JP5426238B2 - ガソリン組成物 - Google Patents
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特に、温室効果ガスとして二酸化炭素の発生を低減することが求められていることに関し、カーボンニュートラルの概念、すなわち、植物中の炭素は比較的近い過去の大気中の二酸化炭素から固定されたことを考慮すれば、植物由来の燃料は大気中の二酸化炭素濃度を増加させることにならないと考えられることから、植物由来の基材を従来の石油由来ガソリンへ混合する、いわゆるバイオガソリンの開発が集中的になされてきた(例えば、特許文献1〜3参照)。
例えば、代表的なバイオガソリン基材であるエタノールやエチル−tert−ブチルエーテル(ETBE)を混合したガソリンは低温での運転性能が悪化し、特にガソリンの蒸留性状における50容量%留出温度(T50)が80℃以下、及び110℃以上である場合に運転性能が悪化することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、夏場の常温運転において、エタノールを混合したガソリンは、特に重質なガソリンである場合は、運転性能が悪化することが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
つまり、単に、カーボンニュートラルの概念を利用したバイオガソリンは、地球温暖化緩和に貢献するものの、種々の運転条件下に亘って自動車の運転性能を向上させることができるガソリン組成物は得られないのが現状である。
さらに、エタノールを混合したバイオガソリンでは、油槽所や給油所の貯蔵タンクや自動車の燃料タンクに水分が混入すると相分離が生じ均質なガソリンが供給できなくなる問題もある。
したがって、二酸化炭素排出量を低減し地球温暖化緩和に貢献すると同時に、自動車の運転性能を一層向上させることができるバイオガソリンの出現が要望されている。
すなわち、本発明は、
1.(A)エチル−tert−ブチルエーテルおよび(B)2−ブチルアルコールを含有するガソリン組成物であって、(A)成分と(B)成分の含有量の合計が、ガソリン組成物全量基準で、酸素分として0.3〜3質量%である、リサーチ法オクタン価が89以上96未満のガソリン組成物、
2.下記式(I)の条件を具備する上記1に記載のガソリン組成物、
0.1≦a/(a+b)≦0.7 ・・・(I)
〔式中、a、bは、それぞれ(A)エチル−tert−ブチルエーテル、(B)2−ブチルアルコールの含有量(容量%)を示す。〕
3.前記エチル−tert−ブチルエーテルがバイオマス由来のエタノールより製造されたエチル−tert−ブチルエーテルであり、前記2−ブチルアルコールがバイオマス由来の2−ブチルアルコールである上記1又は2に記載のガソリン組成物、
4.さらに以下の(1)〜(6)を満たす上記1〜3のいずれかに記載のガソリン組成物、
(1)硫黄分含有量が10質量ppm以下
(2)芳香族分含有量が10〜35容量%
(3)ベンゼン含有量が1.0容量%以下
(4)オレフィン分含有量が10〜30容量%
(5)リード蒸気圧(RVP)が55〜90kPa
(6)50%留出温度(T50)が90〜115℃、70%留出温度(T70)が105〜155℃、90%留出温度(T90)が135〜175℃、
を提供するものである。
(A)成分と(B)成分とを含有することによって、加速性能などの運転性能を向上することができる。
本発明で使用するエチル−tert−ブチルエーテルおよび2−ブチルアルコールについては、特に制限はなく、いかなる方法によって得られるエチル−tert−ブチルエーテルおよび2−ブチルアルコールであっても使用が可能である。
例えば、(A)エチル−tert−ブチルエーテルの製造方法としては、エタノールとイソブテンから酸触媒を用いて合成する方法が、(B)2−ブチルアルコールの製造方法としては、2−ブテンの水和による製造方法が公知の製造方法として挙げられる。
前記(A)エチル−tert−ブチルエーテルの製法で用いるエタノールとして、いわゆるバイオマス由来のエタノール、すなわち、例えばとうもろこし、さとうきび、その他の農産物の副産物、または木質資源や木質系廃棄物を発酵し蒸留して得られるエタノールを用い、それを(残油)流動接触分解装置から得られるイソブテンと反応させて得られるエチル−tert−ブチルエーテルを用いることが、カーボンニュートラルの概念を利用した、地球温暖化緩和に貢献できるため好ましい。
また、前記(B)2−ブチルアルコールの製造方法として、同じくバイオマス由来の2−ブチルアルコール、すなわち、例えばとうもろこし、さとうきび等を発酵し蒸留して得られる2−ブチルアルコールを用いることが、カーボンニュートラルの概念を利用した、地球温暖化緩和に貢献できるため好ましい。
(A)成分と(B)成分に起因する酸素分がガソリン組成物全量基準で、0.3質量%未満では、運転性能の向上効果が充分でないことがあり、またカーボンニュートラルの概念による地球温暖化の緩和に貢献する程度が充分ではない。
一方、(A)成分と(B)成分に起因する酸素分が3質量%を越えると、燃料系統の金属の腐食やゴム部材の膨潤が生ずる恐れがあって好ましくない。
上記の点から、(A)成分と(B)成分に起因する酸素分は、0.4質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。また、(A)成分と(B)成分に起因する酸素分は、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましい。
なお、酸素分はJIS K 2536−2「石油製品成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法で測定した値である。
0.1≦a/(a+b)≦0.7 ・・・(I)
式中、a、bは、それぞれガソリン組成物中における(A)エチル−tert−ブチルエーテル、(B)2−ブタノールの含有量(容量%)を示す。
したがって、式(I)の〔a/(a+b)〕は、ガソリン組成物に含まれる(A)成分と(B)成分合計混合量の(A)成分(エチル−tert−ブチルエーテル)の割合を示す。
この値の上限は、自動車の暖機過程での運転性能悪化を抑制するなど観点から、0.7以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましい。また、〔a/(a+b)〕の下限値は、水が混入した際の含酸素成分の相分離を防ぐ観点から、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
上記の点から、本発明のガソリン組成物のRONは90以上であることが好ましい。なお、このRONは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法ならびにセタン指数算出方法」により測定した値である。
(1)硫黄分含有量が10質量ppm以下であること。
ガソリン組成物中の硫黄分含有量が10質量ppm以下であれば、排ガス触媒の耐久性に優れ好ましい。したがって、硫黄分含有量は、5質量ppm以下であることがより好ましく、3質量ppm以下であることが更に好ましい。
なお、この硫黄分含有量は、JIS K 2541−2「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に従って測定した値である。
(2)芳香族分含有量が10〜35容量%であること。
ガソリン組成物の芳香族分含有量が35容量%以下であれば、排気ガス中の全炭化水素や一酸化炭素の増大を抑制でき、点火プラグがくすぶりを生ずる恐れが小さく、また運転性能を良好に保つことができる。一方、芳香族分含有量が10容量%以上であれば、リサーチ法オクタン価(RON)89以上を容易に保つことができ、運転性能が良好である。
上記の点から、ガソリン組成物における芳香族分含有量は、上限が30容量%以下がより好ましい。一方、下限については15容量%以上がより好ましく、20容量%以上が更に好ましい。
なお、芳香族分含有量は、JIS K 2536−2「石油製品成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法で測定した値である。
本発明のガソリン組成物は、ベンゼン含有量が1.0容量%以下であることが好ましく0.5容量%以下であることが更に好ましい。ベンゼン含有量が1.0容量%以下であれば、排気ガス中のベンゼン含有量が少なくなり、環境汚染が問題になる恐れがなく好ましい。また、ガソリン自体が人体に悪影響を及ぼす恐れも少ない。なお、ベンゼン含有量は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
(4)オレフィン分含有量が10〜30容量%であること。
2−ブチルアルコールを含有する本発明のガソリン組成物においては、オレフィン分を10容量%以上含有すれば、耐摩耗性が相乗的に向上する。また、オレフィン分含有量が10容量%以上であれば、希薄燃焼状態で失火する恐れがなく、直噴エンジン車などの運転性能を良好に保つ効果がある。
一方、オレフィン分含有量が30容量%以下であれば、排気ガス中の窒素酸化物が増加することがなく、大気中に蒸発したガソリンがオゾンを生成する恐れもない。また、オレフィン分含有量が30容量%以下であれば、ガソリン自体の酸化安定性が悪化する恐れも小さい。上記の点から、オレフィン分含有量は、10〜25容量%であることがより好ましい。
なお、オレフィン分含有量は、JIS K 2536−2「石油製品−成分試験方法」のガスクロマトグラフによる全成分試験方法によって測定した値である。
RVPが55kPa以上であれば、十分な低温始動性が得られ、一方、RVPが90kPa以下であれば、排気ガス中の全炭化水素が増加することなく、またベーパーロック現象により運転性能の低下を招く恐れがなく好ましい。したがってRVPは55〜75kPaであることがより好ましい。
なお、RVPは、JIS K−2258に準拠して測定した値である。
(6)50%留出温度(T50)が90〜115℃ 、70%留出温度(T70)が105〜155℃ 、90%留出温度(T90)が135〜175℃であること。
T50、T70及びT90が上記の範囲内にあれば、加速性など運転性能が良好に保たれ、また燃費を悪化させることも無く好ましい。
また、T50、T70及びT90は、下記の範囲であることがより好ましい。
50%留出温度(T50):95〜115℃
70%留出温度(T70):110〜145℃
90%留出温度(T90):140〜175℃
なお、上記T50、T70及びT90は、JIS K 2254−「石油製品―蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求めた値である。
ここで、ベースガソリンとしては、各種のガソリン基材を単独又は複数配合することにより調製することができる。そのようなガソリン基材としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサ、脱硫軽質ナフサ、接触分解法や水素化分解法で得られる分解ガソリン、接触改質法で得られる改質ガソリン中のベンゼンを取り除いた留分(脱ベンゼン改質ガソリン)、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加して得られるアルキレート、直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレート(異性化ガソリン)、脱n―パラフィン油、及びこれらの特定の沸点範囲の留分、芳香族炭化水素留分(トルエン、炭素数9の芳香族炭化水素留分:C9A、炭素数10以上の芳香族炭化水素留分:C10 +A)などが挙げられる。
(1)脱ベンゼン改質ガソリン 0〜60容量%(10〜60容量%)
(2)分解ガソリン 10〜90容量%(20〜80容量%)
(3)アルキレート 0〜60容量%( 0〜30容量%)
(4)芳香族炭化水素留分 0〜15容量%( 0〜10容量%)
(5)軽質分解ガソリン 0〜55容量%( 0〜60容量%)
(6)脱硫軽質ナフサ 0〜30容量%( 0〜20容量%)
(7)ブタン、LPG 0〜15容量%( 0〜10容量%)
(8)ETBE及び2−ブタノール 0.3〜3質量%(酸素分として)
上記(4)芳香族炭化水素留分は、トルエン、炭素数9の芳香族炭化水素留分(C9A)、若しくは炭素数10以上の芳香族炭化水素留分(C10 +A)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
また、アミン系酸化防止剤の具体例としては、N,N’−ジセカンダリーブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミンが挙げられ、アミノフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)などのtert−アルキルアミノフェノールが挙げられる。
これらの中でも、上記の効果の点で2,6−ジ−tert−ブチルフェノールやN,N’−ジセカンダリーブチル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
前記酸化防止剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。またその含有量は、通常100質量ppm以下であるが、2−ブチルアルコールは、酸化防止効果があるため、本発明においては、上記酸化防止剤の配合量を低減することができ、例えば20質量ppm以下、特に10質量ppm以下であることがより好ましい。
〔性状・組成〕
(1)リサーチ法オクタン価(RON)
JIS K 2280により測定した。
(2)密度
JIS K 2249に準拠して測定した。
(3)蒸留性状
JIS K 2254により測定した。
(4)芳香族炭化水素分及び飽和炭化水素分含有量
石油学会企画JPI−5S−49−97に準拠して測定した。
(5)ベンゼン分、オレフィン分、酸素分含有量
JIS K 2536−2により測定した。
(6)硫黄分含有量
JIS K 2541−2に準拠して測定した。
(7)リード蒸気圧(RVP)
JIS K 2258に準拠して測定した。
(1)加速性(加速時間増加率及び初期加速時間増加率)
燃料供給システムがキャブレターである車両を用い、シャシーダイナモメーターにて加速時間増加率及び初期加速時間増加率を測定した。加速時間増加率は加速性能を評価するものであり、初期加速時間増加率は、加速性能のうち、初期段階の加速性能を評価するものである。
測定は、室内温度を20℃として、下記(i)〜(vi)の手順により行った。
(i)水温及び油温が20℃となるように車両を冷却した後、エンジン始動後10秒間アイドリングし、アクセル50%開度において加速して車速が40km/時間に達するまでの時間(x1)とエンジン回転数が3500rpmに達するまでの時間(y1)を測定した。
(ii)減速して停止した後、同様にx2およびy2を測定した。
(iii)引き続き、計20回まで加速と減速を繰り返し、x3〜x20およびy3〜y20を測定した。
(iv)速度60km/時間にて20分間走行後、エンジンを停止し、上記と同様に加速し、計30回目加速時の加速時間としてx30およびy30測定した。
(v)各加速時間に対して、下式により各加速回数での加速時間増加率Xnおよび初期加速時間増加率Bnを算出した。
加速時間増加率Xn(%)=[(xn−x30)/x30]×100
(n=1,2,・・・,20)
初期加速時間増加率Yn(%)=[(yn−y30)/y30]×100
(n=1,2,・・・,20)
X1〜X5の平均値を加速時間増加率X、Y1〜Y5の平均値を初期加速時間増加率Yとした。
加速時間増加率Xn及び初期加速時間増加率Ynは、ともに小さいほど加速性は優れており、加速時間増加率は、増加率が13%以下が良好であり、12%以下が特に良好である。また初期加速時間増加率は、20%以下が良好であり、17.5%以下が特に良好である。
運転性能は、デメリット点数で評価した。デメリット点数の測定は、上記(1)の実験における1回目から20回目までの加速中において、CRC(Coordinating Research Concil)Report No.483に記載される評価方法に準拠して評価した。
評価内容としては、表1に示す運転性能上の不具合が発生した場合に、表1に示す不具合の程度に応じたデメリット評点と、表2に示す不具合の種類に応じた係数を乗じ、最終的に全項目を合計してデメリット点数を算出した。なお、アイドル時及び走行中ストールはこのような乗算を行わず、単純に不具合の種類に応じた係数を最終的に加算した。
デメリット点数が小さい程性能が優れていることを示し、70以下であれば良好であり、40以下であれば特に良好である。
第3表に示した、脱ベンゼン改質ガソリン(PGPZ)、分解ガソリン(FG−AおよびFG−B)、炭素数9を主体とする芳香族炭化水素留分(C9A)、アルキレート(ALK)、トルエン留分(TOL)、ブテン留分(BB)、エチル−tert−ブチルエーテル(ETBE)、2−ブチルアルコール(2−BuOH)を第4表に示す割合で混合して、その性状・組成及び性能を第4表に示す。
Claims (3)
- (A)エチル−tert−ブチルエーテルおよび(B)2−ブチルアルコールを含有するガソリン組成物であって、(A)成分と(B)成分の含有量の合計が、ガソリン組成物全量基準で、酸素分として0.3〜3質量%であり、下記式(I)の条件を具備する、リサーチ法オクタン価が89以上96未満のガソリン組成物。
0.3≦ a/(a+b)≦0.7 ・・・(I)
〔式中、a、bは、それぞれ(A)エチル−tert−ブチルエーテル、(B)2−ブチルアルコールの含有量(容量%)を示す。〕 - 前記エチル−tert−ブチルエーテルがバイオマス由来のエタノールより製造されたエチル−tert−ブチルエーテルであり、前記2−ブチルアルコールがバイオマス由来の2−ブチルアルコールである請求項1に記載のガソリン組成物。
- さらに以下の(1)〜(6)を満たす請求項1又は2に記載のガソリン組成物。
(1)硫黄分含有量が10質量ppm以下
(2)芳香族分含有量が10〜35容量%
(3)ベンゼン含有量が1.0容量%以下
(4)オレフィン分含有量が10〜30容量%
(5)リード蒸気圧(RVP)が55〜90kPa
(6)50%留出温度(T50)が90〜115℃、70%留出温度(T70)が105〜155℃、90%留出温度(T90)が135〜175℃
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