以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の側方に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上方に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着装置5と、画像形成部4及び定着装置5の上方に配設された画像読取部6とを備えている。
給紙部2は、記録媒体である用紙9を収容する複数の給紙カセット7を備えており、給紙ローラー8の回転により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から用紙9を1枚ずつ用紙搬送部3に送り出す。
用紙搬送部3に送られた用紙9は、用紙搬送部3に備えられた用紙搬送経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙9にトナー像を形成するものであり、図1の矢印方向に回転可能に支持された感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像部14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ワイヤーを備えており、この帯電ワイヤーからのコロナ放電によって感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13により感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。
次いで、現像部14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給される用紙9に転写される。
トナー像が転写された用紙9は、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着装置5に向けて搬送される。定着装置5では用紙9が加熱加圧され、用紙9上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙9は、排出ローラー対20によって排出トレイ21上に排出される。
転写部15による用紙9へのトナー像の転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
定着装置5は図2に示すように構成される。図2は定着装置を概略的に示す側面断面図である。
定着装置5は、電磁誘導加熱方式の熱源を用いた定着方式を採用しており、加熱部材である発熱ベルト26と、加圧部材である加圧ローラー19と、発熱ベルト26を一体的に取り付けた定着ローラー18と、発熱ベルト26に磁束を供給する誘導加熱部30と、を備える。加圧ローラー19及び定着ローラー18は定着装置5のハウジング(図略)の長手方向に回転可能に支持され、誘導加熱部30はハウジングに固定支持される。
発熱ベルト26は、無端状の耐熱ベルトであり、内周側から順に、例えば厚み30〜50μmの電鋳ニッケルからなる誘導発熱層26aと、例えば厚み200〜500μmのシリコーンゴム等からなる弾性層26bと、フッ素樹脂等からなりニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させる離型層26cと、が積層されて構成される。
定着ローラー18は、発熱ベルト26を一体回転可能とするために、発熱ベルト26の内周面を張架している。例えば、定着ローラー18は、外径39.8mmに設定され、ステンレス鋼の芯金18a上に厚み5〜10mmのシリコーンゴム製の弾性層18bを有し、弾性層18bは発熱ベルト26を張架している。
加圧ローラー19は、円筒型の芯金19aと、芯金19a上に形成される弾性層19bと、弾性層19bの表面を覆う離型層19cと、を備える。例えば、加圧ローラー19は、外径35mmに設定され、ステンレス鋼の芯金19a上に厚み2〜5mmのシリコーンゴム製の弾性層19bを有し、弾性層19b上にフッ素樹脂等からなる離型層19cを有する。また、加圧ローラー19は図示しないモーター等の駆動源によって回転駆動させられ、加圧ローラー19の回転によって発熱ベルト26は従動回転する。加圧ローラー19と発熱ベルト26との圧接する部分にニップ部Nが形成され、ニップ部Nでは、搬送される用紙9上の未定着トナー像を加熱及び加圧し用紙9上にトナー像を定着する。
誘導加熱部30は、コイル37と、ボビン38と、磁性体コア39とを備え、電磁誘導により発熱ベルト26を発熱させるものである。誘導加熱部30は、長手方向(図2の紙面の表裏方向)に延びて、発熱ベルト26の外周の略半分を囲うように発熱ベルト26に対向して配設される。
コイル37は、発熱ベルト26の幅方向(図2の紙面の表裏方向)に沿ってループ状に複数回巻回してボビン38に取り付けられる。またコイル37は、図示しない電源に接続され、電源から供給される高周波電流により交流磁束を発生させる。さらにコイル37は、図示しないサーミスターによって検知される発熱ベルト26の幅方向の中央部と端部の表面温度に基づいて、電源から供給される高周波電流を制御される。コイル37からの磁束は磁性体コア39を通過し、図2の紙面に平行な方向に導かれ、発熱ベルト26の誘導発熱層26aに沿って通過する。誘導発熱層26aを通過する磁束の交流的な強さの変化によって誘導発熱層26aには渦電流が生じる。誘導発熱層26aに渦電流が流れると、誘導発熱層26aの電気抵抗によってジュール熱が発生して、発熱ベルト26が発熱(自己発熱)することになる。
発熱ベルト26が加熱され所定の温度に昇温すると、ニップ部Nで挟持された用紙9が加熱されるとともに、加圧ローラー19によって加圧されることにより、用紙9上の粉体状態のトナーが用紙9に溶融定着される。このように、発熱ベルト26は薄肉の熱伝導性の良好な材質からなり熱容量が小さいため、短時間でウォーミングアップを行なうことができ、画像形成が迅速に開始される。
誘導加熱部30の詳しい構成を図3に示す。図3は誘導加熱部30を示す側面断面図である。
誘導加熱部30は前述のようにコイル37と支持部材であるボビン38と磁性体コア39とを備え、磁性体コア39は第1コアであるアーチコア41と、第2コアである端部センターコア42、及びサイドコア43からなる。さらに誘導加熱部30は、アーチコア41を取り付けるためのアーチコアホルダー45と、磁性体コア39とコイル37を覆うカバー部材47と、を備える。
ボビン38は、発熱ベルト26の表面と所定の間隔を隔てて定着ローラー18の回転中心軸と同心に配置され、発熱ベルト26の円周表面の略半分を囲う円弧部38iと、円弧部38iの両端に延設されるフランジ部38dとを有する。円弧部38iとフランジ部38dは、ボビン38の主たる骨格を構成し、その骨格部における強度を維持するために例えば厚み1〜2mm、望ましくは厚み1.5mmであって、また、発熱ベルト26からの放熱に耐えるためにLCP樹脂(液晶ポリマー)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の耐熱性樹脂にて形成される。
ボビン38の円弧部38iは、発熱ベルト26の表面と所定の間隔を隔てて対向する対向面38aと、この対向面38aの反対側に位置する円弧状の取り付け面38bとを有する。取り付け面38bの略中央、つまり、定着ローラー18と加圧ローラー19(図2参照)の各回転中心軸を結ぶ直線上には、一対の端部センターコア42が接着剤によって取り付けられる。端部センターコア42の周囲には、取り付け面38bから立設する立ち壁部38cが長手方向(図3の紙面の表裏方向)に延びて形成される。また、取り付け面38bにはコイル37が取り付けられる。発熱ベルト26の表面とボビン38の対向面38aとの間隔は、発熱ベルト26が回転するときに接触しないように、例えば1.5〜3mmに設定され、端部センターコア42が発熱ベルト26表面から4mm離間して配置される。
コイル37は、複数本を撚り合せたエナメル線に融着層をコートしたものを用い、例えば、耐熱温度が略200℃であるAIW線を用いる。コイル37は、取り付け面38bに沿った断面視円弧状で長手方向(図3の紙面の表裏方向)の周りをループ状に巻回した状態で加熱することで融着層を溶融させ、その後冷却することで所定の形状(ループ状)に成形される。所定形状に固化されたコイル37は、ボビン38の立ち壁部38cの周りに配置されてシリコン接着剤等によって取り付け面38b上に取り付けられる。
各フランジ部38d、38dの円弧部38i側には、長手方向に複数個配列されたサイドコア43が接着剤によって取り付けられる。またフランジ部38dの外縁側には、アーチコアホルダー45が取り付けられる。
アーチコアホルダー45は、ボビン38のフランジ部38dに取り付けられるホルダーフランジ部45aと、各ホルダーフランジ部45aからアーチ状に形成され長手方向に複数個形成されるコア装着部45bと、を有する。各コア装着部45bには、コア装着部45bと略同じアーチ形状のアーチコア41が接着剤によって取り付けられる。
従って、上述のようにアーチコア41と端部センターコア42及びサイドコア43が夫々ボビン38及びアーチコアホルダー45の所定の位置に取り付けられると、アーチコア41とサイドコア43はコイル37の外側を囲むことになり、また、端部センターコア42はアーチコア41に比べて発熱ベルト26の表面に近接して配置されることになる。さらに、コイル37は、発熱ベルト26の表面と、サイドコア43と、アーチコア41、及び端部センターコア42により取り囲まれることになる。コイル37に高周波電流が供給されると、コイル37から発生した磁束は、サイドコア43、アーチコア41及び端部センターコア42に導かれ発熱ベルト26に沿って流れる。このとき発熱ベルト26の誘導発熱層26aには渦電流が生じることで、誘導発熱層26aの電気抵抗によって誘導発熱層26aにジュール熱が発生し、発熱ベルト26が発熱することになる。
カバー部材47は、誘導加熱部30から発せられる磁気をシールドするものであり、例えばアルミニウムの板材にてコイル37と磁性体コア39をボビン38の反対側から四囲を覆うように構成される。カバー部材47の取り付けは、ボビン38のフランジ部38d上にアーチコアホルダー45のホルダーフランジ部45aとカバー部材47のフランジ部とを順に積み重ねた状態で、ネジ51をナット52に締結することによって行われる。
図4〜図6にコイル37と磁性体コア39の詳しい配置と、冷却手段であるペルチェ素子の配置を示す。図4は、図3の下側(ボビン38側)から見たアーチコアホルダー45に対するアーチコア41の配置を示す平面図である。図5は、図3の上側(アーチコアホルダー45側)から見たボビン38に対するコイル37と端部センターコア42及びサイドコア43の配置を示す平面図である。また図6は端部センターコア42の取り付け及びペルチェ素子53の取り付けを示す平面図である。
図4に示すように、アーチコアホルダー45には、アーチコア41を所定の位置に取り付けるためのコア装着部45bが形成される。コア装着部45bは長手方向X(用紙搬送方向Yに直交する方向)に略等間隔で複数個形成される。隣接するコア装着部45bの間にはホルダー開口部45cが形成され、またコア装着部45bの周りには、アーチコアホルダー45をボビン38(図3参照)に取り付けるためのネジ51(図3参照)を嵌装する複数のネジ孔45dが形成される。
アーチコア41は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトによって断面視矩形でアーチ状に形成される。アーチコア41のキュリー温度は、ニップ部Nが定着可能温度になった時のアーチコア41の温度に対応する温度以上に設定されている。アーチコア41の温度がそのキュリー温度を超えるとアーチコア41の透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。アーチコア41のキュリー温度は、MnZn合金のMnとZnの割合を調節することで、所定の温度に設定される。アーチコア41のサイズは、例えば幅(長手方向Xの長さ)が10mmで、厚みが4.5mmに設定され、アーチコア41はコイル37(図5参照)の長手方向Xの長さ内に収められ、例えば長さ310mmの区間に13個均等に配置される。アーチコア41のサイズと比重及び比熱から熱容量を算出すると、一つのアーチコア41の熱容量は、15J/Kとなる。アーチコア41は、アーチ形状等の構成のために熱容量が比較的に大きくなり、また、発熱ベルト26から比較的に離間して配置されるために、発熱ベルト26の温度変化に対する温度の追随性が端部センターコア42に比べると劣ることになる。
図5に示すように、ボビン38には、取り付け面38bから立設した立ち壁部38cと、フランジ部38dと、ネジ51(図3参照)を嵌装する複数のネジ孔38eとが形成されている。フランジ部38dには複数のサイドコア43が取り付けられる。
サイドコア43は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトによって直方体状に形成され、そのキュリー温度は、ニップ部Nが定着可能温度になった時のサイドコア43の温度以上に設定されている。サイドコア43の温度がキュリー温度を超えるとサイドコア43の透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。サイドコア43のキュリー温度は、MnZn合金の割合を調節することで、所定の温度に設定される。サイドコア43のサイズは、例えば長さ(長手方向Xの長さ)が57mmで、幅(Y方向の長さ)が12mmで、厚みが3.5mmに設定され、ボビン38の一方のフランジ部38dに長手方向Xに互いに側面を接触して6個配置され、また、他方のフランジ部38dに長手方向Xに互いに側面を接触して6個配置される。サイドコア43のサイズと比重及び比熱から熱容量を算出すると、一つのサイドコア43の熱容量は、10J/Kとなる。サイドコア43は、そのサイズ及び夫々接触して配置される構成のために熱容量が比較的に大きくなり、発熱ベルト26の温度変化に対する温度の追随性が端部センターコア42に比べると劣ることになる。
ボビン38の立ち壁部38cは、長手方向Xに延びて互いに対向する壁部と、該対向する壁部間に延在し長手方向Xの両端部の外縁を円弧状に形成される壁部とを有する。
立ち壁部38cの外縁は、巻回したコイル37のループ内に形成された中空部37aと略同じ形状で構成され、コイル37の中空部37aを嵌め込んで取り付けることを可能にする。例えば、コイル37の中空部37aは長手方向Xに330mmで、長手方向Xと直交するY方向(用紙搬送方向)に10mmに設定される。一方、立ち壁部38cの外縁は長手方向Xに329mmでY方向に9.4mmに設定される。
立ち壁部38cの内縁には、一対の端部センターコア42を配置するための矩形の空間が形成される。この矩形の空間は、長手方向Xにおいて定着可能な最大サイズの用紙9の通紙領域Aに対応する長さを有する。立ち壁部38cの厚みは、励磁したコイル37の熱が端部センターコア42へ放射、伝導するのを抑制するように設定され、例えば立ち壁部38cの厚み(外縁から内縁までの長さ)を1.5mmとし、矩形空間のY方向長さを6.4mmに設定している。
立ち壁部38cの矩形空間には一対の端部センターコア42、42が取り付けられる。一対の端部センターコア42、42は、最大サイズの用紙9より小サイズの用紙9がニップ部Nに通紙されたときに、小サイズの用紙9の通紙領域Bの両端部に形成される非通紙領域Cに対応するように配置される。
端部センターコア42は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトによって直方体状に形成され、また、そのキュリー温度は、ニップ部Nが定着可能温度になった時の端部センターコア42の温度(例えば100℃)以上であって、アーチコア41(図4参照)のキュリー温度よりも低い温度に設定されている。端部センターコア42の温度がキュリー温度を超えると端部センターコア42の透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。端部センターコア42のキュリー温度は、MnZn合金の割合を調節することで、例えば130℃に設定される。また、端部センターコア42の熱容量はアーチコア41より小さく設定されている。端部センターコア42のサイズは、例えば長さ(長手方向Xの長さ)が18mmで、幅(Y方向の長さ)が5mmで、高さが7mmに設定され、端部センターコア42のサイズと比重及び比熱から端部センターコア42の熱容量を算出すると、一つの端部センターコア42の熱容量は、2.7J/Kとなる。端部センターコア42は、アーチコア41に対して熱容量が小さく、また発熱ベルト26に接近して配置されているために、発熱ベルト26の温度変化に対する温度の追随性がアーチコア41に比べると良好である。
また、端部センターコア42のキュリー温度は、コイル37の冷却設定温度(略160℃)以下に設定される。コイル37の耐熱温度は200℃であるが、冷却設定温度は、コイル37の融着層の耐熱温度(180℃)を加味して設定される温度であり、融着層の耐熱温度を超えるとコイルが変形するおそれがある。端部センターコア42のキュリー温度を冷却設定温度以下とすることで、発熱ベルト26の非通紙領域が過昇温した場合でも、端部センターコア42が適切にキュリー温度になってその磁性を消失し、発熱ベルト26及びコイル37の熱による破損を防いでいる。
本実施形態の定着装置5では、定着可能な最大サイズの用紙9にトナー像を定着する場合、コイル37が通電されたとき、ニップ部Nがほぼ所定の定着温度か、またはそれ以下に維持されている限り、アーチコア41、サイドコア43とともに、端部センターコア42の透磁率が高い状態にある。従って図3において、コイル37から発生した磁束は、通紙領域B(図5参照)では、発熱ベルト26の誘導発熱層26a、サイドコア43、及びアーチコア41の磁路を通る。これにより、電磁誘導によって発熱ベルト26の誘導発熱層26aに渦電流が流れて、発熱ベルト26の誘導発熱層26aが発熱する。一方、非通紙領域C(図5参照)では、コイル37から発生した磁束は、端部センターコア42、発熱ベルト26の誘導発熱層26a、サイドコア43、及びアーチコア41の磁路を通る。これにより、電磁誘導によって発熱ベルト26の誘導発熱層26aに渦電流が流れて、発熱ベルト26の誘導発熱層26aが発熱する。通常、発熱ベルト26の端部は放熱、伝熱で熱を奪われやすいので、中央部より発熱量を多くする必要があり、そのために端部センターコア42が設けられている。
小サイズの用紙9にトナー像を定着する場合、発熱ベルト26の非通紙領域C(図5参照)の温度が所定の定着温度を超えて過大に上昇する。発熱ベルト26から端部センターコア42への熱放射或いは熱伝導によって、非通紙領域Cに対向して配置された端部センターコア42では比較的に迅速に温度上昇が生じる。端部センターコア42が迅速に温度上昇するのは、端部センターコア42が発熱ベルト26に近い位置に配置され、また、端部センターコア42の熱容量が比較的に小さいために、端部センターコア42が発熱ベルト26の昇温に直ぐに追随することによる。そして、端部センターコア42の温度がそのキュリー温度を超えると、端部センターコア42はその透磁率が急激に低下して、磁性体として作用しなくなる。従って、端部センターコア42、発熱ベルト26の誘導発熱層26a、サイドコア43、及びアーチコア41からなる磁路が遮断されることで、発熱ベルト26の誘導発熱層26aの発熱度合いが、磁路が遮断される前と比較して低下するので、発熱ベルト26の表面温度は、発熱ベルト26がその熱により破損するような温度まで上昇することが防止される。なお、端部センターコア42の温度がキュリー温度を一旦超えてその磁性を失っても、端部センターコア42が磁性を失う前に端部センターコア42を通過していた7、8割の磁束が端部センターコア42を通過するため、非通紙領域Cに対応する発熱ベルト26の温度は定着温度を超えたままである(但し、発熱ベルト26がその熱により破損するような温度より低い温度に保たれる)。従って、小サイズの用紙9を連続して定着する場合には、端部センターコア42の温度がキュリー温度を一旦超えると、端部センターコア42の温度はキュリー温度より高い温度に維持される。そして、小サイズの用紙9の連続した通紙が終了し、ニップ部Nの非通紙領域Cの温度が所定の定着温度に戻ると、端部センターコア42の温度がこのキュリー温度を下回るので、再び電磁誘導によって、発熱ベルト26の誘導発熱層26aが通常通りに発熱する。
尚、磁性体コア39のキュリー温度は、ニップ部Nの所定の定着温度と、加熱部材やコイル37等の耐熱温度を勘案して設定される。発熱ベルト26の温度上昇に対して温度追随性がよくないと、非通紙領域Cにおいて発熱ベルト26が温度上昇しても、磁性体コア39が温度上昇するまでに時間がかかるが、その間に定着ローラー18やコイル37の温度が耐熱限界を越えて破損することがないように、磁性体コア39のキュリー温度を設定する必要がある。端部センターコア42は、発熱ベルト26の温度上昇に対する温度追随性が良好であるために、端部センターコア42に設定されるキュリー温度では、定着ローラー18やコイル37を熱破壊させることはない。
図6に示すように、ボビン38の立ち壁部38cは、その矩形空間側の壁面に複数(本実施形態では5個)の突起部38fを有する。複数の突起部38fは、端部センターコア42をボビン38に取り付ける際の位置決めを行うものである。長手方向Xの一方の壁面に二つの突起部38fが並べて設けられ、その他方の壁面に前記二つの突起部38fに対向して二つの突起部38fが並べて設けられる。さらにY方向の端部の壁面に一つの突起部38fが設けられる。尚、突起部38fは、一方或いは他方の壁面のいずれかの壁面と端部の壁面とに夫々一つだけ設ける構成であってもよい。
従って、端部センターコア42をボビン38に取り付けるには、ボビン38の取り付け面38bの所定の位置に接着剤を塗布し、次に端部センターコア42を複数の突起部38fに当接させて、取り付け面38bに当接するまで押し込む。また、もう一方の端部センターコア42は上記構成と同様に取り付けられる。これによって、端部センターコア42と取り付け面38bとの間に接着剤が均一にいきわたり、ボビン38の所定位置に位置決めされて端部センターコア42は確実に取り付けられる。このボビン38の所定位置への正確な取り付けと、前述の端部センターコア42の熱容量と発熱ベルト26への近接配置によって、非通紙領域Cに対応した発熱ベルト26の過昇温を正確に且つ迅速に解消することができる。
端部センターコア42には、冷却手段であるペルチェ素子53が取り付けられる。ペルチェ素子53は、板状の半導体素子からなり、複数のP形及びN形半導体を電気的に直列に接続し電流を流すと、板状の半導体素子の一方の面から吸熱し他方の面から放熱するものである。ペルチェ素子53の吸熱面がシリコン接着剤等の耐熱接着剤によって端部センターコア42の上面に取り付けられる。小サイズの用紙9の定着が終了した後、ペルチェ素子53は通電され端部センターコア42を冷却する。
小サイズの用紙を定着処理する場合、発熱ベルト26の非通紙領域C(図5参照)の温度が所定の定着温度を超えて過大に上昇する。発熱ベルト26からの熱放射或いは熱伝導によって、端部センターコア42の温度は上昇するが、端部センターコア42の温度がそのキュリー温度を超えると、端部センターコア42は磁性体として作用しなくなる。これによって、発熱ベルト26の温度は、発熱ベルト26がその熱により破損するような温度まで上昇することが防止される。なお、端部センターコア42の温度がキュリー温度を一旦超えてその磁性を失っても、端部センターコア42が磁性を失う前に端部センターコア42を通過していた7、8割の磁束が端部センターコア42を通過するため、非通紙領域Cに対応する発熱ベルト26の温度は定着温度を超えたままである(但し、発熱ベルト26がその熱により破損するような温度より低い温度に保たれる)。従って、小サイズの用紙9を連続して定着する場合には、端部センターコア42の温度がキュリー温度を一旦超えると、端部センターコア42の温度はキュリー温度より高い温度に維持される。そして、定着処理後、ペルチェ素子53を通電し、ペルチェ素子53によって端部センターコア42を冷却することで、端部センターコア42がキュリー温度以下に迅速に冷却される。端部センターコア42がキュリー温度以下に冷却されると、誘導加熱部30によって発熱ベルト26が加熱され、次回の定着処理までの時間が短縮される。
図7は、誘導加熱部30の熱を排気する構成を示すものであり、カバー部材47を長手方向Xで断面した平面図である。尚、図7では、カバー部材47内に収容されているコイル37、磁性体コア39等を省略している。
コイル37(図3参照)が磁束を発生させるために通電されると、コイル37は自己発熱し、カバー部材47内の温度が上昇するが、コイル37の温度上昇を抑えるために、第1吸気ダクト55と、通気路である排気ダクト56、及び排気ファン57が設けられる。
カバー部材47の上面部には上面開口47a及び排気開口47bが形成される。上面開口47a及び排気開口47bは夫々カバー部材47の長手方向Xの両端側に設けられる。上面開口47aに対向させて第1吸気ダクト55が設けられ、また、排気開口47bに対向させて排気ダクト56が設けられる。排気ダクト56は、その一端側の開口が排気開口47bに対向し、その他端側の開口が排気ファン57に対向して取り付けられる。排気ファン57は排気ダクト56に対向して設けられる。
排気ファン57が回転駆動すると、第1吸気ダクト55から上面開口47aを介してカバー部材47内に外部の空気が入る。排気ファン57が形成する空気流によって、コイル37(図3参照)から発生する熱が排気開口47bを介して排気ダクト56から外部に排気される。
(第2実施形態)
図8は、誘導加熱部に送風する吸気ファンを備える構成を示すものであり、カバー部材47を長手方向Xで断面し上側から見た平面図である。尚、図8では、カバー部材47内に収容されているコイル37、磁性体コア39等を省略している。第1実施形態では冷却手段をペルチェ素子53で構成したが、第2実施形態では、第1実施形態の誘導加熱部30の熱を排気する構成に、冷却手段として吸気ファン59及び第2吸気ダクト58が設けられている。第1実施形態と異なる、吸気ファン59及び第2吸気ダクト58について主に説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
カバー部材47の長手方向の端部の両横面部に一対の吸気開口47cが形成される。各吸気開口47c、47cは、端部センターコア42に対向する位置に配置される。二つの吸気開口47c、47cに対向させて第2吸気ダクト58が設けられる。第2吸気ダクト58は、その一端側の二つの開口が吸気開口47c、47cに対向し、その他端側の開口が吸気ファン59に対向して取り付けられる。
吸気ファン59が回転駆動すると、第2吸気ダクト58から二つの吸気開口47c、47cを介してカバー部材47内に外部の空気が入る。この吸気ファン59の空気流によって、端部センターコア42が冷却される。端部センターコア42から発生する熱が排気開口47bを介して排気ダクト56(図7参照)から外部に排気される。
小サイズの用紙を定着処理した後、吸気ファン59は回転駆動し端部センターコア42を冷却する。小サイズの用紙を定着処理する場合、発熱ベルト26の非通紙領域C(図5参照)の温度が所定の定着温度を超えて過大に上昇する。発熱ベルト26からの熱放射或いは熱伝導によって、端部センターコア42が温度上昇するが、端部センターコア42の温度がそのキュリー温度を超えると、端部センターコア42は磁性体として作用しなくなる。これによって、発熱ベルト26の温度は、発熱ベルト26がその熱により破損するような温度まで上昇することが防止される。なお、端部センターコア42の温度がキュリー温度を一旦超えてその磁性を失っても、端部センターコア42が磁性を失う前に端部センターコア42を通過していた7、8割の磁束が端部センターコア42を通過するため、非通紙領域Cに対応する発熱ベルト26の温度は定着温度を超えたままである(但し、発熱ベルト26がその熱により破損するような温度より低い温度に保たれる)。従って、小サイズの用紙9を連続して定着する場合には、端部センターコア42の温度がキュリー温度を一旦超えると、端部センターコア42の温度はキュリー温度より高い温度に維持される。定着処理後、吸気ファン59を回転駆動させ、吸気ファン59から第2吸気ダクト58を介して送られる冷風によって、端部センターコア42を冷却することで、端部センターコア42がキュリー温度以下に迅速に冷却される。端部センターコア42がキュリー温度以下に冷却されると、誘導加熱部30によって発熱ベルト26が加熱され、次回の定着処理までの時間が短縮される。
尚、上記実施形態では、発熱ベルト26が定着ローラー18に張架される定着装置5に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、誘導加熱部に対向配置されるヒートローラーと加圧ローラーを圧接させる定着ローラーとの間で、無端状の発熱ベルトが張架される定着処置に適用してもよい。また、無端状の発熱ベルトを加熱する誘導加熱部と、発熱ベルトの外周面を圧接させる加圧ローラーと、発熱ベルトの内周面に配設され加圧ローラーとの間で用紙と発熱ベルトとを圧接させる押圧部材と、を備える定着装置に適用してもよい。さらに、加圧ローラーと加圧ローラーに圧接される加熱ローラーとを備え、加熱ローラーが誘導発熱層を内包するとともに誘導加熱部に対向配置される定着装置等、誘導加熱部を備える種々の定着装置に適用することができる。
また、上記実施形態では、アーチコア41とサイドコア43とを夫々別設する構成を示したが、本発明はこれに限らず、アーチコア41をサイドコア43側にさらに延ばし、サイドコア43の機能をアーチコア41に代用させるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、アーチコア41はアーチコアホルダー45を介してボビン38に取り付ける構成を示したが、本発明はこれに限らず、アーチコア41はボビン38に直接取り付けられる構成であってもよい。