JP4790425B2 - ガソリン組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ガソリン組成物に関し、より詳しくはリーンバーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンにおいて、リッチスパイクによるストイキ燃焼時においても、粒子状物質の排出量を低減し得る新規なガソリン組成物に関する。
燃料消費改善を目的として、リーン(希薄)バーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンが実用化されている。
本エンジンシステムにおいては、希薄燃焼が実施されているが、排気ガス中の酸素濃度が高いため搭載されている三元触媒によりNOxを低減することができない。
したがって、NOxを一旦触媒に吸蔵させ、その後、リッチスパイクによるストイキ燃焼法により、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を発生させ、NOxを還元することにより浄化している。
また、リーンバーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンでは、希薄燃焼時の排気ガス中の粒子状物質(PM)の排出量は少ないが、リッチスパイクによるストイキ燃焼時に、排気ガス中のPMの排出量が増大することが知られており、このような条件における環境汚染対策が必要である。
一方、排気ガス中の一酸化炭素(CO)を低減するために、ガソリンに含酸素化合物を配合することが広く検討されており、特にエチルアルコール(ETOH)が注目されている。
このETOHを含む含酸素化合物を配合したガソリンはPMを低減できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1を含めた公知技術においては、リーンバーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンにおける、リッチスパイクによるストイキ燃焼時においても、PMを低減する技術については何も開示していない。
したがって、リーンバーン燃焼からストイキ燃焼に切り替わった条件下においてもPMを低減するガソリンの開発が望まれている。
特開2005−54102号公報
本発明は、このような状況下でなされたもので、リーンバーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンにおける、リッチスパイクによるストイキ燃焼時においても、排気ガス中の粒子状物質(PM)を低減することができるガソリン組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、特定の組成を有するガソリンにエチルアルコールを配合することによってその目的を達成できることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
1.リサーチ法オクタン価が89〜105であって、エチルアルコールを0.5〜10容量%、芳香族分を45容量%以下、炭素数10以上の芳香族分を10容量%以下、ベンゼン含有量を1容量%以下、オレフィン分を25容量%以下、炭素数8以上のオレフィン分を0.5容量%以上含有し、かつ15℃における密度が0.71〜0.76g/cm3であることを特徴とするガソリン組成物、
2.エチルアルコール、並びにガソリン基材としてアルキレートガソリン、分解ガソリン、脱ベンゼン改質ガソリン及び脱硫軽質ナフサを用いて調製してなる前記1に記載のガソリン組成物、
3.50%留出温度が75〜105℃、70%留出温度が100〜135℃、90%留出温度が110〜175℃である前記1又は2に記載のガソリン組成物、
4.直接噴射式ガソリンエンジン用である前記1〜3のいずれかに記載のガソリン組成物、
を提供するものである。
本発明のガソリン組成物は、リーンバーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンにおいて、リッチスパイクによるストイキ燃焼時においても、排気ガス中の粒子状物質(PM)を低減することができるガソリン組成物である。
本発明のガソリン組成物は、リサーチ法オクタン価(RON)が89以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましい。
RONが89以上であれば、ノッキングを生じ運転性能が低下する恐れがない。
但し、プレミアム仕様では96以上が好ましい。
一方、RONの上限値は、通常105である。
なお、このリサーチ法オクタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」により測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、エチルアルコール(以下、「ETOH」と称することがある)を0.5〜10容量%、好ましくは1〜8容量%、より好ましくは2〜7容量%含有する。
ETOHの含有量が0.5容量%未満では、PMを低減する効果が充分に得られない。
一方、ETOHの含有量が10容量%を越えると、エンジンの空燃比制御が難しく、過度応答時のエンジン制御に影響を及ぼす恐れがある。
なお、ETOHの含有量は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
ETOHの製造方法については、特に制限はなく、いかなる製造法から得られるETOHも使用が可能である。
例えば、いわゆるバイオエタノール(さとうきびやとうもろこしの発酵など、バイオマスから製造したエタノール)であってもよい。
バイオエタノールを使用することは、CO2対策上好ましい。
本発明のガソリン組成物は、芳香族分が45容量%以下であることが好ましく、40容量%以下であることがより好ましく、35容量%以下であることがさらに好ましい。
芳香族分が45容量%以下であれば、排気ガス中の炭化水素(THC)や一酸化炭素(CO)が増大する恐れや、点火プラグがくすぶりを生ずる恐れがなく、運転性能を良好に保つことができる。
一方、芳香族分の下限については特に制限はないが、燃費が悪化したり、運転性能の低下を防止する観点から、5容量%以上であることが好ましい。
なお、芳香族分は、JIS K 2536−1「石油製品−成分試験方法」の蛍光指示薬吸着法で測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、炭素数10以上の芳香族分(以下、「C10+A」と称することがある)が10容量%以下である。
C10+Aが10容量%を越えると、PMを低減する効果が充分得られない。
C10+Aは5容量%が以下好ましく、2容量%以下がより好ましい。
なお、このC10+Aは、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、ベンゼン含有量が1容量%以下であることが好ましく、0.5容量%以下であることがより好ましい。
ベンゼンが1容量%以下であれば、排気ガス中のベンゼン含有量が少なくなり、環境汚染が問題になる恐れがない。
また、ガソリン自体の人体への影響も少なくなる。
なお、ベンゼン含有量は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、オレフィン分が25容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがより好ましい。
オレフィン分が25容量%以下であれば、排気ガス中の窒素酸化物が増加することがなく、大気中に蒸発したガソリンがオゾンを生成する恐れもない。
さらに、ガソリン自体の酸化安定性が悪化することもない。
また、オレフィン分の下限は10容量%であることが好ましい。
オレフィン分の下限が10容量%以上であると、希薄燃焼状態で失火を起こす恐れがなく、リーンバーン直接噴射式エンジン車の運転性能を確保できる。
さらに、上記オレフィン分中の炭素数8以上のオレフィン分(以下、「C8+O」と称することがある)は0.5容量%以上であることが好ましく、1.0容量%以上であることがより好ましく、1.5容量%以上がさらに好ましい。
炭素数8以上のオレフィン分が0.5容量%以上であると、運転性が良好である。
また、オレフィン分中の炭素数8以上のオレフィン分の上限は、10容量%であることが好ましい。
炭素数8以上のオレフィン分が10容量%以下であると、酸化安定性が良好である。
なお、オレフィン分(炭素数8以上のオレフィン分)は、JIS K 2536−2「石油製品成−分試験方法」で測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、15℃における密度が0.71〜0.76g/cm3である。
15℃における密度が0.76g/cm3を越えると、PMを低減する効果が充分得られないことがある。
また、15℃における密度が0.71g/cm3未満では、エンジンの出力低下や燃費の悪化を起し、好ましくない。
なお、ここでいう15℃における密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」によって測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、以下の蒸留性状を有することが好ましい。
50%留出温度(T50):75〜105℃(好ましくは78〜100℃)
70%留出温度(T70):100〜135℃(好ましくは105〜130℃)
90%留出温度(T90):110〜175℃(好ましくは110〜170℃)
蒸留終点(EP) :210℃以下(好ましくは、200℃以下)
T50、T70、T90及びEPが上記の範囲にあれば、加速性など運転性能を良好に保ち、また燃費を悪化させることもない。
なお、上記T50、T70、T90及びEPは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
本発明のガソリン組成物は、任意の方法で製造することができる。
例えば、ETOHとともに、次に示すガソリン基材を用いて調製することができる。
そのガソリン基材としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサ、接触分解法や水素化分解法で得られる分解ガソリン、接触改質法で得られる改質ガソリン中のベンゼンを取り除いた留分(脱ベンゼン改質ガソリン)、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加して得られるアルキレートガソリン、直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られる異性化ガソリン(アイソメレート)、脱n―パラフィン油、及びこれらの特定範囲の留分や芳香族炭化水素などが挙げられる。
本発明のガソリン組成物の好ましい製造方法(配合例)としては、下記のものが挙げられる。
(1)脱ベンゼン改質ガソリン 0〜70容量%
(2)分解ガソリン 0〜80容量%
(3)軽質分解ガソリン 0〜55容量%
(4)アルキレートガソリン 0〜40容量%
(5)軽質ナフサ 0〜30容量%
(6)ブタン、LPG 0〜15容量%
(7)ETOH 0.5〜10容量%
本発明のガソリン組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。
このような添加剤としては、フェノール系やアミン系などの酸化防止剤、シッフ型化合物やチオアミド型化合物などの金属不活性剤、有機リン化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄剤、多価アルコール及びエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両面界面活性剤などの帯電防止剤、アルケニルコハク酸のエステルなどのさび止め剤、キリザニン、クマリンなどの識別剤、天然精油、合成香料などの着臭剤、アゾ染料などの着色剤など、公知のガソリン添加剤が挙げられ、これらの添加剤を1種又は2種以上添加することができる。
また、これら添加剤の添加量は状況に応じて適宜選定すればよいが、通常は添加剤の合計量としてガソリン組成物に対して0.1質量%以下とすることが好ましい。
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
なお、ガソリン組成物の性状及び性能は次の方法に従って求めた。
〔ガソリン組成物の性状〕
・リサーチ法オクタン価
JIS K 2280に従って測定した。
・芳香族分、オレフィン分(炭素数8以上のオレフィン)、ベンゼン、炭素数10以上の芳香族分
これらについては、JIS K 2536−2に従って測定した。
・蒸留性状
JIS K 2541に従って測定した。
・密度
JIS K 2249に従って測定した。
〔PM排出量及び加速時間増加割合〕
(使用した車両)
4気筒直接噴射リーンバーン式ガソリン車
排気量 2.5L
(PM排出量の測定)
供試エンジンを60km/hで15分走行した後に、10・15モードで走行させ、暖機運転を行なった。その後、0→60km/hまで段階的に速度を上げ、60km/hに達した後、PM排出量を測定した。
PM排出量の測定は、PM排出量の代表値として110nmの粒子の個数をPMの計測装置SMPS(Scanning Mobility Particle Sizer)により、次の手順により測定した。
SMPSの設定を110nmに固定し、110nmにおけるPM排出量(個/cm3)を10回スキャンし、得られたリッチスパイク時の平均値より、リッチスパイク時に発生する110nmのPM排出量を得た。
・計測条件
希釈装置:マイクロトンネル
温度:25℃
湿度:50%
希釈比:25
(加速時間増加割合の測定)
加速時間増加割合は、以下の手順により測定した。
燃料供給システムがキャブレターである車両を用い、シャーシーダイナモメーターで評価した。
加速時間増加割合は、シャーシーダイナモ室温温度を20℃として、下記(1)及び(2)により、t1及びt2を測定し、これらの測定値から(3)により算出した。
(1)水温及び油温度が20℃となるように車両を冷却した後、アクセル開度50%において、エンジン回転数が3000rpmになるまでのアイドリングを継続的に行い、次に、水温50〜60℃においてアイドリングを行い、エンジン回転数が3000rpmに達するまでの時間(t1)を測定した。
(2)水温及び油温度が80℃となるように車両を暖めた後、アクセル開度50%で加速を行い、エンジン回転数が3000rpmに達するまでの時間(t2)を測定した。
(3)下記式により、加速時間増加割合を算出した。
加速時間増加割合(%)=〔(t1−t2)/(t2)〕×100
市販のレギュラーガソリンの加速時間増加割合(8%)と比較し、3%以上加速時間が増加した場合を、加速時間が悪化したと判定した。
実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例1
第1表に示したガソリン基材を用いて、第2表に示す割合で混合して、ガソリン組成物を調製し、その性状・組成及び性能を第2表に示す。
なお、第1表、及び第2表中のFGは質分解ガソリン、PGPZは脱ベンゼン接触改質ガソリン、PG(C10+A)は炭素数10以上の芳香族留分、ALKはアルキレートガソリン、ETOHはエチルアルコール、DLNは脱硫軽質ナフサを示す。
Figure 0004790425
Figure 0004790425
本発明のガソリン組成物によれば、リーンバーン燃焼タイプの直接噴射式エンジンにおいて、リッチスパイクによるストイキ燃焼時においても、排気ガス中の粒子状物質(PM)を低減することができる。したがって、環境汚染を防止し得るガソリンとして有用である。

Claims (4)

  1. リサーチ法オクタン価が89〜105であって、エチルアルコールを0.5〜10容量%、芳香族分を45容量%以下、炭素数10以上の芳香族分を10容量%以下、ベンゼン含有量を1容量%以下、オレフィン分を25容量%以下、炭素数8以上のオレフィン分を0.5容量%以上含有し、かつ15℃における密度が0.71〜0.76g/cm3であることを特徴とするガソリン組成物。
  2. エチルアルコール、並びにガソリン基材としてアルキレートガソリン、分解ガソリン、脱ベンゼン改質ガソリン及び脱硫軽質ナフサを用いて調製してなる請求項1に記載のガソリン組成物。
  3. 50%留出温度が75〜105℃、70%留出温度が100〜135℃、90%留出温度が110〜175℃である請求項1又は2に記載のガソリン組成物。
  4. 直接噴射式ガソリンエンジン用である請求項1〜3のいずれかに記載のガソリン組成物。
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