JP5769090B2 - プロジェクションボルトの溶接方法 - Google Patents

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Description

この発明は、軸部と、この軸部と一体的に形成された拡径部と、この拡径部の中央に配置された溶着用突起によって構成されたプロジェクションボルトを、重合された薄板と厚板に溶接する方法に関するものである。
特許第3921611号公報には、2枚重ねの鋼板部品に、軸部と、この軸部と一体的に形成された拡径部と、この拡径部の中央に配置された溶着用突起によって構成されたプロジェクションボルトを電気抵抗溶接で溶接することが記載されている。また、特許第4032313号公報には、1枚の鋼板部品に対して溶着用突起付きのプロジェクションボルトを電気抵抗溶接で溶接することが記載されている。さらに、丸善(株)発行の溶接学会編「溶接・接合便覧」第2版における361ページには、薄板と厚板を上部電極と下部電極によってスポット溶接をすることが記載されている。
特許第3921611号公報 特許第4032313号公報
丸善(株)発行の溶接学会編「溶接・接合便覧」第2版361ページ
特許文献1に記載されている技術は、2枚の鋼板部品の板厚が同じである。特許文献2に記載されている技術は、1枚の鋼板部品に溶着用突起付きのプロジェクションボルトを溶接するものである。さらに、非特許文献1に記載されている技術は、重合された薄板と厚板を両電極間でスポット溶接で一体化するものである。
これらの文献には、重合された薄板と厚板に対して、軸部と、この軸部と一体的に形成された拡径部と、この拡径部の中央に配置された溶着用突起によって構成されたプロジェクションボルトを、電気抵抗溶接で溶接することは記載されていない。同時に、厚薄2枚重ねの板材における溶接時の溶融金属の流動状態に関しては、何も触れられていない。
上述のような各文献を背景にして、溶着用突起と薄板と厚板の3者が良好な状態で溶着するためには、溶着用突起から厚板にいたる板厚方向の溶融域が十分に大きな状態になっている必要がある。ところが、溶着用突起と厚板の間に介在する薄板は溶融領域の体積が小さくて熱容量が小さいので、通電直後には直ちに板厚全体が溶融状態になり、厚板の溶融に及ぼす熱影響が十分に確保できないという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、溶融状態にある溶着用突起の蓄熱量を活用して、薄板、厚板に対して良好な溶融部を形成することができるプロジェクションボルトの溶接方法の提供を目的 とする。
請求項1記載の発明は、雄ねじが形成された軸部と、この軸部と一体的に形成され軸部の直径よりも大径とされた円形の拡径部と、前記軸部とは反対側の前記拡径部の中央部に形成された溶着用突起からなる電気抵抗溶接用のプロジェクションボルトを、重合された薄板とこの薄板よりも厚い厚板に対して溶接するものであって、
前記溶着用突起は、溶着用突起の端面に外周部が低くなるテーパ部を設けることによって形成された円錐型の初期溶融部と、この初期溶融部に連なった状態で形成された主溶融部によって形成され、
前記溶着用突起の体積は、前記溶着用突起に対応する薄板の部分の体積よりも大きく設定され、
前記溶着用突起を薄板に加圧して溶接電流を通電し、この通電時間は、前記初期溶融部が溶融を開始しそれに引き続く主溶融部の溶融が終了するまでの時間とされ、前記溶着用突起の体積が、前記溶着用突起に対応する薄板の部分の体積よりも大きく設定されていることによって、溶着用突起と薄板の溶融途上においてその溶融熱が、溶着用突起の加圧状況下において、薄板と厚板の接触部分から開始されている溶融部に伝熱され、溶着用 突起全体と薄板全体の溶融が完了するときには、溶着用突起と薄板の溶融部の熱を熱源にして、厚板の厚さ方向全域または全域に近い厚さ領域までの溶融域を形成して、前記溶着用突起と薄板と厚板を一体化することを特徴とするプロジェクションボルトの溶接方法である。
以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合がある。
溶着用突起を薄板に加圧して溶接電流を通電すると、溶着用突起と薄板の接触部および薄板と厚板の接触部分から溶融が開始される。溶着用突起と薄板の接触部の溶融域が板厚方向に拡大し、これによって溶着用突起全体と薄板の厚さ方向全体が溶融する。この溶着用突起と薄板の溶融途上においてその溶融熱が、溶着用突起の加圧状況下において、薄板と厚板の接触部分から開始されている溶融部に伝熱され、溶着用突起全体と薄板全体の溶融が完了するときには、溶着用突起と薄板の溶融部の熱が厚板の溶融部に十分に伝熱される。これによって、厚板の板厚方向の溶融域が拡大され、板厚方向の溶融深さが拡大される。このため、溶着用突起全体と薄板の厚さ方向全域と厚板の厚さ方向全域または全域に近い厚さ領域まで溶融域が形成される。
換言すると、溶着用突起の体積が溶着用突起に対応する薄板の部分の体積よりも大きく設定されているので、溶着用突起の溶融による蓄熱量が十分に確保でき、この蓄熱量を厚板の溶融深さが大きくなるように作用させている。
つまり、上記のような溶着用突起側の溶融進行に並行して、薄板と厚板の接触部分からも溶融が開始され、その溶融域は薄板側と厚板側に板厚方向に拡大してゆく。このような溶融拡大に対して、溶着用突起側の全域溶融が熱源のような存在になって厚板の方への溶融拡大が促進され、溶融範囲が溶着用突起全体と、薄板の厚さ方向全域と、厚板の厚さ方向全域または全域に近い厚さ領域までの溶融域となる。
薄板の熱容量が小さいので、それよりも大きな熱容量を有する溶着用突起の熱容量が支配的になって厚板の方へ及ぶこととなり、溶着用突起の体積を上記のように設定することによって、厚板における溶融深さを十分な値とすることができる。よって、ボルト(溶着用突起)と薄板・厚板の一体化板材の結合強度および薄板と厚板の結合強度を十分な値とすることができる。
さらに、溶着用突起の体積を上記のように設定することによって、溶着用突起の加圧力、溶接電流の電流値および通電時間の単純化された要素だけを溶接条件として設定すればよく、均一で良好な溶接品質が確保できる。そして、溶着用突起の蓄熱性を利用しているので、溶接電流の節電に効果的である。
ボルトが溶接される状態を示す断面図である。 溶融状態を段階的に示す断面図である。 溶着範囲と引っ張り試験後の状態を示す断面図である。 他のボルトの例を示す側面図である。 他のボルトの各部の体積区分状態を示す図である。 溶融状態を段階的に示す断面図である。
つぎに、本発明のプロジェクションボルトの溶接方法を実施するための形態を説明する。
図1〜図4は、本発明の実施例1を示す。
最初に、プロジェクションボルトについて説明する。
鉄製のプロジェクション溶接用ボルトの形状は、図1に示されている。このボルト1は、雄ねじ8が形成された軸部2と、この軸部2と一体的に形成され軸部2の直径よりも大径とされた円形の平板状の拡径部3と、前記軸部2とは反対側の拡径部中央に配置された円形の溶着用突起4によって構成されている。
溶着用突起4は、図1(B)に示すように、初期溶融部4Aと主溶融部4Bから構成されている。初期溶融部4Aは、溶着用突起4の端面に外周側が低くなる小さな傾斜角のテーパ部15を設けることによって形成された平たい形状の円錐形状部である。この初期溶融部4Aの中央部に尖った形状の頂部16が形成されている。そして、主溶融部4Bは初期溶融部4Aに連なった状態で形成されている。主溶融部4Bは、先端に向かって直径が小さくなるような円錐台型の形状であり、拡径部3の表面の付け根部分が基部5とされている。
ボルト1の各部の寸法は、軸部2の直径は10mm、拡径部3の直径と厚さはそれぞれ17mmと1.5mm、溶着用突起4の基部5すなわち溶着用突起4の付け根部分の直径(主溶融部4Bの基部の直径)は8mm、主溶融部4Bの先端側の直径は6.5mm、初期溶融部4Aの高さ(ボルトの軸線方向で見た高さ)は0.4mmである。テーパ部15の傾斜角度は、ボルト1の軸線と垂直の関係となっている仮想平面との狭角で示され、9度である。
つぎに、ボルトが溶接される鋼板部品について説明する。
ボルト1が溶接される相手方の板材としては、種々な材料のものがあるが、ここでは鋼板部品が形成される鋼板である。鋼板は2枚重ねとされ、薄板9とそれよりも厚い厚板20が重ねられている。薄板9の厚さは0.7mm、厚板20の厚さは1.2mmである。
図1(A)は、ボルト1が鋼板9、20に溶接される状態を示す断面図である。可動電極10は、エアシリンダまたは進退出力型の電動モータなど(図示していない)で進退動作をする。その端面中央部に可動電極10の軸線方向に受入孔11があけられ、その奥部に永久磁石12が取り付けてある。薄板9と厚板20は重合された状態で、可動電極10と同軸状態で配置された固定電極13上に載置されている。
作業者または部品供給装置の供給ロッドによって、軸部2が可動電極10の受入孔11に挿入され、永久磁石12で吸引されてボルト1が可動電極10に保持される。このときには、可動電極10の端面14が拡径部3の裏面に密着している。図1(A)は、ボルト1を保持した可動電極10が進出してきて、溶着用突起4が薄板9に加圧されている状態を示している。この状態で溶接電流が通電されて、薄板9と厚板20の溶接がなされる。
上述のような薄板9と厚板20の重合部にプロジェクションボルト1を溶接することは、自動車の車体各部において行われる。例えば、厚板20を屈曲させた長尺な骨格部材に薄板9を重合して、この重合箇所にボルト1を溶接するような場合である。このような構造によって、2枚の板材が一体化されるのとともに、その重合部にボルト1が溶接される。これにより、骨格部材は厚板20で高い強度を保有して車体剛性が確保され、薄板9は軽量化されたパネル材としての機能を果たす。
つぎに、溶着用突起と薄板の体積関係について説明する。
溶着用突起4の体積は、溶着用突起4に対応する薄板9の部分の体積よりも大きく設定されている。溶着用突起4に対応する薄板9の部分の体積は、図1(B)に示すように、溶着用突起4の直径とほぼ同じ直径の薄板9の円形部分であり、同図では鎖線でハッチングが施された部分である。この部分は符号21で示され、以下、「対応部分」と表現する。上記の薄板9の円形部分の直径は、上記基部5の部分の直径と同じであり、8mmである。
溶着用突起4の体積は、初期溶融部4Aと主溶融部4Bの体積を合算したものであり、前述の各寸法によって初期溶融部4Aは4.4mm、主溶融部4Bは37.3mmであり、合計41.7mmである。一方、前記対応部分21の体積は35.2mmである。したがって、溶着用突起4の体積は、対応部分21の体積よりも大きく設定されている。このような体積値関係においては、対応部分21の体積に対する溶着用突起4の体積の比は、1.18である。
つぎに、加圧通電条件について説明する。
薄板9に対する加圧力は3430N、電流値は9600A、初期加圧時間は60サイクル、通電時間は11サイクル、保持時間は30サイクルである。通電時間11サイクルは、初期溶融部4Aが溶融を開始しそれに引き続く主溶融部4Bの溶融が終了するまでの時間である。なお、1サイクルは1/60秒である。
以下に説明するように、上述の条件で良好な溶接が可能であるが、各条件の設定範囲は、加圧力は2000〜5000N、溶接電流は8000〜15000A、通電時間は5〜15サイクルとし、各条件を組み合わせて溶接する。
つぎに、溶着されて行く過程を説明する。
図1(A)は、溶着用突起4が薄板9に加圧されて、頂部16が薄板9の表面にわずかにめり込んでいる状態である。ここで溶接電流が通電されると、前記めり込んでいる箇所から溶融が開始され、図2(A)のような状態になる。なお、図2においては可動電極10と固定電極13の図示は省略してある。
図2(A)に示すように、溶着用突起4と薄板9の接触部および薄板9と厚板20の接触部分から同時に溶融が開始される。各溶融部はそれぞれ符号17と22で示されている。このような通電初期の段階で、頂部16から初期溶融部4Aの溶融が開始される。
図2(B)に示すように、通電初期の段階で溶融が進行すると、初期溶融部4Aがその全域にわたって溶融する。その溶融箇所は符号17で示されている。この頂部16から開始される溶融は、初期溶融部4Aのテーパ部15に傾斜角9度が付与されているので、加圧にともなって直径方向に放射状のほぼ平面的な溶融範囲が円形に拡大してゆく。つまり、傾斜角9度の角度が小さいので、わずかな溶融であっても通電面積が急増しそれにともなって電流密度は急減する。そのため、この段階では溶融拡大は熱容量の大きなボルト1の軸方向よりも直径方向に進行しやすくなる。なお、溶融部分,溶着部分,溶着箇所および溶融範囲は、溶融箇所と同義語であり、それらにも符号17と22が用いてある。
さらに加圧と通電が継続されると、溶着用突起4と薄板9の接触部の溶融域(溶融部17)が板厚方向に拡大し、これによって図2(C)に示すように、溶着用突起4全体と薄板9の厚さ方向全体が溶融する。この段階では、拡径部3と薄板9の間の間隙は小さくなっているが、密着はしていない。この溶着用突起4と薄板9の溶融途上においてその溶融熱が、溶着用突起4の加圧状況下において、薄板9と厚板20の接触部分から開始されている溶融部22に伝熱され、溶着用突起4全体と薄板9全体の溶融が完了するときには、溶着用突起4と薄板9の溶融部17の熱が厚板20の溶融部22に十分に伝熱される。
これによって、図2(D)に示すように、厚板20の板厚方向の溶融域が拡大され、板厚方向の溶融深さが拡大される。このため、厚板20の厚さ方向の全域に近い厚さまで溶融域が進行する。つまり、溶着用突起4の体積が対応部分21の体積よりも大きく設定されているので、溶着用突起4側の全域溶融が熱源のような存在になって、厚板20の方への溶融拡大が促進される。ここでは、1.2mm厚の厚板20において、溶融深さD1が1.0mmに達している。この段階では、拡径部3と薄板9は密着している。
溶接電流の電流値、通電時間、加圧力および溶着用突起4の体積の増減等を選定することによって、溶融部分を拡大することができる。図2(E)は、上記条件を選定することによって、厚板20の厚さ方向全域が溶融した状態を示している。
つぎに、溶接後のテスト状況について説明する。
上述の加圧通電条件で12本のボルト1を溶接した結果の平均的な状態が、図3に示されている。同図(A)は、薄板9と厚板20の密着面に沿って切断した図であり、この切断状態から明らかなように、溶融箇所17、22すなわち溶着箇所が溶着用突起4の直径とほぼ同じ大きさになっていることが認められる。この溶融箇所17、22の直径は、8.5〜9.0mmである。この直径の値は、溶着用突起4が完全に溶融して厚板20へ溶け込んでいることが認められ、正常であると判断される。
ボルト1の軸線方向で見た溶融範囲は、図2(D)に示す状態である。また、電流値を10000A〜10800Aにすると図2(E)に示す状態になり、いずれも溶融範囲としては適正であると判断される。
図3(C)に示すように、鋼板部品9、20を治具23、24で固定し、軸部2を軸方向に引っ張るテストの結果、図3(B)に示す破断状態となった。このように拡径部3側に溶着している薄板9の部分9Bが、剪断状態で薄板9から破断して抜け穴9Dの状態になっていることが認められる。同時に、厚板20においても厚板20の部分20Bが剪断状態で厚板20から破断して抜け穴20Dの状態になっていることが認められる。このように抜け穴9Dや20Dができるということは、溶融部分17、22が厚板20の厚さ方向に十分に及んでいるものと判断される。上記引っ張り荷重が8480〜8990Nの範囲で発生しており、このようなサイズのボルト1の溶接強度として十分であると判定される。
比較例として、上述の厚さの薄板9と厚板20を溶接対象にして、溶着用突起4の体積と対応部分21の体積を同じ値にしたものを、上述の加圧通電条件下で2本テスト溶接をした。それの引っ張り試験の結果が図3(D)に示されている。これによると、薄板9の部分9Bが、剪断状態で薄板9から破断して抜け穴9Dの状態になっている点は、上記実施例と同じであるが、厚板20には抜け穴が形成されず、部分9Bに厚板20から引きちぎられた突部9Cと、厚板20にも突部9Cに対応する凹部20Eが形成されていることが認められる。突部9Cと凹部20Eの直径は、部分9Bの直径の約1/3である。このような状態は、溶着用突起4の体積が不足しているので、厚板20に及ぶ溶け込み深さが不十分であると判断される。これの引っ張り試験の結果は、3200Nと3250Nであり、明らかに強度不足であることが認められる。
あるいは、軸部2に曲げ力を付与すると、拡径部3と薄板9は一体化されているが、薄板9と厚板20が剥離して、軸部2がぐらぐらする虞が生じる。
また、軸部2に回転力を付与する捩じ切り試験では、軸部2の長さ方向の中間付近で捩じ切れた。このときのトルクは、43〜48N・mであった。このように軸部2の中間部で捩じ切れるということは、溶着部分の捩れ強度が十分な値を有しているものと判定され、ナットの締め付けに十分耐えられるものと判断される。
以上に述べた引っ張り試験や捩じ切り試験の結果から見て、例えば、ボルト1によって自動車用スライドドアのガイドレールを取り付けたり、外装モールを取り付けたりするときの剛性として、十分な値であると判定される。
上述のような各部寸法であれば、対応部分21の体積に対する溶着用突起4の体積の比は、1.18である。この比は、1.05〜2.20の範囲に設定され、好ましくは1.15〜2.00であり、1.30〜1.80が良好である。1.05未満であると、厚板20への溶け込み深さが不十分になる虞がある。また、2.20を超えると、溶着用突起4の体積が大きくなり過ぎて、溶着用突起4を完全に溶融させるのに電流値や通電時間を増大させる必要が発生し、電力消費が不経済となったり、溶着用突起4の溶融量が過剰になって拡径部3側への過大溶融になったりする虞がある。なお、上記の比が1.18であると図2(D)に示す溶融範囲であり、1.40であると図2(E)に示す溶融範囲となっている。
上述の実施例においては、初期溶融部4Aがテーパ形状とされているが、これに換えて図4(A)に示す溶着用突起4にしてもよい。これは、テーパ形状ではなく、平坦面4Cとされている。この場合は、溶融開始までの時間が若干長くなるが、一旦溶融が開始されると平坦面4Cの全域で一気に溶融が進行することになる。一方、同図(B)に示すものは、平坦面4Cの中央部に小さな突起4Dが形成されたものである。こうすることによって、初期溶融の開始が短時間で確実になされる。
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
溶着用突起4を薄板9に加圧して溶接電流を通電すると、溶着用突起4と薄板9の接触部および薄板9と厚板20の接触部分から溶融が開始される。溶着用突起4と薄板9の接触部の溶融域が板厚方向に拡大し、これによって溶着用突起4全体と薄板9の厚さ方向全体が溶融する。この溶着用突起4と薄板9の溶融途上においてその溶融熱が、溶着用突起4の加圧状況下において、薄板9と厚板20の接触部分から開始されている溶融部22に伝熱され、溶着用突起4全体と薄板9全体の溶融が完了するときには、溶着用突起4と薄板9の溶融部の熱が厚板20の溶融部に十分に伝熱される。これによって、厚板20の板厚方向の溶融域22が拡大され、板厚方向の溶融深さが拡大される。このため、溶着用突起4全体と薄板9の厚さ方向全域と厚板20の厚さ方向全域または全域に近い厚さ領域まで溶融域が形成される。
換言すると、溶着用突起4の体積が溶着用突起4に対応する薄板9の部分、すなわち対応部分21の体積よりも大きく設定されているので、溶着用突起4の溶融による蓄熱量が十分に確保でき、この蓄熱量を厚板20の溶融深さが大きくなるように作用させている。
つまり、上記のような溶着用突起4側の溶融進行に並行して、薄板9と厚板20の接触部分からも溶融が開始され、その溶融域22は薄板9側と厚板20側に板厚方向に拡大してゆく。このような溶融拡大に対して、溶着用突起4側の全域溶融が熱源のような存在になって厚板20の方への溶融拡大が促進され、溶融範囲が溶着用突起4全体と、薄板9の厚さ方向全域と、厚板20の厚さ方向全域または全域に近い厚さ領域までの溶融域となる。
薄板9の熱容量が小さいので、それよりも大きな熱容量を有する溶着用突起4の熱容量が支配的になって厚板20の方へ及ぶこととなり、溶着用突起4の体積を上記のように設定することによって、厚板20における溶融深さを十分な値とすることができる。よって、ボルト(溶着用突起4)と薄板9・厚板20の一体化板材の結合強度および薄板9と厚板20の結合強度を十分な値とすることができる。
さらに、溶着用突起4の体積を上記のように設定することによって、溶着用突起4の加圧力、溶接電流の電流値および通電時間の単純化された要素だけを溶接条件として設定すればよく、均一で良好な溶接品質が確保できる。さらに、溶着用突起4の蓄熱性を利用しているので、溶接電流の節電に効果的である。
図5および図6は、本発明の実施例2を示す。
この実施例2は、前記溶着用突起4と拡径部3との間に塑性変形部7を介在したものである。
塑性変形部の形状について説明する。
図5に示すように、塑性変形部7は、溶着用突起4(主溶融部4B)と拡径部3との間の扁平な円形の金属材料部であり、その部分だけを抽出して示した断面形状が図5(B)である。傾斜面6の傾斜角に応じた厚さを有する中央部の円形の部分が、溶融部7Aである。この溶融部7A(基部5の箇所)から外周部に向かって厚さが次第にうすくなる環状の部分が、軟化部7Bである。この軟化部7Bの断面は、図5(B)に示すように、楔型である。
なお、傾斜面6の傾斜角度は、軸部2の軸線が垂直に交わっている仮想平面との間で形成される狭角を意味しており、ここでは9度である。溶着用突起4のテーパ部15の傾斜角度も、同様である。フランジ状の拡径部3と塑性変形部7と溶着用突起4によってボルト1の頭部が形成されている。前記傾斜面6が拡径部3の端面である。図5(A)には、傾斜面6の外周側に設けられた傾斜のない平面部3Aが図示され、これも拡径部3の端面である。
後述の溶融進行の説明から明らかなように、溶融部7Aは溶着用突起4の溶融にともなって溶融する。したがって、実施例2における溶着用突起4の体積は、前述の実施例1における溶着用突起4の体積に溶融部7Aの体積を合算したものである。
塑性変形部7の各部寸法は、塑性変形部7の直径が15mm、溶融部7Aの直径が8mm、溶融部7Aの厚さが0.3mmである。各部の体積は、溶融部7Aが15.1mm、軟化部7Bが18.9mmとなる。溶融部7Aの体積15.1mmを前記溶着用突起4の体積41.7mmに合算すると、この実施例における溶着用突起4の体積は56.8mmとなり、対応部分21の体積35.2mmに対する比は、1.61である。
つぎに、溶着されて行く過程を説明する。
加圧通電条件は、実施例1のものと同じであり、薄板9に対する加圧力は3430N、電流値は9600A、初期加圧時間は60サイクル、通電時間は11サイクル、保持時間は30サイクルである。通電時間11サイクルは、初期溶融部4Aが溶融を開始しそれに引き続く主溶融部4Bの溶融が終了するまでの時間である。なお、1サイクルは1/60秒である。
初期溶融部4Aおよび主溶融部4Bが溶融されて行く過程は、図6に示すように、図1(A)および図2にしたがって説明した実施例1と同じである。
つぎに、塑性変形部7の変形挙動について説明する。
上述の加圧および溶融の過程においては、次のような塑性変形部7の変形挙動がなされている。この変形挙動は、図6(E)および(F)に示されているが、理解しやすくするために、図(E)における傾斜面6の傾斜角度を大きく図示してある。なお、溶融箇所17をくわしく観察するために、溶融箇所17の部分を切断した。図(F)は、この切断面を示している。
塑性変形部7は、傾斜面6の傾斜角9度に応じた厚さを有する中央部の円形の溶融部7Aと、前記基部5から外周部に向かって厚さが次第にうすくなる環状の軟化部7Bとによって構成されている。溶着用突起4だけが溶融されても、それに連なる塑性変形部7の溶融部7Aも溶融状態になり、この溶融熱が軟化部7Bに伝熱されてこの部分が軟化する。加圧力は継続的に作用しているので、軟化部7Bの金属材料が中央の溶融部分22の方へ流動しながら、傾斜した拡径部3すなわち軟化部7Bの端面6が薄板9の表面9Aに密着してゆく。
上記の軟化部7Bの金属材料は、加圧によって外周側に流動しようとするが、その反力によって矢線7Cのように中央の変形性のある溶融部17、22の方へ流動し、前記密着がなされるのである。このとき中央の溶融部17、22に対して外周側から金属材料の流動圧が作用するので、溶融部17、22はボルト1の軸方向に拡大成長し、それによって厚板20側への溶融深さが増大する。この増大部分は、図6(E)に2点鎖線で示されている。そして、軟化部7Bは溶融部7Aに近い厚さの大きな部分の方が外周側に比して高温であるから、肉厚の大きな箇所の変形性が十分に得られ、溶融部17、22側への金属材料の流動が良好に確保できる。
上述のような塑性変形部7の溶融と変形挙動であるから、溶着用突起4の領域に限定された部分の溶融が形成され、しかも厚板20側への溶融深さが溶接強度面で十分な値になる。また、軟化部7Bは溶着用突起4や溶融部7Aの溶融熱で加熱されているので、その変形性が良好なものとなり、傾斜した拡径部3の端面6が薄板9の表面9Aに確実に密着する。
つぎに、溶接後のテスト状況について説明する。
上述の加圧通電条件と同じ条件で12本のボルト1を溶接した。その結果は、引っ張り試験や捩じ切り試験のいずれにおいても良好な値である。この実施例2では、溶融金属の厚板20への溶け込みが、溶着用突起4だけの溶け込みに加えて溶融部7Aの部分が加算された形になるので、引っ張り試験や捩じ切り試験のいずれにおいても、測定値は実施例1の値を上回っているとともに、図2(E)や図6(D)、(F)に示すように、厚板20の厚さ方向全域が溶融域となっている。
実施例2の作用効果においては、溶融金属の厚板20への溶け込みが、溶着用突起4だけの溶け込みに加えて溶融部7Aの部分が加算された形になっていることが利点として挙げられる。それ以外の作用効果は、先の実施例と同じである。
上述の実施例においては、溶接方法とプロジェクションボルトの区別なく説明をおこなっているが、両者とのほぼ同じ作用効果がえられる。
上述のように、本発明によれば、溶融状態にある溶着用突起の蓄熱量を活用して、薄板、厚板に対して良好な溶融部を形成することができるプロジェクションボルトの溶接方法である。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
1 プロジェクションボルト
2 軸部
3 拡径部
4 溶着用突起
4A 初期溶融部
4B 主溶融部
5 基部
7 塑性変形部
7A 溶融部
7B 軟化部
9 薄板
15 テーパ部
16 頂部
17 溶融部、溶融部分
20 厚板
21 対応部分
22 溶融部、溶融部分
D1 溶融深さ

Claims (1)

  1. 雄ねじが形成された軸部と、この軸部と一体的に形成され軸部の直径よりも大径とされた円形の拡径部と、前記軸部とは反対側の前記拡径部の中央部に形成された溶着用突起からなる電気抵抗溶接用のプロジェクションボルトを、重合された薄板とこの薄板よりも厚い厚板に対して溶接するものであって、
    前記溶着用突起は、溶着用突起の端面に外周部が低くなるテーパ部を設けることによって形成された円錐型の初期溶融部と、この初期溶融部に連なった状態で形成された主溶融部によって形成され、
    前記溶着用突起の体積は、前記溶着用突起に対応する薄板の部分の体積よりも大きく設定され、
    前記溶着用突起を薄板に加圧して溶接電流を通電し、この通電時間は、前記初期溶融部が溶融を開始しそれに引き続く主溶融部の溶融が終了するまでの時間とされ、前記溶着用突起の体積が、前記溶着用突起に対応する薄板の部分の体積よりも大きく設定されていることによって、溶着用突起と薄板の溶融途上においてその溶融熱が、溶着用突起の加圧状況下において、薄板と厚板の接触部分から開始されている溶融部に伝熱され、溶着用突起全体と薄板全体の溶融が完了するときには、溶着用突起と薄板の溶融部の熱を熱源にして、厚板の厚さ方向全域または全域に近い厚さ領域までの溶融域を形成して、前記溶着用突起と薄板と厚板を一体化することを特徴とするプロジェクションボルトの溶接方法。
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