領域が使用される。
DR6−Fc融合タンパク質は、幾つかの異なった立体配置で構築することができる。立体配置の1つでは、DR6ポリペプチドのC末端がFcヒンジ部分のN末端に直接融合される。やや異なった立体配置では、短いポリペプチド、たとえば、2〜10のアミノ酸が、DR6部分のC末端とFc部分のN末端の間に組み入れられる。そのようなリンカーは立体配座の自由度を提供し、それは、一部の状況では生物活性を改善することができる。ヒンジ領域の十分な部分がFc部分にて保持されているのであれば、DR−FCの融合は二量体化するので、二価の分子を形成する。単量体FC融合の均質な集団は、単一特異的な二価の二量体を生じる。それぞれ異なった特異性を有する2つの単量体Fc融合の混合物は、二重特異的な二価の二量体を生じる。
可溶性のDR6ポリペプチドを異種ペプチドに融合させて可溶性DR部分の精製又は同定を円滑にすることができる。たとえば、ヒスチジンのタグを可溶性DRポリペプチドに融合させて市販のクロマトグラフィ媒体を用いた精製を円滑にすることができる。
「リンカー」配列は、融合タンパク質にて2つのポリペプチドをコードする領域を分離する一連の1以上のアミノ酸である。典型的なリンカーは、少なくとも5アミノ酸を含む。追加のリンカーは少なくとも10又は少なくとも15のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカーのアミノ酸はリンカーが親水性であるように選択される。リンカー(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)3(G4S)3(配列番号136)は、それが十分な自由度を提供するので多数の抗体に広く適用可能である有用なリンカーである。そのほかのリンカーには、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)2(G4S)2(配列番号137)、Glu−Ser−Gly−Arg−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号138)、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Ser−Thr(配列番号139)、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Ser−Thr−Gln(配列番号140)、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Val−Asp(配列番号141)、Gly−Ser−Thr−Ser−Gly−Ser−Gly−Lys−Ser−Ser−Glu−Gly−Lys−Gly(配列番号142)、Lys−Glu−Ser−Gly−Ser−Val−Ser−Ser−Glu−Gln−Leu−Ala−Gln−Phe−Arg−Ser−Leu−Asp(配列番号143)及びGlu−Ser−Gly−Ser−Val−Ser−Ser−Glu−Glu−Leu−Ala−Phe−Arg−Ser−Leu−Asp(配列番号144)が挙げられる。さらに短いリンカーの例には上記リンカーの断片があげられ、さらに長いリンカーの例には、上記リンカーの組み合わせ、上記リンカーの断片の組み合わせ、及び上記リンカーと上記リンカーの断片との組み合わせが挙げられる。
DR6ポリペプチドはポリペプチドタグに融合することができる。用語「ポリペプチドタグ」は本明細書で使用されるとき、DR6ポリペプチドに結合する、接続する又は連結することができ、DR6ポリペプチドを同定する、精製する、濃縮する又は単離するのに使用することができるアミノ酸の任意の配列を意味するように意図される。ポリペプチドタグのDRポリペプチドへの結合は、たとえば、(a)ポリペプチドタグをコードする核酸配列及び(b)DR6ポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子を構築することによって生じることができる。例となるポリペプチドタグには、たとえば、翻訳後修飾が可能であるアミノ酸配列、たとえば、ビオチン化されるアミノ酸配列が挙げられる。ほかの例となるポリペプチドタグには、たとえば、抗体(又はその断片)又はそのほかの特異的結合試薬によって認識される及び/又は結合されることが可能であるアミノ酸配列が挙げられる。抗体(又はその断片)又はそのほかの特異的結合試薬によって認識される及び/又は結合されることが可能であるポリペプチドタグには、たとえば、「エピトープタグ」として当該技術で知られているものが挙げられる。エピトープタグは天然の又は人工的なエピトープタグであることができる。天然の及び人工的なエピトープタグは当該技術で既知であり、たとえば、FLAG、Strep又はポリヒスチジンペプチドのような人工的なエピトープが挙げられる。FLAGペプチドには、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号145)又はAsp−Tyr−Lys−Asp−Glu−Asp−Asp−Lys(配列番号146)(Einhauer, A. and Jungbauer, A., J. Biochem. Biophys. Methods 49:1−3:455−465 (2001))が挙げられる。Strepエピトープは、配列Ala−Trp−Arg−His−Pro−Gln−Phe−Gly−Gly(配列番号147)を有する。VSV−Gエピトープも使用することができ、配列Tyr−Thr−Asp−Ile−Glu−Met−Asn−Arg−Leu−Gly−Lys(配列番号148)を有する。別の人工的なエピトープは、6つのヒスチジン残基を有するポリHis配列である(His−His−His−His−His−His)(配列番号149)。天然に存在するエピトープには、モノクローナル抗体12CA5によって認識されるインフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)配列Tyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Ala−Ile−Glu−Gly−Arg(配列番号150)(Murray et al., Anal. Biochem. 229:170−179 (1995))、及びモノクローナル抗体)9E10によって認識されるヒトc−myc(Myc)に由来する11アミノ酸の配列(Glu−Gln−Lys−Leu−Leu−Ser−Glu−Glu−Asp−Leu−Asn)(配列番号151)(Manstein et al., Gene 162:129−134 (1995))が挙げられる。別の有用なエピトープは、モノクローナル抗体YL1/2によって認識されるトリペプチドGlu−Glu−Pheである(Stammers et al. FEBS Lett. 283:298−302(1991))。
特定の実施形態では、DR6ポリペプチドとポリペプチドタグは、連結アミノ酸配列を介して接続することができる。本明細書で使用されるとき、「連結アミノ酸配列」は、1以上のプロテアーゼによって認識される及び/又は切断されることが可能であるアミノ酸配列であることができる。1以上のプロテアーゼによって認識される及び/又は切断されることできるアミノ酸配列は当該技術で既知である。例となるアミノ酸配列は、以下のプロテアーゼによって認識されるものである:第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、APC、t−PA、u−PA、トリプシン、キモトリプシン、エンテロキナーゼ、ペプシン、カテプシンB,H、L、S、D、カテプシンG、レニン、アンギオテンシン変換酵素、マトリクスメタロプロテアーゼ(コラゲナーゼ、ストロメリシン、ゲラチナーゼ)、マクロファージエラスターゼ、Cir及びCis。前述のプロテアーゼによって認識されるアミノ酸配列は当該技術で既知である。特定のプロテアーゼによって認識される例となる配列は、たとえば、米国特許第5,811,252号に見い出すことができる。
一部の方法では、可溶性DR6融合構築物を用いて細菌における可溶性DR6部分の産生を高める。そのような構築物では、可溶性DR6ポリペプチドのN末端融合相手として、通常高いレベルで発現され、及び/又は分泌される細菌タンパク質が採用される。たとえば、Smithら、Gene、67:31(1988);Hoppら、Biotechnology、6:1204(1988);La Vallieら、Biotechnology、11:187(1993)を参照のこと。
好適な融合相手のアミノ末端及びカルボキシ末端にて可溶性DR6部分を融合することによって、二価又は四価の形態の可溶性DR6ポリペプチドを得ることができる。たとえば、可溶性DR6部分をIg部分のアミノ末端とカルボキシ末端に融合して2つの可溶性DR6部分を含有する二価の単量体ポリペプチドを製造することができる。これら単量体の2つの二量体化の際、Ig部分のおかげで四価の形態での可溶性DR6タンパク質が得られる。そのような多価形態を用いて標的に対する高い結合親和性を達成することができる。可溶性DR6を直列に置いてコンカテマーを形成することによっても多価形態の可溶性DR6を得ることができ、それを単独で採用することができ、たとえば、Ig又はHSAのような融合相手に融合することができる。
DR6拮抗物質抱合体
本明細書で開示される治療方法で使用するためのDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体には、DR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体がDR6の生物学的機能を阻害するのを共有結合が妨害しないように任意の種類の分子の共有結合によって修飾される誘導体が挙げられる。たとえば、限定の例示ではなく、たとえば、既知の保護基/ブロッキング基、タンパク分解切断、細胞性リガンド又はタンパク質への連結などによるグリコシル化、ペグ化、リン酸化、リン酸化、アミド化、誘導体化によってDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体を修飾することができる。特定の化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むが、これらに限定されない既知の技法によって多数の化学修飾のいずれかを実施することができる。さらに、誘導体は、1以上の非古典的なアミノ酸を含有することができる。
翻訳後プロセッシングのような天然の過程によって、又は当該技術で周知の化学修飾法によってDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体を修飾することができる。そのような修飾は、教科書に、及びさらに詳しい単行書に、並びに多作の研究文献によく記載されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノ末端若しくはカルボキシ末端を含むDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体のいずれかで、又は糖質のような部分で生じ得る。所与のDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体における幾つかの部位で、同一種類の修飾が、同一程度に又は異なった程度に存在し得ることが十分に理解されるであろう。また、所与のDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体は多数の種類の修飾を含有することができる。DR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体は、たとえば、ユビキチン化の結果、分枝鎖であることができ、また、分枝を持つ若しくは持たない環状であることができる。環状の、分枝鎖の及び分枝鎖環状のDR6拮抗物質ポリペプチド及び抗体は、翻訳後の天然のプロセッシングから生じ得るし、又は合成法によって作製することができる。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNA介在性の、タンパク質へのアミノ酸の付加、たとえば、アルギン化及びユビキチン化が挙げられる。(たとえば、Proteins − Structure And Molecular Properties, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York 2nd Ed., (1993); Posttranslational Covalent Modification Of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, pgs. 1−12 (1983); Seifter et al., Meth Enzymol 182:626−646 (1990); Rattan et al., Ann NY Acad Sci 663:48−62 (1992)を参照のこと)
相当するアミノ反応性の基及びチオール反応性の基を含有する多数のクロスリンカーのいずれかを用いて、異種融合相手にDR6拮抗物質ポリペプチドを連結することができる。好適なリンカーの例には、チオール反応性のマレイミドを挿入するアミン反応性のクロスリンカー、たとえば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS及びGMBSが挙げられる。そのほかの好適なリンカーは、チオール反応性のハロ酢酸基、たとえば、SBAP、SIA、SIAを挿入する。スルフヒドリル基との反応のために保護された又は非保護のチオールを提供して還元可能な結合を生じるリンカーには、SPDP、SMPT、SATA及びSATPが挙げられる。そのような試薬は市販されている(たとえば、Pierce Chemicals)。
抱合は、可溶性DR6ポリペプチドのN末端又は血清アルブミンのチオール部分を含む必要はない。たとえば、遺伝子操作法を用いて可溶性DR6−アルブミンの融合を得ることができ、その際、可溶性DR6部分はそのN末端、C末端又はその双方にて血清アルブミン遺伝子に融合される。
可溶性DR6ポリペプチド又はDR6抗体は、1以上のポリマーがDR6ポリペプチド又は抗体に抱合される(共有結合される)ポリペプチド又は抗体であることができる。そのような抱合に好適なポリマーの例には、ポリペプチド(上記で議論された)、糖ポリマー及びポリアルキレングリコール鎖が挙げられる。通常、必然的ではないが、以下のうちの1以上を改善する目的でポリマーは可溶性DR6ポリペプチド又はDR6抗体に抱合される:溶解性、安定性又は生体利用効率。
DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体への抱合に一般に使用されるポリマーのクラスはポリアルキレングリコールである。ポリエチレングリコール(PEG)が最も頻繁に使用される。PEG部分、たとえば、1、2、3、4又は5のPEGポリマーを各DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に抱合させて、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体単独に比べたとき、血清中の半減期を増やすことができる。PEG部分は、非抗原性であり、本質的に生物不活性である。PEG部分は分枝鎖又は非分枝鎖であることができる。
DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に結合するPEG部分の数及び個々のPEG鎖の分子量は変化し得る。一般に、ポリマーの分子量が大きければ大きいほど、ポリペプチドに結合するポリマー鎖は少ない。普通、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に結合するポリマーの総質量は20kDa〜40kDaである。従って、ポリマー鎖一本が結合すれば、鎖の分子量は一般に20〜40kDaである。2本の鎖が結合するのであれば、各鎖の分子量は一般に10〜20kDaである。3本の鎖が結合するのであれば、分子量は一般に7〜14kDaである。
ポリマー、たとえば、PEGは、ポリペプチド上の好適な、暴露された反応基を介してDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に連結することができる。暴露された反応基は、たとえば、N末端アミノ基又は内部リジン残基のイプシロンアミノ基又はその双方であることができる。活性化されたポリマーは、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体上の任意の遊離のアミノ基にて反応することができ、共有結合することができる。DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体(利用可能であれば)の遊離のカルボキシル基、好適に活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル、グアニジル、イミダゾール、酸化された糖質部分及びメルカプト基をポリマー結合のための反応性の基として使用することもできる。
抱合反応では、ポリペプチドの濃度に依存して、ポリペプチドのモル当たり、約1.0〜約10モルの活性化ポリマーが通常採用される。普通、選択された比は、反応を最大化することと、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体の所望の薬理学活性を損ない得る副反応(非特異的であることが多い)を最小化することの間でバランスを取られたものである。特定の実施形態では、DR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体の少なくとも50%の生物活性(たとえば、本明細書で記載される又は当該技術で既知であるアッセイのいずれかで明らかにされる)が保持される。さらなる実施形態では、ほぼ100%が保持される。
従来の化学法を用いてポリマーをDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体に抱合させることができる。たとえば、ポリアルキレングリコール部分をDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体のリジンイプシロンアミノ基に結合することができる。リジン側鎖への結合は、たとえば、PEGコハク酸スクシンイミジル(SS−PEG)及びPEGプロピオン酸スクシンイミジル(SPA−PEG)のようなN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステルによって実施することができる。好適なポリアルキレングリコール部分には、たとえば、カルボキシメチル−NHS及びノルロイシン−NHS、SCが挙げられる。これらの試薬は市販されている。追加のアミン反応性PEGリンカーは、スクシンイミジル部分について置換することができる。これらには、たとえば、イソチオシアネート、ニトロフェニルカーボネート(PNP)、エポキシド、炭酸ベンゾトリアゾール、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、及び炭酸PNPが挙げられる。普通、条件を最適化して反応の選択性と程度を最大化する。反応条件のそのような最適化は当該技術の普通の技量の範囲内である。
ペグ化は、当該技術で既知のペグ化反応のいずれかによって実施することができる。たとえば、Focus on Growth Factors、3:4−10(1992)、並びに欧州特許出願EP0154316及びEP0401384を参照のこと。反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性の水溶性ポリマー)によるアシル化反応又はアルキル化反応を用いてペグ化を実施することができる。
アシル化によるペグ化には、ポリエチレングリコールの活性エステル誘導体を反応させることが一般に関与する。ペグ化では、任意の反応性PEG分子を採用することができる。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にエステル化されたPEGは頻繁に使用される活性化PEGエステルである。本明細書で使用されるとき、「アシル化」には、限定しないで、治療用タンパク質とPEGのような水溶性ポリマーとの間の以下の種類が含まれる:アミド、カルバメート、ウレタンなど。たとえば、Bioconjugate Chem.5:133−140,1994を参照のこと。反応のパラメータは一般に、可溶性DR6ポリペプチドを損傷する又は不活化する温度、溶媒及びpH条件を回避するように選択される。
一般に、接続する結合はアミドであり、通常、得られる生成物の少なくとも95%は、モノ−、ジ−又はトリ−ペグ化される。しかしながら、使用される特定の反応条件に依存した量で高い程度のペグ化を伴う一部の種を形成することができる。任意で、たとえば、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、疎水性交換クロマトグラフィ及び電気泳動を含む従来の精製法によって、混合物、特に未反応の種から精製されたペグ化の種を分離する。
アルキル化によるペグ化には一般に、還元剤の存在下でPEGの末端アルデヒド誘導体をDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体と反応させることが関与する。さらに、実質的にDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体のN末端アミノ基のみでのペグ化、すなわち、モノ−ペグ化タンパク質を有利に得るように反応条件を操作することができる。モノ−ペグ化又は多重ペグ化のいずれかの場合で、PEG基は通常、−CH2−NH基を介してタンパク質に結合する。特に−CH2−基を参照して、この種の結合は「アルキル」結合として知られる。
N末端標的のモノ−ペグ化生成物を製造するための還元アルキル化を介した誘導体化は、誘導体化に利用可能である異なった種類の1級アミン基(リジン対N末端)の差次的反応性を活用する。反応は、リジン残基のイプシロンアミノ基とタンパク質のN末端アミノ基のそれとの間のpKaの差異を利用することができるpHにて行われる。そのような選択的な誘導体化によって、たとえば、アルデヒドのような反応性基を含有する水溶性ポリマーのタンパク質への結合は制御され:ポリマーとの抱合はタンパク質のN末端で優勢に生じ、たとえば、リジン側鎖アミノ基のようなそのほかの反応性基の有意な修飾は生じない。
アシル化及びアルキル化の方法の双方で使用されるポリマー分子は水溶性ポリマーの中から選択される。選択されるポリマーは通常、修飾されて、本方法で提供されるとき、重合度を制御できるように、アシル化についての活性エステル又はアルキル化についてのアルデヒドのような単一反応性基を有する。例となる反応性のPEGアルデヒドは、水安定性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、又はそのモノ−C1〜C10のアルコキシ若しくはアリールオキシ誘導体である(たとえば、Harris et al., 米国特許第5,252,714号を参照のこと)。ポリマーは分枝鎖であることができ、又は非分枝鎖であることができる。アシル化反応については、選択されるポリマーは通常、単一の反応性エステル基を有する。還元アルキル化については、選択されるポリマーは通常、単一の反応性アルデヒド基を有する。一般に、水溶性ポリマーは、哺乳類の組換え発現系によって普通、さらに好都合に作られるので、天然に存在するグリコシル残基からは選択されない。
ペグ化された可溶性のDR6ポリペプチド又は抗体を調製する方法は一般に、(a)それによって分子が1以上のPEG基に結合するようになる条件下でDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体をポリエチレングリコール(たとえば、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体)と反応させる工程と、(b)反応生成物を得る工程を含む。一般に、アシル化反応についての最適な反応条件は、既知のパラメータと所望の結果に基づいて個別的に決定される。たとえば、PEGとタンパク質のさらに大きな比は一般に、多重ペグ化生成物のさらに大きな比率をもたらす。
モノ−ポリマー/可溶性DR6ポリペプチド又はDR6抗体の実質的に均質な集団を製造する還元アルキル化には一般に、(a)還元アルキル化条件下にてポリペプチド又は抗体のN末端アミノ基の選択的修飾を可能にするのに好適なpHで反応性PEG分子と可溶性DR6タンパク質又はポリペプチドを反応させる工程と、(b)反応生成物を得る工程が含まれる。
モノ−ポリマー/可溶性DR6ポリペプチド又はDR6抗体の実質的に均質な集団については、還元アルキル化反応の条件は、ポリペプチド又は抗体のN末端への水溶性ポリマー部分の選択的結合を可能にするものである。そのような反応条件は一般に、リジン側鎖のアミノ基とN末端アミノ基の間でpKaの差異を提供する。本明細書で記載される目的で、pHは一般に3〜9、通常3〜6の範囲内である。
可溶性DR6ポリペプチド又は抗体は、タグ、たとえば、タンパク分解によってその後放出される部分を含むことができる。従って、リジンとN末端の双方と反応する、たとえば、Trautの試薬(Pierce)のような低分子量リンカーで修飾されたHisタグを反応させ、次いでHisタグを放出することによって、リジン部分を選択的に修飾することができる。ポリペプチドはそのとき、たとえば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロ酢酸基、又は遊離の若しくは保護されたSHのようなチオール反応性の頭部基を含有するPEGによって選択的に修飾され得る遊離のSH基を含有する。
PEGの結合に特異的な部位を設定する任意のリンカーによってTrautの試薬を置き換えることができる。たとえば、Trautの試薬は、SPDP、SMPT、SATA又はSATP (Pierce)によって置き換えることができる。同様に、マレイミド(たとえば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS又はGMBS)、ハロ酢酸基(SBAP、SIA、SIAB)、又はビニルスルホン基を挿入し、遊離のSHを含有するPEGと得られる生成物を反応させるアミン反応性リンカーとタンパク質を反応させてもよい。
一部の実施形態では、ポリアルキレングリコール部分をDR6拮抗物質ポリペプチド又は抗体のシステイン基に結合させる。たとえば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロ酢酸基、又はチオール基を用いて結合を達成することができる。
任意で、不安定な結合を介して、可溶性DR6ポリペプチド又は抗体をポリエチレングリコール部分に抱合させる。不安定な結合は、たとえば、生化学的な加水分解、タンパク分解又はスルフヒドリル切断によって切断することができる。たとえば、結合は、生体内(生理的な)条件下で切断することができる。
不活性ポリマーと生物学的に活性のある物質を反応させるのに使用される好適な方法によって、反応性基がN末端のαアミノ基にあるのであれば、一般に約pH5〜8、たとえば、pH5、6、7又は8にて反応を行うことができる。一般に、工程には、活性化ポリマーを調製し、その後、活性化ポリマーとタンパク質を反応させて処方に好適な可溶性タンパク質を製造することが関与する。
一部の実施形態では、抗体又はポリペプチドは、DR6抗体、又はその抗原結合断片、変異体若しくは誘導体、及び異種ポリペプチドを含む融合タンパク質である。抗体が融合される異種ポリペプチドは、機能に関して有用であり、又はDR6ポリペプチドを発現する細胞を標的とするのに有用である。一実施形態では、融合タンパク質は、抗体の任意の1以上のVH領域のアミノ酸配列又は抗体若しくはその断片若しくは変異体の任意の1以上のVL領域のアミノ酸配列を有するポリペプチドと、異種ポリペプチドの配列を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る。別の実施形態では、本明細書で開示される診断法及び治療法で使用するための融合タンパク質は、DR6特異抗体又はその断片、変異体若しくは誘導体の任意の1、2、3のVH−CDRのアミノ酸配列、又はDR6特異抗体又はその断片、変異体若しくは誘導体の任意の1、2、3のVL−CDRのアミノ酸配列を有するポリペプチドと、異種ポリペプチドの配列を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る。一実施形態では、融合タンパク質は、DR6特異抗体又はその断片、変異体若しくは誘導体のVH−CDR3アミノ酸配列を有するポリペプチドと、異種ポリペプチドの配列を含み、融合タンパク質はDR6の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、融合タンパク質は、DR6特異抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列及びDR6特異抗体又はその断片、誘導体若しくは変異体の少なくとも1つのVL領域のアミノ酸配列を有するポリペプチドと、異種ポリペプチドの配列を含む。一実施形態では、融合タンパク質のVH及びVLの領域は、DR6の少なくとも1つのエピトープを特異的に結合する単一起源の抗体(又はscFv又はFab断片)に相当する。さらに別の実施形態では、本明細書で開示される診断法及び治療法で使用するための融合タンパク質は、DR6特異抗体の任意の1、2、3以上のVH−CDRsのアミノ酸配列及びDR6特異抗体又はその断片、若しくは変異体の任意の1、2、3以上のVL−CDRsのアミノ酸配列を有するポリペプチドと、異種ポリペプチドの配列を含む。一部の実施形態では、2、3、4、5、6以上のVH−CDRs又はVL−CDRsは、単一起源の抗体(又はscFv又はFab断片)に相当する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子も包含される。
DR6ポリヌクレオチド拮抗物質
特定の実施形態は、DR6ポリヌクレオチド拮抗物質に細胞を接触させることによって神経系細胞の生存を促進する方法を含む。ポリヌクレオチド拮抗物質は、DR6拮抗物質ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドであることができる。ポリヌクレオチド拮抗物質はまた、DR6をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する核酸分子であることもできる。DR6ポリヌクレオチド拮抗物質は、DR6の発現を妨げる(ノックダウン)。特定の実施形態では、DR6ポリヌクレオチド拮抗物質は、神経系細胞の生存を促進し、又は神経系細胞のアポトーシスを阻害する。DR6ポリヌクレオチド拮抗物質には、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、shRNA及びRNAiが挙げられるが、これらに限定されない。通常、そのような結合分子は動物に別々に投与されるが(たとえば、O’Connor, J. Neurochem. 56:560 (1991を参照)、そのような結合分子は、宿主によって取り込まれ、生体内で発現されるポリヌクレオチドから生体内でも発現される。また、Oligodeoxynucleotides as Antisense.Inhibitors of Gene Expression、CRC Press,Boca Raton,FL(1988)も参照のこと。
RNAiは、標的とされるmRNAの発現を妨害するRNAの発現を指す。具体的には、RNAiは、siRNA(短鎖干渉RNA)を介して特定のmRNA(たとえば、DR6)と相互作用することによって標的とされる遺伝子を抑制する。次いで細胞による分解に対してdsRNA複合体が標的とされる。追加のRNAi分子には、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられ;短鎖干渉ヘアピンも挙げられる。shRNA分子は、ループによって接続された標的遺伝子のセンス配列とアンチセンス配列を含有する。shRNAは核から細胞質に輸送され、mRNAと共に分解される。PolIII又はU6プロモータを用いてRNAiについてのRNAを発現させることができる。
RNAiには、「標的」mRNAに対して配列特異的な相同性を有する二本鎖RNA(dsRNA)が介在する(Caplen et al., Proc Natl Acad Sci USA 98:9742−9747, 2001)。ショウジョウバエの無細胞溶解物における生化学的な研究によって、RNA−依存性の遺伝子スプライシングのメディエータは、21〜25ヌクレオチドの「小型干渉」RNA二本鎖(siRNAs)であることが示されている。従って、siRNA分子は、本明細書で記載される方法で有利に使用される。siRNAは、DICERとして知られるRNaseによるdsRNAの過程に由来する。siRNA二本鎖産物は、RISC(RNA誘導型サイレンシング複合体)と呼ばれる多重タンパク質siRNA複合体に動員されると思われる。特定の理論に束縛されることを望まない、RISCが標的mRNAに導かれ、その際、siRNA二本鎖が配列特異的に相互作用して触媒的に切断に介在すると考えられる(Bernstein et al., Nature 409:363−366, 2001; Boutla et al., Curr Biol 11:1776−1780, 2001)。
RNAiを用いて、遺伝子の機能が解析され、非限定例のニューロン(Krichevsky et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:11926−11929, 2002)を含めて、哺乳類細胞において本質的な遺伝子が特定されている(Elbashir et al., Methods 26:199−213, 2002; Harborth et al., J Cell Sci 114:4557−4565, 2001)。RNAiはまた、たとえば、限定しないでポリオウイルス(Gitlin et al., Nature 418:379−380, 2002)やHIV(Capodici et al., J Immunol 169:5196−5201, 2002)を含むウイルスの感染、複製及び/又は増殖を阻害すること又は阻止すること、及び癌遺伝子の発現を低減すること(e.g., the bcr−abl gene; Scherr et al., Blood Sep 26 epub ahead of print, 2002)のような治療法についても評価されている。RNAiを用いて、哺乳類(マウス)及び両生類(アフリカツメガエル)の胚(それぞれ、Calegari et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:14236−14240, 2002; and Zhou, et al., Nucleic Acids Res 30:1664−1669, 2002)及び新生児マウス(Lewis et al., Nat Genet 32:107−108, 2002)における遺伝子の発現を調節し、成熟トランスジェニックマウスにおいて移入遺伝子の発現を低減している(McCaffrey et al., Nature 418:38−39, 2002)。細胞培養及び生体内におけるsiRNAの有効性及び特異性を判定する方法が記載されている(たとえば、Bertrand et al., Biochem Biophys Res Commun 296:1000−1004, 2002; Lassus et al., Sci STKE 2002(147):PL13, 2002; and Leirdal et al., Biochem Biophys Res Commun 295:744−748, 2002を参照のこと)。
限定しないでsiRNAを含むRNAiに介在する分子は、化学合成(Hohjoh, FEBS Lett 521:195−199, 2002)、dsRNAの加水分解によって試験管内で(Yang et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:9942−9947, 2002)、T7RNAポリメラーゼによる試験管内の転写によって(Donzeet et al., Nucleic Acids Res 30:e46, 2002; Yu et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:6047−6052, 2002)、及びたとえば、大腸菌のRNaseIIIのようなヌクレアーゼを用いた二本鎖RNAの加水分解(Yang et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:9942−9947, 2002)によって製造することができる。
siRNAは、2つのオリゴヌクレオチドを互いにアニーリングすることによっても形成することができ、通常、以下の一般構造を有し、それには、二本鎖部分と一本鎖部分が含まれる。
式中、N、X及びYはヌクレオチドであり、XはYに水素結合し、”:”は、2つの塩基間の水素結合を表し、xは1〜100の間の値を有する自然数であり、m及びnは0〜100の間の値を有する自然数である。一部の実施形態では、N、X及びYは独立してA、G、C及びT又はUである。天然に存在しない塩基及びヌクレオチドは、特に合成siRNAの場合(すなわち、2つのオリゴヌクレオチドのアニーリング)、存在することができる。二本鎖の中心区分を「コア」と呼び、測定の単位としての塩基対を有する。一本鎖部分はオーバーハングであり、測定の単位としてのヌクレオチドを有する。示されたオーバーハングは3’オーバーハングであるが、5’オーバーハングを持つ分子も熟考される。オーバーハングを持たないsiRNA分子(すなわち、m=0、n=0)、及びコアの一方ではオーバーハングを持つが、他方では持たないもの(たとえば、m=0でn≧1又はその逆)も熟考される。
当初、RNAi技術は哺乳類の系に容易に適用できるとは思われなかった。これは、哺乳類では、dsRNAがdsRNA活性化タンパク質キナーゼ(PKR)を活性化し、その結果、アポトーシスカスケード及び細胞死を生じるからである(Der et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3279−3283, 1997)。さらに、dsRNAは哺乳類細胞にて干渉カスケードを活性化し、それも改変された細胞生理をもたらし得ることが長く知られていた(Colby et al, Annu. Rev. Microbiol. 25:333, 1971; Kleinschmidt et al., Annu. Rev. Biochem. 41:517, 1972; Lampson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 58L782, 1967; Lomniczi et al., J. Gen. Virol. 8:55, 1970; and Younger et al., J. Bacteriol. 92:862, 1966)。しかしながら、dsRNAが介在するPKR及び干渉カスケードの活性化には約30塩基対を超えるdsRNAを必要とする。それに対して、30塩基対未満の長さのdsRNAが哺乳類細胞にてRNAiを引き起こすことが明らかにされた(Caplen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:9742−9747, 2001)。従って、実質的に長いdsRNAを含まない短鎖RNAを調製することによって、長いdsRNAに関連する望ましくない非特異的な効果を回避できることが期待される。
siRNAに関する参考文献:Bernsteinら、Nature 409:363−366,2001;Boutlaら、Curr.Biol.11:1776−1780,2001;Cullen,Nat.Immunol.3:597−599,2002;Caplenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98:9742−9747,2001;Hamiltonら、Science 286:950−952,1999;Nagaseら、DNA Res.6:63−70,1999;Napoliら、Plant Cell、2:279−289,1990;Nicholsonら、Mamm.Genome、13:67−73,2002;Parrishら、Mol.Cell、6:1077−1087,2000;Romanoら、Mol.Microbiol.6:3343−3353,1992;Tabaraら、Cell、99:123−132,1999;及びTuschl,Chembiochem.2:239−245,2001。
Paddisonら(Genes & Dev. 16:948−958, 2002)は、RNAiを達成する手段としてヘアピンに折り畳まれた小型RNA分子を用いた。その結果、そのような短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子も、本明細書で記載される方法にて有利に使用される。機能的なshRNAの幹とループの長さは変化し、幹の長さは約25〜約30ntのいずれかの範囲であることができ、ループの長さはサイレンシング活性に影響を及ぼさずに4〜約25ntの間の範囲であることができる。特定の理論によって束縛されることを望まないが、これらのshRNAはDICERのRNaseのdsRNA産物に類似しており、いずれにしても、特定の遺伝子の発現を阻害する同一の能力を有すると考えられる。shRNAはレンチウイルスベクター(たとえば、pLL3.7)から発現することができる。
アンチセンス技術を用いて、アンチセンスDNA若しくはRNAを介して、又は三重螺旋の形成を介して遺伝子の発現を制御することができる。アンチセンス技術は、たとえば、Okano,J.Neurochem.56:560(1991);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,Boca Raton,FL(1988)で議論されている。三重螺旋の形成は、たとえば、Leeら、Nucleic Acids Research、6:3073(1979);Cooneyら、Science、241:456(1988);及びDervanら、Science、251:1300(1991)で議論されている。方法は、ポリヌクレオチドの相補的なDNA又はRNAへの結合に基づく。
たとえば、DR6をコードするポリヌクレオチドの5’コーディング部分を用いて長さ約10〜40塩基対のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計することができる。転写に関与する遺伝子の領域に相補的であるようにDNAオリゴヌクレオチドを設計し、それによって標的タンパク質の転写及び産生を妨げる。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは生体内でmRNAとハイブリッド形成し、mRNA分子の標的ポリペプチドへの翻訳を阻止する。
一実施形態では、外因性の配列の転写によってDR6遺伝子に特異的なアンチセンス核酸が細胞内で産生される。たとえば、ベクター又はその一部が転写されてアンチセンス核酸(RNA)を産生する。そのようなベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生できる限り、エピソームのままであり、又は染色体に統合されるようになる。そのようなベクターは、当該技術において標準である組換えDNA技法によって構築することができる。ベクターは、脊椎動物細胞における複製及び発現に使用される、プラスミド、ウイルス及び当該技術で既知のものであることができる。アンチセンス分子の発現は、本明細書のほかで記載されるもののような脊椎動物、たとえば、ヒト細胞において作用する当該技術で既知のプロモータによることができる。
アンチセンス分子の絶対的な相補性は必要とされない。DR6をコードするRNAの少なくとも一部に対する配列相補性は、RNAとハイブリッド形成でき、安定な二本鎖又は三本鎖を形成するのに十分な相補性を有する配列を意味する。ハイブリッド形成する能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度と長さに依存する。一般に、ハイブリッド形成する核酸が大きければ大きいほど、それが含有し得る塩基のミスマッチが多く、さらに、安定な二本鎖(可能な場合、三本鎖)を形成する。当業者は、標準的な手順を用いてミスマッチの認容可能な程度を確かめ、ハイブリッド形成した複合体の融点を決定することができる。
メッセンジャーRNAの5’末端、たとえば、AUG開始コドンまでの及びそれを含む5’非翻訳領域に相補的であるオリゴヌクレオチドは、翻訳を阻害することに最も効率的に機能するはずである。しかしながら、mRNAの3’非翻訳配列に相補的な配列は、同様にmRNAの翻訳を阻害することで有効であることが示されている。一般にWagner,R.,Nature、372:333−335(1994)を参照のこと。従って、5’−又は3’の非翻訳、非コーディングの領域のいずれかに相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンスのアプローチで用いてDR6の翻訳を阻害すればよい。mRNAの5’非翻訳領域に相補的であるオリゴヌクレオチドはAUG開始コドンの相補体を含むはずである。mRNAのコーディング領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、翻訳のさほど効率的ではない阻害剤であるが、本明細書で記載される方法に従って使用されてもよい。アンチセンス核酸は通常、長さ少なくとも6ヌクレオチドであり、たとえば、長さ6〜約50ヌクレオチドに及ぶオリゴヌクレオチドが挙げられる。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、及び少なくとも50ヌクレオチドである。
本明細書で開示される治療法で使用するためのポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA又はそのキメラ混合物又は誘導体又は修飾された型であることができる。オリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、又はリン酸主鎖にて修飾されて、たとえば、分子の安定性、ハイブリッド形成などを改善することができる。オリゴヌクレオチドは、たとえば、ペプチド(たとえば、生体内でのターゲティング宿主受容体について)、又は細胞膜を横切る輸送を円滑にする剤(たとえば、Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553−6556 (1989); Lemaitre et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648−652 (1987)); PCT Publication No. WO88/09810, published December 15, 1988を参照)、又は脳血管関門横切る輸送を円滑にする剤(たとえば、PCT Publication No. WO89/10134, published April 25, 1988を参照)、ハイブリッド形成がきっかけとなる切断剤(たとえば、Krol et al., BioTechniques 6:958−976 (1988)を参照)、又はインターカレート剤(たとえば、 Zon, Pharm. Res. 5:539−549(1988)を参照)のようなそのほかの付加基を含むことができる。この目的で、オリゴヌクレオチドを別の分子、たとえば、ペプチド、ハイブリッド形成が誘発する架橋剤、輸送剤、ハイブリッド形成が誘発する切断剤などに抱合させることができる。
本明細書で開示される治療法で使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N−6−イソペンタニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンタニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3(3−アミノ−3−N2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w及び2,6−ジアミノプリンのような、しかし、これらに限定されない少なくとも1つの修飾された塩基部分を含むことができる。
本明細書で開示される治療法で使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、たとえば、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース及びヘキソースを含むが、これらに限定されない群から選択される少なくとも1つの修飾された糖部分を含むこともできる。
さらに別の実施形態では、本明細書で開示される治療法で使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、及びホルムアセタル又はそれらの類縁体のような、しかし、これらに限定されない、少なくとも1つの修飾されたリン酸主鎖を含む。
さらに別の実施形態では、本明細書で開示される治療法で使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、普通の状況ではなく、鎖が互いに平行に走る相補的RNAとの特定の二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautier et al., Nucl. Acids Res. 15:6625−6641(1987))。オリゴヌクレオチドは、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., Nucl. Acids Res. 15:6131−6148(1987))又はキメラRNA−DNA類縁体(Inoue et al., FEBS Lett. 215:327−330(1987))である。
ポリヌクレオチドは、当該技術で既知の常法によって、たとえば、自動DNA合成機(Biosearch,Applied Biosystemsなどから市販されているような)の使用によって合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinら、Nucl.Acids Res.16:3209(1988)の方法によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された細孔ガラスポリマー支持体の使用によって調製することができる(Sarin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448−7451(1988))。
本明細書で開示される治療法で使用するためのポリヌクレオチド組成物はさらに、触媒RNA又はリボザイムを含む(たとえば、1990年10月4日に公開されたPCT国際公開WO90/11364; Sarver et al., Science 247:1222−1225 (1990)を参照)。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的な塩基対を形成する隣接領域によって決定される位置にてmRNAを切断する。唯一の要件は、標的mRNAが以下の2つの塩基の配列:5’−UG−3’を有するということである。ハンマーヘッドリボザイムの構築と産生は当該技術で周知であり、Haseloff及びGerlach,Nature、334:585−591(1988)にさらに完全に記載されている。特定の実施形態では、切断認識部位が標的mRNAの5’末端に近く位置するように、すなわち、効率を高め、非機能的なmRNAの転写物の細胞内蓄積をできるだけ抑えるように、リボザイムが操作される。
アンチセンスのアプローチにおけるように、本明細書で開示される診断法及び治療法で使用するためのリボザイムは、修飾されたオリゴヌクレオチドから構成することができ(たとえば、改善された安定性、ターゲティングなどのために)、生体内でDR6を発現する細胞に送達することができる。リボザイムをコードするDNA構築物は、DNAをコードするアンチセンスの導入のための上述の方法と同様に細胞に導入することができる。送達方法の1つには、たとえば、polIII又はpolIIプロモータのようなDR6を構築する又はそれを誘導可能なプロモータの制御下にて、形質移入した細胞が十分な量のリボザイムを産生して内因性のDR6メッセージを破壊し、翻訳を阻害するようにリボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することが関与する。アンチセンス分子とは異なってリボザイムは触媒的なので、効率性にはさらに低い細胞内濃度が必要とされる。
DR6アプタマー拮抗物質
別の実施形態では、本明細書で記載される方法で使用するためのDR6拮抗物質は、アプタマーである。アプタマーは、独特の配列を有し、所望の標的(たとえば、ポリペプチド)に特異的に結合する特性を有し、所与の標的の特異的なリガンドであるヌクレオチド又はポリペプチドであることができる。ヌクレオチドアプタマーには、DR6に結合する二本鎖DNA及び一本鎖RNAが挙げられる。特定の実施形態では、DR6アプタマー拮抗物質は、たとえば、哺乳類における、オリゴデンドロサイトの増殖、分化又は生存を促進し;オリゴデンドロサイトが介在するニューロンの髄鞘形成を促進し、脱ミエリン化を妨害する。
核酸のアプタマーは、当該技術で既知の方法、たとえば、指数関数的濃縮によるリガンドの系統発生法(SELEX)を用いて選択される。SEKEXは、たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第5,475,096号、同第5,580,737号、同第5,567,588号、同第5,707,796号、同第5,763,177号、同第6,011,577号及び同第6,699,843号に記載されたような標的分子への高い特異的結合を持つ核酸分子の試験管内評価についての方法である。アプタマーを特定する別のスクリーニング法は米国特許第5,270,163号(参照によって本明細書に組み入れられる)に記載されている。SELEXの過程は、種々の二次元及び三次元の構造を形成する核酸の能力と、ほかの核酸分子及びポリペプチドを含めて、モノマーであろうとポリマーであろうと、事実上任意の化合物を伴ったリガンド(特異的結合対の)として作用するヌクレオチドモノマーの範囲内で利用可能な化学的多用途性に基づく。どんなサイズ又は組成の分子も標的として役立ち得る。
SELEX法には、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択と、同一の一般的な選択スキームを用いた、結合、区分化及び増幅の段階的な繰り返しによって所望の結合親和性と選択性を達成することが関与する。無作為化された配列の一部を含むことができる核酸の混合物から出発して、SELEX法には、結合に好都合な条件下で混合物を標的に接触させる工程;標的分子に特異的に結合したそれら核酸から未結合の核酸を区分化する工程;核酸−標的の複合体を解離する工程;核酸−標的の複合体から解離させた核酸を増幅して核酸のリガンドが濃縮された混合物を得る工程が含まれる。結合、区分化、解離及び増幅の工程は、所望なだけ多くのサイクルを介して繰り返し、標的分子に対する高い特異性の高い親和性の核酸を得る。
ヌクレオチドアプタマーをたとえば、診断ツール又は特異的な阻害剤として用いて、細胞内のシグナル伝達及び輸送経路を分析することができる(James, Curr. Opin. Pharmacol. 1:540−546 (2001))。ヌクレオチドアプタマーの高い親和性と特異性によってそれらは創薬の良好な候補になる。たとえば、毒素リシンに対するアプタマーの拮抗物質が単離され、ナノモル範囲でのIC50を有する(Hesselberth JR et al., J Biol Chem 275:4937−4942 (2000))。ヌクレオチドアプタマーを感染性疾患、悪性腫瘍及びウイルス表面タンパク質に対して用いて細胞の感染性を低減することもできる。
本明細書で記載される方法で使用するためのヌクレオチドアプタマーは、ほかのポリヌクレオチドについて本明細書で記載されるように、(たとえば、主鎖若しくは塩基を修飾することによって又はペプチドに結合することによって)修飾することができる。
DR6のタンパク質構造を用いて、DR6に作用するアプタマーのSELEX法を用いたスクリーニングによってDR6が介在する過程を阻害するアプタマーの特定が可能になるであろう。
本明細書で記載される方法で使用するためのポリペプチドアプタマーは、DR6に結合する能力について選択され、それによってDR6の作用を阻止する無作為ペプチドである。ポリペプチドアプタマーは、タンパク質の骨組の両端に結合する短い可変ペプチドドメインを含むことができる。この二重の構造的制約は、抗体に匹敵するレベルで(ナノモル範囲)ペプチドアプタマーの結合親和性を大きく高める。たとえば、Hoppe−Seyler,Fら、J.Mol.Med.,78(8):426−430(2000)を参照のこと。短い可変ペプチドの長さは通常、約10〜20アミノ酸であり、骨組は、良好な溶解性と緻密度特性を有する任意のタンパク質であることができる。骨組タンパク質の非限定例の1つは、細菌タンパク質、チオレドキシンAである。たとえば、Cohen,BAら、PNAS,95(24):14272−14277(1998)を参照のこと。
ポリペプチドアプタマーは、タンパク質の機能の優勢な阻害剤として作用するペプチド又は小型のポリペプチドである。ペプチドアプタマーは特異的に標的タンパク質に結合してその機能的能力を阻止する(Kolonin et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 14,266−14,271)。高い親和性と特異性で標的タンパク質に結合するペプチドアプタマーは、当該技術で既知の種々の技法によって単離することができる。ペプチドアプタマーは、酵母2ハイブリッドスクリーニング(Xu, C.W., et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:12,473−12,478)又はリボゾームディスプレイ(Hanes et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:4937−4942)によって無作為ペプチドライブラリから単離することができる。それらはまた、ファージライブラリ(Hoogenboom, H.R., et al. (1998) Immunotechnology 4:1−20)又は化学的に生成したペプチドライブラリからも単離することができる。さらに、ポリペプチドアプタマーは、リガンド調節ペプチドアプタマー(LiRPAs)の選択を用いて選択することができる。たとえば、参照によって本明細書に組み入れられるBinkowski,BFら、(2005)Chem.& Biol.,12(7):847−855を参照のこと。ペプチドアプタマーを合成する困難な手段によってその使用はポリヌクレオチドアプタマーよりも複雑なものになっているが、それらは、限りない化学的多様性を有する。ポリヌクレオチドアプタマーはたった4個のヌクレオチド塩基しか利用しないので限定されるが、ペプチドアプタマーははるかに広いレパートリーを有する(すなわち、20個のアミノ酸)。
本明細書で記載される方法で使用するためのペプチドアプタマーは、本明細書のほかでそのほかのポリペプチドについて記載されるように修飾することができる(たとえば、ポリマーに抱合させる又はタンパク質に融合させる)。
p75拮抗物質
本明細書で記載される方法に従って使用されるp75の拮抗物質には、たとえば、(i)p75拮抗物質化合物;(ii)p75拮抗物質ポリペプチド;(iii)p75拮抗物質抗体又はその断片;(iv)p75拮抗物質ポリヌクレオチド;(v)p75アプタマー;及び(vi)2以上の上記p75拮抗物質の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、p75拮抗物質は、p75のDR6との相互作用を阻害する。
p75拮抗物質は当該技術で既知であり、当業者は、p75とDR6の相互作用を阻害するp75拮抗物質をどのようにスクリーニングし、調べるかを知っている。たとえば、p75の環状デカペプチド拮抗物質は、Turnerら、J.Neuroscience Research、78:193−199(2004)に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
ベクターと宿主細胞
宿主発現系は、当該コーディング配列を製造し、その後精製することができる媒体を表すが、適当なヌクレオチドコーディング配列で形質転換又は形質移入された際、その場でDR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体を発現する細胞も表す。これらには、たとえば、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(たとえば、大腸菌、枯草菌);DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(たとえば、Saccharomyces, Pichia)のような微生物;DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たとえば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させた又はそれを含有する組換えプラスミド発現ベクターで形質転換した植物細胞系;或いは、哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモータ(たとえば、メタロチオネインプロモータ)又は哺乳類ウイルスに由来するプロモータ(たとえば、アデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)を含有する組換え発現構築物を抱く哺乳類細胞系(たとえば、COS、CHO、BLK、293、3T3細胞)が挙げられる。DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は全体の組換え抗体分子を発現するための、たとえば、大腸菌のような細菌細胞又は真核細胞を、組換えDR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体の分子の発現のために使用する。たとえば、ヒトのサイトメガロウイルスに由来する主要中間体初期遺伝子プロモータ因子のようなベクターと併せたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のような哺乳類細胞は、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のための有効な発現系である(Foecking et al., Gene 45:101 (1986); Cockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。
細菌系では、発現されるDR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体の分子の用途によって多数の発現ベクターを有利に選択することができる。たとえば、大量のそのようなタンパク質が製造されるべきである場合、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体の分子の医薬組成物の生成のために、容易に精製される融合タンパク質生成物の高レベルの発現を指向するベクターが望ましい可能性がある。そのようなベクターには、融合タンパク質が産生されるように、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列がLacZコーディング領域を持つフレームでベクターに個々に連結される大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791 (1983));pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101−3109 (1985); Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 24:5503−5509 (1989));などが挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターも、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)による融合タンパク質としての外来ペプチドを発現するのに使用される。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオンアガロースビーズへの吸着と結合に続く遊離のグルタチオンの存在下での溶出によって容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子がGST部分から放出され得るようにトロンビン又は第Xa因子プロテアーゼの切断部位を含むように設計される。
昆虫の系では、外来遺伝子を発現するベクターとしてAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)を通常使用する。ウイルスは、Spodoptera frugiperdaの細胞にて増殖する。DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列をウイルスの非必須領域(たとえば、多角体遺伝子)に個々にクローニングすることができ、AcNPVプロモータ(たとえば、多角体プロモータ)の制御下に置く。
哺乳類の宿主細胞では、多数のウイルス系発現系を利用することができる。発現ベクターとしてアデノウイルスが使用される場合、当該のDR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体のコーディング配列は、アデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、たとえば、後期プロモータ及び三連リーダー配列に連結することができる。次いでこのキメラ遺伝子を試験管内又は生体内の組換えによってアデノウイルスのゲノムに挿入する。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば、E1又はE3の領域)への挿入は結果的に、感染宿主にて生存でき、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体の分子を発現することができる組換えウイルスを生じる(たとえば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355−359 (1984)を参照)。挿入された抗体のコーディング配列の効率的な翻訳には特定の開始シグナルを必要とする。これらのシグナルには、ATG開始コドンと隣接配列が含まれる。さらに、挿入全体の翻訳を確保するには、開始コドンは所望のコーディング配列の読み取りフレームに同調しなければならない。これらの外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは、種々の起源であってもよく、天然及び合成の双方であってもよい。発現の効率は、適当な転写エンハンサ要素、転写ターミネータなどを含めることによって高めることができる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51−544 (1987)を参照)。
さらに、挿入された配列を調節し、又は所望の特定の方式で遺伝子産物を修飾し、処理する宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(たとえば、グリコシル化)及び処理(たとえば、切断)はタンパク質の機能にとって重要であり得る。様々な宿主細胞が、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後のプロセッシング及び修飾に特徴的で特異的なメカニズムを有する。適当な細胞株又は宿主系を選択して発現される異種タンパク質の正しい修飾とプロセッシングを確保することができる。この目的で、遺伝子産物の一次転写、グリコシル化及びリン酸化の正しいプロセッシングのための細胞機構を持つ真核細胞宿主を使用することができる。そのような哺乳類の宿主細胞には、CHO、VERY、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38、特に乳癌細胞株、たとえば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、並びに正常な乳腺細胞株、たとえば、CRL7030及びHs578Bstが挙げられるが、これらに限定されない。
長期にわたる組換えタンパク質の高い収率の産生のために、安定な発現が通常使用される。たとえば、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体を安定して発現する細胞株を操作することができる。ウイルスの複製開始点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、適当な発現制御要素(たとえば、プロモータ、エンハンサ、配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位など)によって制御されたDNAと選択可能なマーカーによって宿主細胞を形質転換することができる。異種DNAの導入に続いて、操作した細胞を栄養が豊富な培地で1〜2日間増殖させ、次いで選抜培地に移す。組換えプラスミドにおける選抜可能なマーカーは、選抜に対する耐性を付与し、細胞が安定的にプラスミドをその染色体に一体化するのを可能にし、増殖させて、次にはクローニングし、細胞株に増やすことができる増殖巣を形成させる。この方法を有利に使用して、DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体の分子を安定して発現する細胞株を操作することができる。
単純性ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202 (1992))を含むが、これらに限定されない多数の選抜系を使用することができ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22:817 1980)遺伝子をtk−、hgprt−又はaprt−細胞にそれぞれ用いることができる。また、以下の遺伝子:メソトレキセートに対する耐性を付与するdhfr((Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA 77:357 (1980); O’Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に耐性を付与するneo(Clinical Pharmacy 12:488−505; Wu and Wu, Biotherapy 3:87−95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573−596 (1993); Mulligan, Science 260:926−932 (1993); and Morgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62:191−217 (1993); TIB TECH 11(5):155−215 (May, 1993));及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30:147 (1984)についての選抜に基づく代謝拮抗物質耐性も使用することができる。使用することができる組換えDNA技術の当該技術にて一般に知られる方法は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Ausubelら(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);及びin Chapters 12 and 13,Dracopoliら(eds),Current Prolocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994);Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載されている。
ベクターの増幅によってDR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体の発現レベルを高めることができる(概説については、Bebbington and Hentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Academic Press, New York, Vol. 3. (1987)を参照)。DR6及び/又はp75拮抗物質ポリペプチド又は抗体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養に存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増やす。増幅された領域は抗体遺伝子又はそのほかのポリペプチド遺伝子に関連するので、抗体又はそのほかのポリペプチドの産生も高められる(Crouse et al., Mol. Cell. Biol. 3:257 (1983))。
DR6及び/又はp75拮抗物質、たとえば、可溶性のポリペプチド、抗体、拮抗物質ポリヌクレオチド、又はアプタマーをコードする核酸を含むベクターを用いて、本明細書に記載される方法で使用するための拮抗物質を製造することができる。そのような核酸が操作可能に連結されるベクター及び発現制御配列の選択は、所望の機能的特性、たとえば、タンパク質の発現及び形質転換される宿主細胞に左右される。
操作可能に連結されたコーディング配列の発現を調節するのに有用な発現制御要素は当該技術で既知である。例には、誘導可能なプロモータ、構築プロモータ、分泌シグナル、及びそのほかの調節性要素が挙げられるが、これらに限定されない。誘導可能なプロモータが使用される場合、たとえば、宿主細胞の培地における栄養状況の変化、又は温度の変化によってそれを制御することができる。
ベクターには、原核生物のレプリコン、すなわち、細菌宿主細胞にて染色体外での組換えDNA分子の自律的な複製と維持を指示する能力を有するDNA配列を含めることができる。そのようなレプリコンは当該技術で周知である。さらに、原核生物レプリコンを含むベクターは、その発現がたとえば、薬剤耐性のような検出可能なマーカーを付与する遺伝子も含むことができる。細菌の薬剤耐性遺伝子の例は、アンピシリン又はテトラサイクリンに耐性を付与するものである。
原核生物のレプリコンを含むベクターはまた、細菌の宿主細胞にてコーディング遺伝子配列の発現を指向するための原核生物又はバクテリオファージのプロモータも含むことができる。細菌の宿主に適合するプロモータの配列は通常、発現されるDNA断片の挿入のための好都合な制限部位を含有するプラスミドベクターにて提供される。そのようなプラスミドベクターの例は、pUC8、pUC9、pBR322及びpBR329(BioRad)、並びにpPL及びpKK223(Pharmacia)である。任意の好適な原核生物宿主を用いて、本明細書で記載される方法で使用されるタンパク質をコードする組換えDNA分子を発現させることができる。
本明細書に記載される目的で、多数の発現ベクター系を採用することができる。たとえば、1つの部類のベクターは、たとえば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV、又はMOMLV)又はSV40ウイルスのような動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。そのほかには、内部リボゾーム結合部位を持つポリシストロン系の使用が関与する。さらに、形質移入した宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカーを導入することによって染色体にDNAを統合した細胞を選抜することができる。マーカーは、栄養要求性の宿主に対して原栄養性を提供し、たとえば、銅のような重金属に対して殺菌耐性(たとえば、抗生剤)又は耐性を提供することができる。選抜可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結することができ、又は同時形質転換によって同一細胞に導入することができる。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子は選抜可能なマーカー遺伝子の例である(Southern et al., J. Mol. Anal. Genet. 1:327−341 (1982))。追加の要素は、mRNAの最適合成に必要とされ得る。これらの要素には、シグナル配列、スプライスシグナル、並びに転写プロモータ、エンハンサ、及び停止シグナルを含めることができる。
一実施形態では、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号)と呼ばれるBiogen IDEC社が所有権を持つ発現ベクターを使用することができる。このベクターは、サイトメガロウイルスのプロモータ/エンハンサ、マウスのβグロビン主要プロモータ、SV40の複製開始点、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエクソン1とエクソン2、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子及びリーダー配列を含有する。このベクターは、CHO細胞での形質移入に続いてG418を含有する培地での選抜及びメソトレキセート増幅によって、結果的に非常に高い発現を生じることが分かっている。当然、真核細胞で発現を誘発することができる任意の発現ベクターを使用することができる。好適なベクターの例には、プラスミドpcDNA3、pHCMV/Zeo、PCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1及びpZeoSV2(Invitrogen, San Diego, CAから入手可能)、並びにプラスミドpCI(Promega, Madison, WIから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。追加の真核細胞の発現ベクターは当該技術で既知であり、市販されている。通常、そのようなベクターは、所望のDNA断片の挿入のために好都合な制限部位を含有する。例となるベクターには、pSVL及びpKSV−10(Pharmacia)、pBPV−1、pml2d(International Biotechnologies)、pTDT1(ATCC 31255)、レトロウイルス発現ベクターpMIG及びpLL3.7、アデノウイルスシャトルベクターpDC315、並びにAAVベクターが挙げられる。そのほかの例となるベクター系は、たとえば、米国特許第6,413,777号に開示されている。
一般に、好適に高いレベルの拮抗物質を発現するものについて多数の形質転換された細胞をスクリーニングすることは、日常的な実験業務であり、たとえば、ロボット系によって実施することができる。
哺乳類の宿主細胞の発現に頻繁に使用される調節性配列には、哺乳類細胞での高いレベルのタンパク質発現を指向するウイルス要素、たとえば、レトロウイルスのLTRに由来するプロモータ及びエンハンサ、サイトメガロウイルス(CMV)(たとえば、CMVプロモータ/エンハンサ)、シミアンウイルス40(SV40)(たとえば、SV40プロモータ/エンハンサ)、アデノウイルス(たとえば、アデノウイルス主要後期プロモータ(Adm1P)、ポリオーマ及び強力な哺乳類プロモータ、たとえば、天然の免疫グロブリン及びアクチンのプロモータが挙げられる。ウイルスの調節性要素及びその配列のさらなる記載については、たとえば、Stinski,米国特許第5,168,062号;Bell,米国特許第4,510,245号;及びSchaffner,米国特許第4,968,615号を参照のこと。
組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(たとえば、複製開始点)、及び選抜可能なマーカー遺伝子を運ぶことができる。選抜可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞の選抜を円滑にする(たとえば、Axel,米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号及び同第5,179,017号を参照)。たとえば、通常、選抜可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞にて、たとえば、G418、ハイグロマイシン又はメソトレキセートのような薬剤に対する耐性を付与する。頻繁に使用される選抜可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メソトレキセート選抜/増幅を伴うdhfr宿主細胞について)及びneo遺伝子(G418選抜について)が挙げられる。
DR6及び/又はp75拮抗物質をコードするベクターを好適な宿主細胞の形質転換に用いることができる。形質転換は任意の好適な方法によることができる。異種DNAの哺乳類細胞への導入の方法は当該技術で周知であり、デキストラン介在性の形質移入、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン介在性の形質移入、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへの内包、DNAの核への直接微量注入が挙げられる。さらに、ウイルスベクターによって核酸分子を哺乳類細胞に導入することができる。
本明細書で記載される方法で使用するためのDR6及び/又はp75拮抗物質の発現のための宿主細胞は原核細胞又は真核細胞であることができる。例となる真核生物の宿主細胞には、酵母及び哺乳類細胞、たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC受入番号CCL61)、NIHスイスマウス胚細胞NIH−3T3(ATCC受入番号CRL1658)及び幼若ハムスター腎臓細胞(BHK)が挙げられるが、これらに限定されない。そのほかの有用な真核生物宿主細胞には、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられる。例となる原核生物宿主細胞は、大腸菌及びストレプトマイセスである。
宿主細胞の形質転換は、採用されるベクター及び宿主細胞に適した従来の方法によって達成することができる。原核生物宿主細胞の形質転換については、エレクトロポレーション及び塩処理法を採用することができる(Cohen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2110−14 (1972))。脊椎動物細胞の形質転換については、エレクトロポレーション、カチオン脂質処理法及び塩処理法を採用することができる。たとえば、Grahamら、Virology、52:456−467(1973);Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、76:1373−76(1979)を参照のこと。
特定の実施形態では、タンパク質の発現に使用される宿主細胞株は哺乳類起源であり;当業者は、そこで発現される所望の遺伝子産物に最適である特定の宿主細胞株を決定する能力があると評価されている。例となる宿主細胞株には、NSO、SP2細胞、幼若ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(たとえば、HepG2)、A549細胞、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HeLa(ヒト子宮頚癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40のT抗原を持つCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALB/C3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、及び293(ヒト腎臓)が挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞株は通常、商業的サービス、アメリカン・ティッシュ・カルチャー・コレクションから、又は公開された文献から入手可能である。
既知の技法を用いて、産生細胞株からのポリペプチドの発現を高めることができる。たとえば、特定の条件下で発現を高めるのにグルタミンシンターゼ(GS)系が一般に使用される。たとえば、欧州特許第0 216 846号、同第0 256 055号及び同第0 323 997号、並びに欧州特許出願第89303964.4号を参照のこと。
遺伝子治療
オリゴデンドロサイトの生存、増殖及び分化を促進すること又はニューロンの髄鞘形成を促進することが治療上有益である、神経系の疾患、障害又は損傷の治療に対する遺伝子治療アプローチを用いて、哺乳類、たとえば、ヒト患者にて生体内でDR6及び/又はp75拮抗物質を産生することができる。これには、好適な発現制御配列に操作可能に連結された好適なDR6及び/又はp75拮抗物質をコードする核酸の投与が関与する。一般に、これらの配列はウイルスベクターに組み入れられる。そのような遺伝子治療に好適なウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、エンテロウイルスベクター、ペスチウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、エプステインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、及び単純性ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターは、複製欠損ウイルスベクターであることができる。E1遺伝子又はE3遺伝子に欠失を有するアデノウイルスベクターが通常使用される。アデノウイルスベクターが使用される場合、ベクターは普通、選抜可能なマーカー遺伝子を有さない。
医薬組成物
本明細書で記載される方法で使用されるDR6及び/又はp75拮抗物質は、ヒトを含む哺乳類への投与のための医薬組成物に製剤化することができる。本明細書で記載される方法で使用される医薬組成物は、たとえば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、たとえば、ヒト血清アルブミン、リン酸塩のような緩衝液物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、たとえば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を含む薬学上許容可能な担体を含む。
本明細書で記載される方法で使用される組成物は、任意の好適な方法、たとえば、非経口で、脳室内に、経口で、吸入スプレーによって、局所に、直腸内に、鼻内に、頬内に、膣内に、又は埋め込まれたリザーバを介して投与することができる。用語「非経口的」には、本明細書で使用されるとき、皮下の、静脈内の、筋肉内の、関節内の、滑膜内の、胸骨内の、クモ膜下の、肝臓内の、病変内の、及び頭蓋内の注射又は点滴の技法が含まれる。上述のように、本明細書で記載される方法で使用されるDR6及び/又はp75拮抗物質は、神経系細胞の生存を促進し、アポトーシスを妨げるように神経系で作用する。従って、本明細書で記載される特定の方法では、DR6及び/又はp75拮抗物質は、脳血管関門を通過するような方法で投与される。この通過は、DR6及び/又はp75拮抗物質自体の固有の物理化学的特性から、医薬製剤のそのほかの成分から、又は脳血管関門を突破する針、カニューレ又は外科機器のような機械的用具から生じることができる。DR6及び/又はp75拮抗物質が脳血管関門を本来通過しない分子、たとえば、通過を促進する部分への融合である場合、投与の好適な経路は、たとえば、MSの慢性病変への直接的なクモ膜下又は頭蓋内である。DR6及び/又はp75拮抗物質が脳血管関門を本来通過する分子である場合、投与の好適な経路は以下に記載される種々の経路の1以上によることができる。
本明細書で記載される組成物の無菌注射形態は水性又は油性の懸濁液である。これらの懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該技術で既知の技法に従って製剤化することができる。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口で許容できる希釈剤又は溶媒における、たとえば、1,3−ブタンジオールにおける懸濁液のような、無菌の注射用の溶液又は懸濁液であることもできる。採用することができる許容可能な媒体及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の非揮発性油は溶媒又は懸濁媒体として従来採用されている。この目的で、合成のモノ−又はジ−グリセリドを含む任意の非刺激性の非揮発性油を採用することができる。たとえば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、特にポリオキシエチル化型での、たとえば、オリーブ油又はヒマシ油のような薬学上許容可能な天然の油のように注射用製剤で有用である。これらの油性の溶液又は懸濁液はまた、たとえば、カルボキシメチルセルロースのような長鎖アルコール性の希釈剤若しくは分散剤、又はエマルション及び懸濁剤を含む薬学上許容可能な投与形態の製剤で一般に使用される類似の分散剤を含有することもできる。薬学上許容可能な固形、液状又はそのほかの投与形態の製造に一般に使用されるTweenやSpanのようなそのほかの一般に使用される界面活性剤、及びそのほかの乳化剤又は生体利用効率増強剤も製剤化の目的で使用することができる。
非経口製剤は、単回用量ボーラス、輸液、又は維持用量を伴う負荷用量ボーラスであることができる。特定の固定した又は変動する間隔で、たとえば、1日に一回、又は「必要に応じて」を基本に、これらの組成物を投与することができる。
本明細書で記載される方法で使用される特定の医薬組成物は、たとえば、カプセル、錠剤、水性の懸濁液又は溶液を含む許容可能な投与形態で経口投与することができる。特定の医薬組成物はまた、鼻内エアゾール又は吸入によって投与することもできる。そのような組成物は、ベンジルアルコール若しくはそのほかの好適な保存剤、生体利用効率を高める吸収促進剤、及び/又は従来の可溶化剤若しくは分散剤を用いて生理食塩水における溶液として調製することができる。
担体物質と組み合わせて単一の投与形態を作製することができるDR6及び/又はp75拮抗物質の量は、治療される宿主、使用される拮抗物質の種類、及び特定の投与方式によって異なる。組成物は、単回用量として、複数回用量として、又は点滴にて確定された期間にわたって投与することができる。投与計画を調整して最適な所望の応答(たとえば、治療上の応答又は予防上の応答)を提供することができる。
場合によっては、本明細書で記載される方法は、「治療上有効量」の又は「予防上有効量」のDR6及び/又はp75拮抗物質を使用する。そのような治療上又は予防上の有効量は、たとえば、個体の疾患状況、年齢、性別、及び体重のような因子に従って変化し得る。治療上又は予防上の有効量はまた、治療上有益な効果が毒性又は有害な効果を上回るものでもある。
特定の患者についての特定の投与量及び治療計画は、使用される特定のDR6及び/又はp75拮抗物質、患者の年齢、体重、全身状態、性別及び食事、投与の時間、排泄の速度、薬剤の併用、及び治療される特定の疾患の重症度を含む種々の因子に左右される。医療従事者によるそのような因子の判断は当該技術の普通の技量の範囲内である。量はまた、治療される個々の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、及び所望の効果にも左右される。使用される量は、当該技術で周知の薬理学的な原理及び薬物動態原理によって決定することができる。
本明細書で記載される方法では、DR6及び/又はp75拮抗物質は一般に、神経系に、脳室内に又はクモ膜下に、たとえば、慢性病変に直接投与される。本明細書で記載される方法に係る投与のための組成物は、0.001〜10mg/kg体重/日の投与量のDR6及び/又はp75拮抗物質が投与されるように製剤化することができる。一部の実施形態では、投与量は0.01〜1.0mg/kg体重/日である。一部の実施形態では、投与量は0.001〜0.5mg/kg体重/日である。
DR6及び/又はp75拮抗物質抗体による治療については、投与量は、たとえば、宿主の体重当たり0.0001〜100mg/kg及びさらに普通には0.01〜5mg/kg(たとえば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)の範囲であることができる。たとえば、投与量は、1mg/kg体重又は10mg/kg体重、又は1〜10mg/kgの範囲内、たとえば、少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲の中間の用量も使用することができる。そのような用量を毎日、代替日に、毎週、又は経験的な分析によって決定されたほかの計画に従って対象に投与することができる。例となる治療は、複数回用量にて、たとえば、少なくとも6ヵ月間、延長された期間にわたる投与を必要とする。追加の例となる治療計画は、2週間に一回、1ヵ月に一回、又は3〜6ヵ月に一回の投与を必要とする。例となる投与スケジュールには、連続して毎日1〜10mg/kg若しくは15mg/kg、代替日に30mg/kg、又は毎週60mg/kgが挙げられる。一部の方法では、異なった結合特異性を持つ2以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、その場合、投与される各抗体の投与量は示された範囲内に入る。
特定の実施形態では、DR6及び/又はp75拮抗物質抗体をコードする核酸分子によって対象を治療することができる。核酸の用量は、患者当たり、約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mg又は30〜300μgのDNAに及ぶ。感染性ウイルスベクターの用量は、用量当たり10〜100ビリオン以上で変化する。
補助的に活性のある化合物も、本明細書で記載される方法で使用される組成物に組み入れることができる。たとえば、可溶性のポリペプチド又は融合タンパク質を1以上の追加の治療剤と共に同時製剤化することができ、及び/又は同時投与することができる。
送達方法は、水溶液のボーラス注射又は制御放出系の埋め込みを含む、選択された標的組織へのDR6及び/又はp75拮抗物質の好適な送達方法を包含する。制御放出の埋め込みの使用は、繰り返し注射の必要性を減らす。
本明細書で記載されるDR6及び/又はp75拮抗物質を脳に直接点滴することができる。化合物の脳への直接的な点滴のための種々のインプラントが知られており、神経障害を持つヒト患者への治療化合物の送達で効果的である。それらには、ポンプを用いた脳への慢性的な点滴、定位固定で埋め込まれた一時的な間質性カテーテル、頭蓋内のカテーテルインプラント、及び外科的に埋め込まれた生分解性のインプラントが挙げられる。たとえば、Gillら、上記;Scharfenら、「High Activity Iodine−125 Interstitial Implant For Gliomas」Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.24(4):583−591(1992);Gasparら、「Permanent 125I Implants for Recurrent Malignant Gliomas」Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.43(5):977−982(1999);chapter 66,pages 577−580,Bellezzaら、「Stereotactic Interstitial Brachytherapy」、in Gildenbergら、Textbook of Stereotactic and Functional Neurosurgery,McGraw−Hill(1998);及びBremら、「The Safety of Interstitial Chemotherapy with BCNU−Loaded Polymer Followed by Radiation Therapy in the Treatment of Newly Diagnosed Malignant Gliomas:Phase I Trial」、J.Neuro−Oncology、26:111−23(1995)を参照のこと。
組成物はまた、化合物のために送達系又は支持系として機能する生体適合性の担体物質に分散されたDR6及び/又はp75拮抗物質を含むことができる。徐放性担体の好適な例には、たとえば、座薬やカプセルのような成形された物品の形態での半透過性のポリマーマトリクスが挙げられる。埋め込み可能な又は微量カプセルの徐放性マトリクスにはポリアクチド(米国特許第3,773,319号、EP58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al., Biopolymers 22:547−56 (1985))、酢酸エチレンビニル(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167−277 (1981); Langer, Chem. Tech. 12:98−105 (1982))、又はポリ−D−(−)−3ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
本明細書で記載される方法の一部の実施形態では、脳の適当な領域への直接的な点滴によってDR6及び/又はp75拮抗物質が投与される。たとえば、Gillら、Nature Med.9:589−95(2003)を参照のこと。代替の技法が利用可能であり、それを適用してDR6及び/又はp75拮抗物質を投与することができる。たとえば、Riechert−Mundinger単位及びZD(Zamorano−Dujovny)多目的局在化単位を用いてカテーテル又はインプラントの定位固定の留置を達成することができる。120mLのオムニパーク、350mg/mLのヨウ素を注射し、2mmの切片厚さでの造影コンピュータ断層(CT)走査は、三次元の多面的治療計画を可能にすることができる(STP, Fischer, Freiburg, Germany)。この機器によって、明瞭な標的の確認のためのCT及びMRIの標的情報を併せて、磁気共鳴画像化試験に基づいた計画が可能になる。
GECTスキャナー(General Electric Company, Milwaukee, WI)との使用のために改変されたLeksell定位固定システム(Downs Surgical, Inc., Decatur, GA)、及びBrown−Roberts−Wells(BRW)定位固定システム(Radionics, Burlington, MA)はこの目的で使用することができる。従って、埋め込みの朝、BRW定位固定フレームの環状ベースリングを患者の頭部に取り付けることができる。ベースプレートに挟み付けたグラファイトの棒状ローカライザーフレームによって(標的組織の)領域を介して3mm間隔でCT連続切片を得ることができる。CT空間とBRW空間の間に位置するグラファイトの棒状画像のCT座標を用いたVAX11/780コンピュータ(Digital Equipment Corporation, Maynard, Mass)にてコンピュータ化治療計画プログラムを実行することができる。
本明細書で記載されるような高い細胞死を伴う神経系障害の治療方法は通常、ヒトでの使用に先立って、所望の治療又は予防の活性について、許容できる動物モデルにて試験管内で次いで生体内で調べられる。トランスジェニック動物を含めて好適な動物モデルは当業者に知られるであろう。たとえば、DR6及び/又はp75拮抗物質の生存効果を明らかにする試験管内のアッセイが本明細書で記載される。アポトーシスに対するDR6及び/又はp75拮抗物質の効果が実施例で記載されるように試験管内で調べられる。最終的に、DR6及び/又はp75拮抗物質を発現するトランスジェニックマウスを創出することによって、又は本明細書で記載されるようにマウス若しくはラットのモデルに対してDR6及び/又はp75拮抗物質を投与することによって生体内の試験を実施することができる。
本明細書で記載される実践は、特に示されない限り、当該技術の技量の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来の技法を採用する。そのような技法は文献によって完全に説明されている。たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3−Volume Set),J.Sambrook,D.W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001);Genes VIII,B.Lewin,Prentice Hall(2003);PCR Primer,C.W.Dieffenbach及びG.S.Dveksler,CSHL Press(2003);DNA Cloning,D.N.Glover編、Volumes I及びII(1985);Oligonucleotide Synthesis:Methods and Applications(Methods in Molecular Biology),P.Herdewijn編、Humana Press(2004);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,第4版、R.I.Freshney,Wiley−Liss(2000);Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait編(1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames & S.J.Higgins編(1984);Nucleic Acid Hybridization,M.L.M.Anderson,Springer(1999);Animal Cell Culture and Technology,第2版、M.Butler,BIOS Scientific Publishers(2004);Immobilized Cells and Enzymes:A Practical Approach(Practical Approach Series),J.Woodward,Irl Pr(1992);Transcription And Translation,B.D.Hames & S.J.Higgins編(1984);Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,(1987);Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,(1986);A Practical Guide To Molecular Cloning,第3版、B.Perbal,John Wiley & Sons Inc.(1988);the treatise,Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,N.Y.;Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos編、Cold Spring Harbor Laboratory(1987);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155,Wuら編;Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker編、Academic Press,London(1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell編(1986);Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques(4 Volume Set),第1版、I.Lefkovits,Academic Press(1997);Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2002);並びにin Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照のこと。
抗体の操作の一般原理は、Antibody Engineering:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),B.L.Lo編、Humana Press(2003);Antibody engineering,R.Kontermann and S.Dubel編、Springer Verlag(2001);Antibody Engineering,第2版、C.A.K.Borrebaeck編、Oxford Univ.Press(1995)二述べられている。タンパク質の操作の一般原理は、Protein Engineering,A Practical Approach,Rickwood,D.ら編、IRL Press at Oxford Univ.Press,Oxford,Eng.(1995)に述べられている。抗体及び抗体ハプテンの結合の一般原理は、Antibodies:A Laboratory Manual,E.Harlow及びD.Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988);Nisonoff,A.,Molecular Immunology,第2版、Sinauer Associates,Sunderland,MA(1984);及びSteward,M.W.,Antibodies,Their Structure and Function,Chapman及びHall,New York,NY(1984)に述べられている。さらに、当該技術で既知であり、具体的には記載されていない免疫における常法は一般にCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Stitesら編、Immunochemical Protocols(Methods in Molecular Biology),第2版、J.D.Pound編、Humana Press(1998),Weir’s Handbook of Experimental Immunology,第5版、D.M.Weir編、Blackwell Publishers(1996),Methods in Cellular Immunology,第2版、R.Fernandez−Botran,CRC Press(2001);Basic及びClinical Immunology,第8版、Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994)並びにMishell and Shiigi編、Selected Methods in Cellular Immunology,W.H.Freeman及びCo.,New York(1980)として追随されている。
免疫学の原理を述べている標準的な参考資料には、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Klein,J.;Kuby Immunology,第4版、R.A.Goldsbyら、H.Freeman & Co.(2000);Basic and Clinical Immunology,M.Peakmanら、Churchill Livingstone(1997);Immunology,第6版、I.Roittら、Mosby,London(2001);Cellular and Molecular Immunology,第5版;A.K.Abbas,A.H.Lichtman,Elsevier−Health Sciences Division(2005);Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques(4 Volume Set),第1版、I. Lefkovits,Academic Press(1997)Immunology,第5版、R.A.Goldsbyら、W.H.Freeman(2002);Monoclonal Antibodies: Principles及びPractice,第3版、J.W.Goding,Academic Press(1996);Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination,John Wiley & Sons,New York(1982);Kennett,Rら編、Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York(1980);Campbell,A.,「Monoclonal Antibody Technology」in Burden,Rら編、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.13,Elsevere,Amsterdam(1984)が挙げられる。
上記で引用した参考文献すべて、並びに本明細書で引用した参考文献すべては、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
実施例
実施例1
DR6は神経系で発現される
DR6タンパク質の発現について成熟マウスの大脳皮質及びラットの脊髄の組織切片を調べた。組織切片を先ず、1%TritonX−100(Sigma)を含有するPBSにて30分間透徹させ、次いで室温にて1時間、ブロッキング溶液(0.1%TritonX−100と10%正常ヤギ血清(NGS)を含有するPBS)でインキュベートした。一次抗体の標識については、ウサギ抗DR6(Santa Cruz、sc13106、1:200)とマウス抗ニューロンクラスIIIβチューブリン(Covance、MMS−435P、1:500)を含有するブロッキング培地で切片を4℃にて一晩インキュベートした。PBSで3回すすいだ後、Alexa594抗ウサギ抗体(Invitrogen)(1:500)を含有する5%NGS−PBSにて室温で1時間切片をインキュベートした。結果は、DR6とニューロンクラスIIIβチューブリンの同時局在を示し、それは、DR6がニューロンで発現されることを示している(データは示さず)。
神経系におけるDR6の役割を理解するために、逆転写の後の定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)を用いてDR6のmRNAの発現レベルを評価して、それがラットの脳組織で発生上調節されているかどうかを判定した。胎齢18日(E18)、出生後1(P1)、7(P7)、14(P14)及び21(P21)日目にて及び成熟ラットから得た脳全体と脊髄のホモジネートからmRNAを抽出した。製造元の指示書(Stratagene)に従ってAbsolutelyRNAminiprepキットを用いてすべてのmRNAを抽出した。次いで精製RNA(High Capacity cDNA Archive Kit, Applied Biosystems)を用いてDR6のcDNAを生成した。cDNAは定量的リアルタイムPCR(Q−PCR)の鋳型として用いられ、TaqMan遺伝子発現システム(Mx3000P)を用いてMGBプローブ(Applied Biosystems)と共に設定されたMm00446361_mlpプレミックスプライマーを用い、DR6を定量した。図1A〜Bに見られるように、DR6の発現レベルは、E18では低く、出生後7又は14日でピークに達し、その後、成熟後の脳及び脊髄の双方で低下した。発生上の転写特性は、抗DR6抗体を用いたウエスタンブロットに基づくタンパク質の発現特性に一致した(図1C)。ヒト及びラットの脳の組織切片の免疫組織化学染色は、βIIIチューブリンのニューロンマーカーとの同時局在に基づいてヒト及びラットの双方のニューロンでDR6が発現されることを明らかにした(データは示さず)。
さらに、DR6のmRNAの発現について幾つかのほかの細胞種を調べた。mRNAは、P2オリゴデンドロサイトの祖先細胞(OPC)、E18の皮質ニューロン、P2の小膠細胞及びP42の大脳皮質星状細胞の精製した培養物から抽出した。製造元の指示書(Stratagene)に従ってAbsolutelyRNAminiprepキットを用いてすべてのmRNAを抽出した。次いで精製RNA(High Capacity cDNA Archive Kit, Applied Biosystems)を用いてDR6,及び対照としてのグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)のcDNAを生成した。図1Dは調べた4種の細胞すべてでDR6が発現されることを示す。
DR6の発現はオリゴデンドロサイト系列にて時間的に調節される。3つの異なったアプローチを用いてオリゴデンドロサイトにおけるDR6発現を調べた。第1に、半定量的RT−PCRを行って、オリゴデンドロサイトの精製集団の3つの異なった段階(A2B5、O4及びMBP)でのmRNAのレベルを決定した。図2Aに示されるように、A2B5+、O4+及びMBP+のオリゴデンドロサイトで見い出される同等のmRNAレベルにてDR6のmRNAはオリゴデンドロサイト系列の全段階で検出された。第2に、ウエスタンブロットを行ってオリゴデンドロサイトの3つの異なった段階におけるDRタンパク質のレベルを決定した。図2Bに示されるように、DRタンパク質はオリゴデンドロサイトの3つの段階すべてで検出可能であった。興味深いことに、髄鞘形成前(O4+)のオリゴデンドロサイト段階では、それより早い祖先A2B5より5倍高く、成熟オリゴデンドロサイト(MBP陽性)よりも10倍高かったということは、髄鞘形成前のオリゴデンドロサイトが優勢なDR6発現細胞であることを示唆している。第3に、オリゴデンドロサイトにおけるDR6タンパク質の存在は、A2B5+、O4+及びMBP+のオリゴデンドロサイトが抗DR6抗体で染色されたことを示す免疫組織化学を用いて確認された(データは示さず)。再び、O4陽性細胞は、MBP陽性細胞よりもはるかに強力な蛍光染色を示すということは、成熟オリゴデンドロサイトよりも髄鞘形成前の段階(O4陽性)でDR6の発現が多いことを示唆する。競合するDR6−Fcの添加による抗DR6抗体の事前吸着によってシグナルは完全に取り除かれた。
実施例2
DR6はアルツハイマー病患者の脳で過剰発現される
アルツハイマー病患者の脳におけるDR6mRNAのレベルを調べた。アルツハイマー病の4人の異なった供与者からの6つの瞬間凍結脳組織ブロックを用いて定量的リアルタイムPCRを行った。これらの結果を神経疾患のない2人の供与者からの3つの脳組織ブロックから得られたものと比較した。
図3に示されるように、DR6は、3つの正常な脳試料と比較した際、アルツハイマーの試料(4人の個々の供与者から採取された前頭葉2、側頭葉1、基底神経節1及び未特定領域2)で1.2〜1.8倍高く発現される(図3)。上方調節されたDR6がニューロン特異的であるかどうかを判定するために、免疫組織化学染色を実施した。αβアミロイド斑の中央での細胞はDR陽性である。斑の近くの細胞がやや明るいDR染色を有するということは、高いレベルのDR6発現を示唆している。mRNAの抽出、cDNAの作製及びQ−PCRは実施例1に記載されたように行った。
実施例3
DR6は軸索切除後、上方調節される
DR6のmRNAとタンパク質のレベルに対する軸索切除の影響を調べた。これらの実験については、以前記載されたように(Mi et al., Nat. Neurosci. 8:745−51 (2005))、胎児性DRGニューロンを調製した。手短には、先ず2週齢のE16スプラーグ・ドーリー系ラット(Charles River)からDRGを取り出し、0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen)にて37℃で30分間インキュベートした。次いで20%のウシ胎児血清(Invitrogen)を含有する等量のDMEM(Invitrogen)を消化混合物に加えて反応を止めた。室温にて5分間の1,000rpmでの遠心後に回収した細胞沈殿物を、大きな断片が見えなくなるまでプラスチック製のピペットを穏やかに通すことによって機械的にほぐした。100μg/mLのポリ−D−リジン(Sigma)によって被覆した4穴のチャンバースライド(LabTek)の各ウェルの中央に約1×105個のニューロンをスポットにした。5%CO2の湿った空気中、37℃にて増殖培地(B27補完物(Invitrogen)と100ng/mLの神経成長因子(BD Biosciences)を含有する神経基本培地)で細胞を付着させた。翌朝、培地を新鮮な増殖培地で置き換え、20μMのフルオロデオキシウリジンで細胞を3日間処理して増殖するグリア細胞を除いた。その後、5%CO2の湿った空気中、37℃にて増殖培地で培養を維持し、3〜4日毎に新鮮な培地に交換した。
これら培養した軸索に刃でダメージを与え、傷害後0、24、及び48時間に、製造元の指示書(Stratagene)に従ってAbsolutelyRNAminiprepキットを用いてmRNAを抽出した。図4に示されるように、定量によって、DR6mRNAのレベルは、対照の無傷の軸索培養に比べて軸索切除後24時間及び48時間の双方で高いことが明らかにされた。
mRNAの抽出、cDNAの作製及びQ−PCRは実施例1に記載されたように行った。
実施例4
DR6は脊髄傷害の後、病変部位での運動ニューロンで上方調節される
脊髄傷害のモデルを創出するために、Jiら(Mol Cell Neurosci. 33: 311−20 (2006))によって記載されたようにラットの脊髄の背面半側切断を行った。脊髄組織を固定し、抗DR6抗体を用いて染色した。無傷のラットよりも脊髄傷害を持つラットで有意に高いレベルのDR6陽性の運動ニューロンが検出された。
実施例5
DR6の過剰発現はニューロン死を誘導する
細胞培養
細胞培養で増殖させた大脳皮質ニューロンを、DR6を発現するレンチウイルスに感染させ、細胞死に対する影響を調べた。E18スプラーグ・ドーリー系ラット(Charles River)から大脳皮質ニューロンを調製した。手短には、E18ラット胚から大脳皮質を取り出し、細片して、37℃にて10分間、0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen)にてインキュベートした。60μg/mLのDNaseI(Sigma)と10%のウシ胎児血清(Invitrogen)を添加した後細胞を粉砕して反応を止めた。室温にて5分間、1,000rpmでの遠心によって回収した細胞沈殿物を次いで、大きな断片が見えなくなるまでプラスチック製ピペットを穏やかに通して機械的にほぐした。細胞を播く前に、100μg/mLのポリD−リジン(Sigma)で組織培養プレートの表面すべてを被覆した。様々な実験設定でプレートに入れた密度は以下のとおりである:ウエスタンブロット用の12穴プレートでは1×106個/ウェル、経時的画像化用の24穴プレートでは1×105個/ウェル、並びにLDHアッセイ、均質カスパーゼアッセイ及びQ−PCR分析についての96穴プレートでは2×104個/ウェル。細胞は、5%CO2の湿った空気中、37℃にてB27補完物(Invitrogen)を含有する神経基本培地で維持し、3〜4日毎に新鮮な培地に交換した。
タンパク質発現構築物
完全長DR6(アミノ酸1〜655)をコードするDNAをHRST−IRESeGFPレンチウイルスベクターのNotI部位に挿入した。レンチウイルスにおける完全長のヒトDR6の配列を得、配列番号154の配列である。配列番号154のヌクレオチド124〜153はタンパク質の発現を確認するMycタグをコードしている。ヌクレオチド配列は、配列番号155の完全長MycタグのヒトDR6ポリペプチドをコードする。配列番号155のアミノ酸42〜51はMycタグである。
ドミナント・ネガティブDR6(アミノ酸1〜37)をコードするDNAをHRST−IRESeGFPレンチウイルスベクターのNotI部位に挿入した。レンチウイルスにおけるドミナント・ネガティブDR6の配列は配列番号156として提供される。配列番号156のヌクレオチド124〜153はタンパク質の発現を確認するMycタグをコードしている。ドミナント・ネガティブヒトDR6ポリペプチドのポリペプチド配列は配列番号157として提供される。配列番号157のアミノ酸42〜51はMycタグである。
感染
得られたプラスミド及びGFP対照プラスミドによって293細胞に形質移入し、以前記載された(Rubinson et al. Nat. Genet. 33:401−6 (2003))ようにレンチウイルスを生成し、感染多重度(MOI)1にてレンチウイルスを皮質ニューロンに感染させた。FL−DR6の異所性発現は、92時間後、対照の感染細胞に比べて、細胞の形態及び細胞の計数によって視覚化されたように(図5A)皮質ニューロンのアポトーシスを誘導した。
生細胞すべてのミトコンドリア活性をモニターする並行培養におけるXTTアッセイによって、DR6が誘導した細胞死をさらに検証した。XTTアッセイはミトコンドリア活性を測定することによって細胞数を決定する比色法である。FL−DR6を感染させた皮質ニューロンはXTTの読み取りにて2倍の低下を示し、DR6の過剰発現が誘導したニューロン死が原因で生じた細胞数の有意な低下を反映していた(図5B)。死のドメイン(DD)が細胞死に必要とされるかどうかを判定するために、DDを含有しないドミナント・ネガティブDR6レンチウイルス(DN−DR6)を感染によって皮質ニューロンに導入した。図5Bに示されるように、DN−DR6が培養ニューロンにてアポトーシスを誘導できなかったということは、DR6死のドメインはニューロンの死の誘導に必須であることを示唆している。
アポトーシスの鍵となるメディエータであるカスパーゼ−3に対するDR6の影響も分析した。上述のように皮質ニューロンに感染させ、感染の48時間後、細胞溶解物を回収した。蛍光測定均質カスパーゼアッセイキット(Roche, 03005372001)を用いてカスパーゼ−3活性を測定した。感染後48時間で細胞をアッセイした。図5Cに示されるように、未感染の細胞、GFP対照レンチウイルスを感染させた細胞及びドミナント・ネガティブDR6レンチウイルスを感染させた細胞に比べて、完全長のDR6レンチウイルスを感染させた後、遊離のローダミンのレベルは2倍上昇した。このことは、ドミナント・ネガティブDR6ではなく、DR6がカスパーゼ−3の活性を高めることを示している。
これらの結果はウエスタンブロットによって確認された。細胞溶解物をPAGEに供し、分離したタンパク質を抗DR6抗体(Santa Cruz)で探査した。図5Dに示されるように、活性のあるカスパーゼ−3のレベルは、ドミナント・ネガティブDR6レンチウイルス又はGFP対照レンチウイルスを感染させた細胞よりも完全長のDR6レンチウイルスを感染させた細胞の方が高かった。それに対して、対照タンパク質(βIII−チューブリン)のレベルは3種の感染すべてで類似していた。それぞれの感染におけるレンチウイルスによって産生されるGFPの類似のレベルによって明らかにされたようにそれぞれの感染の有効性は、類似していた(図5Dを参照)。
これの結果のそれぞれは、DR6が皮質ニューロンにおいて細胞死を誘導することができることを示唆している。
実施例6
DR6−FLの過剰発現はOPCの死を誘導する。
オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の生存率に対するDR6の影響も調べた。この実験では、以前記載されたように(Mi et al., Nat. Neurosci. 8:745−51 (2005))、濃縮したオリゴデンドロサイトの培養を調製した。手短には、P2スプラーグ・ドーリー系ラット(Charles River)から前脳を取り出し、細片し、0.01%トリプシン(Sigma)と10μg/mLのDNase(Sigma)にて37℃で15分間インキュベートした。ほぐした細胞を100μg/mLのポリ−D−リジンの組織培養フラスコに入れ、20%ウシ胎児血清(Invitrogen)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にて37℃で10日間増殖させた。濃縮したオリゴデンドロサイトの祖先細胞を得るために、200rpmにて37℃で一晩フラスコを振盪し、95%純度の集団を生じた。次いで、オリゴデンドロサイトの祖先細胞を2×104個/ウェルにて96穴プレートに入れ、5%CO2の湿った空気中、37℃にて、10ng/mLの血小板由来増殖因子(PDGFAA)と10ng/mLの線維芽細胞増殖因子(FGF)を含有するDMEM(Invitrogen)にて維持した。
次いで実施例5に記載されたように、GFP、完全長DR6及びドミナント・ネガティブDR6のレンチウイルスをOPCに感染させ、感染の48時間後、死細胞の数を評価した。未処理の細胞及び2%TritonX−100で処理した細胞もそれぞれ、陰性対照及び陽性対照として調べた。先ず、位相差顕微鏡を用いて細胞を可視化し、全細胞数と死細胞の数を数えた。死細胞の比率(%)を図6Aにてグラフで表す。ドミナント・ネガティブDR6レンチウイルス又はGFPレンチウイルスを感染させた細胞に比べて、完全長DR6レンチウイルスによる感染は死細胞の比率の有意な上昇をもたらした。
OPCの生存率に対するDR6の影響は、XTTアッセイ及びLDHアッセイを用いても評価した。XTTアッセイは実施例5に記載されたように実施した。陽性対照としてNADH阻害剤であるロテノンで細胞を処理した。図6Bに示されるように、ドミナント・ネガティブDR6レンチウイルス又はGFPレンチウイルスを感染させた細胞は似たようなレベルの細部生存率を示した。それに対して、ロテノンで処理した又は完全長DR6レンチウイルスを感染させた細胞は有意に低いレベルの細胞生存率を示した。
LDHアッセイを用いて類似の結果が得られた。LDHは細胞溶解の際に放出される酵素なので、LDH活性についての比色アッセイを用いて細胞の損傷を測定することができる。製造元の指示書に従って、細胞傷害性検出キット(LDH, Roche, 11644793001)を用いてLDHアッセイを実施した。結果を図6Cにグラフで示すが、完全長DR6レンチウイルスによる感染は、ドミナント・ネガティブDR6レンチウイルス又はGFPレンチウイルスのいずれかによる感染に比べて有意に高い細胞傷害性を生じることを明らかにしている。
これら実験のそれぞれは、完全長DR6が皮質ニューロンに加えてOPCにおいて細胞死を誘導することができることを示唆している。
実施例7
DR6のシグナル伝達経路の遮断はオリゴデンドロサイトの生存と分化を促進する
オリゴデンドロサイトの生存はその最終分化に決定的なので、DR6拮抗物質のオリゴデンドロサイトの生存、分化及び髄鞘形成を促進する能力を評価した。この課題に対処するために、DR6−DN(死のドメインの欠失)を用いてオリゴデンドロサイトにおけるDR6の機能を遮断した。図7Aに示されるように、DR6DNを感染させた細胞は、マウス抗MBP抗体(SMI 94 and SMI 99, 1:4000, Convance)、マウス抗MOG抗体(1:500)及びウサギ抗β−アクチン抗体(1:2000、Sigma)を用いてウエスタンブロット解析によって判定された、5倍高いレベルのMBP+細胞、及び高いMBPとMOGのタンパク質を示した(図7A)。レンチウイルスによる細胞の感染は、GFPタンパク質の同時発現マーカーのウエスタンブロットによる検出によって確認された(図7A)。さらに、CNPaseアッセイ(図7B)を行って、ELISA形式にて、未成熟及び成熟双方のオリゴデンドロサイトのマーカーであるCNPaseのレベルを測定した。図7Bに示されるように、DR6FLを感染させたオリゴデンドロサイトは、対照に比べて低下したCNPase活性を発現した。それに対して、DR6DNによるDRシグナル伝達経路の遮断は、CNPase活性を高めた(図7B)。これらの結果は、内因性のDR6がオリゴデンドロサイトの生存及び分化を負に調節するという考えを支持している。
実施例8
DR6が誘導するニューロン死はDR6−Fcによって覆される
実施例5に記載されたように皮質ニューロンに完全長DR6レンチウイルスを感染させた。しかしここでは、漸増量の組換え可溶性DRを補完した培地にてこれらの細胞をインキュベートした。DR6のアミノ酸1〜349をFc配列に融合することによって組換え可溶性DRを作製した。配列番号158のヌクレオチド配列をこの実験に用いた。配列番号158のヌクレオチド1〜1047はDR6のアミノ酸をコードし、配列番号158のヌクレオチド1051〜1731はFcのアミノ酸をコードする。配列番号158のヌクレオチド1048〜1050はクローニングの手順のために挿入された。
可溶性DR6ポリペプチドの配列は、配列番号159として提供される。配列番号159のアミノ酸1〜349はDR6のアミノ酸である。配列番号159のアミノ酸351〜576はFcのアミノ酸であり、アミノ酸350はクローニング手順によって挿入されたアミノ酸である。
可溶性DR6をコードする配列をレンチウイルスベクターに導入し、次いでこれを使用して293細胞から組換え可溶性DR6を産生させ、精製した。FL−DR6を発現するニューロンに対するDR6−Fcの生存効果を直接モニターするために、経時的画像化を得た。DR6−Fcの存在下で、FL−DR6は皮質ニューロンの死を誘導できなかった(図8A〜B)。
DRGニューロンに対する可溶性DR6の効果も調べた。先ず、成熟スプラーグ・ドーリー系ラット(Charles River)からDRGニューロンを取り出し、0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen)にて37℃で30分間インキュベートした。次いで20%ウシ胎児血清(Invitrogen)を含有する等量のDMEM(Invitrogen)を消化混合物に加え、反応を止めた。室温にて5分間の1,000rpmでの遠心によって細胞沈殿物を回収し、大きな断片が見えなくなるまでプラスチック製のピペットを穏やかに通すことによって機械的にほぐした。100μg/mLのポリ−D−リジン(Sigma)によって被覆した4穴のチャンバースライド(LabTek)の各ウェルの中央に約1×105個のDRGニューロンをスポットにした。5%CO2の湿った空気中、37℃にて増殖培地(B27補完物(Invitrogen)と100ng/mLの神経成長因子(BD Biosciences)を含有する神経基本培地)で細胞を付着させた。翌朝、培地を新鮮な増殖培地で置き換え、20μMのフルオロデオキシウリジンで細胞を3日間処理して増殖するグリア細胞を除いた。その後、5%CO2の湿った空気中、37℃にて増殖培地で培養を維持し、3〜4日毎に新鮮な培地に交換した。培養の7日後、対照Fc又は可溶性DR6−FcのいずれかでDRGを3日間処理した。4%パラホルムアルデヒドでDRGを固定し、次いでマウス抗ニューロンクラスIIIβ−チューブリン(Covance, MMS−435P, 1:500)で染色した。可溶性DR6−Fcは、作用を受けているニューロンの総数を増やした。さらに、大きく、複雑な作用を受けているニューロンの数は、可溶性DR6−Fcで処理された際、増えた(図9A〜B)。
別の実験では、0、1、3、10又は30μg/mLの可溶性DR6タンパク質を含有する培地で皮質ニューロンをインキュベートした。48時間後、細胞溶解物を回収し、ウサギ抗切断カスパーゼ−3抗体(91:1000; Cell Signaling)を用いて活性化されたカスパーゼ−3タンパク質のレベルを測定した。図10Aに示されるように、未感染細胞では、活性化カスパーゼ−3は検出できないが、完全長DR6レンチウイルスを感染させた細胞は、高いレベルの活性化カスパーゼ−3を示した。しかしながら、感染細胞が可溶性DR6を含有する培地でインキュベートされると、活性化カスパーゼ−3のレベルは低下した(図10A〜B)。細胞溶解物を抗GFP及び抗β−アクチンによって探査し、それぞれ、感染の有効性、及び細胞溶解物の量と質を制御した。これらのデータは、DR6の発現の阻止がニューロンの生存と軸索の完全性を促進するという考えを支持している。
実施例9
アルツハイマー病の動物モデルにおける細胞死に対するDR6−Fcの効果
アルツハイマー病のマウスモデル、たとえば、Jackson laboratories (Bar Harbor, ME) (Stock #04462)からのAPPswe/PS−1ΔE9マウス (Park et al., J. Neurosci 26:1386−1395 (2006))を用いて生体内におけるDR6−Fcの効果を調べることができる。
マウスを幾つかの処理群に分ける。最初の群を正常対照として用いる。各添加群をたとえば、頭蓋内注射又は全身性投与によってDR6−Fcで処理する。投与する量は、各処理群によって異なる。たとえば、群は、1日当たり、1、10、25、50、75、100,200、300、400又は500μg/kg受け取ることができる。投与は1回の投与であることができ、又は特定の期間繰り返し生じることができる。投与は、アルツハイマー症状の発症前、症状の発症の遅延又は欠如が奏功する予防及び/又は治療を示すように生じることができる。或いは、投与は、症状の発症後(すなわち、7ヵ月齢にて)症状の低下又は欠如が奏功する治療を示すように始まることができる。
たとえば、ウオーターマウスにおける処理マウスと未処理マウスを比較することによって生きたマウスで症候性に処理の有効性を評価することができる。また、屠殺したマウスの組織、たとえば、脳組織の分子分析、生化学分析及び組織学的分析によっても有効性を評価することができる。たとえば、脳の所定のサイズ及び領域におけるアポトーシス細胞、たとえば、皮質ニューロンの数を処理マウスと未処理マウスで比較することができる。たとえば、TUNEL(TdT介在性のdUTPニック末端標識)アッセイ又は抗PARP(ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ)染色を含む当該技術で既知の方法を用いてアポトーシス細胞の数を決定することができる。さらに、脳の所定のサイズ及び領域における生存している皮質ニューロンの総数を処理マウスと未処理マウスで比較することができる。
実施例10
ALSの動物モデルにおける細胞死に対するDR6−Fcの影響
たとえば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の動物モデルを用いて、たとえば、変異スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)を発現しているマウス、ラット、ハエ又は線虫を用いて生体内でのDR6−Fcの効果を調べることもできる。
たとえば、非経口投与、皮下投与などのような投与方式によって、SOD1(G37R)を発現しているマウスをDR6−Fcで処理する。投与の量と時間は変えることができる。症状の発症の遅延又は欠如が奏功する予防及び/又は治療を示すようにALS症状の発症前(すなわち、7〜9ヵ月齢)、投与を行うことができる。さらに、症状の低下又は増大の欠如が奏功する治療を示すように症状の発症後投与を始めることができる。
たとえば、処理マウスと未処理マウスの筋肉強度又は寿命を比較することによって処理の有効性を症候性に評価することができる。有効性はまた、屠殺したマウスの組織、たとえば、運動ニューロンの切片の分子分析、生化学分析及び組織学的分析によっても評価することができる。たとえば、所定の位置、たとえば、脊髄に沿って、アポトーシス細胞、たとえば、運動ニューロンの数を処理マウスと未処理マウスで比較することができる。たとえば、TUNEL(TdT介在性のdUTPニック末端標識)アッセイ又は抗PARP(ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ)染色を含む当該技術で既知の方法を用いてアポトーシス細胞の数を決定することができる。さらに、脊髄の所定のサイズ及び領域における生存している運動ニューロンの総数を処理マウスと未処理マウスで比較することができる。
実施例11
DR6RNAiはニューロンの生存を促進する
胎齢18日のラットから新皮質ニューロンを取り出し、ラットニューロンヌクレオファクターキット(Amaxa Inc)を用いて200nMのDR6siRNA又は混合対照siRNAと共に300万個の細胞で形質移入した。DR6siRNAは、Dharmaconから得られた4つのsiRNAの混合物であった。4つのsiRNAの配列は、AGAAACGGCUCCUUUAUUA(配列番号160)、GGAAGGACAUCUAUCAGUU(配列番号161)、GGCCGAUGAUUGAGAGAUU(配列番号162)、GCAGUUGGAAACAGACAAA(配列番号163)であった。対照siRNAの配列は、GGUGACAUGAUCGACAGCCAU(配列番号164)であった。
形質移入した細胞を96穴プレートに入れ、6日間培養した。7日目に培養培地の半分(100μL)を取り除き、異なった濃度のグルタミン酸塩、Aβ42又はTNFαを含有する新鮮な神経基本培地100μLで置き換えた。各処理条件について3つ組培養を設定した。培養物を24時間処理した。100μLの上清を各ウェルから取り出し、製造元の指示書に従って細胞傷害性キット(LDH Cytotoxicity Detection Kit, Clontech Laboratories, Inc)を用いてLDHアッセイを実施した。図11に示されるように、RNAiを用いたDR6のノックダウンは、新皮質ニューロンの生存を促進する。さらに、DR6の発現を低下させることは、Aβ42、グルタミン酸塩及びTNFαが誘導するニューロンの細胞傷害性を減衰する。データはまた、RNAiを用いたDR6発現の阻止が、ニューロンの生存を促進し、ニューロンの死を妨げることを示唆している。
実施例12
siRNAによるDR6シグナル伝達経路の遮断はオリゴデンドロサイトの分化を促進する
オリゴデンドロサイトの生存、分化及び髄鞘形成に対するDR6RNAiによるDR6拮抗作用の効果も評価した。これらの実験では、DR6RNAi又は対照RNAiによってA2B5細胞に形質移入した。細胞を回収し、溶解物の半分をRT−PCRに用い、15%アガロースゲルによって解析した。細胞溶解物の残りをMBPとMOGのウエスタンブロットに用いた。図12A〜Bに示されるように、DR6RNAiに暴露された細胞は2倍高いレベルのMBP+細胞を示し、高いレベルのMBP及びMOGのタンパク質がウエスタンブロット解析によって示された(図12B)。GFPタンパク質の同時発現マーカーのウエスタンブロット検出によってレンチウイルスによる細胞の感染が確認された。これらのデータはさらに、内因性のDR6がオリゴデンドロサイトの生存及び分化を負に調節するという考えを支持している。
実施例13
ファージディスプレイに由来するFab抗体の生成
組換えヒトDR6の細胞外ドメインを用いて3.5×1010の独特のクローンを含有するヒトナイーブファージミドFabライブラリ(Nat Biotechnol. 2005 Mar;23(3):344−8.)をスクリーニングした。ファージライブラリとのインキュベートに先立ってビオチン化AP−DR6タンパク質をストレプトアビジン被覆の磁気ビーズ上に捕捉した。以前記載されたように選抜を実施してAP−p75での欠失によってAP特異的な結合子を排除した(Nat Biotechnol. 2005 Mar;23(3):344−8.)。3回のパンニングの後、479bpの遺伝子III株をMluI消化によって取り除き、TGI細胞における可溶性Fabの発現についてベクターを再び連結した。2496個のクローンのELISA解析によって49の固有の配列を含む212個の陽性クローンが得られた。固有のクローンを精製し、完全長のヒトDR6で一過性に形質移入した293E細胞上での組換えヒトDR細胞外ドメインへの結合をELISA及びFACSによって単一濃度で再確認した。さらなる性状分析のためにこの解析から24の固有のクローンを選択した。複数の濃度にて24のFabを調べ、ヒトDR6−FcにおけるELISAによってAP−DR6融合タンパク質に対するDR6細胞外ドメインへの特異性を確認し、並びに、完全長ヒトDR−6−293E細胞、完全長ラットDR6−293E、及び未形質移入の293E細胞におけるFACSによって種の交差反応性を調べた。特異性と交差反応性に基づいて10のFabを選択した。
実施例14
マウス抗ヒトDR6モノクローナル抗体可変ドメインのクローニング
製造元の推奨するプロトコールに従ってQiagenRNeasyミニキットを用いてマウスのハイブリドーマから細胞性の全RNAを調製した。第1鎖cDNAのプライミングのためのランダムヘキサマーを用いて細胞性の全RNAから重鎖及び軽鎖の可変領域をRT−PCRによってクローニングした。未処理のシグナル配列を持ったマウスの免疫グロブリン可変ドメインのPCR増幅のために、マウスの複数の免疫グロブリン遺伝子ファミリーのシグナル配列とハイブリッド形成する変性正方向プライマーと、マウスの定常ドメインの5’末端に特異的な単一逆方向プライマーを用いた。PCR産物をゲルで精製し、製造元の推奨するプロトコールに従ってTOPOクローニングキットを用いてInvitrogenのPCR2.1TOPOベクターにサブクローニングした。複数の独立したサブクローンから挿入物を配列決定し、コンセンサス配列を確立した。演繹された成熟免疫グロブリンのN末端は、ハイブリドーマから精製された免疫グロブリンのエドマン分解によって決定されたものと一致した。特異的な亜群への割り振りは、カバットデータベースからのコンセンサス免疫グロブリン可変ドメイン配列を用いたBLAST解析に基づく。カバットの定義を用いてCDRを指定する。
配列番号107として以下に示すのは、1P1D6.3成熟重鎖可変ドメインのタンパク質配列であり、CDR(カバット定義)に下線を付す:
これはマウスの亜群II(A)重鎖である。1P1D6.3重鎖可変ドメイン(pYL466からの)のDNA配列は配列番号106として提供される。
配列番号112として以下に示すのは、1P1D6.3成熟軽鎖可変ドメインのタンパク質配列であり、CDRに下線を付す:
これはマウスの亜群Vκ軽鎖である。成熟軽鎖可変ドメイン(pYL469からの)のDNA配列は配列番号111として提供される。
配列番号117として以下に示すのは、1P2F2.1成熟重鎖可変ドメインのタンパク質配列であり、CDRに下線を付す:
これは、マウスの亜群II(A)重鎖である。CDR2におけるN結合グリコシル化部位である可能性がある部位を上記二重下線として示したことに留意すること。1P2F2.1重鎖可変ドメインの(YL467からの)のDNA配列は配列番号116として提供される。
1P1D6.3と1P2F2.1の重鎖は関連しており、タンパク質レベルで89.4%の同一性を共有し、CDR1とCDR3の配列が同一である。IgBLAST解析によってそれらは同一の組換え事象に由来したことが示唆されている。以下に示すのは、1P1D6.3(上)と1P2F2.1(下)の重鎖の整列である:
配列番号122として以下に示すのは、1P2.F2.1成熟軽鎖可変ドメインのタンパク質配列であり、CDRに下線を付す:
これはマウスの亜群Vκ軽鎖である。成熟軽鎖可変ドメイン(pYL470からの)DNA配列は配列番号121として提供される。
1P1D6.3と1P2F2.1の軽鎖は関連しており、タンパク質レベルで92.5%の同一性を共有し、CDR3の配列が同一である。IgBLAST解析によってそれらは同一の組換え事象に由来したことが示唆されている。以下に示すのは、1P1D6.3(上)と1P2F2.1(下)の軽鎖の整列である:
配列番号127として以下に示すのは、1P5D10.2成熟重鎖可変ドメインのタンパク質配列であり、CDRに下線を付す:
これはマウス亜群III(D)重鎖である。1P5D10.2重鎖可変ドメイン(pYL468からの)のDNA配列は配列番号126として提供される。
配列番号132として以下に示すのは、1P5D10.2成熟軽鎖可変ドメインのタンパク質配列であり、CDRに下線を付す:
これはマウス亜群VIκ軽鎖である。1P5D10.2軽鎖可変ドメイン(pYL471からの)のDNA配列は配列番号131として提供される。
実施例15
抗DR抗体はラット、マウス及びヒトのDR6に結合する。
ヒト、ラット又はマウスの完全長DR6をコードしたプラスミドDNA10μgで600万個のHEK293細胞に形質移入した。形質移入の3日後、200μLのPBS、1%BSA、0.1%NaN3(FACS緩衝液)中のおよそ50,000個の細胞を解析した。細胞をペレットにし、FACS緩衝液中での抗DR6抗体の連続希釈150μLに再浮遊させた。時折撹拌しながら、試料を1時間氷上でインキュベートし、次いで3回洗浄した。PE−標識したヤギF(ab)2抗ヒトFab(DyaxFabについて)又は抗マウスIgG特異的な抗体(モノクローナル抗体について)(Jackson Labs)によって結合したDR6抗体を視覚化した。図13に示されるように、結果は、5D10及び1E6の抗体はそれぞれヒト、ラット及びマウスのDR6に結合することを明らかにしている。5D10及びM53E04を用いた結合アッセイの結果は図30に示す。
実施例16
抗DR6抗体によるDR6の遮断はオリゴデンドロサイトの分化を促進し、アポトーシスを阻害する
オリゴデンドロサイトの生存におけるDR6に機能の役割をさらに立証するために、抗DR6抗体を用いて、オリゴデンドロサイトの培養におけるDR6の機能を遮断した。図14A〜Bに示されるように、抗DR6抗体による処理は、カスパーゼ3+細胞を約3倍増やし(図14A)、MBP+細胞を10倍増やした(図14B)。これらの結果はウエスタンブロット分析(図14C)によって確認され、そこでは、抗DR6抗体は、カスパーゼ3の産生を約3倍減らした。それに対して、MBPタンパク質の産生の10倍の増大が、抗DR6抗体で処理した細胞培養で見られた(図14C)。DR6抗体M53E04及び5D10を用いたオリゴデンドロサイト−DRG共培養アッセイの結果は図31に示し、陽性対照としての抗LINGO−1抗体Li81を用いた結果と比較する。
実施例17
抗DR6抗体によるDR6の遮断は共培養におけるオリゴデンドロサイト/DRGの髄鞘形成を促進する
DR6の遮断が髄鞘形成を促進するという仮説を試験するために、ラットの一次オリゴデンドロサイトとDRGニューロンの共培養を用いて髄鞘形成に対する抗DR6抗体の影響を確認した。そのような共培養は通常、抗DR6抗体の添加によって顕著に増強される髄鞘形成の低い基本レベルを示す。細胞当たり2の感染多重度(2MOI)にてレンチウイルスを共培養物に感染させた。抗DR6抗体による10日間の処理は、MBP+髄鞘を有する軸索の存在によって明らかなように強力な軸索の髄鞘形成を生じ、対照Ig処理した細胞培養よりも10倍高かった。マウス抗MBP抗体(SMI94及びSMI99、1:4000、Convance)、マウス抗MOG抗体(1:500)及びウサギ抗βアクチン抗体(1:2000、Sigma)を用いたウエスタンブロット解析によって、抗DR6抗体は用量依存性に髄鞘形成を促進し、共培養に添加された抗DR6抗体の濃度が高ければ高いほど、高いレベルのMBP及びMOGのタンパク質が産生されることが明らかにされている(図15)。これらの検討は、DR6機能の遮断がオリゴデンドロサイトの生存、分化及び髄鞘形成を促進することを明らかにしている。
実施例18
抗DR6抗体によるDR6の遮断はラットの脳細片培養にて再ミエリン化を促進する
脳細片培養系は、脱ミエリン化の病理及び再ミエリン化のメカニズムの解析にとって強力な試験管内のモデルを提供する。生体活性脂質、リソホスファチジルコリン(LPC)によるP17の脳細片の3日間の処理は、髄鞘形成についての黒金色の染色の非存在によって視覚化されるように急速でほぼ完全な脱ミエリン化を生じる(図16A)。LPCの除去後4日間、抗DR6抗体に暴露することによって、15倍高い黒金色の染色を生じるが、対照抗体での処理は効果を有さなかった(図16A〜B)。我々は次に成熟LPC誘導の脱ミエリン化モデルにて再ミエリン化が生体内で達成されうるかどうかを判定した。0日目に9週齢の若い成熟ラット(250グラム)の脊髄の脊柱にLPCを注射し、3日後、抗DR6抗体を投与した。LPC誘導の病変と再ミエリン化の程度は、次に黒金色の染色によって判定した。髄鞘を有する白色物は、黒金色染色の切片では暗赤色に見え、脱ミエリン化病変は淡赤色又は白色に見える。対照抗体で処理した動物(n=3)の切片は脱ミエリン化の広い領域を伴った大きな病変を示したが、LPC注射の7日後の抗DR6処理群(n=3)では、大幅により小さな病変が見えた。抗DR6処理と対照の病変の黒金色染色のパターンは異なった。抗DR6処理の病変では、病変全体にわたってレース様の構造が存在し、再ミエリン化を示した。脳細片及び生体内でのリソレシチンの検討は双方共、抗DR6抗体によるDR6機能の遮断が再ミエリン化を促進することを明らかにした。
実施例19
抗DR6抗体はラットEAEモデルにおける機能回復を促進する
成熟9週齢のブラウンノルウェー系ラット(150g)をイソフロウリンで麻酔し、次いで、尾の付け根に、100μLのCFA(Chondrex Inc.からの完全フロインドアジュバント)とDPBS(MP Biomedicals, LCC)中ラットMOG(アミノ酸1〜125)のN末端配列に相当する100μgの組換えラットMOG100μLを含有する200μLのカクテル溶液を注射した。注射後10〜15日で動物はEAEの兆候を発症した。MOG注射の後、運動機能に基づく挙動試験によって各動物を評価した。脱ミエリン化の代用的臨床測定基準としてEAEスコアを用いた。毎日EAEの臨床徴候についてラットをスコア化した。徴候は以下のようにスコア化した:等級0.5、尾の遠位不全麻痺;等級1、完全な尾の不全麻痺;等級1.5、尾の不全麻痺と後肢の軽い不全麻痺;等級2.0、片側の重度の後肢不全麻痺;等級2.5、両側の重度の後肢不全麻痺;等級3.0、完全な両側の後肢不全麻痺;等級3.5、完全な両側の後肢不全麻痺と一方の前肢の不全麻痺;等級4.0、完全な麻痺(四肢麻痺)、瀕死の状態又は死亡。15日間の免疫の後、ラットを無作為に2群のうち一方に割り振った。ラットの一方の群(n=10)には、アイソタイプ対照の抗体を注射し、別の群(n=10)にはDR6抗体を注射した。週に2回6mg/kgにて合計5回の処理についてラットに注射した。EAEスコアを毎日測定し、対応のないt−検定(両側性)を用いて統計的有意性を評価した。図17Aに示されるように、DR6抗体で処理したラットにおけるEAEスコアは対照動物に比べて有意に低かった。電気生理学的記録については、40日間の免疫後、磁気皮質刺激(Magstim)によって運動電位(MEP)を誘導し、腓腹筋(Cadwell)から記録した。最初の発症は普通陰性であり、偏位は皮質MEPの潜在として理解された。図17Bに示されるように、DR6処理ラットは、さらに速い神経伝導速度を示した。
実施例20
抗DR6抗体で処理したEAEラットではリンパ球数は影響を受けない
EAEは、免疫成分と神経成分の双方が関与するので、脱ミエリン化の複合モデルである。40日間のMOG免疫後、抗DR6抗体による処理がリンパ球に影響を及ぼすかどうかを判定するために、抗DR6抗体又は対照抗体で処理したEAEラットの顔面静脈から末梢血を採取した。Hemavetを用いて全血の細胞数とサブセットの数を測定した。図18に示されるように、全白血球におけるリンパ球数とリンパ球の比率は、対照抗体及び抗DR6抗体で処理した動物の間で有意な差異を示さなかった。
実施例21
抗DR6抗体はEAEラットにて脊髄へのT細胞の浸潤を阻害する
抗DR6抗体がT細胞のCNSへの浸潤に影響するかどうかを判定するために、MOG免疫の6週後、EAEラットをCO2で安楽死させ、次いで0.1Mリン酸緩衝液で潅流した。脊髄の腰椎領域を取り出し、4%のパラホルムアルデヒドで4℃にて一晩固定し、次いで0.1MのPBS中25%のスクロースにてインキュベートした。15μmの縦横凍結切片(Leciaミクロトーム)を切断し、抗CD4抗体(BD Pharmingen)を用いて標準の蛍光免疫組織化学法を実施した。Leica蛍光顕微鏡下で画像を撮影し、Openlabを用いて解析した。図19に示されるように、抗DR6抗体の全身性投与がEAEラットの脊髄へのT細胞の浸潤を有意に低下させたということは、低下したT細胞の浸潤が抗DR6処理した動物におけるEAEの徴候の重症度の低下(低いEAEスコア)を少なくとも部分的に説明することを示唆している。
実施例22
TNFαはNFκbを介してニューロン死を促進する
TNFは、NFκB、カスパーゼ−3経路を活性化し、Iκbタンパク質レベルを下方調節することによって腫瘍細胞でDR6の発現を誘導し、アポトーシスを活性化させることが報告されている。TNFαが皮質ニューロンにてDR6の発現を誘導するかどうかを判定するために、ニューロンをTNFαによる24時間の処理に暴露し、免疫組織化学染色を行った。結果はDR6の発現が有意に増加することを明らかにした。TNFαはニューロン死を誘導し、DR6陽性細胞と上手く相関した(図20A〜C)。ウエスタンブロットによって検討は確認された(図21A)。TNFαによる処理は、24時間処理の後、DR6発現で2倍の増大を誘導し、それは、NFκBの10倍の増加及びIκbタンパク質の2倍の下方調節と相関した(図21A〜D)。DR6RNAi形質移入ニューロンはDR6とNFκbのレベルで2倍の低下を示した(図22B及びC)。それに対して、DR6RNAi形質移入ニューロンはIκbタンパク質の発現で増加(2倍)を示した(図22A〜D)。(使用した対照及びDR6siRNAは実施例11に記載されたものだった)。これらのデータはDR6の上方調節がNFκbの発現と相関し、Iκbの発現と逆相関したことを示唆している。
実施例23
DR6拮抗物質はDRG軸索のシュワン細胞髄鞘形成を促進する
DR6拮抗物質がシュワン細胞に影響を及ぼすかどうかを判定するために、シュワン細胞とDR6ニューロンの共培養に対する抗DR6抗体の効果を調べた。これらの実験では、B27とNGFを加えた神経基本培地と共に4穴スライドにE16ラットのDRGニューロン(50,000個/ウェル)を入れた。FDURで4〜6日間培養物を処理して分裂細胞を除いた。7日後、B27とNGF(100ng/mL)を加えた神経基本培地でDRG細胞をさらに7〜10日間処理した。次いで、B27と100ng/mLのNGFを伴った神経基本培地中のDRGニューロン(50,000個/ウェル)に精製したシュワン細胞を加えた。培地は毎週交換した。10日後、共培養物を回収し、IHC又はウエスタンブロットによってMBPタンパク質についてアッセイした。IHC染色とウエスタンブロット(図23)は双方共、対照抗体で処理した培養物に比べて、抗DR6抗体で処理した培養物で高いレベルのMBPタンパク質を示した。これらのデータはDR6拮抗物質がニューロンのシュワン細胞の髄鞘形成を促進することを示している。
実施例24
DR6はアポトーシス性皮質ニューロンで上方調節される
新皮質ニューロンにおけるDR6の発現を調べるために、先ず、E18スプラーグ・ドーリー系(Charles River)ラットからニューロンを分離した。手短には、E18ラット胎児から大脳皮質を取り出し、細片して、37℃にて10分間、0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen)にてインキュベートした。20μg/mLのDNaseI(Sigma)と10%のウシ胎児血清(Invitrogen)を添加した後、細胞を粉砕して反応を止めた。細胞沈殿物を回収し、次いで、大きな断片が見えなくなるまでプラスチック製ピペットを穏やかに通して機械的にほぐした。100μg/mLのポリ−D−リジン(Sigma)によって事前に被覆した8穴スライドチャンバー(NUNC)に4×104個/ウェルにて細胞を入れた。5%CO2の湿った空気中、37℃にてB27補完物(Invitrogen)を含有する神経基本培地で維持し、3〜4日毎に新鮮な培地に交換した。細胞を3週間培養し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。PBSで3回洗浄した後、1%TritonX−100(PBST、Sigma)を含有するPBSによって30分間細胞を浸透させ、次いでブロッキング溶液(0.1%TritonX−100と10%正常ヤギ血清(NGS)を含有するPBS)にて室温で30分間インキュベートした。一次標識については、ウサギ抗DR6(1:200、sc−13106、Santa Cruz)及びマウス抗ニューロンクラスIIIβチューブリン(1:500、MMS−435P、Covance)を含有するブロッキング溶液にて細胞を4℃で一晩インキュベートした。PBSTで3回すすいだ後、Alexa488抗ウサギIgG(1:500)及びAlexa488抗マウスIgG(1:500)二次抗体を含有する5%NGS−PBSにて暗所において室温で1時間、細胞をインキュベートした。PBSTによる3回の洗浄の後、DAPI試薬(Invitrogen)を伴ったフェード防止剤で細胞を標本化し、蛍光顕微鏡下で観察した。核の濃縮によって示されるアポトーシスは、培養での3週間後、新皮質ニューロンで見られた。DR6のレベルを、アポトーシスを受けた及び受けていないニューロンで比較した。DR6の発現レベルは、アポトーシスを受けていないニューロンに比べてアポトーシスを受けているニューロンで上方調節された。これらの結果は、DR6発現の増大が加齢ニューロンのアポトーシスに寄与し得ることを示唆している。
実施例25
DR6拮抗物質は軸索の完全性を促進する
新皮質ニューロンの軸索完全性に対するDR6拮抗物質の効果を調べるために、実施例24に記載されたように、E18スプラーグ・ドーリー系(Charles River)ラットからニューロンを分離し、5%CO2の湿った空気中、37℃にてB27補完物(Invitrogen)を含有する神経基本培地で培養した。培養の7日後、(50μg/mL9の濃度のβ−アミロイド(凝集Aβ−42)及び10μg/mLの可溶性DR6−Fc又は10μg/mLの可溶性対照抗体のいずれかによって細胞を処理した。48時間後、4%パラホルムアルデヒドでニューロンを固定し、実施例24に記載されたようにマウス抗ニューロンクラスIIIβチューブリン(1:500、MMS−435P、Covance)で染色した。β−アミロイドによる処理は、未処理の対照に比べて、ニューロンの細胞死と軸索の分解を誘導した。しかしながら、可溶性DR6−Fcの処理はβ−アミロイドが誘導した軸索の分解とニューロンの細胞死を有意に減衰した。可溶性DR6−Fcの処理はまた、ニューロンの生存の増加と軸索のビーズ形成の低下をもたらした。これらの結果は、DR6拮抗物質が新皮質ニューロンに対するβ−アミロイドの負の効果を減らすことを示唆している。
実施例26
DR6とAKTの発現は逆相関する
リン酸化されたAKT(ホスホ−AKT)は周知の生存シグナルである。従って、DR6とホスホ−AKTの関係を新皮質ニューロンで調べた。これらの実験では、新皮質ニューロンを上述のように分離した。培養の3、7、14及び20日後、80μLの溶解緩衝液(50mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、1mMのEGTA、1%もTritonX−100、及び10%のグリセロール)にて新皮質ニューロンを4℃で30分間溶解した。14,000×gで15分間遠心分離した後、上清をラムリ試料緩衝液で煮沸し、4〜20%のSDS−PAGEに供し、ウサギ抗ホスホ−AKT抗体(1:500、Cell Signaling)、ウサギ抗AKT抗体(1:1000、Cell Signaling)、ヤギ抗DR6抗体(1:1000.Santa Cruz)及びウサギ抗β−アクチン抗体(1:2000、Sigma)によるウエスタンブロットで解析した。抗ウサギIgG−HRP(1:5000)及び抗ヤギIgG−HRP(1:5000、Bio−Rad)を用いて一次抗体を視覚化した。DR6の発現レベルは培養7日目で高く、培養20日目で低かった(図24)。それに対して、ホスホ−AKTのレベルは7日目では低く、20日目で高かった(図24)。DR6とホスホ−AKTのレベルの逆相関は、DR6がAKTシグナル伝達経路を介して細胞死を誘導し得ることを示唆している。
実施例27
DR6とp75は複合体を形成する
p75がDR6と相互作用し得るかどうかを判定するために、(i)DR6とp75とTrkA、(ii)DR6とTrkA、(iii)p75とTrkA、及び(iv)DR6とp75を発現する組換え細胞株を作り出した。これらの実験では、ヒトTrkAは成熟TrkAタンパク質(アミノ酸34〜796)のN末端に融合したFlagタグと共に発現させた。ラットp75は成熟p75タンパク質(アミノ酸30〜431)のN末端に融合したHisタグとともに発現させ、ヒトDR6は成熟DR6タンパク質(アミノ酸32〜655)のN末端に融合したMycタグと共に発現させた。Myc抗体を用いて細胞溶解物からDR6を免疫沈降させ、DR6とp75のレベルを評価した。ウエスタンブロット(図25A)は、TrkAの存在下又は非存在下でp75がDR6と共に同時免疫沈降したことを示している。
さらに、DR6をコードするベクター又は陰性対照ベクター(pV90)を含有する細胞をp75への結合についてアッセイした。アルカリホスファターゼ/p75を細胞に添加し、細胞表面の結合を測定した。結果は図25Bに示す。
BioChain(登録商標)から得たヒト胎児脊髄から得られた試料を用いて同様の結果が得られた。免疫沈降実験はp75がDR6と同時免疫沈降することを明らかにした(図25C)。
これらのデータは細胞培養圧制にて及びヒト試料にての双方でDR6とp75が複合体を形成することを明らかにしている。
実施例28
DR6とp75の発現パターンは重なり合う
DR6とp75のmRNAの発現レベルは、Allen Institute for Brain Scienceによって利用可能になっている公に利用可能なデータベースmouse.brain−map.orgから得られた。DR6とp75は双方共、脳の種々の領域で高発現しており、発現レベルは良好に相関した(図26)。これらの結果は、DR6とp75が同時局在するので、生体内で一緒に相互作用し、機能することを示唆している。
実施例29
DR6抗体はDR6とp75の相互作用を阻止することができる
DR6抗体がDR6とp75の相互作用を阻止するかどうかを判定するために、2A9抗DR6抗体又は5D10抗DR6抗体を用いて細胞から組換えDR6を免疫沈降した。ウエスタン解析は、双方の抗体がDR6タンパク質を沈降できたが、p75は、2A9抗体を用いた場合のみ、DR6と共に同時免疫沈降することを明らかにした(図27A)。従って、5D10DR6抗体はDR6とp75との相互作用を妨害した。
機能的アッセイによって、DR6とp75との相互作用を妨害する5D10の能力も確認した。このアッセイでは、対照ベクター又はp75をコードするベクターを含有するCHO細胞をアルカリホスファターゼ−DR6と共にインキュベートし、結合についてアッセイした。p75を発現する細胞をDR6とインキュベートした場合、高いレベルの表面結合が認められた。しかしながら、5D10の添加は、p75を発現する細胞へのDR6の結合を妨害した(図27B)。これらの結果は、DR6抗体5D10がp75へのDR6の結合を妨害し、細胞の生存を促進することができることを示している。
実施例30
DR6のTNFR−Cysリピート3と4は、DR6−p75相互作用を妨害する抗体に結合する
DR6−p75相互作用を妨害するDR6抗体に結合するDR6のドメインを特定するために、DR6欠失構築物を発現する細胞を作り出した。欠失構築物はMycのタグを付けた。調べた構築物には、配列番号2(#123)のアミノ酸168−189;配列番号2(#124)のアミノ酸134−168;配列番号2(#134)のアミノ酸109−131;配列番号2(#234)のアミノ酸49−108;配列番号2(#12)のアミノ酸133−189;配列番号2(#34)のアミノ酸49−131;及び配列番号2(#23)のアミノ酸49−108と168−189の欠失が含まれた。
FACS解析を用いて欠失構築物のそれぞれが細胞で発現していることを明らかにした(図28A)。その後、組換え細胞から得られた試料を、抗Myc抗体又は抗DR6抗体によって免疫沈降した。ウエスタンブロットによってp75について免疫沈降物をアッセイし、その結果は、抗体5D10がDR6のCys3とCys4ドメイン(アミノ酸133〜189)に結合することを示した(図28B)。抗体2A9はDR6のCys1ドメイン(アミノ酸49〜131)に結合する(図28B)。DR6抗体のパネルのDR6欠失構築物への結合もアッセイした(図28C)。結果は、5D10と4A4はDR6のCys3とCys4ドメインに結合し、2A9,1D6及び2F2はDR6のCys1ドメインに結合することを明らかにした。
実施例31
DR6のTNFR−Cysリピート3はp75に結合する
p75に結合するDR6のドメインを特定するために、実施例30に記載されたDR6欠失構築物を発現する細胞をp75への結合についてアッセイした。組換え細胞をp75と共にインキュベートし、次いで抗Myc抗体を用いて細胞溶解物を免疫沈降させた。ウエスタンブロットによってp75のレベルを評価し、結果は、DR6のCys3とCys4のドメイン(アミノ酸133〜189)の欠失がp75と相互作用するDR6の能力の低下を生じることを明らかにした。
本発明は、本発明の個々の態様の単一の説明として意図される特定の実施形態による範囲に限定されることはなく、機能的に同等である任意の組成物又は方法は本発明の範囲内である。実際、本明細書で示され、記載されるものに加えて本発明の種々の改変は、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
本明細書で言及された出版物及び特許出願はすべて、各個々の出版物又は特許出願が参照によって具体的に且つ個々に組み入れられることが示されるかのように、同程度に参照によって本明細書に組み入れられる。
要旨及び要約の区分ではなく詳細な説明の区分は特許請求の範囲を解釈するのに使用されることが意図されることが十分に理解されるべきである。要旨及び要約の区分は本発明者(ら)によって熟考されたすべてではないが1以上の例となる実施形態を示すことができるので、本発明及び添付の特許請求の範囲を決して限定するものではない。