JP5758214B2 - 電解質及び電解質膜 - Google Patents
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Description
そこで、電解質として固体又はゲル状のものを利用する系が考案され、さかんに研究が進められている。これらの電解質を使用することにより、電解液の揮発拡散や液漏れが防止されるため、電池としての信頼性及び安全性を向上させることができる。さらに、電解質自体を薄膜化及び積層化することが容易になるため、プロセス性の向上とパッケージの簡略化が期待されている。
このような中、リチウムイオンの輸率を改善するために、電解質中をカチオンのみが移動する高分子複合体、すなわちシングルイオン伝導体をリチウムイオン二次電池の電解質膜に適用する方法が提案されている(特許文献1〜2、非特許文献1〜2参照)。
本発明は、(A)有機酸のリチウム塩、(B)ホウ素化合物及び(C)マトリクスポリマーが配合されてなり、前記(A)有機酸のリチウム塩が、カルボン酸のリチウム塩であり、前記(B)ホウ素化合物が、三フッ化ホウ素アルキルエーテル錯体であることを特徴とする電解質(ただし、(A)有機酸のリチウム塩がポリカルボン酸のリチウム塩であるものを除く)を提供する。
本発明の電解質においては、前記(A)有機酸のリチウム塩が、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、イソ酪酸リチウム、吉草酸リチウム、イソ吉草酸リチウム、シュウ酸リチウム、乳酸リチウム、酒石酸リチウム、マレイン酸リチウム、フマル酸リチウム、マロン酸リチウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウム、グルタル酸リチウム、アジピン酸リチウム、フタル酸リチウム及び安息香酸リチウムからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の電解質においては、前記(B)ホウ素化合物が、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジtert−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエーテル錯体及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の電解質においては、前記(C)マトリクスポリマーが、ポリエーテル系ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン及びポリシロキサンからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の電解質においては、さらに、(D)可塑剤が配合されていてもよい。
本発明の電解質においては、前記(D)可塑剤が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の電解質においては、配合成分の総量に占める前記(D)可塑剤の割合が3〜50質量%であることが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の電解質を用いて得られたことを特徴とする電解質膜を提供する。
本発明の電解質は、(A)有機酸のリチウム塩、(B)ホウ素化合物及び(C)マトリクスポリマーが配合されてなることを特徴とする。本発明の電解質は、(A)有機酸のリチウム塩に(B)ホウ素化合物を組み合わせて使用することで、優れたイオン伝導度とリチウムイオンの輸率を実現するものである。なお、本発明において、「リチウムイオンの輸率」とは、「イオン伝導度全体におけるリチウムイオンによるイオン伝導度の割合」を指し、例えば、リチウムイオン二次電池における電解質膜では、1に近いほど好ましい。
前記(A)有機酸のリチウム塩は、有機酸の酸基がリチウム塩を構成しているものであればよいが、カルボン酸のリチウム塩又はスルホン酸のリチウム塩であることが好ましい。また、(A)有機酸のリチウム塩において、リチウム塩を構成する酸基の数は、特に限定されない。
そして、より好ましい前記カルボン酸のリチウム塩としては、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、コハク酸リチウムが例示できる。なお、本発明において、有機酸のリチウム塩は、特に断りの無い限り、一分子中のすべての酸基がリチウム塩を構成しているものとする。例えば、シュウ酸リチウムはシュウ酸二リチウムを意味する。
前記(B)ホウ素化合物は特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、三フッ化ホウ素(BF3)等のハロゲン化ホウ素;三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体(BF3O(CH3)2)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3O(C2H5)2)、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体(BF3O(C4H9)2)、三フッ化ホウ素ジtert−ブチルエーテル錯体(BF3O((CH3)3C)2)、三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエーテル錯体(BF3O((CH3)3C)(CH3))、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(BF3OC4H8)等のハロゲン化ホウ素アルキルエーテル錯体;三フッ化ホウ素メタノール錯体(BF3HOCH3)、三フッ化ホウ素プロパノール錯体(BF3HOC3H7)、三フッ化ホウ素フェノール錯体(BF3HOC6H5)等のハロゲン化ホウ素アルコール錯体;三フッ化ホウ素ピペリジニウム錯体(BF3NC5H11)、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体(BF3H2NC2H5)等のハロゲン化ホウ素アミン錯体;2,4,6−トリメトキシボロキシン等の2,4,6−トリアルコキシボロキシン;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ−n−プロピル、ホウ酸トリ−n−ブチル、ホウ酸トリ−n−ペンチル、ホウ酸トリ−n−ヘキシル、ホウ酸トリ−n−ヘプチル、ホウ酸トリ−n−オクチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリオクタデシル等のホウ酸トリアルキル;ホウ酸トリフェニル等のホウ酸トリアリール;トリス(トリメチルシリル)ボラート等のトリス(トリアルキルシリル)ボラートが例示できる。
そして、より好ましい(B)ホウ素化合物としては、三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素;三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジtert−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体等のハロゲン化ホウ素アルキルエーテル錯体;三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素プロパノール錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体等のハロゲン化ホウ素アルコール錯体が例示できる。
(B)ホウ素化合物は、(A)有機酸のリチウム塩において、リチウムイオンのアニオン部からの解離を促進し、イオン伝導度を向上させる機能を有していると推測される。
(C)マトリクスポリマーは、特に限定されず、固体電解質分野で公知のものが適宜使用できる。
(C)マトリクスポリマーの好ましいものとして具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー(ポリアルキレンエーテル系ポリマー);ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化アセトン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、エチレンオキシドユニットを含むポリアクリレート等のポリアクリル系ポリマー;ポリアクリロニトリル;ポリホスファゼン;ポリシロキサンが例示できる。
本発明の電解質は、(A)有機酸のリチウム塩、(B)ホウ素化合物及び(C)マトリクスポリマー以外に、さらに、これらに該当しない(D)可塑剤が配合されていてもよい。
(D)可塑剤は、例えば、電解質膜の製造時における、希釈用有機溶媒の使用の有無に従って選択できる。希釈用有機溶媒とは、後述するように電解質膜を製造する際に、電解質を希釈して、取り扱いや成型を容易にするためのものであり、最終的には乾燥によって電解質膜から除去され得るものである。
希釈用有機溶媒を使用しない場合には、(D)可塑剤としては、上記のものが特に限定なく使用できる。
一方、希釈用有機溶媒を使用し、乾燥させる場合には、(D)可塑剤としては上記のものの中でも、沸点が乾燥温度よりも好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上高いものが例示できる。
本発明の電解質は、(A)有機酸のリチウム塩、(B)ホウ素化合物、(C)マトリクスポリマー及び(D)可塑剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲内において、さらに、これらに該当しないその他の成分が配合されていてもよい。
本発明の電解質は、(A)有機酸のリチウム塩、(B)ホウ素化合物及び(C)マトリクスポリマー、並びに必要に応じて(D)可塑剤及び/又は前記その他の成分を配合することで製造できる。
各成分の配合時には、これら成分を添加して、各種手段により十分に混合することが好ましい。また、後述する本発明の電解質膜を引き続き製造する場合には、必要に応じて希釈用有機溶媒をさらに添加して、得られた組成物を一括して混合するようにしてもよい。
各成分は、これらを順次添加しながら混合してもよいし、全成分を添加してから混合してもよく、配合成分を均一に溶解又は分散させることができればよい。
本発明の電解質膜は、上記本発明の電解質を用いて得られたことを特徴とする。
本発明の電解質膜は、例えば、本発明の電解質に希釈用有機溶媒を添加して混合し、得られた組成物を型又は容器に流し込んだり、シート上にキャストしたりした後、乾燥させて希釈用有機溶媒を除去し、所望の形状に成型することで製造できる。また、(D)可塑剤が配合された電解質を用いて、希釈用有機溶媒を添加せずに、そのまま成型してもよい。
本実施例で使用した化学物質を以下に示す。
・(A)有機酸のリチウム塩の原料
ギ酸(アルドリッチ社製)
酢酸(アルドリッチ社製)
シュウ酸(アルドリッチ社製)
コハク酸(アルドリッチ社製)
水酸化リチウム・一水和物(LiOH・H2O)(アルドリッチ社製)
・(B)ホウ素化合物
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF3O(C2H5)2)(アルドリッチ社製)
・(C)マトリクスポリマー
ポリエチレンオキシド(以下、PEOと略記する)(質量平均分子量6000000、アルドリッチ社製)
・(D)可塑剤
エチレンカーボネート(以下、ECと略記する)(アルドリッチ社製)
γ−ブチロラクトン(以下、GBLと略記する)(アルドリッチ社製)
・リチウム塩
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2CF3)2)(キシダ化学社製)
四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)(キシダ化学社製)
・希釈用有機溶媒
アセトニトリル(脱水、アルドリッチ社製)
(2−1)ギ酸リチウムの調製
ギ酸(20.0g、434.5mmol)を丸底フラスコに量り取り、これを50mLの蒸留水に溶解させた。これにLiOH・H2O(17.87g、426.0mmol)を100mlの蒸留水に溶かした溶液をゆっくりと滴下した。室温で24時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶液を濃縮した。濃縮した溶液を200mLのアセトニトリルにゆっくりと滴下し、析出した固体を再度アセトニトリルにて洗浄した後、乾燥させることによって白色粉末のギ酸リチウムを得た。
酢酸(10.0g、166.5mmol)を丸底フラスコに量り取り、これを50mLの蒸留水に溶解させた。これにLiOH・H2O(7.15g、167.0mmol)を100mlの蒸留水に溶かした溶液をゆっくりと滴下した。室温で24時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶液を濃縮した。濃縮した溶液を200mLのアセトニトリルにゆっくりと滴下し、析出した固体を再度アセトニトリルにて洗浄した後、乾燥させることによって白色粉末の酢酸リチウムを得た。
シュウ酸(10.0g、111mmol)を丸底フラスコに量り取り、これを100mLの蒸留水に溶解させた。これにLiOH・H2O(9.23g、220mmol)を100mlの蒸留水に溶かした溶液をゆっくりと滴下した。室温で24時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶液を濃縮した。濃縮した溶液を200mLのアセトニトリルにゆっくりと滴下し、析出した固体を再度アセトニトリルにて洗浄した後、乾燥させることによって白色粉末のシュウ酸リチウムを得た。
コハク酸(10.0g、84.7mmol)を丸底フラスコに量り取り、これを50mLの蒸留水に溶解させた。これにLiOH・H2O(7.27g、169.8mmol)を100mlの蒸留水に溶かした溶液をゆっくりと滴下した。室温で24時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶液を濃縮した。濃縮した溶液を200mLのアセトニトリルにゆっくりと滴下し、析出した固体を再度アセトニトリルにて洗浄した後、乾燥させることによって白色粉末のコハク酸リチウムを得た。
以下に示す実施例及び比較例における電解質膜の製造は、すべてドライボックス内又は真空デシケータ内で行った。
PEO(0.50g)、上記(2−1)にて得られたギ酸リチウム(0.059g)、BF3O(C2H5)2(0.161g)をサンプル瓶に量り取り、アセトニトリル(12mL)を加え、室温で24時間攪拌した。PEOが完全にアセトニトリルに溶解し、ギ酸リチウムが溶液中に十分に溶解していることを確認した後、得られた電解質溶液をポリテトラフルオロエチレン製のシャーレ(直径7.5cm)にキャスティングした。次いで、前記シャーレを真空デシケータ内に移し、ここに乾燥窒素を2L/分の流量で流しながら、20℃で24時間乾燥させることによってアセトニトリルを除去し、電解質膜を得た。表1に、電解質製造時の(A)有機酸のリチウム塩と、各成分の配合比を示す。なお、表1中、「(B)ホウ素化合物/(A)リチウム原子(モル比)」とは、「(B)ホウ素化合物の配合量(モル数)]/[配合された(A)有機酸のリチウム塩中のリチウム原子のモル数]のモル比」のことを指す。また、「全配合成分:(D)可塑剤(質量比)」とは、「配合成分の総量:(D)可塑剤の配合量(質量比)」のことを指し、「配合成分」に「希釈用有機溶媒」は含まれない。
ギ酸リチウム(0.059g)に代えて、上記(2−2)にて得られた酢酸リチウム(0.075g)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
ギ酸リチウム(0.059g)に代えて、上記(2−3)にて得られたシュウ酸リチウム(0.055g)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
ギ酸リチウム(0.059g)に代えて、上記(2−4)にて得られたコハク酸リチウム(0.070g)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
PEO(0.50g)、上記(2−1)にて得られたギ酸リチウム(0.049g)、BF3O(C2H5)2(0.134g)、EC及びGBLの混合溶媒(EC:GBL=30:70(体積比))(0.246g)をサンプル瓶に量り取り、アセトニトリル(12mL)を加え、室温で24時間攪拌した。PEOが完全にアセトニトリルに溶解し、ギ酸リチウムが溶液中に十分に溶解していることを確認した後、得られた電解質溶液をポリテトラフルオロエチレン製のシャーレ(直径7.5cm)にキャスティングした。次いで、前記シャーレを真空デシケータ内に移し、ここに乾燥窒素を2L/分の流量で流しながら、20℃で24時間乾燥させることによってアセトニトリルを除去し、電解質膜を得た。
ギ酸リチウム(0.049g)に代えて、上記(2−2)にて得られた酢酸リチウム(0.062g)を使用したこと以外は、実施例5と同様の方法で電解質膜を得た。
ギ酸リチウム(0.049g)に代えて、上記(2−3)にて得られたシュウ酸リチウム(0.045g)を使用したこと以外は、実施例5と同様の方法で電解質膜を得た。
ギ酸リチウム(0.049g)に代えて、上記(2−4)にて得られたコハク酸リチウム(0.059g)を使用したこと以外は、実施例5と同様の方法で電解質膜を得た。
BF3O(C2H5)2を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
BF3O(C2H5)2を配合しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で電解質膜を得た。
BF3O(C2H5)2を配合しなかったこと以外は、実施例5と同様の方法で電解質膜を得た。
BF3O(C2H5)2を配合しなかったこと以外は、実施例7と同様の方法で電解質膜を得た。
PEO(0.50g)、LiN(SO2CF3)2(0.326g)をサンプル瓶に量り取り、アセトニトリル(12mL)を加え、室温で24時間攪拌した。PEOが完全にアセトニトリルに溶解し、LiN(SO2CF3)2が溶液中に十分に溶解していることを確認した後、得られた電解質溶液をポリテトラフルオロエチレン製のシャーレ(直径7.5cm)にキャスティングした。次いで、前記シャーレを真空デシケータ内に移し、ここに乾燥窒素を2L/分の流量で流しながら、20℃で24時間乾燥させることによってアセトニトリルを除去し、電解質膜を得た。
PEO(0.50g)、LiN(SO2CF3)2(0.272g)、EC及びGBLの混合溶媒(EC:GBL=30:70(体積比))(0.246g)をサンプル瓶に量り取り、アセトニトリル(12mL)を加え、室温で24時間攪拌した。PEOが完全にアセトニトリルに溶解し、LiN(SO2CF3)2が溶液中に十分に溶解していることを確認した後、得られた電解質溶液をポリテトラフルオロエチレン製のシャーレ(直径7.5cm)にキャスティングした。次いで、前記シャーレを真空デシケータ内に移し、ここに乾燥窒素を2L/分の流量で流しながら、20℃で24時間乾燥させることによってアセトニトリルを除去し、電解質膜を得た。
LiN(SO2CF3)2(0.326g)に代えて、LiBF4(0.107g)を使用したこと以外は、参考例1と同様の方法で電解質膜を得た。
LiN(SO2CF3)2(0.272g)に代えて、LiBF4(0.107g)を使用したこと以外は、参考例2と同様の方法で電解質膜を得た。
上記で得られた電解質膜を、直径16mmの大きさに切り取って測定用試料とし、この試料をステンレス板で挟みこんでセルに組み込んだ。そして、セルを複素交流インピーダンス測定装置に接続し、ナイキストプロットから抵抗値を測定した。この時、セルを60℃に設定した恒温槽に入れて電解質膜と電極をなじませた後、温度を下げていき、所定温度での抵抗値を測定した。各温度での抵抗値は、それぞれの温度でセルを30分間保持してから測定した。そして、得られた抵抗値から、下記式(I)にしたがって、電解質膜のイオン伝導度(σ)(S/cm)を算出した。実施例1〜8、比較例1〜4、及び参考例1〜4の電解質膜について、40℃でのイオン伝導度(σ)を表2に示す。
σ = l/s・R ・・・・(I)
(式中、lは試料(電解質膜)の厚さ(cm)を表し;sは試料(電解質膜)の面積(cm2)を表し;Rは抵抗値(Ω)を表す。)
上記で得られた電解質膜のリチウムイオンの輸率を、直流分極測定と複素インピーダンス測定の併用によって求めた。
すなわち、電解質膜を直径17mmの大きさに切り取り、これをLi板で挟みこんでセルに組み込んだ。そして、セルを複素交流インピーダンス測定装置に接続し、セルを60℃に設定した恒温槽に1時間入れた後、温度を40℃に変えて、1時間以上置いた後に測定を開始した。測定法は以下の通りである。まず、複素インピーダンス測定を行い、抵抗値(以下、R0と略記する)を見積もった。その後、直流分極測定を行い、電流値が一定になったのを確認(以下、初期電流値をI0、一定になった時の電流値をIsとそれぞれ略記する)した後、再び、複素インピーダンス測定を行い、抵抗値(以下、Rsと略記する)を見積もった。そして、40℃におけるリチウムイオンの輸率を、下記式(II)で表されるエバンス式より算出した。実施例1〜8及び参考例1〜4の電解質膜について、リチウムイオンの輸率(t+)を表2に示す。表2中、「−」は未測定であることを示す。
t+ = Is(ΔV−I0・R0)/I0(ΔV−Is・Rs) ・・・・(II)
(式中、ΔVは印加電圧を表し;R0、Rs、I0、Isは上記と同様である。)
そして、実施例5〜8より、さらに(D)可塑剤を配合することにより、イオン伝導度がさらに向上することが確認できた。実施例1〜8の電解質膜は、従来のリチウム塩を用いた電解質膜である参考例1〜4のものに対して、同等以上のイオン伝導度を有し、リチウムイオンの輸率でより優れたていた。
一方、比較例1より、BF3O(C2H5)2が、電解質膜の室温付近におけるイオン伝導度の向上に不可欠な配合成分であることが確認できた。
また、比較例2〜4より、異なる構造の有機酸のリチウム塩であっても、BF3O(C2H5)2が未配合となることにより、イオン伝導度が大きく低下してしまうことが確認できた。これは有機酸のリチウム塩が有効に解離できないためであると推測される。なお、比較例1〜4に関しては、イオン伝導度が非常に低いため、リチウムイオンの輸率の測定に至らなかった。
Claims (8)
- (A)有機酸のリチウム塩、(B)ホウ素化合物及び(C)マトリクスポリマーが配合されてなり、
前記(A)有機酸のリチウム塩が、カルボン酸のリチウム塩であり、
前記(B)ホウ素化合物が、三フッ化ホウ素アルキルエーテル錯体であることを特徴とする電解質(ただし、(A)有機酸のリチウム塩がポリカルボン酸のリチウム塩であるものを除く)。 - 前記(A)有機酸のリチウム塩が、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、イソ酪酸リチウム、吉草酸リチウム、イソ吉草酸リチウム、シュウ酸リチウム、乳酸リチウム、酒石酸リチウム、マレイン酸リチウム、フマル酸リチウム、マロン酸リチウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウム、グルタル酸リチウム、アジピン酸リチウム、フタル酸リチウム及び安息香酸リチウムからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電解質。
- 前記(B)ホウ素化合物が、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジtert−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエーテル錯体及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体からなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質。
- 前記(C)マトリクスポリマーが、ポリエーテル系ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン及びポリシロキサンからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解質。
- さらに、(D)可塑剤が配合されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解質。
- 前記(D)可塑剤が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項5に記載の電解質。
- 配合成分の総量に占める前記(D)可塑剤の割合が3〜50質量%であることを特徴とする請求項5又は6に記載の電解質。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解質を用いて得られたことを特徴とする電解質膜。
Priority Applications (1)
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