JP5758832B2 - 活性線硬化型インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法、及び、印刷物 - Google Patents
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Description
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
従来のインクジェット記録用インク組成物として、特許文献1〜3が挙げられる。
<1> (成分A)多官能(メタ)アクリレート化合物、(成分B−1)分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物、及び/又は、分子量が340以上のα−アミノケトン化合物、並びに、(成分B−2)下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物を含有し、分子量340未満の重合開始剤を含有しないか、又は、分子量340未満の重合開始剤の含有量がインク組成物全体の1質量%以下であることを特徴とする活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<3> 前記式(1)で表される化合物が式(1’)で表される化合物であり、前記式(2)で表される化合物が式(2’)で表される化合物である、<1>又は<2>に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<5> (成分B−3)下記式(3)で表される化合物を更に含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<7> 分子量が340以上のα−アミノケトン化合物として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1及び/又は2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンを含有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<8> 成分Aとして、2官能アクリレートモノマーをインク組成物全体の20〜90質量%含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<9> 成分Aとして、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、及び/又は、プロピレンオキサイド鎖若しくはテトラエチレングリコール鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<10> 成分B−1をインク組成物全体の0.05〜2.0質量%含有する、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<11> 成分B−2をインク組成物全体の0.1〜4質量%含有する、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<12> パッケージ印刷用である、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物、
<13> (工程a)<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出し、膜厚150μm以下のパッケージ用支持体上に印刷する工程、及び、(工程b)前記吐出されたインクジェットインク組成物に活性線を照射する工程をこの順で含むインクジェット記録方法、
<14> <13>に記載のインクジェット記録方法を用いて作成された印刷物。
(活性線硬化型インクジェットインク組成物)
本発明の活性線硬化型インクジェットインク組成物(以下、「インクジェットインク組成物」又は「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)多官能(メタ)アクリレート化合物、(成分B−1)分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物、及び/又は、分子量が340以上のα−アミノケトン化合物、並びに、(成分B−2)下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物を含有し、分子量340未満の重合開始剤を含有しないか、又は、分子量340未満の重合開始剤の含有量がインク組成物全体の1質量%以下であることを特徴とする。
更に、活性線硬化型のインクジェット印刷では、硬化時に印刷物の一部が収縮(シュリンク)しやすいとの問題があり、特に、食品包装用の比較的薄い(例えば、10〜50μm)の記録媒体(支持体)に印刷した場合に、シュリンクの問題が顕著であった。
また、パッケージ印刷に求められる高生産性に適した高い硬化感度が求められている。
本発明のインクジェット記録インク組成物は、上記の構成を採用することにより、膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、支持体が収縮(シュリンク)し難く、印刷物の臭気が抑制され、硬化性に優れ、更に、耐ブロッキング性に優れる活性線硬化型インクジェットインク組成物を提供することができる。
以下、本発明のインク組成物について、詳細に説明する。
本発明のインク組成物は、(成分A)多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する。成分Aを含有することにより、硬化膜に架橋構造が形成され、マイグレーションが抑制される。
なお、本発明においては、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
成分Aとしては、(成分A−1)多官能(メタ)アクリレートモノマー、及び(成分A−2)多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが例示される。すなわち、(成分A)多官能(メタ)アクリレート化合物は、(成分A−1)多官能(メタ)アクリレート及び/又は(成分A−2)多官能(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。また、成分A−1を2種以上使用してもよく、成分A−1及び成分A−2をそれぞれ単独で、或いは、成分A−1及び/又は成分A−2の2種以上を併用してもよく、特に限定されない。
また、成分Aは多官能アクリレート化合物であることが好ましい。
成分A−1及び成分A−2を合わせた成分Aの総含有量は、マイグレーション及び臭気の抑制及び反応性の観点から、インク組成物全体の20〜98質量%であることが好ましく、30〜97質量%であることがより好ましく、40〜96質量%であることがより好ましく、50〜95質量%であることが更に好ましい。
本発明において、多官能(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含有し、かつ、分子量が1,000以下の化合物を意味する。
本発明において、多官能(メタ)アクリレートモノマーの分子量は700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、226〜358であることが更に好ましく、242〜300であることが特に好ましい。分子量が上記範囲内であると、印刷物のマイグレーション及び臭気の抑制と、反応性とを両立できる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、2〜6官能であることが好ましく、2〜4官能であることがより好ましく、2又は3官能であることが更に好ましく、2官能であることが特に好ましい。
具体的には、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
これらの中でも、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、デカンジオールジアクリレート及びドデカンジオールジアクリレートがより好ましい。
また、前記炭素数5以上の炭化水素鎖としては、炭素数5以上12以下の炭化水素鎖が好ましく、炭素数5以上12以下の直鎖又は分岐アルキレン基であることがより好ましく、炭素数5以上8以下の直鎖又は分岐アルキレン基であることが更に好ましい。
本発明において、多官能(メタ)アクリレートモノマーは、インク粘度を低粘度に保持する観点から、直鎖又は分岐アルキレン基を有し、環状構造を有しないモノマーであることが好ましい。
2官能アクリレートモノマーの含有量は、インク組成物の全質量に対し、20質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合、印刷物のシュリンクを抑制し、インク粘度を低粘度に保持する観点から、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、インク組成物全体の30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
また、後述する単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合、マイグレーション、臭気及びブロッキングを抑制する観点から、インク組成物全体の50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
本発明のインク組成物は、成分Aとして、(成分A−2)多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含有してもよい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有する公知のオリゴマーを任意に選択可能であるが、本発明においては、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は1,000以上であり、1,000〜5,000であることが好ましく、1,500〜4,500であることがより好ましく、2,000〜4,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、硬化膜のマイグレーション、臭気及びブロッキングを抑制しつつ、インクの粘度をインクジェットに適した粘度範囲にすることができる。
また、重量平均分子量は1,000以上であるが、オリゴマーが分子量分布を有する場合、分子量が1,000以下の成分が多官能(メタ)アクリレートオリゴマー全体に対して5質量%以下であることが、マイグレーション抑制の観点から好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有し、2〜6官能であることが好ましく、2〜4官能であることがより好ましく、2又は3官能であることが更に好ましく、2官能であることが特に好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、多官能アクリレートオリゴマーであることが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
成分A−2について、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
本発明のインク組成物における成分A−2の含有量としては、インク組成物の全質量に対し、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
その他の重合性化合物としては、例えば、N−ビニルラクタム類(好ましくはN−ビニルカプロラクタム)、イソボルニルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等のラジカル重合性化合物が挙げられる。N−ビニルカプロラクタム又はイソボルニルアクリレートが好ましく、N−ビニルカプロラクタムとイソボルニルアクリレートとの組み合わせが更に好ましい。
他の重合性化合物の分子量は、80〜2,000であることが好ましく、80〜1,000であることがより好ましく、80〜800であることが更に好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分B)重合開始剤として、(成分B−1)分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物、及び/又は、分子量が340以上のα−アミノケトン化合物、並びに、(成分B−2)下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物を含有する。また、分子量340未満の重合開始剤を含有しないか、又は、分子量340未満の重合開始剤の含有量がインク組成物全体の1質量%以下である。
本発明のインク組成物は、(成分B−1)分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物、及び/又は、分子量が340以上のα−アミノケトン化合物を含有する。成分B−1を含有することにより、硬化感度に優れ、また、マイグレーションが抑制される。
本発明のインク組成物は、(成分B−1−1)分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物、又は、(成分B−1−2)分子量が340以上のα−アミノケトン化合物のいずれか一方のみを含有してもよく、成分B−1−1及び成分B−1−2を併用してもよく、特に限定されないが、少なくとも成分B−1−1を含有することが好ましい。
また、成分B−1−1又は成分B−1−2として1種単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
成分B−1−1としては、分子量340以上のビスアシルホスフィンオキサイド化合物であることが好ましく、分子量340以上のビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(b−1−1)で表される化合物のうち、分子量が340以上の化合物であることが好ましい。
具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
成分B−1−2としては特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、以下の式(b−1−2)で表される化合物のうち、分子量が340以上の化合物であることが好ましい。
また、成分B−1−2として、高分子のα−アミノケトン化合物も好ましく、具体的には、ポリエチレングリコールジ{β−4−[4−(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン}(Omnipol910、平均分子量910、Insight High Tecnology製)が挙げられる。
本発明のインク組成物は、重合開始剤として(成分B−2)式(1)又は式(2)で表される化合物を含有する。すなわち、本発明のインク組成物は、(成分B−2−1)式(1)で表される化合物、及び/又は、(成分B−2−1)式(2)で表される化合物を含有する。
本発明において、インク組成物が成分B−2を含有することにより、硬化性に優れ、硬化膜からのマイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。
本発明のインク組成物は、成分B−2として(成分B−2−1)式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(1)中、jは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。jが2以上の整数の場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、kは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。kが2以上の整数の場合、複数存在するR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、xは2〜4の整数を表し、3又は4であることがより好ましく、4であることが更に好ましい。
なお、式(1)において、連結基であるX1を除いたチオキサントン構造(式(1)中、[ ]にて表された構造)を複数(x個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
R1の置換位置は、5〜8位であり、6位、7位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。
また、R2の置換位置は、1〜4位であり、1位、2位又は3位であることが好ましく、1位であることがより好ましい。
式(1’)中、R11はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(1’)中、rはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、rが2以上のとき、複数存在するR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
x’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y1は少なくともx’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、x’個のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(x’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(1’)中、A1は下記(i)〜(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、成分B−2−1が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
本発明のインク組成物は、成分B−2として(成分B−2−2)式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(2)中、mは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。mが2以上の整数の場合、複数存在するR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、nは0〜3の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。nが2以上の整数の場合、複数存在するR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(2)中、yは2〜4の整数を表し、2又は3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
なお、式(2)において、連結基であるX2を除いたベンゾフェノン構造(式(2)中、[ ]にて表された構造)を複数(y個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
R3の置換位置は、6〜10位であり、8位又は9位であることが好ましく、8位であることがより好ましい。
また、R4の置換位置は、1〜5位であり、2位、3位又は4位であることが好ましい。
式(2’)中、R21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(2’)中、tはそれぞれ独立に1〜6の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、tが2以上のとき、複数存在するR21はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
y’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y2は少なくともy’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からy’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、y’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(y’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からx’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。
式(2’)中、A2は下記(i)〜(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、成分B−2−2が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
また、触媒下で行うことが好ましく、触媒としては、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸)、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、リン酸)、ルイス酸(塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、オルガノチタネート)等が例示できる。
反応温度及び反応時間は特に限定されない。
また、成分B−2としては、成分B−2−1がより好ましい。
また、成分B−1及び成分B−2の合計の含有量は、インク組成物全体の1.0〜15.0質量%であることが好ましく、2.0〜9.0質量%であることがより好ましく、2.0〜6.0質量%であることが更に好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れるので好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分B)重合開始剤として、(成分B−3)式(3)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(3)で表される化合物を添加することにより、式(3)で表される化合物が水素原子を供与して、共開始剤として機能し、感度が向上する。特に、励起状態の成分B−2に水素原子を供与して、高感度化すると推定される。また、低分子のアミン化合物を使用する場合に比して、式(3)で表される化合物を使用することにより、マイグレーション及び臭気が抑制される。
式(3)中、R7は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表し、前記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが最も好ましい。これらの中でも、R7のうち、2つ以上が水素原子であることが好ましく、3つが水素原子であることがより好ましく、4つが水素原子であることが更に好ましい。
式(3)中、はuは4を表す。
式(3)中、zは2〜4の整数を表し、2又は3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
なお、式(3)において、連結基であるX3を除いた構造(式(3)中、[ ]にて表された構造)を複数(z個)有するが、それらは互いに同一でも異なっていてもよく特に限定されない。合成上の観点からは、同一であることが好ましい。
z’は2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
Y3は単結合、エーテル結合、又は、少なくともz’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物からz’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基を表し、z’個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物から全て(z’個)のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりなる群から選択されたポリヒドロキシ化合物からz’個のヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることが好ましく、また、全てのヒドロキシ基の水素原子を除いた残基であることがより好ましい。
式(3’)中、A3はそれぞれ独立に下記(i)〜(iii)よりなる群から選択される基を表す。
分子量が500以上であると、硬化膜からの化合物の溶出が抑制され、マイグレーション、臭気及びブロッキングが抑制されたインク組成物が得られる。一方、3,000以下であると、分子の立体障害が少なく、また、分子の液/膜中での自由度が維持され、高い感度が得られる。
なお、成分B−3が、炭素数等が異なる複数の化合物の混合物である場合、重量平均分子量が上記の範囲であることが好ましい。
成分B−3のインク組成物全体に対する含有量は、0.5〜3.0質量%であることが好ましく、0.8〜2.5質量%であることがより好ましく、1.0〜2.0質量%であることが更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク組成物が硬化の際に、より高感度化するので好ましい。
本発明において、インク組成物は、上記成分B−1〜成分B−3に加え、(成分B−4)その他の重合開始剤を含有してもよい。
なお、その他の重合開始剤のうち、特に分子量が340未満の重合開始剤の含有量は、マイグレーション、臭気及びブロッキングを抑制する観点から、含有しないか、又は、インク組成物全体の1質量%以下であり、含有しないか、又は、0.5質量%以下であることが好ましく、含有しないか、又は、0.3質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)等が挙げられる。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
本発明のインク組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.0001〜1質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、好ましくは着色剤を含有する。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含む。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、本発明のインク組成物の全質量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体(支持体)を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。更に、インク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
なお、インク組成物の25℃における表面張力の測定方法としては、公知の方法を用いることができるが、吊輪法、又は、ウィルヘルミー法で測定することが好ましい。例えば、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定する方法、又は、KSV INSTRUMENTS LTD社製 SIGMA702を用いて測定する方法が好ましく挙げられる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェットインク組成物をインクジェット記録用として記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、記録媒体上に吐出されたインクジェットインク組成物に活性エネルギー線を照射し、インクジェットインク組成物を硬化して画像を形成する方法である。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体上の同一部分において、上記(a1)及び(b1)工程を2回以上行うこと、すなわち、同一部分を重ね打ちにより印刷するマルチパスモードで行うことが好ましい。本発明のインク組成物を用いることにより、マルチパスモードで印刷を行った場合、光沢性により優れた画像が得られる。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
(工程a)インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出し、膜厚150μm以下のパッケージ用支持体上に印刷する工程、及び、
(工程b)前記吐出されたインクジェットインク組成物に活性線を照射する工程
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程及び(a)工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線(活性線)を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
活性エネルギー線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、記録媒体表面に画像を形成することができる。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物から記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。
パッケージ印刷に使用する場合、記録媒体としては、ポリプロピレン、PET、ナイロン、ポリエチレン、ポリビニルアルコールが例示され、ポリプロピレン、PET、ナイロンが好ましい。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を示すものとする。
(着色剤)
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・SOLSPERSE36000(Noveon社製分散剤)
(モノマー)
・SR306H(トリプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製、25℃における粘度:15.0mPa・sec)
・SR341(3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、Sartomer社製、25℃における粘度:6.0mPa・sec)
・NKエステルA−DOD−N(1,9−ノナンジオールジアクリレート、新中村化学工業(株)製、25℃における粘度:9.0mPa・sec)
・CD595(1,10−デカンジオールジアクリレート、Sartomer社製、25℃における粘度:10.0mPa・sec)
・CD262(1,12−ドデカンジオールジアクリレート、Sartomer社製、25℃における粘度:12.0mPa・sec)
・SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製、25℃における粘度:15.0mPa・sec)
・SR339(フェノキシエチルアクリレート、Sartomer社製)
・SR350(トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISP社製)
・IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、BASF社製、分子量366)
・IRGACURE 379(2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリンー4−イルーフェニル)ブタン−1−オン、BASF社製、分子量380)
・Omnipol 910(ポリエチレングリコール200 ジ{β−4[4(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノニルフェニル]ピペラジン}プロピオネート、Rahn AG社製、分子量901)
・IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、BASF社製、分子量418)
・Speedcure7010 (化合物I−B、Lambson社製)
・Omnipol TX(化合物I−A、Rahn AG社製、分子量820)
・Omnipol BP(化合物I−F、Rahn AG社製、分子量960)
・化合物I−D(n、m、l=3)
・化合物I−J(k、l、m、n=2)
2−メルカプト安息香酸と、4−クロロフェノキシ酢酸とを硫酸中で脱水縮合反応させることで、1−クロロ−4−フェノキシアセチルチオキサントンが得られる。更に、塩化チオニルと反応させ、酸クロリドを合成した後、PO変性トリメチロールプロパン(n、m、n=3)と反応させることで、化合物I−Dを得た。
3−フェノキシアセチルクロリドベンゾフェノンと、PO変性ペタエリスリトールとの反応により、化合物I−Jを得た。
・Speedcure 7040(化合物I−N、高分子アミン化合物、Lambson社製)
・Speedcure ITX(イソプロピルチオキサントン、LAMBSON社製、分子量254)
・LUCIRIN TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製、分子量316)
・IRGACURE 184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製、分子量204)
・IRGACURE 907(2−メチル−1−「4−(メチルチオフェニル)」−2−モルフォリノプロパンー1−オン、BASF社製、分子量279)
・CN964 A85(二官能脂肪族ウレタンアクリレート・15質量%トリプロピレングリコールジアクリレート含有、Sartomer社製)
(重合禁止剤)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(10質量%)とフェノキシエチルアクリレート(90質量%)との混合物、Chem First社製)
(界面活性剤)
・BYK307(シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)
<シアンミルベースAの調製>
IRGALITTE BLUE GLVOを300質量部と、SR9003を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
<インク組成物の作製方法>
表2〜4に記載の素材を記載した量(質量部)で混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、表中「−」は、該当する成分を添加していないことを意味する。
UV硬化型インクジェットプリンター LUXELJET UV250(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)を用い、インクジェット画像を印刷した。
パイレンフィルム−OTP3162(A4サイズ、ポリプロピレンシート、40μm)上に、解像度600×450dpiで、100%ベタ画像の印刷を行った。なお、同装置は、インクジェットヘッドを操作させることで描画を行うものであり、また、ヘッドの両端にそれぞれUVランプ1つずつ装着されており、1回のヘッド操作で2つのUVランプが照射されるような形態になっている。ベタ画像は、支持体の同一箇所にインク打滴と2つのランプによるUV照射とを交互に8回繰り返すことにより形成した。ランプはIntegration Technology社製SUB ZERO 085 H bulbランプユニットを装着し、前後のランプ強度をレベル3に設定した。
印字中、路面照度を測定したところ、980mW/cm2であった。また、吐出から露光までの時間は、0.2〜0.3秒であった。また、1ドロップあたりの吐出量は、6〜42pLの範囲で行った。
印刷物表面に水:エタノール=70:30混合液10mLを滴下し、混合溶媒が揮発しないように、印刷物全体をガラス密閉容器に入れて、40℃で10日間放置した。その後、水、エタノール混合溶液中に含有する、フィルムからの全溶出量(オーバーオールマイグレーション量:OML)を算出し、1〜5段階で評価を行った。なお、全容出量の測定は、10日間放置後に、水エタノール混合液を揮発させ、残存成分の質量を測定することにより行った。
5:溶出量が50ppb以下
4:溶出量が50ppbを超え、200ppb以下
3:溶出量が200ppbを超え、1,000ppb以下
2:溶出量が1,000ppbを超え、2,000ppb以下
1:溶出量が2,000ppbを超える
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像を、30cm×30cmのジップ付きビニール袋に内包し、24時間放置した。
その後、ジップを解放し、臭気の評価を行った。評価は10人の平均を採用した。
5:ほぼ無臭である
4:わずかな臭気があるがほとんど気にならない
3:ある程度の臭気があるが、不快なレベルでない
2:強い臭気がある
1:非常に強い臭気がある
上記インクジェット記録方法にて、計5枚の印刷物を作成し、得られた画像を重ね合わせ、上部に5kgの重りを載せて、30℃のオーブンで24時間放置したのち、画像同士の張り付き具合を評価した。
5:印刷物同士の張り付き全くなし
4:印刷物同士に張り付きがあるが、手で簡単に引きはがれ、上部支持体背面への画像の転写はなし
3:印刷物同士に張り付きがあり、手で簡単に引きはがすと、上部支持体背面への僅かな画像の転写がある
2:印刷物同士に張り付きがあり、手で簡単に引きはがすと、上部支持体背面へのかなりの画像の転写がある
1:印刷物同士に張り付きがあり、手で引きはがすのが困難である
綿棒にIPA(イソプロピルアルコール)を浸し、印刷物表面を前記の綿棒で擦り、支持体が露出するまでの回数を求めた。
5:50回を超える
4:30回を超え50回以下
3:10回を超え30回以下
2:5回を超え10回以下
1:5回以下
印刷後、印刷物を室温下で30分放置し、カールの度合いを評価した。
5:全くカールなく平坦である
4:わずかにカールが見られる
3:カールが見られるが、手で引っ張ると平坦な印刷物になる
2:カールが見られ、手で引っ張っても、印刷物が凹凸である
1:激しく印刷物がカールし、手で引っ張っても、印刷物が凹凸である
Claims (12)
- (成分A)多官能(メタ)アクリレート化合物、
(成分B−1)分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物、及び/又は、分子量が340以上のα−アミノケトン化合物、並びに、
(成分B−2)下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物を含有し、
成分Aとして、2官能アクリレートモノマーをインク組成物全体の20〜90質量%含有し、
成分B−2をインク組成物全体の0.1〜4質量%含有し、
分子量340未満の重合開始剤を含有しないか、又は、分子量340未満の重合開始剤の含有量がインク組成物全体の1質量%以下であることを特徴とする
活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 前記成分Aをインク組成物全体の20〜98質量%含有する、請求項1に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 前記式(1)で表される化合物が式(1’)で表される化合物であり、前記式(2)で表される化合物が式(2’)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 式(1)で表される化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 分子量が340以上のビスアシルホスフィン化合物として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 分子量が340以上のα−アミノケトン化合物として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1及び/又は2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンを含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 成分Aとして、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、及び/又は、プロピレンオキサイド鎖若しくはテトラエチレングリコール鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- 成分B−1をインク組成物全体の0.05〜2.0質量%含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- パッケージ印刷用である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性線硬化型インクジェットインク組成物。
- (工程a)請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出し、膜厚150μm以下のパッケージ用支持体上に印刷する工程、及び、
(工程b)前記吐出されたインクジェットインク組成物に活性線を照射する工程をこの順で含む
インクジェット記録方法。 - 請求項11に記載のインクジェット記録方法を用いて作成された印刷物。
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