JP5771440B2 - ガソリン組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ガソリン組成物に関し、より詳しくは、2−ブチルアルコールを含有するガソリン組成物に関する。
化石燃料起源の温室効果ガスによる地球温暖化が大きな社会問題とされて以来、従来の石油由来のガソリンに比して地球温暖化への影響が小さいガソリンが提案され、上市されてきた。
この種のガソリンとしては、カーボンニュートラルの概念、すなわち、植物中の炭素が比較的近い過去の大気中の二酸化炭素から固定されたことから、植物由来の燃料は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を増加させることにならないという考えのもと、植物由来の基材を従来の石油由来ガソリンへ混合することによって、燃料消費による地球温暖化への影響を低減する、いわゆるバイオガソリンの開発が集中的になされてきた。
しかしながら、このようなバイオガソリンは、運転性能において種々の問題が報告されている。例えば、代表的なバイオガソリン基材であるエチルアルコール(エタノール)は、従来ガソリンに混合した際、蒸気圧を上昇させ、高温時の使用に適さない他、水分混入時の相分離によるエンジンの不具合も懸念されている(例えば、特許文献1、2)。
他方、既に日本において導入されているバイオガソリン基材であるエチル−tert−ブチルエーテル(ETBE)は、このような懸念は小さいものの、従来ガソリンへ混合した際に酸化安定性を低下させるため、長期貯蔵中にガソリン内に蟻酸や酢酸などの有機酸が生成し、貯蔵施設や自動車の金属部品を腐食する可能性が懸念されている(例えば、特許文献3)。
一方、含酸素化合物(ETBE)を混合しただけでは、CO2低減効果が十分ではないという問題がある(例えば特許文献4)。
そこで、CO2の低減効果が大きい低炭素のガソリンであって、地球温暖化緩和へ貢献するとともに、従来ガソリンと同等またはそれ以上の運転性能を持つバイオガソリンの出現が要望されている。
特開2004−238576号公報 特開昭61−037896号公報 特開2007−270038号公報 特開2007−284646号公報
本発明は、二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に低減するなど環境性能に優れるとともに、運転性が良好であり、リード蒸気圧(RVP)の上昇や酸化安定性の低下を克服し、長期貯蔵後においても酸化安定性が良好であり、さらには優れた耐摩耗性を有するガソリン組成物を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、環境対応型のバイオガソリンにおいて、ガソリン基材と種々の運転性能との関係を鋭意検討した結果、2−ブチルアルコールをガソリン基材に配合し、ガソリン組成物を特定の性状に調整することによってその目的を達成できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
〔1〕2−ブチルアルコールを5〜25容量%と沸点範囲が70〜150℃である脱硫重質ナフサを5〜25容量%、及び前記脱硫重質ナフサ以外のガソリン基材を含有してなり、かつ下記の(1)〜(8)の要件を満たすガソリン組成物、
(1)リサーチ法オクタン価が89以上93未満
(2)硫黄分が10質量ppm以下
(3)芳香族分が15容量%以下
(4)ベンゼン含有量が1.0容量%以下
(5)オレフィン分が30容量%以下
(6)リード蒸気圧(RVP)が60〜90kPa
(7)密度(15℃)が、0.700g/mL以上
(8)30%留出温度が40〜85℃、50%留出温度が70〜100℃、70%留出温度が95〜125℃、かつ90%留出温度が110〜170℃
〔2〕さらに、以下の(9)及び(10)から選ばれる少なくとも1の要件を満たす上記〔1〕に記載のガソリン組成物。
(9)水素原子と炭素原子のモル比〔H/C〕が2.00〜2.40
(10)酸素原子と炭素原子のモル比〔O/C〕が0.01〜0.05
〔3〕炭素数7のノルマルパラフィン分と炭素数8のノルマルパラフィン分の合計が2容量%以上であって、かつ、炭素数7のノルマルパラフィン分と炭素数8のノルマルパラフィン分の合計量を、酸素原子と炭素原子のモル比〔O/C〕で除して100倍した値が1.00〜2.50である上記〔1〕又は〔2〕に記載のガソリン組成物、
〔4〕2−ブチルアルコールがバイオマス由来の2−ブチルアルコールである上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のガソリン組成物、
〔5〕JIS K−2287による酸化安定度が1000分以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のガソリン組成物、
〔6〕JPI−5S−98に規定する方法において、試験温度25℃とした時の75分経過時の摩耗痕径が800μm以下である上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のガソリン組成物、
〔7〕酸化防止剤を組成物全量基準で1〜100質量ppm含有する上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のガソリン組成物、
に関する。
本発明によれば、2−ブチルアルコール、特にバイオマス由来の2−ブチルアルコールを配合することにより二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に低減し環境性能に優れるとともに、運転性が良好であり、従来のバイオガソリン基材であるエタノールやETBEを配合したバイオガソリンの欠点であるリード蒸気圧(RVP)の上昇や酸化安定性の低下を克服し、長期貯蔵後においても酸化安定性が良好であり、さらには優れた耐摩耗性等の潤滑性を有するガソリン組成物を提供することができる。
また、本発明により、酸化防止剤の配合量を著しく低減できるガソリン組成物を提供することができる。
高温運転性試験における試験モードを示す図である。
[ガソリン組成物]
本発明のガソリン組成物は、2−ブチルアルコールを5〜25容量%と沸点範囲が70〜150℃である脱硫重質ナフサを5〜25容量%、及前記脱硫重質ナフサ以外のガソリン基材を含有する。
本発明のガソリン組成物における2−ブチルアルコールの含有量が5容量%以上であれば、ガソリン組成物中の含酸素化合物の効果として、CO2の排出量低減効果が得られるとともに、耐摩耗性(潤滑性)及び酸化安定性を向上させることができる。また、2−ブチルアルコールの含有量が25容量%以下であれば、エンジンの空燃費の制御が困難になることはなく運転性能を良好に保つことができる。
上記の点から、2−ブチルアルコールの含有量は、5〜23容量%であることがより好ましく、5〜22容量%であることが特に好ましい。
本発明で使用する2−ブチルアルコールの製造方法については、特に制限はなく、公知のいかなる方法によって得られる2−ブチルアルコールであっても使用が可能である。例えば、2−ブチルアルコールの製法として、2−ブテンの水和による公知の方法が挙げられる。また、さとうきびやとうもろこしなどのバイオマスを発酵して得られた2−ブチルアルコールであれば、カーボンニュートラルの概念から、地球温暖化緩和の面で好ましい。
本発明のガソリン組成物は、さらに、沸点範囲が70〜150℃である脱硫重質ナフサ(DHN)を5〜25容量%含有する。2−ブチルアルコールの存在下で、このようなDHNを含有することにより、2−ブチルアルコールが有するCO2の排出量を削減する等の効果を一層高めることができる。
本発明で用いるDHNは、沸点範囲が70〜150℃であるものである。沸点範囲が前記範囲外のものを使用すると、目的とする効果が充分に得られないことがある。沸点範囲が70℃以上であれは、ガソリン組成物の蒸留性状が軽質化し過ぎることを防止する効果がある。また、150℃以下であれば、ガソリン組成物の蒸留性状が重質化し過ぎることを防止する効果があり、ガソリン組成物の蒸留性状を適切に調整できる。このようなことから、沸点範囲の下限は、80℃がより好ましい。一方、沸点範囲の上限は、145℃がより好ましく、140℃がさらに好ましい。
また、DHNの硫黄分は。通常1質量ppm以下のものを使用する。
本発明で用いるDHNの含有量については、5〜25容量%であることを要する。
DHNの含有量が5容量%未満では、CO2の排出量を低減する等の効果が充分に得られないことがあり、一方、DHNの含有量が25容量%を超えると、ガソリン組成物の良好な蒸留性状を保てない恐れがあり、良好な運転性能を得られない恐れがある。このようなことから、DHNの含有量は、5〜20容量%であることが好ましい。
本発明のガソリン組成物は、上記DHN以外のガソリン基材を含有する。DHN以外のガソリン基材を含有することによって、ガソリン組成物の性状や組成を調整し、CO2の排出量の低減や運転性能の向上など各種性能を高めることができる。
本願発明におけるDHN以外のガソリン基材は、通常、原油を各種精製処理して得られる石油留分であり、代表例としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサや前記軽質ナフサを脱硫処理して得られる脱硫軽質ナフサ、接触分解法や水素化分解法で得られる分解ガソリン、前記分解ガソリンを蒸留分離して得られる軽質分解ガソリンや重質分解ガソリン、接触改質法で得られる改質ガソリン中のベンゼンを取り除いた留分(脱ベンゼン改質ガソリン)、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加して得られるアルキレート、直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレート(異性化ガソリン)、脱N―パラフィン油、及びこれらの特定範囲の留分や芳香族炭化水素などが挙げられる。
本発明のガソリン組成物におけるガソリン基材は、これらの各種ガソリン基材を単独で用いてもよいが、各種性能を満たすため、通常、複数のガソリン基材を組み合わせたガソリン基材を用いる。
そのような、複数のガソリン基材を組み合わせたガソリン基材としては、例えば、脱硫軽質ナフサ(DLN)、分解ガソリン(FG)、軽質分解ガソリン(LFG)及び、脱ベンゼン改質ガソリン(PGPZ)を含むガソリン基材、又は、さらにアルキレート(ALG)、ブタン(BS)及びブテン留分(BB)などを含むガソリン基材が挙げられる。
この場合の各基材の配合割合は、ガソリン組成物基準で、DLN;0〜15容量%、FG;0〜50容量%、LFG;5〜30容量%、PGPZ;0〜20容量%、ALG;5〜60容量%、BS;0〜10容量%及びBB;0〜10容量%であるものが好ましい。
本発明のガソリン組成物は、既述のとおり、2−ブチルアルコールを5〜25容量%と沸点範囲が70〜150℃である脱硫重質ナフサ5〜25容量%、及び前記脱硫重質ナフサ以外のガソリン基材とを含有してなり、かつ(1)〜(8)の要件を満たすものである。以下、これら(1)〜(8)の要件について説明する。
(1)リサーチ法オクタン価
本発明のガソリン組成物は、リサーチ法オクタン価(RON)が89以上93未満であることを要する。RONが89以上であれば、ノッキングを生じないなど運転性能が良好となる。一方、RONの上限値は性能面からは特に制限はないが、93未満であれば、市販のレギュラーガソリン仕様車にそのまま使用できる点で好ましい。上記の点から、本発明のガソリン組成物のRONは90以上であることが好ましい。なお、このRONは、JIS K 2280「石油製品−ガソリン−オクタン価及びセタン価試験方法ならびにセタン指数算出方法」により測定した値である。
(2)硫黄分
本発明のガソリン組成物は、硫黄分が10質量ppm以下であることを要する。硫黄分が10質量ppm以下であれば、排ガス触媒の耐久性に優れ好ましい。上記の点から、硫黄分は、5質量ppm質量以下であることが好ましく、3質量ppm以下であることが更に好ましい。なお、この硫黄分は、JIS K 2541−2「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に従って測定した値である。
(3)芳香族分
本発明のガソリン組成物は、その芳香族分が15容量%以下であることを要する。芳香族分が15容量%以下であれば、ガソリン中の炭素濃度が低下し、排気ガス中のCO2が大幅に削減でき、点火プラグがくすぶりを生ずる恐れが小さく、また、運転性能を良好に保つことができる。上記の点から、本発明のガソリン組成物における芳香族分は、14容量%以下であることがより好ましい。なお、芳香族分は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法で測定した値である。
(4)ベンゼン含有量
本発明のガソリン組成物は、ベンゼン含有量が1.0容量%以下であることを要し、好ましくは0.5容量%以下である。ベンゼン含有量が1.0容量%以下であれば、排気ガス中のベンゼン含有量が少なくなり、環境汚染が問題になる恐れがなく好ましい。また、ガソリン自体が人体に悪影響を及ぼす恐れも少ない。なお、ベンゼン含有量は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
(5)オレフィン分
本発明のガソリン組成物においては、オレフィン分が30容量%以下であることを要し、好ましくは25容量%以下である。オレフィン分が30容量%以下であれば、排気ガス中の窒素酸化物が低減され、例えば、大気中に蒸発したガソリンがオゾンを生成する恐れも少ない。さらにガソリン自体の酸化安定性も良好である。なお、オレフィン分は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
(6)リード蒸気圧
本発明のガソリン組成物は、リード蒸気圧(RVP)が60〜90kPaであることを要し、好ましくは62〜87kPaである。RVPが60kPa以上であると十分な低温始動性が得られ、RVPが90kPa以下であると排気ガス中の炭化水素が増加することなく、またベーパーロック現象により運転性能の低下を招くことがない。なお、RVPは、JIS K 2258−1「原油及び石油製品−蒸気圧の求め方」によって測定した値である。
(7)密度
密度(15℃)は、0.700g/mL以上であることを要し、好ましくは0.705g/mL以上であることが好ましい。密度が0.700g/mL以上であれば、良好な燃費を維持することができる。また、密度は、0.740g/mL以下であることが好ましい。0.740g/mL以下であれば、CO2の排出量が増大する恐れがない。なお、上記密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法」によって測定した値である
(8)蒸留性状
本発明のガソリン組成物は、以下の蒸留性状を有することを要し、( )内に示す蒸留性状であることが、さらに好ましい。
30%留出温度(T30):40〜85℃ (45〜80℃)
50%留出温度(T50):70〜100℃ (75〜95℃)
70%留出温度(T70):95〜125℃ (100〜120℃)
90%留出温度(T90):110〜170℃ (115〜165℃)
T30、T50、T70及びT90が上記の範囲内にあれば、低速から高速までの広範囲の運転で、加速性が良好であるなど運転性能を良好に保つことができる。
なお、上記T30、T50、T70及びT90は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
本発明のガソリン組成物は、さらに以下の(9)〜(10)から選ばれる少なくとも1の要件を満たすことが好ましい。これらの要件の1以上を満たすことによって、2−ブチルアルコールの存在下で、CO2の排出量を低減する等の効果をさらに高めることができる。
(9)水素原子と炭素原子のモル比〔H/C〕
H/Cは、2.00〜2.40であることが好ましく、2.05〜2.30であることがより好ましい。H/Cが、2.00以上であれば、炭素濃度の低下等により、CO2の発生を低減することができる。一方、H/Cが、2.40以下であれば、蒸留性状が軽質化し過ぎて運転性能が低下する恐れがない。
なお、上記H/Cは、ガソリン組成物中の炭素分の質量%及び水素分の質量%をJIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定し、原子量で質量%を除した値の比から求めた値である。
(10)酸素原子と炭素原子のモル比〔O/C〕
O/Cは、0.01〜0.05であることが好ましく、0.02〜0.05であることがより好ましい。O/Cが、0.01以上であれば、炭素濃度の低下等により、CO2の発生を低減することができる。一方、O/Cが、0.05以下であれば、発熱量低下による燃費が悪化する恐れがない。
なお、上記O/Cは、ガソリン組成物中の炭素分の質量%及び酸素分の質量%をJIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定し、原子量で質量%を除した値の比から求めた値である。
本発明のガソリン組成物は、炭素数7のノルマルパラフィン分(n−C7p)と炭素数8のノルマルパラフィン分(n−C8p)の合計が2容量%以上であって、かつ、C7pとC8pの合計量を、酸素原子と炭素原子のモル比〔O/C〕で除して100倍した値が1.00〜2.50であることが好ましい。C7pとC8pの合計量が2容量%以上であって、かつ、n−C7pとn−C8pの合計量をO/Cで除して100倍した値が前記範囲であれば、リサーチ法オクタン価(RON)を適正に維持した上で、蒸留性状が軽質化することを防止でき、かつ密度の低下も防止できるため燃費を向上させることができる。
上記n−C7pとn−C8pの合計量が2容量%以上のガソリン組成物は、主として脱硫重質ナフサ(DHN)の配合量を調整することによって得ることができる。
なお、n−C7pとn−C8pは、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、JIS K 2287「ガソリン酸化安定度試験法(誘導期間法)」により測定した酸化安定度が、1000分以上であることが好ましい。酸化安定度が1000分以上であれば、優れた酸化安定を有することで、貯蔵中にガムを発生する恐れがなく好ましい。上記の点から、酸化安定度は、1100分以上であることがより好ましく、1200分以上であることが更に好ましい。
本発明のガソリン組成物は、酸化防止剤を含有するまでもなく酸化安定性は良好であるが、酸化防止剤を含有することでさらに酸化安定性を増すことができる。本発明において好ましい酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、及びアミノフェノール系酸化防止剤が挙げられる。このような酸化防止剤を含有すれば、耐摩耗性を維持しつつ、酸化安定性を向上させることができる。このようなフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2、6−ジ−tert−ブチルフェノール)などのtert−アルキルフェノール等が挙げられる。
また、アミン系酸化防止剤の具体例としては、N,N’−ジセカンダリーブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−P−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミンが挙げられ、アミノフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−P−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)などのtert−アルキルアミノフェノール等が挙げられる。
これらの中でも、上記の効果の点で2,6−ジ−tert−ブチルフェノールやN,N’−ジセカンダリーブチル−P−フェニレンジアミンが好ましい。
このような酸化防止剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。また、酸化防止剤の好適な含有量は、通常1〜100質量ppmであるが、2−ブチルアルコールを含有する本発明においては、1〜20質量ppmに低減することが好ましく、特に1〜10質量ppmであることがより好ましい。
本発明のガソリン組成物は、耐摩耗性等の潤滑性に優れ、具体的には、JPI−5S−98に規定する「軽油−潤滑性試験方法」に準拠し、試験温度を25℃で行った潤滑性試験において、潤滑状態が良好である。本発明でいうJPI−5S−98「軽油―潤滑性試験方法」に準拠した潤滑性試験方法とは、実質的にはJPI−5S−98に規定する方法において、試験温度60℃を25℃にすると共に、ガソリン等の潤滑性試験の摩擦、摩耗状態を測定する方法である。
この場合、試験温度を25℃とするのは、試料であるガソリンの引火を考慮したものである。
本発明のガソリン組成物においては、上記の潤滑性試験における、試験時間75分経過後における摩耗痕径が800μm以下であることが好ましく、790μm以下であることがより好ましく、750μm以下であることが更に好ましい。この摩耗痕径が800μm以下であるガソリンは、耐摩耗性が良好であり、燃料ポンプの摺動部の摩耗を効果的に抑制するものである点で好ましい。
本発明のガソリン組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、シッフ型化合物やチオアミド型化合物などの金属不活性剤、脂肪酸、脂肪酸エステルなどの潤滑性向上剤,有機リン化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄剤、多価アルコール及びエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両面界面活性剤などの帯電防止剤、アルケニルコハク酸エステルなどのさび止め剤、キリザニン、クマリンなどの識別剤、天然精油、合成香料などの着臭剤、アゾ染料などの着色剤など、公知のガソリン添加剤が挙げられ、これらの添加剤を一種又は二種以上添加することができる。また、これら添加剤の添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量としてガソリン組成物に対して0.1質量%以下とすることが好ましい。
[ガソリン組成物の製造方法]
本発明のガソリン組成物の製造方法としては、例えば、前記ガソリン基材に、2−ブチルアルコールをガソリン組成物に対して5〜25容量%、及び沸点範囲が70〜150℃である脱硫重質ナフサをガソリン組成物に対して5〜25容量%含有するように配合して、前述の性状等の要件(1)〜(8)を満たすように調製して製造することができる。
本発明のガソリン組成物の調製に用いる2−ブチルアルコール、脱硫重質ナフサ、ガソリン基材及び必要に応じて用いる酸化防止剤の内容並びにそれらの好ましい配合量は、前述の通りである。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、ガソリン基材及びガソリン組成物の性状、組成およびガソリン組成物の性能は次の方法に従って求めた。
〔性状・組成〕
(1)リサーチ法オクタン価(RON)
JIS K 2280により測定した。
(2)密度(15℃)
JIS K 2249により測定した。
(3)蒸留性状
JIS K 2254により測定した。
(4)芳香族分、ベンゼン分、オレフィン分、パラフィン分、炭素分、水素分、酸素分の各含有量
JIS K 2536−2により測定した。
(6)硫黄分含有量
JIS K 2541−2に準拠して測定した。
(7)リード蒸気圧(RVP)
JIS K 2258に準拠して測定した。
〔性能〕
(8)潤滑性
石油学会規格JPI−5S−98に規定する方法において、試験温度60℃を25℃にすると共に、試験時間75分経過時における摩耗痕径を測定した。
(9)酸化安定度
JIS K 2287により測定した。
(10)運転性能
(a)低温運転性(デメリット点数)
低温運転性に影響を受け易い燃料供給システムがキャブレターである第1表に示す諸元Aの車両を用い、シャーシダイナモメータにて低温での運転性を評価した。
評価試験は、室内温度を−10℃として、試験モードを、ヘジテーション評価モード(2005年石油製品討論会:「ガソリンの蒸留性状(T50)が車両運転性に与える影響の検討」P17 ガソリン分科会 運転性調査委員会)に準拠して、下記(i)、(ii)の手順により行った。
(i)水温及び油温が−10℃となるように車両を冷却した後、エンジン始動後10秒間アイドリングし、アクセル開度50%で加速して車速が40km/hに達した後、減速して停止した。
(ii)引き続き、合計20回まで加速と減速を繰り返した。
運転性能は、デメリット点数で評価した。デメリット点数の測定は、前記評価試験の1回目から20回目の加速中において、CRC(Coordinating Research Council)Report No.483に記載される評価方法に準拠して評価した。
具体的には、第2表に示す運転性能上の不具合が発生した場合に、第2表に示す不具合の程度に応じたデメリット評点と、同じく第2表に示す不具合の種類に応じた係数を乗じて、デメリット点数を算出し、全項目を合計してデメリット点数を算出した。なお、アイドリング時及び走行中ストールはこのような乗算を行わずに、単純に不具合の種類に応じた係数を最終的に加算した。
デメリット点数が小さいほど低温運転性が優れていることを示し、70以下であれば良好な低温運転性を示すと評価できる。
Figure 0005771440
Figure 0005771440
(b)高温運転性
低温運転性の評価と同様に、燃料供給システムがキャブレターである第1表に示す諸元Aの車両を用い、シャーシダイナモメータにて、CRC(Coordinating Research Council)Report No.490に記載される評価方法に準拠して評価した。
評価条件は、室内温度を35℃、湿度を50%として、高速走行(平坦路)及び登坂走行(5%勾配)について評価した。なお、試験モードは、石油学会揮発性試験(高温運転性試験)に準拠して第1図に示す試験モードで行い、第3表に示す自動車工業会評価基準に準拠して評価した。
但し、上記評価基準のアイドル安定性の評価については、アイドルリング継続性(アイドリング停止の有無)を加えて評価した。
評価結果は、全ての評価内容について良好な場合を「○」、いずれかが不良である場合を「×」とした。
Figure 0005771440
(11)燃費(燃料消費率)の測定
第4表に示す諸元Bの車両を用いて、「TRIAS 5−9−2007軽・中量車燃料消費率試験方法」に準拠し、走行モードJC08Hにおいて、環境温度25℃、環境湿度50%で、排出ガスのCO、CO2、NOx、THCの各濃度の測定を行った。なお、燃費の算出には、供試試料の炭素重量比が反映可能なJIS D 1012「自動車−燃料消費率試験方法」のカーボンバランス法を適用した。
Figure 0005771440
(12)CO2排出量
第4表に示す諸元Bの車両を用いてCO2排出量を測定した。運転条件及び測定方法は、上記燃費を測定した運転条件及び測定方法の通りである。
実施例1〜6及び比較例1〜5
第5表に示すガソリン基材及び下記の化合物を用いて、第6表に示す割合でガソリン基材及び2−ブチルアルコール、脱硫重質ナフサ等を配合し調製したガソリン組成物の性状、組成及び性能を第6表に示す。第5表及び第6表において、FGは分解ガソリン、LFGは軽質分解ガソリン、PGPZは脱ベンゼン改質ガソリン、DLNは脱硫軽質ナフサ、DHNは脱硫重質ナフサ、BSはブタン、ALGはアルキレート、2−BuOHは2−ブチルアルコール、EtOHはエチルアルコール、を表す。また、酸化防止剤としてはフェノール系とアミン系の混合物2質量ppmを添加して各性能を評価した。
Figure 0005771440
Figure 0005771440
Figure 0005771440
第6表から明らかなように、実施例1〜6のガソリンは、CO2の排出量が少なく、かつ潤滑性が良好であって、酸化安定度も優れており、運転性の良好なガソリンであることが分かる。一方、2−ブチルアルコールと脱硫重質ナフサの含有量、芳香族含有量、密度や蒸留性状等のいずれかを満たさない比較例は、CO2の排出量、燃費、酸化安定性、運転性いずれかについて、良好な性能が得られない。
本発明によれば、二酸化炭素の排出量を低減するという環境性能に優れるとともに、運転性能、酸化安定性、さらには耐摩耗性に優れるガソリン組成物を得ることができる。従って、本発明のガソリン組成物は、内燃機関用ガソリンとして好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 2−ブチルアルコールを5〜25容量%と沸点範囲が70〜150℃である脱硫重質ナフサ5〜25容量%、及び前記脱硫重質ナフサ以外のガソリン基材を含有してなり、かつ下記の(1)〜(10)の要件を満たし、
    炭素数7のノルマルパラフィン分と炭素数8のノルマルパラフィン分の合計が2容量%以上であって、かつ、炭素数7のノルマルパラフィン分と炭素数8のノルマルパラフィン分の合計量を、酸素原子と炭素原子のモル比〔O/C〕で除して100倍した値が1.00〜2.50であり、
    エチルターシャリーブチルエーテルを含有しない、ガソリン組成物。
    (1)リサーチ法オクタン価が89以上93未満
    (2)硫黄分が10質量ppm以下
    (3)芳香族分が11.0容量%以下
    (4)ベンゼン含有量が1.0容量%以下
    (5)オレフィン分が30容量%以下
    (6)リード蒸気圧(RVP)が60〜90kPa
    (7)密度(15℃)が0.700g/mL以上
    (8)30%留出温度が40〜85℃、50%留出温度が70〜100℃、70%留出温度が95〜125℃、かつ90%留出温度が110〜170℃
    (9)水素原子と炭素原子のモル比〔H/C〕が2.00〜2.40
    (10)酸素原子と炭素原子のモル比〔O/C〕が0.01〜0.05
  2. 2−ブチルアルコールがバイオマス由来の2−ブチルアルコールである請求項に記載のガソリン組成物。
  3. JIS K−2287による酸化安定度が1000分以上である、請求項1又は2に記載のガソリン組成物。
  4. JPI−5S−98に規定する方法において、試験温度25℃とした時の75分経過時の摩耗痕径が800μm以下である請求項1〜のいずれかに記載のガソリン組成物。
  5. 酸化防止剤を組成物全量基準で1〜100質量ppm含有する請求項1〜のいずれかに記載のガソリン組成物。
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