JP5761628B2 - ナノコンポジット樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体モジュール素子に使用される絶縁封止樹脂硬化物を得るためのナノコンポジット樹脂組成物に関する。
近年、大容量、高電圧環境下でも動作可能なIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などのパワーモジュールが、民生用機器や産業用機器に広範に使用されている。これらの半導体素子を用いる各種のモジュール(以下、「半導体モジュール」という)の中には、搭載している半導体素子によって生成される熱が高温に達するものがある。その理由としては、半導体素子が扱う電力が大きい場合、半導体素子における回路の集積度が高い場合、または回路の動作周波数が高い場合などが挙げられる。この場合、半導体モジュールを構成している絶縁封止樹脂には、発熱温度以上のガラス転移温度(Tg)が必要となる。
Tgを向上させるためには、樹脂の分子運動を抑制することが有効である。このため、樹脂に、1〜99nmの粒径を有する無機ナノフィラーを混合する方法が用いられている(例えば特許文献1、特許文献2)。また、一般的には、無機フィラーと樹脂との結合を強くするために、シランカップリング剤が用いられている(例えば、非特許文献1、特許文献3)。
一方、半導体モジュールの絶縁封止樹脂には高耐熱性だけでなく、さまざまな物性が同時に要求され、例えば、曲げ弾性率や線膨張係数といった機械的物性、密着性、低吸湿性(低含水化)などの多くの要件を充足する必要がある。樹脂の用途によっては、さらに熱伝導率も重要な物性となる。
これらの物性のなかで、特に機械的物性や熱伝導率については、その特性の向上や制御を目的として、1〜99nmの粒径を有する第一の無機フィラーの他に、0.1〜100μmの粒径を有する第二の無機フィラーとしてAl(アルミナ)、MgO(マグネシア)を樹脂に混合して、ナノコンポジット樹脂を構成することが実施されている。このような従来技術によるナノコンポジット樹脂の模式図を図4に示す。従来技術によるナノコンポジット樹脂11は、1〜99nmの粒径を有する第一の無機フィラー13と、0.1〜100μmの粒径を有する第二の無機フィラー12と樹脂14とから構成されている。そして、上記の第一の無機フィラー13と第二の無機フィラー12と樹脂14との密着性を向上させるために、通常、シランカップリング剤が用いられている。
特開2009−292866号公報 特開2009−13227号公報 特開平11−35801号公報
シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社カタログ、2008年10月発行)
無機フィラーとしてAlやMgOを用いた場合、これらのフィラーは、SiO(シリカ)のフィラーと比較してシランカップリング剤の効果が得られにくい。すなわち、AlやMgOの無機フィラーと樹脂との界面で剥離が発生しやすくなることが分かった。そのため、機械的物性や熱伝導率について所望の特性が得られなかったり、制御することが困難になったりするという問題があった。また、無機フィラーと樹脂との界面の密着性が弱いために、ナノコンポジット樹脂の製造初期には無機フィラーと樹脂との界面が密着していても長期間の使用においてその界面で剥離が発生し、それに伴う特性変動・劣化、クラック発生などが生じ、長期の信頼性には問題があった。また、無機フィラーとしてTiO(チタニア)を用いた場合、さらには、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物を用いた場合も、上述のAlやMgOを用いた場合と同様な問題があった。
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、無機フィラーであるAl、MgO、TiOなどの金属酸化物またはAlNなどの金属窒化物と樹脂の密着性を向上させ、機械的物性や熱伝導率といった特性を向上させたり、制御したりできるようにすること、及び長期信頼性を確保することを目的とする。
本発明は、一実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれかまたはこれらの組み合わせからなる樹脂と、シランカップリング剤と、無機フィラーとを含み、前記無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラー、または、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーの少なくとも一方が、Al、MgO、TiOからなる群から選択される金属酸化物もしくはAlN、あるいはそれらの混合物からなる無機粒子であって、該無機粒子の表面に、SiOの被膜を形成してなるSiO被覆無機粒子である。
ここで、粒径とは、各々の無機粒子そのものの粒子の直径であり、各々の粒子を完全な球体と仮定した場合にその直径に相当する値である。粒径が1〜99nmの無機フィラーとは、最大粒径が99nm以下であり、最小粒径が1nm以上である一群の無機フィラーをいい、最大粒径及び最小粒径は、電子顕微鏡による観察で測定して得られた値をいう。同様に、粒径が100nm〜100μmの無機フィラーとは、最大粒径が100μm以下であり、最小粒径が100nm〜100μmである一群の無機フィラーをいう。いっぽう、フィラーの長径とは、例えば細長い針状粒子では長手方向の粒子の長さのことであり、電子顕微鏡による観察で測定して得られた値をいう。
ナノコンポジット樹脂組成物において、前記無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーがSiOからなる無機粒子を含み、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーが前記SiO被覆無機粒子を含むことが好ましい。
ナノコンポジット樹脂組成物において、前記無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、前記SiO被覆無機粒子であることが好ましい。
ナノコンポジット樹脂組成物において、前記無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーが、前記SiO被覆無機粒子を含み、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーが、SiOからなる無機粒子を含むことが好ましい。
前記SiOの被膜が、5〜20nmの厚みを有することが好ましい。
前記SiO被覆無機粒子が、水ガラス法により調製されることが好ましい。
前記SiO被覆無機粒子が、表面融合処理法により調製されることが好ましい。
前記SiO被覆無機粒子が、レーザーアブレーション法により調製されることが好ましい。
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
本発明は、別の局面によれば、ナノコンポジット樹脂硬化物であって、上記のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物である。
本発明に係るナノコンポジット樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物においては、第一の無機フィラーと樹脂との密着性のみならず、第二の無機フィラーと樹脂との密着性が向上しており、その結果、機械的物性や熱伝導率特性を向上させ、及びそれらの特性を制御することができるようになった。このようなナノコンポジット樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、絶縁材として長期信頼性を得ることが可能になる。
本発明に係るナノコンポジット樹脂を示す模式図である。 本発明に係るナノコンポジット樹脂を構成する、金属酸化物粒子表面にSiO被膜を形成してなる第二の無機フィラーを示す模式図である。 実施例1、2、及び比較例のナノコンポジット樹脂のヒートサイクル試験結果を示すグラフである。 従来技術及び比較例のナノコンポジット樹脂の様子を示した模式図である。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施の形態によって、限定されるものではない。
[第1実施形態]
本発明は、第1の実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、シランカップリング剤と、第一の無機フィラーと、第二の無機フィラーとを含んでなり、第二の無機フィラーが、Al(アルミナ)、MgO(マグネシア)、TiO(チタニア)からなる群から選択される金属酸化物、または、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなるSiO被覆無機粒子である。
本発明の以下のすべての実施形態において、第一の無機フィラーとは、フィラーを構成する化合物の種類を問わず粒径もしくは長径が1〜99nmの無機粒子をいう。また、同様に、第二の無機フィラーとは、フィラーを構成する化合物の種類を問わず粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機粒子をいうものとする。なお、ここでいうフィラーの粒径もしくは長径は、SiOの被膜を形成する前の値をいい、SiO被膜の厚みを含まないものとする。
ナノコンポジット樹脂組成物を構成する樹脂成分は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。
熱硬化性樹脂としては、ガラス転移温度[Tg]が比較的高く、誘電率が、約4〜7といった低誘電率のものを用いることができる。好ましい熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を挙げることができるが、これらには限定されない。樹脂成分が熱硬化性樹脂であるときは、樹脂成分は、熱硬化性樹脂主剤と、硬化剤と、必要に応じて硬化促進剤とを含む。硬化促進剤は、硬化反応を制御するために有効に用いることができる。
好ましい熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂の主剤としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂を、単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
熱硬化性樹脂の硬化剤は、熱硬化性樹脂主剤との関係で選択することができる。例えば、熱硬化性樹脂主剤として、エポキシ樹脂主剤を用いる場合には、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。特には、硬化剤としては、アミン硬化剤、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、酸無水物系、フェノールノボラック型、フェノールアラルキル、トリフェノールメタン型フェノール樹脂を用いることができるが、これらには限定されない。なお、エポキシ樹脂の硬化剤として、さらには、分子構造中に−NH、−NH、−NH、のいずれか一種、または複数の官能基が含まれる分子、または酸無水物を特に好適に使用することができる。具体的には、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジンなどのグアニジン系硬化剤、チオ尿素付加アミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジドなどのジヒドラジド系硬化剤、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化剤、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤およびそれらの異性体、変成体を用いることができる。また、硬化剤は、これらのうち1種のものを単独で用いることができ、あるいは、2種以上のものを混合して用いることができる。
硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等の芳香族フォスフィン類、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸、ホウ酸エステル等を用いることができるが、これらには限定されない。
硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂主剤のエポキシ当量及び硬化剤のアミン当量もしくは酸無水物当量から決定することができる。エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂主剤を用いる場合にも、同様に、各樹脂主剤の反応当量、硬化剤の反応当量に基づき、配合割合を決定することができる。また、硬化促進剤を用いる場合には、硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂主剤の重量を100%としたときに、0.1〜5重量%とすることが好ましい。
樹脂成分が熱可塑性樹脂であるとき、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を使用することができるが、これらには限定されない。
ナノコンポジット樹脂組成物を構成するシランカップリング剤は、樹脂成分と反応する官能基と、SiOと結合するアルコキシ基とを備えるものを使用することができる。例えば、樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合には、シランカップリング剤は、アミノ基、メルカプト基、またはエポキシ基を備え、かつアルコキシ基を備えることが好ましい。樹脂成分に、ポリイミド樹脂を用いる場合には、シランカップリング剤は、アミノ基とアルコキシ基とを備えることが好ましい。シランカップリング剤の添加量範囲は、フィラー重量に対して、例えば0.01〜30重量%とすることができるが、これに限定されるものではない。
第1実施形態において、第一の無機フィラーは、粒径もしくは長径が1〜99nmのSiO(シリカ)である。粒径もしくは長径が、5〜30nmであることが好ましく、10〜20nmであることがさらに好ましい。第一の無機フィラーの形状は、典型的には球形であるが、球形に限定されず、楕円形状、針状、板状のものであってもよい。第一の無機フィラーの形状が、球形ではない場合、長径が、上記のサイズの範囲内にあることが好ましい。この場合の粒径及び長径は、先に記載した電子顕微鏡による観察で測定して得られた値である。
あるいは、第一の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が1〜99nmのSiO(シリカ)であってもよい。第一の無機フィラーの平均粒径もしくは長径は、好ましくは、5〜30nmであり、さらに好ましくは、10〜20nmである。本明細書中、フィラーの平均粒径とは、BET法により測定して得られた値をいうものとする。また、ここでいう平均的な長径はレーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られた値である。
第一の無機フィラーは、多孔性(気孔率が70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または、95%以上)であってもよく、非多孔性(気孔率が70%未満、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下)であってもよい。
本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物における前記第一の無機フィラーの配合割合は、0.1〜7重量%あることが好ましい。なお、かかる配合割合(重量%)は、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の重量を100%としたときの重量%を表す。
第二の無機フィラーは、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機粒子である。粒径もしくは長径は、好ましくは、10〜100μmであり、さらに好ましくは、10〜60μmである。第二の無機フィラーの形状は、典型的には球形であるが、球形に限定されず、楕円形状、針状、板状のものであってもよい。第二の無機フィラーの形状が、球形ではない場合、粒径ではなく、長径が100nm〜100μmであることが好ましい。この場合の粒径及び長径は、先に記載した方法によって測定したものである。
あるいは、第二の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機粒子であってもよい。第二の無機フィラーの平均粒径もしくは長径は、好ましくは、10〜100μmであり、さらに好ましくは、10〜60μmである。
第1実施形態において、第二の無機フィラーは、金属酸化物または金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなる無機粒子である。金属酸化物は、Al、MgO、TiOから選択されることが好ましい。これらの金属酸化物は、樹脂のガラス転移温度[Tg]を高め、室温で高い電気絶縁性(1011Ω・m以上)を与え、ナノコンポジット樹脂の機械的物性や熱伝導率の特性の向上に寄与する。金属酸化物は、Al、MgO、TiOのうち、一種類であってもよく、これらの二種類以上を混合したものであってもよい。また、金属窒化物としては例えばAlNなどを使用することができる。AlNも、上述のAl、MgO、TiOと同様に、樹脂のガラス転移温度を高め、室温で、1011Ω・m以上の高い電気絶縁性を与え、ナノコンポジット樹脂の機械的物性や熱伝導率の特性の向上あるいは制御に寄与する。さらには、金属酸化物と金属窒化物とを混合して使用しても良い。
ここで、「金属酸化物または金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなる」とは、金属酸化物または金属窒化物の少なくとも一部がSiOの被膜で覆われており、シランカップリング剤と結合しうる状態にあればよい。例えば、SiOの被膜がドット状に形成されている形態であってもよい。また、金属酸化物または金属窒化物が球形状ではなく、楕円形状、針状、板状のものである場合には、表面積の広い側面のみがSiOの被膜で覆われていてもよい。好ましくは、金属酸化物または金属窒化物の表面積の半分以上、さらに好ましくは金属酸化物または金属窒化物の表面全体がSiOの被膜で覆われている。より好ましくは、金属酸化物または金属窒化物の表面全体が均一なSiOの被膜で覆われている。ここでいう均一とは、SiOの被膜の最大厚みと最小厚みの差が、4nm程度以下であることをいう。
SiO被膜の厚みは、第二の無機フィラーの粒径または長径にもよるが、一般的には、5〜20nmが好ましい。5nm未満だと、膜の均一性やSiOの構造からシランカップリング剤の結合への効果が小さくなる場合があり、20nm以上に厚くすると第二の無機フィラーを混合した効果が小さくなる影響が出る場合があるためである。
このような金属酸化物または金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなる無機粒子を、本明細書において、「SiO被覆無機粒子」と指称する。SiO被覆無機粒子は、市販品を用いても良いし、以下の方法で調製することもできる。
SiO被覆無機粒子を調製する方法の一例として、湿式被膜形成法、特には水ガラス法が挙げられる。水ガラス法においては、組成が、NaO・xSiO・nHO(x=2〜4)の水ガラスを水に溶解させて、水ガラス水溶液を調製し、水ガラス水溶液に、金属酸化物粒子または金属窒化物粒子を入れる。そして、この溶液に塩酸を加え、水ガラスを加水分解して、ゲル状のケイ酸(HSiO)を、金属酸化物粒子または金属窒化物粒子の表面に付着させることができる。水ガラスの添加量を、金属酸化物粒子に対し、SiO換算で0.05〜90重量%とすることで、5〜20nmの薄いSiO膜を形成することができる。かかる水ガラス法によるSiO被覆無機粒子の調製方法は、例えば特開2009-158802号公報に開示されている。この被膜形成方法では、後述の表面融合処理法、乾式成膜法による被膜形成方法と比較してより均一な膜を得ることが可能である。
SiO被覆無機粒子を調製する方法のまた別の例として、表面融合処理法が挙げられる。表面融合処理法においては、圧縮せん断型の機械式粒子複合化装置を用いることができる。この装置においては、粒径の大きい母粒子と、粒径の小さい子粒子の混合物を投入し、圧縮・せん断作用を機械的に繰り返し、母粒子上に子粒子を固着(融合)させることができる。本実施形態では、平均粒径が0.1〜100μmのAl、MgO、もしくはTiOの金属酸化物粒子、あるいは、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物粒子の重量100%に対し、平均粒径1〜20nmのSiO粒子を0.05〜90重量%で混合して機械式粒子複合化装置で処理することで、SiO被覆無機粒子を調製することができる。この被膜形成方法では、元々ナノサイズとなったSiO粒子は高温で製造されるため粒子自体の耐熱性が高いといえる。そのため、上述の水ガラス法による被膜形成方法に比べて被膜の耐熱性が高いことが期待され、被膜自体の耐熱性を上げたい場合には有利になる。
SiO被覆無機粒子を調製する方法のさらに別の例として、乾式成膜法が挙げられる。乾式成膜法には、均質な膜を金属酸化物粒子または金属窒化物粒子の表面に均一に形成することができる、蒸着法、スパッタ法、レーザーアブレーション法が挙げられ、いずれを使用することもできるが、特にはレーザーアブレーション法が好ましい。レーザーアブレーション法では、チャンバ内に配置した所定の容器に金属酸化物粒子または金属窒化物粒子を入れ、同容器を振動させ、同チャンバ内にあるSiOターゲットに、紫外線レーザーを照射する。このレーザーにより蒸発したSiOターゲットが、振動容器内の粒子に均一に付着し、5〜20nmの膜厚のSiO被覆を形成することができる。かかるレーザーアブレーション法によるSiO被覆無機粒子の調製方法は、例えば特開2009-164402号公報に開示されている。この被膜形成方法では、ターゲットと被膜の組成ずれが少ないため、上述の水ガラス法や表面融合処理法による被膜形成方法に比べて被膜の組成を制御しやすい。そのため、例えば別の添加元素の導入やSiO以外の酸化物との混合組成を持つ被膜を形成する場合にはその組成に合ったターゲットを用いれば良く、そういった観点では他の方法に比べより有利である。
第二の無機フィラーもまた、多孔性(気孔率が70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または、95%以上)であってもよく、非多孔性(気孔率が70%未満、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下)であってもよい。なお、ここでいう気孔率は、被膜の無い無機フィラー自体の気孔率のことである。
本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物における前記第二の無機フィラーの配合割合は、70〜85重量%であることが好ましい。配合割合(重量%)は、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の重量を100%としたときの重量%を表す。
本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物は、上記の樹脂成分と、シランカップリング剤と、第一の無機フィラーと、第二の無機フィラーとからなり、他の成分を含まないものであってもよい。あるいは、さらなる任意成分として、従来公知のガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維等の強化繊維を含んでいてもよい。その他、本発明の目的の範囲内でナノコンポジット樹脂組成物の物性を損なわない、その他の添加物を含んでいても良い。
本発明は、別の局面によればナノコンポジット樹脂硬化物であって、第1実施形態に係るナノコンポジット樹脂組成物を硬化してなる。
次に、本願発明のナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物を製造方法の観点から説明する。ナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物の製造方法は、第二の無機フィラーを調製する第1の工程と、熱硬化性樹脂主剤もしくは熱可塑性樹脂と、第一の無機フィラーと、第二の無機フィラーと、シランカップリング剤とを混合し、分散させる第2の工程と、熱硬化性樹脂硬化剤と、任意選択的に硬化促進剤とを混合する第3の工程と、第3の工程で得られた混合物を加熱硬化させる第4の工程とを備える。なお、第二の無機フィラーとして、市販品を使用する場合には、第1の工程を省くことができる。また、熱可塑性樹脂を用いる場合には、第3、第4の工程を省くことができる。
第1の工程は、上記第二の無機フィラーについて説明したSiO被覆無機粒子の調製方法に従って、Al、MgO、TiOなどの金属酸化物、または、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物にSiO被膜を形成する工程を実施することができる。
第2の工程として、熱硬化性樹脂主剤と、第一の無機フィラーと、第二の無機フィラーと、シランカップリング剤とを混合し、分散させる。熱硬化性樹脂主剤に変えて、熱可塑性樹脂を使用する場合も、この段階で混合する。分散には、市販の微粒化装置、粉体混合装置、もしくは超微粒子複合化装置を用いることができ、例えば、ナノマイザー株式会社製のナノマイザー(高圧湿式メディアレス微粒化装置)、ホソカワミクロン株式会社製のノビルタやナノキュラ等を用いることができるが、これらには限定されない。ナノマイザーを用いる場合の処理条件としては、処理圧力を100〜150MPaとし、5〜10分の処理を2〜5回繰り返すことで行うことができる。なお、処理圧力や処理時間は適宜変更することは可能である。
続く第3の工程は、分散させた混合物に、硬化剤と、任意選択的に硬化促進剤とを添加する工程である。第3の工程では、さらに手動撹拌により、分散させた樹脂混合物に、硬化剤と硬化促進剤を、混合することができる。
第4の工程は、前記硬化剤を添加した混合物を加熱し、硬化させる加熱硬化工程である。ここでは、通常の方法にしたがって、混合物を、熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度で加熱し、硬化させる。加熱は、例えばエポキシ樹脂の場合には、100〜250℃において、1〜20時間程度行うことが好ましい。なお、樹脂成分として、熱可塑性樹脂を使用する場合には、硬化剤の添加及び加熱の必要はない。
ナノコンポジット樹脂組成物を半導体モジュールの絶縁封止に用いる場合には、通常、ナノコンポジット樹脂硬化物は、半導体モジュールと一体になって製造される。よって、本発明は、別の局面によれば、半導体モジュールの製造方法をも提供する。半導体モジュールの製造方法は、具体的には、主として、金属ブロックと、絶縁層と、回路素子とを含んでなる半導体素子組立体を、金型内もしくはケース内に設置する工程と、前記第1、第2、第3の実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物を、金型内もしくはケース内で加熱硬化する工程とにより得ることができる。本発明のナノコンポジット樹脂硬化物の製造方法を用いて、半導体素子を封止することにより、生成される熱が高温に達する半導体素子であっても有効に封止することができ、好ましい絶縁破壊特性をも得ることができる。
[第2実施形態]
本発明は、第2の実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、樹脂成分と、シランカップリング剤と、第一の無機フィラーと、第二の無機フィラーとを含んでなり、第一の無機フィラー、第二の無機フィラーの両方が、Al、MgO、TiOからなる群から選択される金属酸化物、または、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなるSiO被覆無機粒子である。
第2の実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物において、樹脂成分、シランカップリング剤、第二の無機フィラーは、第1実施形態で説明したとおりであり、同様の形態とすることができる。
第2の実施形態においては、第一の無機フィラーもまた、Al、MgO、TiOから選択される金属酸化物、または、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなるSiO被覆無機粒子である。よって、第2の実施形態における第一の無機フィラーは、その粒径もしくは長径が1〜99nmであることを除き、その他の特徴は、第1実施形態における第二の無機フィラーと同様とすることができる。
第2の実施形態による樹脂組成物中の第一の無機フィラー、第二の無機フィラーの混合の割合もまた、第1実施形態と同様とすることができる。具体的には、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の重量を100%としたとき、第一の無機フィラーが、0.1〜7重量%、第二の無機フィラーが、70〜85重量%とすることができる。
第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物もまた、硬化することにより樹脂硬化物とすることができる。
第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物の製造方法もまた、第1実施形態において説明したのと概ね同様である。第2実施形態による組成物の製造方法においては、第1の工程で、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーであるSiO被覆無機粒子を調製する。粒径の異なる二つの金属酸化物粒子に別々に、水ガラス法、あるいは表面融合処理法、あるいはレーザーアブレーション法を実施し調製することができる。また、いっぽうあるいは両方を市販品とすることもできる。
第2の実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物は、第一の無機フィラー、第二の無機フィラーとも、SiO被覆無機粒子であり、そのため、SiO粒子に比べ熱伝導率の良い、Al、MgO、もしくはTiOの金属酸化物粒子、あるいは、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物粒子を使用することで第1の実施形態に比べ、熱伝導率をより向上させることが可能となる。特に第一の無機フィラーが樹脂内で微細に分散され、かつSiO被覆無機粒子であるため、熱伝導の均一性といった観点で有利となることが期待できる。
[第3実施形態]
本発明は、第3の実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、樹脂成分と、シランカップリング剤と、第一の無機フィラーと、第二の無機フィラーとを含んでなり、第一の無機フィラーが、Al、MgO、TiOからなる群から選択される金属酸化物、または、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物の表面にSiOの被膜を形成してなるSiO被覆無機粒子であり、第二の無機フィラーが、SiOである。
第3の実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物において、樹脂成分、シランカップリング剤は第1実施形態において説明したとおりであり、同様の形態とすることができる。また、第一の無機フィラーは、第2実施形態で説明したとおりであり、同様の形態とすることができる。
第3の実施形態において、第二の無機フィラーは、SiOである。よって、第3の実施形態における第二の無機フィラーは、その粒径もしくは長径が100nm〜100μmであることを除き、その他の特徴は、第1実施形態における第一の無機フィラーと同様とすることができる。
第3の実施形態による樹脂組成物中の第一の無機フィラー、第二の無機フィラーの混合の割合は、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の重量を100%としたとき、第一の無機フィラーが、0.1〜7重量%、第二の無機フィラーが、70〜85重量%とすることができる。
第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物もまた、硬化することにより樹脂硬化物とすることができる。
第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物の製造方法もまた、第1実施形態において説明したのと概ね同様である。第3実施形態による組成物の製造方法においては、第1の工程で、第一の無機フィラーであるSiO被覆無機粒子を調製する。
第3の実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物は、第一の無機フィラーがSiO被覆無機粒子であり、第二の無機フィラーがSiOであり、そのため、第2の実施形態と同じように均一な熱伝導性が期待できる。第二の無機フィラーにSiO粒子を適用しても熱・機械特性が十分であれば、高価なAlを使用しなくても良いという利点がある。また、熱・機械特性を調整するために第二の無機フィラーにSiO粒子を単独、あるいは、SiO被覆したAl、MgO、もしくはTiOの金属酸化物粒子、または、AlN(窒化アルミニウム)などの金属窒化物粒子との混合で使用する場合にも第3の実施形態を適用できる。
また、必要な特性に応じて第1、第2、第3の実施形態を適宜採用、あるいは組み合わせて使用することが可能である。
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明を限定するものではない。
[実施例1]
実施例1では、まず、第二の無機フィラーを調製した。第二の無機フィラーとしては、金属酸化物であるAlの表面にSiO膜を形成した。Alは、平均粒径が、30μmのものを用い、SiO膜を、平均被膜厚さが10nmになるように形成した。なお、SiO被膜の厚さは、透過電子顕微鏡により測定した。
具体的には、NaO・xSiO・nHO(x=2〜4)の組成を持つ水ガラス(富士化学株式会社製)を水に溶解させた水溶液を準備した。この水ガラスの水溶液は、アルカリ性を示すものであった。次に、水ガラスの水溶液に、Al粒子を入れた。さらに、塩酸をこの溶液に加え、pHを、6.5〜8.5となるようにコントロールした。水ガラスを加水分解してゲル状のケイ酸(HSiO)をAl粒子に付着させた。この後、これを乾燥させることでSiO被膜を形成した。水ガラス水溶液の濃度を、SiO換算で0.1重量%となるように調節することで、SiO被膜の膜厚を10nmに制御することができた。実施例1で調製した第二の無機フィラーは、Al粒子の表面全体にSiO被膜が形成されたものであった。第二の無機フィラーの模式的な断面図を図2に示す。図2においては、金属酸化物であるAl粒子21の表面全体にSiOの被膜22が形成されて、第二の無機フィラーを構成している。
第一の無機フィラーとしては、平均粒径が12nmのSiO粒子を準備した。エポキシ樹脂主剤にはビスフェノールA型エポキシ樹脂(品番:828、三菱化学社製)を用いた。そして、ナノコンポジット樹脂組成物の総重量を100%としたときに、第一の無機フィラーの配合割合が3重量%、第二の無機フィラーの配合割合が、85重量%となるように、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーを、エポキシ樹脂主剤に混合した。また、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製、品番:Z−6011)を、フィラー重量に対して、1重量%となるように混合した。
次に、この混合物を攪拌することによって、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーを樹脂内で分散させた。ここでは、ナノマイザー株式会社製のナノマイザーを用いて分散させた。その際、処理圧力を130MPaとし、1回6分の処理を3回繰り返した。
分散後の混合物に硬化剤と硬化促進剤を混合し、手動で攪拌した。硬化剤には変性脂環族アミン(品番:113、三菱化学社製)、硬化促進剤にはイミダゾール(品番:EMI24、三菱化学社製)を用いた。攪拌後、硬化処理を実施した。処理条件は80℃で1時間保持した後、150℃で3時間保持した。実施例1で得られたナノコンポジット樹脂硬化物の模式図を図1に示す。加熱硬化した本発明に係るナノコンポジット樹脂において、樹脂4中に、平均粒径が12nmのSiOからなる第一の無機フィラー3と、平均粒径が30μmのAlの表面をSiO被膜で被覆してなる第二の無機フィラー2とが分散されている。図示しないシランカップリング剤もまた樹脂4中に分散されている。そして、シランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解によりヒドロキシ基になり、それが第一の無機フィラー3、及び第二の無機フィラー2の表面と結合し、有機官能基がエポキシ樹脂4のエポキシ基と結合している。
[実施例2]
実施例1とは別の方法で金属酸化物表面にSiO膜を形成してなる第二の無機フィラーを用いて、ナノコンポジット樹脂組成物を調製した。すなわち、第二の無機フィラーの調製方法以外は、実施例1と同様とした。
ここでは、金属酸化物として、平均粒径が30μmのAlを用いた。そして、表面にSiO膜を形成する方法として、表面融合処理法を用いた。装置としては、圧縮せん断型の機械式粒子複合化装置を用いた。この装置では、粒径の大きい母粒子と小さい子粒子との混合物を装置に投入し、圧縮・せん断作用を機械的に繰り返し、母粒子上に子粒子を固着(融合)させることができる。本実施例では、平均粒径30μmのAl粒子に、平均粒径12nmのSiO粒子を2重量%で混合し、装置に投入し、圧縮・せん断作用を機械的に連続的に繰り返し、Al粒子表面上にSiO粒子を固着させ、膜を形成した。ここでは金属酸化物としてAlを用いたが、金属酸化物としてMgOもしくはTiOを用いた場合でも、さらには、金属酸化物の代わりにAlNを用いた場合でも、同様の効果を得ることができた。
[比較例]
比較例では、上記実施例1、2において用いた第二のフィラーを使用する替わりに、平均粒径が30μmのAlフィラーを使用した。それ以外は同様の組成および方法で、比較例のナノコンポジット樹脂を得た。比較例で得られたナノコンポジット樹脂硬化物の模式図を図4に示す。加熱硬化したナノコンポジット樹脂硬化物において、樹脂14中に、平均粒径が12nmのSiOからなる第一の無機フィラー13と、平均粒径が30μmのAlフィラーからなる第二の無機フィラー12とが分散されている。図示しないシランカップリング剤もまた樹脂14中に分散されており、シランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解によりヒドロキシ基になり、それが第一の無機フィラー13の表面と結合し、有機官能基がエポキシ樹脂のエポキシ基と結合している。いっぽう、第二の無機フィラー12はシランカップリング剤と結合していない。
[試験例]
実施例1、2と比較例のナノコンポジット樹脂硬化物について、ヒートサイクル試験を行った。この試験は、長期間の使用後の界面剥離を確認する目的で行った。低温側は、−40℃で30分保持、高温側は150℃で30分保持を1サイクルとし、これを1000サイクル実施した。試験途中のサンプルを抜取り、第一及び第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離の発生率を示すグラフを図3に示す。
実施例1、2では、1000サイクルの試験で、第一及び第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離の発生はなかった。比較例では、試験前からすでに界面剥離が発生しており、試験サイクル数の増加とともに剥離の発生率が増加し、1000サイクル後には、サンプルの約60%程度に第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離が発生していた。なお、ほかの実施例として、第一の無機フィラーの粒径を、7nm、30nmとした場合、第二の無機フィラーとしてAlに替えてMgOを使用した場合、第二の無機フィラーのAl及びMgOの粒径を、10μm、60μmとした場合に、それぞれ、第二の無機フィラーにSiO被膜を形成して、本発明の樹脂硬化物を製造した。結果は詳細には示していないが、いずれも、同様に、1000サイクルの試験での界面剥離の発生はなかった。
実施例1、2と比較例のナノコンポジット樹脂硬化物について、曲げ試験方法によって曲げ弾性率を評価した。評価対象は、ヒートサイクル試験を行う前のサンプルと、1000サイクル後のサンプルとした。ヒートサイクル試験前のサンプルの曲げ弾性率は、実施例1、2では15GPaであったが、比較例では13GPaという、実施例1、2より低い値を示していた。1000サイクル後のサンプルの曲げ弾性率は、実施例1、2では変化が見られなかった。また、上述の範囲で第一の無機フィラーの粒径、第二の無機フィラーの粒径、及び第二の無機フィラーの化合物の種類を変えたものでも、同様に1000サイクル後のサンプルの曲げ弾性率は変化しなかった。いっぽう、比較例のサンプルでは、曲げ弾性率がヒートサイクル試験前の13GPaから10GPa程度に低下していた。第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離が、曲げ弾性率に影響していることが分かった。
ヒートサイクル試験による界面剥離の発生は長期間の使用によって特性が変化しやすいことを示す。よって、比較例の樹脂硬化物では、長期信頼性に問題があることが示された。一方、実施例1、2ではヒートサイクル試験で界面剥離の発生は見られなかった。すなわち、長期間の使用によって特性変化がなく、長期信頼性が得られることがわかった。
本発明によるナノコンポジット樹脂組成物は、半導体モジュールの絶縁封止、太陽電池などの電気部品、電気製品といった、発熱温度が高くなるおそれがある機器において有効に使用することができる。
1:ナノコンポジット樹脂硬化物
2:第二の無機フィラー
3:第一の無機フィラー
4:樹脂成分
11:従来のナノコンポジット樹脂硬化物
12:第二の無機フィラー
13:第一の無機フィラー
14:樹脂成分
21:金属酸化物
22:SiO被膜

Claims (8)

  1. 熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれかまたはこれらの組み合わせからなる樹脂と、
    シランカップリング剤と、
    無機フィラーと
    を含み、
    前記無機フィラーが、
    平均粒径もしくは長径が5〜30nmSiO からなる第一の無機フィラーと、
    平均粒径もしくは長径が10〜100μmのAl、MgO、TiOからなる群から選択される金属酸化物もしくはAlN、あるいはそれらの混合物からなる無機粒子であって、該無機粒子の表面に、SiOの被膜を形成してなるSiO被覆無機粒子からなる第二の無機フィラーとを含み
    前記第1の無機フィラーが、0.1〜7重量%、第2の無機フィラーが、70〜85重量%含まれているナノコンポジット樹脂組成物。
  2. 前記第一の無機フィラーの平均粒径もしくは長径が10〜20nmであり、前記第二の無機フィラーの平均粒径もしくは長径が10〜60μmである、請求項1に記載のナノコンポジット樹脂組成物
  3. 前記SiOの被膜が、5〜20nmの厚みを有する、請求項1または2に記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  4. 前記SiO被覆無機粒子が、水ガラス法により調製される、請求項1〜のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  5. 前記SiO被覆無機粒子が、表面融合処理法により調製される、請求項1〜のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  6. 前記SiO被覆無機粒子が、レーザーアブレーション法により調製される、請求項1〜のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  7. 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1〜のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物を硬化させてなる、ナノコンポジット樹脂硬化物。
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